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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

104条の3

平成19(ワ)3494 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月27日 東京地方裁判所

 侵害訴訟で、除くクレームが新規事項かが争われました。

 特許法17条の2第3項は,第1項の規定により明細書等について補正をするときは,願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしなければならないと規定している。そして,「明細書等に記載した事項」とは,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(当業者)を基準として,明細書・特許請求の範囲・図面のすべての記載を総合して理解することができる技術的事項のことであり,補正が,上記のようにして導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は「明細書等に記載した事項の範囲内」であると解すべきである。したがって,特許請求の範囲の減縮を目的として特許請求の範囲に限定を付加する補正を行う場合,付加される補正事項が当該明細書等に明示されているときのみならず,明示されていないときでも新たな技術的事項を導入するものではないときは,「明細書等に記載した事項の範囲内」の減縮であるというべきであり,このことは除くクレームを付加する補正においても妥当する。・・・別件特許は,球状活性炭に関し,本件特許とは異なり,フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を出発原料として特定せず,また,本件特許では従来技術に属するものとされるピッチ類を用いても調整が可能であるとして,このR値の観点から球状活性炭を特定したものである。そうすると,球状活性炭のうちフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として用いた場合において,そのR値が1.4以上であるときには,本件特許に係る発明と別件特許に係る発明は同一であるということができる。そして,本件補正は,このR値が1.4以上である球状活性炭を特許請求の範囲から除くことを目的とするものであり,特許請求の範囲の記載に技術的観点から限定を加えるものではなく,新たな技術的事項を導入するものではないと認めるのが相当である。・したがって,本件補正は,「明細書等に記載した事項の範囲内」の減縮であるので,特許法17条の2第3項に違反するものではなく,本件特許は,無効とされるべきものとは認められない。なお,本件特許の審決取消請求訴訟において,同様の判断がされている(知的財産高等裁判所平成21年3月31日判決・甲77)。」\n

◆平成19(ワ)3494 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月27日 東京地方裁判所
 

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 >> 104条の3

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平成20(ワ)25354 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟

 数値限定発明について、104条の3で権利行使不能と判断されました。\n  「・・・乙1発明の「軽量微小素材粉末」として適当な含水のもの(WEタイプ)を使用した場合の水の添加量「52.1〜78重量%」を,本件特許発明の「65〜85重量%」と変更することについての格別の技術的意義は,本件明細書からは見い出せない。そうすると,本件特許発明において水の添加量を「65〜85重量%」としたことは,乙1発明の「軽量微小素材粉末」として適当な含水のものの添加量の数値範囲を好適なものに変更したにすぎず,当業者が適宜行う範囲内のことというほかない。」

◆平成20(ワ)25354 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年09月11日 東京地方裁判所

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平成20(ワ)5712 損害賠償請求事件 意匠権 民事訴訟 平成21年09月10日 大阪地方裁判所

 意匠権および特許権に基づく損害賠償が請求されました。裁判所は104条の3の規定により、権利行使を認めませんでした。
 「原告は,ランドの面積を小さくするというのは,有限の小さい面積にすることであり,ランドの幅を実質0にするという思想ではないし,本件特許の出願前は,ランドの幅が小さ過ぎると,剛性が低下するし,飛距離も劣ると考えられており,ランドの面積を小さくすることからランドの幅を0.0mmにするという発想に至ることは,飛躍があって直ちにはできないと主張する。しかしながら,本件発明1においても,実際には,ランドの面積は有限の小さい面積となるし,ランドの幅は有限の細い幅となるのであるから,結局,ランドの幅を0.0mmに設定することは,ランドの合計面積を小さくすることの延長線上にあるといえる。また,ランドの幅と連動するディンプル占有率については,最適値に係る特定の見解が確立されておらず,当業者が,剛性の低下にも配慮しつつ,各自の見解に基づき,飛距離を伸ばすにあたって最適な範囲を設定していたのであり(甲36ないし44),これを定めるにあたり特段の制約があった事実は認められない。したがって,上記組合せにつき,特段の阻害要因も認められないといえる。・・・以上のとおり,引用例3及び5は,いずれもゴルフボールに関する発明であって,解決すべき課題も共通し,引用例3に引用例5を組み合わせることによる特段の作用効果も認められないか,認められたとしても予測し得る範囲のものであり,組合せについて特段の阻害要因も認められない。そうすると,相違点に係る本件発明1の構\成は,引用例3に引用例5を組み合わせることにより,当業者が容易に想到し得たといえる。」

◆平成20(ワ)5712 損害賠償請求事件 意匠権 民事訴訟 平成21年09月10日 大阪地方裁判所

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 >> 104条の3
 >> 意匠その他

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平成20(ワ)19402 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月31日 東京地方裁判所

 特許侵害訴訟について、進歩性なしとして権利行使不能と判断されました。

◆平成20(ワ)19402 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月31日 東京地方裁判所

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平成20(ネ)10068 特許権侵害差止控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月25日 知的財産高等裁判所

 均等侵害も第4,第5要件を満足しないとして、否定されました。
 控訴人は,拒絶査定不服審判の請求の理由として,「切削の対象が正方形または長方形の半導体ウェーハであること…が関連しあって,…独特の作用効果を奏するものである。仮に,切削対象が不定型なワークであるとすると,…」と記載し(乙8の17),その後,本件発明に係る特許出願は,特許査定された(乙8の19)。(ウ) 上記(ア)認定の本件明細書の記載に照らせば,控訴人は,被加工物すなわち切削対象物として半導体ウェーハの外,フェライト等が存在することを想起し,半導体ウェーハ以外の切削対象物を包含した上位概念により特許請求の範囲を記載することが容易にできたにもかかわらず,本件発明の特許請求の範囲には,あえてこれを「半導体ウェーハ」に限定する記載をしたものということができる。また,上記(イ)認定の出願経緯に照らしても,控訴人は,圧電基板等の切削方法が開示されている引用発明1(乙9)との関係で,本件発明の切削対象物が「正方形または長方形の半導体ウェーハ」であることを相違点として強調し,しかも,切削対象物を半導体ウェーハに限定しない当初の請求項1を削除するなどして,本件発明においては意識的に「半導体ウェーハ」に限定したと評価することができる。このように,当業者であれば,当初から「半導体ウェーハ」以外の切削対象物を包含した上位概念により特許請求の範囲を記載することが容易にできたにもかかわらず,控訴人は,切削対象物を「半導体ウェーハ」に限定しこれのみを対象として特許出願し,切削対象物を半導体ウェーハに限定しない当初の請求項1を削除するなどしたものであるから,外形的には「半導体ウェーハ」以外の切削対象物を意識的に除外したものと解されてもやむを得ないものといわざるを得ない。(エ) そうすると,被控訴人方法は,均等侵害の要件のうち,少なくとも,前記5の要件を欠くことが明らかである。ウ均等侵害の要件4についてまた,仮に,被控訴人方法が「半導体ウェーハ」以外の本件発明の構成要件を充足するとすると,後記2(1)で判示するのと同様に,被控訴人方法も,引用発明1から容易に推考することができるというべきであるから,均等侵害の要件のうち,前記4の要件も欠くことに帰する

◆平成20(ネ)10068 特許権侵害差止控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年08月25日 知的財産高等裁判所

関連事件はこちらです

◆平成21(行ケ)10046

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 >> 第4要件(公知技術からの容易性)
 >> 第5要件(禁反言)
 >> 間接侵害
 >> 104条の3

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◆平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年07月15日 東京地方裁判所

 ユーザインターフェイス関係の特許(CS関連発明)について最終的には、進歩性違反を理由に権利行使不能と判断されましたが、用語の解釈について興味深い判断がなされました。
  「被告は,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続では,原告が,「テレビジョン番組リスト」の用語を「個々の番組単位における番組情報」の意味では使用しておらず,各手続における特許庁の主張及び裁判所の判決においても,「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組のタイトルのリスト,すなわち,テレビジョン番組のタイトルが並んだものと解されているから,本件発明における「テレビジョン番組リスト」の文言についても,「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると解すべきであり,分割出願に係る本件特許権による権利行使の際に,同用語の意義を違えて主張することは,信義則に基づく禁反言法理から許されないと主張する。しかしながら,分割出願制度は,一つの出願において二つ以上の異なる発明の特許出願をした出願人に対し,出願を分割する方法により,各発明につき,それぞれ元の出願の時に遡って出願がされたものとみなして特許を受けさせるものであるから,原出願で特許出願された発明と,分割出願で特許出願された発明は,本来,内容を異にするものであり,分割出願された発明の「特許請求の範囲」に記載された文言の解釈が,原出願の手続における文言の解釈と必ずしも一致する必要はないというべきである。したがって,本件特許の「テレビジョン番組リスト」の文言の解釈において,仮に,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続において使用された「テレビジョン番組リスト」の文言の意味とは異なる解釈をしたとしても,禁反言法理から許されないとはいえず,被告の上記主張は採用できない。」

◆平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等 特許権 民事訴訟 平成21年07月15日 東京地方裁判所

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 >> 新規性・進歩性
 >> 要旨認定
 >> 本件発明
 >> 技術的範囲
 >> 104条の3
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◆平成19(ワ)8426 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年05月20日 東京地方裁判所

 侵害訴訟における無効判断時に、発明の要旨認定にリパーゼ判決を用いると言及がなされました。
   「そもそも,本件発明も,外部取り出し端子に印加された静電気が,2端子素子の保護回路及び共通浮遊電極を通じて,他の外部取り出し端子へと分割されるという分散放電の技術思想をその必須の内容とするものではないから,乙2文献が分散放電の技術思想を開示していないことによって,相違点1についての前記(ア)の判断が左右されるものではない。すなわち,特許出願手続,無効審判手続及び審決取消訴訟における発明の要旨認定は,特許請求の範囲の記載に基づいて行われ,明細書の発明の詳細な説明の記載や図面が参酌されるのは,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限られると解すべきところ(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照),侵害訴訟において特許法104条の3第1項に基づく権利行使の制限の主張が行われた場合の当該特許発明の要旨認定においても,同条項が「特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは」と規定されていることに照らし,特許無効審判手続及びその審決取消訴訟における発明の要旨認定の場合と同じ認定手法によるのが相当と認められる。したがって,上記権利行使の制限の主張が行われた場合の発明の要旨認定は,原則として,特許請求の範囲の記載に基づいて行われ,明細書の発明の詳細な説明の記載や図面が参酌されるのは,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,あるいは,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限られると解すべきである。 ところで,本件明細書(甲10添付)には,発明の詳細な説明の欄において,「共通浮遊電極を設けた場合には,静電気は2端子素子から共通浮遊電極さらに2端子素子を通して他の複数の端子に放電されるので,さらに印加電圧を低くすることができる。」,「第6図は,さらに第5図の例において遮光膜を第1主電極延在部27として第1主電極106に接続した例で,両方向に電流を流しやすい構造を有している。」との記載があるが,特許請求の範囲の記載は,前記争いのない事実等の(1)で認定したとおりであり,同記載によれば,本件発明においては,2端子薄膜半導体素子の付加ゲート電極及び第2主電極は外部取り出し端子に接続し,第1主電極は共通浮遊電極に接続するという順方向接続態様で接続する構\\成(構成要件E)であることが明らかであり,この接続態様によれば,電流は,外部取り出し端子から2端子薄膜半導体素子を介して共通浮遊電極へ流れる方向には流れやすいが,共通浮遊電極から2端子薄膜半導体素子を介して他の外部取り出し端子に流れる方向には流れにくくなっているものと認められる。そうすると,本件特許の特許請求の範囲の記載からみて,分散放電の技術思想ないしそれを実現する構\\成は,本件発明の必須の内容とはされていないというべきである。したがって,原告の上記主張は理由がない。b 仮に,原告の主張に係る分散放電を,本件発明の構成でも実現できる程度のものと解した場合でも,以下のとおり,原告の上記主張には理由がない。」

◆平成19(ワ)8426 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年05月20日 東京地方裁判所

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◆平成20(ワ)6226 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月04日 大阪地方裁判所

 CS関連発明ではありませんが、新規性無しとして権利行使不能とされました。
 「これらの記載によると,本件明細書に記載された本件発明の実施例において,書込と読出は同時に行われることはなく,「タイムスリット」と呼ばれる短い時間を単位として,書込と読出が時分割で行われていることが示されている。具体的には,1個の書込タイムスロット「0」で書込を行い,次に,63個の読出タイムスロット「1」〜「63」で読出を行うという,合計64個のタイムスロットを繰り返すことが示されており,書込中の箇所を含む複数個の任意の位置から読出するのではなく,書込中の箇所を除く複数個の任意の位置から読出することがわかる(なお,仮に,本件発明1の「任意の複数の位置」が,引用発明3のタイムスロットのn個全体における任意の位置を意味するのであれば,引用発明3を理由として,本件発明1の無効をいうことはできなくなるが,そのときは,特許庁による判定〔乙1〕で示されたとおり,被告製品は,本件発明1を文言上侵害していないということになる。)。」

◆平成20(ワ)6226 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月04日 大阪地方裁判所

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◆平成21(ワ)4394 損害賠償 特許権 民事訴訟 平成21年04月27日 大阪地方裁判所

  機能的クレームについてサポート要件違反を理由として、権利行使ができないと判断されました。
   「原告は,「地震時のロックが確実になる」との効果を奏する取付位置は,当業者が試行錯誤をしてみれば極めて容易に判明すると主張するが,かかる主張は「自由端でない位置」という特許請求の範囲の記載が本件明細書で記載された課題解決の手段である「自由端から蝶番側へ(一定程度)離れた位置」を超えるものであることに対する反論にはなっておらず,失当である。仮に,係止手段の大きさや地震検出感度,地震時の係止手段の作動速度や作動時間,開き戸の開口の大きさ,並びに地震時の開き戸の開口速度や開口時間等の条件が明らかであれば,当業者にとって,技術常識に照らし,一定の位置を特定することも可能であるといえるが,本件明細書には,これらの諸条件の記載や示唆すら全くないのである。さらに,原告は「自由端でない位置」では課題を解決する手段として十\分でなくても,「押すまで閉じられずわずかに開かれた」との構成要件により作動が確実との課題を解決できるとも主張するが,そのようなことは本件明細書の発明の詳細な説明において何ら記載されていない。また,段落【0005】の「開き戸の動きが最も大きい自由端ではないため地震時のロックが確実になる」との記載によれば,取付位置は確実に係合する(ひっかける)ための構\成と位置づけられるところ,原告の主張によれば「押すまで閉じられずわずかに開かれた」という構成は,一旦係合した後の係合状態を維持するためものと解されるから,かかる構\成をもって,自由端に近接した位置における係合が確保できるとは解されない。以上より,構成要件Dの「自由端でない位置」との記載は,発明の詳細な説明に記載された発明の範囲を超えるものであり,特許法36条6項1号の定めるサポート要件を充たすとは認められない。」

◆平成21(ワ)4394 損害賠償 特許権 民事訴訟 平成21年04月27日 大阪地方裁判所

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◆平成20(ワ)4056 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成21年03月05日 大阪地方裁判所

   審査においてした補正が要旨変更と判断され、特許法104条の3により権利行使が制限されました。
 「明細書の要旨」とは,旧特許法上その意義を定めた明文の規定がないものの,特許請求の範囲に記載された技術的事項を指すものと解すべきである。したがって,特許請求の範囲を増加し,減少し,変更することは,その本来的意味においては,いずれも明細書の要旨を変更するものということができる。しかし,「出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達前に,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を増加し減少し又は変更する補正は,明細書の要旨を変更しないものとみなす」と定めているから(旧。特許法41条),当該補正が明細書の要旨を変更することになるか否かは,結局のところ,当該補正後の特許請求の範囲に記載された技術的事項が「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」か否かによって決せられることになる。そして,「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,出願時の明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,このように導かれる技術的事項との関係において,当該補正が特許請求の範囲の記載に新たな技術的事項を導入するものであるときは,当該補正は,「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということはできず,明細書の要旨を変更するものということになる。以下,このような見地から本件補正が当初明細書の特許請求の範囲に記載された技術的事項に新たな技術的事項を導入するものであるか否かを検討する。
 ・・・イ このように,当初明細書等に開示された発明は,もっぱら,複数の画像表示部で1つの画面を構\成し,かつ,折りたたみ可能とすることにより,不要時には小さく,必要時には大きくすることができ,装置の小型化と画面の大型化を同時に実現できる画像表\示装置であったといえる。そして,このときの各画像表示部の位置関係について,被告は,相互に当接していることを要する旨主張し,当初明細書等の実施例の説明においては「当接して」との文言が記載されている(上記(4)オ(ア))ところ,必ずしも各画像表示部が「当接」すなわち当たり接していなくても,1つの画像表\示がなされたと認識し得るような近接した位置関係にあれば,当初明細書等の上記発明の効果を奏しないとはいえない。したがって,当初明細書等に記載された発明は,「当接する」ことまでは要しないが,少なくとも複数の画像表示部が1つの画像を表\示していると認識し得る程度に近接していることを要するというべきであって,各画像表示部が離れた位置にあることによって1つの画面を構\成しないような画像表示装置は記載も示唆もされていないというべきである。そして,かかる構\成が当業者にとって自明であったともいえない。補正事項?@に係る補正後の特許請求の範囲の記載では「画像表示用の表\示部を複数有し」とされているのみで,「複数の画像表示部が一つの画像表\示がなされたと認識し得る程度に近接している」もの以外の構成を包含し得るものとなっているから,補正事項?@に係る補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で,当初明細書等に開示された発明の構成に関する技術的事項に新たな技術的事項を導入するものというべきである。したがって,同補正は,当初明細書等の範囲内においてするものではなく,当初明細書等の要旨を変更するものというべきである。」

◆平成20(ワ)4056 損害賠償請求事件 特許権民事訴訟 平成21年03月05日 大阪地方裁判所

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◆平成19(ワ)17762 損害賠償請求事件 実用新案権民事訴訟 平成21年02月27日 東京地方裁判所

 侵害訴訟で無効主張の抗弁がなされ、これに対して訂正による再抗弁を行う場合の主張立証責任は権利者にあると判断されました。
 「このような事情の下で,原告は,本件訂正請求により,上記の無効理由が解消される旨の対抗主張をしているところ,当該主張については,上記の無効主張と両立しつつ,その法律効果の発生を妨げるものとして,同無効主張に対する再抗弁と位置付けるのが相当である。そして,その成立要件については,上記権利行使制限の抗弁の法律効果を障害することによって請求原因による法律効果を復活させ,原告の本件実用新案権の行使を可能にするという法律効果が生じることに照らし,原告において,その法律効果発生を実現するに足りる要件,すなわち,?@原告が適法な訂正請求を行っていること,?A当該訂正によって被告が主張している無効理由が解消されること,?B被告製品が当該訂正後の請求項に係る考案の技術的範囲に属することを主張立証すべきであると解する。」

◆平成19(ワ)17762 損害賠償請求事件 実用新案権民事訴訟 平成21年02月27日 東京地方裁判所

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