2011.07. 4
地裁では、技術的範囲に属しないと判断されましたが、知財高裁は差止、損害賠償を認めました。
間接侵害について
特許法101条4号は,その物自体を利用して特許発明に係る方法を実施する物についてこれを生産,譲渡等する行為を特許権侵害とみなすものであるところ,同号が,特許権を侵害するものとみなす行為の範囲を,「その方法の使用にのみ用いる物」を生産,譲渡等する行為のみに限定したのは,そのような性質を有する物であれば,それが生産,譲渡等される場合には侵害行為を誘発する蓋然性が極めて高いことから,特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその効力の実効性を確保するという趣旨に基づくものである。このような観点から考えれば,その方法の使用に「のみ」用いる物とは,当該物に経済的,商業的又は実用的な他の用途がないことが必要であると解するのが相当である。被告装置1は,前記のとおり本件発明1に係る方法を使用する物であるところ,ノズル部材が1mm以下に下降できない状態で納品したという被控訴人の前記主張は,被告装置1においても,本件発明1を実施しない場合があるとの趣旨に善解することができる。しかしながら,同号の上記趣旨からすれば,特許発明に係る方法の使用に用いる物に,当該特許発明を実施しない使用方法自体が存する場合であっても,当該特許発明を実施しない機能のみを使用し続けながら,当該特許発明を実施する機能\\は全く使用しないという使用形態が,その物の経済的,商業的又は実用的な使用形態として認められない限り,その物を製造,販売等することによって侵害行為が誘発される蓋然性が極めて高いことに変わりはないというべきであるから,なお「その方法の使用にのみ用いる物」に当たると解するのが相当である。被告装置1において,ストッパーの位置を変更したり,ストッパーを取り外すことやノズル部材を交換することが不可能ではなく,かつノズル部材をより深く下降させた方が実用的であることは,前記のとおりである。そうすると,仮に被控訴人がノズル部材が1mm以下に下降できない状態で納品していたとしても,例えば,ノズル部材が窪みを形成することがないよう下降しないようにストッパーを設け,そのストッパーの位置を変更したり,ストッパーを取り外すことやノズル部材を交換することが物理的にも不可能になっているなど,本件発明1を実施しない機能\のみを使用し続けながら,本件発明1を実施する機能は全く使用しないという使用形態を,被告装置1の経済的,商業的又は実用的な使用形態として認めることはできない。したがって,被告装置1は,「その方法の使用にのみ用いる物」に当たるといわざるを得ない。
均等について
前記1の本件明細書の記載からすると,本件発明1は,その後に続く椀状に形成する工程や封着する工程との関連が強く,その後の椀状に形成する工程や封着する工程にとって重要な工程である外皮材の位置調整を,既に備わる封着用のシャッタで行う点,そして,別途の手段を設けることなく簡素な構成でこのような重要な工程を達成している点に,その特徴があるということができる。本件発明1においては,シャッタ片及び載置部材と,ノズル部材及び生地押え部材とが相対的に接近することは重要であるが,いずれの側を昇降させるかは技術的に重要であるとはいえない。よって,本件発明1がノズル部材及び生地押え部材を下降させてシャッタ片及び載置部材に接近させているのに対し,被告方法2がシャッタ片及び載置部材を上昇させることによってノズル部材及び生地押え部材に接近させているという相違部分は,本件発明1の本質的部分とはいえない。エ 均等侵害の要件ii)についてノズル部材及び生地押え部材を下降させてシャッタ片及び載置部材に接近させているのに代えて,押し込み部材の下降はなく,シャッタ片及び載置部材を上昇させてノズル部材及び生地押え部材に接近させる被告方法2によっても,外皮材が所定位置に収まるように外皮材の位置調整を行うことができ,外皮材の形状のばらつきや位置ずれがあらかじめ修正され,より確実な成形処理を行うことが可能であり(【0008】【0013】),より安定的に外皮材を戴置し,確実に押え保持することができ(【0011】),装置構\成を極めて簡素化することができる(【0012】)といった本件発明1と同一の作用効果を奏することができる。本件発明1の構成要件1C及び1Dは,押え部材が外皮材を受け部材上に保持することができ,押し込み部材が,受け部材の開口部に内材を供給するため一定の深さに進入することにより,達することができるとするものである。そうすると,ノズル部材及び生地押え部材を下降させてシャッタ片及び載置部材に接近させる構\成を,シャッタ片及び載置部材を上昇させることによってノズル部材及び生地押え部材に接近させる構成に置き換えたとしても,同一の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものということができる。オ 均等侵害の要件iii)について本件発明1と被告方法2の上記構成の相違は,ノズル部材及び生地押え部材を載置部材上の生地に接近させるための動作に関して,単に,上方の部材を下降させるか,下方の部材を上昇させるかの違いにすぎない。したがって,被告方法2の上記構\成に想到することは,当業者にとって容易である。・・・以上のとおり,被告方法2は,本件発明1の構成要件1Cの構\成と均等なものである。
◆判決本文
◆原審はこちら。平成21(ワ)1201平成22年11月25日東京地裁