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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

商3条1項各号

令和6(行ケ)10038  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和6年12月19日  知的財産高等裁判所

商標「新生甘酒」(標準文字)、指定商品は、30類「甘酒、甘酒のもと、甘酒を使用した菓子及びパン、甘酒を加味した茶・・・」について、識別力無しとしては審決が維持されました。理由は、「新生」「甘酒」、「新」「生甘酒」のいずれで分けても、いずれも識別力なしとのことです。

原告は、本願商標は「新生」の文字と「甘酒」の文字を組み合わせたも のであり、需要者等もそのように理解する旨主張する。 そこで検討するに、辞書によれば、「新生」の語は「新しく生まれ出るこ と」などを意味する語であり、「新生」の語の後に別の語を組み合わせた「新 生児」、「新生代」などの語が掲載されている(広辞苑第七版。乙82)。ま た、「甘酒」の語は「米の飯を米麹で糖化した甘い飲料」を意味する語であ る(広辞苑第七版。乙3)。
他方、辞書によれば、「新」は、「あたらしいこと」、「あたらしくするこ と」、「今年の新たな収穫・製造」などを意味する語であり、「新」の語の後 に別の語を組み合わせた語の例として「新発売」が挙げられている(広辞 苑第七版。乙1)。また、「生甘酒」の語は、加熱処理せずに製造した甘酒 を示す語として用いられている取引の実情があると認められる(乙4〜2 9、後記4(1)ア)。
以上によれば、本願商標に接した需要者等は、本願商標について、「新生」 の文字と「甘酒」の文字を組み合わせた商標であると理解する場合と、「新」 の文字と「生甘酒」の文字を組み合わせた商標であると理解する場合と、 いずれもあり得るといえ、需要者等がどちらか一方の理解のみしかしない とは認められない。
イ 原告は、前記第3〔原告の主張〕1のとおり、本願の指定商品の需要者 等は、本願商標を「新」の文字と「生甘酒」の文字を結合させた商標であ ると認識することはない旨主張する。 しかし、「生甘酒」の語が「加熱処理せずに製造した甘酒」を示す語とし て用いられている取引の実情があり、かつ、「新」の後に別の語を付した語 を用いることがあって、辞書にもその例が掲載されていることからすれば、 「新生」が辞書に掲載される語として存在するとしても、本願商標が「新」 の文字と「生甘酒」の文字を組み合わせた商標であると認識されることは 否定されない。
また、「生甘酒」の語が指し示す内容が「加熱処理せずに製造した甘酒」 であることからすると、これに「あたらしいこと」、「あたらしくすること」、 「今年の新たな収穫・製造」を意味する「新」の文字を組み合わせること が考え難いとはいえない。
原告が「新生」シリーズと称する商品を販売しているとしても、本願の 指定商品の需要者等の間で、「新生」の語が、原告の販売する商品の表示として広く認識されていると認めるに足りる証拠はなく、本願の指定商品の\n需要者等が、本願商標は原告の販売する「新生」シリーズの商品の名称と して用いられているものであると当然に認識しているとは認められない から、本願商標が上記「新生」シリーズに属する商品の名称として用いら れている事実をもって、需要者等が本願商標を「新」の文字と「生甘酒」 の文字を結合させた商標であると認識しないとはいえない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ 以上によれば、本願商標が商標法3条1項3号に該当するか否かを検討 するに当たっては、本願商標が「新生」の文字と「甘酒」の文字を組み合 わせた商標であると解した場合と、本願商標が「新」の文字と「生甘酒」 の文字を組み合わせた商標であると解した場合との両方について、同号該 当性を検討すべきといえる。
3 本願商標を「新生」の文字と「甘酒」の文字を組み合わせた商標であると解 した場合
(1) 本願商標及び本願の指定商品に関する取引の実情 各項末に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件審決がされた令和 6年3月14日の時点での、本願の指定商品と関連する食品業界における「新生」の語に関する取引の実情として、次の事実が認められる。
・・・
前記(1)に挙げた各事実によれば、本件審決がされた当時、飲料の名称の前 に「新生」の文字を付して、当該飲料が「生まれ変わった」ものであること、 すなわちその原材料、製法等を従前と変えて内容を新しくしたものであるこ とを示す表現として用いる取引の実情があったと認められる。そうすると、本願の指定商品の需要者等は、「新生甘酒」の語が「新生」の\n文字と「甘酒」の文字を組み合わせたものであると理解した場合、これが本 願商標の指定商品に使用されたときには、原材料、製法等を従前と変えて内 容を新しくした甘酒を一般的に指す名称であると認識すると認められる。そ して、「新生」も「甘酒」も、辞書に掲載された一般的な語であり、これらを 組み合わせた「新生甘酒」という語は、原材料、製法等を従前と変えて内容 を新しくした甘酒を表す場合に、普通に使われ得るものと認められ、使用をされた結果需要者等が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識す\nることができるものについて商標登録を受けることができる場合(商標法3 条2項)のほかは、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないもの と認められる。(なお、前記2(2)イで述べたとおり、本願の指定商品の需要者 等の間で、「新生」の語が、原告の販売する商品の表示として広く認識されていると認めるに足りる証拠はなく、また、「新生甘酒」という本願商標が、使\n用をされた結果、需要者が原告の業務に係る商品であることを認識すること ができるものに当たることを認めるに足りる証拠もなく、本願商標が商標法 3条2項の要件を充足するとは認められない。もっとも、仮に、「新生甘酒」 という本願商標が、使用をされた結果、需要者が原告の業務に係る商品であ ることを認識することができるものとなった場合に、本願商標が商標法3条 2項に基づいて必ず商標登録を受けることができるか否かについては、本判 決の判断するところではない。)
したがって、本願の指定商品の需要者等が、「新生甘酒」の語を「新生」の 文字と「甘酒」の文字を組み合わせたものであると理解した場合、本願商標 は、その指定商品の需要者等によって当該商品に使用された場合に、商品の 品質を表示したものと一般に認識されるものであり、使用をされた結果需要者等が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる\nものについて商標登録を受けることができる場合(商標法3条2項)のほか は、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないとされるものに該当 し、その指定商品について商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法3条1項3号)であると認められる。\n
・・・・
前記(1)アに挙げた各事実によれば、本件審決がされた時点で、「生甘酒」の 語を「加熱処理をせずに製造した甘酒」を示す語として用いる取引の実情が 存在していたと認められる。 また、前記(1)イに挙げた各事実によれば、本件審決がされた時点で、飲料 又は食料品を示す語の前に「新」を付して、当該飲料又は食料品がその年に 収穫されたもの又は作られたものであることを示し、あるいは従前販売され 前記(1)アに挙げた各事実によれば、本件審決がされた時点で、「生甘酒」の 語を「加熱処理をせずに製造した甘酒」を示す語として用いる取引の実情が 存在していたと認められる。
そうすると、本願の指定商品の需要者等は、「新生甘酒」の語が「新」の文 字と「生甘酒」の文字を組み合わせたものであると理解した場合、これが本 願商標の指定商品に使用された場合には、需要者等は、その年に製造された 生甘酒、又は製造方法や特徴が従前のものと異なる新しい甘酒を一般的に指 す名称であると認識すると認められる。そして、「新」は、辞書に掲載された 一般的な用語であり、飲料又は食料品を示す語の前に「新」を付すことにつ いて上記のような取引の実情が認められ、「生甘酒」も、「加熱処理をせずに 製造した甘酒」を示す語として用いる取引の実情があったから、これらを組 み合わせた「新生甘酒」という語は、その年に製造された生甘酒、又は製造 方法や特徴が従前のものと異なる新しい甘酒を表す場合に、普通に使われ得るものと認められ、使用をされた結果需要者等が何人かの業務に係る商品又\nは役務であることを認識することができるものについて商標登録を受けるこ とができる場合(商標法3条2項)のほかは、特定人によるその独占使用を 認めるのは適当でないものと認められる。
したがって、本願の指定商品の需要者等が、「新生甘酒」の語を「新」の文 字と「生甘酒」の文字を組み合わせたものであると理解した場合も、本願商 標は、その指定商品の需要者等によって当該商品に使用された場合に、商品 の品質を表示したものと一般に認識されるものであり、使用をされた結果需要者等が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができ\nるものについて商標登録を受けることができる場合(商標法3条2項)のほ かは、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないとされるものに該 当し、その指定商品について商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法3条1項3号)であると認められる\n
5 結論
上記3及び4の説示によれば、本願商標を「新生」の文字と「甘酒」の文字 を組み合わせた商標であると解した場合、及び「新」の文字と「生甘酒」の文 字を組み合わせた商標であると解した場合のいずれについても、本願商標は、 その指定商品について商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(商標法3条1項3号)に当たると認められる。\n

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令和6(行ケ)10075  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和6年11月13日  知的財産高等裁判所

3条2項によって登録された商標「貴醸酒」について、3条違反、4条1項6号違反の無効理由を主張しましたが除斥期間経過済み、および理由無しと判断されました。代理人無しの本人訴訟です。

1 取消事由1(手続違背)について
原告は、特許庁の審判手続において、原告が答弁書副本を受領してから審理 終結通知の送付まで1週間もなかったとして、原告に反論の機会を与えなかっ た手続違背がある旨主張する。しかし、審判合議体には事件の審理が熟したと 判断するについて裁量権があるところ、本件の証拠を精査しても、上記の取扱 いが原告の防禦権を不当に制限することになるなどの事情は認められず、当該 裁量権の逸脱があったとは認められない。原告の主張は採用できない。
2 取消事由2(商標法4条1項6号該当性の判断の誤り)について
(1) 証拠(甲3、4、11〜13)及び弁論の全趣旨によれば、現在の独立行政 法人酒類総合研究所の前身である国税庁醸造試験所が仕込水の全部あるいは 一部に清酒を使用して発酵させることを特徴とした清酒の製法を開発し、開 発チームの故 A 博士がこれを「貴醸酒」と名付けたものであること、その 製法は、昭和49年に特許出願がされ、昭和53年に公告されたが、現在は存 続期間が満了していること、昭和51年に、貴醸酒の製造研究と普及を目的 に、被告を含む酒造会社等5社が貴醸酒協会を設立し、国税庁醸造試験所を 管轄する大蔵省(当時)と実施許諾契約を締結していたこと、特許権の存続期 間満了後は技術指導を国税局鑑定官室が行い、貴醸酒協会は商標の管理と加 盟各社に対して販売のアドバイスを行っていることが認められる。 そうすると、「貴醸酒」が、国税庁醸造試験所において開発された、水の代 わりに清酒で仕込んだ製法により醸造された清酒の名称であり、同試験所の 故A博士によって命名されたものと認めることはできるものの、当該清酒の名称が当然に事業の名称となるものではない。実際に「貴醸酒」として清 酒を製造販売してきたのは被告を含む貴醸酒協会加盟の酒造会社等であり、 「貴醸酒」の名称が国税庁醸造試験所又はその後身の独立行政法人酒類総合 研究所の団体自身やその事業で営利を目的としないものを表示するものとし\nて使用されたとはいえず、まして、そのような表示として本件商標の指定商\n品の取引者、需要者の間で著名であったことを認めるに足りる証拠はない。
(2) 原告は、「貴醸酒」は、新たな醸造方法の開発による醸造技術者の指導育成 を行う公益目的の事業であって、製法に関する特許権者も国税庁長官である 旨主張するが、貴醸酒を開発したのが国税庁醸造試験所であり、国税庁長官 が製法に関する特許権を有していたとしても、直ちに「貴醸酒」がその「事業」 を「表示」する標章であったということにはならない。\n原告は、本件商標についての商標登録出願は、商標法3条1項3号を理由 に拒絶されているとか、昭和51年の甲11、13の各論文には、「いわゆる 貴醸酒」と記載されており世間に知られていることを示しているなどと主張 するが、いずれも「貴醸酒」の名称が国税庁醸造試験所又はその後身の独立行 政法人酒類総合研究所の団体自身やその事業で営利を目的としないものを表\n示するものとして使用されたことを示すものとはいえず、また、そのような 表示として「清酒」の取引者、需要者の間で著名であったことを示すものとも\nいえない(「いわゆる」との表現は、その名称を取引者、需要者の中でどの程\n度の者が認識しているかを示すものではなく、また、その事業主体について は何ら示唆するものではない。)。かえって、貴醸酒の命名者を含む共同開発 者の論文には、「貴醸酒という名称は登録商標であり、一般名ではない。」(甲 11)、「貴醸酒という名称は登録商標(貴醸酒協会の会員だけが使用できる) であって、一般名でない」(甲13)との記載があり、国税庁醸造試験所において、「貴醸酒」を同試験所自身やその事業で営利を目的としないものを表示\nするものとして認識していないことが明らかであり、本件商標の登録の経緯 に鑑みても、本件商標を実際に業務に使用し識別力を取得させたのは被告を 含む酒造会社等であったものというべきである。なお、原告の指摘するとお り、これらの論文は、本件商標が設定登録を受けた昭和62年8月19日よ り前に発行されたものであるが、そのことは上記認定を左右するものではな い。
3 それ以外の原告の主張について
原告は、1)本件商標は商標法4条1項16号に該当するにもかかわらず、同 法3条2項の適用によって商標登録を認めた登録審決は誤りである、2)本件商 標は同法29条に該当するとの主張もしているが、これらは、いずれも本件の 無効審判手続において審理・判断されていないから、最高裁昭和51年3月1 0日大法廷判決・民集30巻2号79頁の趣旨に鑑み、審決取消訴訟の対象と することはできないものというべきである。
なお、上記2)に関していえば、商標法29条は登録が有効であることを前提 に使用の制限を定めるものであって、そもそも同法46条1項の無効審判請求 の理由とはならない。

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令和6(行ケ)10055 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和6年11月25日  知的財産高等裁判所

商標「至福のギリシャ」が、識別力、品質誤認、公序良俗違反かが争われました。知財高裁は、無効理由無しとした審決を維持しました。原告はギリシャ共和国です。

原告は、本件商標が、日本国産であり、乳蛋白質が添加されていることか ら「ギリシャ国の伝統製法」ではないヨーグルトの商品、すなわち産地や製 法と関係がない製品に用いられており、需要者の信頼を裏切るものであるか ら、「指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の福祉に反し、 社会の一般的道徳観念に反する場合」に当たる旨主張する。 しかし、前記1のとおり、本件商標は、ギリシャという国あるいは地域か ら連想される抽象的なイメージを「至福の」という肯定的なイメージととも に需要者に連想させ、ギリシャと何らかの形で関連する商品であることを表\n示するに止まるものである。 また、本件指定商品における「ギリシャ国の伝統製法」とは、社会通念上、 およそ「ギリシャ国の伝統製法」という範疇に含ませることが相当なヨーグ ルトの製法を広く指すものであり、被告において、この意味における「ギリ シャ国の伝統製法によるヨーグルト」を製造販売する蓋然性はあり、本件商 標を本件指定商品に使用する意思もあったことは、前記3のとおりである。 そうすると、被告が本件商標を登録し、本件指定商品すなわち「ギリシャ 国の伝統製法によるヨーグルト」について使用することが、社会公共の福祉 に反し、社会一般の道徳に反するということはできない。
(2) 原告は、本件商標の登録を認めることは、日本の一事業者にすぎない被告 が一方的にギリシャ国に付した漠然としたイメージを、日本が国家として是 認することになり、「特定の国若しくはその国民を侮辱する場合」に当たる と主張する。
しかし、「特定の国若しくはその国民を侮辱する」かどうかは、イメージ の内容如何によるのであり、「至福の」という肯定的な修飾語を伴う本件商 標により想起される「この上もない幸せの国ギリシャ」というギリシャ国に 対する「漠然としたイメージ」がギリシャ国又はその国民を侮辱するものと いうことはできない。もとより、本件商標の登録を認めたからといって、商 標法上の保護が与えられるだけであり、ギリシャ国についての特定のイメー ジを日本が国家として承認するなどといった法的効果が発生することはない。 また、原告は、「ギリシャ国の伝統製法」なる指定商品を認めることは、 同様に、ギリシャ国における「伝統」を特許庁あるいは一事業者が一方的に これを定めることを認めることになると主張する。
しかし、本件指定商品である「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」 の「伝統製法」がいかなるものであれ、本件指定商品を指定商品とする商標 登録を認めたからといって、「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」の 具体的内容が一義的に決まるわけではないから、ギリシャ国における「伝統」 を特許庁又は一事業者が一方的に定めたことにはならない。 なお、将来、本件商標に係る不使用取消審判等の審判やその審決取消訴訟 において、具体的な商品が本件指定商品に当たるか否かについて、特許庁や 裁判所による判断がされることがあるとしても、その判断は、客観的事実を 踏まえ、社会通念に照らしなされるものであり、そのことが、直ちにギリシ ャ国又はその国民を侮辱することに当たるとは認められない。もとより、ギ リシャ国は、これに拘束されることなく、必要に応じ、自らが妥当と考える 「伝統製法」の内容を決めることは何ら妨げられない。 したがって、本件指定商品を認めたからといって、特許庁や一事業者がギ リシャ国の「伝統」を一方的に定めたなどということはできない。
(3) 原告は、地理的表示に関する国際的趨勢や動向を踏まえると、「ギリシャ\nヨーグルト」という用語ですら産地と結び付けて理解されるのであるから、 本件商標のように国家名のみが示されている場合は端的に産地を示している との考慮がなされるべきであるから、本件商標の登録は、「一般に国際信義 に反する場合」に当たると主張する。 しかし、「ギリシャヨーグルト」がTRIPs協定22条にいう地理的表\n示に当たるか否かはともかく、本件商標は国家名のみを示したものではなく、 「至福のギリシャ」という表示は、産地を示す表\現であると認めることはで きないことは前記のとおりである。すなわち、本件商標は、商品の原産地を 特定する表示であることを内容とする同条の「地理的表\示」に当たるもので はない。したがって、本件商標の登録を認めることが、一般に国際信義に反 するとは認められない。原告が引用する英国控訴院の判決(甲8、9)は、 米国の会社が米国で生産し、英国に輸入して販売していた「ギリシャヨーグ ルト(Greek yoghurt)」という商品に関し、英国内の購入者の多く(5 0%以上)が当該商品はギリシャ産の製品だと誤認しているという事実関係 のもとで、ギリシャヨーグルトの表示の差止めを認めた原審を維持したもの\nであって、客観的にみて表示自体では産地を表\示したものとは認められず、 本件商標を付した被告商品をギリシャ産であると需要者が一般的に認識する とも認め難い本件において、当然に妥当するものではない。
(4) 原告は、被告がギリシャ産のヨーグルトや本件指定商品に用いる意思がな いにもかかわらず本件商標の登録出願をしたことは、虚偽的かつギリシャ国 のイメージに積極的にフリーライドすることを企図していたとも評価し得る から、「当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を 認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場\n合」に当たると主張する。 しかし、被告において、本件商標を本件指定商品に使用する意思があった ことが認められることは前記のとおりであるから、原告の主張はその前提を 欠くものである。その他、本件商標の出願の経緯等が社会相当性を欠くもの であったことを認めるに足りる主張立証はないから、原告の主張は採用する ことができない。

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