商標「FEMMIO VALENTINO」が,「VALENTINO GARAVANI」と出所混同する(4条1項15号違反)かが争われました。裁判所は、15号に該当するとした審決を維持しました。取引形態についての主張については、下記のように述べました。
「原告は,審決の「商品の需要者もともに主として一般消費者であって,本件商標の指定商品が日常的に消費される性質の商品であり,殊にその需要者は特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であって,これを購入するに際して払われる注意はさほど綿密なものではないといえることから,両者はその需要者を共通にするものである」(審決8頁最終段落〜9頁第1段落)との認定に対し,著名ブランドを使用した商品のような高級品を購入する際に払われる注意は相当に綿密なものであるのに対して,本願商標を使用した商品は,現在「ランチシリーズ」商品として100円ショップで販売されており,需要者・消費者,販売経路のいずれにおいても共通するところはないなどと主張する。
しかし,商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」を判断するに当たっては,出願に係る商標の指定商品全部,すなわち上記第3の1(2)記載の商品すべてについて,これを一般的に検討すべきであり,出願人固有の取引の実情を混同を否定する方向に斟酌することは許されないというべきである。なぜならば,原告が現在本願商標を上記のように使用していたとしても,それは原告の事業展開の一つにすぎないものであり,事業展開がしばしば変化することは日常よく見られることであって,現在の販売方法が今後も継続し,固定していくとは限らないからである。そして,本願指定商品全体についてこれを一般的に検討すれば,上記審決の認定に誤りはないというべきであるから,原告の上記主張も採用することができない。」
◆H17.12.20 知財高裁 平成17(行ケ)10491 商標権 行政訴訟事件
「BALMAIN」は、「バルマン」または「Valman」等とは非類似であるとして、特許庁の審決を取り消しました。
裁判所は「「BALMAIN」ないし「バルマン」の表示は,著名な原告「PIERRE BALMAIN」社に係る「BALMAIN」ブランドを示すものとして,本願商標及び引用商標1〜3に係る取引者,需要者の間において,一般に広く知られるようになっていたものと認められるから,本願商標に接した取引者,需要者は,仮に本願商標自体を知らなくとも,本願商標から,周知の上記「BALMAIN」ブランドを想起するものというべきであり,これに対し,引用商標1〜3から特定の観念が生じないことは当事者間に争いがないから,本願商標と引用商標1〜3とは,観念において著しく相違するものと認めるのが相当である。」と判断しました。
◆H17. 4.19 知財高裁 平成17(行ケ)10103 商標権 行政訴訟事件
被告の雑誌「Club LEGACY」は、原告の商標「レガシィクラブ」に類似するとして、差止を認めました。
裁判所は理由の1つとして「本件商標の登録に至る経緯において,原告が自ら「レガシィクラブ」を一体不可分にのみ称呼,観念される一種の造語である旨主張したことを認めるに足りる証拠はない」として被告の主張を退けました。特許庁の実務は、かつては、○○クラブであれば、一連称呼とするということでしたが、いまはどうなのでしょうか?
◆H17. 4.13 東京地裁 平成16(ワ)17735 商標権 民事訴訟事件
商標の識別力が弱い部分がたとえ、角かっこなどで囲われていても、字体が異なっても、これを抜き出して独立した称呼を認定した審決を取り消しました。本件商標は、「ESI[tronic]」です。引用商標は「AS TRONIC」です。
◆H17. 4.13 知財高裁 平成17(行ケ)10225 商標権 行政訴訟事件
周知商標であるポロのマークについて、似た図形標章が4条1項15号に該当すると判断されました。使用形態まで考慮して判断した点は興味深いです。
裁判所は「本件商標がワンポイントマークとして使用される場合を考えると,そのようなワンポイントマークは,比較的小さいものであり,マーク自体に詳細な模様や図柄を表現することは実際上容易ではないから,・・むしろその図形の輪郭全体が見る者の注意を惹き,内側における差異が目立たなくなることが十\分に予想されるのであって,その全体的な配置,輪郭が引用商標と類似していることから,ワンポイントマークとして使用された場合の本件商標は,引用商標とより類似してくるとみるのが相当である」
問題となった標章を公告公報から抜き出しました。
こちらです。
◆H17. 4.13 知財高裁 平成17(行ケ)10230 商標権 行政訴訟事件
2005.03. 2
4条1項15号の判断について、出所混同無しと判断した審決を取り消しました。
「商標法4条1項15号にいう混同の生ずるおそれの有無は,取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準とすべきところ,被告は,医療の現場では,専門家たる医療関係者が「メバロチン」とその後発医薬品は現実の混同を引き起こすことなく使用し,混同のおそれは生じていないと主張する。確かに,医療関係者は医薬の知識を有する専門家であり,患者に処方・調合する薬剤に誤りのないように,薬剤の名称には細心の注意を払っているのが通例であり,医療の現場で「メバロチン」とその後発医薬品が実際に誤用されたことを示す証拠はない。しかしながら,新薬が次々と発売される中で,日常的に数多くの患者に接して様々な薬剤を処方・使用している医療の現場においては,医療関係者といえども名称の似た薬剤を誤って処方することがあり,かかる薬剤の取違え事例が存在することは「医療品・医療用具・諸物品等情報の分析について」(甲54)の記載からも明らかである。また,平成15年9月18日開催にかかる厚生労働省「医薬品・医療用具等対策部会」においては,名称の類似する薬剤の取り違えが全国的な問題となっており,とりわけ後発医薬品によく似た名称が多いとの指摘がなされている(甲52の2,2頁)。本件商標に係る「メバスロリン」は,まさに「メバロチン」とその有効成分,薬効を同一にする後発医薬品であり,医療機関や薬局では先発医薬品と後発医薬品は同時に取り扱われることも少なくないと考えられることや,両商標の類似性の程度,引用商標の著名性を考慮すれば,「メバスロリン」に接した医師や薬剤師は,「メバロチン」を容易に想起し,「メバスロリン」を原告あるいは原告と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品等と混同するおそれがあるというべきである。」
◆H17. 2.24 東京高裁 平成16(行ケ)256 商標権 行政訴訟事件
2005.02. 5
4条1項7号による無効理由について判断されました。
「原告による本件商標「COMEX」の商標登録出願は,出願の経緯及び商標登録後の原告の行為に照らし,被告ロレックス社製の「ROLEX/comexダブルネーム」時計の人気及び「comex」,「COMEX」の商標が被告ロレックス社製ダイバーズウォッチの高い性能と信頼性の証とされていることを熟知しながら,我が国において「時計,時計の部品及び付属品」を指定商品とする「COMEX」の商標登録がされていなかったことを奇貨として,先取り的にされたものであり,その商標登録出願に基づいて登録された本件商標「COMEX」を原告の販売する時計に使用すれば,需要者の誤認を招くばかりでなく,そのただ乗り的使用によって,「comex」,「COMEX」の商標について形成された被告ロレックス社の信用が毀損され,また,本件商標「COMEX」が原告の販売する比較的廉価なダイバーズウォッチに使用されれば,ごく少数のサブマリーナ及びシードゥエラーにのみ使用されることによって希少性と名声を保っている「comex」,「COMEX」の商標が希釈化され,その価値が損なわれることになることは明らかである。」
◆H17. 1.31 東京高裁 平成16(行ケ)219 商標権 行政訴訟事件