2024.11.18
平成28(ワ)23327等 商標権侵害行為差止等請求事件 商標権 民事訴訟 令和元年5月23日 東京地方裁判所
第1事件の原告・被告が、それぞれ第2事件の被告・原告となっています。
それぞれの事件の原告は商標権者です。第1事件の商標は「ブロマガ/BlogMaga」および「ブロマガ」「BlogMaga」の3件です。問題の指定役務は「サーバの記憶容量の貸与」です。第2事件は「ブロマガ」指定役務「電子出版物の提供」です。それぞれの被告の使用は、侵害と認定されました。
このサービスにおいて,ユーザーが自らのブログ記事を作成してウェブサイ
トにアップロードした際には,ドワンゴが設置管理するサーバーの記憶領域に
ブログ記事のデータを保存しており,ドワンゴは,サービス利用者に対し,サ
ービス利用者自身のブログを開設し,ブログ記事を作成し,投稿するために必
要となるサーバーの記憶領域を提供しているといえ,ブログの開設及びブログ
記事の作成,投稿機能を含むドワンゴのブログサービスは,「インターネット\nにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」に類似するといえる。
これに対し,ドワンゴは,本件で問題となるブログに関するサービスにおい
てサーバーの記憶領域への保存の過程があることは認めつつ,役務の提供に付
随して提供される業務は商標法上の役務には含まれないと解すべきであると
ころ,ニコニコのブログサービスの中心となるのは「CHブロマガ」であり,
ニコニコのブログサービスは購読者に対する記事コンテンツの配信が主たる
サービスであること,ブログ記事の作成やウェブサイトでの閲覧機能は独立し\nたサービスではなく,ブログ記事の配信サービスと分離して取引されていない
こと,ドワンゴはサーバーの記憶領域の保存過程について対価の支払を受けて
いないこと等から,ブログ開設及びブログ記事作成,投稿機能は,他の役務の\n提供などに付随して提供される業務であって商標法上の役務ではない旨主張
する。
ある業務を行うに当たり必然的に伴う役務における標章の使用に対し,その
役務と同一又は類似する役務を指定役務とする商標の商標権者が商標権の侵
害を主張することができることが適当でない場合があるとしても,本件につい
てみると,一般的に,利用者がブログを開設,投稿して他人にそれを閲覧させ
るためのプラットフォームを提供するサービスは独立した役務といえるとこ
ろ,前記 エのとおり,ニコニコのウェブサイトでは,会費を支払ったプレミ
アム会員であれば享受することができるサービスの一つとして,自らブログを
開設し,ウェブサイト上にブログを投稿することができることが明確に表示さ\nれている。また,サービスの利用にあたっても,ブログを開設することができ
ることが表示され,それに従い所定の操作を行うことで,ブログが開設され,\nまた,ユーザーがそのブログを閲覧することができる。ドワンゴが「CHブロ
マガ」のサービスを提供し,また,ニコニコのウェブサイトでは,「CHブロマ
ガ」に関する表示があることは認められるが,「CHブロマガ」は,著名人等の\nチャンネルオーナーが電子書籍形式の記事コンテンツの配信を行うものであ
って,このような「CHブロマガ」と,一般ユーザーによるブログ開設,ブロ
グ記事投稿,配信機能である「ユーザーブロマガ」とでは,サービスの内容が\n大きく異なる部分がある。また,前記 によれば,ニコニコのウェブサイトのトップページから「ユーザーブロマガ」を利用することができ,「CHブロマ
ガ」とは別に自らブログを開設等できる「ユーザーブロマガ」を利用する者も
想定できる。これらに照らせば,「ユーザーブロマガ」が「CHブロマガ」に付
随するサービスとはいえない。また,「ユーザーブロマガ」においては,ブログ
記事をウェブでユーザーから閲覧することができるようにするだけでなく,ブ
ログ記事をメール配信することができ,それが特徴となっていることが認めら
れる。
しかし,「ユーザーブロマガ」において,ユーザーは全員がメール配信す
るかしないかを選択することとなっていて,ブログを開設し,ブログ記事を投
稿し,閲覧させる役務は,一般にも独立したサービスとして提供されているも
のである一方,「ユーザーブロマガ」において,ブログを開設しブログ記事を投
稿する者にとって,メールを配信しないことが例外的な態様であるとまではい
えず,メールの配信が不可欠の要素となっているとはいえない。さらに,ニコ
ニコのウェブサイトで提供するサービスについての対価は,ブログ記事を投稿
等する機能のみに対する対価として徴収されているものではないものの,そも\nそも,その対価はニコニコのウェブサイトにおいて提供されている多様なサー
ビス全ての対価であり,そこには独立して提供し得る様々なサービスが含まれ
ていて,ブログ記事の配信という特定のサービスのみについての対価ではない。
このことを考慮すると,ブログを開設等する機能のみに対する対価が徴収され\nていないことが,直ちにそれに関する役務が商標法上の役務といえないことの
根拠になるとはいえない。そして,対価を支払った会員が受けられるサービス
の中には,上記のように独立したサービスとして提供されるブログ開設及びブ
ログ記事作成,投稿機能も含まれていることなどを考えると,本件の事実関係\nの下においては,ドワンゴが主張するように「ユーザーブロマガ」サービスに
おけるブログの開設及びブログ記事の作成・投稿機能が,他のサービスなどに\n付随して提供される業務であって商標法上の役務には含まれないということ
はできないというべきである。
また,ドワンゴは,インターネットを利用するほぼ全てのサービスが,サー
バーの記憶領域への保存を伴うから,ドワンゴが提供するサービスが,甲商標
の指定役務である「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領
域の貸与」と同一又は類似すると解釈することは実務に混乱をきたすと主張す
る。しかし,インターネットを利用するサービスにサーバーの記憶領域への保
存を伴うものが多いとしても,そのサービスには様々なものがあり,それらの
サービスの全てにおいてサーバーへの記憶領域への貸与が独立した役務と認
められるとは限らず,本件においては,本件で問題となっているサービスにつ
いて,ブログのためのサーバーの記憶領域の貸与が商標法上の役務と認められ
たものであり,ドワンゴの主張は採用することができない。
・・・
インターネットの検索エンジンの検索結果において表示されるウェブペー\nジの説明は、ウェブサイトの概要等を示す広告であるということができる。し
たがって,その説明が表示されるようにHTMLファイルにメタタグを記載す\nることは役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する行
為に当たるというべきであり,これに反するドワンゴの主張は採用することが
できない。
そして,ドワンゴは,乙標章を,ニコニコのウェブサイトのトップページの
HTMLソースコードの記述メタタグに記載していることは当事者間に争い\nがなく,乙標章は,ニコニコのHTMLファイルにメタタグとして記載された
結果、検索エンジンの検索結果において、ウェブサイトの内容の説明文ないし
概要やホームページタイトルとして表示され、これらがニコニコのウェブサイ\nトにおける,ブログ開設及びブログ記事作成,投稿機能を含む各種サービスの\n出所等を表示し、インターネットユーザーの目に触れることにより、顧客がニ\nコニコのウェブサイトにアクセスするよう誘引するのであるから、ドワンゴに
よる乙標章のメタタグとしての使用は役務の出所識別機能を果たす態様で使\n用されているといえる。
以上によれば,ドワンゴによる乙標章の使用は甲商標の商標権を侵害する態
様での使用であるといえる。
・・・
ア ドワンゴは,FC2が提供するサービスが「電子出版物の提供」に該当す
ると主張するのに対し,FC2は,これを否定する。
イ FC2の「ブロマガ」のサービスにおいては,ユーザーは,検索などをす
ることによって,購入したい記事を選択し,FC2に対して所定の支払をし
て「オリジナル小説」や「漫画」が例に挙げられる「限定記事」を購入する
ことができ,その購入後,FC2のウェブページにおいて,購入した記事を
閲覧することができるようになり,また,購入した記事について,その後,
FC2からHTML形式のメールの配信を受けることなどができた。
上記サービスにおいては,利用者は,FC2のサービスを利用することに
よって,上記のような態様で,第三者が作成したまとまりのある文書・図画
を閲覧等することができるようになるのであり,同サービスにおいては,電
子出版物の提供又は通信ネットワークを利用した電子書籍及び電子定期刊
行物の提供に,少なくとも類似した役務が提供されているといえる。
そして,前記 のブログ記事の購入に当たり用いられている甲標章の
使用態様によれば,電磁的方法により行う映像面を介したこの役務の提供に
当たり,映像面に乙商標と類似する甲標章が付されていたと認められる。
ウ FC2は,「電子出版物」とは,いわゆる電子書籍を意味してFC2のブログ
サービスは「電子出版物の提供」に該当しないと主張し,また,ブログ記事の
配信を行う主体はユーザーであり,FC2ではなく,FC2はその媒介をして
いるにすぎないから,ブログ記事の配信が「電子出版物の提供」に該当すると
しても,FC2のブログサービスは「電子出版物の提供」の媒介であって,「電
子出版物の提供」には該当しないと主張する。
しかし,前記イの態様に照らせば,FC2の上記のブロマガの販売に関する
サービスについては,少なくとも,前記役務に類似した役務が提供されている
といえる。
◆判決本文
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◆平成30(行ケ)10103
◆平成30(行ケ)10102
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2024.11.15
令和6(ネ)10031 不正競争行為差止等請求控訴事件 商標権 民事訴訟 令和6年10月30日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
日本国内のウェブサイトで、海外における「Sushi Zanmai」のお店紹介することが、日本の商標権侵害・不正競争行為に該当するかが争われました。
1審では、商標権侵害を認め、差止、損害賠償(約600万円)が認められました。知財高裁は、商標としての使用ではない、商品等表示でもない、仮に商標としての使用であると考えた場合でも、日本国内で提供される役務についての使用ではないとして、\nこれを取り消しました。
(2) 被告各表示の商標法2条3項8号該当性について\n
前記(1)の本件ウェブサイトの構成と記載内容によれば、以下に述べるとお\nり、本件ウェブサイトは、全体として、被告を含むダイショーグループが東
南アジアにおいて日本食を提供する飲食店チェーンを展開するとともに、そ
こで提供するための鮮度の高い良質な食材を日本から輸出する事業を営んで
いることを紹介するものであると認められるから、被告各表示を付した本件\n各ウェブページについても、本件すし店の「役務に関する広告」に当たると
認めることはできない。
ア 「事業内容」のページ(前記(1)ウ)は、説明項目の記載順が「食材・食
品の輸出/提案」、「加工・流通」、「物産展・地域振興」、最後に1
0の飲食店チェーンの一つに被告各表示を付した「店舗開発・メニュー\n開発」となっており、それぞれ相応な分量の説明と写真があり、冒頭の
「食材・食品の輸出/提案」の末尾は、食材の海外輸出を検討する日本
国内の事業者に向けた呼びかけとなっている。そうすると、これに続く
「加工・流通」、「物産展・地域振興」、「店舗開発・メニュー開発」
は、輸出先の国における流通経路の川下に関する事業内容を順次紹介す
ることにより、海外輸出を検討している国内の事業者に向けて、ダイシ
ョーグループを通じた輸出の利点を記載したものといえる。
イ このような食材の輸出に関連する内容は、前記(1)のとおり本件ウェブサ
イトの随所にみられ、特に「海外輸出をお考えの方」のページ(前記(1)
カ)は、食材の海外輸出を検討する国内事業者に向けたものであること
が明らかである。
ウ これに対し、被告各表示を付した部分は、上記「事業内容」のページに\nおいては、ページの最後に被告各表示と簡潔な説明文及び英文ウェブサ\nイトへのリンクがあるにとどまり、ページ全体に占める割合は少なく、
具体的なメニューの内容、価格、店舗の所在場所といった、一般消費者
に向けて本件すし店の役務の内容を知らせる内容は乏しい(これらの情
報は、リンクされた英文ウェブサイト(乙37)に掲載されていること
が推認される。)。しかも、被告各表示は、ダイショーグループが展開\nしている飲食店チェーンを紹介した部分に掲載されている10種類の飲
食店(その中には簡潔な説明文中にシンガポールやクアラルンプールの
店舗であることが明記されているものもある。)の一つにすぎない。そ
して、同ページの記載内容からも、本件すし店が東南アジアに所在する
ことは比較的容易に読み取ることができる。
トップページ(前記(1)ア)において被告各表示を用いた部分をみても、\n英文ウェブサイトへのリンクがないことを除いては「事業内容」のペー
ジと同じであり、ページ全体に占める割合が多いとはいえず、10種類
の飲食店チェーンの一つとして店舗情報が提供されていることは、前記
「事業内容」のページと同様である。
さらに、上記の「事業内容」のページや「ダイショーグループとは」
のページ(前記(1)イ)をみれば、本件すし店が東南アジアに所在するこ
と、日本法人である被告が国内からの食材の輸出の事業を営んでいるこ
とは、比較的容易に読み取ることができる。
エ これに対し、原告は、本件各ウェブページの被告各表示が、ダイショー\nグループの事業内容として本件すし店の役務を「広く世間に告げ知らせる」
ことを目的として使用されていること、その役務に係る出所表示機能\、自
他商品識別機能等を果たす態様で使用されていることは明らかであるから、\n本件すし店の「役務に関する広告」に該当する旨主張する。
しかし、前記の本件ウェブサイトの構成と記載内容によれば、被告各表\
示を用いた部分が本件すし店の役務を「広く世間に告げ知らせる」とい
う一面があることを全く否定することはできないとしても、全体からみ
ると、本件各ウェブページは日本からの食材の輸出という役務の広告と
いうべきであって、被告各表示を用いた部分は、ダイショーグループが\n展開する他の飲食店チェーンの紹介と併せて、国内の事業者に対し、ダ
イショーグループを通じて輸出した場合の食材の使用先や使用状況を明
らかにし、これにより被告との間で食材の輸出取引を行うための誘因と
する目的で使用されているというべきである。
このような使用態様については、本件すし店の役務に係る出所表示機能\、
自他商品識別機能等を果たす態様で使用されていると評価することはで\nきない。
・・・
ク 以上によれば、被告各表示は、その態様に照らし、食材の海外輸出を検\n討する国内事業者に向けた本件各ウェブページの中で、被告の事業を紹
介するために使用されているにすぎず、本件すし店を日本国内の需要者
に対し広告する目的で使用されたものではなく、現にそのような効果が
生じている証拠もない。
したがって、本件ウェブページ掲載行為は、「本件すし店の役務に関
する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する行為」として商
標法2条3項8号に該当するものということはできない。
(3) 被告各表示と原告各商標権の侵害について\n
仮に、原告が主張するとおり、被告各表示の使用が本件すし店の存在を日\n本国内に広く知らしめるという点において「広告」に該当し、商標的使用に
該当すると考えた場合でも、以下のとおり、被告各表示は、日本国内におけ\nる役務の提供について使用されているものではないから、原告各商標権を侵
害するものではない。
ア すなわち、被告各表示は、日本語で記載された本件各ウェブページに掲\n載されているから、これが本件すし店の広告に該当すると考えたときは、
日本国内において商標法2条3項8号に該当する行為がされたものと一応
いうことができる。
イ しかるところ、前記のとおり、本件各ウェブページは、食材の海外輸出
を検討する国内事業者に向けたものであると認められ、被告各表示は、本\n件各ウェブページの中でダイショーグループが海外で日本の食材を用いた
飲食店チェーンを展開していることを示す際に使用されている。本件各ウ
ェブページには、本件すし店の具体的なメニューの内容、価格など、一般
消費者に向けて本件すし店の役務を知らせる内容は一切記載されておらず、
「事業内容」のページの被告各表示の下のリンクから誘導されるのは英文\nのページのウェブサイトである。
ウ また、証拠(乙17、21)及び弁論の全趣旨によれば、本件すし店は、
日本国外(シンガポール、マレーシア)で飲食物の提供等の役務を提供し
ていることが認められ、シンガポールやマレーシアで商標登録されている
被告各表示(甲8、乙14、15。商標権者はスーパースシである。)は、\n現地でその役務を提供するに当たり、使用されている標章である。本件す
し店が、日本国内で同様の役務を提供している事実は認められない。
エ そうすると、被告各表示は、本件すし店の日本国内における役務の提供\nについて用いられているものではない。被告各表示を見た日本国内の消費\n者が被告各表示により役務の提供の出所を誤認したとしても、本件すし店\nが日本で役務を提供していない以上、その誤認の結果(原告の店であると
誤認して、本件すし店から指定役務の提供を受けること)は、常に日本の
商標権の効力の及ばない国外で発生することになるはずであり、日本国内
で原告各商標権の出所表示機能\が侵害されることはない。なお、証拠(甲
10、11)によれば、クアラルンプールの本件すし店に入店する際、こ
れを原告の支店であると誤認した日本人がいた事実が認められるが、当該
出所の誤認が本件各ウェブページの被告各表示を閲覧した結果生じたもの\nであることを認める証拠はない上、出所の誤認が国外で発生していること
に変わりはないから、当該事実は、前記判断を左右するに足りるものでは
ない。
オ もともと、一国において登録された商標は、他の国において登録された
商標から独立したものとされており(パリ条約6条1項及び3項)、かつ、
いわゆる属地主義の原則により、商標権の効力は、その登録された国内に
限られるものと解される。外国において適法に登録された商標である被告
各表示が当該外国における指定役務の提供を表\示するため本件各ウェブペ
ージ上で使用された場合において、原告各商標権に基づき被告各表示の使\n用差止等を認めることは、実質的にみて、原告各商標の国内における出所
表示機能\等が侵害されていないにもかかわらず、外国商標の当該外国にお
ける指定役務表示のための適法な使用を日本の商標権により制限すること\nと同様の結果になるから、商標権独立の原則及び属地主義の原則の観点か
らみても相当ではないというべきである。
・・・
以上によれば、原告の主張を考慮しても、本件各ウェブページは、日本か
らの食材の輸出という役務の広告というべきであり、仮に被告各表示を本件\nすし店の役務の広告であると考えた場合でも、当該役務は国外で提供される
役務であるから、原告各商標の国内における出所保護機能を害するものでは\nない。
・・・
(1) 前記2のとおり、本件各ウェブページにおいて、被告各表示は、日本から\nの食材の輸出という被告の事業に関連する情報の一つを示すために使用され
ていると認められるから、他人の商品等表示と同一又は類似の商品等表\示を
使用し、出所表示機能\、自他商品識別機能等を果たす態様で使用されている\nと評価することはできない。また、仮に、被告各表示が、本件すし店の提供\nする役務を表示するために使用されていると考えたとしても、当該役務は日\n本国内の役務ではなく、国外で提供される役務であるから、日本国内におい
て、出所表示機能\、自他商品識別機能等を果たす態様で使用されていると評\n価することはできない。
そうすると、本件ウェブページ掲載行為は、被告各表示を商品等表\示とし
て「使用」するもの(不競法2条1項1号)に当たらないから、その余の点
を判断するまでもなく、不競法2条1項1号に基づく原告の請求は、理由が
ない。
◆判決本文
1審はこちら。
◆判決本文
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2024.09.24
平成26(ワ)12570 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成29年1月31日 大阪地方裁判所
以前の判決ですが、漏れていたのでアップします。
使用済みのトナーカートリッジに、インクを詰めたリサイクル品の製造・販売等が,不正競争防止法の品質等誤認惹起行為に該当するとともに、商標権侵害となると判断されました。被告は、販売時に、RFIDをリセットすることで、トナー交換メッセージが表示されるのを解除していましたが、これにともない「シテイノトナーガソ\ウチャクサレテイマス」との表示がなされるようになり、これが品質誤認等に該当するとの判断です。\n
ア 被告は,経済常識によれば,原告京セラDSがリサイクル品を指定,すなわ
ちお墨付きを与えることはあり得ないことから,需要者は,被告商品を原告プリン
ターに装着したときにディスプレイに現れる「シテイノトナー」を原告京セラDS
の主張するような意味に理解することはないと主張するが,原告京セラDSがいか
なる場合にも他社の安価なリサイクル品を指定トナーとすることはあり得ないと断
定する根拠はないのであるから,当該表示が「誤認させるような表\示」であること
は免れないというべきである。
イ 被告は,被告商品がリサイクル品であることが明らかとなるよう純正品であ
ることを否定する打ち消し表示がされていること,プリンターメーカーの純正リサ\nイクル品であればその旨の表示があるはずであるのにそのような表\示がないこと,
また,そもそも需要者はリサイクル品と純正品とを区別して購入しているものであ
ること等を指摘し,本件指定表示が,「誤認させるような表\示」ではない旨主張する。
上記第2の2(3)ウのとおり,被告商品の包装や外箱には,被告商品がリサイクル
品であることが理解できる記載がされているが,プリンターメーカーが新品の純正
品だけでなく,リサイクル品を販売している例もあるし(甲10の1ないし3),プ
リンターメーカーが定める品質が,プリンターメーカー以外が製造するリサイクル
品においてあり得ないとまで断定できない以上,需要者が,被告商品を原告プリン
ターに装着することによりディスプレイに現れる本件指定表示によって,被告商品\nの品質,内容について誤認するおそれを完全に否定することはできない。そして,
この点は,被告商品を原告らとは関係のない業者が製造したリサイクル品と明確に
認識して購入した需要者であっても同様であって,被告の上記主張は採用できない。
ウ 被告は,ステータスページのトナー残量を表示させるためRFIDをリセッ\nトすると,これに連動して本件指定表示が現れるようにする原告純正品にされた設\n定は,不正競争防止法の問題を生じさせるようあえて設定されたものであって,競
争者に対する取引妨害を禁止する独占禁止法の趣旨に反するとし,被告商品による
不正競争該当性を否定すべきである旨主張する。
確かに,原告純正品についてなされた設定が,使用済み原告純正品のカートリッ
ジを再利用してリサイクル品とする場合に,商品として競争力を減殺するものであ
れば独占禁止法上問題とされる余地はあると考えられる。しかし,そもそも,RF
IDをリセットしない原告純正品のリサイクル品であっても,トナー残量が不足し
てきた場合には,プリンターのディスプレイには,「トナーガスクナクナリマシタ」,
「トナーヲコウカンシテクダサイ」との表示がされ,業務上支障がないよう配慮さ\nれているのであるから,プリントする必要があるステータスページのトナー残量が
表示できるようRFIDのリセットをしなければ,原告純正品のリサイクル品の製\n造販売が阻害されるような前提でいう被告の主張は,その点で採用し難い。
また,原告純正品のステータスページにおけるトナー残量表示は,規定量の充填\nされた新品の「シテイノトナー」を前提に,各印刷物のドット量等から使用量を計
算するなどして表示しているというのであるから(弁論の全趣旨),そもそも原告京\nセラDSにおいて規定量が充填されているか否かを確認できないトナーカートリッ
ジを前提にRFIDをリセットして使用することは想定されておらず,そのリセッ
トを自由にさせるよう求めることになる被告の主張はこの点でも採用できない。
したがって,原告純正品にされた,本件指定表示とステータスページを関連づけ\nた設定が独占禁止法の趣旨に反する旨の被告の主張は採用できない。
・・・
(1) 被告商品2には,トナーカートリッジの底面に本件商標が付されており,そ
の表示態様は,被告商品2において,商品の出所を識別表\示させるものといえる。
そして被告商品2は,本件商標の指定商品であるトナーカートリッジであるから,
被告商品2を製造販売する行為は,本件商標権の侵害行為を構成するといえる。\n
(2) これに対し,被告は,被告商品2には,原告らが流通に置いた商品であり,
かつ,リサイクル品であることが一見して明らかな表示を幾重にも施しているから,\n需要者が被告商品2の出所を原告京セラ又はそのグループ会社であると誤認するこ
とはあり得ないとして,被告の行為は本件商標権侵害の違法性を欠く旨主張する。
確かに,上記第2の2(3)ウ(ア)のとおり,被告商品2の本体及び梱包した箱には,
被告商品2がリサイクル品であることが明示されていることが認められる。また,
箱の中に入れられている,「ご使用前の注意」と題する書面,「リサイクルカートリ
ッジトラブル調査票」によっても,被告商品2がリサイクル品であることは明らか
にされていることも認められる。
しかしながら,被告商品2の本体には,製造元等の記載は全く存在しないから,
本体に付された上記のような表示ラベルだけでは,本件商品2の本体に付された本\n件商標の出所表示機能\を打ち消す表示として十\分なものとはいえない。
◆判決本文
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2024.03.26
令和5(ネ)10085 損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件 商標権 民事訴訟 令和6年3月7日 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
1審、知財高裁とも、は、DVDのケースの「九鬼神流」などの記載は、商標的使用ではないと判断しました。知財高裁は、消滅時効の追加主張を時期に後れたものとはいえないとして、一部の債権については時効により消滅したと判断し、損害賠償額を減額しました。
被控訴人は、控訴人に対し支払義務を負うとしても、本件訴状が原審裁判所に提
出された令和3年10月14日時点で、平成23年10月14日以前に支払われた
出演料に相当する部分6万9420円(=41万6521円÷(1−0.1)÷7%
×1.05×7%−41万6521円)は消滅時効が成立していると主張し、その
時効を援用していることは記録上明らかであるため、この点について検討する。10
控訴人は、上記主張につき、時機に後れた攻撃防御方法であることや時効援用が
信義則に反することを主張するが、被控訴人の時効主張は、原審での審理経過及び
判断内容を踏まえてされたものであるところ、その主張内容からすると、その審理
のために訴訟の完結を遅延させることとなるものとは認められず、時機に後れたも
のとはいえないし、時効援用が信義則に反するものともいえない。
そして、本件訴訟提起時(令和3年10月14日)から遡って10年内に履行期
が到来した債権については、時効期間が経過していないものの、それ以前に履行期
が到来した債権については、本件訴提起時までに時効期間が経過し、かつ、権利行
使が可能であったといえ、時効中断等の事情もうかがわれないことからすると、平\n成23年10月14日以前に支払われた出演料に相当する未払部分6万9420円
(=41万6521円÷(1−0.1)÷7%×1.05×7%−41万6521
円)は消滅時効が完成し、被控訴人の時効の援用によって同額について時効により
消滅したものといえる。
(3) したがって、被控訴人は控訴人に対し、1万5177円(=8万4597円
(訂正の上引用する原判決第5の4(3))−6万9420円(上記(2)))及びこれに
対する履行期の到来後で控訴人の請求する令和3年11月16日から支払済みまで
民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
5 著作権侵害(当審における新たな請求原因の主張)について
控訴人は、当審における令和5年9月20日付け控訴理由書において、新たな請
求原因の追加的変更に当たる主張として、被控訴人の本件大会ビデオ・DVDの制
作・販売が控訴人の演武の著作権を侵害するとの主張を行ったが、被控訴人は、か
かる主張は原審において提出できたことは明らかであり、控訴審において更に審理
することは訴訟の完結を遅延することなるため、却下すべきと主張する。
上記請求原因の追加的変更については、原審においてその主張ができなったとい
うやむを得ない事情はうかがわれず、上記請求原因の追加的変更を許せば、控訴人
の演武の著作物性、著作権侵害の有無、仮に侵害が認められる場合においては損害
の有無等を新たに審理しなければならず、著しく訴訟手続を遅滞させることとなる
から,当該請求原因の追加的変更は不当であると認められる。
したがって、控訴人の著作権侵害に係る請求原因の追加的変更の申立ては、民訴\n法297条、143条1項及び4項に基づき、許さないのが相当である。
◆判決本文
原審はこちら
◆令和3(ワ)26704
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2024.02.16
令和2(ワ)7918 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 令和5年12月14日 大阪地方裁判所
被告は、ロゴ化された商標「Robot Shop」を用いてオンライン販売をしていました。商標「Robot Shop」(標準文字)の商標権者が、侵害訴訟を提起しました。裁判所は、差止と約1500万円の損害賠償を認めました。争点は、被告の行為は役務「ロボットの提示」か、26条該当性、禁反言などです。判決文の最後に被告標章、原告商標などが掲載されています。
証拠(乙1〜3)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件商標の出願に当
たり、「第7類 工業用ロボット、娯楽用ロボット、研究用ロボット、その他ロボッ
ト」、「第28類 ロボットおもちゃ並びにその部品」等、「第35類 工業用ロ
ボットの小売」等を指定商品及び指定役務としていたが、特許庁から、本件商標は、
「ロボットの小売店」程の意味合いを容易に認識させるものであるところ、ロボッ
トの販売及び修理等を取り扱う業界において、「Robot Shop」及び「ロ
ボットショップ」の文字が、ロボットを取扱商品とする小売店であることを示す語
として一般的に使用されている実情があることから、本件商標を第35類の工業用
ロボットの小売等の指定役務に使用することは、商標法3条1項3号に該当するこ
と等を理由とする拒絶理由通知書の送付を受け、前記商品及び役務を指定商品等か
ら除外して、本件商標の登録を受けたことが認められる。
被告は、被告各サイトにおいて、被告販売商品を販売しているところ、このよう
な本件商標の出願経過に照らすと、原告が、被告販売商品のうちロボットと同一又
は類似するものに対して本件商標権の侵害を主張することは、禁反言の原則(民法
1条2項)により許されないと解するのが相当である。
(2) ロボットの字義は、「複雑精巧な装置によって人間のように動く自動人形。
一般に、目的とする操作・作業を自動的に行うことのできる機械又は装置」(広辞
苑第七版)であるほか、証拠(甲24、25、乙31)及び弁論の全趣旨によれば、
日本産業規格(JIS規格)は、ロボットについて、二つ以上の軸についてプログ
ラムによって動作し、ある程度の自律性をもち、環境内で動作をして所期の作業を
実行する運動機構と定義し、産業用ロボットについて、産業オートメーション用途\nに用いるため、位置が固定又は移動し、3軸以上がプログラム可能で、自動制御さ\nれ、再プログラム可能な多用途マニピュレータ(互いに連結され相対的に回転又は\n直進運動する一連の部材で構成され、対象物をつかみ、動かすことを目的とした機\n械)と定義していることが認められる。これらの字義等に照らすと、所定の目的の
ために自律性をもって動作等をする機械又は装置は、少なくともロボットに類似す
るものであるといえる。
別紙「被告商品の指定商品該当性」の「被告サイトにおける説明」欄によれば、
非類似商品を除く被告商品のうち、「被告商品」欄の「2.無人機・ドローン」の
「(1)無人機・ドローンキット/ARF/RTF」、「(2)完成品(RTF)/半完
成品(ARF)」、「(3)無人機・ドローン 完成品(RTF)」、「(4)小型/超小
型無人機」、「(6)Vテール」、「(7)クワッドコプター」、「(8)ヘキサコプター/
オクタコプター」及び「(9)飛行機」(以下、これらを「ロボット類似品」と総称す
る。)は、所定の目的のために自律飛行が可能なものが含まれるものと認められ、\n少なくともロボットに類似するものといえる。一方、ロボット類似品を除くその余の被告商品は、いずれもロボット製作に使用する部品や汎用的な部品、製作機器等であって、ロボットに類似するとはいえない。
(3) 以上から、原告が、ロボット類似品に対して本件商標権の侵害を主張することは、禁反言の原則により許されない。
◆判決本文
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