均等の第3要件(置換容易性)を満たしていないとして、均等侵害が否定されました。
上記1,2に説示したところによると,本件特許発明と被告製品の相違点は,本件特許発明は,くさび形の空間部を,第1アームのケース部自体に形成して構成しており,その結果,くさび形金具が第1アームから脱落するのを防止するためのカバー(橋絡壁をもって橋絡される左右側壁 (34)(34) )を必要とするのに対し,被告製品は,これを,連結壁A2,A2 を付属させた中本体A と,中板B(保持板1c)によって構成し,かつ同構\成によってくさび形金具の脱落防止も達成している点にある。
(2) 上記相違点の評価
上記相違点は,いずれの構成も,くさび形金具との当接によるくさび作用をもたらし,角度調整金具を多段化,小型化することに資する構\成であって,同一の作用効果を発揮するものである(均等第2要件充足)。しかし,くさび作用をもたらすくさび形空間部の具体的構成方法が,発明の本質的部分に関するものでない(均等第1要件関係)かどうかはともかく,本件特許発明が,くさび形空間部を第1アームに設けられたくさび形窓部に形成することに主眼を置いた説明をしているのに対し,被告製品は,その構\成から解放され,中本体(受け部材)と中板をもってくさび作用をもたらすくさび形空間部を具体的に形成するという別の技術的構成を採用し,これによって,くさび形金具とくさび面の当接面積が増大する,あるいは,構\造材である中本体がくさび形金具の動きを案内し,脱落防止のための部材も別途要しなくなるといった付加的な作用効果も生じているから,このような構成に想到することが,被告製品の製造当初において,当業者にとって容易であったとは認められない(これを明らかにする証拠の提出もない)。この点につき,原告は,単なる部品の組換えであるとして,その想到容易性を主張するが,上記説示に照らし,採用することはできない。
(3) まとめ
以上の次第で,少なくとも均等第3要件を欠くから,被告製品が,本件特許の均等の範囲にあるということもできない。
◆判決本文