2015.12.14
平成27(行ケ)10119 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成27年12月8日 知的財産高等裁判所
訂正後のクレームの「Aであって且つB」という文言の意義が争われました。裁判所は「記載順序の違いは,2つの条件を共に満たす範囲に影響を与えるものではない」と判断しました。
1) 原告は,第1訂正後の本件発明では,スクラロースを,該飲料の0.00
12〜0.003重量%の範囲内に用いることを前提に,その範囲の中から,甘
味を呈さない量という限定を加えているため,0.0012〜0.003重量%の
範囲内に甘味の閾値が存在する場合が含まれることを前提とするものであり,甘味
閾値の具体的な数値を正確に測定する必要があるのに対し,本件訂正後の本件発明
では,甘味を呈さない範囲の量の範囲内で,客観的数値である該飲料の0.00
12〜0.003重量%のスクラロースを用いるという数値限定を加えているた
め,0.0012〜0.003重量%は甘味を呈さないこと前提とするものであ
り,スクラロースを用いる最大量である0.003重量%において,飲料が甘味
を呈する場合は,明確に排除されているから,具体的な甘味閾値を求める必要は
ないとして,第1訂正後の本件発明と本件訂正後の本件発明は,実質的に同一でな
いと主張する。
(2) しかしながら,第1訂正後の本件発明と本件訂正後の本件発明では,いず
れも「であって」という用語によって,前後の発明特定事項が接続されているが,
「であって」における「て」は,対句的に語句を並べ,対等,並列の関係で前後を
結びつける作用を有する接続助詞であるから,両発明は,いずれも「該飲料の0.
0012〜0.003重量%の範囲」であること(条件A),及び「甘味を呈さな
い量」であること(条件B)という2つの条件を共に満たしていることを要求して
いると解される。したがって,両発明では,ただ条件の記載順序が異なるにすぎな
い。そして,記載順序の違いは,2つの条件を共に満たす範囲に影響を与えるもの
ではない。
原告の主張は,発明特定事項が「AかつB」と記載された場合には,条件Aを満
たす集合の中に条件Bを満たす集合が包含されていることが前提となるが,逆に「B
かつA」と記載された場合には,条件Bを満たす集合の中に条件Aを満たす集合が
包含されていることが前提となるというものである。しかしながら,各集合に属す
るための条件が相互に独立した項目であれば,ある特定の条件を満たす集合は,他
の条件を満たす集合から何ら影響を受けずに,当該特定条件を満たす集合の大きさ
や帰属する要素を規律するはずである。そして,複数の条件を満たす集合体の大き
さや帰属する要素は,いずれの条件を先に検討しても,それぞれの重なり合う範囲
となるのであり,同じ結果になるはずである。したがって,「AかつB」と「Bかつ
A」は同じものを指すのであって,仮に条件Aを満たす集合の中に条件Bを満たす
集合全体が包含される関係にあるのであれば,「AかつB」も「BかつA」も条件B
を満たす集合を指すことになり,条件Bを満たす集合の中に条件Aを満たす集合が
包含される関係にはならない。前記1のとおり,本件発明において,「該飲料の0.
0012〜0.003重量%の範囲」であることは,当該飲料の重量によって計算
上算定される値であり,かつ,「甘味を呈さない量」であることは,ヒトの味覚に
よって検査される値であり,それぞれ独立した条件であり,一方の条件が論理的に
当然に他方の条件に影響するものではない。
・・・
(3) また,本件訂正後の請求項1は,「・・・スクラロースを,該飲料の0.0
012〜0.003重量%の範囲であって,且つ0,003重量%の場合において
スクラロースの甘味を呈さない量を用いることを特徴とする渋みのマスキング方
法」ではなく,「・・・スクラロースを,甘味を呈さない範囲の量であって,且つ該
飲料の0.0012〜0.003重量%用いることを特徴とする渋味のマスキング
方法。」である。すなわち,本件訂正後の請求項1は,スクラロース0.003重量%
の場合に甘味があるときがあることを前提としつつ,より少ない重量%として甘味
を呈さない場合をも,その発明特定事項の対象とするものである。したがって,0,
003重量%の場合に常にスクラロースの甘味を呈さないことを前提とした原告の
主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものといわざるを得ない。本件訂正後
の明細書(甲48)の記載を参酌しても,同明細書中には,ウーロン茶飲料におい
てスクラロースを0.0012%用いた場合(【0018】)及び緑茶飲料において
スクラロースを0.0014%用いた場合(【0019】)に渋みがマスキングされ
ることは確認されているが,それぞれの飲料においてスクラロースを0.003重
量%使用した場合に,甘味を呈するか否かは確認されていない。
しかも,かかる主張は,甘味を呈する閾値と0.003重量%との大小関係が一
義的に定まることを前提とするものであるところ(原告は,0.003重量%にお
ける甘味の有無だけを判断すれば足り,甘味の閾値を定める必要がないとも主張す
るが,本件訂正前の請求項との違いを説明するに当たって,甘味を呈する閾値の上
下で甘味の有無を区別した上で,0.003重量%との大小関係を問題にしている
から,このような前提に立つと解するのが相当である。),かかる前提自体は,前件
判決で採用できないことが明らかにされている。すなわち,前件判決は,明確性要
件違反である理由として,極限法が甘味の閾値の測定方法として一般的であるとは
いえないこと,官能検査の方法等により甘味の閾値が異なる蓋然性が高いことを前\n提としつつ,「0.0012〜0.003重量%の範囲」は非常に狭く,「甘味を呈
さない量」が「0.0012〜0.003重量%」との関係でどの範囲の量を意味
するのか不明であると判示したのであって,最後の判示部分は,異なる官能検査方\n法を用いた場合の甘味の閾値が,「0.0012〜0.003重量%の範囲」におけ
る上下限値と,一義的な大小関係が決まらないことを,明確性の観点から問題とし
たものと解される。したがって,原告が主張するように,甘味の閾値が0.001
2〜0.003重量%の範囲内にあるような飲料を当然に除外することはできない
し,甘味閾値を求める必要がないともいえない。
◆判決本文
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2015.11.15
平成27(ネ)10076 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年11月12日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
第2要件、さらには第1要件を満たさないとして均等侵害も否定されました。
ア 前記1(2)によれば,円テーブル装置のクランプ機構においては,作業時にお\nける工具からの加圧又は振動に対して,確実に所定の回転角度の位置を保つことの
できるクランプ力を得るために,油圧ピストンを使用して高い作動圧(油圧)でク
ランプ部材を加圧していたが,油圧ピストンの使用には,部品コストが掛かり,メ
ンテナンスにも手間が掛かるという課題があったことから,本件特許発明は,円テ
ーブル装置において,空気圧のような低圧で使用する流体圧ピストンでも十分に回\n転軸をクランプすることができるクランプ機構の提供を目的としたものである。\nそして,本件特許発明は,クランプ機構を構\成する増力機構につき,第1段増力\n部及び第2段増力部を備えたものとし,流体圧ピストン(25)から可動側クラン
プ部材(21)に働くクランプ方向の力を2段階にわたり増力することによって,
空圧ピストンのように低い作動圧のピストンでも十分に回転軸をクランプすること\nができるようにして,前記課題を解決するものである。
イ この点に関し,前記1(3)のとおり,本件明細書には,前記増力機構における\n2段階にわたる増力について,以下のとおり開示されている(別紙1【図2】参照)。
すなわち,1)流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)とボー
ル(26)との当接部P1において,F1(流体圧ピストン(25)のクランプ方
向の押圧力)が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面
(40)に対向している流体圧ピストン(25)の第1段用テーパーカム面(28)
のカム作用により,F2(径方向の外方に向く力)に増力されてボール(26)に
伝達される(第1段の増力)。
次に,2)ボール(26)と可動側クランプ部材(21)との当接部P2において,
F2が,ボール(26)を介してシリンダ形成部材(31)のテーパー面(40)
に対向している可動側クランプ部材(21)の第2段用テーパーカム面(29)の
カム作用により,F3(クランプ方向の押圧力)に増力されて可動側クランプ部材
(21)に伝達される(第2段の増力)。
ウ 第2段の増力に関し,前記2(3)ウ(ウ)のとおり,仮に,α3=0°,すなわ
ち,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角を成すものとすると,径方
向の外方に向く力であるF2が,第2段用テーパーカム面(29)と完全に平行の
状態になることから,F2がクランプ方向の押圧力であるF3に増力されることは
なく,「第2段増力部」が増力機構として機能\しなくなる。
したがって,第2段用テーパーカム面(29)が回転軸芯と直角,すなわち,傾
斜角度が「α3=0°」の場合を含まないという構成を,「α3=0°」の構\成に置
き換えれば,2段階にわたる増力により空圧ピストンのように低い作動圧のピスト
ンでも十分に回転軸をクランプすることができるようにするという本件特許発明と\n同一の目的を達することも同一の作用効果を奏することもできなくなることは,明
らかというべきである。
エ 控訴人は,本件特許発明における2段式増力機構における増力の仕組みは,\n前記第3の2〔当審における控訴人の主張〕(5)のとおりであり,「α3=0°」の場
合に,F1からF3への増力は最大となるから,「第2段用テーパーカム面(29)」
の「30°以下の緩やかな傾斜角度」,すなわち,「0°<α3≦30°」を「α3
=0°」に置き換えても,増力を実現でき,かつ,低い作動圧下における高いクラ
ンプ力の実現等の本件特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏す
る旨主張する。
しかし,控訴人の主張は,第2段の増力につき,F2がシリンダ形成部材(31)
のテーパー面(40)においてF3に増力され,この反作用として,テーパー面(4
0)からボール(26)を介して可動側クランプ部材(21)に対してF3と同等
の力が生じることを前提とするものであるところ,前記2(4)カ(イ)のとおり,特許
請求の範囲にも本件明細書の発明の詳細な説明にも,控訴人主張に係る増力の仕組
みは記載されておらず,したがって,同仕組みは,本件明細書の記載に基づかないものといわざるを得ない。
なお,控訴人の役員が作成した甲第15号証には,被告製品のクランプ機構の動\n作につき,「『クランプピストン』が正面部に動き,『鋼球』を『クランプシリン
ダ』のテーパー面にそって動かし,『クランプシリンダ』のテーパー面に対向して
いる『クランプピストン』のカム作用と,『鋼球』を介して,『クランプシリンダ』
のテーパー面に対向している『クランプリング』のカム作用による増力された力が
『クランプリング』に加わることになります。」と記載されているが,同記載によ
っても,本件特許発明のように2段階の増力が行われているかは不明であり,増力
の測定値等の客観的な裏付けもない以上,被告製品において2段階にわたる増力が
されていると認めるに足りないというべきである。
オ 以上によれば,被告製品は,前記(2)2)の要件を充たすものではない。
(4) 前記(2)1)の要件について
ア 前記(3)によれば,本件特許発明に係る円テーブル装置のクランプ機構が,2\n段階にわたり増力する増力機構を備えることは,前記課題解決に不可欠な構\成とい
え,本件特許発明を特徴付けるものということができるところ,第2段用テーパー
カム面(29)が回転軸芯と直角を成すものではないこと,すなわち,傾斜角度が
「α3=0°」の場合を含まないことは,上記増力機構を構\成する「第2段増力部」
における第2段の増力のために不可欠なものである。
この点に鑑みると,本件特許発明の構成要件E2の「第2段用テーパーカム面(2\n9)」は,傾斜角度が「α3=0°」の場合を含まないのに対し,被告製品の構成中,\n「クランプリング8の鋼球10と当接する面」は,回転軸芯と直角,すなわち,「α
3=0°」であるという相違部分が,本件特許発明の本質的部分でないということ
はできない。
イ 控訴人は,F2からF3への増力において問題となる角度はα2であり,α
3ではないとして,「α3=0°」に係る相違部分は,本件特許発明の本質的部分で
はない旨主張するが,控訴人の主張は,前記(3)のとおり,本件明細書の記載に基づ
かない増力の仕組みを前提とするものであるから,採用できない。
ウ したがって,被告製品は,前記(2)1)の要件を充たすものともいえない。
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2015.11. 1
平成26(ワ)27277 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年10月14日 東京地方裁判所
CS関連発明について、均等の第5要件を満たしていないとして侵害不成立と判断されました。
事案に鑑み,まず,前記1において認定説示した本件特許発明と被告方法とが相違する部分(構成要件F4と被告方法との相違部分)に関し,均等の第5要件(上記(1)5))の成否を検討する。
前記1(3)において認定説示したとおり,本件特許の出願人である原告は,本件特許の出願手続において,当初(分割出願時)は,「数量に基づく計算」を「Web−POSクライアント装置」により行うか,「Web−POSサーバ・システム」により行うかについて,本件特許請求の範囲により規定していなかったところ,第1手続補正により,本件特許請求の範囲に「3)商品オーダ内容の操作に関する表示制御,すなわち,上記Web−POSクライアント装置の入力手段を有する表\示装置に表示された上記商品の注文明細情報について,ユーザが,該入力手段により,オーダ内容(数量)を入力(選択)すると,該オーダ内容に基づく計算が上記Web−POSサーバ・システムにおいて行われると共に,その結果が上記Web−POSクライアント装置に通知され,また,ユーザが,該入力装置により,オーダ操作(オーダ・ボタンをクリック)を行うと,該商品の注文明細情報に対する該オーダ内容に基づく計算結果の販売情報または注文情報が該Web−POSサーバ・システムにおいて取得(受信)されること」との構\成を付加しようとしたこと,特許庁審査官は,同構成を付加する補正は,願書に最初に添付された明細書,特許請求\nの範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく,特許法17条の2第3項に違反するなどの理由により,第1手続補正を同法53条1項により却下する旨の決定をしたこと,原告は,同却下決定を受けて,第2手続補正により,本件特許請求の範囲に「ユーザが,該入力手段により数量を入力(選択)すると,該数量に基づく計算が行われると共に,」との構成を付加したことが認められ,また,同補正により,本件請求項1記載の発明は,「該数量に基づく計算」が「Web−POSクライアント装置」により行われるものに限定されたと解すべきである。
そうすると,原告は,本件特許の出願手続において,被告方法のような「該数量に基づく計算」が「Web−POSサーバ・システム」により行われ,その結果が「Web−POSクライアント装置」に通知される構成について,これを明確に認識しながら,あえて本件特許請求の範囲から除外したものと外形的に評価し得る行動をとったものというべきである(なお,原告は,前記1において認定説示した本件特許発明と被告方法とが相違する部分〔構\成要件F4と被告方法との相違部分〕以外については,被告方法が本件特許発明と同一であるか,少なくとも均等であると主張しているのであるから,同主張を前提とする限り,被告方法は,客観的にみて,本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものにあたることになるといえる。)。
この点,原告は,第1手続補正が却下されているとか,第2手続補正のうち,構成要件F4に関する部分は,サポート要件(特許法36条6項1号)違反の拒絶理由の解消を目的としたものであるなどと主張するが,第1手続補正が却下されたとの事実は,出願人である原告が,被告方法のような「該数量に基づく計算」が「Web−POSサーバ・システム」により行われ,その結果が「Web−POSクライアント装置」に通知される構\成を明確に認識していたとの上記認定を左右するものではなく,また,原告が当該構成を明確に認識しており,第2手続補正により本件請求項1記載の発明が「該数量に基づく計算」が「Web−POSクライアント装置」により行われるものに限定されたと解される以上,第2手続補正のうち,構\成要件F4に関する部分についての補正の目的が原告主張のとおりであったとしても,被告方法のような構成をあえて本件特許請求の範囲から除外したものと外形的に評価し得る行動をとったとの上記認定判断が左右されるものではない。\nしたがって,均等の第5要件の成立は,これを認めることができない。
◆判決本文
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2015.10.16
平成27(ネ)10047 差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年9月30日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
CS関連発明について、特許権侵害でないとした一審判断が維持されました。
これを本件ホームアプリについてみるに,本件ホームアプリがイン
ストールされた被告製品においては,利用者がタッチパネル上のショー
トカットアイコンを指で長押し(ロングタッチ)すると,その際のホー
ム画面のページ番号に応じて,画面上に左右スクロールメニュー表示が\n表示され,当該ページが,左端ページであれば「右スクロールメニュー\n表示」のみが,右端ページであれば「左スクロールメニュー表\示」のみ
が,それ以外のページであれば「左右スクロールメニュー表示」がいず\nれも表示されるものであり(前記1(3)イ(ア)),左右スクロールメニュ
ー表示は,利用者がタッチパネル上のショートカットアイコンを指で長\n押し(ロングタッチ)する操作を行うことによって表示されるものであ\nって,利用者がタッチパネル上の指の位置を動かすことにより,当該シ
ョートカットアイコンを移動させる操作によって表示されるものとはい\nえない。
このことは,1)甲32の1及び2(控訴人作成の「被告製品の映像及
び映像説明書」)によれば,本件ホームアプリにおいて,タッチパネル
上のポインタ(ショートカットアイコン)を指で長押し(ロングタッチ)
すると,ショートカットアイコンは,ぶるぶる振動する振動状態に遷移
し,振動状態になれば,ショートカットアイコンを移動させる操作(ド
ラッグ操作)を行わなくても,画面右端に右スクロールメニューが表示\nされることが認められること,2)甲17の2(被控訴人作成の「IS04
取扱説明書」)によれば,「ロングタッチする」という項目に,「画面
の項目やアイコンを指で押さえたままにします。」と記載されているか
ら,本件ホームアプリにおける「ロングタッチ」とは,ショートカット
アイコンを指で押さえたままにすること,すなわち,指を移動しないま
ま,ショートカットアイコンを押し続ける操作であり,指の移動を伴う
ドラッグ操作は含まれないことからも明らかである。
したがって,本件ホームアプリにおいて,控訴人が主張する「操作メ
ニュー情報」である左右スクロールメニュー表示を表\示させるための電
気信号は,ショートカットアイコンを押し続ける操作(ロングタッチ)
が行われたことを検知した電気信号であって,ショートカットアイコン
を移動させる操作(ドラッグ操作)が行われたことを検知した電気信号
ではない。
そうすると,本件ホームアプリにおいては,利用者が入力手段を介し
て画面上のポインタ(ロングタッチをしたショートカットアイコン)の
位置を移動させる操作を行ったことを検知して,その操作をポインタの
座標位置を移動させる命令(電気信号)に変換し,処理手段がその電気
信号を受信することによって,控訴人が主張する「操作メニュー情報」
である左右スクロールメニュー表示を画面上に表\示させているものとは
いえないから,「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を
受信すると…操作メニュー情報を…出力手段に表示する」(構\成要件E)
処理が実行される構成を備えているものと認めることはできない。\n
◆判決本文
◆
一審はこちらです。平成26年(ワ)第65号
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2015.09.10
平成26(ワ)25858 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年8月25日 東京地方裁判所
被告製品2については第1要件を満たさないとして、均等侵害が否定されました。なお、被告製品1は文言侵害が認められています。
以上の本件明細書の記載によれば,本件発明は,講演者の立ち位置によってはスクリーンに投影される画像に干渉するという従来技術の問題点を解決するために,自動車のフロントガラスの前に置かれた物(これがフロントガラスの下にあることは明らかである。)がフロントガラス(観測者である運転者から見て上端が手前に,下端が奥にあることは明らかである。)に映り,フロントガラスの背景に存在するように見えるという物理原理をステージ等の背景に映像を表示することに利用したものであって,ステージの床に反射面(上記フロントガラスの例において背景に存在するように見える物が置かれる場所に相当する。)を配置し,フィルム(フロントガラスに相当する。)の上端を観客席側から見て手前に,その下端を奥に保持するとともに,表\示される物を反射面に直接置くのではなく,これに対面する天井に画像源を配置するとの構成を採用した点に,本件発明の本質的部分があるものと解される。
ウ これに対し,原告は,フィルムを反射面に向かい合うように傾斜させて配置したこと及び反射面の反対側に画像源を配置したことが本件発明の本質的部分であり,画像源と反射面の上下その他具体的な保持・配置関係は本質的部分でないと主張する。
そこで判断するに,本件明細書においては,自動車のフロントガラスの手前にある「保管場所」と本件発明の「反射面」をそのままの位置関係で対応させて面が床(下)にあるものとして記載されているのであって(第1図についても,支持部材22の形の下部保持部と巻取パイプ24の形の上部保持部とを伴うフィルム20(5欄35〜37行),第1図の左にいる観客(同41行)との記載によれば,観客から見た上下及び前後を踏まえた上で作図されたものであると解される。),画像源と反射面の位置関係が任意に変更可能であることを示唆する記載はない。かえって,反射面を床に設け書の記載上,特許請求の範囲に規定された画像源と反射面の上下関係等が本件発明の本質的部分に当たらないとみることはできないと考えられる。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。\n
◆判決本文
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2015.08.13
平成26(ワ)18842 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年7月28日 東京地方裁判所
特許侵害訴訟です。東京地裁は、文言解釈により技術的範囲に属しないと判断しました。また進歩性なしとして特許104条の3により権利行使不能とも判断してます。\n
まず,「接触圧」との文言について,原被告双方が異なる解釈を採って
いるため,この点について検討する。
「圧」とは「おしつける力」を意味し,「接触」とは「近づきふれるこ
と,さわること」を意味する(広辞苑第6版,乙1参照)。
そして,これらの文言の通常の解釈からすれば,本件特許発明1におけ
る「接触圧」との文言は,複数の物体が互いに接触する際に生じる力ない
し圧力を意味するものと解されるところ,次に指摘する本件特許1の明細
書の記載を参酌すれば,上記文言は,複数の物体が互いに接触する際に生
じる力を意味すると解すべきである。
すなわち,本件特許1の明細書(甲2)において,前記ア
「・・・上記複数の弾性腕の接触部はコネクタ嵌合時に相手端子と最初に
接触する接触部から順に相手端子に対する接触圧が小さくなっており,相
手コネクタを嵌合するときに,最初の接触部を圧したその勢いで,次の弾
性腕の接触部を圧することができるので,小さい挿入力で弾性変形させる
ことができ・・・」「指圧(操作者がコネクタ嵌合時に相手コネクタを押
し込む力であり,接触部での接圧に比例する。)」などと記載されている
ことからすれば,同明細書の記載は「接触圧」を力と同視しているものと
いえ,「接触圧」が相手端子と各弾性腕の接触部との間で生じる力を意味
すること,すなわち「力」であることが明らかといえる。
これに対し,原告は,「接触圧」とは単位変位量当たりの反力(N/m
m)を意味する旨主張する。しかし,これは通常の文言解釈に反する上,
原告の上記解釈を根拠付けるような明細書上の記載は存在しないため,原
告の上記主張を採用することはできない。
このほか,原告は,上記「接触圧」が,嵌合終了時点ではなく嵌合途中
の数値を指すとも主張するところ,既に検討したところによれば,この点
について判断するまでもなく,原告の同主張は採用できない。
ウ 原告は,「接触圧」に関する自らの解釈を前提として,被告製品が構成\n要件1Fを充足する旨主張するが,「接触圧」に関する原告の解釈を採用
できないことは前記イのとおりであって,被告製品が「接触圧」に関する
構成要件1Fを充足することを認めるに足りる証拠はない。\n
◆判決本文
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>> 104条の3
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2015.07.20
平成27(ネ)10019 特許権に基づく損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年7月15日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
クラウドシステムについての特許侵害訴訟(CS関連発明)にて、控訴審でも、技術的範囲に属しないと判断されました。1審は、詳細な説明(目的・効果など)を参酌して、技術的範囲に属しないと判断していました。
控訴人は,甲30文献を根拠に,テンプレートが,仮想マシンの情報等を含
むデータファイルであり,複写の対象となる実体を有するものであって,ハードウ
エア資源を割り付けられることによって仮想マシンとして機能するものであるから,\n被控訴人商品のテンプレートは,本件発明の構成要件Aの「レンタルエンジン」に\n該当するものであり,さらに,インターネット接続も含めて総合試験が実施され動
作保証がされた被控訴人商品の「テンプレート」は,「インターネットに接続する」
「レンタルエンジン」に該当する旨主張する。
そこで,検討するに,甲30号証によれば,仮想マシンによる仮想システムは,
ユーザーが,ユーザーインターフェース画面から,所望の処理能力を有する仮想マ\nシンとそのOSを選択し,この選択された仮想マシンとOSに対してハードウエア
資源内の必要なハードウエア資源を割り付けることで行われる(段落【0003】),
構築した仮想システムを別のユーザーに複写したい場合には,テンプレートファイ\nルを複写して複写テンプレートを作成し,その複写テンプレートに新たなハードウ
エア資源を割り付けて,元の仮想システムと同じ仮想システムを生成することが行
われている(段落【0006】),データセンタは,管理サーバや複数のサーバと複
数のストレージ及び複数のネットワーク機器を有するハードウエア資源群を備えて
おり,ユーザーが作成する仮想マシンを有する仮想システムの情報を有するテンプ
レートファイルに,ハードウエア資源群内のハードウエアを割り付けて仮想システ
ムを構築し運用する管理サーバを有する(段落【0014】),ユーザーが,仮想マ\nシンとそれにインストールするOS等を選択してオーダーすると,オーダーした仮
想マシンを有する仮想システムのテンプレートがハードウエア資源群内のサーバの
ハードディスク領域内に生成され(段落【0022】),管理サーバが,ユーザーが
作成した仮想システムのテンプレート内の仮想マシンや仮想ストレージに,サーバ
やストレージなどのハードウエア資源を割り付けることによって,仮想システムが
構築され,運用可能\になる(段落【0027】)ことが認められる。そして,「サー
バ群#1内には,複数のサーバが設けられていて,それらのサーバはスイッチSW
を介してネットワークで均質に接続され,コアスイッチC−SWを介してネットワ
ークNWに接続され,インターネットからアクセス可能である(段落【0016】)」\nとされる。
そうすると,甲30文献におけるテンプレートについても,それのみでは,実体
のある仮想マシン・仮想システムであるとはいえないし,テンプレートにサーバや
ストレージなどのハードウエア資源を割り付けることによって,初めて実体のある
仮想マシン・仮想システムとして,インターネットからアクセス可能となることが\n認められるのであるから,このテンプレートと,テンプレートにハードウエア資源
を割り付けることによって生成される仮想マシンは,コンピュータ技術上同一のも
のということはできない。そして,前記認定のとおり,被控訴人商品のテンプレー
トは,デザインスタジオの頁において,メニューとして表示されるものであるから,\n被控訴人商品におけるテンプレートは,被控訴人商品のサービスポータルの表示画\n面において,顧客が利用する仮想マシン及び仮想システムの構成のメニューとして\nの選択候補を意味するにすぎない。
以上によれば,甲30文献によっても,被控訴人商品の「テンプレート」が本件
発明の「レンタルエンジン」に該当するものと認めることはできない。
◆判決本文
◆原審はこちら。平成25年(ワ)第16060号
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2015.07.14
平成26(ネ)10104 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年6月16日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
控訴審でも、明細書の記載を参酌して、技術的範囲に属しないと判断されました。
イ 以上によれば,本件発明の技術的意義について,以下のことを認めるこ
とができる。
本件発明は,基板となり得るような結晶欠陥の少ない窒化物半導体(InXAlY
Ga1−X−YN,0≦X,0≦Y,X+Y≦1)を用いたレーザダイオード(LD)
等の電子デバイスに使用される窒化物半導体素子に関する(【0001】)。
従来,窒化物半導体は,サファイア基板上に格子不整合の状態で成長されている
が,格子不整合で半導体材料を成長させると,半導体中に結晶欠陥が発生し,その
結晶欠陥が半導体デバイスの寿命に大きく影響するため,サファイア基板上に,結
晶欠陥が非常に多いGaN層を薄く成長させ,その上にSiO2よりなる保護膜を
部分的に形成し,その保護膜の上からハライド気相成長法(HVPE),有機金属気
相成長法(MOVPE)等の気相成長法を用いて,再度GaN層を横方向に成長さ
せるというラテラルオーバーグロウス(LOG)と呼ばれる成長方法により,結晶
欠陥の少ない窒化物半導体を成長させる試みが行われた(【0002】〜【0004】)。
この従来の方法によると,保護膜の上部に結晶欠陥を集中させて,窓部に結晶欠陥
の少ない領域を作製すること,すなわち,意図的に結晶欠陥を偏在させることがで
きるので,異種基板上に直接成長させた窒化物半導体よりも,結晶欠陥の数は減少
するが(【0006】),窒化物半導体表面に現れている結晶欠陥の数は多く未だ十\分
満足できるものではなく,また,窒化物半導体素子についても,結晶欠陥が偏在す
るため,信頼性も十分とはいえず,そのため一枚のウェーハからレーザ素子を多数\n作製しても,満足できる寿命を有しているものはわずかしか得られないので,寿命
に優れた素子を作製するためには,窒化物半導体表面に現れた結晶欠陥の数を更に\n減少させる必要があった(【0007】)。
そこで,本件発明は,基板となり得る窒化物半導体の結晶欠陥を少なくして,信
頼性に優れた窒化物半導体素子を提供することを目的とし(【0007】),厚みが5
0μm以上であり,少なくとも下面から厚さ方向に5μmよりも上の領域では結晶
欠陥の数が1×107個/cm2以下である,ハライド気相成長法(HVPE)を用
いて形成されたn型不純物を含有するGaN基板と,前記GaN基板の上に積層さ
れた,活性層を含む窒化物半導体層と,前記窒化物半導体層に形成されたリッジス
トライプと,該リッジストライプ上に形成されたp電極と,前記GaN基板の下面
に形成されたn電極と,を備えるたものであり(【0008】,【0009】),その結
果,結晶欠陥が少ないGaN基板の上に活性層を含む窒化物半導体層を積層してい
るので,非常に信頼性の高い素子が実現できるという効果を奏するものである(【0
061】)。
ウ 上記のように解されるから,本件発明において,結晶欠陥の数が多い高
キャリア領域にn電極を設けることによって,効率のよい素子を作製することまで
がその技術的意義に含まれるとはいえず,したがって,この観点から,「GaN基板」
の解釈を導くことはできない。
また,本件発明は,物の発明に関するものであり,ハライド気相成長法(HVP
E)を用いることを除き,結晶成長方法を特許請求の範囲に含めておらず,本件明
細書において,n型不純物を含有するGaN基板をハライド気相成長法(HVPE)
で形成するに際し,新たに3族源のガスに対する窒素源のガスのモル比(窒素源/
3族源)を2000以下に調整することで,結晶欠陥を横方向に伸ばすことが記載
されている(【0010】,【0019】,【0022】)としても,結晶成長方
法をこれに限定するものでない(【0016】)旨も記載されている。
エ(ア) しかし,その一方,上記【0016】は,「第2の窒化物半導体層の
結晶欠陥の多い領域と,少ない領域とが窒化物半導体積層方向に対してほぼ同じ方
向にあれば,」成長方法は特に限定されない旨が記載されているのであり,第2の
窒化物半導体層は,結晶欠陥の多い領域と少ない領域が積層する厚み方向に対して
上下方向に位置するものであることを前提としている。
・・・
そうすると,本件明細書では,下地層が除去されて素子構造を形成する場合には,\nn型不純物のドープと併せて,結晶欠陥の多い領域を残存させることによって,高
キャリア濃度を確保する手段が記載されており,結晶欠陥の少ない領域にドープを
することによって適切なキャリア濃度に調整することや,そのようなドープのみで
適切なキャリア濃度を確保して動作をさせることが可能か否かについても明らかで\nはないといわざるを得ない。
◆判決本文
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2015.07. 8
平成26(ワ)23732 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年6月26日 東京地方裁判所
構成要件1Bを有していないとして技術的範囲外と判断されました。なお、原告は、侵害訴訟の終結時期に訂正審判請求を行い、これに基づいて技術的範囲に属するとの主張をしましたが、裁判所は、これについて認めないと判断しました。
原告が本件訴訟の係属後にした訂正審判請求について付言しておく。
(1) 原告は,平成27年3月11日付けで訂正審判(訂正2015−39022。以下「本件訂正審判」という。)を請求し,本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲の訂正を求めているが(甲8,9),明細書,特許請求の範囲又は図面の訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであってはならない(特許法126条6項)から,本件訂正審判の結果によって,被告製品が本件各特許発明の技術的範囲に属するものとは認められない旨の前記判断が覆ることは,理論上,あり得ない(仮に,誤ってそのような訂正が認められたときは,特許法123条1項8号所定の無効事由が生じたことになる。)。
(2) 原告が本件訂正審判において求めている特許請求の範囲の訂正には,本件特許発明1の構成要件1A―\(3)及び1−Bについて,「尾根構造体の短手方向に支柱を連結する複数のシザー組立体の中央部に前記幕体支持ポールを垂直に連結し」,「複数のシザー組立体」(下線部は,いずれも訂正箇所を示す。)などとすることが含まれる(甲8)。\nしかし,構成要件1A−(2)は,「シザー組立体は2本のバーをX字状に回動自在に連結してパンタグラフ状に折り畳み自在とした構造とし」としているから,シザー組立体は2本のバーをX字状に連結したものを1単位と解すべきであるところ,仮に,構\成要件1A−(2)を「複数のシザー組立体の中央部」と訂正したとしても,シザー組立体が三つ,又は,五つなど奇数単位存在する場合には,その中央部は,シザー組立体とシザー組立体の間ではなく,2本のX字状のバーの交差する箇所を中央部として幕体支持ポールを垂直に連結することを示すと解さざるを得ない。このような例は,本件明細書に記載されておらず,シザー組立体の単位数が奇数か偶数かで幕体支持ポールの位置が異なることになる。
したがって,本件訂正審判に係る訂正は,少なくとも,特許法126条5項に違反するものであって,認められるべきものではないと思われる。
(3) 原告は,本件訂正審判の請求後,特許庁長官に対し,審判請求書を補正する旨の同年4月7日付け手続補正書(甲9)を提出したが,同補正書によれば,原告が求めている特許請求の範囲の訂正には,構成要件1Cについて,「該補強フレームの一端は最も外側に位置する幕体支持ポールの上端位置に係止し,補強フレームの他端は隣接する幕体支持ポールに挿着されたスライトブラケットに上方から当接させることにより,幕体支持ポールを垂直に保持しながら,シザー組立体の伸張を維持しテント側面の強度を向上しつつ,直立する妻面を構\成するようにしたことを特徴とする」(下線部は,いずれも訂正箇所を示す。)などとすることが含まれるようである(同補正書の1頁には,「補正対象項目名」として「請求の理由」とあ
り,「請求の趣旨」とは記載されていないが,訂正特許請求の範囲を含む同補正書2頁以下の記載によれば,請求の趣旨を補正することが当然の前提となっているものと考えざるを得ないし,原告の同月8日付け準備書面2〔4頁〕にも,これに沿う記載がある。)。
しかし,訂正審判における審判請求書について,請求の趣旨を補正することは認められていない(特許法131条の2第1項1号)。
なお,仮に,原告が本件訂正審判に係る請求の趣旨の補正を求めていないとすれば,同補正書の記載はおよそ無意味であるというほかはなく,原告がいかなる目的で同補正書を特許庁長官に提出し,また,本件訴訟において書証として申し出たのか,理解に苦しむところといわなければならない。
(4) 以上より,本件訴訟において,原告が本件訂正審判において求めている訂正を前提として,本件各特許発明の技術的範囲に被告製品が属するか否かを検討する必要がないことは,明らかである。
◆判決本文
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2015.06. 3
平成26(ネ)10112 特許専用実施権侵害行為差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年5月28日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
均等侵害について、知財高裁は、1審と同じく第1および第3要件を具備していないと判断しました。
控訴人は,本件相違点3に関し,1)本件発明の本質的部分は,「グリップベース」の上下方向の可動性であり,「スライドボルト」の上下方向の可動性ではない(第3の1【控訴人の主張】⑴ウ(ア)a),2)本件相違点3及び4に関し,「スライドベース」の固定用垂直面の縦長小判穴,「スライドボルト支持用垂直面」に形成され
た縦長穴,「スライドボルト」及び「スライドタップ」の構成(構\成要件D3及びD4)は,「スライドベース」にリベット固定されたベースレールが島上部枠構造の下面にネジ留め固定される機構\(構成要件D1及びD2)と,「グリップベース」と「グリップアーム」とにより台枠上板が挟持される機構\(構成要件D5及びD6)の係わり合わせ方の1つにすぎず,その構\成自体は,本件発明の本質的部分ではない旨主張する(第3の1【控訴人の主張】⑴ウ(ア)c)。
イ しかしながら,前記⑶エのとおり,本件発明は,上部取付装置30の自動高さ整機能によって,島枠構\造の高さと台枠の高さとの間に差があっても,自動的に調整できる構造を備えたパチンコ台取付装置の提供という,従来の技術の問題点に係る課題の1つを解決するものであるところ,上記機能\に必須の要件といえるグリップベース35の上下方向の可動性は,グリップベース35が固定されたスライドボルト33が,「上下方向に移動可能に保持されること」という構\成によって確保されている。
この点に鑑みると,本件発明においては,「グリップベース」の上下方向の可動性よりも,その必要不可欠な前提である「スライドボルト」の上下方向の可動性が,本質的部分を構成するものとみるべきである。
ウ また,前記⑶ウのとおり,本件発明において,「スライドボルト」の上下方向の可動性は,スライドボルト33が,スライドベース31の固定用垂直面31bの縦長小判穴31eの長径とスライドボルト33の縦方向の径の長さとの差の範囲内において,上下方向に移動の自由が与えられた状態で,取り付けられているという構成によって,確保されている。\nさらに,グリップベース35が,スライドボルト33に螺合されたスライドタップ34に溶接固定され,スライドベース31の底面中央開口31dに吊り下げられた状態で取り付けられているという構成によって,グリップベース35を,上下方向の可動性が確保されたスライドボルト33の動きに追随させ,パチンコ台アセンブリの取付前は,重力により下がり,同取付時において台枠よりも低いときは,その高さまで押し上げられるようにしている。
以上によれば,本件相違点3及び4に係る本件発明の「スライドベース」の固定用垂直面の縦長小判穴,「スライドボルト支持用垂直面」に形成された縦長穴,「スライドボルト」及び「スライドタップ」のこれらの構成は,本件発明の課題の1つである上部取付装置30の自動高さ調整機能\を実現するためのものといえるから,本件発明の本質的部分に関わるものというべきである。
◆判決本文
◆原審はこちらです。平成25年(ワ)第31341号
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2015.05.29
平成27(ネ)10006 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年5月21日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
インターネットオークション・ショッピングの価格比較サイトの運営が特許権侵害かが争われました。知財高裁は、侵害でないとした1審判断を維持しました。争点は複数主体による侵害、間接侵害、均等侵害など種々ありましたが、そもそも構成要件が欠落しているとして請求棄却です。
前記(3)イ(イ)認定のとおり,被告サーバーは,被告サイトにアクセ
スしたユーザーのクライアント端末の要求に基づいて,そのディスプレ
イ上に,予め被告サーバーに保管されていた過去に開催されたオークシ\nョン商品の縮小画像のアイコン2を含む画面3を表示させ(原判決別紙\n物件目録の別紙図9,12参照),ユーザーによってアイコン2がクリ
ックされると,当該クリックされたアイコン2に対応する上記商品の画
像4,落札価格等の商品情報を主表示した画面5を表\\示(同原判決別紙
物件目録の別紙図9,12参照)させる構成を有するが,被告サーバー\nに予め保管されていた過去に開催されたオークション商品の縮小画像,\n画像,落札価格等の商品情報は,ヤフー社が一般に公開しているAPI
に接続してヤフー社が運営管理するヤフーサーバーから送信された「ヤ
フオク!」のオークション情報であるものと認められる。
しかるところ,ヤフーサーバーから送信された「ヤフオク!」の上記
オークション情報は,「ヤフオク!」のWebサイトのWebページの
情報であり,そのWebサイトの運営又は管理の主体はヤフー社である
から,「商品の広告をネット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管
理する「Webサイト」又はそのトップページとしてのホームページで
ある「参加企業のホームページ」に該当するものと認めることはできな
い。
控訴人は,この点について,ヤフーサーバーには,「ヤフオク!」の
個別のオークション商品ごとのWebページのデータがオークションコ
ードごとの場所(ドメインないしURL)に保管されており,このオー
クション商品ごとのWebページは,「ヤフオク!」における「出店者」
である参加企業が自由に編集可能なオークション商品ごとのWebペー\nジであり,その運用又は管理の主体は参加企業であるといえるから,「
参加企業のホームページ」に該当し,ヤフーサーバーには「参加企業の
ホームページ」を保管する「バナーサーバー」が存在する旨主張する(
なお,控訴人の上記主張は,前記第3の1(2)アのとおり,「争点1−イ」
に関するものであるが,その主張内容に照らし,「争点1−ア」におい
ても主張するものと解される。)。
しかしながら,前記(3)ウ(イ)の認定事実によれば,「ヤフオク!」の
サイトの個別のオークション商品のWebページには,「商品の情報」
(「即決価格」,「残り時間」,「入札件数」,「個数」,「開始時の
価格」,「最高額入札者」,「開始日時」,「終了日時」,「商品説明
を読む」等),「商品画像」(小さな画像をクリックすると,拡大表示\nされる。),「出品者の情報」(「出品者(自己紹介),「評価」,「
出品者への質問」,「出品者のその他のオークションを見る」),「商
品画像」等が掲載されるが,当該Webページは,ヤフー社が自ら運営
又は管理する自社のWebページであることが明らかである。
また,「ヤフオク!」のサイトのオークション商品のWebページに
掲載される「商品の情報」及び「出品者の情報」は出品者によって入力
され,「商品画像」は出品者によってアップロードされるが,その入力
項目はヤフー社によって設定され(甲74),Webページにおける各
情報の表示スタイルもヤフー社によって定められたものであり,表\\示さ
れる情報の入力等が出品者によって行われるからといって,当該Web
ページが出品者が運営又は管理する「Webサイト」又はそのトップペ
ージとしてのホームページであるということはできない。
◆判決本文
◆1審はこちらです。平成25年(ワ)247069
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2015.05.24
平成26(ワ)4 特許権侵害差止等請求事件 平成27年4月28日 大阪地方裁判所
傾斜角度が0°は本件クレームの「テーパーカム面」に該当しないとして、技術的範囲に属しないと判断されました。
「テーパーカム面」の意義について,本件特許請求の範囲や本件明細書に具体的な記載はないところ,原告は,「テーパーカム面」は,不可分一体の用語であり,シリンダ形成部材テーパー面40と対向してセットになるカム作用を生じさせる面であり,傾斜角度がつけられていることは必須ではない旨主張するのに対し,被告は,「テーパー」で限定された「面」あるいは「カム面」である旨主張する。
(イ) 原告は,本件明細書において,「テーパー面(40)」と,「カム面(28,29)」及び「テーパーカム面」は明確に書き分けられていると指摘し,「カム面」を,カム作用を生じさせる面であるとして,前記のとおり主張する。
しかし,構成要件C5は,「カム面(28,29,40)よりなる増力機構\」と記載し(「40」は,訂正により加えられている。),ボールを介した増力機構における面40,面28及び面29を「カム面」として同列に記載していることからすれば,原告が主張するような明確な書き分けがされているとまではいえない。\nまた,本件明細書において,面28,29及び40については「カム面」との用語を使用しながら,構成要件E2において「テーパーカム面(29)」との用語を使用しているということは,当該面それ自体が,「カム」としての性格または機能\と「テーパー」としての性格または機能を有する趣旨と解するのが自然である。\n
(ウ) 原告は,「テーパー」の意味として,ピストン側のボールと接する面(28)及び可動側クランプ部材の面(29)と,シリンダ形成部材との各2両面で勾配を形成していることのように主張する。
しかし,本件明細書には,回転軸芯と面28とのなす角度α1を「テーパー角」,「シリンダ形成部材31のテーパー面40及び可動クランプ部材21のテーパーカム面29は,回転軸芯と直角な面に対して30°以下の緩やかな傾斜角度α2,α3」となっている旨の記載があり(【0018】),ボール26を囲む面の有する勾配については,回転軸芯ないしは回転軸芯と直角な面に対する勾配であることを前提としていることが認められるものの,複数の面の相関関係によって円錐状の勾配が形成されるとの意味で「テーパー」が用いられていると解し得る記載は存しない。
そして,本件特許は回転軸芯を中心とした円テーブル装置であり,その構造に関する本件特許請求の範囲の記載を解釈するものであることをあわせ考慮すれば,「テーパー」とは,回転軸芯あるいは回転軸芯と直角な面を基準として,傾斜角度を有することと解するのが相当である。\nこの点,原告は,面29の回転軸芯と直角な面に対する角度(α3)が0°の場合も含む旨主張し,当業者の認識理解や,α3が0°の場合のみ除くのは不自然であることなどを指摘するが,上記「テーパー」の意義からすれば,原告の上記主張は採用できないというべきである。
(エ) 前述のとおり,構成要件E2の「テーパーカム面」は,面29それ自体が,「テーパー」としての性格または機能\と「カム」としての性格または機能を有すべきところ,前記イ(イ)によれば,「カム」の典型的機能は,回転運動を直線運動に変換することであるから,広義では,方向等を変換しつつ力を伝達する部材と解する余地がある。\nまた,上記検討したところによれば,「テーパー」は,回転軸芯あるいは回転軸芯と直角な面を基準として傾斜角度(0°を含まない。)を有するとの意味になる。
ウ 被告製品の構成要件E2充足性
以上を前提に,被告製品が,構成要件E2を充足するかにつき検討するに,前記認定によれば,クランプリング8の鋼球10と当接する面は,増力機構\の一部として,鋼球10を介し,クランプピストン9の前進による力をクランプリング8に伝達するのであるから,カム面としての性質を有しているということはできる。
しかしながら, 被告製品において,クランプリング8の鋼球10と当接する面が回転軸芯と直角であること(α3=0°)は争いがなく(原告は,この面が傾斜している旨を主張するものではなく,この面の傾斜角度が0°であっても,テーパーカム面に該当する旨を主張する。),「テーパー」について前記イのとおり解する以上,この面は「テーパーカム面」に該当せず,結局,被告製品は構成要件E2を充足しない。\n
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2015.05.19
平成26(ネ)10107 特許権侵害行為差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年5月14日 知的財産高等裁判所 大阪地方裁判所
CS関連発明について、技術的範囲に属しないとした1審判断が維持されました。争点が「一覧出力形式」という用語の意味です。
控訴人は,「一覧」とは「全体に一通り目を通すこと」という意味も包含するのであって,「全体を一目で分かるように」する場合に限る必要はないし,本件発明1に対する課題解決のための手段という観点からも,出願経緯からも,出力を1回に限定する必要もなく,被控訴人方法は構成要件1Dを充足すると主張する。\n確かに,「全体を一目で分かるように」するためには,全体が画面に表示される必要があるものの,その場合,画面への表\示までに送信されるデータが一度で出力されなければならない必然性はない。また,【0055】にあるとおり,本件発明1は,画面をスクロールする場合を含むのであって,この場合,画面上表示されない画像データについては事前に送信しなくても,表\示するためのスクロールの時点までに送信されていれば,全体を確認することができる以上,画面上表示されない画像データについては事前に送信しない方法も考えられ,このような観点からしても,画\n
像出力の回数を1回に限定する必要はない。また,本件発明1の目的,作用効果を果たすためには,事業者は,顧客に対し,預かった複数の品物の全てについて一目で分かるように,すなわち,複数の品物の全ての画像を含むように生成したウェブページとして1回の呼出操作で,ウェブページに含まれる品物に対応した画像を閲覧できるように提示する必要があるが,このことを表現するものとして,控訴人の主張するとおり,「一覧」は「全体に一通り目を通す」ものと解釈することも一応は可能\である。
しかしながら,そう解釈した場合であっても,顧客が自らの預かり品の「全体」の範囲を簡単に把握,理解できない方法では,すなわち,自分が行った1回の呼出操作で全ての商品の画像が同一ウェブページに表示されず,出力されていない画像が他に存在する構\成に基づく方法では,顧客が,表示されていない品物の存在を失念している場合には,他のカテゴリーにアクセスしたり,同一カテゴリー内にある他の画像を呼び出したりすることは考えられないのであって,自分が預けた品物を全て正確に把握するという上記課題を解決できないから,「全体に一通り目を通す」ことにならない。そうすると,1回の呼出操作で全ての商品の画像が同一ウェブページに表\示されない新旧いずれの方法についても,被控訴人方法がこの要件を欠くものとなる。
したがって,被控訴人方法は,本件発明1の技術的範囲に属しない。同様の理由で,被控訴人方法は,本件発明2及び3の技術的範囲に属さず,被控訴人装置も,本件発明4から6の技術的範囲に属しない。
◆判決本文
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2015.04.13
平成26(ワ)23512 差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年3月24日 東京地方裁判所
ECサイトの楽天に対する特許権侵害が認められませんでした。代理人無しの本人訴訟です。YAHOOに対しても訴訟提起しており、同じ判断がなされました。事件番号はいずれも平成26(ワ)23512号ですが、判決文のURLは異なるので、おそらく間違いなのでしょう。
本件明細書の上記イの記載によれば,本件発明は,ホタテ等の貝殻を粉砕した炭酸カルシウム粉末の粒体が多孔質粒体であり,多孔質粒体は吸着効果が大きいことを利用して,洗浄する物品に付着した化学物質等を吸着することを技術思想とする発明であると認められる。そうすると,本件発明の「炭酸カルシウムの方解石型構造による結晶構\造体を備えた貝殻を粉砕した粉末からなる炭酸カルシウム粉末」とは,上記アのとおり,貝殻を粉砕した粉末そのものであることを要するものであり,ホタテ貝殻を粉砕した粉末を焼成して得られた酸化カルシウム粉末が化学反応を経て炭酸カルシウム粉末になったものは含まないものと解される。
(2) 原告は,これと異なる前提に立って,被告各製品がホタテ貝殻を使用した製品であり,酸化カルシウム,炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを含むことから本件発明の技術的範囲に属すると主張し,被告各製品が,ホタテ貝殻を粉砕した炭酸カルシウム粉末そのものを混合した構成であることを主張立証しない。\nしたがって,原告の主張は,均等をいう部分を含めて採用できず,被告各製品が本件発明の技術的範囲に属すると認めることはできない。
◆判決本文
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2015.04. 8
平成26(ワ)11110 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年3月25日 東京地方裁判所
第4要件を満たしていないとして均等侵害ではないと判断されました。
原告は,乙1発明は,役者やモデルのような舞台に上がる者を対象としたメイクアップの技術であるのに対し,乙4発明は,模型等を対象とした塗装技術であって,技術分野が全く異なること,また,乙1発明と乙4発明の解決課題が異なることから,乙1発明に乙4発明を適用する動機付けがないと主張する。しかし,証拠(乙1)によれば,乙1文献の「問題点を解決するための手段」には,「本発明者は,上記の問題点を解決するために,化粧料を,手作業によって塗布する代りに,工業的に吹き付けることに気が付き,塗料を噴霧して吹き付けるのと同様な方法によって化粧料を噴霧して吹き付けることを考え付いたのである。」との記載があり,この記載はまさに,塗料を噴霧して吹き付ける塗装技術を,化粧料を吹き付ける技術に応用することが可能であることを示唆するものであると認めることができる。したがって,上記記載に照らせば,化粧料の吹付けに関する乙1発明に塗装技術である乙4発明を適用する動機付けがあるというべきであり,これに反する上記原告の主張は採用することができない。\n
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2015.03.18
平成24(ワ)15621 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年1月22日 東京地方裁判所
かなりレアの判断です。侵害ではあるが、過剰な差止を認めることとなるとして、差止請求が棄却されました。
原告は,本件における差止めの対象を,被告合金1及び2のうち,X線ランダム強度比の極大値が6.5以上のものであると限定するが,同一の製造条件で同一組成のCu−Ni−Si系合金を製造した場合,当然に,X線ランダム強度比の極大値が同一になることまでをも認めるに足りる証拠はなく,かえって,前記のとおり,製造ロットや測定部位の違いによりこれが変動する可能性があることからすると,正確なX線ランダム強度比の極大値については,製造後の合金を測定して判断せざるを得ないことになるが,この場合,どの部位を測定すればよいか,また,ある部位において構\成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,どこまでの部分が構成要件Dを充足することになるのかといった点について,原告は,その基準を何ら明らかにしていない。\nそうすると,被告の製品において,たまたま構成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとして,当該製品全体の製造,販売等を差し止めると,構\成要件を充足しない部分まで差し止めてしまうことになるおそれがあるし,逆に,一定箇所において構成要件Dを充足しないX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,他の部分が構\成要件Dを充足しないとは言い切れないのであるから,結局のところ,被告としては,当該製品全体の製造,販売等を中止せざるを得ないことになる。そして,構成要件Dを充足する被告合金1及び2が製造される蓋然性が高いとはいえないにせよ,甲5のサンプル2のように,下限値付近の測定値が出た例もあること(なお,原告は,これが構\成要件Dを充足しないことを自認している。)に照らすと,本件で,原告が特定した被告各製品について差止めを認めると,過剰な差止めとなるおそれを内包するものといわざるを得ない。
さらに,原告が特定した被告各製品を差し止めると,被告が製造した製品毎にX線ランダム強度比の極大値の測定をしなければならないことになるが,
これは,被告に多大な負担を強いるものであり,こうした被告の負担は,本件発明の内容や本件における原告による被告各製品の特定方法等に起因するものというべきであるから,被告にこのような負担を負わせることは,衡平を欠くというべきである。
これらの事情を総合考慮すると,本件において,原告が特定した被告各製品の差止めを認めることはできないというべきである。
◆判決本文
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2015.03.18
平成24(ワ)15621 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年1月22日 東京地方裁判所
かなりレアの判断です。侵害ではあるが、過剰な差止を認めることとなるとして、差止請求が棄却されました。
原告は,本件における差止めの対象を,被告合金1及び2のうち,X線ランダム強度比の極大値が6.5以上のものであると限定するが,同一の製造条件で同一組成のCu−Ni−Si系合金を製造した場合,当然に,X線ランダム強度比の極大値が同一になることまでをも認めるに足りる証拠はなく,かえって,前記のとおり,製造ロットや測定部位の違いによりこれが変動する可能性があることからすると,正確なX線ランダム強度比の極大値については,製造後の合金を測定して判断せざるを得ないことになるが,この場合,どの部位を測定すればよいか,また,ある部位において構\成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,どこまでの部分が構成要件Dを充足することになるのかといった点について,原告は,その基準を何ら明らかにしていない。\nそうすると,被告の製品において,たまたま構成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとして,当該製品全体の製造,販売等を差し止めると,構\成要件を充足しない部分まで差し止めてしまうことになるおそれがあるし,逆に,一定箇所において構成要件Dを充足しないX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,他の部分が構\成要件Dを充足しないとは言い切れないのであるから,結局のところ,被告としては,当該製品全体の製造,販売等を中止せざるを得ないことになる。そして,構成要件Dを充足する被告合金1及び2が製造される蓋然性が高いとはいえないにせよ,甲5のサンプル2のように,下限値付近の測定値が出た例もあること(なお,原告は,これが構\成要件Dを充足しないことを自認している。)に照らすと,本件で,原告が特定した被告各製品について差止めを認めると,過剰な差止めとなるおそれを内包するものといわざるを得ない。
さらに,原告が特定した被告各製品を差し止めると,被告が製造した製品毎にX線ランダム強度比の極大値の測定をしなければならないことになるが,
これは,被告に多大な負担を強いるものであり,こうした被告の負担は,本件発明の内容や本件における原告による被告各製品の特定方法等に起因するものというべきであるから,被告にこのような負担を負わせることは,衡平を欠くというべきである。
これらの事情を総合考慮すると,本件において,原告が特定した被告各製品の差止めを認めることはできないというべきである。
◆判決本文
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2015.03.16
平成26(ワ)65 差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年2月27日 東京地方裁判所
携帯電話の入力支援方法についての特許権の技術的範囲に属しないと判断されました。
ア 振動状態のショートカットアイコンが移動可能な状態になることについて甲3,甲17の1,甲32の1・2及び弁論の全趣旨によれば,本件ホームアプリにおいて,振動状態でないショートカットアイコンにドラッグ操作を行っても指の動きに追従して移動することはないが,振動状態のショートカットアイコンにドラッグ操作を行うと,指の動きに追従して移動することが認められる。\nそうすると,ロングタッチは,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」とみることができる。原告は,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味であるから,「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの座標位置を移動させる状態に切り替える命令」という意味であると主張する。\nしかし,「させる」とは「ある行為をするように仕向ける」という意味であるから(甲27),「ポインタの位置を移動させる命令」とは,「ポインタの位置を移動するよう仕向ける命令」すなわち「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味することは一義的に明確であって,これを「ポインタの位置を移動可能な状態に切り替える命令」であると解釈する余地はない。「ある行為をするように仕向ける」ことと,「ある行為が可能\な状態に切り替える」こととが異なることは明らかであるから,「させる」に前者の意味があるとしても,後者の意味があることにはならない。原告の主張は失当である。
本件明細書の段落【0052】〜【0101】の実施例の説明を見ても,構成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に対応するものとしては,「例えば,マウスにおける左ボタンや右ボタンを押したままマウスを移動させること(ドラッグ操作)や,キーボードにおける特定のキーを押しつつマウスを移動させる行為,等が該当する。」(段落【0079】)とされ,「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」としているのであって,「ポインタの位置を移動可能\な状態に切り替える命令」をもって「ポインタの位置を移動させる命令」とすることについては何らの記載も示唆もない。このような本件明細書の記載を参酌すれば,「ポインタの位置を移動させる命令」が「ポインタの位置を移動するよう指示する命令」を意味し,「ポインタの位置を移動可能\な状態に切り替える命令」を意味しないことは一層明らかである。\nしたがって,ロングタッチが「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置を移動可能な状態に切り替える命令」であったとしても,構\成要件Eにいう「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるということはできない。
イ 振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動することについて
ロングタッチにより振動状態となったショートカットアイコンは,元々の位置よりやや下に移動して振動するものと認められる。
しかし,甲32の1・2によれば,Facebookアイコンをロングタッチすると,ロングタッチ中のFacebookアイコンのみならず,ロングタッチしていないEvernoteアイコンやTwitterアイコンも元々の位置よりやや下に移動して振動状態となっていることが認められる。
そうすると,ロングタッチが,「ポインタ(=ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコン)の位置」を「元々の位置よりもやや下に移動させる」ことを指示する命令ということはできない。ロングタッチ中の振動状態のショートカットアイコンがやや下に移動するのは,他のショートカットアイコン(非「ポインタ」)の移動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということはできない。
ウ 振動状態のショートカットアイコンが小刻みに振動することについて
甲32の1によれば,ロングタッチにより振動状態となったロングタッチ中のショートカットアイコン(=「ポインタ」)は小刻みに振動することが認められるが,これも,他のショートカットアイコン(非「ポインタ」)の振動と同様,振動状態になったことを示す付随的な動作にすぎず,このような付随的な動作が生じることをもって,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令(=移動を指示する命令)」であるということはできない。
(6) 「ポインタの位置」を「『Multi Touch』ソフトウェアがカーソ\\ルや数値で表示する座標位置」とした場合原告は,甲32の1・2において「Multi Touch」と題するソフトウェアが赤いカーソ\ルの位置や画面左上の数値で表示する座標位置の変化をもって,「ポインタの位置の移動」であるかのような主張をする(原告準備書面(2)42頁)。しかし,原告は,「Multi Touch」と題するソフトウェア(及びこれにデータを提供していると主張する「MotionEvent」と題するソフトウェア)がどのようなデータを検出しており,それが本件発明にいう「ポインタ」の定義を満たすのかについて主張立証をしないから(指を離した状態でも,また「ショートカットアイコンが指に追従する」状態でなくてもカーソ\ルが表示されているのであるから,「タッチパネル上の指の座標位置」でも,「指の動きに追従するショートカットアイコンの座標位置」でもないことは明らかである。),当該ソ\フトウェアが何を検出しているにせよ,それが本件発明にいう「ポインタ」に当たると認めることはできず,仮にロングタッチにおいて上記ソフトウェア上のカーソ\\ルや数値で表示される座標位置が変動するとしても,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」に当たるとはいえない。(7) 本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでない場合被告の主張するとおり,本件ホームアプリが「ポインタ」を用いるものでないと解釈した場合には,当然ながら,「ポインタの位置を移動させる命令」も存在しない。
(8) 以上のとおり,本件ホームアプリにおける「ポインタ」をどのように解釈するにせよ,ロングタッチが「ポインタの位置を移動させる命令」であるとはいえないから,その余の点につき判断するまでもなく,本件ホームアプリは,本件発明の構成要件Eの「入力手段を介してポインタの位置を移動させる命令を受信すると……操作メニュー情報を……表\示する」出力手段を備えたコンピュータシステムにおけるコンピュータプログラムであるとは認められない。
◆判決本文
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2015.03. 3
平成26(ネ)10114 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成27年2月26日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
知財高裁は、インターネットショッピングサイト「ZOZOTOWN」に対して、特許権に基づく、損害賠償請求を棄却した1審判断を維持しました。
1審判決はなぜかアップされてません。
被告ウェブサイトは,被控訴人が多数のファッションブランドの商品を販売するインターネットショッピングサイトであり,被控訴人は,ブランド各社から納入を受けた商品を被告ウェブサイトにアクセスしたユーザーに対し,被控訴人の名義で販売しており,被告ウェブサイトで商品情報画像のアイコン2(別紙1の図2)がユーザーによってクリックされると,関連商品が表示されるリンク先のページ(別紙1の図3及び図4)は,被控訴人の自社のページであること,被告ウェブサイトで表\示される他のページも,いずれも被控訴人の自社のページであり,被告ウェブサイトには,被控訴人以外の他の企業が管理するホームページに誘導するバナー広告が存在しないことが認められる。
したがって,被告ウェブサイトを使用する被告システムには,「商品の広告をネット上で紹介提供」する参加企業が運営又は管理する「Webサイト」又はそのトップページとしてのホームページである「参加企業のホームページ」が存在するものと認めることはできず,ひいては,被告システムにおいて,「参加企業のホームページ」を保管する「バナーサーバー」が存在するものと認めることはできない。
◆判決本文
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2015.03. 2
平成26(ワ)7856 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年2月24日 東京地方裁判所
CS関連発明について、構成要件を備えていないとして、特許権侵害が否定されました。
前記前提事実及び上記認定事実に基づき構成要件1D並びに2C及び2Dにいう「第1記録領域」及び「第2記録領域」の意義についてみるに,まず,特許請求の範囲の「記録媒体の第1記録領域」及び「記録媒体の第2記録領域」との記載によれば,第1記録領域及び第2記録領域は,記録媒体が有する記録領域全体のうちそれぞれ一部分を占める領域であり,相互に区別されて存在するものであることが明らかである。また,「第1データを・・・第1記録領域に書き込み」,「第2データを・・・第2記録領域に書き込\nむ」との記載によれば,データを書き込む際には,それが第1データであるか第2データであるかに応じて,記録領域全体のうちどの領域に書き込まれるのかが定まっているとみることができる。
このような特許請求の範囲の記載によれば,記録媒体の記録領域は,第1記録領域及び第2記録領域(並びに管理領域その他の領域)に物理的に区分されており,第1データが記録される第1記録領域に第2データが書き込まれたり,第2データが記録される第2記録領域に第1データが書き込まれたりすることはないと解すべきものとなる。
そして,上記の解釈は,前記(1)イの本件明細書の記載,すなわち,半導体メモリには第1記録領域と第2記録領域が形成されており,第1データの書き込みは第1記録領域の書込可能容量に達した場合に終了し,第2データの書き込みは第2記録領域の書込可能\容量に達した場合に終了する旨の記載に沿うものであって,本件明細書(甲4)の発明の詳細な説明及び図面に,これと異なる構成(第1データが記録されるべき領域への第2データの書き込み又は第2データが記録されるべき領域への第1データの書き込みを許容するような構\成)を示唆する記載は見当たらない。
そうすると,第1記録領域及び第2記録領域は,記録媒体の記録領域を物理的に区分して形成された別個の領域であると解するのが相当である。
・・・
被告機器及び被告運行管理方法においては,センサから出力され,一次記録領域に記録された加速度データを,トリガ判定閾値を超えるなどの条件を満たすデータ(原告が第1データに当たると主張するもの。以下「甲データ」という。)であるか,事故判定閾値を超えるなどの条件を満たすデータ(原告が第2データに当たると主張するもの。以下「乙データ」という。)であるかに応じて,記録媒体(CFカード)に形成された別個のファイルに記録するとされている(別紙被告機器・・・)。そして,原告の認めるとおり,CFカードの記録領域は物理的に区分されておらず,甲データ又は乙データに対応するファイルが記録領域全体のうちどの部分に形成されるかは書き込みをする際に定まるというのであるから,CFカード中の空き領域には甲データ及び乙データのいずれもが書き込まれ得るということができる。
以上によれば,被告機器及び被告運行管理方法は本件各特許発明の「第1記録領域」及び「第2記録領域」に相当する構成を有していないと判断するのが相当である。\n
◆判決本文
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2015.02. 8
平成24(ワ)15693 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年1月23日 東京地方裁判所
図書保管管理システム(CS関連発明)について、技術的範囲に属しないと判断されました。また、訂正の抗弁についても、「再訂正によって特許の無効理由が解消されるとは認められない」と判断されました。
本件発明が物の発明であることに鑑みると,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する」との文言から,上記更新手段は,\n
ステーションに搬送された状態で,図書が取り出された状態のコンテナ又は図書が返却された状態のコンテナに対して,記憶手段の記憶内容を更新するという構成を示していると解するのが自然である。そして,本件明細書等には,「図書館員がコンソ\ール54を操作して返却完了の指示を中央処理装置39に入力すると,図書コードと,…コンテナ番号とを組み合わせ,その組み合わせたデータを…前記ハードディスク47等に登録する。」(段落【0051】),「…図書館員がコンソール54を操作して取り出し完了の指示を中央処理装置39に入力すると,…更新する。」(段落【0058】)というように上記解釈を裏付ける記載はあるが,その一方で,本件明細書等には,ステーションに搬送されていない状態で,図書の取り出し又は返却の完了していない状態のコンテナに対して更新するものとする更新手段の構\成については,記載されていないし,かかる構成の示唆すらない。\nさらに,前記の本件明細書等の記載には,「…図書の取り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,…記憶内容が更新される」(段落【0010】),「このようなサイズ別フリーロケーション方式による図書の保管管理手段を採用することにより,…同一寸法の図書ならば,その寸法の図書を収容するためのコンテナ内に任意に返却することが可能となるので,…自動化による図書の取り出し及び返却作業の能\率を効果的に向上させることができる」(段落【0011】)と記載されており,これらの記載から,本件発明において前提とされるサイズ別フリーロケーション方式は,同一寸法の図書ならばコンテナ内に任意に返却することが可能な構\成,すなわち,同一寸法の図書であればその寸法の図書を収容するためのコンテナ内に空きのある限り任意に収容することが可能な構\成とされているものと理解することができる。そして,コンテナ内に空きのある限り図書を任意に収容するためには,図書の取
り出しや返却が行われたコンテナが書庫に戻される際に,更新手段が記憶内容を更新する,すなわち,図書の取り出しや返却が行われた状態にあるコンテナに対して記憶内容を更新することが必要であり,そのような構成が本件発明におけるサイズ別フリーロケーション方式の前提となっているものと解される。
ウ したがって,構成要件1Fの「…ステーションに搬送されて,…要求図書が取り出されたコンテナまたは…返却されたコンテナに対して…更新する更新手段」とは,ステーションに搬送された状態で図書が返却された状態のコンテナに対して記憶内容を更新する構\成を具備する更新手段をいうものと解するのが相当である。
・・・
以上のイないしオによれば,乙22公報,乙26公報,乙23公報,乙27公報には,自動倉庫の分野で幅が異なる棚領域を設けること,又は,自動倉庫の分野で幅及び高さがそれぞれ異なる棚領域を設けることが記載されており,これらのことが従来周知の技術的事項であると認められる。
また,乙26公報及び乙27公報に記載されているように,自動倉庫に格納される収容物がコンテナ又は容器に収納した状態で格納されることは,周知の事項であり,乙27公報に記載されているように,収容物の寸法に応じて大きさの異なる容器を使い分けることも,従来から一般的に行われていることであると認められる。そして,このコンテナ又は容器が収容される棚領域が,収容物の大きさ(寸法)に対応したものとなることは自明の事項である。
以上によれば,前記イないしオから,「収容物の寸法別に分類された幅及び高さがそれぞれ異なる複数の棚領域を有する倉庫とそれぞれが収容された棚領域に対応した寸法を有する複数の収容物を収容する複数のコンテナを備えた自動公庫」との事項が周知技術であると認められる。
キ そして,乙12発明と上記カで認定した周知技術は,コンテナ等に収容物を収容し,このコンテナを,棚等を有する収容場所に格納するものであるという点で共通するから,乙12発明に上記周知技術を適用することは,
当業者が容易になし得たことであると認められる。
◆判決本文
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2015.02. 8
平成25(ワ)16060 特許権に基づく損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成27年1月16日 東京地方裁判所
クラウドシステムについての特許侵害訴訟(CS関連発明)です。裁判所は詳細な説明(目的・効果など)を参酌して、技術的範囲に属しないと判断しました。
上記アからすると,被告商品における「テンプレート」は,被告のサービスポータルの表示画面において,顧客が利用する仮想マシン及び仮想システムの構\成のメニューとしての選択候補を意味するにすぎないものと認められる。
この点,原告は,被告商品における「テンプレート」は,総合試験を経て動作保証された,即時稼働可能な状態で提供される仮想マシンそのものであり,予\め用意されたテンプレートのコピーにより仮想マシンが作成されるのであるから,構成要件Aの「レンタルエンジン」に該当する旨主張する。\nしかし,前記認定に係る本件発明の特徴からすれば,ユーザーからのリクエスト時にレンタルエンジンは実在するものでなければならないところ,上記のとおり,被告商品においては,ユーザーの選択により仮想マシンが配備される,つまり,ユーザーが選択しない限り仮想マシンは配備されず,ユーザー自らが必要な構成や機能\を選択してシステム構築を行うものであるから,ユーザーのリクエスト時に実在しない仮想マシンをレンタルエンジンととらえることはできない。まして,テンプレートをコピーすることにより仮想マシンが作成されることを前提としても,テンプレートを実在するレンタルエンジンととらえることもできない。ユーザーからのリクエスト時にテンプレート上に表\示されたリソースの動作保証がされていることと表\示されたリソースから構\成されるコンピューターが現実に存在することが異なることは明らかである。
ウ 以上のとおり,被告商品における「テンプレート」を,構成要件Aの「レンタルエンジン」ととらえることはできず,ほかに被告商品において構\成要件Aにいう「レンタルエンジン」に該当すると認めるべき構成は見当たらない。\n
◆判決本文
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