知財高裁(4部)も、1審と同じく均等侵害を否定しました(第1、第4要件不備)。
ア 均等の第1要件における本質的部分とは,当該特許発明の特許請求の範囲の
記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であり,\n上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて,特許発明の課題
及び解決手段(特許法36条4項,特許法施行規則24条の2参照)とその効果(目
的及び構成とその効果。平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項\n参照)を把握した上で,特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見ら
れない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が何であるかを確定することによっ\nて認定されるべきである。ただし,明細書に従来技術が解決できなかった課題とし
て記載されているところが,出願時(又は優先権主張日)の従来技術に照らして客
観的に見て不十分な場合には,明細書に記載されていない従来技術も参酌して,当\n該特許発明の従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分が認定\nされるべきである。
イ 本件明細書によれば,本件発明は,従来技術では経路探索の終了時にいくつ
かの経由地を既に通過した場合であっても,最初に通過すべき経由予定地点を目標\n経由地点としてメッセージが出力されること(【0008】)を課題とし,このよ
うな事態を解決するために,通過すべき経由予定地点の設定中に既に経由予\定地点
のいずれかを通過した場合でも,正しい経路誘導を行えるようなナビゲーション装
置及び方法を提供することを目的とし(【0011】),具体的には,車両が動く
ことにより,探索開始地点と誘導開始地点のずれが生じ,車両が,設定された経路
上にあるものの,経由予定地点を超えた地点にある場合に,正しく次の経由予\定地
点を表示する方法を提供するものである(【0018】【0038】)。また,前\n記2(1)エ(ア)のとおり,本件特許出願当時において,ナビゲーション装置が,距離
センサー,方位センサー及びGPSなどを使って現在位置を検出し,それを電子地
図データに含まれるリンクに対してマップマッチングさせ,出発地点に最も近い
ノード又はリンクを始点とし,目的地に最も近いノード又はリンクを終点とし,ダ
イクストラ法等を用いて経路を探索し,得られた経路に基づいて,マップマッチン
グによって特定されたリンク上の現在地から目的地まで経路誘導するものであった
ことは,技術常識であったと認められる。
このように,本件発明は,上記技術常識に基づく経路誘導において,車両が動く
ことにより探索開始地点と誘導開始地点の「ずれ」が生じ,車両等が経由予定地点\nを通過してしまうことを従来技術における課題とし,これを解決することを目的と
して,上記「ずれ」の有無を判断するために,探索開始地点と誘導開始地点とを比
較して両地点の異同を判断し,探索開始地点と誘導開始地点とが異なる場合には,
誘導開始地点から誘導を開始することを定めており,この点は,従来技術には見ら
れない特有の技術的思想を有する本件発明の特徴的部分であるといえる。
したがって,探索開始地点と誘導開始地点とを比較して両地点の異同を判断する
構成を有しない被控訴人装置が本件発明と本質的部分を異にすることは明らかであ\nる。
◆判決本文
◆1審はこちらです。平成26(ワ)25928