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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

識別性

平成28(行ケ)10109  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年10月12日  知的財産高等裁判所

 欧文字「HOKOTABAUM」をゴジック体の太字で表した商標について、識別力なしと判断した審決が維持されました。
 そして,証拠(乙1〜14)によれば,菓子業界においては,取扱商品としてバ ウムクーヘンを表示するに際し,「URUOIBAUM」,「HITOTSUGI\nBAUM」,「PREMIUM BAUM」,「This IZU BAUM」,「KO YAMA´S BAUM」,「WHISKY BAUM」,「WHITE BAUM」, 「EUCALY BAUM」,「ねこバウム」,「TERABAUM」などと,「BA UM」との文字部分,又はその片仮名表記である「バウム」との文字部分と,その\n他の文字部分を組み合わせた標章を用いることが少なからずあると認められる。 そうすると,本願商標のうち「BAUM」の部分は,需要者又は取引者にバウム クーヘンを認識させるということができる。
ウ また,本願商標には,「HOKOTA」の欧文字が含まれている。 そして,「HOKOTA」の文字部分は,「ほこた」との称呼が自然に生じるとこ ろ,証拠(乙15〜17)によれば,「ほこた」との称呼を有する地方自治体であ る鉾田市が茨城県に所在することが認められる。また,証拠(乙18〜25)によ れば,鉾田市を表示するに際し,「HOKOTA」又は「Hokota」との欧文\n字を用いることが少なからずあると認められる。 そうすると,本願商標のうち「HOKOTA」の部分は,需要者又は取引者に茨 城県所在の鉾田市を認識させるということができる。 エ 以上のとおり,本願商標は,需要者又は取引者に,「BAUM」の部分は, バウムクーヘンを認識させ,「HOKOTA」の部分は,鉾田市を認識させるもの である。 そして,証拠(乙26〜33)によれば,菓子業界においては,取扱商品を表示\nするに際し,「遠野バウム」,「広島バウム」,「箕面バウム」,「琉球バウム」,「原宿バウム」,「御影バウム」と,その商品の生産又は販売がされる地域名と商品名であ る「バウム」を組み合わせた標章を用いることが少なからずあると認められる。 したがって,本願商標が指定商品に使用された場合,本願商標は,その全体から, 鉾田市を産地又は販売地とするバウムクーヘンという意味を有するものとして,需 要者又は取引者に認識されるものということができる。
(2) 普通に用いられる方法について
本願商標は,「HOKOTABAUM」という欧文字を,ゴジック体の太字で表\nし,さらに,全体的に若干丸みを帯びるようにデザイン化させている。 そして,商取引において標章のデザイン化は一般に広く行われるものであるほか, 証拠(乙5〜9,11)によれば,菓子業界においては,欧文字で表した標章を,\n全体的に若干丸みを帯びるようにデザイン化させることもあると認められる。 そうすると,本願商標は,特殊なものとはいえず,「HOKOTABAUM」の 欧文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものということができ\nる。
・・・・
原告は,鉾田市が本願商標の指定商品の産地又は販売地として,需要者又は取引 者に認識されているとはいえない旨主張する。 しかし,前記のとおり,商標法3条1項3号にいう商標に該当するというために は,必ずしも当該指定商品が当該商標の表示する土地において現実に生産され又は\n販売されていることを要せず,需要者又は取引者によって,当該指定商品が当該商 標の表示する土地において生産され又は販売されているであろうと一般に認識され\nることをもって足りるというべきである。 したがって,鉾田市が本願商標の指定商品の産地又は販売地として,需要者又は 取引者に認識されているか否かは,本願商標の商標法3条1項3号号該当性の判断 を左右するものではない。

◆判決本文

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平成27(行ケ)10232  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年4月14日  知的財産高等裁判所

 商標「メロンマルゴトクリームソーダ」が識別力なしとして拒絶されました。指定商品は32類「メロンを用いたクリームソーダ」です。
 前記(3)に認定した事実によれば,本件審決日当時,果実を利用した飲料 や菓子等の取引分野において,「まるごと」の語の前又は後に果実を表す語\nを結合した場合,あるいは「まるごと」の語を果実を形容する語として用い た場合には,「まるごと」の語は,当該果実の果肉や果汁が残さず用いられ ていることや,当該果実がその形状のまま用いられていること(当該果実が 切り分けられたりすることなく用いられる場合のほか,その外皮部分が容器 等として用いられる場合を含む。)を表す語として,一般に理解されていた\nことが認められる。 そして,本願指定商品である「メロンを用いたクリームソーダ」の取引者,\n需要者には,かかる飲食物の提供者である飲食店や,その提供を受ける一般 消費者等が含まれると考えられるところ,前記⑵のような本願商標を構成す\nる「メロン」,「まるごと」及び「クリームソーダ」の各語の意義に加え,\n「まるごと」の語が果実を表す語と結合した場合や当該果実を形容する語と\nして用いられた場合の,上記のとおりの一般的な理解の内容に照らすと,本 願商標を構成する「メロンまるごとクリームソ\ーダ」の語は,本件審決日当 時,かかる取引者,需要者によって,「メロンの果肉や果汁が残さず用いら れたアイスクリームソーダ」や「メロンの外皮を容器としてそのまま用いた\nアイスクリームソーダ」を意味するものとして,一般に認識されるものであ\nったと認められる。 そうすると,本願商標は,本件審決日当時,本願指定商品である「メロン を用いたクリームソーダ」に使用されたときは,当該「メロンを用いたクリ\nームソーダ」が「メロンの果肉や果汁が残さず用いられたアイスクリームソ\ ーダ」や「メロンの外皮を容器としてそのまま用いたアイスクリームソー\nダ」であるという,本願指定商品の品質を表示するものとして,取引者,需\n要者によって一般に認識されるものであり,かつ,取引に際し必要適切な表\n示として何人もその使用を欲するものであったと認められるものであるから, 特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,自他商 品識別力を欠くものというべきである。 加えて,本願商標は,「メロンまるごとクリームソーダ」の文字を肉太で\nやや縦長のポップ調の書体で表してなるものであるが,この書体自体は既存\nのものであるし,文字の太さや縦長の形状であることについても,それ自体 はありふれたものの域を出るものではないから,「メロンまるごとクリーム ソーダ」の文字を普通に用いられる方法で表\示する標章のみからなるもので あって,特別に自他商品識別力を有するような特殊な構成を有しているとも\n認められない。 したがって,本願商標は,商標法3条1項3号に該当するものと認められ る。

◆判決本文

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平成27(行ケ)10217  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年3月31日  知的財産高等裁判所

 地域団体商標「小鯛ささ漬」は識別力なしとした審決が維持されました。
 「小鯛ささ漬」の語は,一般的な辞典には固有名詞等として登載されている ものとは認められない(乙3,弁論の全趣旨)。インターネット上では,「小鯛ささ 漬」の語は,原告の構成員が販売する商品の商品名として使用されているほか(甲\n12,乙41),「小鯛ささ漬」,「小鯛笹漬」,「小鯛の笹漬」,「笹漬小鯛」の語については,少なくとも,以下のような使用例がある。 (ア) 兵庫県所在の「C商店」のウェブサイトにおいて,「選りすぐりの逸品」の 項に,商品名「小鯛の笹漬」が,「あじの笹漬」「さよりの笹漬」と並んで,笹の葉 の上に魚の切り身を載せた写真とともに表示され,「C商店の名でご支持いただいて\nいる小鯛の笹漬」,「水揚げされたばかりの小鯛などの魚を新鮮さそのままに素早く 加工。昔ながらの製法で作る笹漬は全て手作業です」との説明文が掲載されている (乙11)。
・・・
オ 上記アないしウによれば,小さな鯛を意味する「小鯛」と,魚の一般的調理 法を示す語である「ささ漬」を組み合わせた「小鯛ささ漬」は,一般的に,「小さな 鯛を三枚におろし,酢・塩でしめ,笹の葉と一緒に漬けたもの」の意味合いを有す る複合語として,容易に理解されるものであるといえる。上記エのとおり,「小鯛さ さ漬」と同一又は実質的に同一の語が,各地方で生産,販売される上記調理法によ って調理された小鯛を示す名称として一般的に使用されていることも,同語がその ような意味合いに理解されることを裏付けるものである。
(2) そうすると,本願商標を,その指定商品である「レンコダイのささ漬」に使 用する場合には,これに接する取引者・需要者は,一般的に,「小さな鯛を三枚にお ろし,酢・塩でしめ,笹の葉と一緒に漬けたもの。」という原材料,生産方法を記述 したものとして理解,認識するといえる。 したがって,本願商標は,その指定商品の原材料,生産方法を普通に用いられる 方法で表示する標章のみからなるものであるから,法3条1項3号に該当する。\n
・・・
また,確かに,「小鯛のささ漬け」というものは,福井県若狭地方の伝統料理, 名産品の一つであることが認められる(甲3,7,8,乙53。なお,これらの文 献では,名産品としては,「小鯛ささ漬」ではなく,「小鯛のささ漬」〔甲3〕,「小鯛のささ漬け」〔甲7,乙53〕という表示が用いられているものが多い。)。しかし,\n「小鯛のささ漬け」というものが若狭地方の名産品,伝統料理であり,そのような 認識を取引者,需要者が有するとしても,前記1(1)のとおり,「小鯛ささ漬」の語 が,魚の種類と,魚についての一般的な調理法を示す「ささ漬」という一般的な語 を組み合わせたものにすぎず,また,若狭地方以外で生産,販売されている同調理 法によって調理された小鯛についても「小鯛ささ漬」,「小鯛笹漬」,「小鯛の笹漬」,「笹漬小鯛」という名称が一般的に使用されていることからすれば,「小鯛ささ漬」 の語が直ちに「福井県若狭地方の名産品」のみを意味するものと取引者,需要者が 理解するとは認められず,本願商標が,指定商品の原材料,生産方法を普通に用い られる方法で表示する標章のみからなるものであることを否定する理由とならない。\nしたがって,原告の主張は理由がない。
(2)ア 原告は,ある商標がある特定地域の名産であって,他に同じものを名産と する地域がなく,かつ,当該名産の名称が当該地域で特定の事業者又は団体構成員\nによって実質的に独占されているのであれば,その名称は「名産品であることによ って,その名称が自他商品の識別標識」となり得る,審決のような理由で「小鯛さ さ漬」のような地域名産品が商標法による保護を受けることができないとすれば, 商標法の趣旨に反するなどと主張する。 しかし,原告の主張するとおりの事実があれば,当該商標が自他商品の識別標識 となり得るとしても,それは,法3条2項の該当性の問題と解すべきことは,前記 (1)アのとおりである。そして,一般に,地域名産品の名称については,同項による 商標登録のほか,同法7条の2による地域団体商標の商標登録が考えられるのであ って,本願商標が法3条1項3号に該当するからといって,商標法の趣旨に反する などということはできない(なお,本件においては,原告は,法3条2項に基づく 主張をしないことを明らかにしていることは前記第2の4のとおりであり,原告の 構成員による本願商標の使用実績等についての主張立証もしようとしていない。)。\n

◆判決本文

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