一部の発明について、均等侵害が争われました。裁判所は第1要件、第3要件を満たしていないとして
これを否定しました。
「(ア) 本件実用新案権2明細書の・・・の記載によれば,本件考案2は,リフト部材と支持部
材との間にリフト部材の高さを調節する調節手段を設け,この調節手段を調節する
ことにより,リフト部材の自由端側が支持部材に対する軸支個所を支点に上下して
その高さが変化し,リフト部材にその後部を取り付けた原稿圧着板の取付位置を変
化させ,もって,従来のような煩雑な手段によらずに原稿圧着板とコンタクトガラ
スとの間の浮きを調節することができるという作用効果を奏するものと認められる。
(イ) そうすると,本件考案2の本質的部分は,リフト部材と指示部材との間に
設けた調節手段によってリフト部材の高さを調節することにより,原稿圧着板とコ
ンタクトガラスの浮きを調節することができるようにした点にあると認められる。
(ウ) 原告は,高さ調節手段を取り付ける位置は本件考案2の本質的部分ではな
い旨主張するが「リフト部材の高さ, を調節する調節手段」というだけでは,従来
の調節作業に用いられていたとされる「調節プレート」(本件実用新案権2明細書
【0003】)との差異が明らかでなくなるから,その取付位置を除外しようとす
る原告の上記主張は,採用することができない。
・・・
(ア) 本件実用新案権2明細書には,リフト部材にくの字形状の取付板を固着し,
それに調節手段であるエキセンピンを設ける実施例(【0011】)や,リフト部材
又は支持部材の背板に調節手段を設ける実施例(【0013】)が記載されているが,
ヒンジピンに着目して,同所に高さ調節手段を設けることを示唆する記載は見いだ
せない。
(イ) 支持部材やリフト部材は,板状の材料で構成されていると認められるから,そこに高さ調節手段を設置するには,くの字形状の取付板のような取付手段を介在\nさせたり,雌ねじ部分の厚さを確保するために板状の材料を厚くするなどの工夫が
必要であると認められる。(ウ) これに対し,ヒンジピンに高さ調節手段を設けるとすれば,その直径の大
きさから,取付手段などを要することなく,雌ねじ部分の厚さを確保することは容
易ではある。
(エ) しかし,ヒンジピンは本来自由に回転するものであるから,ヒンジピンに
高さ調節手段を設けるとすれば,ヒンジピンの一端部側に角状部6aを設け,この
角状部6aを支持部材5の一方の側板5bに形成された角孔5dに係合させること
により,回転しないようにするなどの工夫が必要となる。
ウ まとめ
これらの事実によれば,高さ調節手段をヒンジピン6に設けた被告製品(3)及び
(4)は,本件考案2とは技術思想を異にし,均等の第1要件(本質的部分)を欠き,
しかも,均等の第3要件(置換容易性)を欠くと認められる。」
◆平成19(ワ)12631 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年03月28日 東京地方裁判所