2011.12.28
平成23(行ケ)10135 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年12月26日 知的財産高等裁判所
「スーパーみらべる」が「mirabell」と類似するとした審決が取り消されました。
以上によれば,本願商標と引用商標とは,「ミラベル」との称呼において類似する場合があり得たとしても,外観において著しく相違し,かつ観念において類似するとはいえず,取引の実情等を考慮しても,本願商標がその指定役務「『飲食料品』,『食肉』,『食用水産物』,『野菜及び果実』,『菓子及びパン』,『牛乳』,『清涼飲料及び果実飲料』,『茶・コーヒー及びココア』,『加工食料品』の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用された場合に,引用商標との間で商品ないし役務の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないから,両商標は,類似しない。・・・これに対し,被告は,実際の取引においては,スーパーマーケットの名称中「スーパー」の文字部分を捨象する例が多い上,スーパーマーケット等の小売業者が,プライベートブランドを飲食料品等に使用していることが広く一般に行われており,その際,スーパーマーケットの名称やその一部を使用していることがあると主張する。しかし,スーパーマーケットの名称中「スーパー」の文字部分を捨象して使用される場合があるとしても,本願商標と引用商標は,本願商標の「みらべる」の文字部分が平仮名により,白色の縁取りがされた黒色の太文字で,鮮やかで明瞭な配色がされているのに対して,引用商標はいずれも欧文字であり,外観において著しく相違することや原告の取引の実情等を考慮するならば,その出所について誤認混同を生じるおそれがあるとはいえず,被告の主張は採用の限りでない。
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2011.12. 1
平成23(行ケ)10205 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年11月30日 知的財産高等裁判所
商標「けんしんスマートカードローン」は引用商標「ケンシン」と非類似であるとして、審決が取り消されました。
本願商標は,上記のとおり,「けんしんスマートカードローン」の文字を横書きしてなるものであるが,各文字が,ほぼ同一の書体,大きさ,間隔で表記されており,全体がまとまった印象を与えているのに対し,引用商標は,「けんしん」の文字を横書き又は縦書きしたもの,あるいはこれと図形を組み合わせたものであり,両商標は,外観において,相違する。また,本願商標は,上記のとおり,「ケンシンスマートカードローン」との称呼が生じるのに対し,引用商標は,「ケンシン」との称呼が生じ,両者は,類似するとまではいえない。上記のとおり,本願商標の「カードローン」部分は,取引者,需要者にとって,クレジットカードなどを利用した融資との観念が生じ,「スマート」部分は,賢い,頭のよい,体型がよい,質が高いなどの観念が生ずるが,「けんしん」部分は,一義的な観念を生じるとまではいえないのに対し,引用商標も一義的な観念を生じるとまではいえず(もっとも,「県信用組合」の略称であるとの観念を生じることを否定するものではない。),両商標は,観念において,同一ではなく,類似するとまではいえない。さらに,上記のとおり,取引の実情について,県信用組合は,組合員により構\成される協同組合組織の金融機関であり,その営業活動は,県内に限られていること,同一県内に複数の県信用組合が存在しないこと等を総合考慮するならば,取引者,需要者が,その役務の出所について,混同を来すことは想定できない。
◆判決本文
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2011.10.27
平成23(行ケ)10150 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所
第1次審取にて、公序良俗違反と認定され、差し戻された審決で同様の判断がなされ、それについて、実質的に理由で審決の取消を求めました。裁判所は拘束力により、原告の主張を退けました。
・・前述した前判決の認定判断に照らすと,前判決の拘束力は,被告の本件商標の出願は,ASUSTeK社若しくはASRock社が商標として使用することを選択し,やがて我が国においても出願されるであろうと認められる商標を,先回りして,不正な目的をもって剽窃的に出願したものであり,出願当時,引用商標及び標章「ASRock」が周知・著名であったか否かにかかわらず,本件商標は商標法4条1項7号にいう「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するとの認定判断について生ずるものというべきであるから,「被請求人の本件商標の出願は,ASUSTeK社若しくはASRock社が商標として使用することを選択し,やがて我が国においても出願されるであろうと認められる商標を,先回りして,不正な目的をもって剽窃的に出願したものと認められるから,・・・,出願当時,引用商標及び標章『ASRock』が周知・著名であったか否かにかかわらず,本件商標は『公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標』に該当するというべきである。」とした本件審決の認定判断は,上記前判決の拘束力に従ったものであることが明らかである。そうすると,本件訴訟において原告の主張する本件審決の取消事由は,前判決の拘束力に従った本件審決の上記認定判断が誤りであると主張することに帰着するものであるから,それ自体失当というべきである。
◆判決本文
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2011.10.25
平成23(行ケ)10093 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所
2段併記の商標(上段「PAG!」、下段「Point AD Game」)が、「PAG」と類似するとの審決が取り消されました。
これに対し,被告は,本願商標について,「PAG」の文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たす特徴的部分であることを前提に,引用商標と外観及び称呼が類似し,取引の実情等を考慮しても,本願商標は引用商標と類似する,と主張する。しかし,被告の上記主張は,以下のとおり,採用できない。すなわち,本願商標は,「P」,「A」,「G」の文字,「!」の符号,足跡状の図形及び下段の「PointAD Game」のすべてが,青色の輪郭線又は塗りつぶされた文字で表記され,全体として,まとまりのある一体的な図形として描かれていること,上段の「PAG」の文字は,下段の「Point AD Game」の頭文字であることが想起されること,足跡状の図形がオレンジ色に塗りつぶされ,アクセントをつけていること等の特徴があることに照らすならば,「PAG」の文字部分のみが,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分と認めることはできない。なお,乙24の1,2によれば,原告のウェブサイトにおいて,商品ないしサービスを説明する図の中で本願商標から「Point AD Game」の文字部分を除いた標章が使用されているが(乙24の1,2),これをもって,「PAG」の文字部分のみが,本願商標の特徴的部分であると認めることはできない。したがって,本願商標について,「PAG」の文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たす特徴的部分であることを前提に,本願商標と引用商標の対比を行い,これらが類似するとした被告の主張は採用することができない。\n
◆判決本文
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2011.10.25
平成23(行ケ)10131 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年10月24日 知的財産高等裁判所
商標「ユニヴァーサル法律事務所」は「ユニヴァーサル」とは非類似と判断されました。
これに対し,被告は,i)本願商標は,法律事務所の名称を表示したものと理解,認識させるものであるから,「法律事務所」の文字部分からは,称呼,観念は生じない,ii)インターネット等や新聞,雑誌の記事において,弁護士の所属法律事務所等を示す場合に,「法律事務所」の表記を省略する例があること等(乙5ないし乙16)から,本願商標中の「ユニヴァーサル」部分のみが,自他役務の識別機能\を果たし得る部分であると主張する。しかし,被告の主張は,以下のとおり,失当である。すなわち,新聞,雑誌の記事等に,「法律事務所」との表記が省略されている例については,冒頭に「法律事務所」を含んだ名称が表\記されているものや,前後の文脈から,法律事務所ないし弁護士が役務を提供する事務所の名称であることが看取できる場合が例として挙げられたと理解される(甲7の1,乙5ないし乙8,乙9ないし乙15)。むしろ,前記認定のとおり,弁護士はその法律事務所に名称を付するときは事務所名称中に「法律事務所」の文字を用いなければならないとされていることに照らすならば,「法律事務所」の文字を省略する例は,少ないと認められる。以上によれば,「法律事務所」との表記が省略されることを前提として,法律事務所を除いた構\成部分のみが,役務の出所を識別し得るとする被告の主張も,採用することができない。
2 判断
以上によれば,本願商標と引用商標とは,外観において著しく異なり,観念において相違し,称呼において一部共通するものの,取引の実情を考慮するならば,類似するとはいえない。したがって,本願商標と引用商標の類否について,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,具体的な取引状況に基づいて全体的に考察すると,本願商標と引用商標が,役務における出所の誤認混同を生じるおそれはなく,両商標は,類似しないから,本願商標が,商標法4条1項11号に該当するとした審決の判断には誤りがある。
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2011.10.12
平成23(行ケ)10174 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年10月11日 知的財産高等裁判所
商標『炭都饅頭』が、2段併記の「TANTO タント」とは非類似であるとして、拒絶審決が取り消されました。
本願商標は漢字である「炭都饅頭」の4文字を江戸文字の書体で縦1行にまとまりよく記して成る外観を有する一方,引用商標は大文字の欧文字である「TANTO」の5文字と片仮名である「タント」の3文字とを,ゴシック体ないしこれに類する書体で,横2段書きして成る外観を有するから,両商標の外観は大きく異なる。被告は本願商標に使用されている文字の書体はありふれたものであり,取引者や需要者は筆書き風の書体で記したものと認識するに止まる旨を主張するが,江戸文字は,骨太で威勢のいい江戸歌舞伎の感性を意匠化すべく考案され,千客万来を願って,内へと入る運筆で枠一杯に隙間なく書かれることを特徴とするもので(書体作成会社である株式会社モリサワのホームページにおける解説,甲13),書体自体が見る者に強い印象を与えるためにデザインされたものである。そうすると,さほど注意力が高くない需要者や取引者にとっても,本願商標が通常の筆書きによって記すよりも強い印象を与えるということができ,被告の上記主張を採用して,両商標の外観の相違を小さく評価することはできない。なお,パーソ\ナルコンピュータの普及に伴って江戸文字のフォントが広く使用されるようになってきているとしても,本願商標自体の外観における書体の特徴に照らせば,上記判断は左右されるものではない。
2 本願商標の構成のうち「饅\頭」の部分は,和菓子の一種を示す普通名称であって,「饅頭」の文字だけでは自他商品識別力が希薄であることは否定できないが,前記1のとおり,本願商標は縦1行にまとまりよく記して成る外観を有し,本願商標を構\成する文字の書体も,文字の大きさも相互にほぼ同一であって,例えば「炭都」の部分が特に強調された体裁を有するものではない。そうすると,本願商標からはまず「タントマンジュウ」との称呼が生じるというべきである。被告は,本願商標の「饅頭」以外の部分,すなわち「炭都」の部分が本願商標の要部であるから,本願商標からは「タント」との称呼が生じると主張する。しかしながら,前記のとおり,本願商標は縦1行にまとまりよく記して成る外観を有し,「炭都」の部分が特に強調された外観のものではないから,「饅\頭」の語の自他商品識別力が希薄であるとしても,「炭都」の部分が直ちに要部となるとはいえず,原則として「タントマンジュウ」との称呼が生じるとの上記認定に変わりはない。また,需要者や取引者が本願商標の「炭都」の部分に着目し,「炭都饅頭」(タントマンジュウ)の略称の一つとして「タント」と称呼する可能\性があるとしても,本願商標から「タントマンジュウ」との称呼が生じることを否定できるものではなく,また,「饅頭」において,商品名から「饅\頭,まんじゅう」を除いた部分をローマ字や片仮名で並記することが少なくないとしても,本願商標における4文字を一連にして成る江戸文字書体の強い外観の印象に照らせば,「タント」の称呼を持つ「炭都」の部分が要部となるとすることはできない。他方,引用商標からは,その構成文字,とりわけ片仮名部分に相応して,「タント」との称呼が生じる。そうすると,本願商標と引用商標とは,生じる称呼が異なるということができる。\n
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2011.09.29
平成23(行ケ)10081 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年09月27日 知的財産高等裁判所
「モンテローザカフェ」が「モンテローザ」と類似かが争われました。類似するとした審決が維持されました。
本件商標は,「モンテローザカフェ」の片仮名文字を標準文字で書して成るものであり,「モンテローザ」と「カフェ」の二つの文字部分の結合から成っている。このような文字商標と他の商標との類否判断をする場合,文字商標の一部分の文字だけを抽出することができるのは,その部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるときや,それ以外の部分からは出所識別機能としての称呼,観念が生じないときなどに限られるところ(最高裁平成20年9月8日裁判集民事228号561頁〔つつみおひなっこや事件〕),本件商標構成中の「モンテローザ」の文字部分は,スイス・イタリアの国境にそびえるアルプス山脈中の高峰である「モンテ‐ローザ(Monte Rosa)」(イタリア語で「ばら色の山」の意)を意味する語であり,「カフェ」の文字部分は,「主としてコーヒーその他の飲料を供する店,珈琲店,喫茶店」を意味する語である。そして,「モンテローザカフェ」が「モンテローザ」と「カフェ」の二つの語から成ることは容易に理解できるところ,「カフェ」の語は,我が国に多数存在する「主としてコーヒーその他の飲料を供する店,珈琲店,喫茶店」を意味する語として一般に定着している業態名であって,本件商標の指定役務との関係では役務を提供する場所,あるいは提供する役務の質(業種)を示すものとして,自他役務の識別標識としての機能は弱く,原則としてそこに出所識別機能\としての称呼,観念は生じないと認められる。一方,「モンテローザ」の文字部分は,上記のとおり,アルプス山脈中の山の名前を意味する語であり,外国の自然地名ではあるが,具体的にイタリアの山の名前であることを知らない者にとっても,語感の響きから何となくヨーロッパの地名に由来するような印象を与えるしゃれた語であって,日本に多数存在する喫茶店の別名として定着している「カフェ」の業態を特定ないし識別する部分ということができるから,役務の自他識別標識として強く支配的な印象を与え,その機能を果たし得るものと認められる。そうすると,本件商標は,「モンテローザ」の文字部分と「カフェ」の文字部分を一体として観察することが取引上自然といえるまでに結合していると認めるのは相当でなく,むしろ,自他識別標識としての機能\を果たし得ると認められる「モンテローザ」の部分を抽出して,引用商標との類否判断をするのが相当である。
◆判決本文
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2011.09.22
平成23(行ケ)10085 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年09月20日 知的財産高等裁判所
「TVプロテクタ」と「PROTECTOR」が非類似と判断されました。
外観について,指定商品の関係でみても「プロテクタ」の部分に識別力があるとすべき事情は認められないので,本願商標は欧文字と片仮名文字を組み合わせた「TVプロテクタ」として観察されるのに対し,引用商標は欧文字の「PROTECTOR」として観察され,全体として両者は外観が異なる。観念について,本願商標からは特定の観念が生じず,仮にテレビジョン受信機を保護する何らかの装置との観念が生じ得るとしても,引用商標は,保護する装置,保護者等の観念そのものであるから,保護する装置等の観念部分が共通するとはいっても,全体としてみれば,両者は観念において異なる。称呼についても,本願商標からは「ティーヴィープロテクタ」の称呼が生じるのに対し,引用商標からは「プロテクター」又は「プロテクタ」の称呼が生じるもので,「プロテクタ」の部分は共通するものの,全体としてみれば称呼は異なる。以上のとおり,本願商標と引用商標とは,その外観,観念,称呼において異なるところ,この対比結果につき,取引の実情に関し特に斟酌すべき事実は認められない。したがって,本願商標と引用商標は類似するということはできない。
・・・
イ 被告は,本願商標の観念及び称呼について,本願商標中「TV」部分は,指定商品「電気通信機械器具」に含まれる「テレビジョン受信機」を意味する略語であるから,当該指定商品に使用する場合には出所識別機能を有しないが,「プロテクタ」部分については,商品の品質等を直ちに表\示するものではなく,出所識別機能を有するから,本願商標中「プロテクタ」部分が要部として認識され,この部分からも観念及び称呼が生じると主張する。確かに,本願商標中「TV」部分は,指定商品「電気通信機械器具」に含まれる「テレビジョン受信機」を意味する略語であるから,これを指定商品「テレビジョン受信機」に使用する場合には出所識別機能\を有しないといい得る。しかしながら,テレビジョン受信機は「電気通信機械器具」の一部にすぎないし,他方において,本願商標中「プロテクタ」部分についても,当該部分は「保護する装置」との意味を有する英単語の片仮名表記と解されるところ,指定商品「電気通信機械器具」に含まれる「電気通信機械器具の部品及び附属品」には,その性質上,電気通信機械器具を静電気,電波,磁気,衝撃等から保護するための装置が包含されると解される(特に,「電気通信機械器具の部品及び附属品」に含まれる「保安器」は,雷から電気通信機械器具を「保護する装置」である。)から,「プロテクタ」部分を指定商品「電気通信機械器具」に使用するか,少なくともこれに含まれる「保安器」に使用する場合には,出所識別機能\は極めて低いものといえる。そもそも「TV」も「プロテクタ」も普通名詞として一般に通用している語であることも踏まえ,上記の検討にかんがみると,本願商標中「TV」部分と「プロテクタ」部分は,それぞれ異なる指定商品との関係において出所識別標識としての機能がないか,極めて低いものであって,出所識別標識としての機能\に差異があるとはいえない。したがって,本願商標においては,「TVプロテクタ」全体が一体のものとして把握されると理解するのが自然であり,本願商標中「プロテクタ」部分のみを要部として抽出することは不相当というべきであり,この部分からも称呼及び観念が生じるとする被告の上記主張は採用することができない。
◆判決本文
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2011.09.15
平成23(行ケ)10086 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年09月14日 知的財産高等裁判所
商標法4条1項15号,19号違反でないとした審決が維持されました。
本件商標中の「小売等役務商標の査定ないし商標登録」の効力の及ぶ範囲について検討する。上記のとおり,「小売等役務商標の査定ないし商標登録」行為は,独占権を付与する行政行為等であるから,独占権の範囲に属するものとして指定される「役務」は,例えば,「金融」,「教育」,「スポーツ」,「文化活動」に属する個別的・具体的な役務のように,少なくとも,役務を示す用語それ自体から,役務の内容,態様等が特定されることが必要不可欠であるといえる。ところで,「小売役務商標」は,上記の,独占権の範囲を明確にさせるとの要請からは大きく離れ,「小売の業務過程で行われる」という経時的な限定等は存在するものの,「便益の提供」と規定するのみであって,提供する便益の内容,行為態様,目的等からの明確な限定はされていない。「便益の提供」とは「役務」とおおむね同義であるので,仮に何らの合理的な解釈をしない場合には,「便益の提供」で示される「役務」の内容,行為態様等は,際限なく拡大して理解,認識される余地があり,そのため,商標登録によって付与された独占権の範囲が,際限なく拡大した範囲に及ぶものと解される疑念が生じ,商標権者と第三者との衡平を図り,円滑な取引を促進する観点からも,望ましくない事態を生じかねない。例えば,譲渡し,引渡をする「物」等(小売の対象たる商品,販売促進品,景品,ソフトウエア,コンテンツ等を含む。)に登録商標と同一又は類似の標章を付するような行為態様について,これを,小売等役務商標に係る独占権の範囲から,当然に除外されると解すべきか否かについても,明確な基準はなく,円滑な取引の遂行を妨げる要因となり得るといえる。上記の観点から,本件について検討する。
まず,「特定小売等役務」においては,取扱商品の種類が特定されていることから,特定された商品の小売等の業務において行われる便益提供たる役務は,その特定された取扱商品の小売等という業務目的(販売促進目的,効率化目的など)によって,特定(明確化)がされているといえる。そうすると,本件においても,本件商標権者が本件特定小売等役務について有する専有権の範囲は,小売等の業務において行われる全ての役務のうち,合理的な取引通念に照らし,特定された取扱商品に係る小売等の業務との間で,目的と手段等の関係にあることが認められる役務態様に限定されると解するのが相当である(侵害行為については類似の役務態様を含む。)。次に,「総合小売等役務」においては,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品」などとされており,取扱商品の種類からは,何ら特定がされていないが,他方,「各種商品を一括して取り扱う小売」との特定がされていることから,一括的に扱われなければならないという「小売等の類型,態様」からの制約が付されている。したがって,商標権者が総合小売等役務について有する専有権の範囲は,小売等の業務において行われる全ての役務のうち,合理的な取引通念に照らし,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品」を「一括して取り扱う」小売等の業務との間で,目的と手段等の関係にあることが認められる役務態様に限定されると解するのが相当であり(侵害行為については類似の役務態様を含む。),本件においても,本件商標権者が本件総合小売等役務について有する専有権ないし独占権の範囲は上記のように解すべきである。
そうだとすると,第三者において,本件商標と同一又は類似のものを使用していた事実があったとしても,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品」を「一括して取り扱う」小売等の業務の手段としての役務態様(類似を含む。)において使用していない場合,すなわち,i)第三者が,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る」各種商品のうちの一部の商品しか,小売等の取扱いの対象にしていない場合(総合小売等の業務態様でない場合),あるいは,ii)第三者が,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る」各種商品に属する商品を取扱いの対象とする業態を行っている場合であったとして,それが,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う」小売等の一部のみに向けた(例えば,一部の販売促進等に向けた)役務についてであって,各種商品の全体に向けた役務ではない場合には,本件総合小売等役務に係る独占権の範囲に含まれず,商標権者は,独占権を行使することはできないものというべきである(なお,商標登録の取消しの審判における,商標権者等による総合小売等役務商標の「使用」の意義も同様に理解すべきである。)。「総合小売等役務商標」の独占権の範囲を,このように解することによって,はじめて,他の「特定小売等役務商標」の独占権の範囲との重複を避けることができる。
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2011.07. 1
平成23(行ケ)10040 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年06月29日 知的財産高等裁判所
類似する商標であるとした審決が取り消されました。
本件商標と引用商標は,「シュープ」の称呼を生じ得る点で称呼において類似するものの,外観において相違する。また,特定の観念は生じないと解されるから,観念において類否を判断することはできない。また,本件商標に係る取引の実情をみると,原告は,前記1の(4)のとおり,商標「CHOOP」について,長期にわたり,指定商品等への使用を継続してきたこと,雑誌,新聞,テレビや飛行機内での番組提供,テレビCM等を利用して,宣伝広告活動を実施してきたこと,ファションブランド誌や業界誌にも紹介されていること,「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッションブランド」を想起させるものとして,需要者層を開拓してきたこと,その結果,同商標は,ティーン世代の需要者に対して周知となっていることが認められる。他方,引用商標を構成する「Shoop」の欧文字は,「セクシーなB系ファッションブランド」を想起させるものとして,需要者層を開拓してきた,そして,商標「CHOOP」の使用された商品に関心を示す,「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション」を好む需要者層と,引用商標の使用された商品に関心を示す,いわゆる「セクシーなB系ファッション」を好む需要者層とは,被服の趣向(好み,テイスト)や動機(着用目的,着用場所等)において相違することが認められる。そうすると,本件商標と引用商標とは,外観が明らかに相違し,取引の実情等において,原告による「CHOOP」商標が広く周知されていること,需要者層の被服の趣向(好み,テイスト)や動機(着用目的,着用場所等)が相違することに照らすならば,本件商標が指定商品に使用された場合に取引者,需要者に与える印象,記憶,連想は,引用商標のそれとは大きく異なるものと認められ,称呼を共通にすることによる商品の出所の誤認混同を生じるおそれはないというべきである。\n
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2011.06.29
平成23(行ケ)10004 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年06月28日 知的財産高等裁判所
「アイテック阪急阪神」が引用商標「アイテック」に類似するとした審決が取り消されました。
本願商標は,中央から右端にかけて,やや大きな「アイテック阪急阪神」の文字と小さな「株式会社」の文字が黒色で横書きされ,その左側に,「h」の欧文字を2つ重ねたものと理解することができるか,あるいは,上下の波形のようにも見える青色のやや大きな図形を表し,その図形の左下に,青色で右に少し傾いた小さな「i−TEC」の二重文字を横書きしてなるものである。そして,i)「アイテック阪急阪神」の文字が,同じ大きさで一体として記され,中央の大きな面積を占めていること,他方で,ii)「株式会社」の文字は小さく,会社組織を示す一般的な語であること,iii)「i−TEC」の文字は,小さく左下隅に配されており,しかも,「アイテック」の称呼が生じることからすると,中央の「アイテック阪急阪神」の文字部分のうち「アイテック」の部分を欧文字で表すものとして,「アイテック阪急阪神」の文字部分に従属するものと理解されること,iv)図形部分も一見しただけではいかなる意味を持つか理解しにくいものであることからすると,本願商標に接した需要者等は,中央の「アイテック阪急阪神」の文字部分を一体のものとして強く意識することが多いものと認められる。また,「アイテック阪急阪神」の文字部分からは,「アイテックハンキュウハンシン」の称呼を生じるが,この程度であれば,商標として冗長というほどではない。加えて,「i−TEC」の文字や「アイテック」の文字部分は造語ではあるものの,特徴的な外観,観念,称呼を有するものではない。そして,「i」がインフォメーションの頭文字として多方面で使用される欧文字であり,「TEC」もテクノロジーなる科学技術一般を指す単語を表す3文字の欧文字として思い付きやすく語呂のよい文字群であって我が国で広く使用されていることから,「i−TEC」の文字はこの2つを結び付けたにすぎないものとして,識別力において強い印象を与えないのに対して,「阪急阪神」の文字部分は,関西を本拠とする著名な私鉄である阪急と阪神を中心とし,近時村上ファンドの動きにより実現した企業グループのホールディングスとして世間の耳目を集めた阪急阪神グループの略称であって,特に強い印象を与えるものである。このような本願商標においては,「アイテック阪急阪神」の文字部分が一体として把握され,強い自他商品識別力を有するものと理解し,そこに要部を認めるのが自然であり,「i−TEC」の文字や「アイテック」の文字部分だけを抽出して他人の商標との類否を判断するのは相当ではない。次の3における判断においては,この要部を中心に対比するのが相当である。\n
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2011.06.10
平成22(行ケ)10339 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年06月06日 知的財産高等裁判所
商標について取引の実情を考慮して、非類似と判断されました。
証拠(甲17の1〜3,甲18の1〜6,甲19の1ないし4,甲20の1ないし4,甲21の1ないし3,乙13)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成20年1月より,本願商標を使用したヒアルロン酸及びコラーゲン配合の健康食品(原告商品)の販売を開始したこと,その商品名は「本草製薬の潤煌」であり,実際の取引において原告は「潤煌」の部分につき「ウルオウ」と称呼して原告商品を販売していること(したがって,電話による取引においても「ホンゾウセイヤクノウルオウ」若しくは「ウルオウ」という称呼で取引されているものと推認される。),原告商品は1包2グラムの粉末であり,20包入りと60包入り等の箱で販売されているが,その箱の表面中央及びスティック状の各包の表\\面に本願商標が使用されており,また,インターネット上の広告においても,本願商標が中央に大きく表示された原告商品の箱の写真を掲載し,商品名を「本草製薬の潤煌」と明記して販売していること,一方,引用商標1のうち「潤甦」の文字が付された商品は,その商標権者が販売する「コンドロビー濃縮液」と称する720ミリリットル瓶(甲21の1,2)に詰められた清涼飲料水(コンドロイチン硫酸含有食品)であり,瓶のラベル及びその瓶を収納する箱に,黒い縁取りのある金色の文字で「潤甦」と大きく表\\示され,その上段に小さく平仮名で「じゅんこう」と表示されており,その全体的な表\\記はほぼ引用商標3と同一であることが認められる。そうすると,本願商標が使用されている原告商品と引用商標1及び3が使用されている商品とは双方とも健康食品であるという点では共通性があるものの,商品の構成及びその販売形態は著しく異なるものと認められるから,実際の取引においては,商品の出所の誤認混同をきたすおそれがあるとはいえない。\n
◆判決本文
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2011.05.20
平成23(行ケ)10003 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年05月17日 知的財産高等裁判所
商標「出版大学」を大学以外の者が使用することは、役務の提供主体を誤認させるとして拒絶した審決が維持されました。拒絶根拠条文は4条1項7号です。
このように,日本においては学問ないし学術分野として「出版学」と称して,出版に関する学術の研究等がなされ,大学における教授の対象となっていること,「教育内容を想起させる語+『大学』」という組合せからなる名称の大学が少なからず存在することからすれば,本願商標を構成する「出版大学」の文字部分は,学校教育法に基づいて設置された大学の名称を表\示したものであるかのように看取され観念される可能性が高いというべきである。そして,本願商標の指定役務には「技芸・スポーツ又は知識の教授」があり,この中には,学校教育法で定める学校において知識等を教授し又は教育する役務が含まれるところ,学校教育法に基づいて設置された大学の名称(出版大学)と看取される可能\性の高い文字部分を含む本願商標を上記役務に使用するときには,これに接する一般需要者に対し,当該役務の提供主体が,あたかも学校教育法に基づいて設置された大学であるかのような誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。学校教育法は,1条で「この法律で,学校とは,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,大学及び高等専門学校とする。」,3条で「学校を設置しようとする者は,学校の種類に応じ,文部科学大臣の定める設備,編制その他に関する設置基準に従い,これを設置しなければならない。」,135条1項で「専修学校,各種学校その他第1条に掲げるもの以外の教育施設は,同条に掲げる学校の名称又は大学院の名称を用いてはならない。」と規定しているところ,これは,一定の教育又は研究上の設置目的を有し,法令に定める設置基準等の条件を具備する同法1条に定める学校の教育を公認するとともに,1条に掲げる学校以外の教育施設が1条掲記の「学校の名称」を用いることによって,これに接した者が当該教育施設の基本的性格について誤った認識を持ち,不利益を被らないようにするためのものと解される。このような学校教育法の規定からすると,「大学」との名称を用いる教育施設は,学校教育法所定の最高学府であると一般に認識されるものであるから,本願商標によって生じる前記のような観念からすると,本願商標が使用される役務次第では,このような意味を持つ「出版」という学問,研究分野についての大学に関連する商標との認識が持たれることになりかねない。原告が主張するところによっても,原告は教育施設を擁するものではないから,「大学」という名称を用いても直ちに学校教育法135条1項の規定に違反するとはいえないかもしれない。しかしそうだとしても,学校教育法に基づいて設置された大学を表示するものと誤認されるおそれのある本願商標をその指定役務に含まれる「技芸・スポーツ又は知識の教授」の役務に使用することになれば,これに接した需要者に対し,役務の提供主体があたかも学校教育法に基づいて設置された大学であるかのように誤認を生じさせることになり,教育施設である「学校」の設置基準を法定した上で,この基準を満たした教育施設にのみその基本的性格を表\示する学校の名称を使用させることによって,学校教育制度についての信頼を維持しようとする学校教育法135条1項の趣旨ないし公的要請に反し,学校教育制度に対する社会的信頼を害することになるというべきである。
◆判決本文
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2011.04.28
平成22(行ケ)10327 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年04月27日 知的財産高等裁判所
指定役務「資金の貸し付け」について、取引の実情等を総合考慮して出所混同のおそれはないと判断し、拒絶審決が取り消されました。
本願商標からは,別紙商標目録1に記載したとおりの「MITSUI SUMITOMO CARD Gold Loan」の外観を呈し,「ミツイスミトモカードゴールドローン」ないし「ゴールドローン」との称呼を生じさせる。本願商標から,特定の観念は生じないというべきであるが,原告である三井住友カード株式会社の提供するローンの種類であるとの観念を生じさせることもあり得るといえる。これに対し,引用商標からは,別紙商標目録2に記載したとおり「CitiGold Loan」の外観を呈し,「シティゴールドローン」ないし「シティゴールド」との称呼を生じさせるが,特定の観念は生じない。なお,「シティゴールド ローン」ないし「シティゴールド」から,需要者,取引者に対して,シティバンク銀行株式会社等が属するシティグループが提供する,ローンないし金融サービスとの観念を生じさせることもあり得るといえる。以上の事実を前提とすれば,本願商標と引用商標とは,その外観,称呼において相違する。また,観念においては,特定の観念が生じないので,対比することはできないが,観念が生じるとすれば,その限りで相違する。さらに,本願商標及び引用商標の指定役務は,いずれも「資金の貸付け」であるところ,一般に,その需要者,取引者である資金の借主にとっては,資金の貸主が誰であるかは,最も重要な要素の一つであるから,契約を締結するに当たり,相応の注意を払った上で,貸主が誰であるかを確認するものと推認されることなど,指定役務の内容を含めた取引の実情等を総合考慮するならば,取引者,需要者において,両商標における役務の出所について混同を来すおそれは認められないと解すべきであって,両商標は類似しない。・・・被告は,本願商標及び引用商標の指定役務である「資金の貸付け」を取り扱う業界においては,商品及び役務の主体を表示する代表\的な出所表示(ハウスマーク)とともに,商品及び役務の種類を個別化して特定するための個別商標(ペットマーク)を使用している実情があり,引用商標についても,「Citi」がハウスマークに相当し,「Gold Loan」がペットマークに相当すると主張する。しかし,前記認定した取引の実情に照らすならば,引用商標は,「CitiGold」の部分が取引者,需要者に対して役務の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるから,「Citi」の部分を除外した「Gold Loan」の文字部分が,自他役務の識別標識としての機能を果たすとすることは考えにくい。のみならず,本件全証拠によるも,引用商標について,「Gold Loan」の文字部分が,独立して自他役務の識別標識としての機能を果たしていると認めるに足りる証拠は存在しない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。\n
◆判決本文
◆関連事件です。こちらは,「CitiGold Loan」と「Gold Loan」それ自体が非類似と判断されました。平成22(行ケ)10327
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2011.04.28
平成22(行ケ)10332 審決取消 商標権 行政訴訟 平成23年04月25日 知的財産高等裁判所
「天下米」が引用商標「天下」に類似するとして4条1項11号違反とした拒絶審決が維持されました。原告は、「天下米」と原告会社名「土橋商店」を検索エンジンで検索したところ1万2800件ヒットするので、周知であり識別可能と主張しましたが、これも認められませんでした。
原告は,インターネット上,本願商標の「天下米」と原告名「土橋商店」をキーワードとして検索すると,多数ヒットすることからすれば,本願商標「天下米」と原告は決して無名ではなく,相当広い範囲で周知であると主張するが,広くインターネットが普及した現代社会において,この程度の事実によって,原告と本願商標との結びつきが全国的にみた一般需要者にとって周知であるとまで認めるには足りない。
◆判決本文
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