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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

創作容易性

平成26(行ケ)10078 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年9月11日  知的財産高等裁判所

 創作容易であるので登録できないとした審決が維持されました。「複数表示された静止画や動画等の選択表\示枠をクリックすることにより当該画像等を拡大表示したり,静止画や動画等の選択表\示枠を左右又は上下の移動操作に合わせて移動させることは,携帯情報端末の当業者にとって本願の出願前に極めて広く知られた手法であるから,審決がこれを顕著な事実と認め,その手法を理由中に提示しなかった点に,拒絶理由を通知しなかった違法や判断遺脱の違法はない」との被告の主張が認められました。
 原告は,審決が,態様(D)及び(E)について何らの証拠を示すことなく,この種物品分野において広く知られた手法であるとして創作非容易性を否定した点で,拒絶理由を通知することなく審決をした違法及び判断遺脱の違法があると主張する(前記第3の3)。しかるに,当該物品分野において広く知られた手法については,発明の属する技術の分野における周知技術と同様,当業者が熟知している事項であるため,本来,審決においてその認定根拠を示すまでもないのであり,このような認定根拠となる文献を示さなかったとしても,意匠法50条3項の準用する特許法50条に違反するということはできない。 そして,態様(D)及び(E)に係る手法が携帯情報端末の当業者にとって広く知られた手法であると認められることは,前記3のとおりであるから,審決において,特段の証拠を示すことなく同旨の判断を示したことは,意匠法50条3項の準用する特許法50条に違反するものではない。また,この点に関して判断の遺脱があったということもできないから,意匠法52条の準用する特許法157条に違反するということもできない。 よって,原告の上記主張は採用することができない。

◆判決本文

◆関連事件はこちらです。平成26(行ケ)10077

◆平成26(行ケ)10076

◆平成26(行ケ)10075

◆平成26(行ケ)10074

◆平成26(行ケ)10073

◆平成26(行ケ)10072

関連カテゴリー
 >> 創作容易性
 >> 審判手続

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平成25(行ケ)10287 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年03月27日 知的財産高等裁判所

 意匠法3条1項3号に該当するとした審決が取り消されました。最後に3条2項の適用について付言されています。
 被告は,タッチパネルを湾曲させたスマートフォンは本願出願前より既に公知となっており,本願意匠のみの新規な特徴とはいえないし,スマートフォンは使用時に片手に持ったり,画面を指で操作する関係から,筐体全体の形態はもとより,機能キーの形状や配置,カメラレンズの配置等,詳細に確認されるものであって,それら全てが,意匠の特徴部分となり得るのであり,タッチパネルを湾曲させたことのみを過大評価することはできないし,そもそも本願意匠の湾曲の程度はごく僅かなものでしかないので,両意匠の筐体の形態における相違点が類否判断に及ぼす影響は微弱なものにとどまる旨主張する。そして,前記1(3)認定のとおり,携帯電話の意匠において,筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態,及び,正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態は,それぞれ優先日前に公知である。しかし,乙第1号証によれば,携帯電話の意匠においては,本願意匠のような筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態ではなく,むしろ,正面及び背面の大部分が平坦面でかつそれぞれが平行な平坦面をなす平板形状の筐体の形態も多数見受けられることが認められる。そうすると,本願意匠の上記形態は,スマートフォンの形態としてありふれたものであるとまでいうことはできない。しかも,上記認定のとおり,上記の形態は,本願意匠の全体の形状という最も需要者の注意を惹きやすい部分の一つを構成する形態であることも併せ考えると,上記認定のとおり,筐体の正面が凹面,背面が凸面の側面視がごく緩やかな円弧状をなす湾曲板形状を呈する筐体の形態が公知のものであるとしても,直ちに本願意匠の上記形態が,共通点(A)の形態に埋没してしまい,需要者の注意を惹くものでないということはできない。また,上記の点に照らすと,タッチパネルが湾曲した形態を有すること自体が全体の形状の美観に与える影響が大きいものであるというべきであり,その程度が僅かであるとしても,やはり,需要者の注意を惹くものでないということはできない。なお,被告は,画像を表示するための画面を凹面として湾曲させることは,スマートフォンを含む画面(液晶画面等)を使用する物品においては,本願出願前よりごく普通に見受けられるものであった(乙2ないし6)とか,スマートフォンにおいて,画面を湾曲させたものも本願出願前に既に公知となっているものが見受けられる(乙7ないし11)とも主張する。しかし,スマートフォン以外の物品において画像を表\示するための画面を凹面として湾曲させる形態が公知であったとしても,用途や使用方法が大きく異なる以上,そのことをもって直ちにスマートフォンにおいて画像を表示するための画面を凹面として湾曲させる形態が需要者の注意を惹くものでないことの根拠とすることはできない。また,スマートフォンにおけるものについても,本願意匠とはその形態が大きく異なるもの(乙10,11)も存在する以上,上記乙号各証に示されたスマートフォンないしはその意匠に画面を湾曲させた形態のものが存在するからといって,直ちに上記認定が左右されるものとはいえない。また,乙第1号証によれば,正面視における上下辺の形態や,正面周囲枠の形態についても種々のものが見られることが認められる。そうすると,本願意匠の筐体正面の四隅を曲率半径のやや大きな隅丸とし,上下辺はともにごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線であり,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まっている形態がありふれたものであるとまでいうことはできない。その上,上記形態は,本願意匠の最も需要者の注意を惹きやすい部分の一つを構\成するものであることも併せ考えると,正面視すると,上下辺はごく緩やかに円弧状に膨らむ曲線で,正面周囲枠は,平底面視及び左右側面視すると,正面側にごく僅かに窄まる形態が本願出願前に公知であるとしても,本願意匠の上記形態が共通点(A)の形態に埋没してしまい,需要者の注意を惹くものではないということはできない。
・・・・
以上によれば,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえず,意匠法3条1項3号に該当しないから,審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由は理由がある(なお,当裁判所の前記判断は,本願意匠の意匠法3条1項3号該当性についての審決の判断に対するものであり,当然ながら,本願意匠の同法3条2項について何ら判断するものではない。)。

◆判決本文

関連カテゴリー
 >> 意匠認定
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 >> 創作容易性

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平成25(行ケ)10315 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成26年03月27日 知的財産高等裁判所

 意匠法において、インターネット上で公開された公報について、現実に合計41回ダウンロードされていることから、「公然知られた」に該当するとして、審決が維持されました。意匠法は、特許法と異なり、創作非容易性については、「公然知られた」を要件とするので、このような問題が生じます。
 意匠法3条2項所定の「公然知られた」とは,一般第三者たる不特定人又は多数者に,単に知り得る状態になったことでは足りず,現実に知られている状態になったことを要すると解するのが相当である。すなわち,意匠法3条1項は,意匠登録を受けることができない意匠として,1)出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠(同項1号),2)出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された意匠,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(同項2号)等を別個に列挙している。また,同条2項は,出願前に当業者が日本国内又は外国において「公然知られた」模様等に基づいて容易に創作することができた意匠は,同条1項の規定にかかわらず,意匠登録を受けることができない旨定める。仮に同条1項1号の「公然知られた」意匠の意義を,不特定人又は多数の者が知り得る状態になったことで足りると解した場合には,同項1号を2号と別個に規定した意味が失われてしまうから,同項1号の「公然知られた」意匠とは,不特定人又は多数の者が知り得る状態になったことでは足りず,現実に知られている状態に至ったことを要すると解するのが相当である。そうだとすると,同条2項の「公然知られた」模様等についても,同様に,不特定人又は多数の者が知り得る状態になったことでは足りず,現実に知られている状態に至ったことを要すると解するのが相当である。
・・・・・
イ 判断
引用文献に記載された引用商標からなる模様が本願前に「公然知られた」模様に該当するかにつき検討するに,引用文献は,平成23年4月21日,インターネット公報としてインターネット上で発行されたことにより,一般第三者である不特定人又は多数の者が知り得る状態となったと認められる。のみならず,引用文献は,同月21日から同月末日までの間に,現実に合計41回ダウンロードされており,本願がなされた同年5月16日までにはダウンロードされた回数はさらに増えていたと推測されること,インターネット公報は第三者が自由に閲覧することができるためのものであり,本願は引用文献がインターネット公報として発行された日の25日後になされたものであることに照らすならば,引用文献は,本願時までに,不特定人又は多数の者に現実に知られている状態にあったことに疑いの余地はない。したがって,引用文献に記載された引用商標からなる模様は,「公然知られた」模様に該当し,この点において審決の判断に誤りはない。
(3) 原告の主張に対して
原告は,本願時,インターネット公報の情報を知ることができたのは,前記OSを搭載した高性能,大容量のPC機器を入手し得るか,又は,市販PC機器にウィルス防御ソ\フトを搭載せずにインターネット通信を行う,特定の者に限られ,不特定の者はその情報を知ることはできなかったと主張する。しかし,以下のとおり,原告の主張は失当である。本願時には,上記OSよりも新機種のOSが搭載されたPC機器が既に発売されていたとしても,日本国内において,上記OSが搭載されたPC機器が多数使用されていたと推認される。また,上記OSが搭載された市販PC機器にウィルス防御ソフトを搭載すると,通信が実質的に不可能\であったと認めるに足りる証拠はない。現実に,平成23年4月1日から同月末日までの間に,引用文献は合計41回ダウンロードされており,これらの利用者は,上記OS及びウィルス防御ソフトを搭載した通常の市販PC機器を利用した者であると推認され,一般第三者である不特定人又は多数の者はインターネット公報の情報を入手可能\な状態であったと認められる。
(4) 小括
以上のとおりであるから,引用文献に記載された引用商標からなる模様は,「公然知られた」模様に該当し,原告主張の取消事由1ないし7はいずれも理由がない。2 本願意匠の創作容易性の認定の誤り(取消事由8)について本願意匠は,略横長長方形のシールの正面左側の略正方形の枠の中に,上下を反対にした数字の「7」を2つ,欧文字の「Z」と見えるように並べ,そのほぼ真ん中に「∞」の記号を配置した模様からなる部分意匠である。本願意匠の略正方形の枠の中の模様は,引用商標からなる模様と実質的に同一であり,当業者が引用商標からなる模様に基づいて本願意匠を創作することは容易であると認められる。

◆判決本文

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