類似する商標であると判断されたものの、商標的使用でないと判断され、非侵害とした1審判決が維持されました。
しかしながら,登録商標に類似する標章の商標権者以外の者による使用が
当該商標権の侵害に当たるとするためには,その標章が,商品・役務出所表示機能\,
自他商品・役務識別機能を発揮する態様で,すなわち,需要者が何人かの業務に係\nる商品又は役務であることを認識できる態様で,使用されていることが必要である
と解すべきである。なぜなら,法律上,商標の果たすべき最大の機能は,商品・役\n務出所表示機能\,自他商品・役務識別機能であり,商標権によってまず守られるの\nは,登録商標のそのような機能であり,商標権侵害とされるのは,登録商標のこの\n機能を阻害する態様の行為に限られると考えるのが合理的であるからである。
(4) そこで,検討するに,前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人
は,「FRANGIPANI」を屋号として,宝石様のガラス等に貼付された医療用\nシートを耳のつぼに貼付する「耳つぼジュエリー」の施術方法を教授する「耳つぼ\nジュエリープロ通信講座」を開催しており,インターネット上にホームページを開
設して,前記講座の広告に伴う自己紹介として,1)「現在はサロンワークの傍ら,
自身のセミナー,通信講座の運営など「耳つぼジュエリスト」として後進の指導と
女性(特に育児中のママ)の起業サポートに力を注ぎ,日々「大人を教える技術」
に磨きをかける。」という被控訴人標章を含む文言を記載したこと,被控訴人標章が
記載された前記ホームページには,その上部に「FRANGIPANI」という被
控訴人の屋号の記載があり,その下に「耳つぼジュエリープロ通信講座」との記載
があったこと,被控訴人の開設したホームページには,いずれもその上部に「FR
ANGIPANI」という被控訴人の屋号の記載があり,被控訴人は,当該ホーム
ページ又はこれらにリンクされているページ中に,2)「耳つぼジュエリースクール
では,お仕事として耳つぼジュエリーをしていきたい耳つぼジュエリストの育成も
してまいりました。」,3)「そんな耳つぼジュエリストとしてのやりがいや幸せを感
じていただきたいと思っています。」,4)「また,受講いただいた方への十分なコミ\nュニケーションとサポート,サービス提供もとことんさせていただき,自信を持っ
て耳つぼジュエリストデビューをしていただくまでのお手伝いをするために,今回
プレミアム特典も別に用意させていただきました。」,5)「学ぶことで,ご心配なく
取り組んでいただけます,学んだらいいかわからない,耳つぼジュエリストのYが
開発いたしました。」,6)「痛くない施術,説明するときにも役立ちます,通信教育
って途中で勉強,そんな耳つぼジュエリストとしてのやりがいや幸せ,ピンクリボ
ンフェスタ2013出展。」という被控訴人標章を含む記載をし,また,投稿動画に
添える表題的な文言として,7)「ネイリストより簡単!自宅で学べる耳つぼジュエ
リストのプロを目指す」という被控訴人標章を含む記載をしたことが認められる。
前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,前記ホームページ又はこれらにリンク
されているページにおいて,「耳つぼジュエリスト」は,ラインストーンに貼付され\nた医療用シートを耳のつぼに貼付する「耳つぼジュエリー」の施術を業として行う\n者という意味で使用されており,「耳つぼジュエリープロ通信講座」の開催及び「D
ipLoma」と題する文書の発行の主体は,「FRANGIPANI」であること
が明示されているといえる。
そして,前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人のほかにも,相当数
の者が,インターネット上において,「耳つぼジュエリー」の施術方法を教授する講
座を開催していたことが認められる。
以上の事実及び弁論の全趣旨によれば,本件商標権の指定役務である知識の教授
に係る事業の需要者において,インターネット上の被控訴人の前記1)ないし7)の被
控訴人標章を含む記載のあるホームページ等を見た場合,「FRANGIPANI」
が,その行う事業の一環として,その受講者に「DipLoma」と題する修了証
を発行する通信講座を開催し,その広告を掲載しており,前記講座は,前記施術を
行う技術を教授する講座であり,前記1)及び5)の記載は被控訴人が自らが前記施術
を業として行っていることを示したもの,前記2)ないし4),6)及び7)の各記載は,
一般的な資格として前記施術を業として行う者を示したものであると理解するので
あって,「FRANGIPANI」という表示によって役務の出所を識別するのが通\n常であると考えられ,被控訴人標章から役務の出所を想起することはないものと認
められる。
したがって,前記の被控訴人標章の各記載は,需要者が何人かの業務に係る役務
であることを認識することができる態様により使用されているものと認めることは
できず,「登録商標に類似する商標の使用」(商標法37条1号)には該当しないと
いうべきである。
◆判決本文
◆関連事件はこちらです。平成28(ネ)10013
◆関連事件はこちらです。平成28(ネ)10012