太陽光発電システムの工事について特許権侵害が認められました。東京地裁29部は、特102条3項による損害額として約1000万円を認めました。
(1)原告は,まず,原告が太陽光発電装置の請負契約を締結する場合の請負代金
額を基に,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの請負代金額は32万円であると
して,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた1億1581万440
0円を民法709条所定の損害であると主張する。
しかしながら,太陽光発電装置の施工について,被告が本件各土地で施工してい
なければ,原告がこれらを受注して施工することができたと認めるに足る証拠はな
いから,原告の主張する上記の損害は被告の行為と相当因果関係のある損害である
と認めることはできない。
(2) 原告は,次いで,本件特許に係る「単位数量当たりの利益の額」(特許法1
02条1項)は太陽光発電パネルの出力1kwを1単位として算定すべきであると
して,太陽光発電パネルの出力1kw当たりの利益の額は9万8000円であり,
これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じた3546万8160円を特許
法102条1項による損害額であると主張する。
しかしながら,原告の上記の主張は,アルバテック又は原告による太陽光発電装
置の施工に係る見積書(甲22の1,甲23の1)等の書面に基づくものであり,
これらが実際の取引金額を反映したものであると認めるに足る証拠はないから,本
件各土地における太陽光発電装置の施工に対応する原告の単位数量当たりの利益の
額を算定する根拠として不十分である。\nその他本件特許に係る単位数量当たりの利益の額を認めるに足る証拠はなく,し
たがって,特許法102条1項による損害額として,原告の主張する上記の損害を
認定することはできない。
(3)ア 原告は,さらに,原告が本件特許の実施許諾をする場合の実施料は出力1
kw当たり3万円であるとして,これに本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗
じた1085万7600円を特許法102条3項による損害額であると主張する。
イ そこで検討すると,証拠(甲24)によれば,原告は,平成25年12月1
5日,他社との間で,本件特許に係る通常実施権を許諾する旨の特許権実施許諾契
約を締結しており,同契約3条(1)において,実施料については,本件特許に係る施
工方法を用いて施工された太陽光発電パネルの出力1kwに対して3万円を乗じた
額とされたことが認められる。そして,本件全証拠によっても,この実施料額が高
額にすぎて不相当であると認めることはできない。
したがって,本件発明の実施に係る実施料率としては,太陽光発電パネルの出力
1kw当たり3万円と認めるのが相当であり,本件における特許法102条3項に
よる損害額は,3万円に本件各土地の太陽光発電パネルの出力を乗じて算定するの
が相当である。
そうすると,本件各土地の太陽光発電パネルの出力は,前記第2の2前提事実(4)のとおりであって,合計361.92kwであるから,本件における特許法102
条3項による損害額は合計1085万7600円(本件土地1につき3万円に84.
24kwを乗じた252万7200円,本件土地2につき3万円に277.68k
wを乗じた833万0400円の合計)である。
ウ これに対し,被告は,特許権の実施料率が請負代金の10%強となることは
およそ考えられず,請負代金を基準とした場合にはその1%程度の金額にとどまる
旨主張するが,その理由を具体的に主張しておらず,裏付けとなる証拠を提出して
いないから,実施料率を基礎付ける事情として採用することができない。
◆判決本文
1審は原告の主張を認めませんでしたが、知財高裁(4部)は、250万円の支払いを命じました。
他方,甲4契約の締結された当時,本件特許発明は実用化されたとはいえない段
階にあって事業の将来見込みが不確実であったところ,被控訴人は,控訴人に合計
2500万円の契約金を支払った。さらに,被控訴人は,少なくとも約1300万
円を支出して,本件特許発明に係る方法の実施に適するよう,汎用電子レンジを改
造して本件機械を開発した。本件機械の導入によって,歯科医院において本件特許
発明に係る方法を容易に実施できるようになり,被控訴人が歯科医院から義歯を預
かって本件特許発明を実施していたときよりも,顧客層が大きく拡大することに
なった。このことは,本件特許発明を実施する上で必要な本件液の販売数が,平成
27年初めは月約700本であったところ,平成27年後半には月少なくとも約1
300本に増加していること(乙44)からも裏付けられる。
また,控訴人は,本件訴訟提起前の平成27年4月24日,被控訴人に対し,本
件機械と本件液の売上高の各3%の実施料の支払を求め,被控訴人は,暫定的支払
としつつも現在まで上記額の支払を継続し,控訴人はこれを受領している。
これらの事情のほか,本件訴訟に現れた事情を総合考慮すれば,本件機械の販売
に係る実施料は,売上高の6%をもって相当と認める。
(ウ) 控訴人の主張について
控訴人は,社会通念上相当な実施料は,本件機械の売上高から製造原価を控除し
た額(粗利)の25%,そうでないとしても,本件機械の売上高の10%であると
主張する。
しかし,まず,粗利の額は,被控訴人の営業秘密である製造原価を明らかにしな
ければ算定不能であること,売上高は双方にとって簡便かつ明確な算定基準となる\nこと,甲4契約においても販売価格と通常価格の差額(2条7項。具体的には加工
単価を基に算定している。)や第三者からの実施許諾料(同条8項)を算定基準と
していることに照らせば,粗利ではなく売上高を算定基準とするのが当事者の意思
に合致するものと解される。そして,控訴人主張の利益三分法ないし四分法は,ラ
イセンス料を定めるに際しての一つの指針にすぎず,売上高ないし粗利の25%を
原則的なライセンス料と考えることは相当でない。本件においても,前記(イ)のと
おり,被控訴人自身が実施していた当時の実施料,被控訴人が契約締結時に支払っ
た実施料や本件機械の開発費用等の先行投資額,本件機械の導入による顧客層の拡
大,従前の交渉経緯等を総合考慮すれば,売上高の6%をもって相当と認める。
◆判決本文
技術的範囲に属すると判断されました。損害額として102条3項を主張しましたが、売上げに寄与する程度が小さいとして、減額されました。
上記(1)の記載によれば,本件発明1及び2は,熱可塑性樹脂発泡シートに
非発泡の熱可塑性樹脂フィルムを積層した発泡積層シートを成形してなる容
器について,熱可塑性樹脂発泡シートと熱可塑性樹脂フィルムとの硬さの差
により,容器に触れた際に,硬いフィルムで指等を裂傷するおそれがあるが,
突出部の上下面に凹凸を形成すると,蓋体を外嵌させる際に突起部が係合さ
れる突出部の下面側にも凹凸形状が形成されることとなって強固な係合状態
を形成させることが困難となり,端縁部での怪我を防止しつつ蓋体などを強
固に止着させることが困難であるという課題を,本件発明1の構成,特に上記端縁部の上面に凹凸形状を形成する一方で下面は平坦とする形状とすることによって解決することとしたものということができる。\nまた,上記(2)の記載を参酌すると,本件発明1及び2は,上記端縁部を,
厚みが圧縮されて薄肉化されたもので,かつ,上面に凹凸形状が存在するも
のとすることにより,その強度を強め,これによって蓋体を強固に止着させ
るという課題を解決するものということができる。
以上によれば,本件発明1及び2は,容器の突出部の端縁部の形状につい
て,上面に他の部分との厚みの差を付けて凹凸形状を形成するという形状と
することで端縁部での怪我を防止するとの課題を解決し,端縁部につき上記
の端縁部の形状とすることに加えて下面を平坦にすることで,蓋の強固な止
着を実現するという課題を解決し,これによって上記各課題の双方を解決す
ることを技術的意義とする発明である。
・・・・
以上によれば,本件明細書においても,発明の構成につき特許請求の範囲の記載と同様の記載がされ,その実施例においても,側周壁部の上端縁であり,被収容物が収容される収容凹部のへりといえる開口縁から外側に\n張り出して形成されているものが突出部とされている。実施例を示す図面
には突出部が水平で平坦な容器が示されているが,発明の詳細な説明欄に
は,突出部が平坦であることについての説明はなく,本件発明1及び2の
突出部を突出部が平坦なものに限る趣旨の記載は見当たらない。これらに
よれば,「開口縁」及び「突出部」については,上記アのように解するの
が相当であり,「突出部」は水平で平坦なものには限られない。
ウ これに対して,被告は,出願経過に照らし,本件発明1及び2は突出部
が水平で平坦である容器に関する発明であると主張する。
原告は,前記1(2)のとおり,「前記突出部の端縁部の…且つ該端縁部の」
と補正をしたものであるところ,証拠(乙12〔2〕)によれば,審判請
求書において,上記補正の根拠として,突出部の端縁部において熱可塑性
樹脂発泡シートが圧縮されて薄肉とされたものであることを明確にしたも
のであり,この点が本件明細書の例えば段落【0019】や【図3】b)
に記載されているもので,願書に添付した明細書及び図面に記載された事
項の範囲内のものである旨記載したことが認められる。
上記認定事実によれば,補正の前後に係る特許請求の範囲をみても,補
正された部分は「端縁部の上面」と「収容凹部の開口縁近傍の突出部の上
面」の位置関係と端縁部における形状についてであって,突出部の形状が
水平で平坦である旨の明示的な記載も示唆も見当たらないし,原告が主張
したのは本件明細書において発明の実施の形態として記載(段落【001
9】や【図3】b))があることから補正の要件を満たすということであ
るから,突出部の形状が水平で平坦なものに限定する趣旨を読み取ること
ができない。したがって,本件発明1及び2の容器の突出部が水平で平坦
であると解することはできず,被告の主張は採用できない。
・・・・
上記記載によれば,本件発明1及び2は前記1(3)のとおりの技術的意義
を持つもので,端縁部の下面が平坦であることとその厚みが薄いことの双
方が備わることで,それぞれの効果が生じ,蓋の強固な止着が実現するの
であって,端縁部が圧縮されて薄くなっていることと上面の位置との関係
に何らかの技術的意義があるものでないし,実施例においても何らの効果
も示されていない。そうすると,物の態様として「ように」の語が特段の
意味を有すると解することはできず,前記ア1)及び2)の各構成が両立していれば足りると解するのが相当である。
ウ これに対し,被告は,「突出部の端縁部において…薄くなっており」と
いう構成によってのみ「前記突出部の…下位となる」構\成が実現しなけれ
ばならないと解釈すべき旨を主張し,その根拠として本件明細書の記載
(段落【0019】),審判請求書(乙12)において上記部分に係る補正
の根拠を本件明細書の「例えば段落0019や図3(b)」と主張したと
いう出願経過を挙げる。
しかし,上記の本件明細書の記載(段落【0019】)は実施例の記載
であり,こうした実施例があることから上記のとおり解釈することは相当
でないし,当該記載が引用する【図3】b)によれば端縁部の下面も端縁
部以外の突出部の下面に比して下位となっており,端縁部を圧縮して薄く
しなくても端縁部の上面が端縁部以外の突出部の上面に比して下位となっ
ているとみる余地がある。補正の根拠に関する主張は,補正に係る部分が
本件明細書の記載の範囲内であることを指摘したものであって,説明した
部分に補正に係る部分の解釈を限定する趣旨を読み取ることはできない。
被告の主張は採用できない。
・・・
上記 1)によれば,プラスチック製品や容器についての一般的な実施
料率は2〜4%程度ということができる。また,・・・によれば,
本件発明1及び2の技術的意義が現れているのは容器の一部である端縁
部の形状に限定されるところ,一般的には端縁部における手指の切創を
防止することは顧客吸引力を持ち得るといえるものの,原告の製品にお
いて行われている上記「セーフティエッジ」加工は,蓋の端縁部の加工
であって本件発明1及び2の包装用容器に係る加工であるとは認め難く,
原告においても平成27年以降はこの加工の存在をカタログ等において
顧客に告知していない。被告においても,端縁部において手指の怪我が
生じ得るという課題を認識して顧客に告知する一方で,その部分の怪我
防止の措置について顧客に告知をしていない。そうすると,本件発明1
及び2の技術的意義が容器の売上げに寄与する程度は相当程度小さいも
のとならざるを得ないから,上記の一般的な実施料率よりも相当程度低
くすべきである。
以上によれば,本件発明1及び2の実施によって受けるべき相当な実
施料率は●(省略)●と認めるのが相当である。
ウ 損害の額
上記ア及びイによれば,本件発明1及び2の実施に対し受けるべき金銭
の額に相当するのは,1694万4217円であると認められる。
◆判決本文