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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

均等

平成24(ワ)31523  特許権侵害行為差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年12月18日  東京地方裁判所

 均等侵害が認められました。また、不競法2条1項14号に該当するとして、損害賠償が認めれました。
 被告製品3は,本件発明の構成要件A1)〜C及びEを充足するものであるが,本件発明が制水駒を接合金具に内嵌するブッシュを介して通水室に内設するものであるのに対し(構成要件D),ブッシュを設けることなく制水駒を接合金具に形成されたV型のテーパに圧入することによって通水室に内設する構\成を採用しているから,構成要件Dを文言上充足しない。\n原告らは,被告製品3は上記のとおり特許請求の範囲に記載された構成と異なるが,1) ブッシュを介して内設することは本件発明の本質的部分ではなく,2)これを被告製品3のように置き換えても本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,3)そのように置き換えることに本件発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が被告製品3の製造時点において容易に想到することができたものであり,4) 被告製品3が本件特許権の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考することができたものではなく,かつ,5) 被告製品3が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないから,被告製品3は特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして本件発明の技術的範囲に属する(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)と主張するのに対し,被告らは原告らの主張のうち上記3)の点のみを争っている。
イ そこで判断するに,本件発明における通水室は,水栓の口端に接合される接合金具と水を吐出する吐出金具との間に形成され(構成要件A1)〜3),上端(入水側)と下端(出水側)が開口された筒状の空間を指すものと解される(明細書(甲8)の段落【0007】,【図2】参照)。また,構成要件Dの「ブッシュ」は,特許請求の範囲の文言上,接合金具に内嵌され,上記通水室に制水駒を内設させるものとされているが,明細書の発明の詳細な説明の欄をみてもその具体的な構\成やブッシュを設けることによる作用効果に関する記載は見当たらない。そして,構成要件Cに記載の構\成から成る制水駒を通水室に内設することにより,1個の制水駒によって多様の流量制御に対応することができるという本件発明の技術的意義(明細書の段落【0003】〜【0005】参照)に照らすと,制水駒は,上記形状の通水室内に下端から落ちることなく止まるよう,また,制水駒と通水室の間から水漏れがしないよう,通水室内に固定されていることを要すると解すべきものとなる。 ところで,通水室に制水駒を固定するに当たっては,これらを直接結合するか,他の部材を介して間接的に結合するかのいずれかであるところ,本件発明は後者を採用したものであるが,ブッシュを介在させることの技術的意義は明細書に記載されていない。また,物を製造するに当たり,製造原価を削減する,工程を減らし工期を短くするなどの目的で部品の数を減らすことは,当業者であれば当然に考慮すべき事柄と解される。そうすると,本件発明の特許請求の範囲及び明細書の詳細な説明の記載に接した当業者であれば,ブッシュを省略し,制水駒を通水室に直接結合する構成への設計変更を試みるものと考えられる。そして,本件発明の実施例に示されたとおり,通水室の断面及び制水駒の形状が円形であること,通水室には上端から下端方向に水が流れることからすれば,制水駒が下端から落ちることなく,かつ,制水駒と通水室の間から水が漏れないように両者を\n固定するため,接合金具の内側を下端側が狭まったV型のテーパ状に形成し,その円周部分に円盤状の制水駒を直接圧入するように構成することは,当業者にとって容易に想到できた\n
・・・・
上記事実関係によれば,甲17書面及び甲18書面は,「被告2社には本件発明を実施する権利がなく,被告2社による節水装置の製造販売は特許権侵害になる」旨の警告や通知をした原告らの行為が被告2社に対する誹謗中傷に当たる旨の事実を告知するものということができる。ところで,被告2社による本件特許権の侵害行為が認められることは前記1において認定判断したとおりであり,特許権侵害に関する請求につき説示したところによれば,原告らによる上記警告等は特許権者又は専用実施権者として登録された者による正当な権利行使の範囲を出るものではないと解される。そうすると,これが誹謗中傷であるとする被告2社による上記告知は虚偽であるといわざるを得ない。そして,このような記載内容に照らせば,これが原告らの営業上の信用を害することは明らかと解される。 したがって,上記1)の告知行為は不正競争防止法2条1項14号に該当すると認められる。
・・・
したがって,原告らは,被告らに対し,被告らが甲17書面及び甲18書面においてD及び原告アースアンドウォーターが被告らを「誹謗中傷」した旨を告知したことにつき,不正競争防止法2条1項14号,4条に基づき,原告ごとに35万円及びこれに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めることができる。

◆判決本文

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平成25(ネ)10112  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成26年10月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 チーズ製造方法についての特許権侵害控訴事件です。一審では、構成要件が不充足と判断され、控訴審では均等侵害を追加しました。裁判書は、均等の第2要件、さらに第1要件を満たさないと判断しました。製造方法ゆえに、かなりの部分が伏せ字になってます 。
 本件各発明は,構成要件C及びFの「香辛料を内包」との構\成により,通常のカマンベールチーズ製品と比べて,外観上全く見分けがつかないとの作用効果を奏するものである。 これに対し,被控訴人製品等は,6ポーションカット切断面が白カビに覆われておらず香辛料が露出しているから,上記作用効果,すなわち,通常のカマンベールチーズ製品と比べて,外観上全く見分けがつかないとの作用効果を奏しないことは明らかである。 したがって,被控訴人製品等は,第2要件を充足しない。
イ 非本質的部分(第1要件)について
前記で認定した本件明細書の記載(【0001】〜【0005】)によれば,本件各発明の本質的部分すなわち技術思想の中核的部分は,構成要件A2及びD2の「チーズカードを結着するように熟成させ」て,「結着部分から引っ張ってもはがれない状態に一体化させ」,さらに,構\成要件B及びEの「その後,加熱」することにより,構成要件C及びFの「香辛料を内包」との構\成を得,これによって,通常のカマンベールチーズ製品と比べて,外観上全く見分けがつかず,また,加熱時に流動化したチーズが切断面から流れ出たり,香辛料が流出したり漏れたりすることがないという作用効果を奏する点にあるものと認められる。 これに対し,被控訴人製品等は,構成要件C及びFの「香辛料を内包」との構\成を具備しないから,通常のカマンベールチーズ製品と比べて,外観上全く見分けがつかないとの作用効果を奏するものではないし,「香辛料を内包」との構成によって,加熱時に流動化したチーズが切断面から流れ出たり,香辛料が流出したり漏れたりすることがないという作用効果を奏するものでもない。\nそうすると,本件各発明と被控訴人製品等との上記相違点は,本件各発明の本質的部分というべきである。したがって,被控訴人製品等は,第1要件も充たさないものである。

◆判決本文

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平成25(ワ)31341 特許専用実施権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年9月25日  東京地方裁判所

 均等侵害を主張しましたが、第3要件(置換容易性)を満たしていないとして、請求棄却されました。
 被告製品は,スライド用ボルト114が移動不可能に軸支されているという点で本件発明とは基本的構\成を異にするものであって,単に構成要件D3及びD4の文言の一部を修正したり上位概念で置き換えたりするだけでは,被告製品を充足するように本件特許の特許請求の範囲を構\成することは困難というべきである。ウ 以上のとおり,1)被告製品には本件発明に存在しない部材が用いられ,ケース117及びスライドタップ115の設計が必要となるが,2)その反面,パチンコ台アセンブリの前面からスライドタップ115を前後に移動することでパチンコ台の傾斜角を調整することができるという付加的な効果が得られている。他方,3)パチンコ台取付装置を含む技術分野において,相違点3及び4に係る技術が被告製品の製造の時点で公知であったと認めることはできず,また,4)単に本件発明の構成要件D3及びD4の文言の一部を修正したり上位概念で置き換えたりするだけで,被告製品を充足するように本件特許の特許請求の範囲を構\成することは困難である。これらの事情によれば,構成要件D3及びD4の構\成を被告製品のように置換することに,当業者が被告製品の製造の時点において容易に想到することができたと認めることはできないから,被告製品は,均等侵害の第3要件を欠き,本件発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するということはできない。

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平成25(ワ)5744  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月18日  大阪地方裁判所

 CS関連発明について、技術的範囲に属しないと判断されました。均等侵害も否定されました。
(ア)「一覧出力形式」のうち,「一覧」には,「全体の概略が簡単にわかるようにまとめたもの」(甲14),「全体が一目で分かるようにしたもの」(乙4)という意味があり,「出力」には,「機器・装置が入力を受けて仕事をし,外部に結果を出すこと」(甲14),「原動機・通信機・コンピュータなどの装置が入力を受けて仕事または情報を外部へ出すこと」(乙4)という意味があり,「形式」には,「物事を行うときの,則るべき一定の手続きや方法・様式」(甲14),「事務などを進めるための,文書の体裁や執るべき手続」(乙4)という意味がある。 構成要件1Dには,第1通信装置の記憶手段に記憶された複数の品物の画像データの中から,ユーザ情報に対応するものを「一覧出力形式」で,すなわち,全体を一覧できるように,情報を外部へ出す方法で,第2通信装置へ送信する旨が記載されている。ここで,「全体」とは,「ユーザ情報に対応するもの」,すなわち,ユーザ情報に対応する複数の品物の画像データの全てであると読み取ることができる。
(イ)発明が解決しようとする課題,課題を解決するための手段及び発明の効果において,顧客がどの衣類を預けたか忘れてしまうことがあるが,事業者が預かっている対象物の内容を画像で視覚的に示すことによって,顧客が,預けている衣類を正確に把握でき,その中から,返却を要求したい衣類を事業者に対して容易かつ的確に知らせることができる旨が指摘されており,P1は,本件特許出願の過程で,同様の指摘や補正をしている。このような目的,作用効果のためには,事業者は,顧客に対し,預かった複数の品物の全てについて,1回の出力で,その画像を閲覧できるように提示する必要がある。 発明の実施の形態においても,預かり物の全ての画像データが読み込まれ,その結果,注文情報データベースから抽出した所定の注文情報と,預かり物画像データベースから読み込んだ衣類の画像データによって生成される「お預かり表」のウェブページに,抽出された全てのレコードに記述されている画像データパスの画像データが表\示され,全ての画像データを閲覧することが可能となる。
(ウ)前記(ア)及び(イ)を併せ考えると,「一覧出力形式」とは,ユーザ情報に対応する複数の品物の画像データが出力された場合,その画像データの全てが一覧できる状態,例えば,ディスプレーに表示される場合には,ひとつの画面上で閲覧できる状態(ディスプレーの大きさや画面の大きさにより,スクロールする必要が生じる場合を含む。)で,情報を外部へ出す方法を意味すると解される。
(2)構成要件1Dに対応する被告方法の構\成 証拠(甲6〜8,乙3)及び弁論の全趣旨によると,被告方法は,別紙被告方法目録記載第2の構成を備えていると認めることができる。 これによると,被告方法では,各画像データが「保管中アイテム」等のカテゴリーに分けられてサーバに記録されており,顧客があるカテゴリーのボタンをクリックすると,旧被告方法の場合,当該カテゴリーについてのみ,カテゴリー内の全ての画像が顧客側へ送信され,新被告方法の場合,当該カテゴリー内の1枚の画像のみが顧客側へ送信される。
(3)被告方法の構成要件1Dへの充足性
そうすると,被告方法は,ユーザ情報に対応する複数の品物の画像データの全てが一覧できる状態で,情報を外部へ出す方法をとっておらず,「一覧出力形式」との構成要件(構\成要件1D)を充足しない。 したがって,被告方法は,本件発明1から3までの構成要件を文言上充足すると認めることができない。\n

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平成25(ワ)7569  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年7月17日  東京地方裁判所

 特許権侵害訴訟において、均等侵害も否定されました。また特104条の3の規定により権利行使できないとも判断されています。
 本件特許の出願経過において,原告は,前記前提事実(2)エのとおり,引用文献1に基づく進歩性欠如等をいう本件拒絶理由通知に対し,特許請求の範囲の記載等を補正するとともに本件意見書を提出して,引用文献2及び同3はいずれもエジェクタを用いた技術であり,本件発明を示唆するものでない旨の意見を述べた。本件拒絶理由通知は,補正前の特許請求の範囲記載の発明と引用文献1記載の発明は,吸着具を上下動部材の先端に設けるか,正圧源からの正圧空気を着脱路と上下動部材を上下動させる空気圧シリンダに共用して供給するかの点で相違するが,これらの点は吸着搬送装置の技術分野において引例を示すまでもない周知技術であるとしつつ,括弧書きで「(不足であれば,例えば,引用文献2及び3等を参照されたい。)」と記載するものであった。原告は,本件意見書において,原告の特許出願に係る発明の構成,技術的意義等について説明し,引用文献1との比較をした後,引用文献2及び同3につき,これら文献に記載された技術内容や本件発明との具体的な相違点については何ら言及することなく,これ\nらが「エジェクタを用いた技術」であることのみを理由に,本件発明を示唆するものでないとの意見を述べた。(乙2〜5) ウ 上記イ(ア)〜(ウ)の事実関係によれば,本件発明は,大気開放ポートがなく,真空破壊のための空気が出力ポートのみから着脱路に流入し,かつ,出力ポートから供給される正圧空気が全て着脱路の吸着面から排出される従来技術を前提に,ワークを迅速に離脱させるとともに吹き飛ばしを防止して正確な位置決めをするという課題の解決のため,大気開放ポートを設けてこれを着脱路及び出力ポートと連通させることにより,着脱路が大気圧に達するまでは大気開放ポートからも空気を流入させてワークの離脱を迅速にし,これが大気圧に達した後は正圧空気が大気開放ポートからも流出するものとしてワークの吹き飛ばしを防止したものであり,この点の構成が本件発明の課題解決のための本質的部分に当たると認められる。そうすると,大気開放ポートがなくても排気口から大気の流入及び正圧空気の排出が行われるエジェクタを備えた構\成は,上記の前提を欠くものであり,本件発明が解決すべき課題も存在しないことになるから,本件発明とは本質的部分において相違すると解するのが相当である。 上記イ(エ)の出願経過における原告の意見は,エジェクタを用いたものは本件発明とは基本的な技術思想が異なる旨をいうものと解され,本件発明の本質的部分についての上記解釈を裏付けるものということができる。 そうすると,前記のとおりエジェクタにより構成されたロ号製品は本件発明の本質的部分を備えていないものとみるべきであり,前記1)の要件を充足しないから,ロ号製品について均等による特許権侵害は認められないと判断するのが相当である。

◆判決本文

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平成23(ワ)29178 損害賠償等請求事件  特許権 民事訴訟 平成26年06月06日 東京地方裁判所

 CS関連発明について、均等論の主張も否定されました。無効主張に対して、訂正の抗弁をしていましたが、訂正後のクレームも技術的範囲に属しないと判断されました。
 上記(1)に判示した均等侵害の成立要件のうち1)の要件に関し,特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,公開された明細書や出願関係書類の記載から把握される当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分をいうと解するのが相当である。これを本件発明についてみると,本件発明は,従来のネットワークゲームにあった課題,すなわち,くじ引きゲームのようなゲームでは,くじ引きという当たり又は外れによる偶然性に基盤が置かれるため,ユーザはゲームの進行度合いに応じて画像データの獲得率が向上する等の期待感が高まることがないため,ユーザに継続的にゲームを行わせることが困難である,という課題を解決するため,ユーザに「対価データ」の獲得を容易に行わせるとともに,ユーザに継続的にゲームを行わせるために,ユーザに対してゲームを行うことで直接に「対価データ」を付与するのではなく,「対価データ」を獲得するために必要な「ポイント」を付与するものとし,「対価データ」はその「ポイント」の対価としてユーザが獲得するものとした構\成が採用されたのであり,これが本件発明の課題解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分であるというべきである。そうすると,本件発明と被告サーバ装置との間において構成の異なる部分のうち,構\成要件A,D−1,E,F,G,D−2,C−2における「対価データ」を備える構成は,本件発明の本質的部分であるというべきである。他方,前記3のとおり,本件ゲームにおいては,「対価データ」に相当するものはなく,原告が主張する「強化された選手カード画像」は,強化ポイントによって新たにユーザに付与されるものではないから,本件発明の「対価データ」と本件ゲームの「強化された選手カード画像」の相違点は発明の非本質的部分と認めることはできない。したがって,均等侵害の成立要件の1)の要件を充たさないというべきである。

◆判決本文

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 >> 第1要件(本質的要件)
 >> 104条の3
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平成25(ワ)1470 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月13日 大阪地方裁判所

 均等の第5要件を満たさないとして均等侵害が否定されました。
 前記2(1)ウのとおり,原告は,本件特許出願の手続において,当初は,「活性成分及び界面活性剤を溶剤に溶解させた後,水を加える方法」以外の方法により製造された組成物も含むクレームについて出願をしていたものである。しかし,特許庁審査官からの拒絶理由通知に対応するため,敢えて上記方法により製造された組成物に限定する補正をし,それにより特許を受けたことが認められる。このように,特許出願の手続において敢えて限定したクレームについて,その技術的範囲を拡張する主張は包袋禁反言の原則により許されないものというべきである。したがって,被告製品の構成は本件特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるというべきである。\n

◆判決本文

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平成25(ネ)10017等 特許権侵害行為差止請求控訴,同附帯控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月26日 知的財産高等裁判所

 1審では、発明1については技術的範囲に属する、発明2については技術的範囲に属しないと判断されました。控訴審にて、原告は、発明2について均等を追加主張しました。発明2については均等侵害が認められました。また、原告の均等の追加主張も時期に後れた抗弁には該当しないと判断されました。 ただ、発明1について無効と判断され、全体としての損害額が減額されました。
 さらに,掬い上げ部材について,本件訂正明細書2には,「尚,該板状の掬い上げ部材5c1及び5c2の傾斜角度は,図示の例では,回転軸5aの中心軸線に対し20°傾斜せしめたものを示したが,一般に10°〜80°の範囲が採用できる。」(段落【0015】)と記載されているから,回転軸5aの中心軸線に対して10°〜80°の傾斜があれば足り,その傾斜角は一定でなければならないものではない。すなわち,回転軸5aの中心軸線に対する角度が小さくなればなるほど,走行方向に対し直交する長矩形の板状で構成される従来の掬い上げ部材に近いものとなり,掬い上げの効果は大きくなる一方,堆積物の外側への拡散が増大するが,回転軸5aの中心軸に対する角度が大きくなると,掬い上げの効果は小さくなるが外側への拡散を防止できることとなるものと推測されるところ,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材において,これらの角度は適宜選択できるものとなっているから,V字状のみに限定されず,より頂点への角度が緩やかな逆への字状のもの等も含まれる。また,段落【0006】には,「本発明のパドルの変形例として,図5に示すようなパドル5b″に構\成しても良い。すなわち,先の実施例のそのV字状の傾斜板5c1及び5c2の一端部を当接し,互いに直接溶接する代わりに,その両傾斜板5c1及び5c2の一端部間を適当な距離離隔し,そのスペース内に板状などの補強梁5jを介在させ,その両端部を傾斜板5c1及び5c2の一端部とを溶接し,その前後一対の板状の掬い上げ板部5c1及び5c2はハの字状に対称的に傾斜した傾斜板に構成しても良い。」との記載もあり,必ずしもV字状の掬い上げ部材に限られるものではないことが明らかである。さらに,段落【0009】には,「また,その本発明のパドル5b′の夫々の傾斜板5c1及び5C2は長矩形状とし,同一形状,寸法であることが一般であり好ましく,また,通常のパドル5bの板状掬い上げ部材5cと同一形状,寸法であることが一般であるが,これに限定する必要はない。また,その各傾斜板5c1及び5C2の長さ又は高さ寸法は所望に設定される。」と記載され,しかも,本件発明1の掬い上げ部材について,本件明細書1の段落【0005】に「その先端には堆積物を掬い上げる板状,爪状などの掬い上げ部材5cを有し,その回転により堆積物の撹拌とその正転,逆転による往復動撹拌を行う作用を有する。」と記載されているから,堆積物を掬い上げるための形状も,平面な「板状」に限られるものではない。\n
(ウ) 以上に照らせば,堆積物の外側への掬い上げ時の拡散,崩れなどの不都合を解消するために,前後一対の板状の掬い上げ部材が,それぞれ回転軸の軸方向に対し所定角度内側(オープン式発酵槽の長尺壁の方向)を向くようにし,掬い上げ部材の内側に向いて傾斜した部材の外側が,その前方に堆積する堆積物の長尺開放面側の外端堆積部に当接し,斜め内側に向けてこれを掬い上げるよう,傾斜板を所定角度内側に向けて配置したことが,本件訂正発明2を基礎付ける特徴的部分であると認められる。そして,本件訂正発明2の攪拌機は,往復動走行に伴って正又は逆回転するものであることから,掬い上げ部が外端堆積部に当接する場合は,回転軸に直交する前後方向のいずれの場合もあり得ることから,そのいずれの場合においても,堆積物を掬い上げる必要があり,そのために,掬い上げ部材を前後にかつ前後方向に対し傾斜させて配置し,その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き,その後側の傾斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向させて配設されたものと認められる。そうすると,掬い上げ部材が前後の両方向に傾斜されて配置されるとの構成も,本件訂正発明2を基礎付ける特徴的部分であるといえる。これに対して,本件訂正明細書2には,掬い上げ部材が2枚であることの技術的意義は,何ら記載されておらず,前記のとおり,傾斜板の外面が正又は逆回転時のそれぞれにおいて,外端堆積部に当接することが重要であるから,本件発明2の掬い上げ部材が2枚で構\成されることに格別の技術的意義があるとはいえず,本件訂正明細書2に記載されるように2枚の部材を直接溶接してV字状を形成することと,1枚の部材を折曲してV字状を形成することとの間に技術的相違はないから,この点は本質的部分であるとはいえない。また,前記のとおり,前後に傾斜させる角度が,回転軸5aの中心軸線に対して10°〜80°の角度であればよく,逆への字状が含まれることや,掬い上げる部材としても,平面な板状に限定されず,外端堆積部に当接して内側に掬い上げることができればよいことに照らすと,掬い上げ部材が,平面な板状で構成されていることも,本質的部分であるとはいえない。そうすると,上記アで述べた,本件訂正発明2のV字型掬い上げ部材が「2枚の板状の部材を傾斜させて配置されるもの」に対し,ロ号装置の掬い上げ部材105dは,「半円弧状の形状を有する1枚の部材から構\成されたもの」であるとの相違点は,本質的部分に係るものであるということはできない。
・・・・
原告日環エンジニアリングによる均等侵害の主張は,原判決において本件発明2の文言侵害が認められなかったことを受けて,平成25年5月23日に行われた当審の第1回口頭弁論期日以前に提出された同年4月30日付けの附帯控訴状において均等侵害に該当する旨が記載され,同年5月16日付け準備書面において均等侵害の5要件に関する主張が記載されていたものであり,その内容は,新たな証拠調べを要することなく判断可能なものであり,訴訟の完結を遅延させるものとはいえない。したがって,上記主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下はしない。なお,被告が,原告らが,原審において,請求原因を明確にせず,被告及び裁判所から1年間にわたり請求原因の補充を促され続けたことにより遅延した旨主張する部分については,仮にそのような事実があったとしても,上記判断を左右するものでない。\n

◆判決本文

◆原審:平成25年01月31日 東京地裁 平成21(ワ)23445

◆関連審取はこちら 平成25(行ケ)10105

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平成25(ネ)10091 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月13日 知的財産高等裁判所

 特許権侵害について均等侵害を主張しましたが、1審と同様に、意識的除外したものとして、均等侵害が否定されました。
 前記1(1)に認定した本件特許の出願経過を見ると,出願当初の請求項1は,弁杆の上下動あるいは連動とガス流通路の開閉との関係を特に限定していなかったところ,特許庁審査官から,出願に係る発明全体が公知文献から容易想到であるとの拒絶理由を通知され,同発明の構成のうち「押圧杆によりガスの供給を可能\とする点」については周知技術であるとして引例7の存在を指摘された。控訴人は,これを受けた補正2)の際には,弁杆の連動とガス流通路の開閉との関係について特に補正をせず,専ら本件特許発明が引例7等とは全く異なる技術的課題の解決を目的としているなどと主張して,本件特許発明が容易想到であるとする判断を争ったものの,かかる主張は採用されず,また,本件特許発明の構成が組合せの困難なものであると指摘した補正3)についても,誤記があったことから却下された。そこで,控訴人は,補正4)において,前記1(1)クのとおり特許請求の範囲を補正するとともに,補正後の請求項1の(f)は,補正前の構成である,「回転により前記噴出口頭部と連結されたノズル部の弁杆を連動させて炭酸ガス噴出を調整する円形調整用摘子」の構\成を,さらに具体化し限定したものであると説明し,その結果,かかる構成については特許庁審査官から特許要件についてさらなる指摘を受けることなく,特許査定に至ったものである。\n
(2) 上記(1)の経過に加え,前記1(3)認定の公知技術によれば,引例7に係る発明は,弁杆に相当するバルブが上昇した際にガス流通路が閉塞され,バルブが下降した際にガス流通路が開通する機構を有するものであったことに照らせば,控訴人は,引例7の存在を理由とする拒絶理由を回避するために,本件特許発明における弁杆の連動とガス流通路の開閉との関係を補正4)のように補正することにより,引例7が開示するのと同様の構成,すなわち弁杆が上昇した際にガス流通路が閉塞され,弁杆が下降した際にガス流通路が開通する構\成を除外したものと認めることができる。よって,控訴人は,補正4)において,本件特許発明の構成から引例7が開示するのと同様の上記構\成を意識的に除外したということができる。控訴人は,本件特許出願に対する拒絶理由通知では,弁杆下降時にガス流通路が形成され,弁杆上昇時にガス流通路が遮断される構成を含むことが拒絶理由として具体的に指摘されたことはなく,控訴人も,引例7に係る拒絶理由を回避するために,ガス流通路の開閉機構\から上記の構成を除外したことはなかったと主張する。しかし,拒絶理由通知に控訴人の指摘するような具体的な指摘がなく,また,控訴人が,拒絶理由を回避するために補正を行う旨を明示的に述べなかったとしても,上記のとおりの経過や引例7の内容に照らせば,控訴人が,拒絶理由を回避するために,本件特許発明の構\成から引例7が開示するのと同様の上記構成を意識的に除外したと認めることができ,他にかかる補正を行った理由について首肯すべき事情は見当たらないから,控訴人の主張は理由がない。」\n

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◆原審はこちらです。平成24(ワ)7151

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 >> 第5要件(禁反言)

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平成24(ワ)7887 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年02月06日 大阪地方裁判所

 均等の第4要件を満たさないとして、均等侵害が否定されました。
 以上によれば,被告製品の各構成は,本件優先日において雨樋の技術分野でごく一般的であった構\成を単に組み合わせたにすぎないものであり,これらごく一般的で公知の構成を組み合わせることについて何らかの阻害要因等が存在したことを窺わせる主張立証も全くない。そうすると,被告製品について,当業者が公知技術から容易に推考できたものではないと認めることはできないから,被告製品について,本件特許発明と均等なものとしてその技術的範囲に属するということはできない。\n

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平成21(ワ)32515 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年01月30日 東京地方裁判所

 第1要件(本質的部分)および第5要件(意識的除外)により均等侵害が否定されました。
 上記の補正にもかかわらず,上記拒絶理由通知の理由に より拒絶査定(乙179の33)がされたため,原告は,拒絶査定不服審判の審判請求書(乙19)において,本件発明は「市外局番と市内局番と連続する予め電話番号が存在すると想定される番号の番号テーブルを作成しハードディスクに登録する手段」が中核的構\成要件であると述べるとともに,平成19年6月15日提出の補正書(乙179の37)により,上記部分を「市外局番と市内局番と連続する予め電話番号が存在すると想定される番号の番号テーブルを作成しハードディスクに登録する手段」と補正し,本件特許の特許登録がされるに至ったこと,以上の事実が認められる。ウ 上記事実関係によれば,本件発明の本質的部分は,実在する電話番号を収集しその利用状況を調査するために,実在すると想定される市外局番及び市内局番とこれに連続する4桁の番号からなる全ての電話番号の番号テーブルを作成してこれをハードディスクに登録するという構成を採用した点にあると解される。したがって,特許請求の範囲に記載された構\成と被告装置5の相違点は,本件発明の本質的部分に当たるということができる。さらに,上記出願経過に照らせば,原告は,拒絶理由を回避するために,特許請求の範囲を「ハードディスクに登録する手段」を有する構成に意識的に限定したものと認められる。したがって,均等の第1要件及び第5要件を欠くから,被告装置5は,本件発明と均等なものとはいえず,その技術的範囲に属しないというべきである。\n
(4) 以上のとおり,被告装置2〜4は,携帯電話の調査に係る構成を除き,本件発明の技術的範囲に属すると認められるのに対し,被告装置1及び5は本件発明の技術的範囲に属するとは認められないと判断することが相当である。\n

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 >> 第5要件(禁反言)

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