2017.07. 6
平成14年(ワ)8765号 意匠権 民事訴訟 平成16年3月22日 東京地方裁判所
古い事件ですが、研修で取り上げられていたのでアップします。東京地裁は、類似と判断しました。なお、高裁では先使用権が認められて非侵害となりました。
(1)ア(ア)本件登録意匠の意匠に係る物品は輸液バッグであり、側面視にお
いて、全体が薄型の形状をしているから、通常、看者の目に多く触れるのは、正面
及び背面であると認められる。そして、製剤収納側の袋体と溶解液収納側の袋体の
境界部は、正面及び背面のほぼ中央にあり、また、輸液バッグの使用時には、同境
界部の弱シール部を連通させて使用することから、同境界部付近は、看者の注意を
引く位置にあるものと認められる。
(イ)同境界部付近の構成をみると、その基本的構\成は、同境界部の中
央に帯状の弱シール部が形成されており、その弱シール部の両側に、弱シール部よ
り幅の広い強シール部が形成されている(基本的構成態様(5))というものである。
そして、その具体的構成は、製剤収納部の下端左右コーナー部の外側のシール部\nは、弱シール部より幅が広く、弱シール部の左右両側の強シール部の上半分を形成
しており(具体的構成態様(11))、溶解液収納側の袋体の上端左右コーナー部のシー
ル部は、弱シール部より幅が広く、弱シール部の左右両側の強シール部の下半分を
形成している(具体的構成態様(18))というものである。
このような同境界部付近の構成において、同境界部の中央に帯状の弱\nシール部が形成されており、その弱シール部の両側に、弱シール部より幅の広い強
シール部が形成されているという基本的構成態様(5)は、同境界部付近の構成の骨格\nを特徴づけており、看者の注意を引くものと認められる。
(ウ)基本的構成態様(5)は、その全体の構成が、本件登録意匠の意匠公\n報の必要図中、背面図にのみ表れている。しかし、本件登録意匠に係る輸液バッグ\nは、前記のとおり、側面視において全体が薄型の形状をしているから、正面と背面
が、通常、看者の目に触れるものと認められ、また、イ号意匠において、溶解液収
納側の袋体の目盛り及び数字が背面側のみに記載されていることも合わせ考える
と、本件登録意匠及びイ号意匠に係る輸液バッグにおいては、アルミカバーシート
が付された正面のみならず、背面も、看者の目に多く触れることが認められる。し
たがって、基本的構成態様(5)の全体の構成が必要図中の背面図にしか表\れていない
としても、それによって、基本的構成態様(5)を要部と認定することが妨げられるこ
とはないというべきである。なお、本件登録意匠の意匠公報の【アルミラミネート
シートをはがした状態の参考正面図】においては、アルミラミネートシートをはが
した状態で、正面にも基本的構成態様(5)の構成が表\れることが示されている。もと
より、登録意匠の権利範囲を確定する上で、参考図はあくまでも参考にとどまる
が、同参考図によれば、基本的構成態様(5)が、本件登録意匠の構成中において、少\nなくとも無視されるべき構成でないことは認められるといえる。\n イ 本件登録意匠の出願前の公知意匠と比較すると、基本的構成態様(5)は、
出願前の公知意匠である甲第12ないし第16号証(オーツカCEZ注−MCのパ
ンフレット)、第24号証(特許第3060132号公報)、第25号証(特許第
3060133号公報)、甲第33号証(「カルバペネム系抗生物質メロペネム
(メロペン)キット製剤の有用性に関する実験的研究」新薬と臨床Vol.47
No.6)、第46号証(「ホスホマイシンナトリウムダブルバッグ製剤(溶解液付き
固形注射剤)の有用性に関する実験的研究」新薬と臨床Vol.47No.2)、乙第1号
証(意匠登録第1016887号公報)、第3号証(甲第12号証と同一)、第4
号証(「溶解液付き注射用固形抗生物質キット製剤のキット有用性に関する実験的
研究」日本包装学会誌Vol.4No.1)、第37、第38号証(味の素ファルマ株式会
社ピーエヌツインのパンフレット)、第39号証(本件登録意匠の出願前に発行さ
れた公開特許公報に記載されたダブルバッグタイプの輸液バッグの図面)、第44
号証(特開2000−72925号公開特許公報)、第45号証(特開平7−15
5361号公開特許公報)、第46号証(特開平5−68702号公開特許公報)
各記載の輸液バッグには見られず、本件登録意匠の創作的な部分であると認められ
る。
ウ 本件登録意匠の関連意匠である意匠登録第1107512号(甲第42
号証の1、2)、意匠登録第1108821号(甲第43号証の1、2)、意匠登
録第1108822号(甲第44号証の1、2)、意匠登録第1108823号
(甲第35号証の1、2)、意匠登録第1108824号(甲第45号証の1、
2)の各登録意匠には、いずれも基本的構成態様(5)が見られる。
エ 以上によれば、製剤収納側の袋体と溶解液収納側の袋体の境界部の中央
に帯状の弱シール部が形成されており、その弱シール部の両側に、弱シール部より
幅の広い強シール部が形成されているという基本的構成態様(5)は、本件登録意匠の
中で需要者の注意を最も引きやすい意匠の要部に該当するというべきである。
(2)ア(ア) 原告は、ダブルバッグタイプの輸液バッグにおいて、アルミカ
バーシートの視認性が重要であり、上方の製剤収納袋の吊下部を残して全面を覆
う、貼着部のシール線が表\れていない方形状のアルミカバーシートの周辺部のいず
れかに、一つの小さな半円形ないしそれに近い形状の引き剥がし用突片を設けた点
が本件意匠の要部であると主張する。
(イ) しかし、本件登録意匠のアルミカバーシートに貼着部のシール\n線が表れていない点は、それ自体、外観上、目立つところではない。また、製剤収\n納側の袋体の吊下部を残して全面を覆うアルミカバーシートは、原告公知意匠に見
られ、そのアルミカバーシートには、貼着部のシール線が表\れているが、そのシー
ル線は、製剤収納側の袋体の縁に沿って幅狭に存在するにすぎず、それほど目立つ
ものではないから、それとの対比からしても、本件登録意匠においてアルミカバー
シートに貼着部のシール線が表\れていない点は、看者の注意を引くとは認められな
い。
また、本件登録意匠のアルミカバーシートの周辺部に設けられた一つ
の小さな半円形ないしそれに近い形状の引き剥がし用突片は、その大きさ、形状に
鑑み、目立つものではなく、本件登録意匠の関連意匠5件の各正面図においても、
引き剥がし用突片は、位置は様々であるが、いずれもそれ程目立つものではないこ
とを併せ考えると、本件登録意匠のアルミカバーシートの周辺部に設けられた引き
剥がし用突片は、看者の注意を引くとは認められない。
したがって、原告の主張に係る、上方の製剤収納袋の吊下部を残して
全面を覆う、貼着部のシール線が表\れていない方形状のアルミカバーシートの周辺
部のいずれかに、一つの小さな半円形ないしそれに近い形状の引き剥がし用突片を
設けた点は、看者の注意を引くものではなく、本件登録意匠の要部であるとは認め
られない。
◆判決本文
◆添付書類です
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2017.07. 6
平成23(ワ)247 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟 平成24年6月29日 東京地方裁判所
少し前の事件ですが、漏れていたのでアップします。ACアダプターについて意匠権侵害が認められました。類似すると認定されたものの、損害額としては、販売不可事情として90%の減額が認定されました。
前記ア認定のエーシーアダプタの性質,用途及び使用態様によれ
ば,エーシーアダプタは,携帯用の周辺機器の充電に用いる実用品であ
ると同時に,身の回りに置き,あるいは,外出時に携帯するなど,日常
生活において目に触れる機会の多い製品であるといえる。
そして,前記イの認定事実によれば,エーシーアダプタの意匠におい
ては,本件登録意匠の構成態様に係る「箱状の本体の背面に折り畳み自\n在の差込みプラグを設け,底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタ
を設ける」構成(前記(1)ア(1)),「本体は,縦横の寸法が同一の正四
角形で扁平な箱状であり」(前記(1)ア(2)),「本体の全周囲は面取り
がされている」構成及び「縦(横)の寸法の約0.15倍の長さを半径\nとする面取りをする」構成,「差込みプラグが本体の平面部(上面部)\nから背面部に設けられ,プラグのピンは背面の凹部に折り畳まれた状態
から,後方又は上方に起立させて使用され,プラグピンの支持部の外周
は弧状をなしている」構成(前記(1)ア(4)),本体の「正面下部にラン
プを設ける」構成(前記(1)ア(5)),「USBコネクタは,底部に設け
られている」構成(前記(1)ア(6))は,本件出願時にいずれも公知であ
ったものといえる。
他方で,本件登録意匠の構成態様のうち,「本体の全周囲は,厚さ方\n向に厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四
角隅部は,正面視において,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする
四半球状となっている」点(前記(1)ア(3))は,公知意匠には認められ
ない構成態様であり,この構\成態様により,需要者に対し,本体全体が
丸みを帯びた柔らかな印象を与えると同時に,本体正面視の四角隅部が
四半球状となっていることにより整った印象も与えるものとなってお
り,上記構成態様は,他の公知意匠にはみられない新規な創作部分であ\nるといえる。
すなわち,前記イ(イ)のとおり,乙3には,充電器に係る意匠におい
て,縦横の寸法が同一の正四角形の箱状の本体において,「縦(横)の
寸法の約0.15倍の長さを半径とする面取りをしている」構成が示さ\nれているが,厚さが縦(横)寸法の約0.6倍であって,これは本件登
録意匠の2倍に当たり,縦(横)の長さと厚さとの比が異なり,さらに
は厚さに対する面取り径の比が本件登録意匠よりも小さく,本件登録意
匠のような全周囲が厚さの約2分の1を半径とする半円弧状の面取り
をしておらず,また,本体の四角隅部が,正面視において,いずれも,
厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっているものともいえず,
本件登録意匠のような本体全体が丸みを帯びた柔らかな印象を与える
ものとはいえない。他に本件登録意匠の上記構成態様が本件出願前に公\n然知られた形状であったことを認めるに足りる証拠はない。
以上を総合考慮すると,本件登録意匠において,需要者の注意を引き
やすい特徴的部分は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1
を半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視にお
いて,いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」
点を含む,本体部全体の形態であると認められる。
(イ) これに対し被告は,通常の販売・流通形態(店頭,ウェブサイト)
では,需要者は,エーシーアダプタを正面又は正面やや斜めから見るの
が普通であり,需要者としては正面の形態に最も注目するから,本件登
録意匠においては,携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体の正面の
形状及びランプの位置の正面形態全体がひとまとまりとして要部とな
り,特に接続部分が最重要の要部である旨主張する。
しかしながら,意匠の特徴的部分の把握に際しては,意匠に係る物品
の販売・流通時において視認し得る形状のみを前提にするのではなく,
意匠に係る物品の性質,用途,使用態様等も考慮すべきであるところ,
前記(ア)認定のとおり,エーシーアダプタは,需要者が実際に手にとっ
て携帯用の周辺機器の充電に用いる実用品であると同時に,身の回りに
置き,あるいは,外出時に携帯するなどされるものであることからする
と,需要者が本件登録意匠の正面の形態にのみ注目するとはいえない。
また,被告が主張する携帯電話等の周辺機器との接続部分,本体の正面
の形状及びランプの位置は,前記イのとおり,いずれも本件出願前に公
知の形状であることからすると,本件登録意匠においては,携帯電話等
の周辺機器との接続部分,本体の正面の形状及びランプの位置の正面形
態全体がひとまとまりとして需要者の注意を引きやすい特徴的部分(要
部)を形成しているとはいえないし,ましてや接続部分が最重要の要部
であるとはいえない。
したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
(3) 被告意匠の類似性
前記(2)ウ(ア)認定のとおり,本件登録意匠において,需要者の注意を引
きやすい特徴的部分は,「本体の全周囲は,厚さ方向に厚さの約2分の1を
半径とする半円弧状の面取りがされ,本体の四角隅部は,正面視において,
いずれも,厚さの約2分の1を半径とする四半球状となっている」点を含む,
本体部の形態全体である。
そこで,この特徴的部分を中心に本件登録意匠と被告意匠を対比した上
で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かについて判断するに,前記(1)
ウ(ア)(1)ないし(6)認定のとおり,両意匠は,この特徴的部分において共通す
るのみならず,それ以外の基本的構成態様及び具体的構\成態様の多くの部分
においても共通しており,需要者に対し,全体として共通の美感を生じさせ
るものと認められる。
他方で,前記(1)ウ(イ)認定のとおり,両意匠には,(1)本件登録意匠では,
本体底面に周辺機器に接続されるUSBコネクタが設けられているが,被告
意匠では,周辺機器に接続されるコードが断線防止部材を介在して,本体内
部の回路に接続されている点,(2)本件登録意匠では,本体の正面の形状が平
坦であるが,被告意匠では,中央部で周縁部よりも厚さの約0.03倍(約
0.5mm)程度膨出している点,(3)本件登録意匠では,ランプの中心が本
体右側面と底面からそれぞれ約17mmの均等な位置にあるのに対し,被告
意匠では,ランプの中心が本体底面から約12mmで,かつ,本体右側面か
ら約16mmの位置にあり,本件登録意匠に比べて底面に寄った位置に設け
られている点において差異があるが,これらの差異点は,需要者の注意をひ
きやすい部分とはいえない上,差異点から受ける印象は,両意匠の共通点か
ら受ける印象を凌駕するものではない。
したがって,本件登録意匠と被告意匠は,上記差異点を考慮しても,需要
者の視覚を通じて起こさせる全体的な美感を共通にしているものと認めら
れるから,被告意匠は,本件登録意匠に類似している。これに反する被告の主張は,採用することができない。
以上を前提に検討するに,被告製品は,Docomo,SoftBank等の携帯
電話用のエーシーアダプタであり,一方,原告製品は,USBコネク
タ(USBポート)を有するエーシーアダプタであり,上記携帯電話
の充電に使用する際には,上記携帯電話の接続口に対応したUSBケ
ーブルが別途必要とされるものである。
ところで,エーシーアダプタが,携帯用の周辺機器の充電に用いる
実用品であると同時に,身の回りに置き,あるいは,外出時に携帯す
るなど,日常生活において目に触れる機会の多い製品であること(前
記1(2)ウ(ア))に照らすならば,需要者は,エーシーアダプタの選
択に当たっては,充電可能な製品の種類,その他の性能\,価格,大き
さ,重さのほか,デザイン,色などの諸要素を考慮するものと考えら
れる。
しかるところ,原告製品と被告製品は,いずれもDocomo,SoftBank
等の携帯電話の充電に利用することができ,寸法,出力も概ね同じで
あり,また,重さは原告製品の方が軽いが,ケーブルの有無が異なる
から,ほぼ同程度と評価することができる。
さらに,原告製品とDocomo,SoftBank等の携帯電話用の接続ケーブ
ルを合わせた価格(1360円から1753円)と被告製品の価格(1
279円から1453円)は,同じ価格帯に属するといえる。
そして,原告製品の本体の独特の丸みを帯びた印象を与えるデザイ
ンは,このようなデザインを好む需要者が原告製品を選択する動機付
けになるものといえる。
他方で,(1)Docomo,SoftBank等の携帯電話のみを充電することがで
きればよいと考える需要者にあっては,価格面でより安価であり,ケ
ーブルが一体であって使い勝手のよい,被告製品の代替品を選択する
可能性が高いこと,(2)被告製品は,本体と一体となった接続ケーブル
が本体と同色であるのに対し(甲50,乙7の1,弁論の全趣旨),
原告製品の本体の色によっては,市販されている接続用のUSBケー
ブルと同色とはならないことから,この点を美観上好まず原告製品を
選択しない可能性があることが認められる。
b 次に,被告製品には,ピンク,レッド,ホワイト,ブルー,ブラッ
ク等の色のバリエーションがあり(甲41ないし45,乙7の1),
原告製品にも,ホワイト,ブラック,シアンブルー,ピンク,バイオ
レットの色のバリエーションがある(甲34)。
しかるところ,被告製品を購入した者が記載したインターネットの
ショッピングサイト上のレビュー(利用者の感想)においては,「と
にかくピンクがかわいいです。」(甲41),「見た目は真っ赤でお
しゃれです。」,「赤なら自分の充電器かどうかわかりやすいのでは
ないかという点にひかれて購入し」(以上,甲42)との記載がある
ように,色が購入動機になっていることがうかがわれる。
c 前記a及びbの認定事実を総合すると,仮に被告による被告製品の
販売がされなかった場合には,被告製品の購入者の多くは,Docomo,
SoftBank等の携帯電話用の被告製品と同種の接続ケーブルが一体と
なった代替品を選択した可能性が高いものと認められる。\n また,本件登録意匠と類似する被告意匠は,被告製品の購入動機の
形成に寄与していることが認められるものの,その購入動機の形成に
は,被告意匠のほか,被告製品がDocomo,SoftBank等の携帯電話用の
専用品であることが大きく寄与し,被告製品の色彩等(本体と接続ケ
ーブルが同一色である点を含む。)も相当程度寄与しているものとう
かがわれるから,被告意匠の購入動機の形成に対する寄与は,一定の
割合にとどまるものと認められる。
以上によれば,原告製品と被告製品の形態の違い,被告製品と同種
の代替品の存在,被告製品の購入動機の形成に対する被告意匠の寄与
が一定の割合にとどまることは,被告製品の譲渡数量の一部に相当す
る原告製品を原告において「販売することができないとする事
情」(意匠法39条1項ただし書)に該当するものと認められる。
そして,上記認定の諸点を総合考慮すると,意匠法39条1項ただ
し書の規定により控除すべき上記「販売することができないとする事
情」に相当する数量は,被告製品の販売数量(前記ア)の9割と認め
るのが相当である。
(オ) 被告の主張について
a 被告は,Docomo,SoftBankの携帯電話用のエーシーアダプタが必要
な需要者は,当該機器が充電できればよいから,被告製品のようなエ
ーシーアダプタと接続ケーブルとが一体となっている製品を選択し,
仮に被告製品が販売されなかったとした場合には,被告製品と同種の
廉価の代替品を購入するはずであり,あえて,別途上記携帯電話用の
USBケーブルを必要とする原告製品を選択することはないのに対
し,他方で,多種の周辺機器の充電に用いるエーシーアダプタが必要
な需要者は,原告製品を選択することになるから,原告製品と被告製
品とでは,そもそも購入対象者が異なり,明確に棲み分けがされてい
る旨主張する。
しかしながら,前記(エ)aに説示したとおり,両製品に共通する需
要者は,原告製品の丸みを帯びたデザインを重視するなどして,原告
製品を購入する可能性があるものと認められるから,被告の上記主張\nは,採用することができない。
b 次に,被告は,被告製品は,主にインターネットのショッピングサ
イトで販売され,一体に接続されているケーブルを含めた全体につい
て,正面から撮影された写真が掲載されているのみであり,また,被
告製品は,ほとんどその正面形状しか見えない状態でパッケージに梱
包されており,その意匠が需要者の購入動機に寄与することはなく,
むしろ,インターネットのショッピングサイトにおける被告製品のレ
ビューに照らしても,被告製品の購入動機となっているのは,被告意
匠ではなく,色である旨主張する。
しかしながら,被告製品が主にインターネットのショッピングサイ
トで販売されていることを認めるに足りる証拠はないのみならず,被
告製品の梱包の態様(甲5,検甲1)やインターネットのショッピン
グサイトの表示の態様(甲43ないし45)に照らすならば,需要者\nは,被告製品を購入するに当たり,被告製品の丸みを帯びたデザイン
を看取することができるものと認められ,その意匠が需要者の購入動
機に寄与することがないとはいえない。
また,原告製品のレビューにおいて,「デザインが個人的に好きで
すね。丸みがあり,艶々しています。」,「丸みを帯びたデザイン,
他機種と比較してかなり質感が高いです。」(以上,甲46),「そ
のデザインと小ささ,軽さに大変満足しています。」,「iPodにマッ
チしたデザインも気に入っている。」(以上,甲47)との記載があ
り,これらの記載は,原告製品において,デザイン(意匠)が購入動
機となっていることを示すものといえる。加えて,被告意匠と本件登
録意匠と類似していることに照らすならば,被告意匠においても,色
のみならず,デザイン(意匠)も購入動機に寄与しているものと認め
られる。
したがって,被告の上記主張は,採用することができない。
オ 小括
以上によれば,意匠法39条1項により算出される原告の損害額は,被
告製品の販売数量(前記ア)に単位数量当たりの原告製品の利益額(前記
ウ(ウ))を乗じて得られた額である722万9506円から,「販売する
ことができないとする事情」に相当する数量(上記販売数量の9割)に応
じた額を控除した後の72万2950円となる。
(2) 弁護士費用
本件事案の性質,審理の経過等諸般の事情を総合考慮すると,被告による
本件意匠権の侵害行為と相当因果関係のある原告の弁護士費用相当額の損
害は,20万円と認めるのが相当である。
◆判決本文
◆本件意匠および被告製品です
◆公知意匠です
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2017.06.23
平成28(ワ)5104 不正競争行為差止等請求事件 意匠権 民事訴訟 平成29年6月15日 大阪地方裁判所(21部)
意匠権侵害に基づいて販売店への警告したところ、販売店が販売を中止しました。製造メーカが意匠権侵害に該当しないので、営業誹謗行為であるとして、不競法違反(2条1項15号)として意匠権者を提訴しました。大阪地裁は、原告の主張を認め、約55万円の損害賠償を認めました。
ア 登録意匠と対比すべき相手方の意匠とが類似であるか否かの判断は,需要者
の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行う(意匠法24条2項)ものとされてお
り,意匠を全体として観察することを要するが,その際には,意匠に係る物品の性
質,用途及び使用態様,さらには公知意匠にはない新規な創作部分の存否その他の
事情を参酌して,取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として
把握し,登録意匠と相手方意匠が,意匠の要部において構成態様を共通にしている\nか否かを観察すべきものである。
イ 本件意匠の要部について検討すると,本件意匠に係る物品は,その物品の説
明によれば,柔軟性を有する合成樹脂製のシートであり,裏面を湿らせて手洗器付
トイレタンクのボウルに密着させて取り付け,ボウルの表面への埃,水垢等の付着\nを防止することができる使い捨てシートであると認められる。そして,これに別紙
意匠図面中の【使用状態を示す参考図】を参考にすると,その形状は,取り付ける
先の一般的な長方形の手洗器付トイレタンクのボウルの形状に規定されているもの
ということができるから,取引者・需要者は,その規定された形状を前提として,
本件意匠につき,その形状がボウルの表面の埃,水垢等の付着し易い部分を十\分カ
バーしているものであるか,その形状がボウルに密着して取り付け易いものである
か,さらには取り付け易くなるよう工夫が施されるかなどの点に注目するものと考
えられる。
したがって,取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分,すなわち要部は,基
本的構成態様ではなく,具体的構\成態様のうちでも,ボウルに装着した場合の使用
状態を決めることになる,本件意匠の外周の形状,すなわち「シート」の四隅の丸
みの半径の大きさの点や,ボウルの孔に対応する「シート」に設けられた貫通孔と
湾曲部の形状及びその位置関係などの点であると認められる。
この点,被告は,本件意匠の実施品は,手洗器付トイレタンクのボウルの表面へ\nの埃,水垢等の付着を防止するという課題を解決するアイデア商品であって,その
当時,市場に同種の用途,機能を有する物品はなかったことから,本件意匠はパイ\nオニア意匠であるとして,意匠に係る物品全体の形態,すなわち基本的構成態様そ\nのものが要部であるように主張する。
しかし,本件意匠の実施品が新品種の商品であって,その基本的構成態様が新規\nなものであったとしても,意匠に係る物品の説明に明らかなように,その物品の使
用目的から,取引者・需要者は,その基本的構成態様が,取り付ける先のボウルの\n形状に規定されているものにすぎないことは容易に理解できるところであるから,
本件意匠の基本的構成態様そのものをもって,最も注意を惹きやすい部分というこ\nとはできず,その点に要部があると認めることはできないから,被告の上記主張は
採用できない。
(3) 本件意匠と原告意匠の類否
以上により本件意匠と原告意匠の類否について検討すると,本件意匠と原告意匠
の共通点は,いずれも本件意匠の要部にかかわらないものであるといえる。
他方,シートの四隅の丸みの半径の大きさが異なること,本件意匠では貫通孔が
湾曲部と離間して設けられているのに対し,原告意匠では湾曲部の中央部と細いス
リットによって接続されるように設けられているという具体的構成態様における差\n異点は,いずれも本件意匠の要部にかかわるものであり,とりわけ後者のスリット
を設けられている点は,本件意匠に類似する要素はなく,シートをボウルに取り付
ける際に,シートをボウルの湾曲形状に密着させるための微調整を容易にさせる工
夫として取引者・需要者の注意を強く惹くものということができる。
そうすると,本件意匠が無模様であり原告意匠に模様が施されているという差異
点を捨象したとしても,両意匠を全体として観察した場合,看者に対して異なる美
感を起こさせるものと認められるから,原告意匠は本件意匠に類似していないとい
うことができる。
(4) 利用関係について
被告は,原告意匠は本件意匠と利用関係にあり,原告商品の販売等は本件意匠権
を侵害するものと主張する。
しかし,上記(3)に説示したとおり,原告意匠は,要部に係る具体的構成態様にお\nいて本件意匠と大きく異なる構成となっており,それによって全体として本件意匠\nとは異なる美感を起こさせているものであるから,原告意匠が本件意匠に係る構成\n態様全てをその特徴を破壊することなく包含しているとは認められない。
したがって,原告意匠は本件意匠と利用関係にあるとして,利用による侵害をい
う被告の主張は失当である。
・・・・
なお被告は,知
的財産権の権利行使の一環として行われた侵害警告を不正競争とすることが,知的
財産権の権利行使を委縮させかねない点も指摘するが,侵害警告の段階に留まるの
であれば,これを知的財産権に基づく訴訟提起と同様に扱うことはできないし,ま
た他方で,客観的には権利行使とはいえない侵害警告により営業上の信用を害され
た競業者の事後的救済の観点も十分に考慮されるべきである。\nしたがって,被告の上記主張を採用することはできず,このような知的財産権の
権利行使の一環であったとの主観的事情を含む被告が違法性阻却事由として主張す
る事実関係については,不正競争であることを肯定した上で,指摘に係る権利行使
を委縮させるおそれに留意しつつ,そもそもの知的財産権侵害事案における侵害判
断の困難性という点も考慮に入れて,同法4条所定の過失の判断に解消できる限度
で考慮されるべきである。
・・・・
(2) 知的財産権を有する者が,侵害行為を発見した場合に,その侵害行為の差止
を求めて侵害警告をすることは,基本的に正当な権利行使であり,その侵害者が侵
害品を製造者から仕入れて販売するだけの第2次侵害者の場合であっても同様であ
る。しかし,侵害品を事業として自ら製造する第1次侵害者と異なり,これを仕入
れて販売するだけの第2次侵害者は,当該侵害品の販売を中止することによる事業
に及ぼす影響が大きくなければ,侵害警告を不当なものと考えても,紛争回避のた
めに当該侵害品の仕入れをとりあえず中止する対応を採ることもあり,その場合,
侵害警告が誤りであっても,第1次侵害者に対する販売の差止めが実現されたと同
じ結果が生じてしまうから,こと第2次侵害者に対して侵害警告をする場合には,
権利侵害であると判断し,さらに侵害警告することについてより一層の慎重さが求
められるべきである。したがって,正当な権利行使の意図,目的であったとしても,
権利侵害であることについて,十分な調査検討を行うことなく権利侵害と判断して\n侵害警告に及んだ場合には,必要な注意義務を怠ったものとして過失があるといわ
なければならない。
以上により本件についてみるに,本件通知書の記載内容(上記第2の1(4)イ)か
らすると,被告は,コープPが本件意匠権の侵害者であるとしても,製造者ではな
く仕入れて販売する第2次侵害者にすぎないことを認識していたと認められる。
しかし,本件告知行為に至る経緯をみると,被告は,原告商品を本件カタログで
発見するや実物を確認することなく本件意匠権の侵害品であると断定し,僅か2日
後には,第1次侵害者である製造者を探索しようともせずに,製造者の取引先とも
なるコープPに対し,権利侵害であることを断定した上で侵害警告に及んだという
のである。
すなわち,上記認定した本件告知行為に至る経緯において,被告が,警告内容が
誤りであった場合に,製造者に及ぼす影響について配慮した様子は全く見受けられ
ず,不用意に本件告知行為に及んだものといわなければならない。
また,そもそも原告商品が本件意匠権の侵害品であるとの判断自体についてみて
も,本件については,本件告知行為を受けたコープPの代理人弁理士が,当裁判所
と同様の判断内容で原告意匠と本件意匠が非類似である旨を短期間のうちに回答し
ているように,両意匠が意匠法的観点からは類似していないというべきことは比較
的明らかなことといえるが(被告は,本件意匠の実施品が同種商品の存しない新種
のアイデア商品であり,先行意匠が存しないことから,意匠権で保護されるべき範
囲を過大に考えていたように思われる。),そうであるのに被告は,原告商品を発
見して極く短期間のうちに意匠権侵害であると断定して侵害警告に及んだというの
であるから,この点でも,侵害判断が誤りであった場合に製造者である原告の営業
上の信用を害することになるおそれについて留意した様子が全くうかがえず,不用
意に本件告知行為に及んだものといえる。
以上のとおり,被告は原告商品の販売が本件意匠権の侵害であるとの事実を原告
の取引先であるコープPに対して警告するに当たり,原告商品の販売が本件意匠権
の侵害との判断が誤りであった場合,原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告
知となって,製造者である原告の営業上の信用を害することになることなどを留意
することなく本件告知行為をしたものと推認すべきであり,意匠権の権利行使を目
的として上記行為に及んだことを考慮しても,以上の事実関係のもとでは,そのよ
うな誤信がやむを得なかったとはいえないから,被告は,本件告知行為をするに当
たって必要な注意義務を尽くしたとはいえず過失があったというべきである。
したがって,被告は,本件告知行為により原告が受けた損害を賠償する責任があ
る。
◆判決本文
◆本件意匠権はこちらです
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2017.06.16
平成28(行ケ)10239 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟 平成29年5月30日 知的財産高等裁判所
画面の意匠について、法上の意匠でないとして、拒絶審決が維持されました。
意2条2項で、画面でも操作するような場合には、法上の意匠として扱われますが、知財高裁も審決と同様に、本件画面はこれに該当しないと判断しました。本件は秘密意匠(意14条)として出願されてますが、内容が公開されています。非開示請求したら認められたのでしょうか?
意匠法2条2項は,「物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にす\nるために行われるものに限る。)の用に供される画像であって,当該物品又はこれと
一体として用いられる物品に表示されるもの」は,同条1項の「物品の部分の形状,\n模様若しくは色彩又はこれらの結合」に含まれ,意匠法上の意匠に当たる旨を規定
する。同条2項は,平成18年法律第55号による意匠法の改正(以下「平成18
年改正」という。)によって設けられたものである。
ところで,平成18年改正前から,家電機器や情報機器に用いられてきた操作ボ
タン等の物理的な部品を電子的な画面に置き換え,この画面上に表示された図形等\nからなる,いわゆる「画面デザイン」を利用して操作をする機器が増加してきてい
た。このような画面デザインは,機器の使用状態を考慮して使いやすさ,分かりや
すさ,美しさ等の工夫がされ,家電機器等の品質や需要者の選択にとって大きな要
素となってきており,企業においても画面デザインへの投資の重要性が増大してい
る状況にあった。
しかしながら,平成18年改正前においては,特許庁の運用として,意匠法2条
1項に規定されている物品について,画面デザインの一部のみしか保護対象としな
い解釈が行われ,液晶時計の時計表示部のようにそれがなければ物品自体が成り立\nたない画面デザインや,携帯電話の初期画面のように機器の初動操作に必要不可欠
な画面デザインについては,その機器の意匠の構成要素として意匠法によって保護\nされるとの解釈が行われていたが,それら以外の画面デザインや,機器からの信号
や操作によってその機器とは別のディスプレイ等に表示される画面デザインについ\nては,意匠法では保護されないとの解釈が行われていた(意匠登録出願の願書及び
図面の記載に関するガイドライン−基本編−液晶表示等に関するガイドライン[部\n分意匠対応版])。
そこで,画面デザインを意匠権により保護できるようにするために,平成18年
改正により,意匠法2条2項が設けられた。
このような立法経緯を踏まえて解釈すると,同項の「物品の操作…の用に供され
る画像」とは,家電機器や情報機器に用いられてきた操作ボタン等の物理的な部品
に代わって,画面上に表示された図形等を利用して物品の操作を行うことができる\nものを指すというべきであるから,特段の事情がない限り,物品の操作に使用され
る図形等が選択又は指定可能に表\示されるものをいうものと解される。
これを本願部分についてみると,本願部分の画像は,別紙第1のとおりのもので
あって,「意匠に係る物品の説明」欄の記載(補正後のもの,別紙第1)を併せて考
慮すると,画像の変化により運転者の操作が促され,運転者の操作により更なる画
像の変化が引き起こされるというものであると認められ,本願部分の画像は,自動
車の開錠から発進前(又は後退前)までの自動車の各作動状態を表示することによ\nり,運転者に対してエンジンキー,シフトレバー,ブレーキペダル,アクセルペダ
ル等の物理的な部品による操作を促すものにすぎず,運転者は,本願部分の画像に
表示された図形等を選択又は指定することにより,物品(映像装置付き自動車)の\n操作をするものではないというべきである(甲1,5)。
そうすると,本願部分の画像は,物品の操作に使用される図形等が選択又は指定
可能に表\示されるものということはできない。また,本願部分の画像について,特
段の事情も認められない。
したがって,本願部分の画像は,意匠法2条2項所定の「物品の操作…の用に供
される画像」には当たらないから,本願意匠は,意匠法3条1項柱書所定の「工業
上利用することができる意匠」に当たらない。
2 原告は,平成18年改正により意匠法2条2項が設けられた趣旨は,形態が,
物品と一体として用いられる範囲において,「物品の操作…の用に供される画像」に
関するデザインを広く保護しようとすることにあり,それ以上に保護対象を限定す
る意図は読み取れず,本願部分の画像は,「映像装置付き自動車」という物品におけ
る「走る」という機能を発揮できる状態にするための,シフトレバー等の操作の用\nに供されるものということができるから,同項の要件に適合すると主張する。
しかしながら,同項が設けられた趣旨,これを踏まえた同項の「物品の操作…の
用に供される画像」の意義は,前記1のとおりであり,これによると,本願部分の
画像が「物品の操作…の用に供される画像」に当たらないことも,前記1のとおり
である。原告は,本願意匠に係る物品の「操作」は,「機械など」に相当するシフト
レバーをあやつって働かせることであり,「一定の作用効果や結果」に相当する「走
る」機能を得るために,「物品の内部機構\等」に相当するトランスミッション等に指
示を与えるものであると主張するが,ここでいう「映像装置付き自動車」という「物
品の操作」とは,「走る」という機能を発揮できる状態にするための「一定の作用効\n果や結果」を得るために「物品の内部機構等」であるトランスミッション等に対し\n指示を与えることをいうのであるから,シフトレバー等は,あやつって働かせる対
象である「機械など」に相当するものではなく,「物品の操作の用に供される」もの
であって,このシフトレバー等「の操作の用に供される画像」であるか否かを検討
しても,意匠法2条2項所定の画像であることが認められるものではない。
◆判決本文
◆関連判決はこちらです。平成28(行ケ)10240
◆関連判決はこちらです。平成28(行ケ)10241
◆関連判決はこちらです。平成28(行ケ)10242
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2017.02. 8
平成28(ワ)13870 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟 平成29年1月31日 東京地方裁判所
意匠権侵害において、類似しない、かつ、間接侵害も成立しないと、判断されました。
上記事実関係によれば,運搬台車を購入しようとする建設会社等の需要
者及びこれを使用する作業員らは,斜め上方から台車本体の載置面を見る
だけでなく,車輪の取付態様その他底面の構成を観察するものと解される。\nまた,本件意匠に係る運搬台車又は被告製品の台車本体を斜め上方から見
る際には,載置面の表面だけでなく,凹部から車輪取付板の形状を認識す\nるということができる。なお,この点に関し,原告は,斜め上方からでは
凹部の底にある車輪取付板は視認できない旨主張するが,その主張の裏付
けとする写真(甲28)は,台車から約2m離れた地点において,約1m
の高さから撮影したものであり,作業員らが通常の使用態様においてその
ような位置のみから台車を観察するとは解し難いから,原告の主張は失当
というべきである。
そうすると,本件意匠及び被告意匠においては,原告が要部であると主
張する載置面の天板の形状等だけでなく,凹部上方から視認される車輪取
付板の形状及び底面視における車輪の取付態様や台車の骨格等も,これに
接した者の注意を引くと認められる。そして,前記ウのとおり,本件意匠
と被告意匠はこれらの点が相違するのであり,これにより両意匠から需要
者が受ける印象が異なるということができるから,前記ウの共通部分を踏
まえても,全体として異なる美感を生じさせると解される。
・・・・
原告は,被告製品は四隅に手押し棒(単管パイプ)を立設する態様でのみ使
用されるから,被告意匠が手押し棒の有無により本件意匠に類似しないとして
も間接侵害(意匠法38条1号)が成立する旨主張する。
そこで判断するに,手押し棒を除いても本件意匠と被告意匠が類似するとい
えないことは前項で判示したとおりであるが,これに加え,証拠(乙12〜1
5,18〜20,34)及び弁論の全趣旨によれば,被告製品のような載置面
が平板な台車は,四隅に手押し棒を立設する態様のほか,手押し棒を2本立設
する態様,手押し棒を立設しない態様等でも建設現場における資材の運搬等の
用に供されると認められる。
◆判決本文
◆本件登録意匠です
◆被告意匠です。
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