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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商3条1項各号

令和1(行ケ)10086  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年11月26日  知的財産高等裁判所

 立体商標について、識別力無しとの無効審判請求について、知財高裁(4部)は無効理由なしとした審決を維持しました。

 前記アの認定事実を総合すると,ヘニングセンがデザインした本件商品の立体的形状は,被告による本件商品の販売が日本で開始された1976年(昭和51年)当時,独自の特徴を有しており,しかも,本件商品が上記販売開始後本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において継続して販売され,この間本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰り返し行われた結果,本件商標の登録出願時までには,本件商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具,インテリアの取引業者及び照明器具,インテリアに関心のある一般消費者の間で被告が製造販売するランプシェードとして広く知られるようになり,本件商品の立体的形状は,周知著名となり,自他商品識別機能ないし自他商品識別力を獲得するに至ったものと認められる。そうすると,本件商品の立体的形状である本件商標が本件商品に長年使用された結果,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時(登録審決日・平成27年12月15日)において,被告の業務に係る商品であることを表\示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから,本件商標は,商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するものと認められる。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,本件商品(「PH5」)は,デンマークのデザイナーであるヘニングセンがデザインした商品として,宣伝され,評価され,販売されてきたものであるから,PH5の立体的形状である本件商標は,ヘニングセンがデザインしたランプシェードの立体的形状として周知であるにとどまり,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,周知であるということはできない旨主張する。\nしかしながら,前記(2)イ認定のとおり,被告は1976年(昭和51年)から本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において本件商品を継続して販売し,その間,本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰り返し行われてきたことに照らすと,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから,原告の上記主張は採用することができない。\n
イ 原告は,PH5に係る商標権,著作権等の知的財産権は,ヘニングセンに帰属するから,被告は,ヘニングセン及びその相続人から,商標権の譲渡を受け,又は使用許諾を受けていなければ,本件商標の商標登録を受けることはできない,PH5のデザインは,外国において商標登録されておらず,知的財産権の権利者が死亡し,パブリックドメインとなっているから,商標登録をさせてはならず,被告の本件商標の商標登録は無効とすべ きである旨主張する。しかしながら,商標法3条2項は,同条1項3号から5号までに該当する商標であっても,「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については,商標登録を受けることができる旨を定めたものであるところ,原告の上記主張は,同条2項の文言の解釈に基づかないものであるから,その主張自体理由がないというべきである。

◆判決本文

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平成31(行ケ)10004  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年7月3日  知的財産高等裁判所(1部)

 アルファベット2文字「EQ」について商3条1項5号には該当するとしたものの、同2項が適用されて、識別力ありとして、識別力無しとした審決を取り消しました。出願人は「メルセデス・ベンツ」を販売しているダイムラーです。

 前記(2)認定のとおり,本願商標は,世界有数の自動車メーカーである原告が, 電動車ブランドを示す商標として採択したものであること,原告は,モーターショ ーにおいて,「EQ」を新しい電動車ブランドとして公表するとともに,「EQ」ブラ\nンドのコンセプトカーを発表し,各モーターショーの展示内容等は多くの自動車専\n門雑誌や自動車関連情報のウェブサイトにおいて紹介され,雑誌の発行部数は,多 いものでは23万部に達していること,原告は,原告ウェブサイトや顧客向け定期 機関誌の記事,全国紙での新聞広告等によって,原告の電動車ブランド「EQ」につ いて宣伝を行ったことが認められる。 また,上記の雑誌等の記事の中には,原告の「EQ」ブランドの紹介に特化したも のもあること(甲29の6・10,35〜37),原告の顧客向け定期機関誌の発行 部数は,平成30年度には年間17万部に達していることも勘案するなら,著名な 自動車メーカーである原告の発表する電動車やそのブランド名に注目する取引者,\n需要者が類型的に存在することが認められる。 そして,広告宣伝の具体的態様も,前記のとおり,原告ウェブサイトやブックレ ット等では,「メルセデス・ベンツは約1年前のパリモーターショーで『コンセプト EQ』を紹介すると同時に,『EQ』という新ブランドを立ち上げることを発表した」\n(甲9の1),「メルセデスの新ブランド『EQ』が目指す,クルマと人との未来」 (甲9の2),「新たな電気自動車ブランドとして“Electric Intel ligence”を示す『EQ』が誕生します」(甲48)などと宣伝され,雑誌や ウェブサイトの記事等においても,「電気駆動のモデルに特化したメルセデス・ベン ツのサブブランド『EQ』」(甲29の9),「『EQ』は,メルセデスベンツが2016年に立ち上げた電動パワートレイン車に特化した新ブランド」(甲31),「EQブ ランド」(甲4,29の10・21,31,40等),などと紹介されており,本願商 標が原告のブランドの名称であることが強調されている。 以上によれば,本願商標については,著名な自動車メーカーである原告の発表す\nる電動車やそのブランド名に注目する者を含む,自動車に関心を持つ取引者,需要 者に対し,これが原告の新しい電動車ブランドであることを印象付ける形で,集中 的に広告宣伝が行われたということができる。加えて,本願商標は,本件審決時ま でに,出願国である英国及び欧州にて登録され,国際登録出願に基づく領域指定国 7か国にて保護が認容されており,世界的に周知されるに至っていたと認められる ことも勘案するなら,本願商標についての広告宣伝期間が,パリモーターショー2 016で初めて公表された平成28年9月29日から本件審決時(平成30年9月\n7日)までの約2年間と比較的短いことや,原告が平成29年から販売している「E Q POWER」との名称のプラグインハイブリッド車の販売台数が多いとはいえ ないこと等の事情を考慮しても,本願商標は,原告の電動車ブランドを表す商標と\nして,取引者,需要者に,本願商標から原告との関連を認識することができる程度 に周知されていたものと認められる。
(4) 被告の主張について
ア 被告は,本願商標は,電動自動車の抽象的なブランド名ではあるが,単独で 車名として採択されておらず,販売実績もない上,原告の広告宣伝活動が行われた のはわずか2年間で,一般の需要者に周知されているというには十分とはいえない\n旨主張する。 しかし,商標が,単独で車名として採択されていないとしても,原告が電動車の ブランド名として本願商標を採択し,商品のシリーズ名やブランド名として使用す るに先立って,強力な広告宣伝を行ったことにより,当該商標が,需要者にブラン ドとして認識され,識別力を獲得することはあるというべきである。 また,本願商標についての広告宣伝期間は確かに約2年間であるが,期間が短く ても,集中的に広告宣伝がされることにより,識別力を獲得できる場合はある。そ して,著名な自動車メーカーである原告の発表する電動車やそのブランド名に注目\nする取引者,需要者が類型的に存在すると認められることは前記のとおりであり, 本願商標を原告の業務に係る標章であると認識している取引者,需要者が相当程度 存在するといえるから,本願商標は,広く知られるに至ったと認めるのが相当であ る。
イ 被告は,「E」(e)及び「Q」の欧文字を組み合わせた欧文字2字は,本願の 指定商品に含まれる自動車及び二輪自動車と関連する商品分野において,原告以外 の者によっても採択,採用されているから,本件指定商品の分野において,本願商 標の原告による独占使用が事実上容認されているとまではいえないと主張する。 確かに,平成24年9月26日以前にトヨタ自動車の電動自動車「eQ」が公表\nされたことが認められる(乙7)。しかし,同標章が本件審決時において使用されて いることを認めるに足りる証拠はなく,過去に電動自動車の商品名として使用され た標章があることをもって,原告による独占使用の容認が否定されるとはいえない。 また,現代自動車の「ジェネシス」ブランドの超大型ラグジュアリーセダン「EQ 900リムジンモデル」(乙8),鄭州日産のライトトラック「EQ1060」(乙9),Laufennのプレミアム超高性能夏タイヤ「S Fit EQ」(乙12),ア ルパインのカーナビ「EX11Z−EQ」(乙13),TOWNIEの電気自転車「7 DEQ」,「3iEQ」(乙14),ALIBIの自転車「ALIBI SPORT E Q」(乙15)は,いずれも「EQ」の欧文字と他の欧文字や数字等が組み合わされ た標章であって,品番や型式を示すものと解され,英国日産自動車製造の小型乗用 車「プリメーラ」の開発コードである「EQ」(乙10)は,開発コードであるから, いずれも何人かの出所を表すものとはいえない。\nしたがって,これらの他者による「EQ」の使用を考慮しても,本願商標に登録商 標としての保護を及ぼすことを否定すべきとはいえない。
ウ よって,被告の主張はいずれも採用できない。
3 結論
以上のとおり,本願商標は,商標法3条1項5号の極めて簡単で,かつ,ありふれ た商標に該当するものの,同条2項の使用をされた結果需要者が原告の業務に係る 商品であることを認識することができるものに該当するから,商標登録をすること ができないとした本件審決には誤りがある。

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平成30(行ケ)10176  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年5月30日  知的財産高等裁判所

 「再起動器を含む電源制御装置」を含む商標(商標「リブーター」)について、審決は無効理由なしと判断しましたが、知財高裁(2部)は、再起動機能有するものは識別力無し、それ以外は品質誤認(4条1項16号違反)と判断しました。
審決は、”「リブーター」は,特定の商品の名称を表すものとして一般に広く使用されているといった事実は認められないから,「リブーター」の文字が,本件商標の指定商品を取り扱う業界において,商品の品質等を具体的に表\すものとして取引上普通に使用されていると認めることはできない”と判断していました。

 前記1のとおり,「リブート」は,「reboot」という英語を片仮名で 表した語であるところ,「reboot」は,再起動するという意味の動詞であり(当\n裁判所に顕著な事実),また,「リブート」は,コンピュータなどを再起動すること を意味する語として,各種の用語辞典(用語事典)に掲載されており,さらに,多 くの雑誌やウェブサイト,さらには公開特許公報にも,上記の意味で使用されてい ることからすると,「リブート」という語は,再起動することを意味する普通名称で あると認められる。そして,前記1(4)で認定した事実からすると,情報・通信の技 術分野では,英語を片仮名で表した言葉が非常に多く存在すること,一般的に,英\n語の動詞の語尾に「er」,「or」等を付することにより,当該動詞が表す動作を\n行う装置等を意味する名詞となり,「エディタ」,「エンコーダ」,「カウンタ」,「デコーダ」,「プリンタ」,「プロセッサ」等,動詞を名詞化した語も多数存在することが認められるから,情報・通信の技術分野に属する者は,「リブーター」から,「re boot」の語尾に「er」を付した語である「rebooter」を容易に思い 浮かべるものと認められる。
さらに,前記1(2),(3)で認定した各事実からすると,コンピュータやルーター 等の機器を再起動する装置の需要があり,実際にそのような装置が販売されている ことが認められるところ,前記1(2)のとおり,このような再起動装置を「リブータ ー」又は「リブータ」と呼ぶ例があることが認められる。これに対し,本件証拠上, 「リブーター」の語が,他の意味を有するものとして使用されているという事実は 認められない。なお,前記1(4)ウ,エで認定したウェブサイトの記載によると,情報・通信の技術分野においては,英語を片仮名表記した場合は,語尾の長音符号を省く慣例があるものと認められるから,語尾の長音符号を有するか否かで別の語になるというこ\nとはできず,上記の「リブータ」も「リブーター」も同一の語であるということが できる。
以上からすると,情報・通信の技術分野においては,通常,「rebooter」 及びこれを片仮名で表した「リブーター」は,再起動をする装置と理解されるもの\nというべきである。 したがって,「リブーター」は,再起動装置の品質,用途を普通に用いられる方法 で表示する語と認められるから,指定商品が再起動装置又は再起動機能\を有する電 源制御装置である場合は,本件商標は,商標法3条1項3号の商標に該当するとい うべきである。 一方,再起動機能を有さない電源制御装置が指定商品である場合は,本件商標は,\n同号の商標には該当しない。
(2)ア これに対し,被告は,「チーター」を,「cheat」に「er」を加え た言葉とはいえず,これと同様に,「リブーター」を,「reboot」に「er」 を加えた言葉と解することはできないと主張する。 しかし,動物である「チーター」の英語は,「cheetah」であるから,語尾 に「er」を加えた言葉ということはできない。 したがって,被告の上記主張は理由がない。
イ また,被告は,甲4文献及び甲6サイトでは,リブーターの機能等の説\n明もされており,このことは,リブーターという語のみからは,その機能等が理解\nできないことを意味する旨の主張をする。 しかし,前記(1)で判示したとおり,情報・通信の技術分野においては,リブータ ーという語は,再起動する機能を有する装置と理解されるのであり,このことは,\n甲4文献や甲6サイトの記載によって左右されないというべきであるから,被告の 上記主張は理由がない。
 ウ なお,被告は,甲38文献に記載された「リブーター」は何を意味する か理解できないと主張するが,前記1(2)カで認定した甲38文献の記載からすると, 同文献におけるリブーターは,再起動の機能を有する装置であると理解でき,少な\nくとも,再起動の機能を有さない他の装置を意味するものとは認識できないから,\n「リブーター」が再起動装置とは異なる別の物を意味する語として使用されている ということはない。
・・・
(1) 前記2のとおり,情報・通信の技術分野においては,通常,「reboot er」及びこれを片仮名で表した「リブーター」は,再起動をする装置と理解され\nるところ,再起動機能を有さない電源制御装置に,「リブーター」という語を使用す\nると,需要者,取引者は,当該電源制御装置が再起動機能を有しているものと誤解\nするおそれがあるというべきである。 したがって,指定商品が再起動機能を有さない電源制御装置である場合は,本件\n商標は,商品の品質の誤認を生ずるおそれがあり,商標法4条1項16号の商標に 該当するというべきである。

本件商標は以下の通り
商標 リブーター(標準文字)
登録番号 第5590686号
出願日 平成25年2月8日
登録日 平成25年6月14日
指定商品
第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電気通信機械器具,測定機械器具,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電子応用機械器具及びその部品」

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平成30(ワ)4954  損害賠償請求事件  商標権  民事訴訟 平成31年3月14日  大阪地方裁判所

 図形+「TeaCoffee」の結合商標についての商標権侵害事件です。被告は、TeaCoffeeと文字部分のみ使用していました。大阪地裁は、文字部分だけでは識別力無しとして、非類似と判断しました。

 原告商標の文字部分,すなわち「TeaCoffee」の語は,頭文字の「T」の文字 だけでなく,「C」の文字も大文字で表記されており(甲2),「Tea」は「茶,紅 茶」を,「Coffee」は「コーヒー」を意味する英単語としていずれも日本社会にお いてよく知られていることに照らせば,取引者,需要者は,これを「Tea」と 「Coffee」の2語を接続した語と認識すると認められる。
b ところで,前記(ア)aで認定した別紙「複数の原材料を組み合わせた飲料の 商品名等一覧表」のとおり,複数の原材料を組み合わせた飲料の商品名等について\nは,原材料を構成する物の名前を接続した語とする例が数多く見られる。そして,\nその中には,「ミルクコーヒー」,「Cafe au Lait」,「ミルクティー」,「レモ ンティー」等のように,既に一つの日本語として定着している語がある。また,特 定の業者ではなく缶飲料やペットボトル飲料を販売する大手各社が,紅茶とその他 の原材料を組み合わせた飲料として「アップルティー」,「梅ティー」,「レッド グレープティー」等,抹茶と牛乳を組み合わせた飲料として「抹茶ラテ」,ほうじ 茶と牛乳を組み合わせた飲料として「ほうじ茶ラテ」等,その他として「ゆずはち みつ」,「はちみつレモン」等のように,様々な組合せの語を使用している。また, 飲料の名前から生じる認識を検討するに当たっては,このような大手各社が販売す る飲料だけでなく,「最新アイスドリンク」(乙32,33),「New Arrange Drink」(乙33)などとして,実際に創作的か否かはともかく,創作的な飲料を 提供しようとしていることがうかがわれるカフェのメニューで使用されている例も 参考になり得るところ,同別紙のとおり,「ハニーレモンティーソーダ」,「ピー\nチゼリーティ−」,「アイスマンゴーティー」があるほか,「抹茶ミルク」,「ゆ ず緑茶」,「ほうじ茶ジンジャエール」,「ソイマンゴー」,「バナナ酢ミルク」\n等のように,メニュー名自体は,原材料を構成する物の名前を単に接続した語が使\n用されている。 これらの多数の例において,各原材料の語自体は,食用又は飲用に供される物の 名前として一般に認識されている語であるから,上記の各商品名等に接した取引者, 需要者は,それらの語の間に,「と」,「+」,「×」などといった,ある物にあ る物を加えるとか,ある物とある物を掛け合わせるといった際に用いられる文字や 記号が使用されていなくても,それらの飲料がそれらの原材料を組み合わせた飲料 であると認識すると推認される。
c 以上は,飲料一般についてのものであるが,茶(日本茶,紅茶)とコーヒー を組み合わせた飲料等については,別紙「茶とコーヒーを組み合わせた飲料等の販 売開始時期や商品名等一覧表」記載のとおり,原告商品が販売される以前からその\nような商品やメニューが少なからず存在し,その中には,「お茶コーヒー」(同別 紙の番号1),「抹茶カフェオレ」(同3),「コーヒーほうじ茶」(同6。ティ ーバッグの形で販売されていた〔乙17〕。),「グリーンティーコーヒー」(同 9),「ほうじ茶カプチーノ〜黒蜜添え〜」(同10),「抹茶カプチーノ」(同 13),「ほうじ茶カプチーノ」(同13),「ほうじ茶珈琲」(同18。ティー バッグの形で販売されていた〔乙16〕。)という,茶を意味する語とコーヒー等 を意味する語を接続しただけの商品名等のものがあったほか,料理レシピとしても, 「緑茶コーヒー」(同14,17)という,茶を意味する語とコーヒーを意味する 語を接続しただけの名前のものがあったと認められる。しかも,このような茶とコ ーヒーを組み合わせた飲料等は,1)大手缶コーヒー業者である日本コカ・コーラ社 (同5,8)やJT社(同7),2)大手コンビニエンスストアチェーンであるファ ミリーマート(同9),3)コーヒー等のドリップバッグ商品の通信販売業者である ブルックス(同12),4)カフェ店であるカフェ・ド・クリエ(同10)という, 飲料等の販売形態を細分化して見れば業界を異にする,それぞれの業界において著 名な業者等から,販売されていただけでなく,日本コカ・コーラ社からは第1弾商 品が販売された約6か月後に第2弾商品を販売されるほどのものであった。 これらからすると,「TeaCoffee」との表記に接した需要者,取引者が,それが\n複数の原材料を組み合わせた他の飲料の商品名等と同様に,「Tea」と「Coffee」 を組み合わせた飲料等を意味すると認識することに妨げはなく,そのように認識す ると認めるのが相当である。
(ウ) 原告の主張について
a 原告は,お茶入りコーヒーについて「TeaCoffee」というネーミングはされ ておらず,取引者,需要者に「Tea」のような「Coffee」であるのか,「Tea」と 「Coffee」を融合させたものであるのかなどという想像を膨らませるものであるか ら,自他商品識別力を有すると主張する。 確かに,原告商品が販売される前から存在した茶とコーヒーを組み合わせた飲料 等の販売等に当たっては,茶とコーヒーを組み合わせることが新しい試みであると いう趣旨の宣伝文句が常套文句になっており,被告商品の販売が開始される際にも 「コーヒーと茶葉の新しい組み合わせ!」などという宣伝文句を用いられているこ と(甲5)に照らせば,被告が被告商品の販売を開始するまでの時点(平成30年 4月)においても,茶とコーヒーを組み合わせた飲料等は定番のものになっていな かったと認められる。また,本件において,原告商品が発売されるまでに,茶とコ ーヒーを組み合わせた飲料等について「TeaCoffee」という名前が使用された例が あるとは認められない。したがって,「TeaCoffee」という名前が,茶とコ 料名を接続した商品名等とすることが一般によく見られるものであることからする と,取引者,需要者がそのような商品名等に接した場合には,そのような原材料の 組合せが飲料等として想定し得ないものでない限り,その飲料等がそれらの原材料 を組み合わせたものであると認識することは自然なことである。そして,茶とコー ヒーの組合せが飲料等として想定し得ないものとはいえない上,それらを組み合わ せた飲料等において,その組合せの新規さをうたいつつ,その商品名等として 「茶」を表す語と「コーヒー」を表\す語を接続したものが多数見られてきたのも, その商品名等によってその飲料等がそれらの原材料を組み合わせたものであると認 識されることを多くの業者が前提としてきたことによるものと解される。 したがって,お茶入りコーヒーのネーミングとして「TeaCoffee」が一般的でな いという原告の主張を前提としても,「TeaCoffee」との語は,原告商標の指定商 品について使用するときには,商品の品質(内容)又は原材料を直接的に示すにす ぎないものとして,自他商品識別力を有しないと認めるのが相当である。
・・・・
(d) このように原告商標の文字部分(「TeaCoffee」)は,それと同じ称呼がさ れ得る「teacoffee」,「TEACOFFEE」及び「ティーコーヒー」を含めて見ても,そ もそも使用されている頻度が低い上に,使用されても,自他商品識別標識であると 認識され得る別の表示(京茶珈琲)とともに使用されていたり,記述的表\示である と認識され得ることにつながりかねない表示(TEA×COFFEE)とともに使用されて いたりするなど,自他商品識別標識であるとは認識されにくい形で使用されてきた ことが多いといえる。 以上の点を踏まえると,「TeaCoffee」の語が,原告による原告商品の販売に伴 って原告商品を指すものとして自他商品識別力を獲得するに至ったとは認められな い。
ウ 以上からすると,「TeaCoffee」の語は,被告が使用する標章の使用時点に おいて,原告商標の指定商品である「茶,コーヒー,茶入りコーヒー,コーヒー 豆」に使用されるときには,茶とコーヒーを組み合わせた飲料等の商品の品質(内 容)又はその原材料を記述的に表示しているものとして,取引者,需要者によって\n一般に認識されるものであって,自他商品識別力を欠くものというべきである。し たがって,原告商標の構成中,「TeaCoffee」の文字部分については,原告商標の 要部ということはできないから,原告商標については,「TeaCoffee」の文字部分 と図形部分から成る全体の構成が一体となって,初めて自他商品識別力を有するに\n至っているものというべきである。

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平成30(行ケ)10143  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成31年2月27日  知的財産高等裁判所(1部)

 商標「LOG」について、審決は識別力ありと認定しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。指定役務は「建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介」及び第37類「建設工事,建築工事に関する助言」です。

 商標登録出願に係る商標が商標法3条1項3号にいう「役務の…質,提供の用に 供する物…を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当する\nというためには,需要者又は取引者によって,当該商標が,当該指定役務の質又は 提供の用に供する物を表示するものであろうと一般に認識され得ることをもって足\nりるというべきである。そこで,本件商標の査定時において,本件商標が,本件役務の需要者又は取引者によって,本件役務の質又は提供の用に供する物を表示するものであろうと一般に認識され得るか否かについて検討する。\n
(2) 「LOG」の使用状況
ア 役務の主体を表示するものとしての使用\n
証拠(各項末尾掲載のもの)によれば,本件商標の査定日以前において,次のと おり,役務を提供する主体の名称の一部に,「LOG」が使用されていたことが認 められる。
・・・
イ 役務の客体を表示するものとしての使用\n証拠(各項末尾掲載のもの)によれば,本件商標の査定日以前において,次のと おり,役務の提供の用に供する物の名称の一部に,「LOG」が使用されていたこ とが認められる。
・・・・
オ 以上によれば,本件役務に関する分野では,本件商標の査定日以前において, 役務の提供の用に供する物の内容について,それが丸太で構成される建物等である\nことを表示するために,その役務の主体や客体の名称の一部に,「LOG」と社会\n通念上同一と認められる「Log」「log」が数多く使用されるとともに,丸太 で構成される建物等に関するものであることを表\示するために,「Log」が他の 単語と組み合わさって使用されていたということができる。
・・・・
ウ 「丸太」を想起する過程
被告は,「LOG」が「丸太」の意味を認識させるのは,「ハウス」といった特定 の言葉と結合し,あるいは関連付けられた場合のみであり,「LOG」から「丸太」 の意味が一義的に想起されるものではないなどと主張する。 しかし,本件役務の提供の用に供する物は建物それ自体であり,かつ,前記(2) ないし(4)で認定したとおり,本件役務の分野において,「LOG」,「ログ」などが, 丸太で構成される建物等と関連付けられて使用されている事実は多数に及ぶもので\nある。そうすると,「LOG」が建物に関する単語と結合し,又は建物に関連付けられているか否かにかかわらず,「LOG」自体が,本件役務によって提供される 建物の種別について,丸太で構成される建物等という一定の内容を示しているであ\nろうと需要者又は取引者に明らかに認識させるというべきである。たとえ,「LO G」が,建物に関する単語と結合し,又は建物に関連付けられることで,丸太で構\n成される建物等を想起させることがあったとしても,「LOG」のみからも,本件 役務によって提供される建物の種別について,本件役務の需要者又は取引者に一定 の内容を想起させるものである。 したがって,「LOG」から「丸太」の意味が一義的に想起されないなどの被告 の前記主張は,結論に影響するものではない。
(7)小括
このように,本件商標の査定時において,「LOG」は,本件役務の提供の用に 供する建物の種別について,ログハウス,ログキャビンなどの丸太で構成される建\n物又は丸太風の壁材で構成される建物という一定の内容であることを,本件役務の\n需要者又は取引者に明らかに認識させるものということができる。したがって,本 件商標は,その査定時において,本件役務の需要者又は取引者によって,本件役務 の質又は提供の用に供する物を表示するものであろうと一般に認識され得る。\nよって,「LOG」は本件役務の質又は提供の用に供する物を普通に用いられる 方法で表示するものというべきであるから,「LOG」のみからなる本件商標は,\n本件役務との関係において,商標法3条1項3号に該当するものと認められる。

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