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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

意匠認定

平成24(行ケ)10105等 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成24年11月26日 知的財産高等裁判所

 類似するとした審決が取り消されました。
(1) 本願意匠Aの願書に添付した写真(甲A12,甲A1は番号を付したもの)及び引用意匠Aの公報中の写真(甲A18,甲A2は番号を付したもの)のうち各左右側面図により両意匠を対比すれば,本願意匠Aの唇側面は,側面視で,正面側に最も張り出した部分から下方の切縁部付近までにかけての部分に相当の長さの直線状の部分がある一方,引用意匠Aの唇側面は,側面視で,正面側に最も張り出した部分から下方の切縁部付近までにかけての部分が緩やかな円弧状を成している点で異なることが認められる。この形状の相違の結果,唇側面の側面視の形状は,引用意匠Aでは歯冠部と歯頸部の境界から切縁部までの全体が略円弧状を成している一方,本願意匠Aでは歯冠部と歯頸部の境界から正面側に最も張り出した部分までが略円弧状を成すが,正面側に最も張り出した部分から下方の切縁部付近までの部分に相当の長さの直線状の部分がある点で異なっている(原告主張の相違点(1カ))。したがって,上記相違点を看過した審決Aの認定には誤りがある。
(2) 本願意匠Aの願書に添付した写真及び引用意匠Aの公報中の写真のうち各背面図,平面図により両意匠を対比すれば,基底面の輪郭に当たる部分及び基底面中央の凹陥部の輪郭に当たる部分のうち各背面側(舌側面側)に,本願意匠Aでは相当な長さの直線状部分があるが,引用意匠Aではかかる直線状部分がない点で異なることが認められる。この形状の相違の結果,本願意匠Aの基底面は,輪郭の一部が直線状でその余が円弧状の略かまぼこ形状を成すが,引用意匠Aの基底面は,基底面と鉛直の方向から見たときに略円状(上方から見下ろしたときは略楕円状)を成すことになって,両意匠はこの点で異なる(原告主張の相違点(1ク))。したがって,上記相違点を看過した審決Aの認定には誤りがある。この点,被告は,本願意匠Aの基底面輪郭の直線状部分は特定の方向から見たときに現れるものにすぎないとか,引用意匠Aの基底面の輪郭に直線状部分が全くないわけではないなどと主張するが,本願意匠Aの基底面輪郭及び中央凹陥部輪郭の直線状部分は通常の観察において認識できる程度にまで及んでいるのであって,被告の上記主張を採用することはできない。
(3) 本願意匠Aの願書に添付した写真のうち左右の側面図及び端面図によれば,本願意匠Aの切縁部近傍の舌側面の一部には側面視で直線状の部分(背面視で平面状の部分)があることが認められ,したがって舌側面の下端付近に小さな噛み合せ平面であるファセット面が設けられていることが認められる。他方,引用意匠Aの公報中の写真のうち左右の側面図及び断面図をみても,舌側面の切縁部近傍には側面視で直線状の部分がないから,上記ファセット面の有無は本願意匠Aと引用意匠Aの相違点であると認められ,したがって,かかる相違点を看過した審決Aの認定には誤りがある。この点,被告は,舌側面の切縁部近傍の側面視直線状部分は特定の方向から見たときに現れるごく一部分にすぎず,人工歯の実際の大きさに即して観察した場合にはこれを認定する必要がないなどと主張する。確かに,上記ファセット面は人工歯の舌側面全体の表面積に占める割合は必ずしも大きくないが,歯科医等の需要者が人工歯を装着する場合には,切縁部近傍を削ってファセット面を設けるなどして必ず咬合調整を行うものであることからすると(弁論の全趣旨),切縁部近傍の形状の相違は需要者が注目するポイントの1つであって,ファセット面の有無を認定する必要がないとはいえない。また,本願意匠Aの左右の側面図や端面図を見れば,上記ファセット面があることを明確に認識でき,対比の上ではその存在を無視できる微細な立体形状に止まらない特徴を成しているものということができるから,特定の方向から見たときにのみ現れる微細な立体形状であるということはできない。なお,出願された意匠と先行意匠を対比する際に,出願人が提出した特徴記載書の説明を参考にすることはあり得るし,本願意匠Aの特徴記載書(甲A13)の説明図やファセット面を着色した図(甲A19)がなくても,上記ファセット面の存在を認定することができる。\n
(4) 以上のとおり,審決Aは少なくとも前記(1)ないし(3)の各相違点を看過して 本願意匠Aと引用意匠Aの共通点・相違点を認定しており,この点に認定の誤りが あるというべきである。

◆判決本文

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平成24(行ケ)10042 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成24年07月18日 知的財産高等裁判所

 二輪車のタイヤの意匠について、類似するとした審決が取り消されました。
 被告は,いずれも略同方向に傾斜した長,中,短の三つの溝を1単位とし,これを,赤道を中心として,左右の斜めに向けて,千鳥配置状に配設した点に加え,各溝が並ぶ順番,長中二つの傾斜溝の形状と屈曲の方向,中傾斜溝の長さと位置を一体の共通点Aとして捉え,これらのすべてを満たす公知意匠が存在しないことから,それらを一体として審決が認定した共通点Aは,引用意匠との対比において類否判断に支配的な影響を及ぼすと主張する。しかしながら,「いずれも略同方向に傾斜した長,中,短の三つの溝を1単位とし,これを,赤道を中心として,左右の斜めに向けて,千鳥配置状に配設した点」は,特定の単位の繰返しという意匠全体の構成に関する基本的な態様であるということができるものの,上記のとおり,それだけでは取引者・需要者の注意を引きやすい特徴的な形態であるとはいえず,各溝の並ぶ順番(溝の長さは相対的な評価なので,溝の長さが変化すると,溝の並ぶ順番も変化し得る関係にある。)や,長傾斜溝,中傾斜溝の形状等については,繰返しの単位内における個別的な形状に関するものとして,取引者・需要者の注意を引く特徴的な形態となり得るものである。
(2) 両意匠の類否判断
 上記観点から両意匠を対比するに,本願意匠は,全体として,三つの溝が略等距離を保ち,整然と配置されている印象を与える点に特徴がある。個別的には,長傾斜溝と中傾斜溝につき,溝間の距離に大きな変化はなく,また,いずれも端部と折曲部との間の長い辺部分が略直線状で,サイドウォール寄り端部も斜辺状,すなわち直線状であって,赤道寄り端部は小半円弧状であるものの,端部に向けて溝幅が狭くなることから鋭角的な印象を与え,折曲部の角部も明確であり,短溝についても,長さが短いため,中傾斜溝との溝間の距離の変化を感じさせず,また,端部及び端部を結ぶ辺部分がいずれも略直線状である点に特徴がある。これに対し,引用意匠は,本願意匠と対比してみるときには三つの溝が1単位となっているように観察されるものの,引用意匠それ自体を観察する限りにおいては,全体として,三つの溝がまとまりなく,雑然と配置されている印象を与える点に特徴がある。個別的には,長傾斜溝と中傾斜溝との溝間の距離の変化が大きく,また,三つの溝につき,いずれも一方の端部が毛筆書体における横棒の入り様とした形態であって,足のかかと様に出っ張った部分があり,かつ,この部分の溝幅が広がっていることなどから,当該端部がねじれている印象を与え,さらに,長傾斜溝は他方の端部も丸みを帯びた斜辺の突端をわずかに屈曲させた形状であり,中傾斜溝は溝全体が緩やかに湾曲した形状であり,短溝は毛筆書体における横棒の入り様とした形態が溝全体の約3分の1を占め,他方の端部もわずかに丸みを帯びた斜辺状であって,統一感なくねじれた印象を与える点に特徴がある。上記のとおり,本願意匠の三つの溝は,溝縁が直線であり,端部に向けて溝幅が細くなることから,看者に対し,一方の先端がとがった細い直線により構成され,無機的であり,かつ,非常にすっきりとして,サイドウォールから赤道に向けて流れる印象を与えるような美感を生じさせるものといえる。これに対し,引用意匠の三つの溝は,全体として,基本的に溝幅に変化がないことも相まって,看者に対し,同じ幅の溝が曲線的にねじ曲がった印象,例えていえば,先端の丸まった筒状の細菌あるいは細胞をまとまりなく配した印象を与えるような美感を生じさせるものといえる。\n

◆判決本文

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