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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

104条の3

平成22(ワ)40331 特権侵害差止等請求事件 平成23年11月30日 東京地方裁判所 

 技術的範囲には属するものの、特許法104条の3により権利行使不能と判断されました。原告の訂正主張について、「審判請求していないという理由で主張の提出自体が許されないわけではない」と言及したものの、「その主張か時期に後れた防御である」として認められませんでした。
 原告は,無効理由4に係る被告の無効主張は時機に後れた攻撃防御方法であるから却下すべきと主張する。しかしながら,当該無効主張は,平成23年7月13日の第4回弁論準備手続において,同月12日付け被告準備書面(4)をもってなされたものであるところ,同時点では,いわゆる二段階審理における侵害論についての審理中であったから,当該無効主張についての審理がなければ直ちに弁論を終結できる段階になく,上記無効主張により訴訟の完結を遅延させることになるものとは認められない。原告は,無効審判請求の審理が終結した後に新たに無効主張を追加することは,侵害訴訟と審決取消訴訟におけるいわゆるダブルトラック問題を引き起こすと指摘するが,上記無効主張により訴訟の完結を遅延させることになるものと認められないことは上記のとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。
 3 訂正を理由とする対抗主張について
原告は,平成23年9月22日付け原告第6準備書面をもって,本件訂正発明には無効理由がなく,かつ,被告製品は本件訂正発明の技術的範囲に属すると主張し,これに対し,被告は,原告の上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法であるから却下されるべきであると主張する。そこで検討するに,原告の上記対抗主張は,前記平成23年7月12日付け被告準備書面(4)をもってなされた無効理由2〜4に対するものであるところ,受命裁判官は第5回弁論準備手続期日(同年8月5日)において,原告に対し,上記無効理由についても審理するので,これに対する反論があれば次回までに提出するよう促し,反論の機会を与えたにもかかわらず,原告は,第6回弁論準備手続期日(同年9月9日)までに上記対抗主張をすることなく,同期日で弁論準備手続を終結することについても何ら異議を述べなかったものである。無効理由2及び3は,いずれも既出の証拠(乙2及び乙3)を主引用例とする無効主張であり,無効理由4も,平成14年5月20日付け特許異議申立てにおいて既に刊行物として引用されていた乙6に基づくものであるから,原告は,上記無効理由の主張があった第4回弁論準備手続期日から弁論準備手続を終結した第6回弁論準備手続期日までの間に対抗主張を提出することが可能\\であったと認められる(原告は,乙6に基づく無効理由4を回避するために訂正請求を行うことができるのは第2次無効審判請求の無効審判請求書副本の送達日である平成23年8月19日から答弁書提出期限である同年10月18日までの期間のみであると主張するが,本件訴訟において対抗主張を提出することはできたものというべきである。原告は,対抗主張が認められる要件として現に訂正審判の請求あるいは訂正請求を行ったことが必要とする見解が多数であるとも主張するが,訂正審判請求前又は訂正請求前であっても,訴訟において対抗主張の提出自体が許されないわけではなく,理由がない。)にもかかわらず,これを提出せず,弁論準備手続の終結後,最終の口頭弁論期日になって上記対抗主張に及ぶことは,少なくとも重大な過失により時機に後れて提出したものというほかなく,また,これにより訴訟の完結を遅延させるものであることも明らかである。

◆判決本文

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平成22(ワ)24818 特許権差止等請求事件 平成23年11月25日 東京地方裁判所

 訂正要件を満たさないため無効理由を解消できず、104条の3の規定により、権利行使不能と判断されました。
 本件特許発明は「鍵」発明であり,ロータリーディスクタンブラー錠の構成に関する上記限定を加えたからといって,「鍵」自体の構\成が限定されるとは認められないのであるから,上記限定によって,本件特許発明に係る特許請求の範囲を減縮するものということはできず,また,本件特許発明の「鍵」の構成が明瞭になるとも,誤記又は誤訳が訂正されることになるということもできない。したがって,本件訂正請求は,特許法134条の2第1項ただし書各号所定の事項を目的とするものとは認められないから,不適法なものであり,これによって,本件特許が有する前示1の無効理由を解消することはできない。\n

◆判決本文

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 >> 補正・訂正
 >> 減縮
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 >> 104条の3

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平成22(ワ)23188 特許権侵害差止等請求事件 平成23年10月19日 東京地方裁判所

 無効理由なし、特許権を侵害すると判断されました。
 以上の明細書の記載及びその課題解決のためのカフとカラー部分との関係について示した構成要件Eの記載に照らして,「直接隣接する」の技術的意義を検討すると,本件発明は,従来技術において,カフ上端部の分泌物を吸引するについて,カラーの延在部よりも上部に吸引孔を設けざるを得ず,その結果,吸引孔とカフ上端部の位置が遠ざけられ,そのためカフ上端部の分泌物を十\分吸引できなかったのを,カラーに被せるようにカフを膨らませ,気管をシールすることによって,カラー部分の存在によるカフ上端部からの吸引孔の離間を回避し,カフ上端部と吸引孔の近接を可能にしたことにあると認めるのが相当である。したがって,「直接隣接する」の意義は,カラー部分の存在による吸引孔とカフ上端部との離間が防止されていること,すなわち,カラー部分の存在によりカラー部分を隔てて吸引孔とカフ上端部が隣接することが回避されていることを意味するものと介される。したがって,カフの近位端と吸引孔の間の空隙の有無が直ちに「直接隣接する」か否かの評価に結び付くのではなく,カラー部分に重なるようにカフが膨らむ構\成によって,カラー部分の距離がそのまま吸引孔を設けることの障害となっていた従来技術と比較して,カフの上端部(近位端)と吸引孔の間の空隙を短縮することができているのであれば,「直接隣接する」と評価することができるものというべきである。

◆判決本文

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平成21(ワ)3527等 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年06月24日 東京地方裁判所

 少し前の事件ですが、最高裁で上告棄却され、確定しましたのでアップしておきます。
 インクタンクの販売が、本件液体インク供給システムの特許権侵害か争われました。 争点は、技術的範囲、無効、間接侵害等です。
 特許法101条2号所定の「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,より広い用途を有するねじや釘のような普及品を想定して制定されたものである。原告製プリンタにしか使用することができない被告製品2は,発光と受光という本件発明の特徴的機能を有しない機種計67機種の他の原告製プリンタにも使用することができるとしても,汎用品ということは到底できず,「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは認められない。上記「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは,汎用の部品や材料が,特許発明の侵害する製品の製造に用いられたとしても,間接侵害とならないように設けられた規定であり,被告製インクタンクは,原告製プリンタ専用のインクタンクであるから,到底,汎用の部品とはいえない。したがって,被告製品2は,「日本国内において広く一般に流通しているもの」とは認められない。\n

◆判決本文

◆控訴審はこちらです。平成22年(ネ)10064
 

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 >> 汎用品
 >> 104条の3

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平成21(ワ)44954 特許権に基づく工事差止等請求事件 平成23年09月29日 東京地方裁判所

 土木分野の特許について、無効により権利行使できないと判断されました。
 前記(1)及び上記イを前提に検討するに,乙1記載の方法と乙2記載の巻上装置を使用した法面処理作業の方法は,法面に対する作業内容が,法面の破砕であるのか,法面に対するアスファルト舗装であるのかという違いはあるものの,ウインチとワイヤーとを用いて傾斜面上の「加工機械本体」(台車あるいは処理用作業車)を移動させて作業を行う「法面の加工方法」という同一の技術分野に属するものであり,また,傾斜面上の所望の位置に加工機械本体を移動させ,効率よく法面作業を行うことを目的とする点で課題も共通すること,上記課題を解決するための手段として,乙1では,アンカー及び巻取機(ウインチ)を法面上部の「左,中,右」の位置に合計三つ設け,「中」の位置のウインチを駆動させて加工機械本体を昇降移動させるとともに,「左」及び「右」の位置の各ウインチを駆動させ,左右2本のワイヤーの巻上げ量を調整することにより可動連結具及び舵取り機構を介して加工機械本体の車輪の軸を水平面内で回動させる構\成としたのに対し,乙2では,2台のウインチを左右に設け,左右2本のワイヤーの巻上げ量を変え,その牽引力を異ならせることにより,加工機械本体を曲線をなす境界線に沿って移動させながら上昇させる構成とした点に違いはあるものの,上記課題を解決するために左右のウインチを駆動させて左右2本のワイヤーの巻上げ量を変化させる構\成を採用している点では両者は共通していることに照らすならば,乙1及び乙2に接した当業者であれば,乙1記載の方法において,アンカー及びウインチを法面上部の「左,中,右」の位置に合計三つ設けた上記構成に代えて,乙2記載の上記構\成のように「左右」の位置に合計二つ設ける構成(相違点に係る本件発明1の構\成)とし,これらのウインチの駆動量を別個に制御することによって左右2本のワイヤーの巻上げ量を変え,加工機械本体を所望の位置に移動させることができるようになることを格別の困難なく想到することができたものと認められるから,本件発明1は,乙1記載の方法発明及び乙2記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものというべきである。

◆判決本文

◆関連案件 平成21(ワ)298

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平成22(ワ)5012 特許権侵害差止等請求事件 平成23年09月22日 大阪地方裁判所

 特許権侵害事件ですが、争点は無効理由があるか否かで、技術的範囲の属否は争点になっていません。裁判所は、無効理由なしとして差止、損害賠償を認めました。
 これらの記載によれば,本件特許発明が解決しようとする課題は,給油取扱所における固定式消火設備の設置場所について選択の自由度を高めることにあり,これを解決するための手段が相違点2に係る構成要件Fの構\成であり,これにより選択弁以降の配管取り出しを格納箱の三側方のいずれの方向からも行うことができるという作用効果を奏するという技術的意義があると認めることができる。イ これに対し,乙1発明に係る乙1文献には,相違点2に係る上記アの課題について記載や示唆はない。被告らが引用する文献(乙2,6ないし8,12及び13)についても同様である(なお,乙6,7について,本件特許出願前の刊行物であるかどうかは不明であり,乙8は,本件特許出願後である平成21年6月に頒布されたものである。)。また,乙12,13には,「限られた空間に対して部材を斜めに配置」することが開示されている。しかし,乙12は「室内に洗濯物を干すときに使用する物干し竿」の配置に係るものであって,固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではなく,乙13は「巨大コイルを構成する10本の電線の結線部分(コネクター)」の配置に関するものであって,固定式消火設備における水平送出管部の配置を対象とするものではない。本件特許発明は,前記アのとおり,「格納箱内における多数の分岐管及び選択弁の取付法や配置法に工夫を凝らすことにより,多数の分岐管の全ての選択弁以降の配管取り出し方向の拡大化を図れ,給油取扱所内への格納箱の設置場所の選択自由度を拡げることのできる固定式消火設備を提供すること」(段落【0005】)を課題とし,当該課題を解決するために,水平送出管部を「平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設」(段落【0006】)するものであって,単に,限られた空間に部材を斜めに配置するだけのものではない。すなわち,前記アのとおり「水平送出管部の複数箇所の各箇所の上下に分岐管を設ける」ことと,水平送出管部を「平面視で格納箱奥行方向に対して斜交するように斜め方向にかつ側面視で水平に配設」する(段落【0006】)こととが技術的に関連し,有機的に機能\し合うことによって,複数の分岐管の全ての選択弁以降の配管取り出しが,格納箱の左側,右側,後ろ側のいずれの方向からも行うことができるとする作用効果を奏するものである。

◆判決本文

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平成20(ワ)28967 特許権侵害差止等請求事件 平成23年08月19日 東京地方裁判所

 侵害判断にて、訂正請求がなされているが、たとえ訂正が認められても無効理由ありとして、権利行使を認めませんでした。
 上記3(1)のとおり,乙19発明は,「従来の納豆製品…の問題点を解消し,固体納豆の栄養成分および酵素類等を豊富に含み,しかも誰にでも容易に摂取可能な新しい食品を提供することを目的として」(上記3(1)サ)おり,「近年,納豆中に含まれる酵素の一種(ナットウキナーゼ)が血栓溶解作用を有するという報告…もなされ,その機能性が特に注目を集めている。」(上記3(1)キ),「この発明は…,納豆菌と,その代謝産物である人体に有益な機能性物質を含有する納豆菌培養液とからなることを特徴とする液体納豆を提供する。納豆菌は,…は,ナットウキナーゼ産生能\に優れている…」(上記3(1)シ),「培養液の組成および各成分の含有量の調整によって最終製品の旨味,香り,臭い(アンモニア臭等の好ましくない臭い),粘性等の程度,あるいはビタミン類や酵素類等の含有量を随意に調節することができる。」(上記3(1)ス),「さらにこの発明は,上記の納豆菌とその培養液とからなる液体納豆の乾燥粉末と,この乾燥粉末を含有する食品を提供する。」(上記3(1)セ)等のとおり,酵素類としてナットウキナーゼが着目されていることが認められ,また,「液体培養では,通気攪拌条件等を自在に設定することができるため,納豆菌の増殖や代謝に応じて最適な条件のもとで発酵を行わせることができる。」(上記3(1)ソ),「培養液には,納豆菌によって産生させることを目的とする物質(ビタミン類,アミノ酸類,ナットウキナーゼ等の酵素類など),および固体納豆の特徴を再現するために必要とされる特性(香りや粘性等)に応じて,それらの必要基質を選択して添加すればよい。」(上記3(1)タ)等のとおり,納豆菌によって産生されるナットウキナーゼ等の目的物質に応じて必要基質を添加し,通気攪拌条件等を自在に設定して行うことができるとされるものである。そうすると,好適な液体培養条件を設定して乙19発明のナットウキナーゼをより豊富なものとすることは当業者には容易に想到し得るものということができる。
 イ なお,本件訂正発明において,ナットウキナーゼの含有量を「5000FU/g乾燥重量以上」と限定したことについて,本件明細書には,「1g当り,…乾燥粉末の場合は,…5000FU以上であり得,10000FU以上であり得る。」(段落【0018】)との記載の他,実施例3の表2中に納豆菌培養エキス粉末の活性値として「13000FU/g」との記載があるが,いずれもナットウキナーゼ活性が5000FU/g乾燥重量以上の納豆菌培養液(またはその濃縮物)を含むか否かによって,量的に顕著な差異があることを開示するものとはいえないものである。したがって,本件明細書の記載からは上記数値限定をすることの意義は認めることはできない。\n

◆判決本文

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平成23(ネ)10002 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成23年09月07日 知的財産高等裁判所 

 切り餅事件について、知財高裁は無効であるとした1審判決を破棄した中間判決をしました。
 上記発明の詳細な説明欄の記載によれば,本件発明の作用効果として,i)加熱時の突発的な膨化による噴き出しの抑制,ii)切り込み部位の忌避すべき焼き上がり防止(美感の維持),iii)均一な焼き上がり,iV)べ易く,美味しい焼き上がり,が挙げられている。そして,本件発明は,切餅の立直側面である側周表面に切り込み部等を形成し,焼き上がり時に,上側が持ち上がることにより,上記i)ないしiV)の作用効果が生ずるものと理解することができる。これに対して,発明の詳細な説明欄において,側周表面に切り込み部等を設け,更に,載置底面又は平坦上面に切り込み部等を形成すると,上記作用効果が生じないなどとの説明がされた部分はない。本件明細書の記載及び図面を考慮しても,構\成要件Bにおける「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載は,通常は,最も広い面を載置底面として焼き上げるのが一般的であるが,そのような態様で載置しない場合もあり得ることから,載置状態との関係を示すため,「側周表面」を,より明確にする趣旨で付加された記載と理解することができ,載置底面又は平坦上面に切り込み部等を設けることを排除する趣旨を読み取ることはできない。
c これに対し,被告は,本件発明は,切餅について,切り込みの設定によって,焼き途中での膨化による噴き出しを制御できるという効果(効果i))と,焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化できるという効果(効果ii))を共に奏するものであるが(本件明細書段落【0032】),切餅の平坦上面又は載置底面に切り込みが存在する場合には,焼き上がった後その切り込み部位が人肌での傷跡のような焼き上がりとなるため,忌避すべき状態になることから(本件明細書段落【0007】),本件発明における効果ii)を奏することはないと主張する。しかし,被告の主張は,採用の限りでない。すなわち,本件発明は,上記のとおり,切餅の側周表面の周方向の切り込みによって,膨化による噴き出しを抑制する効果があるということを利用した発明であり,焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化できるという効果は,これに伴う当然の結果であるといえる。載置底面又は平坦上面に切り込み部を設けたために,美観を損なう場合が生じ得るからといって,そのことから直ちに,構\成要件Bにおいて,載置底面又は平坦上面に切り込み部を設けることが,排除されると解することは相当でない。また,当初明細書(甲6の2)の段落【0021】には,作用効果に寄与する切り込みの形成方法が記載され,同明細書の段落【0043】,【0045】には,周方向の切り込み等は,側周表面に設けるよりは作用効果が十\分ではないが,平坦頂面における場合でも同様の作用効果が生じる旨記載され,図6(別紙図5)が示されていたことに照らすと,周方向の切り込み等による上側の持ち上がりが生ずる限りは,本件発明の作用効果が生ずるものと理解することができ,載置底面又は平坦上面に切り込み部を設けないとの限定がされているとはいえない。さらに,本件明細書段落【0007】の記載は,米菓で採られた噴き出し抑制手段の適用における問題点を記載したものであり,本件発明において,周方向の切り込み等による,上側の持ち上がりによる噴き出し抑制手段を採用するに当たり,載置底面又は平坦上面に切り込み等を設けるか否かについて,本件明細書に何らかの言及がされていると解する余地はない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
d また,被告は,切り込み部位が小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表\面に設けられるという構成であることを表\\現するのであれば,「小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表\面に切り込み部又は溝部を設ける」と記載すれば足り,「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載を付加する必要はない,と主張する。しかし,被告のこの点の主張も採用できない。すなわち,前記のとおり,角形等の小片餅体である切餅において,最も広い面を載置底面として焼き上げるのが一般的であるといえるが,これにより一義的に全ての面が特定できるとは解されない(別紙「原告提出の参考図面」参照)。したがって,小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表\\面を特定するため,「載置底面又は平坦上面ではなく」との記載を付加することに,意味があるといえる。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。

◆判決本文

◆関連の無効審判審取です

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平成21(ワ)8390 特許権侵害差止等請求事件 平成23年08月30日 東京地方裁判所 

 イーモバイルに対する特許権侵害事件です。裁判所は、新規性違反を理由に権利行使できないと判断しました(特104条の3)。また、時期に後れた抗弁として、追加主張を却下しました。
 以上によれば,乙15には,乙15記載の伝送方法が,「第1のデータフィールドに第1のデータフォーマットのデータを含め,第2のデータフィールドに該第1のデータフォーマットとは異なる第2のデータフォーマットのデータを含める工程」(構成要件B),「前記第1のデータフィールド内に前記メッセージ信号全体の構\成を表す第1の識別子を挿入する工程」(構\成要件C),「前記第1の識別子に前記データフィールドの数,データフィールドの大きさ,又はデータフォーマットの少なくともいずれか1つに関する情報を含める工程」(構成要件D)を含むことが実質的に開示されているものと認められる。c 前記a及びbによれば,乙15記載の伝送方法は,構成要件AないしEの構\成をすべて備えているものということができるから,本件発明1と実質的に同一であるものと認められる。
・・・・
 以上を前提に検討するに,原告が原告第7準備書面をもって行った訴えの追加的変更は,本件各発明(請求項1及び11)に係る本件特許権の侵害の事実の主張に加えて,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実の主張を新たに請求原因に追加するものであり,請求原因を変更する訴えの変更(民事訴訟法143条1項本文)に当たるものといえるところ,本件の審理の経過によれば,上記訴えの追加的変更は,本件各発明に係る本件特許権の侵害論の審理が完了し,原告の本件各発明に係る請求について裁判をするのに熟した後にされたものであることは,明らかである。そして,請求項2及び12がそれぞれ請求項1及び11を引用する形式のものであること(前記第3の3 ア及びイ)からすれば,本件発明3及び4に係る本件特許権の侵害論の審理は,本件各発明に係る本件特許権の侵害論の審理と共通する部分があり,その主張立証を利用できる面があるとはいえるものの,一方で,請求項2及び12に特有の構成要件(構\成要件K,L,N,P)が存在することに照らすならば,原告が追加した本件発明3及び4に係る本件特許権の侵害の事実に関する請求原因の審理を行うとなれば,上記構成要件の充足の有無,本件発明3及び4に係る本件特許の無効事由の有無に関する新たな双方の主張立証や,再度の専門委員関与の下における技術説明会の実施の要否の検討などが必要となり,更に審理に相当の期間を要することになるものと認められる。加えて,原告においては,平成21年5月14日の第1回口頭弁論期日から平成22年6月14日の第6回弁論準備手続期日までの間に,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実の主張を請求原因に追加することについて特段の支障がなかったこと,その他本件の審理の経過に顕れた諸般の事情を考慮すると,上記訴えの追加的変更は,本件の訴訟手続を著しく遅滞させることになるものであり,不当であるといわざるを得ない。 以上によれば,本件発明3及び4(請求項2及び12)に係る本件特許権の侵害の事実を請求原因に追加した訴えの追加的変更は,本件の訴訟手続を著しく遅滞させることになるものであって,民事訴訟法143条1項ただし書の場合に当たる不適法なものであるから,これを却下することとする。

◆判決本文

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平成20(ワ)831 特許権侵害差止等請求事件 平成23年08月26日 東京地方裁判所

 計算鑑定人により102条2項による損害額が認定されました。また、寄与率については100%とされました。
 特許法102条2項所定の「その者がその侵害の行為により利益を受けているときは」にいう「利益」とは,侵害品の売上高から侵害品の製造又は販売と相当因果関係のある費用を控除した利益(限界利益)をいい,ここで控除の対象とすべき費用は,侵害品の製造又は販売に直接必要な変動費及び個別固定費をいうものと解するのが相当である。本件計算鑑定は,被告各製品の製造及び販売に直接必要な変動費及び個別固定費につき次のaないしeのとおり,変動費の減少項目につき次のfのとおりそれぞれ認定・判断した上で,平成19年9月1日から平成21年9月30日までの期間における被告各製品の売上高(前記ア(ア))から控除すべき費用の合計額を3億7470万6005円,限界利益の合計額を2869万7562円と算定した(本件計算鑑定書添付の別紙1参照)。上記aないしeの費用について,本件計算鑑定は,被告が製造及び販売する猫砂全製品において被告各製品の占める割合(aにつき販売リッター数に占める割合,bないしeにつき製造リッター数に占める割合)で按分して算出している(本件計算鑑定書の「VII対象品の計算根拠と変動費の範囲について」(8頁),本件計算鑑定書添付の別紙7及び8参照)。
・・・・
これに対し原告は,i)本件計算鑑定書添付の別紙9によれば,経費の内容には,変動費3億3364万2241円のみならず,個別固定費5457万8946円も含まれているが,本件計算鑑定は,被告の製造する猫砂は,パッケージが違ったとしても,すべて同じ構造の製品で「生産工程,機械,人員」もすべて同じであること,25期(平成21年5月〜平成21年9月)における被告の全製品に対する被告各製品の販売割合が15.5%(本件計算鑑定書添付の別紙8)であることを前提に鑑定をしていることからすれば,被告各製品のためだけに被告ないしその特定の工場の製造ラインが使用されているわけではないのであるから,個別固定費はそもそも控除されるべきではない,ii)個別固定費のうち減価償却費として控除されている2647万2548円(本件計算鑑定書添付の別紙9)は,四国工場の費用を「全額」費用計上したのであるとすれば,被告各製品の販売割合が15.5%(四国工場内でも16.9%)しかない以上,明確な誤りである,iii)本件計算鑑定では,売上げはバルクで計算するのに対し,包装機械は減価償却費,人件費は加工費として経費に含めているが,これも過剰な経費計上である旨主張する。しかしながら,原告の主張は,以下のとおり理由がない。・・・ ・・・被告各製品は,他の猫砂(甲8)と比較して,吸尿によって変色し,それによって使用部分と未使用部分を視覚的に容易に判別することができる構成となっている点を重要なセールスポイントとしていることが認められる。そして,そのようなセールスポイントは,本件発明の構\\成によるものであるから,被告各製品の商品としての主たる価値は,本件発明からもたらされるものと評価できる。これに対し被告は,被告各製品と同等の原告製品は,被告各製品の1.5倍程度の価格で販売されており,被告各製品の主たる販売要因は,その価格競争力にある旨主張するが,本件においては,被告各製品の仕入値が原告製品に比して低いことを裏付けるに足りる客観的な証拠は提出されていないのみならず,仮に被告各製品の価格が同等の原告製品より低かったとしても,そのような価格は本件特許を無許諾で実施した結果形成されたものというべきであるから,本件発明の寄与率に影響するものとは認められない。以上のとおり,乙35ないし乙39の各特許の請求項1に係る各発明は,いずれもその構成において,原材料である廃材粉や粉砕物の「粒度」を規定しているところ,本件においては,被告各製品の原材料の粒度を具体的に特定するに足りる証拠は提出されていないことからすると,被告各製品が上記各発明を実施しているかどうかは定かでないといわざるを得ない。また,仮にこれらの発明が被告各製品に実施されているとしても,そのことが被告各製品の重要なセールスポイントとなるなど,被告各製品の販売に具体的に寄与していることを認めるに足りる証拠はない。(ウ) 小括以上のとおり,被告各製品のセールスポイントは,本件発明の構成によるものであり,被告各製品の商品としての主たる価値は,本件発明からもたらされるものといえるから,本件発明の寄与率は,100%と認めるのが相当である。\n

◆判決本文

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 >> 技術的範囲
 >> 賠償額認定
 >> 102条2項
 >> 104条の3

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平成21(ワ)7821 特許権侵害行為差止等請求事件 平成23年06月23日 大阪地方裁判所

 ロボットの特許権侵害について、裁判所は、技術的範囲外および進歩性なしとして 権利行使不能と判断しました。\n

◆判決本文

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 >> 文言侵害
 >> 104条の3

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平成21(ワ)13089 特許権侵害行為差止等請求事件 平成23年03月29日 大阪地方裁判所

 102条2項の損害賠償額の推定について、寄与率が考慮されました。
 被告各製品の販売個数及び売上額については,被告が,平成21年4月9日から同年7月6日までの間,被告製品1を1186個,被告製品2を590個販売し,その売上額が合計で983万1644円であったとの限度で当事者間に争いがなく,これを超えた販売数量あるいは売上額を認めるに足りる証拠はない。また,被告が被告各製品の販売行為により受ける利益の率が20%であることは当事者間に争いがない。そうすると,被告が被告各製品の販売行為により受けた利益は,上記売上額983万1644円に利益率20%を乗じて得られる196万6328円(1円未満切捨て)ということになる。そして,表示領域を確保しながら操作性を向上させるという本件各特許発明の作用効果(本件明細書段落【0015】)は,被告各製品を購入する顧客が重視するものとは考えられるが,他方,被告各製品には,本件各特許発明に係る機能\だけでなく,走行距離,平均スピード,最速スピードなどを計測する機能やディスプレイのバックライト機能\なども備わっており(甲3),また,上記で認定したプラネットバイク社製品などの本件各特許発明の代替技術を用いた競合商品も存在するから,これら諸般の事情にかんがみれば,被告各製品の販売に本件各特許発明が寄与した割合は30%と認めるのが相当である。したがって,特許法102条2項本文により推定される原告の損害額は,被告が被告各製品の販売行為により受けた利益196万6328円に本件各特許発明の寄与度30%を乗じた額である58万9898円(1円未満切捨て)の限度で認定するのが相当である。

◆判決本文

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平成22(ワ)2544 実用新案権侵害差止等請求事件 実用新案権 民事訴訟 平成23年02月24日 大阪地方裁判所

 登録実用新案が公知技術から進歩性なしとして、差止請求棄却されました。
 本件考案と引用考案との一致点,相違点からすると,本件考案の特徴点は,「スペシャルセット」として出願前から公然実施されていた構成要件A,B,Cの構\成からなる製品の「袋状のカバー」の形状の改良にあり,その改良点は,袋状のカバーにおいて,前身ごろの下端部に「略逆三角形状」のフロントガード片を連続形成し(構成要件D),該前身ごろの身丈を,後身ごろの身丈よりも長くしている(構\成要件E)点にあるといえるが,上記のとおり,そのような改良は,妊婦用品として引用考案と技術分野を同じくする腹帯に関する考案において知られていたのであるから,引用考案の袋状のカバー(ベリーバンドゥ)を,より適切に妊婦の体型に対応させ,また拡開した前立て部を適切に覆い隠すことを目的として,妊婦用腹帯の形状として従来公知であった上記一連の考案の腹帯の形状を適用しようとすることは,当業者であればきわめて容易に想到することができたものということができる。また,その作用効果も,結局のところ,組み合わせにかかる部材が有するそれぞれの作用効果を発揮しているものにすぎないから,それは当業者が予期し得る範囲内の作用効果でしかないものといえる。したがって,本件考案は,本件実用新案登録出願前に販売されていたスペシャルセットを購入した妊婦が臨月近くに着用した際の「ベリーバンドゥ」の形状に合わせて,本件考案の「袋状のカバー」の形状を設定したものであり,当該形状自体も妊婦用腹帯として従来公知の形状(乙5考案,乙12考案,乙13考案,マタニティサッシュベルト)を適宜組み合わせたものに過ぎないということができるから,本件考案は,引用考案及び妊婦用腹帯に係る公知技術(乙5考案,乙12考案,乙13考案,マタニティサッシュベルト)に基づいて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるといえる。\n

◆判決本文

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平成21(ワ)18507 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成23年01月21日 東京地方裁判所

 特許権侵害認定されました。「載置」は特許用語なんですね。
 前記(ア)のとおり,本件発明の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明の「載置部」は,座面の周縁部を少しの高さだけ下方に湾曲させて周縁部に形成した部分であり,先端縁,両側縁部及び後縁部から構成されている。そして,i)「載置」とは,「物の上に他の物を置くこと」を意味すること(「特許技術用語集(第3版)」(日刊工業新聞社)67頁),ii)「幼児用補助便座」は,便器付属の便座に載置して使用する構成のものを指すこと(本件明細書の段落【0001】)からすれば,本件発明の「載置部」は,便器付属の便座の上に補助便座を置く部分をいい,換言すれば,補助便座において便器付属の便座の上面に接する部分を意味するものと解される。一方で,本件明細書の記載(前記(イ))によれば,本件発明は,従来の便座の構造は,座面全体を水平かつ平滑に形成し,排泄のための透孔部分のみを座面から透孔内周面に向かって円弧状に湾曲形成しただけのものであったが,近時の便座は,保温機能\や暖房機能を付加し,あるいは洗浄機能\付きのものは後方部分が上方に傾斜した形状となり,また,便座面の湾曲形状が前面位置と,後面位置では湾曲の態様を別異に形成したり,あるいは座面の外側位置から内周位置に向かって徐々に傾斜させるなど複雑な座面形状を採用したものがあり,これらの近時の便座の構造に対応するものであることに照らすと,本件発明は,座面全体を水平かつ平滑に形成した従来構\造の便座だけではなく,様々な座面の形状を有する近時の便座に対応することを前提とするものといえるから,本件発明の「載置部」は,その構成部分(先端縁,両側縁部及び後縁部)の全体が便器付属の便座の上面に接することまで想定したものではなく,少なくともその構\成部分の一部が便座の上面に接する部分として規定されているものと解するのが相当である。

◆判決本文

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平成21(ワ)3409 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年12月16日 東京地方裁判所

 侵害訴訟にて未確定の訂正クレームに基づき、104条の3にて権利行使不能と判断されました。経緯としては、以下です。この侵害訴訟と並列して無効審判が継続しており、この無効審判中にて訂正手続きをし、訂正は認める、特許は無効とするとの審決がなされました。これに対して審決取消訴訟提起されています。
 本件特許については,その無効審判事件(無効2009−800082号)において,本件訂正の請求がされており,同訂正はいまだ確定していない状況にある。このような場合において,特許法104条の3第1項所定の「当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるとき」とは,当該特許についての訂正審判請求又は訂正請求に係る訂正が将来認められ,訂正の効力が確定したときにおいても,当該特許が無効審判により無効とされるべきものと認められるか否かによって判断すべきものと解するのが相当である。したがって,原告は,被告が,訂正前の特許請求の範囲の請求項について無効理由があると主張するのに対し,i)当該請求項について訂正審判請求又は訂正請求をしたこと,ii)当該訂正が特許法126条又は134条の2所定の訂正要件を充たすこと,iii)当該訂正により,当該請求項について無効の抗弁で主張された無効理由が解消すること,iv)被告製品が訂正後の請求項の技術的範囲に属すること,を主張立証することができ,被告は,これに対し,訂正後の請求項に係る特許につき無効事由があることを主張立証することができるというべきである。

◆判決本文

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