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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

均等

平成21(ワ)13824 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年11月25日 大阪地方裁判所

 文言侵害、均等侵害ともに否定されました。
 このように,原告は,出願時明細書の段落【0033】ないし段落【0037】に記載された「フラップ部周囲領域」を「一の領域」に該当するものとして上記の特許請求の範囲の補正をしたことが明らかであるから(なお,補正後の特許請求の範囲の記載によれば,一の領域はフラップ部を備えるとされているから,フラップ部周囲領域とフラップ部を併せたものが一の領域とする趣旨であると考えられる。),かかる出願の経緯にかんがみれば,特許請求の範囲に記載された「一の領域」の意義については,出願時明細書の上記各段落に対応する本件明細書の記載部分(段落【0033】ないし段落【0037】)における「フラップ部周囲領域」に関する記載を参酌して解釈するのが相当である。(ウ) そこで,本件明細書の段落【0033】ないし段落【0037】について見てみると,本件明細書の上記各段落には,フラップ部周囲領域は,フラップ部周囲を取り囲む領域であり,蓋体本体部の外周輪郭形状を定める周縁領域と中間領域によって接続されていること,フラップ部周囲領域は,中間領域に対して上方に隆起しているが,その隆起は周縁領域の隆起よりも低いこと,フラップ部周囲領域には,フラップ部に形成された突起部と嵌合する開口部,フラップ部を収容する下方に窪んだ凹領域と,凹領域に隣接して形成されるとともに凹領域よりも深く窪んだ凹部を備えていることが記載されている。本件明細書のかかる記載は,特許請求の範囲から理解される「一の領域」の上記意味内容と整合するものであり,とりわけ,フラップ部周囲領域が上面(最も高い面)から窪んだ領域として凹領域に加えて凹部を備えていると記載されていることからすれば,「一の領域」は凹領域以外に窪んだ領域を有する態様を含むものと理解するのが素直である。そして,本件明細書の他の記載を見ても,「一の領域」あるいは「フラップ部周囲領域」に関して,上記で検討した意味内容と異なるような説明をしている個所は見当たらない。(エ) したがって,本件特許発明にいう「一の領域」とは,周縁部により囲まれる領域内部において,周縁部から離間して隆起し,空気抜き穴と,空気抜き穴を閉塞可能な突起部を備えるフラップ部と,フラップ部を収容する凹領域を備える,周縁部の隆起よりも低い領域を意味し,凹領域のほかに一の領域の上面(最も高い面)から窪んだ領域を有する態様も含むものと解するのが相当である。(オ) そして,以上に基づいて「一の領域の縁部」の意義について検討すべきところ,「縁」とは字義的には「へり。ふち。」を意味し(広辞苑第6版),また本件明細書(段落【0034】,図1及び図2)においても,フラップ部の基端部がフラップ部周囲領域のへりの部分に接続している態様が記載されているから,「一の領域の縁部」とは要するに「一の領域」のへりの部分を指すものと解される。(カ) 以上の解釈を総合すると,構成要件Eにいう「前記フラップ部は,前記一の領域の縁部に一体的に接続する基端部を備える」とは,周縁部により囲まれる領域内部において,周縁部から離間して隆起し,空気抜き穴と,空気抜き穴を閉塞可能\な突起部を備えるフラップ部と,フラップ部を収容する凹領域を備える,周縁部の隆起よりも低い領域を意味し,凹領域のほかに一の領域の上面(最も高い面)から窪んだ領域を有する態様も含む「一の領域」のへりの部分にフラップ部が一体的に接続する基端部を備えていることを意味するものと解するのが相当である。
・・・・
 以上を総合すると,本件各特許発明は,蓋体にフラップ部を設けるという公知の構成を前提に,煩雑な製造プロセスを要することなく製造可能\であり,蓋体からフラップ部が外れることのない蓋体を提供することを目的として,フラップ部が「一の領域の縁部」に一体的に接続する基端部を備えるという構成を採用したものであり,この点に本件各特許発明の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分があると認められ,上記構\成が本件各特許発明の本質的部分であると解される。そうすると,被告各製品のフラップ部が「一の領域」の縁部ではなく,その内部に一体的に接続する基端部を備えているという相違点は,本件各特許発明の本質的部分に係る相違というべきであることになるから,被告各製品は,本件特許の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものという原告の主張は採用できないことになる。\n

◆判決本文

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平成21(ネ)10006 補償金等請求控訴事件 その他 民事訴訟 平成22年05月27日 知的財産高等裁判所

均等侵害であるとの中間判決がなされていた事件です。均等侵害についても登録前の実施に対する補償金請求権が認められました。また、補正による再警告は補正が認められる範囲からして不要であるとの判断を示しました。
特許出願人が出願公開後に第三者に対して特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をした後,特許請求の範囲を含めて補正がされた場合,その補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を明瞭にし又は減縮するものに限られ,拡張することは許されないから,補正がされることによって,発明の技術的範囲に属しなかった製品が,技術的範囲に属するようになることは想定できない。したがって,警告後に補正がされることによって第三者に対して不意打ちを与えることはないから,再度の警告を発しないと不意打ちに当たるというような特段の事情(そのような特段の事情を想定することは困難ではあるが)がない限り,補償金請求の前提としての警告をした後,補正がされたからといって,再度の警告をしなければならない理由はないといえる。・・・・被告は,警告が発せられたのは,補正前の特許請求の範囲に基づくものであるから,これに基づく補償金請求には,均等の手法による技術的範囲の解釈は適用されない旨を主張する。しかし,前記のとおり,本件特許の各補正は,特許請求の範囲を減縮し又は明瞭にする目的の範囲にとどまるものであること,被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かについては,補正後の設定登録を経由した発明の技術的範囲に基づいて判断していることに照らすならば,被告の上記主張は,理由がない(なお,被告製品の具体的態様に照らすならば,本件各補正の内容は,被告製品が本件発明の技術的範囲に含まれるか否かの争点(均等を前提とした技術的範囲の解釈を含む。)に関係するものではないし,いわゆる侵害論において,このような観点からの当事者の主張もされていない。)。

◆判決本文

◆中間判決はこちらです。

◆原審はこちらです。◆平成19(ワ)28614 平成20年12月09日 東京地裁

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平成21(ネ)10055 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所

 知財高裁は「本件訂正発明の構成要件gの「選択手段」を具備せず,また,被告製品は,本件訂正発明の均等物ではない」判断しました。
 以上によれば,本件訂正発明は,従来の無線電話装置と,携帯型コンピュータとGPS利用者装置とをすべて携帯することができず,かつ相互を組み合わせてそれらを複合した機能を得ることができないとの課題を解決するために,複合した機能\を,実用的に得ることを目的とするものである。そうすると,本件訂正発明は,携帯型の情報装置がこれらの装置の機能を複合させた機能\を有することに特徴があり,機能の一部を他のサーバ等に置くことを想定したものということはできない。そして,前記認定の本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,「携帯型コミュニケータ」は,CPUを備えた携帯コンピュータと無線電話装置とGPS利用者装置とを備えるとともに,地図情報を備えた地図データROMが接続されており,CPUにより実行される最寄発信処理においては,まず,現在位置の座標と発信先の名称が入力され,次に,地図データROMから現在位置から最も近い発信先番号を選択する処理を行い,それは,現在位置の座標と地図データROMから読み込まれた地図情報とに基づいて選択しているものと認められる。したがって,「選択手段」による「発信先番号の選択」は,携帯コンピュータのCPUが,携帯型コミュニケータ自体で取得できるデータを用いて,発信先番号の選択に係る処理を実行することを指すと解するのが相当である。・・・,本件訂正発明における「携帯コンピュータ」が,「位置座標データ入力手段の位置座標データに従って,所定の業務を行う複数の個人,会社あるいは官庁の中から現在位置に最も近いものの発信先番号を選択する選択手段」との構\成を被告製品における上記処理手段に置換することは,解決課題及び解決原理が異なるから,置換可能性はないものというべきである。\n

◆判決本文

◆原審はこちらです。平成20年(ワ)第18866号

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平成20(ワ)18566 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年04月23日 東京地方裁判所

 第5要件を満たしていないとして、均等侵害が否定されました。
 平成5年7月15日付け本件特許出願の願書(甲5)に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の特許請求の範囲は,前記第2,2(10)アのとおり,コンベア高さ調節を構成要件として含まない請求項(1〜5)とコンベア高さ調節を構\成要件として含む請求項(6)とが記載されていたところ,前記第2,2(2)のとおり,本件特許発明1(請求項1)又は本件特許発明2(請求項2)は,いずれもコンベア高さ調節を構成要件として含み(構\成要件E,G’),その余の請求項(3,4)も請求項1,2の従属項であるからコンベア高さ調節を構成要件として含み(甲2),したがって,本件明細書の特許請求の範囲からは,コンベア高さ調節を構\成要件として含まない発明はなくなっている。そして,コンベア高さ調節に係る構成要件E及び構\成要件G’が,特許庁での審査段階で審査官から通知された拒絶理由(乙2)に対応して,出願人たるAが当該拒絶理由を回避しようと意識的に加えたものであることは,前記第2,2(10)イ,ウの出願経過から明らかである。この認定に反する原告の主張は,前記第2,2(10)イ,ウに認定した手続補正書(甲6,乙3)及び意見書(甲7,乙9)の記載自体からみて,採用することができない。そうとすれば,Aのした上記補正は,コンベア高さ調節を含まない構成を意識的に除外したものと認められるから,コンベア高さ調節を含まない構\成である被告方法又は被告装置は,均等の第5要件を充足しないものというべきである。(2) 原告の主張についてア原告は,本件特許発明がすべてコンベア高さ調節を構成として含む発明になったのは,当初明細書に開示されていたコンベア高さ調節を構\成として含む発明を本件特許発明に取り込んだことによって生じた結果にすぎず,コンベア高さ調節を含まない構成を除外しようとしたことによるものではない旨を主張する。しかしながら,Aは,平成11年10月22日付け手続補正書(乙3)により,当初明細書のコンベア高さ調節を構\成要件として含まない請求項(1〜5)とコンベア高さ調節を構成要件として含む請求項(6)とが記載されていた特許請求の範囲をコンベア高さ調節を構\成要件として含むものに限定したことが,前記第2,2(10)に認定した出願経過から外形的に明らかであるところ,そうである以上,補正に際しての出願人の主観的意図にかかわらず,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らし許されないというべきである。

◆判決本文

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平成21(ネ)10052 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年01月25日 知的財産高等裁判所

 控訴審で均等の主張を追加しましたが、否定されました。
 控訴人は,被告製品1と本件特許発明とでは,被告製品1の掛止部材において,本件特許発明のアーム部に該当する把手部の下端において連続する部材が,補強片と連続しない舌状のかけら部材ではなく,舌状の部材(A部分6’)とその舌状の部材の上端において連続した逆U字形の最外周の縁(補強片9’)との一体構造体であって,かかる一体構\造体が把手部の内側のみに形成されているとはいえない点が構成の異なる部分であると主張する。なるほど控訴人の主張は,被告製品1においては,A部分6’と補強片9’とが一体構\造となっており,本件特許発明の「舌片部」を備えるものでないこと,及び,この一体構造がアーム部に相当する把手部の内側のみにあるとはいえないこと,すなわち舌片部がアーム部の内側にあるとはいえないこと,との2つの相違点があることを前提として,これら構\成が均等である旨主張するものと解される。これにつき検討すると,構成の異なる部分が発明の本質的部分であるとは,発明の課題解決のための特徴的な部分をいうと解されるところ,本件特許発明は,上記のとおり,既に知られたカップオン方式,カップイン方式のそれぞれの長所である,コーヒーの美味,セットや注湯のしやすさと簡略な構\成・抽出後の廃棄が容易で安全なことの双方を達成しようとするものである。そのため本件特許発明のドリップバッグは,上端部に開口部を有する袋本体と薄板状材料からなる対向する外表面に設けられる掛止部材とからなり(簡略で廃棄が容易である),その掛止部材は,周縁側に形成される周縁部,周縁部の内側にあり袋本体から引き起こし可能\に形成されるアーム部,アーム部の内側に形成される舌片部からなる。そして,周縁部とアーム部,アーム部と舌片部は,それぞれ端部で連続し,周縁部又は舌片部のいずれかが袋本体に貼着され,周縁部が袋本体に貼\着された場合には舌片部がカップ側壁にかけられ,アーム部によって反対方向に引っ張られて袋本体の上端が開口しカップの中央上部に吊されることになる(コーヒーが美味でセット・注湯がしやすく安全である)ものである。そうすると,本件特許発明において,周縁部を袋本体に貼着した場合には舌片部をアーム部と共に引き起こすことも可能\であること,舌片部がアーム部の内側に形成されていることは,いずれも本件特許発明の本質的部分であるということができる。そうすると,被告製品1においてA部分6’と補強片9’とが一体構造となっていて本件特許発明の舌片部を備えるものではなく,この一体構\造がアーム部に相当する把手部の内側のみにあるといえないとの相違点は,いずれも本件特許発明の本質的部分において相違するものである。そうすると,その余の点について判断するまでもなく,均等侵害についての控訴人の主張は理由がないことになる。」

◆判決本文

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平成20(ワ)14302等 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年01月21日 大阪地方裁判所

 均等侵害であると主張しましたが、本質的部分であるとして否定されました。
 発明の本質的部分とは,明細書の特許請求の範囲に記載された構成のうち,当該発明特有の作用効果を生じさせる技術的思想の中核をなす特徴的部分である。・・・・・これらのことからすれば,本件発明は,受枠に凸曲面部と凹曲面部を連続して形成し,蓋本体にはこれに倣う形で凹曲面部と凸曲面部を連続して形成することをもって,本件作用効果を発生させる発明といえる。したがって,受枠凹曲面部の形状は,本件発明の主要な根拠となる部分であり,凹曲面部の形状が本件発明の技術的思想の中核をなす特徴的部分ではないということはできない。\n

◆判決本文

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