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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

104条の3

◆平成18(ワ)7760等 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年10月06日 大阪地方裁判所

 優先権主張の基礎出願1に開示がないとして、優先権が認められず、また、基礎出願2よりも前に先行技術があるので、104条の3の規定により権利行使が制限されました。
  「たしかに,アテローム性動脈硬化症(甲45:平成元年発行)や慢性関節リウマチ(甲47:平成6年発行),腫瘍組織の増殖,進展,及び転移(甲48:平成6年3月発行)がマクロファージの過剰な走化に起因したり,関係したりすることが,本件基礎出願1の出願当時の技術常識であったことが窺われる。しかし,本件基礎出願1の出願当時,88Cがマクロファージの走化と関係することが,同出願の明細書に開示されていないことは前記(4)ア(イ),(5)アで述べたとおりであり,同明細書に,本件各発明に係る88Cがこれらの疾患に関係しているか否かについての具体的な記載や示唆はないというべきである。また,仮に,88Cによりマクロファージの走化が誘引されることが当業者において理解されることを前提としても,具体的にどの疾患に関係するかについては,何ら特定されておらず,本件基礎出願1の明細書には,88Cの具体的な機能が,記載ないし示唆されていないというべきである。・・・・・以上によると,本件基礎出願1の明細書には,ケモカイン受容体88C(CCR5)と結合するケモカイン(リガンド)についての記載がなく,88Cの機能\が開示されていないこととなり,産業上の利用可能性ないし実施可能\性要件を欠き,また,最初の出願に係る出願書類の全体により本件各発明が明らかにされているということもできない。したがって,本件特許は,本件基礎出願1に基づく優先権を享受することができない。4 新規性欠如の有無(その2)(争点3-3)アイコスは,前記本件基礎出願1の後である平成8年6月7日,米国において,本件基礎出願1の一部継続出願(本件基礎出願2)をし,本件基礎出願2の明細書において,CCR5のリガンドとしてRANTES,MIP-1α,MIP-1βを特定している。しかし,本件基礎出願2の出願日(平成8年6月7日)に先立ち,上記リガンドについての文献(乙10の1・2,乙11)が存する。上記各文献のうち乙10の1・2(平成8年3月19日発行)では,CCR5(88C)のアミノ酸配列が記載された上,このリガンドとして,CCケモカイン中,MIP-1α,MIP-1β,RANTESが特定され,MIP-1αが,もっとも高いアゴニスト活性を示したが,他のCCケモカインであるMCP-1,MCP-2,MCP-3並びにCXCケモカイン類は無効であったことが報告されている。そして,上記文献乙10の1・2に記載されている「CC CKR5(hChemR13)」が本件各発明における88C(CCR5)と同一であることについては,当事者間に争いがない(原告第2準備書面7頁)。また,上記各文献のうち乙11(平成8年3月29日発行)でも,CCR5(88C,CC CKR5)とこれに対応するケモカインとしてMIP-1α,MIP-1β,RANTESの記載がある。一方,前記1で述べた技術的背景及び上記各文献(乙10の1・2,乙1511)によると,同各文献に接した当業者にとって,本件各発明に係る物質を精製,単離することは,技術的に容易であったと認めることができる。そうすると,本件各発明は,上記文献に開示されているか,もしくは,これから容易に想到することができるというべきである。以上によると,本件特許は,本件基礎出願2の優先権を主張できたとしても,本件各発明に係る特許は,いずれも新規性もしくは進歩性を欠如することとなり,特許無効審判により無効にされるべきであると認められるから(特許法123条1項2号,29条),特許法104条の3により,原告は,被告に対し本件各発明に係る特許権を行使することができない。」

◆平成18(ワ)7760等 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年10月06日 大阪地方裁判所

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◆平成18(受)1772 特許権に基づく製造販売禁止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年04月24日 最高裁判所第一小法廷(判決棄却 大阪高等裁判所)

  特許法104条の3の無効主張について、訂正審判により防御するのであれば、事実審口頭弁論終結時までに行うべきとの判断がなされました。
  「以上のように,訂正審判の請求をした場合には無効部分を排除することができる こと,及び,被告製品が減縮後の特許請求の範囲に係る発明の技術的範囲に属する ことは,被告の権利行使制限の抗弁が成立するか否かを判断するための要素であっ て,その基礎事実が事実審口頭弁論終結時までに既に存在し,原告においてその時 までにいつでも主張立証することができたものである。原告としては,事実審口頭 弁論終結時までに,上記の主張立証を尽くして権利行使制限の抗弁を排斥すべきで あり,事実審が,当事者双方の主張立証の程度に応じた訴訟状態に基づく自由心証 の結果として,権利行使制限の抗弁の成立を認めた以上,事実審口頭弁論終結後に なって,原告が訂正審判を請求し訂正審決が確定したとしても,訂正審決によって もたらされる法律効果は事実審口頭弁論終結時までに主張することができたもので あるから,訂正審決が確定したことをもって事実審の上記判断を違法とすることは できないのである(なお,最高裁昭和55年(オ)第589号同年10月23日第 一小法廷判決・民集34巻5号747頁,最高裁昭和54年(オ)第110号同5 7年3月30日第三小法廷判決・民集36巻3号501頁参照)。」

◆平成18(受)1772 特許権に基づく製造販売禁止等請求事件 特許権民事訴訟 平成20年04月24日 最高裁判所第一小法廷(判決棄却 大阪高等裁判所)

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