シリコン製のざるについて、不競法の商品形態に該当するとして、3年間の販売数に対して、損害賠償が認められました。原告の単位数利益*被告の販売数に基づき、販売不可事情を考慮して損害額が決定されました。
法2条4項によれば,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう被告は,原告商品の使用時形態は需要者が通常の用法に従った使用に際して認識することができる形状には当たらないとして,その他のざるとしての形態的特徴は,いずれも乙2ないし8に記載された原告商品に先行するざる又は水切りざるが備えている構成であるか又は周知の形態若しくはざる一般にみられるありふれた形態であると主張する。しかしながら,原告商品の使用時形態それ自体が,法2条4項により保護される商品の形態(形状)であるかはおいても,使用時形態のように変形自在であるという原告商品の特性は,少なくとも需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる質感等に反映されることは明らかであり,法2条1項3号により保護されるべき商品の形態として十\分に考慮されるべきものである。被告らが主張する上記各書証に記載されたざる等のうち,乙2に記載されたシラスティック製水切りボールはシリコンゴム材料を素材とするものであるが,取っ手部分があり,ざるの部分にもリムがないなど,原告商品の形態と大きく異なるものである。乙3に記載された合成樹脂製ざるについても,二個のざる体をセットにしたものであり,原告商品のように変形自在にしたものでもなく,質感についても大きく異なる。また,乙4,5,7及び8に記載されたざるについても,原告商品のように変形自在のものはない。被告らは,原告商品の形態は,パヴォーニ商品(乙45ないし48,53)と実質的に同一の形態であるとも主張する。確かに,パヴォーニ商品は,多少の柔軟性があることが認められるものの,原告商品と比べるとかなり肉厚で柔軟性に乏しく,原告商品と異なり,折りたたんだり,絞り込んだりすることはおよそできないものであって,形態の大きく異なるものであるというほかない。他に,原告商品と同様に変形自在であって,しかも原告商品と同一の形態の先行商品が存在することを認めるに足りる証拠はない。なお,乙6には,網袋に野菜などを入れ,容器自体を絞り込む使用形態が開示されているが(乙6の図3),この網袋状の容器は,ざるに似た形状をしているものの,布製の袋であり,原告商品の材質とは全く異なる。また,乙6の容器は,単体のままではその形状を維持することはできず,上記袋に野菜を入れる場合は,袋の上周縁に固定具を備え,硬質ボールの縁に固定具を掛け,ボールの内側に上記袋を入れて使用することが予定されており,原告商品の形態とは異なる。(2) 技術的構成に由来する必然的な形態被告らは,原告商品の形態は,シリコン素材を使用したという技術的構\成から必然的に由来するものであり,商品の機能を発揮するために不可欠な形態であるとも主張する。しかしながら,ざるの素材を変形自在なものにしたとしても,ざるとしての基本的形態だけを取っても,材質の選択,肉厚幅,底面突起の数,底面突起の有無及び数,表\面上の穴の大きさ及び数など,その形態選択には無数の選択肢があることからすれば,原告商品の形態を全体として評価したときに,それが商品の機能を発揮するために不可欠な形態のものであるということはできない。
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平成20年8月から平成21年8月までの13か月間における原告商品の譲渡数量は合計5万2477個であるのに対し,これと時期を接した期間における被告ら商品の譲渡数量が合計39万7348個と約8倍であることは当事者間で争いがない。また,原告商品の小売単価が2835円である(税込み,甲15の5・7〜10)のに対し,被告ら商品の小売単価は853円(税込み,甲50)ないし980円(税込み,甲49)であることが認められる。このように近接した期間における譲渡数量において約8倍もの差があることや,小売単価をみても約3倍の価格差があることなどからすると,譲渡数量のうち少なくとも2分の1に相当する数量を被侵害者である原告が販売することができないとする事情があったと認めるのが相当である。
◆判決本文
特許権侵害が認定。損害賠償について寄与率も認定。期間を分割して102条1〜3項による損害額が認められました。
ウ そこで,被告各物件における本件各特許発明が売上に与えた寄与率を検討する。
(ア) 裏異物検出機能の意義証拠(甲26,57)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認めることができる。近時,コンビニエンスストアなどでおにぎりが多く売れるようになり,海苔の需要が高まるとともに,厳しい品質管理が求められるようになった。海苔の場合は,異物の混入の有無が品質にも大きく影響し,その検出が重要な課題となっており,また,そのための装置が開発されてきた。そして,原告製品1,2及び被告各物件は,いずれも,乾海苔を一度くぐらせるだけで,その表\面,中,裏面の異物を検出することができる機能を有しており,これが同時にできないと,同じ作業を繰り返す必要があり,検出作業に要する手間や時間が増える(仮に,1台の機械をもって検出作業をするのであれば,2倍近い時間がかかる。2台〔2種類〕の機械を同時に使用する場合は,同様の時間を要することはないが,検出機の購入代金が割高になることが予\想されることのほか,2台分の設置場所や,検出機から排出された乾海苔を,改めて別の検出機にセットする手間を要する。)。したがって,表面や中だけでなく,裏面の異物検出機能\を有し,1回の搬送で検出を終えることのできる機能は,海苔異物検出機の販売に際し,大きな貢献を果たしているというべきである。
(イ) 本件各特許発明と代替技術本件明細書によると,本件各特許発明の出願以前の海苔の異物検出に関する従来技術として,目視に頼るか,上下のローラーで挟んでその厚みにより異物を検出する方法が記載されている。しかし,その一方で,次に述べるとおり,海苔の異物を検出する機能を有した装置自体は,開発がすすみ,普及していったことが窺われる。被告各物件においても,裏面検出機能\のほか,表面検出機能\と中検出機能を具備しているところ,中検出は検出対象物が違うものの,少なくとも表\面検出機能については,その機能\において違いがあるわけではない(前述したとおり,裏返しした上での検出が議論されているが,そもそも,そのような検出方法が不可能であることを前提とした議論はされていない。)。
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オ 以上を総合すると,被告物件1の後期型の販売における寄与率は20%,被告物件2の販売における寄与率は25%と認めるのが相当である。
◆判決本文