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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

均等

令和4(ネ)10113  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和5年10月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 1審の東京地裁は、構成要件Biiを充足しない、無効理由あり(サポート要件)と判断しました。控訴人は、控訴審で均等主張を追加しましたが、知財高裁は、均等侵害にも該当しないと判断しました。

イ 本件明細書に記載された従来技術、発明の課題及び課題を解決するため の手段は、以下のとおりである(前記引用に係る補正後の原判決「事実 及び理由」第4の1(2)のとおりであるが、再掲する。)。
(ア) 従来技術では、サポーター本体に織り込まれているゴムの収縮力や 織り方を変えることで患部に対する圧迫、押圧の強度を変化させてい たが、膝関節の任意の箇所に必要な押圧を加えることができないとい う問題があった(【0002】)。先行特許文献に記載された逆U字 型のパッドを備える構成では、膝蓋骨を吊り上げて大腿四頭筋の機能\ を補助することができず、縦方向と横方向の伸長率を変化させてずれ にくくする構成はサポーター本来の機能\とは関係がないという問題が あった(【0003】)。
(イ) 本件発明は、膝蓋靭帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を保持して、膝関節 を良好に固定するコンプレッションサポーターを提供することを発明 の課題とし(【0005】)、この課題を解決するための手段として、 本件発明の構成要件A〜Cの構\成を採用した(【0006】)。
(ウ) これにより、本件発明は、適切に膝蓋靱帯を圧迫し、膝蓋骨を保持 して、膝関節を良好に固定し得るコンプレッションサポーターを提供 するという効果を奏する(【0020】)。
ウ 控訴人は、本件明細書の記載に基づき、本件発明の課題は「膝蓋靭帯を 圧迫し、かつ、膝蓋骨を保持して、膝関節を良好に固定するコンプレッ ションサポーターを提供すること」であり、当該課題は、低伸縮領域で あるほぼU字型の「正面吊り領域」が「膝蓋靭帯を圧迫」すると共に 「膝蓋骨を吊り上げ」て「大腿四頭筋の機能を補助」することで解決さ\nれるものであり(【0010】、【0011】)、このことから、本件 発明の本質的部分は、「低伸縮領域として、膝蓋靭帯を圧迫し、かつ、 膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋の機能を補助するために、膝蓋骨の下部\nを取り囲むほぼU字型に、本体正面に設けた正面吊り領域」を備えると いう構成(構\成要件Bi)であると主張する。
エ しかし、本件特許の出願前に頒布された乙4文献には、別紙4「乙4文 献の記載」の事項が記載されている(乙4及びその訳文)。 これらの記載から、乙4文献には、伸縮性材料からなり着脱容易な膝サ ポータ(第1の1)であって、シリコーン材料、ゴムなどの弾性材料か ら形成され、膝蓋骨用開口部の横及び下から膝蓋骨の下部を取り囲み、 下部膝蓋靭帯の上に位置するU字形状パッドを備え付けることにより (第1の1、2、第2の1、3)、下部膝蓋靭帯の領域に押圧力を生じ させ、膝蓋骨の負荷を軽減するもの(第2の2、4)が開示されている と認められる。 なお、上記「パッド」は、伸縮性材料からなり着脱容易な膝サポータに おいて、シリコーン材料、ゴムが例示される弾性材料から形成され、こ れが位置する領域に押圧力を生じさせるものであるから、上記伸縮性材 料より伸縮性が低いと認められる。
また、乙4文献には、膝蓋骨を保持又は「吊り上げ」ることは明記され ていないが、本件発明においても「膝蓋骨を吊り上げ、大腿四頭筋を補 助する」のは「膝蓋骨の下部を取り囲むほぼU字型に、本体正面に設け た正面吊り領域」であり(構成要件Bi、本件明細書【0006】)、 この「正面吊り領域」は、「本発明においては、低伸縮領域として、膝 蓋靭帯を圧迫するために、膝蓋骨17の下部を取り囲むほぼU字型…に、 本体正面に設けた正面吊り領域を具備している。低伸縮領域である正面 吊り領域を、ほぼU字型に形成することにより、膝蓋骨を吊り上げ、大 腿四頭筋を補助するものである。」(【0010】)、「膝蓋靭帯15 を圧迫するために本体正面に設けた正面吊り領域22を具備する。正面 吊り領域22は、膝蓋骨17の下部を取り囲む湾曲部を有するほぼU字 型…に設けられており、膝蓋骨17の下部を取り囲む湾曲部を有するこ とにより、前述のように膝蓋骨17を吊り上げ、大腿四頭筋に好適な作 用を及ぼすものである。」(【0023】)というものである。
オ 以上の乙4文献の開示事項を考慮すると、本件明細書に従来技術が解決 できなかった課題として記載されているところは、出願時の従来技術に 照らし客観的にみて不十分というべきである。\nそして、乙4文献記載の従来技術をも参酌すると、従来技術に「膝関 節の任意の箇所に必要な押圧を加える」ことができないという問題があ り、「膝蓋靭帯を圧迫し、かつ、膝蓋骨を保持して、膝関節を良好に固 定するコンプレッションサポーターを提供する」という課題が未解決で あったということはできず、少なくとも、従来技術と比較した本件発明 の貢献の程度は大きいものではないと評価せざるを得ない。以上によれば、本件発明の本質的部分は、本件発明に係る特許請求の範囲の記載とほぼ同義のものと認めるのが相当であり、少なくとも、樹脂より成る低伸縮性材料を本体に固着した低伸縮領域の構成を定める構\成要件Cは本件発明の作用効果に直結する部分であって、その本質的部分に含まれるというべきである。

◆判決本文

原審はこちら。

◆令和3(ワ)11507

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平成25(ワ)7478  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟__全文__ 平成28年10月14日  東京地方裁判所

 随分前の事件ですが、漏れていたのでアップします。東京地裁(40部)は、半導体基板の製造方法について、「第二の割り溝」を有しないとして、文言侵害は否定しましたが、均等と認めました。

また,本件明細書等には,「第二の割り溝」を形成する方法について, 手法は特に問わないとしており,エッチング,ダイシング,スクライブ 等の手法を用いることが可能であるとされ,このうち,線幅を狭くする\nことが可能であるなどの理由から,スクライブが特に好ましいとするに\nとどまっており(段落【0009】),「第二の割り溝」に関して,そ の形成の方法は特に限定されていない。 そして,本件においては,本件明細書等に従来技術が解決できなかっ た課題として記載されているところが,出願時の従来技術に照らして客 観的に見て不十分であるという事情は認められない。\n
以上のような,本件特許の特許請求の範囲及び明細書の記載,特に明 細書記載の従来技術との比較から導かれる本件発明の課題,解決方法, その効果に照らすと,本件発明の従来技術に見られない特有の技術的思 想を構成する特徴的部分は,サファイア基板上に窒化ガリウム系化合物\n半導体が積層されたウエハーをチップ状に切断するに当たり,半導体層 側にエッチングにより第一の割り溝,すなわち,切断に資する線状の部 分を形成し,サファイア基板側にも何らかの方法により第二の割り溝, すなわち,切断に資する線状の部分を形成するとともに,それらの位置 関係を一致させ,サファイア基板側の線幅を狭くした点にあると認める のが相当であり,サファイア基板側に形成される第二の割り溝,すなわ ち,切断に資する線状の部分が,空洞として溝になっているかどうか, また,線状の部分の形成方法としていかなる方法を採用するかは上記特 徴的部分に当たらないというべきである。
ウ 被告方法は,前記2で認定したように,サファイア基板上に窒化ガリ ウム系化合物半導体が積層されたウエハーをチップ状に切断するに当た り,半導体層側にエッチングにより切断に資する線状の部分を形成し, サファイア基板側にもLMA法のレーザースクライブによって切断に資 する線状の変質部を形成するとともに,それらの位置関係を一致させ, サファイア基板側の線幅を狭くしているのである。 そして,前記2(1)イで説示したとおり,LMA法でサファイア基板 を加工した場合,溶融領域が発生し急激な冷却で多結晶化し,この多結 晶領域は多数のブロックに分かれるが,加工領域中央に実質の幅が極端 に狭い境界が発生し,この表面に垂直な境界線の先端に応力集中するの\nで割れやすくなることが認められる。 そうすると,被告方法は本件発明の従来技術に見られない特有の技術 的思想を構成する特徴的部分を共通に備えているものと認められる。\nしたがって,本件発明と被告方法との相違部分は本質的部分ではない というべきである。
エ 被告らの主張に対する判断
この点に関して被告らは,LMA法のレーザースクライブについて, 対象と「非接触」であるため,クラック等が発生せず,かつ,ほぼ垂直 に分割されることから,本件発明の課題自体が存在しないことになり, そのような方法を用いたとしても,本件発明の本質的部分に当たらない 旨主張する。
そして,乙14(再公表特許第2006/062017号。以下「乙\n14文献」という。)の段落【0039】には,【図9】,【図10】 に関して,LMA法により形成された変質領域に隣接する正常領域のブ レイク面が略垂直である旨の記載がある。 しかしながら,他方で,乙14文献の段落【0043】等には,同じ 【図9】,【図10】に関して,デフォーカス値によっては,正常領域 のブレイク面の垂直方向につき多少の傾斜や段差が存在する旨の記載も あるのであって,LMA法のレーザースクライブであるからといって, 切断面が斜めになることで不良品が生じるという本件発明の課題が発生 しないと認めることはできない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
オ 以上のとおりで,被告方法は,均等の第1要件を充足すると認められ る。

◆判決本文

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平成28(ワ)21762等  特許権侵害差止等請求事件,特許権侵害差止請求事件,特許権侵害に基づく損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成31年3月28日  東京地方裁判所

随分前の事件ですが、漏れていたのでアップします。東京地裁(47部)は、文言侵害については「サーボバンドを特定するためのデータをエンコードする」との構成を欠くとしたものの、均等と認めて合計約2億円の損害賠償を認めました。

ウ 以上からすれば,前記アのとおり,構成要件Bの「サーボバンドを特定\nするためのデータをエンコードする」とは,「サーボバンドを特定するた めのデータ」を「0」又は「1」の形式に変換することと解すべきところ, 被告製造方法において,上記の形式の変更を行っていることを示す証拠は 何ら存在しない
・・・
第1要件について
本件明細書に記載された従来技術は,隣接するサーボバンドのサーボパ ターンをテープ長手方向にオフセットさせ,それらのサーボバンドの信号 を同時に読み取って比較することで,サーボバンドの特定を行うものであ り(段落【0002】),片側のサーボ信号の読み取りが一時的又は恒久 的にできなくなった場合,サーボバンドの特定を行うことができなかった という課題があった(段落【0004】)。
そこで,請求項1発明は,隣接するサーボバンドに書かれたサーボ信号 を比較せずに,サーボバンドを特定するために,各サーボバンド内に書き 込まれた各サーボ信号に,そのサーボ信号が位置するサーボバンドを特定 するためのデータがそれぞれ埋め込まれ,前記各サーボ信号は,一つのパ ターンが非平行な縞からなり,各データは,前記縞を構成する線の位置を,\nサーボバンド毎にテープ長手方向にずらすことにより前記各サーボ信号中 に埋め込まれているようにした磁気テープであり(段落【0007】), 本件発明は,その製造方法である(段落【0017】)。
そうすると,本件発明の本質的部分は,構成要件A−3「前記各サーボ信号は,一つのパターンが非平行な縞からなり,各データは,前記縞を構\成する線の位置を,サーボバンド毎にテープ長手方向にずらすことにより前記各サーボ信号中に埋め込まれていることを特徴とする磁気テープ」にあるといえ,構成要件B「サーボバンドを特定するためのデータをエンコードする第一工程と,」は本質的部分には当たらないというべきである(被\n告らも特に争っていない。)。よって,被告製造方法は,均等の第1要件を充足する。

◆判決本文

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平成28(ワ)25436  特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和2年9月24日  東京地方裁判所

 随分前の事件ですが、漏れていたのでアップします。争点はたくさんあります。裁判所は、均等の主張を認め、差止と約10億円の損害賠償を認めました。判決文は別紙を入れると400頁ありますので、目次付きです。

前記(2)ウのとおり,本件明細書2記載の従来技術と比較して,本件発明2 における従来技術に見られない特有の技術的思想(課題解決原理)とは,従来,グ ルタミン酸生産に及ぼす影響について知られていなかったコリネ型細菌のyggB 遺伝子に着目し,C末端側変異や膜貫通領域の変異といった変異型yggB遺伝子 を用いてメカノセンシティブチャネルの一種であるYggBタンパク質を改変する ことによって,グルタミン酸の生産能力を上げるための,新規な技術を提供するこ\nとにあったというべきである。また,前記(2)エで検討したとおり,本件明細書2に おける従来技術の記載が客観的に見て不十分であるとは認められない。\n
(ウ) 前記(3)アのとおり,19型変異使用構成は,本件発明2−5に含まれる,\n本件特許2の請求項1又は4を引用する請求項6のうち(e)の変異型yggB遺 伝子が導入されたコリネ型細菌を使用する構成であり,前記(イ)の本件発明2にお ける特有の技術的思想ないし課題解決原理に照らせば,19型変異使用構成の本質\n的部分は,「コリネ型細菌由来のyggB遺伝子に,コリネバクテリウム・グルタ ミカム由来のyggB遺伝子におけるA100T変異に相当する変異を導入し,当 該変異型yggB遺伝子を用いてコリネ型細菌を改変し,ビオチンが過剰量存在す る条件下においてもグルタミン酸の生産能力を上げる点」にあると認められる。\n
(エ) 被告は,出願経過,本件優先日2当時の技術水準,19型変異使用構成の効\n果から,19型変異使用構成の本質的部分の認定に当たっては,特許請求の範囲の\n記載の上位概念化をすべきでなく,特許請求の範囲に記載された「変異後のygg B遺伝子の配列である配列番号22という特定のアミノ酸配列におけるA100T 変異」に限定して認定されるべきであると主張する。
しかしながら,前記(2)ア及びイの本件明細書2の記載内容によれば,本件発明2 は,特定の配列のyggB遺伝子を有するコリネ型細菌にのみ存在する課題を対象 とするものではなく,また,その解決原理としても,グルタミン酸生産能力を上げ\nるために,C末端側変異や膜貫通領域の変異といった変異型yggB遺伝子を用い てメカノセンシティブチャネルの一種であるYggBタンパク質を改変するという 新規な技術を導入するというものであったから,本件発明2の請求項1や請求項4 において変異を導入する前のyggB遺伝子のアミノ酸配列が列挙され,請求項6 において変異後のyggB遺伝子のアミノ酸配列が列挙されていることを考慮して も,本件発明2及びそれに含まれる19型変異使用構成の本質的部分を認定するに\n当たっては,yggB遺伝子が由来するコリネ型細菌の菌種,yggB遺伝子全体 の変異前の具体的配列,あるいは,A100T変異に相当する変異を導入した後の yggB遺伝子の具体的配列は,その本質的部分ではないものと認めるのが相当で ある。これは,被告が指摘するように,本件特許2の出願当初の請求項1にはyg gB遺伝子が由来するコリネ型細菌の菌種や変異前後のyggB遺伝子のアミノ酸 配列が特定されていなかったところ,補正によって,現在の請求項1のようにyg gB遺伝子のアミノ酸配列の配列番号が,コリネバクテリウム・グルタミカム(ブ レビバクテリウム・フラバムを含む。)又はコリネバクテリウム・メラセコーラに 由来する配列番号6,62,68,84及び85に特定されるようになったこと(【0 033】,乙80〜84),請求項1に記載された配列番号6,62,68,84 及び85のアミノ酸配列が相互に相同性が高いこと(乙85)を考慮しても同様で ある。また,被告は,出願経過に関連して,本件特許2の再訂正後の請求項の記載 も考慮すべきとも主張するが,当該訂正の内容は,少なくとも訂正前の本件発明2 の本質的部分の認定には影響しないというべきである。 そのほか,本件優先日2当時の技術水準や19型変異使用構成の効果についての\n被告の主張が採用できないことは,前記(2)エ及び(3)イのとおりであり,これらを 理由として,19型変異使用構成の本質的部分を特許請求の範囲に記載された変異\n前後のyggB遺伝子の具体的配列に限定すべきともいえないから,この点の被告 の主張も,前記(ウ)の判断を左右するものではない。
イ 相違点1について
前記ア(エ)のとおり,19型変異使用構成の本質的部分については,yggB遺伝\n子が由来するコリネ型細菌の菌種,yggB遺伝子全体の変異前の具体的配列,あ るいは,A100T変異に相当する変異を導入した後のyggB遺伝子の具体的配 列は,その本質的部分ではないものと認めるのが相当であることに加え,以下の(ア) 及び(イ)の点を考慮すれば,相違点1に係る違い,すなわち,導入されている変異型 yggB遺伝子が由来する細菌の種類の違い及びそれによるyggB遺伝子の具体 的な配列の違いは,19型変異使用構成の本質的部分とはいえない。\n
・・・
(エ) これらの点からすれば,相違点3に係る違い,すなわち相違点2に係るA9 8T変異に加えて,被告製法4の菌株ではV241I変異が導入されているという 点は,本件明細書2で開示された本件発明2の課題解決原理である膜貫通領域の変 異ないしC末端側変異と関連しない部位の1つのアミノ酸に保存的置換を加えるも のであり,A98T変異に加えることで課題解決に影響するものではないから,1 9型変異使用構成の本質的な部分における相違点ではない。\nオ したがって,19型変異使用構成と被告製法4との相違点1ないし3は,い\nずれも,特許発明の本質的部分ではないから,(12)及び(13)の菌株を使用する被告製法 4は均等の第1要件を充足すると認められる。

◆判決本文

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令和3(ワ)33996  特許権侵害差止請求事件  特許権  民事訴訟 令和5年7月7日  東京地方裁判所

特許権侵害訴訟です。第1要件を満たさないとして、均等侵害も否定されました。

(1) 均等の第1要件にいう特許発明における本質的部分とは、当該特許発明の 特許請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を 構成する特徴的部分であると解すべきである。\nそして,上記本質的部分は,特許請求の範囲及び明細書の記載に基づいて、 特許発明の課題及び解決手段とその効果を把握した上で、特許発明の特許 請求の範囲の記載のうち、従来技術に見られない特有の技術的思想を構成\nする特徴的部分が何であるかを確定することによって認定されるべきであ る。 また、第1要件の判断、すなわち対象製品等との相違部分が非本質的部分 であるかどうかを判断する際には、上記のとおり確定される特許発明の本 質的部分を対象製品等が共通に備えているかどうかを判断し、これを備え ていると認められる場合には,相違部分は本質的部分ではないと判断すべ きである。
・・・
これらの記載に照らすと、本件発明は、把持部を水平方向に軸回転させ て負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向に付勢する負荷を 軽くすることを可能にする構\成を採用することにより、使用者が、「弛緩」 と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングを出現させる ことができ、各筋肉群が「弛緩−伸張−短縮」のタイミングを得て、連動 性よく動作を行うことができることを可能にするとともに、両腕を屈曲さ\nせて把持部を引き下げることに伴い、両腕を外側に広げることに対する抗 力が減少する構成を採用することにより、筋の「共縮」を防ぐことを可能\ にし、もって、筋肉の硬化を伴うことなく、筋肉痛や疲労など身体への負 担が少なく、柔軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができ るトレーニング器具を提供し、従来技術の課題を解決するものといえる。 そうすると、これらの各構成については、従来技術に見られない特有の技\n術的思想を構成する特徴的部分であると認めることができる。\n
そして、本件明細書においては、上記の各構成のうち、上記把持部を軸\n回転させて負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向に付勢す る負荷を軽くすることを可能にする構\成について、「把持部60を昇降揺動 部材50に対して軸回転することにより、回転伝達部91及びクランク機 構部92を介して摺動軸57が上下動することに伴い、クランプにより連\n結されたウェイト31が上下動する。」(【0026】)、「把持部60を昇降 揺動部材50に対して初期状態である略正面方向から外側水平方向へ回転 付勢力に抗して軸回転することにより、摺動軸57が昇降揺動部材50に 対して下方向に摺動し、前記クランプにより連結されたウェイト31が引 き上げられる。」(【0027】)との記載がある。
これらの記載に照らすと、本件発明の特許請求の範囲において、上記把 持部を軸回転させて負荷付与部の負荷を引き上げ、把持部にかかる上方向 に付勢する負荷を軽くすることを可能にする構\成に対応する構成は、把持\n部の回転運動を伝達し、同伝達された回転運動を摺動軸の上下動に変換す るクランク機構部を具備する負荷伝達部であり、構\成要件Gの構成である\nと認められる。 本件においては、被告製品が構成要件Gに相当する構\成を備えていない こと(相違点B)に争いがなく、本件発明の本質的部分を被告製品が共通 に備えているとは認められないから、本件発明と被告製品の相違点Bが本 質的部分ではないということはできず、被告製品は、均等の第1要件を満 たさない。
その他にも原告はるる主張するが、いずれも上記結論を左右しない。 以上によれば、被告製品は、その余の要件を検討するまでもなく、本件 発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとはいえないから、\n本件発明の技術的範囲に属するものとは認められない。

◆判決本文

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令和3(ワ)10032    特許権  民事訴訟 令和5年6月15日  大阪地方裁判所

 特許権侵害訴訟にて、均等の第2、4要件を満たさないとして、技術的範囲に属しないと判断されました。また原告の請求項2にかかる発明についての侵害主張については、時期に後れた主張であるので却下されました。

そして、対象製品等が特許発明の構成要件の一部を欠く場合であっても、当該\n一部が特許発明の本質的部分ではなく、かつ前記均等の他の要件を充足するとき は、均等侵害が成立し得るものと解される。 これに対し、被告は、対象製品等が構成要件の一部を欠く場合に均等論を適用\nすることは、特許請求の範囲の拡張の主張であって許されない旨を主張するが、 構成要件の一部を他の構\成に置換した場合と構成要件の一部を欠く場合とで区\n別すべき合理的理由はないし、本件において、原告は、被告製品には構成要件 C の「消弧材部」に対応する消弧作用を有する部分が存在し、置換構成を有する旨\n主張していると解されるから、被告の前記主張を採用することはできない。
イ 第1要件ないし第3要件
原告は、別紙「均等侵害の成否等」の「原告の主張」欄記載のとおり、本件発 明の本質的な構成部分は構\成要件のうち A-1 ないし A-3、B-3 及び B-4 であり、 構成要件 C は本件発明の課題解決方法に資するものではないとして、第1要件は 満たす旨主張するところ、被告もこれを積極的に争っていない。
一方、第2要件及び第3要件に関し、原告は、被告製品の構成 c の「接着剤で 接着することにより形成された密閉された空間26」が本件発明の構成要件 C の 「消弧材部」と同一の作用効果(消弧作用)を有することを示す実験報告書等(甲 13、14、32)を証拠提出する。これらは、被告製品と同じ構造を有する製\n品につき、ヒューズエレメント部が密閉構造である場合と、非密閉構\造である場 合又は端子一体型ヒューズ素子を取り出して遮断試験用基板に実装して遮断試 験を行った場合の、各アーク放電の持続時間を対比した結果、密閉構造のものは、\n非密閉構造等のものに比べ、同持続時間が2分の1ないし3分の1になったとい\nうものである。しかし、これらは、被告製品の「密閉された空間」と本件発明の 「消弧材部」の各作用効果の対比自体を行うものではないことに加え、被告が証 拠提出する試験報告書(乙16)によれば、被告製品、被告製品に消弧材部を設 けたヒューズ及び被告製品のヒューズ素子のみを対象として、アーク放電の持続 時間を記録したところ、被告製品が最も同時間が長かったという結果であったこ とが認められ、被告製品とヒューズ素子の各アーク放電の持続時間について、原 告が提出する実験報告書(甲14)と相反する結果となっている。そうすると、 原告が提出する前記証拠その他の事情等から、被告製品の構成 c が本件発明の構\n成要件 C と同様の作用効果を有するとまでは認め難いから、少なくとも第2要件 が満たされるとはいえない。
ウ 第4要件
前記イの点は措くとしても、以下のとおり、第4要件も満たさない。 被告は、被告製品の構成は、本件発明の特許出願時における公知技術(乙1発\n明)と同一又は当業者が乙1発明から出願時に容易に推考可能であった旨を主張\nする。
(ア) 乙1公報は、発明の名称を「表面実装超小型電流ヒューズ」とする公開特\n許公報であり、発明の詳細な説明には次の記載がある(乙1)。
・・・・
(イ) 乙1発明の構成\n
乙1発明がα-1、β-1 ないしβ-4 及びδの構成を有することは当事者間に争\nいがなく(別紙「均等侵害の成否等」の「第4要件」欄)、乙1公報の段落【0008】 【0016】【0018】【0020】及び【図2】(A)の記載内容に照らすと、α-2 及び γの構成を有するものと認められる。\nまた、被告主張のα-3 の構成(金属電極2の可溶線挟持部22に挟み込まれる\nことにより一体形成されている電極一体型ヒューズ)に関し、原告は、電極とヒ ューズが同一の金属によって一体的に形成されているとの趣旨であれば否認す ると述べるところ、乙1公報には、可溶線5は、両端部を金属電極2に挟持され 本体1の空間6に架張された可溶線を示す旨(同【0016】)、可溶線5の端部は 第1板部221と第2板部222とにより挟み込まれ、金属電極2に固定される 旨(同【0018】)の記載があることから、可溶線5と金属電極2は異なる部材で 構成され、可溶線5は、可溶線挟持部22において挟持されることによって金属\n電極2に接続されているものと認められる(α-3’)。 以上から、乙1発明の構成は、別紙「裁判所の認定」の「乙1発明の構\成」欄 記載のとおりとなる。
(ウ) 被告製品の構成\n
被告製品が a-1 ないし b-4 及び d の構成を有することは当事者間に争いがな\nく、構成 c を有することも実質的に争いがないから、被告製品の構成は、別紙「裁\n判所の認定」の「被告製品の構成」欄記載のとおりとなる。\n
(エ) 被告製品と乙1発明の対比
被告製品の a-1、a-2 及び b-1 ないし d の各構成は、それぞれ、乙1発明のα1、α-2 及びβ-1 ないしδの各構成と同一であるものと認められる。\nそこで、被告製品の構成 a-3 と乙1発明の構成α-3'が一致するかを検討する。 「一体」の字義は、「一つになって分けられない関係にあること」であるところ (広辞苑第七版)、被告製品は、別紙「被告製品写真」の3及び4に示されるよ うに、ヒューズ本体4と2つの平板状部10の部材が連続し、一つになって分け られないように形成されていることが明らかである。一方、乙1発明の可溶線5 と金属電極2は、異なる部材で構成され、また、可溶線5は、可溶線挟持部22\nにおいて挟持されることによって金属電極2に接続されていることから、可溶線 5と金属電極2は、同一材料で形成されておらず、一つになって分けられないよ うに形成されてもいない。 したがって、可溶線5と可溶線挟持部22は一体に形成されているとは認めら れず、乙1発明は構成 a-3 を有していない点で被告製品と相違しており、被告製 品は、公知技術と同一であるとはいえない。
(オ) 乙1発明と乙3発明に基づく容易推考性
被告は、乙1発明が構成 a-3 を有していない点で被告製品と相違しても、被告 製品の構成 a-3 は、乙1発明の構成α-3’を乙3発明の構成に置換することによ\nり、当業者にとって容易に推考可能である旨を主張する。\n
a 乙3公報は、発明の名称を「面実装型電流ヒューズ」とする公開特許公報で あり、発明の詳細な説明には次の記載がある(乙3)。
(a) 技術分野
「本発明は、過電流が流れると溶断して各種電子機器を保護する面実装型電流 ヒューズに関するものである。」
・・・・
(b) 背景技術
「従来のこの種の面実装型電流ヒューズは、図7に示すように、セラミックか らなるケース1と、このケース1の内部に形成された空間部2と、前記ケース1 の両端部に形成された外部電極3と、この外部電極3と電気的に接続された断面 が円形のヒューズエレメント部4とを備え、前記ヒューズエレメント部4の溶断 部5を前記ケース1の内部に形成された空間部2内に配設した構成としていた。」\n(【0002】)
(c) 発明が解決しようとする課題
「上記した従来の面実装型電流ヒューズにおいては、ヒューズエレメント部3 として同じ線径のものや同じ材料のものを使用しているため、線径や材料によっ て決まる溶断電流等の溶断特性を調整することができないという課題を有して いた。」(【0004】) 「本発明は上記従来の課題を解決するもので、溶断特性の調整ができる面実装 型電流ヒューズを提供することを目的とするものである。」(【0005】)
(d) 課題を解決するための手段
「本発明の請求項1に記載の発明は、絶縁性を有するケースと、このケースの 内部に形成された空間部と、前記ケースの両端部に形成された外部電極と、この 外部電極と電気的に接続され、かつ前記空間部内に溶断部を配設したヒューズエ レメント部とを備え、前記溶断部を前記ヒューズエレメント部の一部を切削する ことによって設けたもので、この構成によれば、ヒューズエレメント部の切削に\nよって溶断部の線径を調整できるため、溶断特性を調整することができるという 作用効果が得られるものである。」(【0007】) 「本発明の請求項3に記載の発明は、特に、ヒューズエレメント部と外部電極 とを一体の金属で構成したもので、この構\成によれば、ヒューズエレメント部と 外部電極とを接続する必要がなくなるため、生産性を向上させることができると いう作用効果が得られるものである。」(【0009】)
(e) 発明の効果
「以上のように本発明の面実装型電流ヒューズは、絶縁性を有するケースと、 このケースの内部に形成された空間部と、前記ケースの両端部に形成された外部 電極と、この外部電極と電気的に接続され、かつ前記空間部内に溶断部を配設し たヒューズエレメント部とを備え、前記溶断部を前記ヒューズエレメント部の一 部を切削することによって設けているため、この切削によって溶断部の線径を調 整でき、これにより、溶断特性を調整することができるという優れた効果を奏す るものである。」(【0016】)
(f) 発明を実施するための最良の形態
「図4、図5において、本発明の実施の形態2が上記した本発明の実施の形態 1と相違する点は、ヒューズエレメント部15と外部電極13とを一体の金属で 構成した点である。この場合、外部電極13はケース11の底部11aの端面お\nよび裏面に沿うように折り曲げている。」(【0035】) 「上記構成においては、ヒューズエレメント部15と外部電極13とを一体の\n金属で構成しているため、ヒューズエレメント部15と外部電極13とを接続す\nる必要はなくなり、これにより、生産性を向上させることができるという効果が 得られるものである。」(【0036】) 【図4】 【図5】
b 容易推考性
(a) 乙3公報の発明の詳細な説明によれば、乙3発明は面実装型電流ヒュー ズに関する発明であり(段落【0001】)、従来の面実装型電流ヒューズにおいて は、ヒューズエレメント部4として同じ線径のものや同じ材料のものを使用して いるため、線径や材料によって決まる溶断電流等の溶断特性を調整することがで きないという課題を有していたこと(同【0004】)に対し、絶縁性を有するケー スと、このケースの内部に形成された空間部と、前記ケースの両端部に形成され た外部電極と、この外部電極と電気的に接続され、かつ前記空間部内に溶断部を 配設したヒューズエレメント部とを備え、ヒューズエレメント部の切削によって 溶断部の線径を調整でき、溶断特性を調整することを可能としたものである(同\n【0007】【0016】)。そして、特に、ヒューズエレメント部と外部電極とを一体 の金属で形成する構成をとることによって、ヒューズエレメント部と外部電極と\nを接続する必要がなくなるため、生産性を向上させることができるという効果を 奏すること(同【0009】【0036】)や、発明の実施の形態として、外部電極13 がケース11の底部11a の端面及び裏面に沿うように折り曲げられた形態が記 載されている(同【0035】【図4】【図5】)。 以上によれば、乙3公報には、面実装可能な小型ヒューズにおいて、生産性の\n向上を目的として、溶断部を配設したヒューズエレメント部と外部電極を一体の 金属で形成するという乙3発明が開示されているといえる。
一方、乙1公報の発明の詳細な説明によれば、乙1発明は表面実装超小型電流\nヒューズに関する発明であり(段落【0001】)、従来の表面実装小型電流ヒュー\nズは、可溶部あるいは可溶線が合成樹脂や低融点ガラス等の絶縁物に直接接触し た構造である場合、可溶部等が熱的中立性を保てず本来のヒューズとしての溶断\n性能がおろそかにされている問題(同【0002】〜【0004】)や、電極をケース内 に配置固定した後、電極間に可溶線を架張して半田付けする方式は、半田が固ま る際に生じる盛り上がりの差により電極間の長さ、すなわち、可溶線の長さにば らつきが生じるという問題があったこと(同【0005】)に加え、従来の小型ある いは超小型電流ヒューズは、各部品を一つ一つバッチ工程で加工組立てを行う必 要があり、部品が小さいためその作業は困難を極め、製造し難く、その結果、低 コスト化にも限界があるという問題があった(同【0006】)。これに対し、乙1 発明は、可溶線5を挟持した一対の金属電極2が箱型形状を有する本体1の両端 に取り付けられ、蓋部3を本体1の上面より僅かに沈む位置まで押し込み接着剤 を塗布して蓋部3を本体1に固定して内部を密閉し、可溶線は本体1の内部空間 に浮いた状態で架張されている構成をとることで(同【0008】)、溶断特性のば らつきを最小限に抑えることや従来型と比べて2倍以上大きい遮断能力を有す\nることを可能としたこと(同【0028】〜【0030】)に加え、連続工程で製作組立 を行うこと、特に、可溶線5を挟持した一対の金属電極2を組み立てた後に鞍部 21を本体1の双方の短側壁11に嵌合させて固定することにより、製造が容易 になって、大幅なコスト削減が可能となるという効果を奏するものである(同\n【0020】【0027】)。 そうすると、乙1発明と乙3発明は、いずれも表面実装型ヒューズに関する発\n明であり、その技術分野は同一である。また、乙1発明と乙3発明は、いずれも 生産性の向上という同一の課題に対し、予めヒューズと電極とを組み合わせた後\nに本体に固定するという技術思想に基づく課題解決手段を提供する発明である ことに加え、乙1発明の溶断時間のばらつきを抑えるという課題と乙3発明の溶 断特性を調整するという課題は、所望の溶断特性を実現するという点で関連して いるといえる。 したがって、乙1発明と乙3発明は、技術分野、課題及び解決手段を共通にす るから、乙1発明に乙3発明を適用する動機付けが存在するものと認められる。
(b) 原告の主張
原告は、乙1発明と乙3発明とは、その課題等が相違することのほか、乙3発 明において、ヒューズエレメント部の切削を容易にするためには、乙1発明のケ ース11は上下方向の中央で分割される必要があること、乙1発明の本体1の空 間部6内に乙3発明のヒューズエレメント部15を配置する場合、ヒューズエレ メント部15を切削する必要があるが、所望の抵抗値が得られるように切削する ことは実質的に不可能であることから、乙1発明に乙3発明を組み合わせること\nはその構成上不可能\であることなどの阻害要因があるとして、被告製品と乙1発 明の相違部分は、乙3発明から容易に推考できたとはいえない旨を主張する。 しかし、前記(a)のとおり、乙1発明と乙3発明の課題は同一又は関連してい る。また、乙3公報の発明の詳細な説明によれば、ヒューズエレメント部の切削 は、スクライブやパンチング等の機械的方法によって行うが、予めヒューズエレ\nメント部の切削をした後にケースに固定をしてもよい旨が記載されていること から(段落【0022】【0027】【0028】)、ヒューズエレメント部を切削するため に、ケースを上下方向の中央で分割する必要があることにはならない。また、乙 3発明を乙1発明に適用するに当たり、乙1発明の空間部6内に、外部電極と一 体の金属で形成され、溶断部を配設したヒューズエレメント部を配置することと なるが、空間部6内にヒューズエレメント部を配置する場合に、当該ヒューズエ レメント部を切削する必要が必ずしもあるともいえない(ヒューズエレメント部 の一部の切削は本体への配置前に行うことができる。)。その他、乙1発明に乙 3発明を組み合わせることについて阻害要因があることをうかがわせる事情は ない。 したがって、原告の前記主張は採用することができない。
(c) 以上から、乙1発明に乙3発明を適用する動機付けが存在し、これを阻害 する要因は認められないから、乙1発明の可溶線と金属電極は異なる部材で構成\nされる構成に代えて、乙3発明の、溶断部を配設したヒューズエレメント部と外\n部電極部を一体の金属で形成する構成を採用して被告製品の構\成とすることは、 当業者が本件特許の出願時に容易に推考し得たものと認められ、被告製品は、均 等の第4要件を満たさない。
・・・
2 争点2(本件追加の可否)について
本件追加は、被告製品が、本件発明に係る請求項とは別の請求項記載の本件発 明2の技術的範囲に属するとして請求原因を主張し、本件特許権の侵害に基づく 各請求を追加するものであるから、訴えの追加的変更に当たると解するのが相当 であるところ、当裁判所は、本件追加は、これにより著しく訴訟手続を遅滞させ ることとなると認め、これを許さないこととする(民訴法143条1項ただし書、 同条4項)。
すなわち、本件追加に係る請求原因は、原告において、審理の当初から主張す ることが可能であったところ、令和4年11月28日の書面による準備手続中の\n協議において、当裁判所は、当事者双方に対し、被告製品は本件発明の技術的範 囲に属さないとの心証を開示して、話合いによる解決を検討するよう促し、その 後、和解協議を行ったものの、令和5年1月27日の同協議において、これ以上 の和解協議は行わないこととなり、口頭弁論の終結に向けて、原告は、これまで の主張の補充及び反論を記載した書面を提出する旨述べたが、同年2月27日付 けの準備書面5において、本件追加を行ったものである(当裁判所に顕著な事実)。 このように、本件追加が行われた時点で、本件訴訟は、被告製品が本件発明の技 術的範囲に属さないとの当裁判所の心証開示を踏まえた和解協議を終え、審理を 終結する直前の段階に至っていた。仮に、本件追加を許した場合、被告製品が本 件発明2の技術的範囲に属するか否かや、本件特許に係る無効理由の有無につい ても改めて審理を行う必要があり、そのために相当な期間を要することになるこ とは明らかである。そうすると、本件発明2が本件発明1の従属項であり、構成\n要件の一部が同一であること、その他原告が指摘する事情を考慮しても、本件追 加は、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることになると認められる。

◆判決本文

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令和4(ネ)10107  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和5年6月1日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

特許権侵害訴訟の控訴審です。1審は文言侵害に当たらないと判断していました。特許権者は、均等侵害も主張しましたが、第1要件を満たしていないと判断されました。

ア 前記(2)のとおり、被控訴人製品は「摺動導通部」を有しない点において、 本件発明と異なる。
ところで、訂正の上引用した原判決の第3の1(2)のとおり、本件発明は、一対 のプランジャをコイルばねの密巻き部分に接触させて導通を確保するという本件先 行発明における、2つの摺動導通部が形成されることによる抵抗の分散が検査の精 度を狭めるという課題を解決するために、摺動導通部の数を減らし、検査精度を向 上可能とするというものであり、プランジャと接触して導通を確保する摺動導通部\nを有することは、本件発明の本質的部分である。 そうすると、被控訴人製品と本件発明の構成中の異なる部分(摺動導通部の存否)\nは、本件発明の本質的部分に当たる。
イ 控訴人は、「密巻き部」に関する本件発明と被控訴人製品の相違点は、「本件 発明では「フリー状態で密巻きであった部分」が導通経路となっているところ、被 控訴人製品では「フリー状態で密巻きであった部分」が導通経路となっているかが 定かではなく、「ストローク開始後検査前に密巻きになった部分」が導通経路とな っている可能性がある点」であり、被控訴人製品について均等侵害が成立すると主\n張する。しかしながら、訂正の上引用した原判決の第3の2(4)のとおり、被控訴 人製品において、ストローク開始後検査前に密巻きになった部分が導通経路となっ ていることを認めるに足りる証拠がなく、このことは、当審において提出された動 画(甲86)を踏まえても変わらない。そうすると、控訴人の「密巻き部」に関す る均等の主張はその前提を欠く。
ウ したがって、その余の点につき検討するまでもなく、被控訴人製品について、 本件発明の均等侵害は成立しない。

◆判決本文

1審はこちら。

◆令和2(ワ)12013
添付文書はこちら。

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令和4(ネ)10071  損害賠償請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和5年1月30日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 特許侵害事件です。1審(東京地裁29部)は、圧力風以外も用いて移送をするイ号は、「圧力風の作用のみによって、・・茶枝葉(A)を・・所定の位置まで移送する」という発明特定事項について、「圧力風の作用のみによって」を満たさないとして、技術的範囲に属しないと判断しました。控訴審では均等侵害も主張しましたが、否定されました。

控訴人は、仮に本件発明7の構成要件Aの「圧力風の作用のみによって」\nの構成は、刈り取られた「茶枝葉」の「刈刃」から「所定の位置」までの移\n送が「圧力風」の「作用」だけで実現されることをいい、「圧力風」の「作 用」以外の作用が加わって上記移送が実現されるものは、「圧力風の作用の みによって」を備えるとは認められないと解した場合には、被告各製品にお いては、「圧力風」の「作用」にブラシの回転作用が加わることによって茶 枝葉が移送ダクト内に送り込まれている点で、「圧力風の作用のみによって」 の構成を備えるとはいえず、本件発明7と相違することとなるとしても、被\n告各製品は、均等の第1要件ないし第5要件を充足するから、本件発明7の 特許請求の範囲(請求項7)に記載された構成と均等なものとして、本件発\n明7の技術的範囲に属する旨主張する。
そこで、まず、均等論の第1要件について検討するに、本件発明7の特 許請求の範囲(請求項7)の記載及び前記1(2)認定の本件明細書の開示事 項を総合すれば、従来の茶葉の摘採を行う摘採機は、「刈刃前方側に茶葉移 送のための分岐ノズル付き送風管を配し、分岐ノズルからの送風によって、 刈刃から収容部まで茶葉を移送するのが一般的であり、その移送路は、刈刃 のほぼ後方に延びる水平移送部と、その後に収容部の上部に臨むように接続 された上昇移送部を具えていたが、このような移送形態(送風形態)では、 水平移送部を要する分、移送装置、ひいては摘採機の前後長が長くなり、摘 採機の取り回し性を低下させてしまうという問題があったことから、本件発 明7は、上記問題を解決し、水平移送部を設けることなく、刈取直後、即、 茶葉を上昇移送できるようにし、摘採機の前後寸法の短縮化を図り、摘採機 をコンパクトに構成できるようにした茶枝葉の移送装置を開発することを課\n題とし、この課題を解決するための手段として、水平移送部を設けることな く、刈刃の後方から移送ダクト内に背面風を送り込む吹出口が設けられ、こ の吹出口から移送ダクト内に背面風を送り込むことによって、刈取後の茶枝 葉を刈刃から所定の位置まで移送する構成を採用し、具体的には、刈刃後方\nからの背面風によって、その吹出口付近に負圧を生じさせ、この移送ダクト 内に流す圧力風の作用のみにより、負圧吸引作用によって刈り取り直後の茶 枝葉を刈刃後方側に引き寄せ、その後は茶枝葉を背面風に乗せて、収容部な ど適宜の部位に移送する構成とし、これにより刈り取り直後、水平移送部を\n設けることなく、そのまま茶枝葉を上昇移送することができ、前後長の短縮 化が図れ、コンパクトな茶刈機が実現できるという効果を奏することに技術 的意義があり、水平移送部を設けることなく、刈刃の後方側から送風される 「圧力風の作用のみ」によって、その吹出口付近に負圧を生じさせ、この負 圧吸引作用によって刈り取り直後の茶枝葉を刈刃後方側に引き寄せ、その後 は茶枝葉を背面風に乗せて、収容部4など適宜の部位に移送するようにした ことが、本件発明7の本質的部分であるものと認められる。
しかるところ、前記2(2)で説示したとおり、被告各製品においては、 「茶枝葉」の「刈刃」から「所定の位置」までの移送が「圧力風」の作用に 「圧力風」以外の作用である回転ブラシの回転作用が加わることによって実 現されているといえるから、被告各製品は、「圧力風の作用のみによって」 の構成を備えるものとは認められない。\nしたがって、被告各製品は、本件発明7の本質的部分を備えているもの と認めることはできず、本件相違部分は、本件発明7の本質的部分でないと いうことはできないから、均等論の第1要件を充足しない。

◆判決本文

1審は、こちら

◆令和2(ワ)17423

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令和3(ネ)10099  特許権侵害差止等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 令和4年12月26日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

知財高裁は、均等侵害の第1、第2要件は充足するものの第3要件(置換容易性)は充足していないと判断し均等侵害を否定しました。1審では均等主張はしていませんでした。

被告製品1は第3要件を充足するか(争点1−2−3)
ア 被告製品1の製造開始時において、本件訂正発明6における「前記電解 室の内部と外部とを区画する一つ以上の隔膜」という構成を、被告製品1\nにおける「1)内タンク6の側壁の一部、2)流出孔3を有する内タンク6の 底部、3)4つの高分子膜10」との構成に置換することは、当業者が容易\nに想到し得たかについて検討する。
イ 前記2のとおり、本件訂正発明6においては、構成要件11Aの隔膜に\nよる区画は、隔膜によって電解室の内部と外部とが完全に区画されるもの であり、電解室の内部と外部とは、水が連通することがない独立した構造\nとなっている。また、本件明細書1においては、電解室の内部と外部を分 ける隔膜は、縦に設置されたもののみが開示され、陽極で発生する水素と 陰極で発生する水素は、別空間に排出されると理解される。 これに対し、被告製品1は、内タンク空間と外タンク空間の間を水が連 通する構成の下で高分子膜10を水平に配置し、高分子膜10の上側に保\n持された陰極電極板11で発生する水素ガスと、高分子膜10の下側に保 持された陽極電極板12で発生する酸素ガスの混合が起こり得る状態を 許容した上で、陽極電極板12で発生した酸素ガスは、枠体5内に集めて 大きな気泡を形成し、流出孔3から内タンク6内に進入するのを防止した 上、内タンク6と外タンク2の隙間内の水内を通って外部に排出するとい うものである(乙29の1・2)。そうすると、本件訂正発明6と被告製品 1は、その基本的発想を異にするものというべきであって、被告製品1に おける「1)内タンク6の側壁の一部、2)流出孔3を有する内タンク6の底 部、3)4つの高分子膜10」との構成への置換が本件訂正発明6の単なる\n設計変更とはいえない。
また、本件明細書1においては、「前記電解室の内部と外部とを区画する 一つ以上の隔膜」との構成を、被告製品1のような「1)内タンク6の側壁 の一部、2)流出孔3を有する内タンク6の底部、3)4つの高分子膜10」 との構成に置換した場合に生じ得る事項についての示唆もないから、本件\n明細書1において、上記のような置換をする動機付けとなるものも認めら れない。
ウ 控訴人は、前記第2の3(7)アのとおり、陽イオン交換膜を用いた固体高 分子水電解において、陰極室と陽極室を貫通孔により水を連通する構成は、\n被控訴人が製造販売を開始した平成29年11月以前から周知の技術で あるとして、甲36文献、甲37文献、甲40文献を提示するので、以下、 検討する。 甲37文献は、オゾン水製造装置、オゾン水製造方法、殺菌方法及び 廃水・廃液処理方法に関するものであり(【0001】)、電解反応を利用 した化学物質の製造において、多くの電解セルでは、陽極側と陰極側に 存在する溶液あるいはガスが物理的に互いに分離された構造を採るが、\n一部の電解プロセスにおいては、陽極液と陰極液が互いに混じり合うこ とを必要とするか、あるいは、混じり合うことが許容されることを前提 として(【0002】)、陽極側と陰極側が固体高分子電解質隔膜により物 理的に隔離され、陽極液と陰極液は互いに隔てられ、混合することなく 電解が行われる従来のオゾン水電解(【0005】)では、電解反応の進 行に伴い液組成が変化し、入側と出側で反応条件が異なるなどの問題点 があったことを踏まえ(【0006】)、電解セルの流入口より流入した原 料水がその流れの方向を変えることなく、直ちに電解反応サイトである 両電極面に到達し、オゾン水を高効率で製造できる等の作用を有するオ ゾン水製造装置等を提供することを目的としたものである(【001 6】)。
その技術分野(オゾン水製造装置)及び目的(オゾン水を高効率で製 造すること等)のいずれも本件訂正発明6と異なるし、その具体的構成\nも、貫通孔11が設けられた電解セル8(陽極1、陰極2及び固体高分 子電解質隔膜3)に直交して原料水(オゾン水)の流路が設けられると いうものであって(【0034】及び【0035】)、電極室の内部に被電 解原水が貯留され、電気分解が行われる本件訂正発明6とは異なる。し たがって、甲37文献に開示された事項を本件訂正発明6に適用する動 機付けは見い出せない。
甲40文献は、電源のない場所に持ち運び、水素の吸入や水素水の飲 用に使用することのできるポータブル型電解装置に係る技術分野に属す るものであり(【0001】)、電解ユニット3は、ケーシング31、高分 子膜32、電極板33、34、スプリング35からなること(【0028】)、 ケーシング31は、内部に反応室311となる容積が確保されており、 側部に外部と反応室311とを連通するように穿孔された連通孔314 が設けられていること(【0029】)、電解ユニット3の高分子膜32は、 イオンの通過を規制するイオン交換機能を有する薄膜からなるもの(例\nえば、ナフィオン)で、ケーシング31の窓孔311を閉塞する大きさ の方形に形成されていること(【0030】)が記載され、使用形態とし て、内部に原水Wが収容されたタンク1にキャップ2、ガイド筒4、水 素吐出管5を一体的に取付けられること(【0034】)、スイッチ9が入 れられると、原水Wが電気分解され、ケーシング31の反応室311の 内部にあるプラス極の電極板34で水素イオンと電子とが生成されて高 分子膜32を通過し、ケーシング31の窓孔312に露出しているマイ ナス極の電極板33で水素(ガス)が生成され、水素は、微細な気泡H を形成してタンク1の内部で水素水からなる電解水を生成すること、プ ラス極の電極板34で生成されたオゾン(ガス)は、高分子膜32を通 過することなくケーシング31の反応室311の内部に滞留され、ケー シング31の反応室311の内部の滞留圧力が大きくなると連通孔31 4から吐出されること(【0041】)が記載されている。 しかし、甲40文献には、陰極室及び陽極室についての記載はないか ら、これを見ても、陰極室と陽極室とを貫通孔により水を連通する構成\nが記載されているとはいえない。別紙2の図2において、マイナス極の 電極板33より上側部分を陰極室と、プラス極の電極板34より下側の 反応室を陽極室であると解釈すると、連通孔314は、陽極室とその外 部を貫通するものであって、陽極室と陰極室を貫通するものではない。 マイナス極の電極板33より上側部分と、ケーシング31側面の外側部 分はつながった空間であることから、ケーシング31側面の外側部分も 陰極室であるとみた場合には、連通孔314は、陽極室(反応室)と陰 極室(ケーシング31側面の外側部分)を貫通するものであるといえる が、酸素と水素が同じ陰極室内に排出されることになり、被告製品1の 構成に至らない。\n甲36文献に係る発明の公開日は平成30年11月22日であり、甲 36文献自体の発行日は令和2年3月11日であるから、その内容や位 置付けについて検討するまでもなく、甲36文献は、被控訴人が被告製 品1の製造販売を開始した平成29年11月時点における周知文献とは いえない。
エ 以上によれば、控訴人主張の周知技術は、いずれも、本件訂正発明6に おける「前記電解室の内部と外部とを区画する一つ以上の隔膜」という構\n成を、被告製品1における「1)内タンク6の側壁の一部、2)流出孔3を有 する内タンク6の底部、3)4つの高分子膜10」との構成に置換する動機\n付けになるものとはいえない。
これらの事実関係によれば、このような置換が容易であったとはいえな いから、被告製品1は、均等の第3要件を充足しない。 前記(1)ないし(3)によれば、被告製品1は、均等の第1要件及び第2要件を 充足するものの、第3要件を充足しないから、第5要件について判断するま でもなく、本件訂正発明6の技術的範囲に属しない。

◆判決本文
1審はこちら。
1審では、構成要件を具備せず、また実施可能\要件違反の無効理由有りと判断されていました。

◆令和2(ワ)22768

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令和1(ワ)14320 特許権侵害差止等請求事件  特許権  民事訴訟 令和4年10月7日  東京地方裁判所

 特許侵害訴訟です。文言侵害が否定され、また、均等侵害も第1要件(本質的特徴)を具備しないとして否定されました。

前記(1)で検討したところによると、本件発明1の技術的意義は、固定プレ ートの孔自体が、橈骨遠位端骨折に対して、軟骨下骨を背側面側及び手掌側 面側という2箇所で支持する方向に突起を向かせて固定することができる構\n成となっているため、高度な医学的判断を要せずに、確実に軟骨下骨を背側 面側及び手掌側面側という2箇所で支持することを可能にすることにあると\n認められる。
そうすると、本件発明1の構成のうち、本質的部分であるといえるのは、\n橈骨遠位端骨折に対して、軟骨下骨を背側面側及び手掌側面側という2箇所 で支持する方向に突起を向かせて固定することができる孔が設置されている ことを定めた構成要件1E、1J及び1Kであると解するのが相当である。\nそして、これまで検討したところによると、被告製品4は構成要件1J及\nび1Kを充足せず、これらの本件発明1の構成と異なる部分は、本件発明1\nの本質的部分ではないとはいえないから、第1要件を充足せず、均等侵害は 成立しない。
(3)原告の主張の検討
原告は、本件報告書(甲26)によれば、被告製品4は、ガイドブロック を用いて被告製品4の孔にロッキングスクリューを固定すれば、一組の平行 ピンを用いた従来の平板固定によっては達成できなかった遠位橈骨の軟骨下 骨及びその遠位側の関節表面の位置の安定化という課題を解決することがで\nきるから、本件発明1と技術的思想を共通にしているといえ、孔の軸線が遠 位橈骨内で交差するか遠位橈骨外で交差するかは本件発明の本質的部分では ないと主張する。
しかし、本件報告書の検証結果の信用性を肯定することができないことは 前記4(2)のとおりであるし、その信用性を肯定できたとしても、前記(1)の とおり、遠位橈骨の骨折を固定するための骨プレートであり、ネジを固定す るための固定プレートを貫通する複数のネジ孔が、固定プレート頭部の遠位 側と近位側の2列に概ね平行に並んで設置されている固定プレートは、先行 技術として存在していたのであるから、従来プレートが一組の貫通孔のみを 設けていたことを前提に、二組の貫通孔を設けていることが本質的特徴であ ると評価することはできない。 また、本件発明1は固定プレートの発明であるから、固定プレート自体の 構成、すなわち、固定プレートに設置された孔の構\成を比較すべきであり、 被告製品4にガイドブロックを用いることを前提に、被告製品4が軟骨下骨 を背側面側及び手掌側面側という2箇所で支持する方向にロッキングスクリ ューを向かせることができるかどうかという観点から比較することは相当で はない。
さらに、孔の軸線が遠位橈骨内で交差しないのであれば、孔に突起を挿入 しても、突起が当然に軟骨下骨を背側面側及び手掌側面側という2箇所で支 持することはなく、遠位橈骨の軟骨下骨及びその遠位側の関節表面の位置の\n安定化という課題を解決することはできないから、孔の軸線が遠位橈骨内で 交差する方向に突起を向かせる構成となっていることは、本件発明1の本質\n的特徴であるといえ、そのような孔の構成を有していない被告製品4に均等\n侵害が成立することはない。

◆判決本文

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 >> 文言侵害
 >> 均等
 >> 第1要件(本質的要件)
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