パチンコ、スロットマシンなど画面の意匠(部分意匠)について、創作容易でないとした審決が維持されました。
上記のとおり,差異点(エ)とは,大型数字表示部の下側から右側にかけて倒L\n字状に設けられた2〜3桁の小型数字表示部の配列の差異をいうところ,この小型\n数字表示部は,表\示画面中央上辺寄りに設けられた3桁の大型数字表示部(差異点\n(イ)),表示画面左側上辺寄りに設けられた4桁の中型数字表\示部(差異点(ウ)),
表示画面左側下辺寄りに設けられたドット表\示部と共に,本件部分意匠の美感上の
特徴の一部,すなわち,極めて目立つ大型数字表示部を上辺の中心に置き,その周\n囲に比較的小さな各種データ表示部を配置するという特徴を構\成している要素であ
る。
ところが,この差異点(エ)に係る倒L字状の数字表示部群,すなわち,小型数\n字表示部の形態は,引用部分意匠2〜5のいずれにも見られないものであり,また,\n通常の需要者の視覚を通じて生じる美感を基準とする限り,引用部分意匠1の区域
4)〜8)を倒L字状の数字表示部群ととらえることもできない。そして,この倒L字\n状の形態が,ありふれた手法に基づくものであるとか,又は特段の創意を要さない
で創作できるとは認め難い(シンプルであるからといって,直ちに,創作が容易で
あるとか,美感への影響が微弱であるとはいえない。)。
原告の主張するように,数字表示部の桁数,数字表\示部の大きさ,又は数字表示\n部の配置を多少変更させることは,個別に分断して検討すれば,それほどの創意工
夫とはいえないであろうが,これらを全体的に観察すると,大型数字表示部に隣接\nして配置された多数の数字よりなる小型数字表示部が,倒L字状のものとして,一\n体の美感を形成しているのである。
(2) 差異点(イ)について
前記のとおり,差異点(イ)とは,表示画面中央上辺寄りに設けられた3桁の大\n型数字表示部の有無をいうところ,この形態は,引用部分意匠2〜5のいずれにも\n見られない。また,この形態が,ありふれた手法に基づくものであるとか,又は特
段の創意を要さないで創作できるとは認め難い。
原告は,引用部分意匠2に差異点(イ)に係る構成が顕れている旨を主張する。\nしかしながら,本件部分意匠の大型数字表示部は,表\示画面の最上段に配置され
ているところ,引用部分意匠の3桁の大型数字表示部は,表\示画面上方寄りには配
置されているものの,最上段のドット表示部よりは下に配置されているのであり,\n大型数字表示部の配置された位置は,両者で異なるものである(このような数字表\
示部の配置の入替え〔左右上下前後反転のようなものは含まない。〕と,上記(1)に
説示した数字表示部の単なる配置の変更とは区別されなければならない。)。しかも,\n本件部分意匠では,小型数字表示部及び中型数字表\示部という二段階の対象数字表\n示部との比較において,大型数字表示部の大きさがより強調されているものである。\n数字を大きくすること自体がありふれた手法であるとしても,ありふれた手法に
基づく複数の構成要素を組み合わせることによっても新たな美感は生じ得るのであ\nり,そして,その組合せにこそ創意が発揮されるのである。したがって,意匠の構\n成要素の位置を異にする意匠から,その位置を捨象した構成要素のみを取り出して\nその創意を論じることは,相当ではない。
◆判決本文
部分意匠について類似しないとの判断がなされました。
また,本件意匠に係る物品である包装用箱は,何らかの品物を箱の中に収納することにより,当該品物を持ち運ぶ際に品物の形状を損なうことなどを防いだり,複数の品物をまとめたり,品物を贈答する際の外観上の装飾等の使途及び機能を有するものと解されるところ,本件意匠に相当する部分には,略三角錐形状の単一な印象から動的な美観を生じさせる多面体としての外観上の装飾(アクセント)としての機能\を有するものと認められ,ほかに特別な使途及び機能を有するものではないものと認められる。\nそして,三角形4面で形成される略三角錐形状をした包装用箱の意匠そ
れ自体は,少なくとも本件意匠登録の出願前に日本国内において公然知られたものであること(乙1,弁論の全趣旨)に照らすと,本件意匠の要部は,組立時において天頂に位置する頂点から底面を形成する点に至る3本の稜線のうち1本の稜線に(構成態様B),当該稜線の縦方向中央を垂直に横切る谷折り線を底辺とし,天頂に位置する点を頂点とする二等辺三角形と,上記谷折り線を底辺とし,底面を形成する点を頂点とする二等辺三角形の二つの二等辺三角形を,底辺部分で上下に接続させて略菱形状の面(アクセントパネル)を形成したこと(構\成態様C),アクセントパネルの中央部分は,三角錐形状の面よりも凹状にへこませて形成されていること(構成態様D),アクセントパネルの縦の長さと中央部分(上記Cの二つの二等辺三角形の底辺に当たる部分)の幅の比は,約8対1であること(構\成態様E)であると認めるのが相当である。
・・・
以上の点に関し,原告は,意匠登録第1193959号(甲8)の意匠(以下「甲8意匠」という。)を本意匠とし,意匠登録第1194201号(甲9)の意匠(以下「甲9意匠」という。)及び意匠登録第1194202号(甲10)の意匠(以下「甲10意匠」という。)を関連意匠とする意匠登録がされていること(すなわち,特許庁によって,甲8意匠と,甲9意匠及び甲10意匠とが類似する旨判断されたこと)などの事情に照らし,本件意匠と被告意匠のアクセントパネルの具体的形状の差異は意匠全体の類否判断に影響しない旨主張する。
しかし,甲8意匠及び甲10意匠において,直方体状の包装用容器の長辺のうちの1本の両端を除く部分に形成されている二つの略菱形状の凸状の面(甲8意匠では,二つの略菱形状の間が空いているが,甲10意匠では,二つの略菱形状が接している。)や,甲9意匠において,直方体状の包装用容器の長辺のうちの1本の両端を除く部分に形成されている二つの略紡錘状の凸状の面(二つの略菱形状の間が空いている。)は,本件意匠におけるアクセントパネルのように,三角錐形状の稜線に沿って設けられた凹状の面ではなく,また,当該三角錐の天頂に位置する頂点から底面を形成する点に至る3本の稜線のうちの1本に,その天頂に位置する点から底面を形成する点に至るまでの全体にわたって,形成されているものでもない。本件意匠と被告意匠との差異点が看者に与える美観の差異の程度は,甲8意匠ないし甲10意匠における上記凸状の面の差異点が看者に与える美観の差異の程度とは,量的にも,質的にも異なるものというべきであって,原告の上記主張は,採用することができない。
◆判決本文