2022.06. 8
控訴審(大阪高裁)も、1審と同じく非類似と判断しました。なお、不競法については、特別顕著な形態ではないと判断しました。
ア 具体的構成態様D/dにおける差異点について\n
1審原告は、原審が、円筒状中空本体の形状に関する差異点2)の与える印
象について、差異点3)と逆の認定をしたことについて、主観的な印象であり、
その理由が不明であると主張する。しかし、原告意匠の要部である具体的構\n成態様D3、被告意匠の具体的構成態様d3を対比した結果である差異点2)
についてみると、前者は、円筒状中空本体が円周部(周辺部)まで厚みがあ
ることから(十分な体積を感じることができる。)、存在感を感じさせると認\n定することに合理性があり、一方、後者の側面の厚みは、円周部(周辺部)
に行くに従い、薄くなっていることから、すっきりとした印象を与えるとい
える。上記と同様に原審が認定した差異点3)は、円筒状中空本体の中空部の
直径と本体の直径との違いであって、差異点2)とは異なる差異点であるから、
「すっきりした印象」が逆に認定されたからといって不合理ということはで
きない。
また、1審原告は、差異点2)、3)が微差であると主張するが、差異点2)に
つき、原告意匠では円筒状であるのに対し、被告意匠では、上半分が略梯形
状で、その形状の違いは大きく、微差ということはできない。また、差異点
3)についても、需要者の注意を最も引く部分である円筒状中空本体の下面部
に占める、中空部(ファンガード部分に相当する。)と透光部の割合の大小が
相当に異なることになるから、微差ということはできない。
なお、点灯した場合、差異点が明確でなくなることがあったとしても、需
要者は、常に点灯した状態で看取するわけではなく、上述した点が左右され
ることはない。1審原告の主張は採用することができない。
イ 具体的構成態様E/eについて\n
1審原告は、原審が、原告意匠の要部である具体的構成態様E3、被告意\n匠の具体的構成態様e3を認定した上で指摘する差異点Aが微差であり、む\nしろ、円形板から放射状に多数のファンガードが面一に形成されているとい
う全体的な印象の方が強いという。確かに、原審の認定した上記具体的構成\n態様(E3/e3)によると、1審原告が主張するとおり、いずれの意匠も、
多数のファンガードが円筒状中空部下面とほぼ面一に形成されているという
印象は受けるものの、このような形態を備えた先行意匠が存在することが認
められ(乙14〜16、乙17の1・2)、多数のファンガードが存在するこ
とや、略面一であることもって特徴的ということはできない。むしろ、ファ
ンガードの形状が直線的であるか、曲線的(渦巻き状)であるかについての
差異点は、より強い印象を与えるというべきであり、上記差異点を微差とい
うことはできない。
なお、1審原告は、点灯した状態では、上記の差異点について、認識され
なくなると主張するが、前記アのとおり、常に点灯した状態で看取されるわ
けではない。1審原告の主張は採用することができない。
ウ 具体的構成態様H/hについて\n
1審原告は、原審が、原告意匠の要部である具体的構成態様H3、被告意\n匠の具体的構成態様h3を認定した上で指摘する差異点6)が微差という。
しかし、原審の認定した上記具体的構成態様(H3/h3)によると、側\n面視の本体に対して透光部の占める割合は、原告意匠(約3分の1)と被告
意匠(約4分の3)とで相当に異なっており、この違いは異なる印象を与え
るということができ、微差ということはできない。また、前記アのとおり、
被告意匠では円筒状中空本体側面の上半分が略梯形状であって、その部分の
与える印象が異なるため、原告意匠と被告意匠の側面における透光部の占め
る割合(高さ)を、上記略梯形状を含めた円筒状中空本体側面に対する下面
からの高さとして、単純に比較することもできない。
なお、1審原告は、点灯した状態では、上記の差異点について、認識され
なくなると主張するが、前記アのとおり、常に点灯した状態で看取されるわ
けではなく、1審原告の主張を採用することはできない。
エ 具体的構成態様I/iについて\n
1審原告は、原審が、原告意匠の要部である具体的構成態様I3(ただし、\n口金部を除く。)、被告意匠の具体的構成態様i3(ただし、シーリングプラ\nグを除く。)を認定した上で、その差異点8)、9)から受けるとした印象につい
て、支柱体は天井から吊り下げられる部位に関するものであり、しかも、支
柱体の下部には円筒状中空本体が存在するのであるから、支柱体が独立して、
原審が認定した印象を与えることはない旨主張する。しかし、円筒状中空本
体を天井から吊り下げる部位である支柱体は、同中空本体直径の約5分の1
(原告意匠)ないし約3分の1(被告意匠)という相当の存在感を示すもの
であり、円筒状中空本体が上方突出体をもって角度調整可能であって下方の\nみを向いているものでもないことをも考えると、支柱体が天井と円筒状中空
本体に挟まれたものであったとしても、その支柱体から受ける印象は、原審
が認定するとおりであるというべきであって、1審原告の主張は採用するこ
とができない。
オ まとめ
以上によると、1審原告が当審において主張する差異点は微差ということ
はできない。そして、前記(1)で補正した上で原判決を引用して説示したとお
り、要部を踏まえた原告意匠と被告意匠の共通点及び差異点を総合的に考慮
すると、原告意匠の構成は、平面視(底面視)が円形である点を除き、全体\n的に直線的で、すっきりとして洗練された印象を与えるのに対し、被告意匠
の構成は、全体的に存在感を示しつつも、柔らかく安定感のある印象を与え\nるものであって、これらの印象がそれぞれの意匠全体に与える影響は強く、
原告意匠と被告意匠に接した需要者は、両意匠から異なる印象を強く感じる
ものとみられる。
したがって、原告意匠と被告意匠とは、基本的構成態様においておおむね\n共通するものの、具体的構成態様における差異点がその共通点により生ずる\n美感を凌駕し、全体として需要者の視覚を通じて起こさせる美感を異にする
というべきであって、被告意匠は、原告意匠と類似するとはいえない。
このことは、原告意匠と被告意匠とで意匠の要部としての基本的構成態様\n(2か所)が全て共通していることを十分に参酌しても、判断が左右される\nものではなく、1 審原告の主張を採用することはできない。
◆判決本文
1審はこちら。
◆令和2(ワ)10386
2022.01. 5
意匠権侵害、不競法2条1項3号の商品形態模倣が争点です。大阪地裁は意匠は類似していない・模倣でもないと判断しました。
ウ 原告商品1−1と被告商品との共通点及び差異点
原告商品1−1と被告商品の各形態を対比すると,原告商品1−1の基本的形態
の全て及び具体的形態 T1-1-3 と,被告意匠の基本的形態の全て及び具体的形態 t3 が
共通点であり,それ以外の形態が差異点であると認められる。
すなわち,原告商品1−1と被告商品の各形態とは,差異点2)’,3)’,5)’〜12)’の
ほか,具体的形態 S1-1-3 と s3 につき,原告商品1−1では,中空部中央に位置する
円形板から細い48本の直線状のファンガードが放射状に円筒状中空部下面とほぼ
面一に形成されている(S1-1-3)のに対し,被告商品では,中空部中央に位置する円
形板から細い36本の湾曲線状のファンガードが放射状に円筒状中空部下面とほぼ
面一に形成されている(s3)点で相違する(差異点 C)。
エ 検討
原告商品1−1と被告商品の各形態の差異点のうち,差異点2)’,3)’,6)’〜10)'及
び C は,原告意匠と被告意匠の差異点2),3),6)〜10)及び A と同じである。そうで
ある以上,少なくとも差異点3)’,6)’,8)’,9)’及び C については,原告意匠と被告意匠とが差異点3),6),8),9)及び A により異なる美感を生じるのと同様に,原告
商品1−1と被告商品の各形態につき,需要者に異なる美感を生じさせるものとい
える。また,これらの差異点の存在にもかかわらずなお両商品の形態が酷似し,実
質的に同一というべき事情は見当たらない。
したがって,原告商品1−1と被告商品の各形態は実質的に同一であるとは認められないから,被告商品は,原告商品1−1の形態を模倣したものということはできない。これに反する原告の主張は採用できない。
◆判決本文