2003.11. 9
著名商標がある文字と結合している場合に、当該ある文字について先行商標とは非類似との判断がなされました。どこまでが射程範囲かは分かりませんが、前記ある文字が一般に親しまれた語であって、それが指定商品との関係で強い識別力を発揮しない場合には、同じような判断がなされる可能性が高いといえるかもしれません。
「本願商標は大きな「TOD'S」の文字を横断するように「COMPETITION」の文字をまとまりよく一体に配した構成であり、このことと併せて前記2に認定した原告の「TOD'S」ブランドの知名度も考慮すれば、本願商標からは、「トッズ」と結合した「トッズ コンペティション」ないし「トッズ」の「コンペティション」という一体の観念が生ずると考えられ、「トッズ」を切り離した「コンペティション」の観念が独立して生ずるとは考えられない。したがって、本願商標とその文字部分から単に「コンペティション」の観念のみが生じる各引用商標とは、観念において相違する。さらに、称呼について検討するに、本願商標が前記のとおり「TOD'S」の文字と「COMPETITION」の文字をまとまりよく一体に配した構成であること、「トッズ」が短くて響きがよく、発音し易い語であることから本願商標は「トッズコンペティション」とよどみなく一連に称呼され得ること、及びブランドとしての「TOD'S」(トッズ)が高い知名度を有していることを考慮するとき、本願商標からは、「トッズ」の称呼又は「トッズコンペティション」の称呼が自然に生じ、かつ、これらの称呼をもって取引者及び需要者に識別されるというべきである。」
◆H15. 7.17 東京高裁 平成14(行ケ)436 商標権 行政訴訟事件
2003.07. 4
「ふぐの子」が先願既登録商標「子ふぐ」と類似か否かが争われました。審決では非類似と判断しましたが、裁判所は以下のように「観念、称呼および外観が似ている」として述べて、審決を取り消しました。
「本件商標は,その構成文字に相応して「河豚(ふぐ)の子」の観念を生じ,引用A商標は,その構\成文字に相応して「こどもの河豚(ふぐ),小さい河豚」の観念を生じることは,明らかである。両商標は,その観念において,ほぼ同一であるといい得る程度によく似ているというべきである。
本件商標は,その構成文字に相応して「フグノコ」の称呼を生じ,引用A商標は,その構\成文字に相応して「コフグ」の称呼を生じることは,明らかである。両商標の上記各称呼は,「フ」,「グ」,「コ」の3音において共通しており,「ノ」の音の有無と「コ」の音の位置(語尾か語頭か)において異なるにすぎない。「フグ」は「河豚」を,「コ」は「子」を意味する語であり,「ノ」は「河豚」と「子」との関係を示す助詞であることから,実質的には上記各称呼は,「河豚」を意味する語と「子」を意味する語の語順を入れ替えたにすぎないものであるということができる。 上記対比の結果によれば,本件商標と引用A商標とは,その称呼において相当によく似ているというべきである。
称呼について述べた上記のことは,外観についてもほぼ同様に当てはまるということができる。」
◆H15. 7. 3 東京高裁 平成14(行ケ)377 商標権 行政訴訟事件
2003.06. 6
指定商品「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」に商標「Afternoon Tea」を使用すると、品質誤認(4条1項16号)が生ずるかが争われました。
問題となった出願
審決では、若い女性の間では周知であるとしても、それ以外の顧客も存在するので、品質誤認が生ずると判断しましたが、裁判所は、以下のように、これを否定しました。
「また、アフタヌーンティー店舗は、若い女性のみを対象としない全国各地の地域の情報紙でも頻繁に取り上げられており、・・・一般新聞や週刊誌で紹介され、飲食業界や流通業界の業界紙でも多数回にわたり紹介されているから、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の名称が、アフタヌーンティー店舗のハウスマークであることは、若い女性に限定されず、一般の需要者・消費者にとって、上記時点においてかなりの程度で周知であったものと認められる。
さらに、アフタヌーンティー店舗では、長年にわたり、「Afternoon Tea/アフタヌーンティー」の名称を付し、本願商標を掲載したメニューを使用して紅茶以外のコーヒー・ジュース等の飲み物を提供してきたものと認められるから、このような飲食物の提供形態をとることにより、注文者が品質を誤認するような混乱を生じることはなかったものと推認するのが相当である。・・・・原告の経営方針として、本願商標を付した各種商品は、アフタヌーンティー店舗においてのみ販売されており、一般の需要者・消費者が、他の店舗及び自動販売機等によって本願商標を付した各種商品を購入することは困難な状況にあるものと認められる。
以上の諸事情に加えて、前記説示のとおり、本願商標から「茶」「紅茶」の観念のみが生じるものではなく、「飲み物に通例紅茶を用いる昼過ぎの軽い食事」「午後の茶の会」といった観念も生じるものであり、必ずしも商品の品質のみが想起されるものでないことも併せ考慮すると、本願商標をその指定商品について使用した場合に、商品「茶」であるかのごとく、需要者をして、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認めることはできないといえる。」
◆H15. 6. 4 東京高裁 平成14(行ケ)596 商標権 行政訴訟事件
足袋の商標として周知の「力王」の商標権者が、「飲食物」を指定する「力王」に対して、4条1項15号違反として、無効を求めていた事件で、無効理由無しとした審決を取り消して差し戻しました。
裁判所は、広義の混同を認め、以下のように判断しました。「本件商標の指定役務に係る「飲食物の提供」・・・の需要者は,当該役務の性質上,年齢,性別,職種等を問わず,あらゆる分野の広汎な一般消費者であり,その中には,原告商標に係る上記取引者,需要者も当然含まれている。これらの者が,野外で作業をして昼食時を中心に外食する機会も多く,本件商標の指定役務の需要者となりやすい・・・・本件商標の指定役務の需要者と原告商標に係る地下たびの需要者とは,相当程度共通する。そして,このような共通の需要者が本件商標に接して,その指定役務の提供を受ける際に普通に払う注意力の程度について見るに,・・・取引上の経験則に照らせば,一般消費者として,そのような高度の注意を払う行動には出ないのが通常であるといわなければならない。・・・これに接する需要者において,原告商標を連想,想起し,当該役務が原告の業務に係る役務であると誤信するか,あるいは,そうでなくとも,原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信し,その出所について広義の混同を生ずるおそれがあるというべきである。」
◆H15. 5.21 東京高裁 平成14(行ケ)285 商標権 行政訴訟事件
審決では、「本件商標の出願手続行為は、申立人に対する背信的行為であり、信義誠実の原則に反するものである。そして、かかる商標権者の行為により登録出願された本件商標は、商道徳に反し公正な取引秩序を乱すおそれがあるものというべきである。したがって、本件商標の登録は、商標法4条1項7号に違反してなされたと認められるから、同法43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである」と判断されましたが、裁判所はこれを取り消しました。
裁判所は、下記のような理由を述べました。
「商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。・・・・事情の下で、原告が本件商標を登録出願し、商標登録を取得(平成13年8月)したことは、・・・・商標を安定して使用し得る地位を確保するための安全策という要素を持つものであって、・・・その商標登録出願から商標権取得に至る行為をあながち不当、不徳義と評価することはできない。・・・付言するに、前記1に認定した本件の事情の下で、本件商標「ハイパーホテル」の使用関係を原告と申\立人グループとの間でいかに律するかは、当事者間における利害の調整に関わる事柄である。そのような私的な利害の調整は、原則として、公的な秩序の維持に関わる商標法4条1項7号の問題ではないというべきである。」
◆H15. 5. 8 東京高裁 平成14(行ケ)616 商標権 行政訴訟事件
「その類似商品を除く」という記載における類似商品とは何かが争われました。裁判所は、”商品が非類似だから無効理由無し”とした判断は否定しましたが、最終的には、商標非類似として、無効理由なしとした審決の判断は取り消しませんでした。
商品の類似について裁判所は「審決は、引用商標の指定商品の記載「紙類、文房具類、但し三角定規、地球儀、計算尺、そろばん、およびその類似商品を除く」における「その類似商品」の範囲を、商標法4条1項11号にいう「類似する商品」を判断する際に用いられる特許庁の「『商品区分』に基づく類似商品審査基準」をそのまま当てはめることによって解釈していることが明らかであるが、これは誤りであるといわざるを得ない。・・・本件に即して述べると、先願登録商標の指定商品が「A」と記載されている場合には、商標法4条1項11号にいう商品Aに「類似する商品」の範囲を上記審査基準に従って判定することができるが、指定商品の記載が「X 但しA及びその類似商品を除く」となっているときには、「但し・・・を除く」の文言によって、指定商品の範囲は、「XからA及びAの類似商品を除いたもの(X−AとAの類似商品)」となっているのであるから、上記審査基準を適用し得るのは「X−AとAの類似商品」についてであって、除かれる「Aの類似商品」については、上記審査基準に示された判定基準がそのまま妥当するものではないのである。」と述べました。
標章がローマ字表記された商標権について、同様の判断がなされています
(H15. 1.21 東京高裁 平成14(行ケ)266 商標権 行政訴訟事件)。
◆ H15. 1.21 東京高裁 平成14(行ケ)190 商標権 行政訴訟事件