2004.12. 5
被告標章「メバロチン」は周知商標「メバロカット」と出所混同が生ずると判断されました。
「確かに,医師や薬剤師が医薬の知識を有する専門家であり,医師が患者に高脂血症用薬剤を投薬する際には,病院等にある1社ないし数社の限られた高脂血症用薬剤の中から医薬を選択するものであることや,病院等が医薬品を購入する際には製薬会社各社のMR(医薬品情報伝達者)などから説明を受ける機会もあることを考慮すれば,一部の医師や薬剤師については,本件商標を使用した高脂血症用薬剤を被告あるいは被告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同する具体的なおそれは少ないとみる余地もないではない。しかし,だからといって,およそ,その取引者・需要者である医師,薬剤師など医療関係者であれば,一般的にそのような混同を生ずるおそれはないということはできないのであり,上記のような医療用医薬品の流通過程,被告の引用商標の高脂血症用薬剤における周知著名性,引用商標と本件商標との類似性の度合い,引用商標と本件商標を使用した両商品の薬効成分が同一であること,並びに,医療用医薬品に関する取引の実情からすれば,医療関係者が医薬の知識を有する専門家であることを考慮しても,多数の種類,品目の医薬品を取り扱っている医薬品卸売業者及び多数の種類,品目の医薬品を取り扱っている調剤薬局,並びに,多数の医師や薬剤師が働く医療機関における医師,薬剤師などにおいて,本件商標を使用した高脂血症用薬剤を被告あるいは被告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するおそれがあることを否定することはできない。」
◆H16.11.25 東京高裁 平成16(行ケ)129 商標権 行政訴訟事件
2004.12. 5
標章「建設大臣」が公序良俗に反するとした拒絶審決について、裁判所も同判断を行いました。
裁判所は「”建設大臣”という語が,国の行政組織に係る公的な名称を示すものとして認識され,実際に,取引社会において,一定の商品や役務について公的な基準,規格等を満たしていることを示す表示として用いられていることなどに照らすと,”建設大臣”の文字よりなる本願商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合には,その需要者,取引者に対し,それらが従前の建設省の所管事務を統括していた建設大臣と関わりがあるかのように,あるいは建設に関する行政分野を統括する大臣の名称であるかのように,誤信させるおそれがあることは明らかであり,その登録を認め,指定商品及び指定役務について独占使用権,排他権を付与することは,国民の行政に対する信頼を損ねるとともに,取引秩序を乱すおそれがあり,社会公共の利益に反するというべきである。」
こちらは"福祉大臣”についての判断です。
H16.11.25 東京高裁 平成16(行ケ)197 商標権 行政訴訟事件
◆H16.11.25 東京高裁 平成16(行ケ)196 商標権 行政訴訟事件
2004.10. 5
「秘書士」という標章が4条1項7号(公序良俗)に該当するとした審決が取り消されました。
裁判所は、「一般国民が,末尾に「士」の付された名称に接した場合,一定の国家資格を付与された者を表していると理解することが多いと一般的にはいうことができても,本件においては,前記1のとおり,教育協会の行ってきた「秘書士」の称号認定が,秘書教育の関連分野における取引者,需要者の間において周知となっていたことや,前記(1)のとおり,「秘書士」と「秘書技能検定」の語が類似していないことを考慮すれば,本願商標をその指定役務に使用しても,取引者,需要者をして,秘書技能\検定の他に,秘書職に関する国家資格,公的資格が存するかの如く誤信せしめるものということはできないから,被告の上記主張は理由がない」と述べました。
◆H16. 9.30 東京高裁 平成16(行ケ)206 商標権 行政訴訟事件
菓子に用いられる「ひよ子」が、即席中華そばのめんに用いられる「ひよこ」と混同生ずるかが争われました。審決では4条1項15号に該当するとして拒絶されましたが、裁判所はこれを取り消しました。
「引用商標「ひよ子」が普通名詞の「ひよこ」と顕著な差がなく,自他識別性が強くはないこと,引用商標「ひよ子」の周知著名性は,お土産品・贈答品に頻繁に利用される,「ひよこの形をしたお菓子」という商品と密接に結合したものであり,当該商品を連想させる商標として周知著名なものであるから,その周知著名性が及ぶのはせいぜい「菓子」の範囲までであり,食肉,野菜,果実などの生鮮食料品から,様々なものが含まれる加工食料品など食品全般にまで広く及ぶと解することはできない。・・・一般消費者が日常的に食する「即席中華そばのめん」とは,商品自体が相当に異なり,販売経路,売場などからも,明りょうに区別することができる食品であることからすれば,「即席中華そばのめん」に本願商標を使用しても,その取引者及び需要者である一般消費者が,同商品を,引用商標「ひよ子」の業務主体又は同社と何らかの関係にある者の業務に係るものと混同するおそれがあるとみることはできない。」と述べました。
◆H16. 9.16 東京高裁 平成16(行ケ)18 商標権 行政訴訟事件
2004.09. 8
ポロラルフローレンと出所混同を生ずるおそれがあるとして無効と判断された審決が取り消されました。
裁判所は、「ファッション関連商品の分野における引用商標の周知・著名性を考慮に入れても,本件商標を指定商品に使用したときに,当該商品が,ラルフ・ローレン又は同人と密接な営業上の関係若しくは同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であるかのように誤信され,商品の出所混同が生ずるおそれがあるということはできないから,その出所混同のおそれを肯定した審決の認定は誤りであるといわなければならない。そして,上記判断は,審決が指摘するように(審決謄本15頁下から第2段落),一般的に,生活関連用品について消費者が有する注意力はさほど高いものではないことを考慮しても,左右されないというべきである・・・」と述べました。
◆H16. 9. 6 東京高裁 平成15(行ケ)564 商標権 行政訴訟事件
1つの争点として、指定商品「半導体ウエハ」が「電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く。)」と類似する商品かが争われました。
裁判所は、下記のように述べて、類似するとした審決を取り消しました。「そして,半導体ウエハは,一般需要者向けの商品ではなく,半導体ウエハの需要者はデバイスメーカー等であること,半導体ウエハや半導体素子の品質及び歩留まりは,・・・その取引当事者は,こうしたクリーン・ルーム設備を保有する者だけに限られることは,当事者間に争いがない。これらの諸事情を総合考慮すれば,半導体ウエハと集積回路等の電子応用機械器具とについて,同一又は類似の商標が使用されたときに,半導体ウエハの需要者であるデバイスメーカー等において,それらの商品が同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれはないというほかはない。」
◆H16. 7.26 東京高裁 平成15(行ケ)456 商標権 行政訴訟事件
2004.07. 2
「幻庵」と「GEN AN」の2段併記の商標についての使用が争われました。裁判所は、幻庵を店舗名として使用していることを使用証明として認めました。
「本件商標は,上記第2の1のとおり,「玄庵」と「GEN AN」の文字を横書き上下2段に書してなるものであるところ,本件商標の構成文字の「GEN AN」が,「玄庵」の称呼である「げんあん」をローマ字でそのまま表\したものであることは明らかであるから,新宿区(以下省略)に所在するステーキ店の営業を表示するものとして壇が使用していた「玄庵」の商標は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができる。」
◆H16. 6.30 東京高裁 平成16(行ケ)67 商標権 行政訴訟事件
2004.06. 9
商標法4条3項にいう「出願時に8号に該当しない商標」が、出願時において8号本文に該当するが8号括弧書の承諾があることにより8号に該当しないとされる商標も含むのかが争われました。特許庁、高裁、最高裁とも同様に、出願時に承諾があっても査定時までに撤回された場合には、登録を受けられないと判断しました。
「3項にいう出願時に8号に該当しない商標とは,出願時に8号本文に該当しない商標をいうと解すべきものであって,出願時において8号本文に該当するが8号括弧書の承諾があることにより8号に該当しないとされる商標については,3項の規定の適用はないというべきである。したがって,出願時に8号本文に該当する商標について商標登録を受けるためには,査定時において8号括弧書の承諾があることを要するのであり,出願時に上記承諾があったとしても,査定時にこれを欠くときは,商標登録を受けることができないと解するのが相当である。
これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本願商標は出願時に8号本文に該当するものであり,査定時において上告人が本願商標につき商標登録を受けることについてカムホートの承諾がなかったことは明らかであるから,本件出願は,本願商標が8号に該当することを理由として,拒絶されるべきものである。」
原審は以下の通り。
◆H15. 7.15 東京高裁 平成15(行ケ)183 商標権 行政訴訟事件)
◆平成16年06月08日 第三小法廷判決 平成15年(行ヒ)第265号 審決取消請求事件
被告標章「OLIVE Christmas」が登録商標「クリスマス」と類似するかが争われました。指定役務は宿泊施設の提供です。
大阪地裁は「ホテル営業に関して「Christmas」や「クリスマス」の文字を含む結合商標が用いられている場合には、「Christmas」や「クリスマス」の文字部分は、特別な図案化が施されているような場合は別として、一般に識別力が弱いものというべきであり、被告標章のうちの「Christmas」の部分についても、特に識別力があるような態様のものではないから、商標の類比を判断するに当たって、この部分を分離して捉えることは相当でない。」として非類似と判断しました。
◆H16. 4.22 大阪地裁 平成15(ワ)10678 商標権 民事訴訟事件
本件商標「AFTERNOON TEA」が先願の「午後の紅茶」と類似するかが争われました。
裁判所は、類似するとの審決の判断を維持しました。
この事件は、以前紹介した商標出願に関する判決(
H15. 6. 4 東京高裁 平成14(行ケ)596 商標権 行政訴訟事件)の、その後の判断です。4条1項16号違反は回避できたんですが、同11号で拒絶されました。
◆H16. 3.29 東京高裁 平成15(行ケ)499 商標権 行政訴訟事件
(タイトルは特許権となってますが、商標権です)
裁判所は、「Dr. Rath's Vita-Cが、ビタシーと類似する」とした審決を取り消しました。「Dr. Rath's」 と「Vita-C」に分離されるが、「Vita-C」の部分は識別性がない部分であるという理由です。
◆H16. 3. 9 東京高裁 平成15(行ケ)380 特許権 行政訴訟事件