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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

賠償額認定

平成25(ワ)14214  損害賠償請求事件  特許権  民事訴訟 平成26年11月18日  東京地方裁判所

 同族会社の取締役に、特許権侵害につき悪意又は重過失であったとして、600万円を超える損害賠償が認められました。
 前記争いのない事実等及び弁論の全趣旨によれば,上記不法行為期間のうち平成23年4月1日から同年6月30日までの間,被告Bは代表取締役として本件新会社の本件治療器に係る業務を執行し,被告Aも取締役として同業務についての意思決定に関わっており,特許権侵害につき悪意又は重過失であったと認められる。\nしたがって,被告らは,この間の本件新会社による特許権侵害の不法行為につき,会社法429条1項に基づく責任を負う。 イ 平成23年7月1日から平成24年3月31日まで 原告は,本件新会社は同族会社であり,被告らは役員でない期間もD一族のトップとして実権を行使していたことなどから,本件新会社の不法行為につき責任を負う旨主張する。しかし,事実上の取締役について会社法429条1項の類推適用を認める余地があるとしても,本件において,被告らが取締役でなかった期間における本件新会社の経営の実態等については何ら具体的な主張がない。したがって,被告らが同項による責任を負うとは認められない。
・・・
1) 前記2(2)アのとおり,被告らは,本件新会社による平成23年4月1日から同年6月30日までの特許権侵害の不法行為により生じた原告の損害につき会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うから,同期間の原告の損害額を検討する。 ア 証拠(甲6〜11)及び弁論の全趣旨によれば,本件旧会社が本件事業により得た利益は年間平均2549万6461円であったことが認められる。そして,本件新会社は本件旧会社と同様に本件治療器に係る業務を行 っていると解されるところ,被告らは本件新会社の利益につき原告の主張に対して具体的な反論をせず,積極的な反証もしていない。そうすると,本件新会社が本件治療器を販売し,これを使用したセラピーを提供したことによる年間の利益は上記と同額であると推認されるから,平成23年4月1日から同年6月30日までの利益は635万6652円(2549万6461円×91÷365)であると認めることができる。 イ 原告は,本件治療器の販売をし,本件治療器を使用した施術を提供していると認められるから(甲32),本件新会社が本件発明の実施により得た利益の額は原告が受けた損害の額であると推定される(特許法102条2項)。 なお,被告らは,セラピーに係る利益は同項の「利益」に当たらないと主張するが,実施品の使用(同法2条3項1号)という特許権侵害行為により得た利益であることは明らかであり,被告らの主張は採用できない。 ウ 被告らは,本件治療器の販売及びセラピーにおける使用により利益を得るためには,使用方法のノウハウの提供及びセラピストの技術等が寄与する程度が大きく,上記利益に対する本件特許の寄与度は,販売について5%,セラピーについて2.5%であると主張する。 そこで検討するに,本件発明は音叉型治療器の発明であり,実施品の販売やセラピーでの使用に際して,使用方法の説明やセラピストの知識及び技術が必要なのは当然であり,本件新会社に特有の事情ではない。そして,被告らの主張によっても,本件新会社における使用方法の説明,セラピストの知識及び技術,セラピストの団体等の具体的内容は明らかでなく,本件において,上記イの推定を覆滅するに足りる事情があるとは認められない。
(2) したがって,本件新会社の上記期間の特許権侵害の不法行為による原告の損害額は635万6652円であると認められ,被告らは,会社法429条1項に基づき,各自同額の損害賠償義務を負う。

◆判決本文

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平成26(ネ)10022  損害賠償等請求控訴事件  特許権  民事訴訟 平成26年9月11日  知的財産高等裁判所  東京地方裁判所

 控訴審で損害額が変更されました。双方とも特102条2項に基づく判断ですが、同項による推定を一部覆滅する事情について、1審は75%減額、控訴審は65%減額と判断しました。
 特許法102条2項の規定により損害の額を算定するに当たっては,第1審被告が得た利益のうちに当該特許発明の実施以外の要因により生じたものと認められる部分があるときは,同項による推定を一部覆滅する事情があるものとして,その分の額を損害の額から減ずるのが相当である。
これを本件についてみると,第1審被告aで認定したとおりであるが,第1審被告は本件特許の登録前から同種サービスを提供しており,第1審被告装置1は本件特許を侵害第1審被告は保有する3件の特許権に係る特許発明を実施しており,その提供するサービスについて,能率と費用の面でより効果的なものとしている本件発明と同様の調査データを取得し得る方法として,本件特許の侵害とならない方法によることが困難なものとは認められないこと(例えば,被告装置5の実施態様(b)。c,)などからすると,本件発明の技術的意義はさほど高いものではなく,第1審被告事業による利益に対する本件特許の寄与は,相当限定的な範囲にとどまるものと認めるのが相当である。 加えて,特許権侵害期間における第1審被告の顧客55社のうち35社(約63%)が本件特許権の特許登録前からの顧客であり,また,固定電話分の売上げの約8割がこれらの顧客によるものであるところ(前記アc),第1審被告による本件発明の実施の影響が新規顧客のみに限定されるものではないとしても,本件発明の実施に対応して需要者が何らかの具体的な選択をしたことをうかがわせるような証拠もないことに照らすと,上記の顧客の状況については,第1審被告事業の利益に対する本件発明の寄与を更に限定する要素と認めざるを得ない。 第1審原告は,寄与割合を判断するに当たっては,需要者の選択購入の動機が基軸的な要素として重視されるべきであると主張するが,上記のとおり,その主張を認めるに足りる証拠はなく,本件においては,第1審原告の上記主張は採用することができない。 また,本件においては,市場に同種のサービスを提供する業者の存在が調査データと特定の電話番号を照合することにより利用状況を調査するサービスに関しては,第1審原告と第1審被告のほかにサービスを提供する上記の点は,推定を覆滅する要素として重視することはできない。 以上の各事情に加え,第1審原告及び第1審被告の主張に照らし,本件の証拠上認められる一切の事情について検討すると,上記第1審被告の利益が特許権侵害による第1審原告の損害額であるとの推定を一部覆滅する事情があると認められ,その割合は65%と認めるのが相当である。 そうすると,特許法102条2項の規定に基づいて算定される損害額は,前記において認定した利益額9994万2225円に35%を乗じた3497万9779円となり,第1審原告がこれを上回る損害を被ったことを認めるに足りる証拠はない。

◆判決本文

◆原審はこちら 平成21(ワ)32515

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平成24(ワ)14652  特許権侵害損害賠償等請求事件  特許権  民事訴訟  平成26年7月23日  東京地方裁判所

 洗濯機のカビプロテクト機能について「商品選択に寄与する割合が低いものであったとはいい難い」として売上高の1%の損害が認められました(特102条3項)。
 そして,本件688明細書の上記(イ)e,fの記載に照らせば,本件688発明において,洗濯兼脱水槽から洗濯物が取り出され,槽内に洗濯物がない状態で上記槽乾燥工程を行うことで,脱水孔から空気が外槽内にスムーズに流れ,槽内の乾燥効率向上という作用効果が得られるものとされていることをうかがうことができるところ,本件688明細書に,上記(イ)gのとおり,温風供給手段を動作させるタイミングを,洗濯兼脱水槽から洗濯物を取り出した後とするためには,蓋の開閉動作があったことを条件とすればよい旨の記載があることも考慮すれば,蓋開閉検知は,洗濯兼脱水槽内から洗濯物が取り出された状態で槽乾燥工程が行われることを担保し,槽内の乾燥効率の向上という上記作用効果を確保するための構成であると解されるところである。そうすると,「検知を条件に」を,槽乾燥工程への自動移行を意味するものと解すべき理由はなく,同文言は,単に蓋開閉検知がされなければ槽乾燥工程に移行しないことを意味するにとどまるものと解するのが相当である。\n
・・・・
以上によれば,本件521特許及び本件893特許の侵害を理由とする原告らの請求は,争点(4)イ・ウについて検討するまでもなく理由がないことに帰着する。 そこで,以下においては,争点(4)ア(本件688特許の侵害による損害額)についてのみ検討する。
・・・・
そうすると,ロ号製品について,そのカタログやウェブサイト上の製品説明において,本件688特許登録前の製造販売に係る製品のように,「カビプロテクト」機能につき大きく取り上げる扱いがされていなかったとしても,従前の宣伝広告等により,需要者が当該機能\\を重視することは十分にあり得るものというべきである。なお,被告は,本件688特許登録前の製造販売に係る製品は,いわゆる縦型洗濯機であり,ドラム式洗濯乾燥機であるロ号製品とは無関係なものである旨主張するが,縦型洗濯機とドラム式洗濯乾燥機の需要者は共通するものと解されるのであって,前者に係る宣伝広告の効果が後者に波及することは十\\分にあり得るものと解されるところである。加えて,ロ号製品についても,機種名TW−G520L/Rの製品については,そのカタログにおいて,「カビプロテクト」機能により手軽に槽の手入れをすることができる旨が大きく取り上げられていること(甲36,乙64),機種名TW−Z370L,TW−G520Lの製品については,株式会社東芝のウェブサイトにおける上記製品の「商品情報」において,カビプロテクト機能\\を有する旨が記載されていること(乙66)に照らせば,ロ号製品においても,「カビプロテクト」機能はその宣伝広告において取り上げられることがあったものということができるのであって,本件688発明に係る機能\\が需要者の商品選択に寄与する割合が低いものであったとはいい難いものというべきである。
エ 他方,特許法が保護しようとする発明の実質的価値は,従来技術では達成し得なかった技術的課題の解決を実現するための従来技術に見られない特有の技術的思想に基づく解決手段を具体的な構成をもって社会に開示した点にあるというべきところ,本件688発明がその課題解決のために具体的に開示した新たな技術的手段としての構\\成は,「前記検知工程による検知を条件に」槽乾燥工程へ移行するようにしたところであって,同発明は,蓋の開閉検知のほかには,「洗濯物が取り出された状態」とするための技術的手段を開示していないことは,前記1で見たとおりである。
オ 以上の事情を総合考慮すると,ロ号製品の売上高に1%を乗じた金額が,本件688特許の特許権者が本件688発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する金額(特許法102条3項)として相当であると認められる。

◆判決本文

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平成24(ワ)30098 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年07月10日 東京地方裁判所

 特許権侵害で1億円を超える損害賠償が認められました。
 上記技術分野における実施料率に関しては,平成4年度〜10年度の無機化学製品の契約件数(イニシャルペイメントなし)は3件であり,実施料率別では5%が2件,2%が1件であった旨, 平成21年頃の国内企業へのアンケートによると化学分野の実施料率は平均5.3%であった旨, 平成9年〜20年に損害賠償訴訟で判断された化学分野の実施料率は平均3.1%であった旨の調査結果が報告されている。(甲9,38,39,46)(3) 上記事実関係によれば,本件発明は二次電池の正極材料の基本性能に関するものであり,被告製品は,本件発明の技術的範囲に属する被告方法により製造されたものとして,高温保存特性が優れるという効果を奏するものということができるが,他方,被告製品の売上げに関しては,それ以外にも二次電池に求められる上記各性能\を被告製品が有していることによる部分が大きいと推認される。以上に説示した本件の諸事情を総合すると,原告が被告による本件発明の実施に対し受けるべき金銭の額は,前記(1)の55億8300万円に2%を乗じた1億1166万円と認めるのが相当である。

◆判決本文

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平成25(ネ)10043 債務不存在確認請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年05月16日 知的財産高等裁判所

 知財高裁がFRAND宣言した特許権の行使についてアミカスブリーフを求めた事件です。争点は多数ですが、2次使用について消尽が適用されるのかについて展開した後、FRAND宣言における必須特許1/529の約1000万円の損害賠償を認めました。最後に意見募集についても言及されました。
 インテル社は,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約によって,本件ベースバンドチップの製造,販売等を許諾されていると仮定されるから,前記(イ)にいう特許権者からその許諾を受けた通常実施権者に該当する。また,「データを送信する装置」(構成要件A)及び「データ送信装置」(構\成要件H)に該当するのは本件ベースバンドチップを組み込んだ本件製品2及び4であると解される一方,本件ベースバンドチップには,本件発明1の技術的範囲に属する物を生産する以外には,社会通念上,経済的,商業的又は実用的な他の用途はないと認められるから,本件ベースバンドチップは,特許法101条1号に該当する製品(1号製品)である。アップル社は,インテル社が製造した本件ベースバンドチップにその他の必要とされる各種の部品を組み合わせることで,新たに本件発明1の技術的範囲に属する本件製品2及び4を生産し,被控訴人がこれを輸入・販売しているのであるから,前記(ア),(イ)のとおり,控訴人による本件特許権の行使は当然には制限されるものではない。b そこで,まず,控訴人においてこのような特許製品の生産を黙示的に承諾していると認められるかを検討する。この点,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約が存続しており,かつ,本件ベースバンドチップがその対象となると仮定した場合における,仮定される控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約は,控訴人が有する現在及び将来の多数の特許権を含む包括的なクロスライセンス契約であり,本件特許を含めて,個別の特許権の属性や価値に逐一注目して締結された契約であるとは考えられない。また,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約の対象は,「インテル・ライセンス対象商品」すなわち「(a)半導体材料,(b)半導体素子,又は(c)集積回路を構成する全ての製品」であって,「インテル・ライセンス対象商品」に該当する物には,控訴人の有する特許権との対比における技術的価値や経済的価値の異なる様々なものが含まれ得る。そうすると,かかる包括的なクロスライセンスの対象となった「インテル・ライセンス対象商品」を用いて生産される可能\性のある多種多様な製品の全てについて,控訴人において黙示的に承諾していたと解することは困難である。そして,インテル社が譲渡した本件ベースバンドチップを用いて「データを送信する装置」や「データ送信装置」を製造するには,さらに,RFチップ,パワーマネジメントチップ,アンテナ,バッテリー等の部品が必要で,これらは技術的にも経済的にも重要な価値を有すると認められること,本件ベースバンドチップの価格と本件製品2及び4との間には数十倍の価格差が存在すること(乙31,32),いわゆるスマートフォンやタブレットデバイスである本件製品2及び4は「インテル・ライセンス対象商品」には含まれていないことを総合考慮するならば,控訴人が,本件製品2及び4の生産を黙示的に承諾していたと認めることはできない。なお,このように解したとしても,本件ベースバンドチップをそのままの状態で流通させる限りにおいては,本件特許権の行使は許されないのであるから,本件ベースバンドチップを用いて本件製品2及び4を生産するに当たり,関連する特許権者からの許諾を受けることが必要であると解したとしても,本件ベースバンドチップ自体の流通が阻害されるとは直ちには考えられないし,控訴人とインテル社間の変更ライセンス契約が,契約の対象となった個別の特許権の価値に注目して対価を定めたものでないことからすると,控訴人に二重の利得を得ることを許すものともいえない。\n
・・・
すなわち,ある者が,標準規格に準拠した製品の製造,販売等を試みる場合,当該規格を定めた標準化団体の知的財産権の取扱基準を参酌して,必須特許についてFRAND宣言する義務を構成員に課している等,将来,必須特許についてFRAND条件によるライセンスが受けられる条件が整っていることを確認した上で,投資をし,標準規格に準拠した製品等の製造・販売を行う。仮に,後に必須宣言特許に基づいてFRAND条件によるライセンス料相当額を超える損害賠償請求を許容することがあれば,FRAND条件によるライセンスが受けられると信頼して当該標準規格に準拠した製品の製造・販売を企図し,投資等をした者の合理的な信頼を損なうことになる。必須宣言特許の保有者は,当該標準規格の利用者に当該必須宣言特許が利用されることを前提として,自らの意思で,FRAND条件でのライセンスを行う旨宣言していること,標準規格の一部となることで幅広い潜在的なライセンシーを獲得できることからすると,必須宣言特許の保有者にFRAND条件でのライセンス料相当額を超えた損害賠償請求を許容することは,必須宣言特許の保有者に過度の保護を与えることになり,特許発明に係る技術の幅広い利用を抑制させ,特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害することになる。(イ) 一方,必須宣言特許に基づく損害賠償請求であっても,FRAND条件によるライセンス料相当額の範囲内にある限りにおいては,その行使を制限することは,発明への意欲を削ぎ,技術の標準化の促進を阻害する弊害を招き,同様に特許法の目的である「産業の発達」(同法1条)を阻害するおそれがあるから,合理性を欠くというべきである。標準規格に準拠した製品を製造,販売しようとする者は,FRAND条件でのライセンス料相当額の支払は当然に予定していたと考えられるから,特許権者が,FRAND条件でのライセンス料相当額の範囲内で損害賠償金の支払を請求する限りにおいては,当該損害賠償金の支払は,標準規格に準拠した製品を製造,販売する者の予\測に反するものではない。また,FRAND宣言の目的,趣旨に照らし,同宣言をした特許権者は,FRAND条件によるライセンス契約を締結する意思のある者に対しては,差止請求権を行使することができないという制約を受けると解すべきである(当裁判所においても,控訴人が被控訴人に対して本件特許権に基づく差止請求権を被保全債権として,本件製品2及び4に加えて「iPhone 4S」の販売等の差止等を請求した仮処分事件(本件仮処分の申立て及び別件仮処分の申\立ての抗告審。当庁平成25年(ラ)第10007号,同10008号事件)において,控訴人の申立てを却下した原審決定を維持する旨の決定をした。)。FRAND宣言をした特許権者における差止請求権を行使することができないという上記制約を考慮するならば,FRAND条件でのライセンス料相当額の損害賠償請求を認めることこそが,発明の公開に対する対価として極めて重要な意味を有するものであるから,これを制限することは慎重であるべきといえる。(ウ) 以上を「FRAND条件でのライセンス料相当額を超える損害賠償請求」と「FRAND条件でのライセンス料相当額による損害賠償請求」に分けて,より本件の事実に即して敷衍する。
・・・
意見の中には,諸外国での状況を整理したもの,詳細な経済学的分析により望ましい解決を論証するもの,結論を導くに当たり重視すべき法的論点を整理するもの,従前ほとんど議論されていなかった新たな視点を提供するものがあった。これらの意見は,裁判所が広い視野に立って適正な判断を示すための貴重かつ有益な資料であり,意見を提出するために多大な労を執った各位に対し,深甚なる敬意を表する次第である。\n

◆判決本文

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平成25(ネ)10086 債務不存在確認請求本訴,損害賠償請求反訴請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成26年04月24日 知的財産高等裁判所

 アップルのクリックホイールに関するの訴訟で、1審は約3億円の損害賠償を認めました。本件は、その控訴審です。知財高裁は、1審の判断をほぼそのまま認めました。
 平成19年9月から発売が開始されたiPod touchではクリックホイールが採用されず,タッチパネルが採用されている(乙26)。タッチパネルはプッシュスイッチを有するものではなく,また,タッチパネルによる操作方法は,タッチパネル向けに最適化されており,コンテンツをCover Flowで表示するには,iPod touchを横に回転させ,アルバムカバーをブラウズするには,左右にドラッグするか,フリックし,任意のトラックを再生するには,再生したいトラックをタップする等というものであって,クリックホイールによる操作とは大幅に異なる(甲138)。そうすると,タッチパネルとクリックホイールとでは,小型携帯装置の入力手段であるという程度の共通性しか見出せず,両者が代替手段の範疇にあるとは認められない。

◆判決本文

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平成23(ワ)3292 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月26日 東京地方裁判所

 販売不可事情として7割に関しては除外されましたが、特102条1項により、1億6000万円を超える損害賠償が認められました。
 以上によれば,本件発明1は,電池電圧低下を検出した場合に,従来技術において採用されていた,意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて,意味が明確かつ耳障りでない音声メッセージによって電池交換を促すとともに,利用者が音声メッセージを聴取するための誘因として,視覚的効果を有する表示灯手段を採用し,さらに,表\示灯手段を視認して誘引された利用者が確認要求受付手段を利用することにより,確実に音声メッセージを認識できるようにしたものである。そうすると,本件発明1の技術的意義は,第1に,従来技術における意味不明かつ耳障りなブザー音に代えて音声メッセージを利用するようにしたことであり,第2に音声メッセージへ到達するための誘因として視覚的な表示灯手段を利用するとともに,利用者の確認要求によって音声メッセージを確実に認識できるようにしたことにある。このような技術的意義を有する構\成を採用したことにより,早期に確実に電池交換をすることが促進され,電池の無駄な消費も抑えることができるようになる。本件発明1の上記技術的意義に照らせば,本件発明1において,電池電圧低下の検出と同時に発することが排除されているのは,利用者がうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りな音声又はブザー音であって,表示灯手段による報知と併せて発音を行うこと自体が全く排除されているものではないと解するのが相当である。そして,ハ号及びニ号製品における「ピッ」音は,50秒単位で発せられるものであり,利用者に異常表\示灯手段への注意を促す程度のものとみることができるから,上記発音が,利用者においてうるさがって電池を抜き出してしまう程度に耳障りなものとは解されず,上記発音が本件発明1において排除されている音声に当たるものとは解されない。
・・・
また,被告は,原告は,平成20年8月までは,原告製品1及び2のみしか販売していなかったものであるから,同月末日までの間は,原告製品1及び2のみが「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たると主張する。しかし,特許法102条1項は,一定期間にわたる特許権侵害が認められる場合に,権利者の上記期間における競合品としてあり得べき権利者製品の販売機会の喪失による逸失利益を全体として評価して,これを権利者の受けた損害とするものであり,権利者製品と侵害品を厳密に1対1対応させ,販売機会の喪失を検討することが予定されているものではないというべきである。したがって,本件においても,特許法102条1項に基づく原告の損害を算定するに当たり,平成19年8月24日から平成24年3月末日までの期間を全体として捉え,原告製品を,いずれも,上記期間において「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるとみて,その平均利益をもって原告の損害を評価することは,特許法102条1項の上記趣旨に反するものではなく,許容されるものというべきである。(オ) よって,被告の主張はいずれも採用することができず,原告製品は,被告製品全部との関係において,「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することができた物」に当たるものと認められる。
ウ 「特許権者…がその侵害の行為がなければ販売することのできた物の単位数量当たりの利益の額」
(ア) 特許法102条1項にいう「単位数量当たりの利益の額」とは,原則として,権利者製品の売上高から変動費を控除した利益(限界利益)をいうが,費用のうち権利者製品の製造又は販売に直接必要な個別固定費も例外的に含むものと解するのが相当である。他方,本件発明は,その構成により,利用者が早期かつ確実に電池電圧低下を認識し,これを放置することなく早期の電池交換が促されることで,無監視状態で警報器が放置される事態を回避することが可能\になるという作用効果を有するものであるところ(前記第4の1(1)イ(ウ)),被告製品のカタログ等に本件発明に係る構成が記載されていること(上記(イ)e)に照らせば,本件発明の作用効果が購入者らによる製品購入(又は事業者による製品採用)の動機付けの一つとなっていることがうかがわれるものというべきである。ただし,火災警報器における基本的性能は,監視領域における火災等の異常を確実に検知し報知する点にあると考えられるのであって,電池電圧低下の検知及び報知は,異常を確実に検知し報知するための警報器の作動を確保するための機能\に関するものではあるものの,複数あり得る火災警報器の故障又は異常状態の一類型に対応するものにすぎないことや電池電圧の低下の検知及び報知については音声のみによる方法等の本件発明を実施しない他の方法もあり得ることを考慮すれば,本件発明に係る構成に基づく作用効果が,購入の決定的な動機付けとなり,又は製品を選択するに当たり大きな影響力をもつものとまでは考え難い。以上の諸事情については,被告製品の販売数量のうち,本件発明の作用効果を考慮してもなお他社の競合品によって代替されたと考えられる割合及び被告自身の営業力や本件発明の実施部分以外の被告製品の特性等により販売することができたと考えられる割合について,これらを総合して,原告が原告製品を「販売することができないとする事情」があると解するのが相当である。そして,上記諸事情に照らし,上記数量は7割とみるのが相当である。
(オ) 以上の認定に関し,原告は,パナソニック等の製品は本件特許権を侵害するものであるから,これらの製品の存在を考慮して,「販売することができないとする事情」を認定するのは相当ではないと主張するが,上記製品が本件特許権を侵害するものと認めるに足りず,採用することができない。(カ) したがって,前記アの被告製品の販売数量のうち,7割に相当する数量に応じた額を,原告の損害額から控除すべきである。

◆判決本文

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平成23(ワ)36583 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月20日 東京地方裁判所

 独占的通常実施権者に対して、特許法102条1項による損害賠償が認められました。
 原告製品1個当たりの利益の額は423.3円であること,被告は,平成21年2月23日から平成22年12月3日までに被告製品を10万0034個販売したことは当事者間に争いがない。また,証拠(甲30,乙7の1)及び弁論の全趣旨によれば,原告は平成16年から19年までは年間20万個を超える原告製品を,平成20年から22年までも年間10万個を超える原告製品を販売しており,原告の保有する生産設備やこれまでの販売実績からすれば,原告が被告の譲渡数量について実施する能力を有していたことが認められる。よって,原告の損害額は4234万4392円となる(なお,被告は本件に特許法102条1項の類推適用があることを争っていない。)\n
・・・・
被告は,原告製品と被告製品の価格差が大きいこと,装身具用連結金具の市場における原告のシェアが30%程度であり,複数の競合品が販売されていることから,被告製品の譲渡数量の一部につき「販売することができないとする事情」(特許法102条1項ただし書)があると主張する。そこで検討すると,前記争いのない事実等,証拠(甲31,32,乙8〜13。枝番号のある証拠はすべての枝番号を含む。)及び弁論の全趣旨を総合すると,1)原告製品の販売価格は1個859.5円であるのに対し,被告製品は約467.5円であること,2) 装身具用連結金具製品を販売する業者は原告と被告のほかにも複数存在することが認められる。しかしながら,1)価格差のあることが上記ただし書の事情に当たり得るものであるとしても,本件においては,弁論の全趣旨によれば,装身具用連結金具がネックレス等の環状装身具の部品の一つとして使用されるものであり,最終製品である環状装身具の価格が連結金具の価格を大きく上回るものであることに照らすと,原告製品と被告製品に上記の程度の価格差があることから原告製品につき「販売することができないとする事情」があると認めることはできない。また,2) 他社の装身具用連結金具製品が,本件発明と構成を異にするものであり,かつ,操作性が容易であり,構\造が簡単でコスト的にも優れているという本件発明と同様の効果を奏するものとして,原告製品の競合品となり得る特徴を有するものであるかは明らかではない。
 イ 次に,被告は,被告製品は別件発明に係る特許の実施品でもあるので,被告製品の販売における本件発明の寄与度は多くとも5割であると主張する。そこで検討すると,前記争いのない事実等(5)のとおり,原告と被告は,別件特許権の独占的通常実施権の侵害に係る別件訴訟において,被告が原告に解決金600万円を支払う,本件特許の独占的通常実施権侵害に基づく損害賠償債務の存在及び額が判決等により確定した場合には,この解決金を上記損害賠償債務に充当する旨の別件和解が成立し,別件特許権については原告と被告の間に他に債権債務はないことが確認されている。このような別件和解の経緯及びその内容に照らせば,被告製品の販売数量についての別件発明の寄与については,原告と被告の間では別件和解により解決済みであると解すべきであって,本件発明に係る独占的通常実施権侵害の損害額から別件発明の寄与度に相当する部分を減額するのは相当でない。

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平成24(ワ)24822 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年03月20日 東京地方裁判所

 特許権侵害について、売上額の3%の損害が認定されました。
 原告らは,特許権侵害に係る不当利得の額は不当利得対象期間の被告各製品の売上額4億1602万5629円に実施料率3.5%を乗じた額であり,損害の額は損害賠償対象期間の被告の利益額633万0671円に等しいと主張する。上記売上額及び利益額に争いはなく,被告は,不当利得についての実施料率は0.5%であり,損害賠償についての寄与率は10%にとどまる旨主張するので,以下,検討する。
・・・
被告は,不当利得対象期間中,本件発明の実施許諾を得ないまま,その技術的範囲に属する被告各製品の製造販売をしたのであるから,少なくとも実施料相当額につき法律上の原因なくして利益を得,原告ペパーレットはこれと同額の損失を被ったということができる。イ そこで,本件発明の実施料率についてみるに,上記事実関係によれば,カラーチェンジ機能は猫砂に求められる複数の機能\のうちの一つにとどまり,顧客がこれを他の機能より重視しているとはいえないものの,紙製の猫砂全体に占めるカラーチェンジ機能\を有する製品の割合が,固まり性や消臭性を備えた猫砂の商品化後も徐々に拡大し,5割程度に達していることからすれば,カラーチェンジ機能は,同種製品の販売上,不可欠ではないとしても有益な機能\とみるべきものである。そして,被告各製品の包装をみても,製品ごとに強調の程度は異なるものの,カラーチェンジ機能をセールスポイントとして扱っている。また,実施料率について調査した文献によれば,本件発明の実施品が属するパルプ,紙加工品等の分野における実施料率は3%程度の契約例が多いとされている(甲14)。これらの事情を総合すれば,本件における実施料率は,売上額の3%と認めるのが相当である。したがって,原告らが返還を請求し得る不当利得の額は,合計1248万0768円(4億1602万5629円×3%)となる。\n
・・・
イ そこで判断するに,上記事実関係によれば,本件発明の効果であるカラーチェンジ機能が被告各製品の販売に貢献していることは明らかといえるが,他方,被告各製品は,消臭性,固まり性といった機能\も併せ有するのであり,これらに着目して,本件発明の実施品である原告らの動物用排尿処理材や,商品名等により専らカラーチェンジ機能が強調されていた前訴対象製品ではなく,被告各製品を選択する消費者も少なからず存在したものと推認することができる。これらの事情を総合すると,被告の利益のうち5割は本件発明以外の要因が寄与して生じたものであり,この限度で上記推定が覆ると考えられる。したがって,寄与率を10%とする被告の主張を採用することはできず,原告らが請求し得る損害賠償の額は合計316万5335円(633万0671円×50%)であると解するのが相当である。\n

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平成24(ワ)8071 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成26年01月16日 大阪地方裁判所

 使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為について、特許はすでに消尽しているかが争われました。裁判所は、新たな生産行為として侵害と認定しました。また、商標権についても侵害認定をしました。損害額は102条2項(侵害者の利益を損害と推定する)で認定されました。
 特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,特許権を行使することが許される。特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされた場合において,当該加工等が特許製品の新たな製造に当たるとして特許権者がその特許製品につき特許権を行使することが許されるといえるかどうかについては,当該特許製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も総合考慮して判断すべきである(最高裁判所平成19年11月8日第一小法廷判決・民集61巻8号2989頁)。
(2)検討
まず,特許製品の属性についてみると,原告製品及び被告製品の分包紙が消耗部材であるのと比較すれば,芯管の耐用期間が相当長いことは明らかである。他方で,分包紙を費消した後は,新たに分包紙を巻き直すことがない限り,製品として使用することができないものであるから,分包紙を費消した時点で製品としての効用をいったんは喪失するものであるといえる。また,証拠(甲10)によれば,原告製品は,病院や薬局等で医薬品の分包に用いられることから高度の品質が要求されるものであり,厳密に衛生管理された自社工場内で製造されていることが認められる。同様に,証拠(甲12〜14,乙5)によれば,被告製品も,被告が製造委託した工場において高い品質管理の下で製造されていることが認められる。これらのことからすれば,顧客にとって,原告製品(被告製品)は上記製品に占める分包紙の部分の価値が高いものであること,需要者である病院や薬局等が使用済みの芯管に分包紙を自ら巻き直すなどして再利用することはできないため,顧客にとって,分包紙を費消した後の芯管自体には価値がないことも認められる。そうすると,特許製品の属性としては,分包紙の部分の価値が高く,分包紙を費消した後の芯管自体は無価値なものであり,分包紙が費消された時点で製品としての本来の効用を終えるものということができる。芯管の部分が同一であったとしても,分包紙の部分が異なる製品については,社会的,経済的見地からみて,同一性を有する製品であるとはいいがたいものというべきである。被告製品の製造において行われる加工及び部材の交換の態様及び取引の実情の観点からみても,使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為は,製品の主要な部材を交換し,いったん製品としての本来の効用を終えた製品について新たに製品化する行為であって,かつ,顧客(製品の使用者)には実施することのできない行為であるといえる。以上によれば,使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為は,製品としての本来の効用を終えた原告製品について,製品の主要な部材を交換し,新たに製品化する行為であって,そのような行為を顧客(製品の使用者)が実施することもできない上,そのようにして製品化された被告製品は,社会的,経済的見地からみて,原告製品と同一性を有するともいいがたい。これらのことからすると,被告製品は,加工前の原告製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認めるのが相当である。被告製品を製品化する行為が本件特許発明の実施(生産)に当たる旨の原告の主張には理由がある。
4 争点3(原告が被告製品につき本件各商標権を行使することの可否)に対する判断 前記3のとおり,原告製品及び被告製品は,いずれも病院や薬局等で医薬品の分包に用いられることから高度の品質が要求されるものであり,厳重な品質管理の下で,芯管に分包紙を巻き付けて製造されるものである。顧客にとって,上記製品に占める分包紙の部分の品質は最大の関心事であることが窺える(なお,前記のとおり,需要者である病院や薬局等が使用済みの芯管に分包紙を自ら巻き直すなどして再利用することもできない。)。そうすると,分包紙及びその加工の主体が異なる場合には,品質において同一性のある商品であるとはいいがたいから,このような原告製品との同一性を欠く被告製品について本件各登録商標を付して販売する被告の行為は,原告の本件各商標権(専用使用権)を侵害するものというべきである。実質的にみても,購入者の認識にかかわらず,被告製品の出所が原告ではない以上,これに本件各登録商標を付したまま販売する行為は,その出所表示機能\を害するものである。また,被告製品については原告が責任を負うことができないにもかかわらず,これに本件登録商標が付されていると,その品質表示機能\をも害することになる。これらのことからすると,原告は被告製品につき本件各商標権を行使することができるものと解するのが相当である。

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