2022.12.13
令和4(行ケ)10041 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年10月31日 知的財産高等裁判所
御守りと記載された御守りの図形商標について、文字商標「おまもり」などの先願有りといして拒絶された審決の取消を求めました。知財高裁は、審決の判断を維持しました。ぐるなびが出願人で、指定商品・役務は35類小売など、39類輸送、41類娯楽情報の提供などです。
原告は、前記第3の 1 のとおり、本願商標の構成中の「御守」の文字は\n御守の内容・種類を表しているにすぎず、全体的なデザインとともに一体的\nに把握されるものであるから、本願商標がその指定役務に使用される場合、
本願商標からは役務の出所識別標識としての「オマモリ」の称呼及び「御守」
の観念は生じない旨主張する。
しかしながら、前記1(1)のとおり、御守袋の上に「御守」と表示されてい\nる本願商標は、御守袋の形状の図案それ自体からして、「御守」の観念を生じ、
「オマモリ」の称呼が生じるものといえるところ、その表面の「御守」の文\n字は、その表面中央にあって文字として記載され、かつ、文字としてはその\n記載しかない以上は、当然のこととして、当該御守袋が何であるかを示すも
のというべきであり、そこからも「御守」の観念を生じ、「オマモリ」の称呼
が生じることは明らかである。そして、本願商標に係る指定役務のうち、少
なくとも、おむつ、食品、化粧品、ペット用品、ベビーオイル等を含む第3
5類の商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
(以下「小売等役務」という。)について、御守が、これら商品の小売等役務
の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法又\nは時期その他の特徴、数量又は価格と関連性を有することは想定できないか
ら、上記のように本願商標から生じる「御守」の観念や「オマモリ」の称呼
が本願商標の当該指定役務の内容、対象そのものを示すものとは理解されな
い。 このように本願商標から生じる「御守」の観念や「オマモリ」の称呼が本
願商標の当該指定役務の内容、対象を示すものとはいえない以上は、これら
の観念や称呼が役務の出所識別標識として生じる可能性を否定することはで\nきないから、原告の上記主張を採用することはできない。
(2) 商標の類否判断の誤りの主張について
本願商標の構成全体から格別の称呼、観念が生ずることはないことを前提\nとする原告の主張(前記第3の 1 ア)については、その前提に誤りがある
ことは前記のとおりであるから、採用することができない。
次に、原告は、前記第3の 1 イのとおり、仮に、本願商標から「オマモ
リ」の称呼、護符(御守)の観念が生じたとしても、本願商標は、全体とし
て「白色の二重叶結びの紐を有し、ピンク色の桜の花弁模様を配し、『御守』
の文字を御守袋の表面に表\した赤色の御守」との印象を強く抱かせるもので
あるから、本願商標と引用商標の外観上の顕著な相違から看取できる印象は、
称呼及び観念から看取できる印象を凌駕している旨主張する。
しかしながら、本願図形部分である、「白色の二重叶結びの紐、ピンク色の
花弁模様及び赤色の色彩」のうち、「白色の二重叶結びの紐」は御守袋の特徴
にほかならず、また、「ピンク色の花弁模様及び赤色の色彩」は御守袋として
は格別印象に残るような形状・色彩を有するものではないから御守袋を構成\nする地模様と認識されるのがせいぜいのところであり、それらが単独で看者
に強い印象を与えるものではない。
そうすると、本願商標から生じる「オマモリ」の称呼及び護符(御守)の
観念が本願図形部分から看取できる印象に凌駕されることはない。
したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
(3) 指定商品・指定役務の類否判断の誤りの主張について
原告は、引用商標1の指定商品の製造・販売と小売等役務の提供が同一事
業者によって行われていることは通常とまではいえないから、引用商標1の
指定商品を同指定商品に係る小売等役務を提供する事業者が製造又は販売す
る商品であると誤認するおそれがあるとはいえない旨主張する。
しかしながら、ある製品の製造業者が当該製品の販売場を持つなどして、
当該販売場を置くとともに、同時に、顧客に対する当該製品の品揃え・陳列、
接客等のサービスを提供するなどして小売等役務の提供場所とし、当該製品
の販売行為を促進して最終的には当該製品の販売行為により収益を上げよう
とすることは、自然な商業的取引の在り様といえ、これと異なる特殊な事情
がない限りは、通常行われることと推認されるものというべきである。
そして、引用商標1の指定商品について、その製造・販売と小売等役務の
提供が別事業者によって行われていることが通常であるとするような特殊な
事情は本件証拠からは認められず、かえって、本願商標の指定役務である「菓
子、パン、サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットド
ッグ、ミートパイ」の小売等役務に係る商品と、これに類似する引用商標1
の指定商品である「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除
く。)、パン」について、自社工場を持つ営業主がそれら製品を自社店舗で販
売するなど、その製造販売と小売等役務が同一営業主によって行われること
がよくあるとの実情は公知の事実ともいえ、被告からも、その一例の指摘が
ある(乙11ないし17)。
◆判決本文
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2022.12. 8
令和4(行ケ)10033 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年11月21日 知的財産高等裁判所
商標「MIRAI」(指定商品12類「車」など)が、4条1項15号違反かかが争われました。知財高裁は、分割要件を満たさず、出願日遡及無しとした審決を維持しました。出願人は、印紙代無しの大量出願で業界を騒がせた例の人です。商標は最後にあります。デザイン化されており、そもそもMIRAIと読めるのか?等はあります。同項15号は、出願日に該当しなければ適用がないので、分割要件を満たすのか?も争われています。
商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と
他人の表示との類似性の程度、他人の表\示の周知著名性及び独創性の程度、
当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目
的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取
引の実情等に照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普
通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである。
商標法4条1項15号に該当する商標であっても、商標登録出願の時にこ
れに該当しなければ、同号は適用されないので(同条3項)、本件において商
標登録出願がいつであるかが問題となる。
この点につき、原告は、前記第3の1(1)のとおり、商標法施行規則22条2
項は違憲違法であり、その結果、本願は商標法10条1項による商標登録出
願の要件を満たすものとなり、同条2項が規定する出願日遡及の効果が生ず
るから、本件における出願日は、原々商標登録出願がされた平成26年9月
8日になる旨主張するので、以下検討する。
商標法10条1項は、「商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若し
くは再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の
審決に対する訴えが裁判所に係属している場合であって、かつ、当該商標登
録出願について第76条第2項の規定により納付すべき手数料を納付してい
る場合に限り、2以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登
録出願の一部を1又は2以上の新たな商標登録出願とすることができる。」
と定めている。
このように、分割出願においては、もとの商標登録出願の指定商品等を2
以上に分けることが当然の前提となっているから、もとの商標登録出願と分
割出願で指定商品等が重複するのを避けるため、もとの商標登録出願から分
割出願に係る指定商品等を削除する必要がある。
この点につき、平成17年最高裁判決は、「商標法10条は、「商標登録出
願の分割」について、新たな商標登録出願をすることができることやその商
標登録出願がもとの商標登録出願の時にしたものとみなされることを規定し
ているが、新たな商標登録出願がされた後におけるもとの商標登録出願につ
いては何ら規定していないこと、商標法施行規則22条4項は、商標法10
条1項の規定により新たな商標登録出願をしようとする場合においては、新
たな商標登録出願と同時に、もとの商標登録出願の願書を補正しなければな
らない旨を規定していることからすると、もとの商標登録出願については、
その願書を補正することによって、新たな商標登録出願がされた指定商品等
が削除される効果が生ずると解するのが相当である。」旨説示して、新たな商
標登録出願がされたことにより、当然にもとの商標登録出願が補正されるも
のとはいえないことを明らかにしている。そうすると、上記のように、もとの
商標登録出願と分割出願で指定商品等が重複するのを避けるためには、もと
の商標登録出願から分割出願に係る指定商品等を削除する補正が必要となる
ことは、商標法10条1項自体が想定しているものということができる。
そして、商標法施行規則22条2項は、特許法施行規則30条を準用し、商
標法10条1項の規定により新たな商標登録出願をしようとする場合におい
て、もとの商標登録出願の願書を補正する必要があるときは、その補正は、新
たな商標登録出願と同時にしなければならないとしているところ、これは、
もとの商標登録出願から分割出願に係る指定商品等を削除する必要が生ずる
という、同項が想定する事態に対処するものであるというべきであり、上記
最高裁判決も、このような意味で、商標法施行規則22条4項(現2項)が商
標法10条1項に適合することを明らかにしていると理解される。
本件においては、そもそも、本願の商標登録出願時はもとより現在に至る
まで、原商標登録出願について、本願に係る指定商品を削除する補正がされ
たとは認められず、商標法施行規則22条2項の要件を欠くばかりか、もと
の商標登録出願の指定商品等を2以上に分けるという前記 の分割の前提を
も欠くものである。そうすると、本願の商標登録出願は、商標法10条1項の
規定による商標登録出願の要件を満たすものではないから、分割出願として
不適法であり、同条2項が規定する出願日遡及の効果は生じないものであり、
これと同旨の本件審決の判断に誤りはなく、出願時は平成27年9月24日
となる。
2 本願商標の商標法4条1項15号該当性について
(1) 引用商標の周知著名性について
トヨタ社は、平成25年11月20日から同年12月1日に開催された第
43回東京モーターショー2013にトヨタ燃料電池車を出展し(乙98)、
平成26年9月6日付けの日本経済新聞(乙34)では、トヨタ社がトヨタ燃
料電池車の名称を「ミライ」とし、米国の特許商標庁に「TOYOTA MI
RAI」を商標登録する手続を進めていることが報じられている。
そして、トヨタ社は、同年11月18日、トヨタ燃料電池車を同年12月1
5日に販売し、その名称は「MIRAI(ミライ)」となる旨発表し、新聞各\n紙やウェブサイトで報じられ(乙4ないし6、35、36等)、これらの記事
のうち、写真が掲載されているものについては、モデル車両のボディやナン
バープレートに引用商標が表示されている。\nまた、平成27年1月15日には、自動車関係のウェブサイトでトヨタ燃
料電池車が同年の受注目標400台に対し1500台を受注したことが報じ
られ(乙9)、同月23日には、産経新聞で、トヨタ燃料電池車の生産能力を\n平成29年に増強することが報じられており(乙10、91)、その他、本件
出願前に、水素と空気中の酸素が反応して走る環境負荷の低い自動車として、
トヨタ燃料電池車が官邸や地方公共団体に納入されたことが報じられている
(乙38、87、89、90)。これらの記事のうち、写真が掲載されている
ものについては、モデル車両のナンバープレートに引用商標が表示され、そ\nれ以外のものについては、本文で「MIRAI(ミライ)」の表示があること\nが確認できる。
以上によれば、引用商標は、本願商標の商標登録出願時には、自動車の取引
者及び需要者の間で、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するも\nのとして周知著名だったものというべきである。
また、本願商標の指定商品「航空機、航空機の部品及び附属品、鉄道車両、
鉄道車両の部品及び附属品」と引用商標が使用される「燃料電池車」は、人や
物品の輸送を目的とするもので、商品の用途や取引者及び需要者に共通性が
あるし、大手企業において多角経営が行われることは一般的であり、トヨタ
社の燃料電池車(MIRAI)の技術を応用した水素で走るハイブリッド鉄
道車両開発をトヨタ社、JR東日本及び日立製作所が進めていること(乙6
3、96)も考慮すると、本願商標の指定商品と引用商標が使用される「燃料
電池車」とは、密接な関連性を有しているといえる。このように、本願商標の
指定商品と引用商標が使用される商品の関連性並びに取引者及び需要者の共
通性が認められるから、本願商標の指定商品の取引者、需要者の間において
も、引用商標は、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するものと\nして周知著名だったものというべきである。
そして、証拠(乙1ないし3、19ないし22、25ないし33、42ない
し87等)によれば、本願商標の商標登録出願日以降も、トヨタ社はトヨタ燃
料電池車に引用商標や「MIRAI」の欧文字等を使用し、「MIRAI」や
「ミライ」の文字は、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車の名称を表示\nする商標として、新聞やウェブサイトに取り上げられており、上記周知著名
性は、現在に至るまで維持されているといえる。
なお、原告は、前記第3の1(2)のとおり、別件商標が平成25年12月25
日に出願され、その後商標登録されていることからすると、引用商標が、トヨ
タ燃料電池車を表示するものとして、平成26年9月7日以前より、需要者\nの間においても広く知られていたとの本件審決の認定は疑わしいなどと主張
する。
しかし、別件商標の存在は、トヨタ燃料電池車が上記出願日及びそれ以降
に周知著名性を有するとの判断を左右するものではないから、原告の主張は、
当を得ないものというほかない。
(2) 本願商標と引用商標の類似性の程度について
ア 本願商標
本願商標は標準文字・ローマ字の「MIRAI」からなり、「ミライ」の
称呼を生じる。
また、本願商標は、日本語の「未来」に由来することが容易に理解でき、
同観念を生じるほか、前記(1)のとおり、引用商標がトヨタ燃料電池車を表\n示するものとして、本願商標の指定商品の取引者及び需要者並びに自動車
の取引者及び需要者の間で周知著名であることから、「トヨタ燃料電池車
のブランド名」の観念も生じる。
イ 引用商標
引用商標は「MIRAI」の文字をデザイン化したものと認識すること
ができ、引用商標からは「ミライ」の称呼を生じる。
また、引用商標及び「MIRAI」の文字は、引用商標がトヨタ燃料電池
車を表示するものとして、自動車の取引者及び需要者並びに本願商標の指\n定商品の取引者及び需要者の間で周知著名であることから、「未来」の観念
と共に、「トヨタ燃料電池車のブランド名」の観念も生じる。
ウ 類否
引用商標は「MIRAI」の欧文字をデザイン化したものであるから、本
願商標と引用商標は外観上相紛れるものである。本願商標と引用商標は「ミライ」の称呼を共通にする。本願商標と引用商標は、「未来」及び「トヨタ燃料電池車のブランド名」という観念においても共通する。そうすると、本願商標と引用商標は類似し、その類似性の程度は高いものというべきである。
(3) 混同のおそれについて
以上(1)及び(2)において認定したとおり、引用商標は、本願商標の商標登録
出願日である平成27年9月24日には、本願商標の指定商品の取引者及び
需要者並びに自動車の取引者及び需要者の間で、トヨタ社の取扱に係る燃料
電池車を表示するものとして周知著名であり、現在に至っていること、本願\n商標と引用商標は類似し、その類似性の程度は高いことからすると、本願商
標は、原告がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をし
て、引用商標を連想又は想起させ、その商品がトヨタ社あるいは同社と経済
的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのよ
うに、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきで
ある。
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2022.11.29
令和3(行ケ)10081 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年10月18日 知的財産高等裁判所
原告はもともと「ゴミサー」という登録商標を保有するメーカで、被告は原告の代理店でした。代理店契約消滅後、原告は、商標権の更新をしなかったために、当該商標権は消滅しました。被告は、これを知って、同じ商標を出願しました。原告は周知性違反などを主張しましたが、無効理由なしとした審決が、知財高裁でも維持されました。
(ウ) 上記(イ)のとおり、平成12年度ないし平成18年度の業務用生ごみ
処理機全体の市場における原告商品の占有率は、概ね10%前後で推移
していたといえるところ、弁論の全趣旨によれば、平成19年度ないし
平成26年度も同程度の市場占有率であったと認められる。
(エ) 以上のとおり、平成12年度から平成26年度までの間、原告商品の
市場占有率は、概ね10%前後にとどまっていたことからすれば、本件
商標の出願時以前において、原告商品が高い市場占有率を有していたも
のとはいえない。
ウ 原告商品の販売台数について
(ア) 前記1(1)エのとおり、原告商品は、販売を開始した平成4年から本件
商標が出願された前年である平成26年までの間に累計で2514台が
販売されたものの、年間の販売台数は、平成11年の284台をピーク
に年々減少し、平成16年に100台を下回って以降は毎年70台前後
で推移していたものである。
(イ) 以上のとおり、原告商品の販売台数は、最も多かった年でも284台
にとどまる上、本件商標の出願時以前の約10年間は毎年70台前後で
推移してきたことからすれば、本件商標の出願時以前において、原告商
品の販売台数が多かったとはいえない。
エ 原告商品に関する報道、広告宣伝等について
(ア) 前記1(2)のとおり、原告は平成6年、平成8年及び平成12年に各種
の賞を受賞し、原告商品は平成9年、平成15年及び平成17年に新聞
報道において取り上げられたことがあったものの、これらはほとんどが
山形県内又は酒田市内における受賞歴又は報道歴である上、その後、本
件商標の出願時までの約10年間において、原告又は原告商品に関する
報道がされたなどの事情は存しない。
(イ) また、原告商品に係る広告宣伝活動についてみても、原告商品につい
ては、販売代理店であった被告において通常の営業活動を超える広告宣
伝活動がされていたなどの事情は存せず、また、原告において多額の広
告宣伝費を支出していたなどの事情も存しない。
オ 引用商標の周知性について
(ア) 上記イ及びウのとおり、本件商標の出願時以前において、原告商品が
高い市場占有率を有していたものとはいえず、また、原告商品の販売台
数が多かったとはいえない。これに加え、上記エのとおり、原告の受賞
歴や原告商品に係る報道歴は、ほとんどが山形県内又は酒田市内におけ
るものであった上、原告商品に関し、本件商標の出願時以前の約10年
間における報道歴はないこと、原告商品について特別な広告宣伝活動が
されていたなどの事情は存しないことも考慮すると、原告商品が平成4
年から20年以上にわたって販売されてきた商品であることや、一般に
業務用生ごみ処理機が相当程度高額な商品であるとうかがわれること
(甲7)などを考慮しても、本件商標の出願時及び登録査定時において、
原告商品が高い知名度を有する商品であり、原告商品の名称である引用
商標が周知であったと認めることはできない。
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2022.11.25
令和4(行ケ)10041 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年10月31日 知的財産高等裁判所
審決では、図形商標内にある「御守」の文字について、図形と一体と認識すべきとして、4条1項11号に該当すると判断されました。知財高裁もこれを維持しまし。判決文の最後に本件商標があります。
原告は、前記第3の 1 のとおり、本願商標の構成中の「御守」の文字は\n御守の内容・種類を表しているにすぎず、全体的なデザインとともに一体的\nに把握されるものであるから、本願商標がその指定役務に使用される場合、
本願商標からは役務の出所識別標識としての「オマモリ」の称呼及び「御守」
の観念は生じない旨主張する。
しかしながら、前記1(1)のとおり、御守袋の上に「御守」と表示されてい\nる本願商標は、御守袋の形状の図案それ自体からして、「御守」の観念を生じ、
「オマモリ」の称呼が生じるものといえるところ、その表面の「御守」の文\n字は、その表面中央にあって文字として記載され、かつ、文字としてはその\n記載しかない以上は、当然のこととして、当該御守袋が何であるかを示すも
のというべきであり、そこからも「御守」の観念を生じ、「オマモリ」の称呼
が生じることは明らかである。そして、本願商標に係る指定役務のうち、少
なくとも、おむつ、食品、化粧品、ペット用品、ベビーオイル等を含む第3
5類の商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
(以下「小売等役務」という。)について、御守が、これら商品の小売等役務
の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法又\nは時期その他の特徴、数量又は価格と関連性を有することは想定できないか
ら、上記のように本願商標から生じる「御守」の観念や「オマモリ」の称呼
が本願商標の当該指定役務の内容、対象そのものを示すものとは理解されな
い。
このように本願商標から生じる「御守」の観念や「オマモリ」の称呼が本
願商標の当該指定役務の内容、対象を示すものとはいえない以上は、これら
の観念や称呼が役務の出所識別標識として生じる可能性を否定することはで\nきないから、原告の上記主張を採用することはできない。
(2) 商標の類否判断の誤りの主張について
本願商標の構成全体から格別の称呼、観念が生ずることはないことを前提\nとする原告の主張(前記第3の 1 ア)については、その前提に誤りがある
ことは前記のとおりであるから、採用することができない。
次に、原告は、前記第3の 1 イのとおり、仮に、本願商標から「オマモ
リ」の称呼、護符(御守)の観念が生じたとしても、本願商標は、全体とし
て「白色の二重叶結びの紐を有し、ピンク色の桜の花弁模様を配し、『御守』
の文字を御守袋の表面に表\した赤色の御守」との印象を強く抱かせるもので
あるから、本願商標と引用商標の外観上の顕著な相違から看取できる印象は、
称呼及び観念から看取できる印象を凌駕している旨主張する。
しかしながら、本願図形部分である、「白色の二重叶結びの紐、ピンク色の
花弁模様及び赤色の色彩」のうち、「白色の二重叶結びの紐」は御守袋の特徴
にほかならず、また、「ピンク色の花弁模様及び赤色の色彩」は御守袋として
は格別印象に残るような形状・色彩を有するものではないから御守袋を構成\nする地模様と認識されるのがせいぜいのところであり、それらが単独で看者
に強い印象を与えるものではない。
そうすると、本願商標から生じる「オマモリ」の称呼及び護符(御守)の
観念が本願図形部分から看取できる印象に凌駕されることはない。
したがって、原告の上記主張を採用することはできない。
(3) 指定商品・指定役務の類否判断の誤りの主張について
原告は、引用商標1の指定商品の製造・販売と小売等役務の提供が同一事
業者によって行われていることは通常とまではいえないから、引用商標1の
指定商品を同指定商品に係る小売等役務を提供する事業者が製造又は販売す
る商品であると誤認するおそれがあるとはいえない旨主張する。
しかしながら、ある製品の製造業者が当該製品の販売場を持つなどして、
当該販売場を置くとともに、同時に、顧客に対する当該製品の品揃え・陳列、
接客等のサービスを提供するなどして小売等役務の提供場所とし、当該製品
の販売行為を促進して最終的には当該製品の販売行為により収益を上げよう
とすることは、自然な商業的取引の在り様といえ、これと異なる特殊な事情
がない限りは、通常行われることと推認されるものというべきである。
そして、引用商標1の指定商品について、その製造・販売と小売等役務の
提供が別事業者によって行われていることが通常であるとするような特殊な
事情は本件証拠からは認められず、かえって、本願商標の指定役務である「菓
子、パン、サンドイッチ、中華まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、ホットド
ッグ、ミートパイ」の小売等役務に係る商品と、これに類似する引用商標1
の指定商品である「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除
く。)、パン」について、自社工場を持つ営業主がそれら製品を自社店舗で販
売するなど、その製造販売と小売等役務が同一営業主によって行われること
がよくあるとの実情は公知の事実ともいえ、被告からも、その一例の指摘が
ある(乙11ないし17)。
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2022.09.16
令和4(行ケ)10034 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年9月14日 知的財産高等裁判所
フランチャイジーが契約解除のわずか4日後に出願した商標について、公序良俗違反(4条1項7号)の無効審決がなされました。知財高裁もかかる判断を維持しました。
本件契約書には、「『XPERIA 修理王』ブランドでの XPERIA 等修理経営
のための FC 契約関係を形成する」(第1条)、「『XPERIA 修理王』の商標…
の使用を許諾する。」(第4条1項)とある(前記1 イ 、 )ものの、「本
契約において本部が加盟者に提供する FC サービスの内容は、次の各号とす
る。…2)商標・商号・その他の表示の提供」(第2条)、「本部は、加盟者にお\nける XPERIA 等修理業経営について『XPERIA 修理王』の商標・サービスマ
ーク、その他営業シンボル・著作物の使用を許諾する。」(第4条1項)、「第
1項に定める許諾に関しては、以下を条件とする。1)加盟者との本契約期間
中ならびに加盟者の事業所内に限る。」(第4条3項)とあり(前記1 イ 、
)、被告は、原告に対し、原告が本件フランチャイズ契約に基づいて運営す
る店舗の屋号を「スマホ修理王 新宿店」、「XPERIA 修理王 新宿店」と指
定する旨を通知し(前記1 ウ)、原告は、少なくとも本件フランチャイズ契
約の契約期間中、運営するスマートフォンの修理業に関し「XPERIA 修理王
by スマホ修理王新宿店」の名称を使っていた(前記1 オ)ことからすると、
本件フランチャイズ契約においてフランチャイザーである被告がフランチャ
イジーである原告に提供し、許諾の対象となる「商標・商号・その他の表示」\nには、「XPERIA 修理王」だけでなく「スマホ修理王」の商標も含まれるもの
と解される(なお、原告は、本件商標(標準文字の「スマホ修理王」)は本件
フランチャイズ契約で規定されていない旨主張するが、上記のとおりである
から採用できない。)。
また、原告は、被告が開設する「スマホ修理王 FC 加盟申し込みホームペ\nージ」を利用して本件フランチャイズ契約の申込みをしていること(前記1\nア)、本件フランチャイズ契約終了後、被告より、ウェブサイト等から
「XPERIA 修理王」及び「修理王」の名称を削除するよう求められたのに応
じて、本件ウェブサイトの「XPERIA 修理王 by スマホ修理王新宿店」(スマ
ホ修理王の部分は引用商標2)の名称を「新宿駅前 XPERIA 修理専門店」と
変更していること(前記1 ウないしオ)からすると、原告は、「スマホ修理
王」の商標(引用商標1、2)は被告がフランチャイズ事業で使用しており、
その使用のためには被告の許諾が必要であることを十分に認識し、現にその\nような認識の下で、被告のフランチャイジーとして「スマホ修理王」の商標
を使用していたと解するのが相当である。
そうであるにもかかわらず、原告は、本件フランチャイズ契約に関し、平
成30年3月30日付けで、本件解除がされ、WEB サイト等から『XPERIA
修理王』および『修理王』の名称を削除するよう求められたその4日後に本
件商標の登録出願に及び、令和元年8月30日に本件商標の設定登録を受け
ると、同年12月20日付けで、フランチャイザーであった被告に対し、被
告が展開するフランチャイズ事業で「スマホ修理王」の商標を使用すること
が本件商標の商標権侵害に当たる旨を警告し(前記1 ア、イ)、本件商標の
放棄又は譲渡のために50万円(税別)を支払う用意があると通知した被告
に対し、本件商標の商標権買取価格を含め合計2670万円のライセンス契
約を提案し、代理人間の協議においても100万円から300万円程度では
受け入れられない旨回答した(前記1 イ、ウ)ことが認められる。こうした事実経過等に鑑みれば、本件商標の登録出願は、元フランチャイジーである原告が、被告から本件解除をされたわずか4日後に行ったものであり、これまでと同様の名称を使用することにより被告の顧客吸引力を利用し続けようとしたものと評価せざるを得ず、元フランチャイジーとして遵守すべき信義誠実の原則に大きく反するものであるのみならず、「スマホ修理王」の名称でフランチャイズ事業を営んでいる被告がその名称に係る商標登録を経ていないことを奇貨として、被告によるフランチャイズ事業を妨害する加害目的又は本件商標を高額で被告に買い取らせる不当な目的で行われたものというべきである。
このような本件商標の登録出願の目的や経緯等に鑑みれば、本件商標の出
願登録は、商標制度における先願主義を悪用するものであり、社会通念に照
らして著しく社会的相当性を欠く事情があるというべきであって、こうした
商標の登録出願及び設定登録を許せば、商標を保護することにより商標の使
用する者の業務上の信用を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要
者の利益を保護することを目的とする商標法の目的に反することになりかね
ないから、本件商標は、公の秩序に反するものであるというべきであって、
商標法4条1項7号に該当する。
なお、原告は、本件審決は原告が享有すべき職業選択の自由を著しく狭く
解した不当な判断であると主張するが、事業において使用する特定の屋号等
の選択が職業選択の自由に含まれるものとしても、他人がその商標で築き上
げた信用の希釈又は特定の商標との混同等を理由として特定の商標の使用が
制限されることはやむをえないものであるし、もとより本件商標以外の屋号
等を選択することは可能であるから、原告の主張は当を得ないものというべ\nきであり、その他原告が縷々主張するところによっても、上記認定は左右さ
れ得ない。
◆判決本文
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2022.09.15
令和3(行ケ)10110 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年7月14日 知的財産高等裁判所
商標「ザプレミアムチロリアン(標準文字)」が商標「チロリアン」と類似するかが争われました。知財高裁(1部)は、類似しないとした審決を維持しました。
ア 本件商標は、「ザプレミアムチロリアン」の文字を標準文字で表してなり、\n「ザ」「プレミアム」の文字部分と「チロリアン」の文字部分とから構成さ\nれる結合商標である。本件商標を構成する文字は、外観上、同書、同大、\n同間隔で一連表記されており、構\成文字に相応して、「ザプレミアムチロリ
アン」の称呼が生じる。
次に、「ザ」の文字部分は、定冠詞「the」の片仮名表記であり、「プ\nレミアム」の文字部分は、「一段上等・高級であること」(広辞苑第七版)
といった意味を有する語として、「チロリアン」の文字部分は、「チロルの
人々。オーストリア西部からイタリア北東部にまたがるチロルの山岳地帯
に住む人々の用いる独特の民族服」(ブリタニカ国際大百科事典)、「チロル
地方の。チロル風の」(広辞苑第七版)といった意味を有する語として一般
に理解されていることが認められる。このような上記各文字部分の観念及
びそれぞれの称呼に照らすと、本件商標を構成する文字は、外観上、同書、\n同大、同間隔で一連表記されていることを勘案しても、本件商標において\n「ザ」「プレミアム」の文字部分と「チロリアン」の文字部分を分離して観
察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合してい
るものとは認められない。
そして、前記1(2)認定のとおり、標章「チロリアン」は、本件商標の登
録審決日(令和元年10月1日)当時、福岡県を中心とした九州地方にお
いて、菓子の取引者、需要者の間で、特定の菓子(菓子「チロリアン」)の
ブランド名として広く認識され、全国的にも相当程度認識されていたこと
に照らすと、本件商標がその指定商品中の「菓子」に使用された場合には、
本件商標の構成中の「チロリアン」の文字部分は、菓子のブランド名を示\nすものとして注意を惹き、取引者、需要者に対し、相当程度強い印象を与
えるものと認められる。
そうすると、本件商標の構成中「チロリアン」の文字部分は、独立して\n商品の出所識別標識として機能し得るものと認められるから、本件商標か\nら上記文字部分を要部として抽出し、これと引用商標1とを比較して商標
そのものの類否を判断することも、許されるというべきである。
イ これに対し、被告は、1)本件商標は、「ザプレミアムチロリアン」の標準
文字を表してなり、各文字の大きさ及び書体は同一であって、その全体が\n等間隔に1行でまとまりよく表されており、その文字構\成は一連一体であ
ることからすると、「ザ」「プレミアム」の部分と「チロリアン」の部分は、
分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合し
ている、2)標章「チロリアン」、「TIROLIAN」は、本件商標の登録
出願時及び登録審決時において、原告の業務に係る商品を表すものとして、\n取引者、需要者の間に広く認識されていたとはいえないから、本件商標の
構成中の「チロリアン」の文字部分が、本件商標の指定商品の取引者、需\n要者に対し、原告の商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える
ものとはいえない、3)菓子「チロリアン」については、発売後ほどなくし
て、標章「チロリアン」を使用して独自に販売を行う事業主体が複数生じ、
平成8年以降は、標章「チロリアン」を使用する事業主体間で多数の紛争
が生じており、標章「チロリアン」について統一的な管理が行われていな
かったことに照らすと、取引者、需要者は、本件商標の構成中の「チロリ\nアン」の文字部分が、複数の事業主体のいずれに係る表示であるかを認識\nすることが困難であるから、「チロリアン」の文字部分は、原告の出所識別
標識として強く支配的な印象を与えるものに該当しない、4)菓子「チロリ
アン」を製造販売する複数の事業主体について、経済的・組織的な一体性
を持つグループといったものが形成されたことはないから、「チロリアン」
の文字部分が、上記のようなグループの識別標識として強く支配的な印象
を与えると評価する余地もない、5)「チロリアン」の文字部分に出所識別
機能がないにもかかわらず、これがあるかのように評価して結合商標の分\n離観察を行い、その結果として、標章「チロリアン」について他の事業主
体に比べて不十分な使用実績しか有しない原告に引用商標1ないし3を\n含む「チロリアン」の登録商標を独占させるような帰結は、社会的妥当性
に欠けるなどと主張して、本件商標から「チロリアン」の文字部分を要部
として抽出することは許されない旨主張する。
しかしながら、前記(1)で説示したとおり、商標の各構成部分がそれを分\n離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結
合しているものと認められない商標においては、商標の構成部分の一部が\n取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印
象を与えるものと認められる場合などのほか、商標の構成部分の一部が取\n引者、需要者に対し、相当程度強い印象を与えるものであり、独立して商
品の出所識別標識として機能し得るものと認められる場合においても、商\n標の構成部分の一部を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較し\nて商標そのものの類否を判断することも、許されると解するのが相当であ
る。
そして、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し、相当程度強い\n印象を与えるものであり、独立して商品の出所識別標識として機能し得る\nか否かについての判断は、商標に接した取引者、需要者において、商標の
どのような構成部分について注意を惹き、どのような印象を受けるかなど\nの観点から判断されるべきものであることに照らすと、その判断において
は、取引者、需要者が、当該構成部分を何人かの出所識別標識として認識\nし得るものであれば、当該構成部分に係る出所自体(例えば、特定の事業\n主体の名称、事業形態、事業主体が単数か、複数か等)について正確に認
識することまでは要しないと解するのが相当である。
被告主張の1)については、前記アのとおり、「ザ」「プレミアム」の文字
部分の観念及び称呼、「チロリアン」の文字部分の観念及び称呼に照らすと、
本件商標を構成する文字が、外観上、同書、同大、同間隔で一連表\記され
ていることを勘案しても、本件商標において、「ザ」「プレミアム」の文字
部分と「チロリアン」の文字部分を分離して観察することが取引上不自然
であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。
被告主張の2)ないし4)は、取引者、需要者において、本件商標の構成中\nの「チロリアン」の文字部分に係る出所自体(特定の事業主体の名称等)
について正確に認識することまで必要であることを前提とし、上記文字部
分が原告の出所を示す出所識別標識として認識されることを求めるもの
であるから、その前提において採用することができない。
また、被告主張の5)については、結合商標の構成部分の一部を要部とし\nて抽出することができるかどうかの判断は、上記のとおり、当該結合商標
に接した取引者、需要者の認識及び印象に係る問題であって、本件商標と
の関係では、原告による標章「チロリアン」の使用実績の規模等によって
その判断が左右されるものではないから、その前提において採用すること
ができない。
◆判決本文
関連事件です。
いずれも非類似とした審決が維持されています。
「ザリッチチロリアン(標準文字)」
◆令和3(行ケ)10109
「チロリアンホルン」
◆令和3(行ケ)10108
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2022.06.30
令和4(行ケ)10002 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年6月16日 知的財産高等裁判所
商標「温石灸」の識別力について、知財高裁は識別力なしとした審決を維持しました。
原告は、原告が「温石灸」の語を使用して行っている施術は、平成26
年に施術を開始した、温石及びもぐさの両方を用いるオリジナルの施術で
あり、「温石灸」の語は、「温石をもぐさの上に置いて行う施術」との意味
合いを有する造語であるから、本願商標の指定役務との関係で出所識別機
能を有する旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(1))。
そこで検討するに、証拠(甲9、10、33)及び弁論の全趣旨によれ
ば、原告は、平成26年10月頃から、温めた石をもぐさの上に置いて患
部を温める施術を「温石灸」との名称で行っていること、原告がこのよう
な内容の施術を「温石灸」との名称で行うことを許諾したのは、「MoMo
Soはり灸院」のみであることが認められる。
しかしながら、本願商標が商標法3条1項3号に該当するか否かは、本
件審決がされた時点における取引の実情を考慮して判断すべきものであ
るところ、上記(4)で検討したとおり、本件審決がされた当時の本件業界に
おいて、温石を用いた施術が、火をつけたもぐさの代わりに温めた石を用
いることにより、灸に類似する効果を得ることができる施術として、「温石
灸」との名称でも広く行われている実情があったといえることからすれば、
原告がそれ以前から温石及びもぐさの両方を用いる施術を「温石灸」と称
して行っているなどの事情があるからといって、前記の結論が左右される
ものではないというべきである。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は、本件業界において「温石」又は「温石灸」の語が使用されてい
る例について、「温石」が「温めた石」ほどの意味合いを有するとしても、
施術において「温石」をどのように用いるかや、「温石」と肌にのせたもぐ
さに火を点じて焼く施術である「灸」との関係性が明らかではないから、
使用されている「温石灸」の語から直接的かつ具体的な施術の方法及び内
容(効能)等が想起されるものではない旨主張する(前記第3の1〔原告\nの主張〕(2))。しかしながら、原告が指摘するとおり、商標法3条1項3号に該当する
というためには、当該商標から具体的な役務の質(内容)が認識されるこ
とが必要であると解されるものの、上記(4)で検討したとおり、本件審決が
された当時の取引の実情を考慮すると、「温石灸」の語は、「火をつけたも
ぐさの代わりに温めた石を患部に置く、灸と同種の施術」を表すものと容\n易に理解されるものであったというべきである。そうすると、「温石灸」の
語からは、施術に用いる道具、施術の方法及び施術によって得られる効果
がいずれも容易に理解されるものといえるから、本願商標の取引者、需要
者は、「温石灸」の語から役務の質(内容)を具体的に認識することができ
るものといえる。したがって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ 原告は、本件業界において行われている「温石灸」の施術について、1)
「灸」の語の一般的な意味とは異なる内容の施術であり、かつ、様々な施
術の方法及び内容(効能)等を含むものであること、2)「温石」や「温石
療法」等とも表示することができるから、「温石灸」の語は役務の質を表\示
記述するものとして取引に際し必要適切な表示であるとはいえないこと、\n3)全国に存在する「はり及びきゅうを行う施術所」の数からすれば、「温石
灸」の語を使用する事業者はごくわずかであることを理由に、本件業界に
おいて「温石灸」が施術されている例があることをもって、「温石灸」の語
が示す役務の内容が一般に理解されるものとはいえない旨主張する(前記
第3の1〔原告の主張〕(3))。
しかしながら、上記1)については、上記(4)で検討したとおり、本件業界
において一般に行われている「温石灸」の施術は、火をつけたもぐさを使
用しない点において、本来的な意味における灸とは異なるものではあるも
のの、火をつけたもぐさの代わりに温めた石を用いることにより、灸に類
似する効果を得ることができる施術として行われていることなどからす
れば、「温石灸」の語は、このような内容の施術を表すものとして容易に理\n解されるものといえる。
また、上記2)については、上記(4)で検討したとおり、本件審決がされた
当時の本件業界において、温石を用いた施術は、「温石療法」や「温石」等
と呼ばれ、灸とは区別されて取り扱われている実情があったといえるもの
の、他方で、必ずしも灸と厳格に区別されていたものではなく、灸に類似
する効果を得ることができる施術として、「温石灸」との名称でも広く行わ
れている実情があったといえることからすれば、温石を用いた施術が「温
石療法」や「温石」等とも表示されているからといって、「温石灸」の語が、\n役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表\示であるこ
とが否定されるものではないというべきである。
さらに、上記3)については、上記(4)で検討したところに照らせば、全国
に存在する「はり及びきゅうを行う施術所」の数のみを根拠として、前記
のとおりの取引の実情があったことを否定することはできないというべ
きである。したがって、原告の上記主張は採用することができない。
エ 原告は、材料等の名称を冠した従来の「味噌灸」等と原告が行っている
「温石灸」とでは施術内容が全く異なるものであり、「温石灸」の語を従来
の「味噌灸」等の語と同様の意味で捉えると、施術の方法及び内容(効能)\n等が理解し難いものとなるから、「味噌灸」等と称する灸が存在するからと
いって、「温石灸」の語が、特定の役務の質・内容を直接的かつ具体的に示
すものであるとはいえない旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(4))。
しかしながら、本件において検討すべきであるのは、本件審決がされた
当時の本件業界において使用されていた「温石灸」の語から認識される内
容であるから、原告が行っている「温石灸」の具体的な施術内容が考慮さ
れるものではないというべきである。そして、上記(4)で検討したとおり、
本件審決がされた当時の本件業界において、温石を用いた施術は、施術の
道具として温めた石を用いる灸と同種の施術であることから、「味噌灸」等
と同様に、「温石灸」とも称されるようになったものであり、「温石灸」の
語は、「火をつけたもぐさの代わりに温めた石を患部に置く、灸と同種の施
術」を表す語として容易に理解されるものであったというべきである。\nしたがって、原告の上記主張は採用することができない。
オ 原告は、本件テレビ番組において「温石灸」と称された施術は、従来か
ら広く使用されてきた「温石」又は「温石療法」と同義のものとして紹介
されたものにすぎないから、そのような内容の放送がされ、本件業界の関
係者がこれに否定的な意見を述べなかったとの事実をもって、「温石灸」の
語が、灸(施術)の一種を表したものとして、特定の役務の質・内容を示\nすものとして理解されたものとみるのは相当でない旨主張する(前記第3
の1〔原告の主張〕(5))。
しかしながら、上記(4)で検討したところに照らせば、原告が指摘すると
ころによって、前記の結論が左右されるものではないというべきである。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
◆判決本文
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2022.06. 8
令和3(行ケ)10160 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年5月31日 知的財産高等裁判所
先願商標「一升パン」の商標権者が、本件商標「三橋の森の一升パン」について無効審判を請求しました。審決は類似しないと判断しました。知財高裁(3部)も同様です。先願商標が周知か否かについては、「”一升パン”の語は、それ自体が特徴的又は印象的な語でなく、”一升パン”と称する商品は、少なくとも100を超える事業者によっても製造、販売されていた」として、周知ではないとした審決の判断を維持しました。
原告は、本件商標について、特定の場所を示すものにすぎない「三
橋の森」の語と、識別力の強い造語である「一升パン」の語とが組み合
わされた結合商標であり、これらは不可分的に結合しているものではな
く、また、「一升パン」部分が商品の識別情報として強く支配的な印象を
与えるから、同部分を要部として認定し、引用商標と対比すべきである
旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(2))。
(イ) そこで検討するに、本件商標の構成全体をみると、「三橋の森」と「一升パン」との間の「の」は、所有や所属等を示す格助詞であるといえる\nから、本件商標は、「三橋の森」の語と「一升パン」の語とが格助詞であ
る「の」で結合された結合商標であるといえる。
そして、「三橋の森」の語は、一般の辞書等に掲載されている語ではな
く、また特定の地域や森の名称を指すものでもないことからすれば、造
語であるとみるのが相当である。また、証拠(甲27の1ないし3)及
び弁論の全趣旨によれば、「三橋の森」は、埼玉県内に所在する、結婚式
場やフレンチレストラン等が一体となった複合商業施設の名称であると
認められる。これらの事情を考慮すると、「三橋の森」の語は、単に「森
等の緑に囲まれた公園等の地域」を表すものとはいえず、「三橋の森」部分からは、商品の出所識別標識としての称呼、観念が生じるものといえ\nる。
他方で、「一升パン」の語は、前記のとおり、一般の辞書等に掲載され
ている語ではないことからすれば、造語であるとみるのが相当である。
また、一般に、「一升」の語は、米や日本酒、醤油の容量を表す単位として用いられるものの、パンの数量を表\す単位として用いられるものとはいえないことからすれば、「一升パン」の語は、通常は組み合わされるこ
とのない「一升」の語と「パン」の語とが組み合わされたものといえる。
これらの事情を考慮すると、「一升パン」部分についても、商品の出所識
別標識としての称呼、観念が生じるものといえる。
このように、本件商標の「三橋の森」部分及び「一升パン」部分は、
いずれも商品の出所識別標識として機能する語であるといえる。
(ウ) しかしながら、「一升パン」の語は、旧来から1歳の誕生日を迎えた
子供のお祝いとして用いられてきた「一升餅」の「餅」の語を「パン」
に置き換えたものにすぎないといえる(甲4)上、このような「一升パ
ン」と称する商品は、本件商標の登録査定時において、原告以外の少な
くとも100を超える事業者によっても製造、販売されていたといえる
こと(甲4、乙1ないし147)からすれば、「一升パン」の語は、通常
は組み合わされることのない二つの語を組み合わせた造語であること
を考慮しても、それ自体が特徴的又は印象的な語であるとまではいえな
い。また、前記のとおり、本件商標は、「三橋の森の一升パン」の文字を
標準文字で書してなるものであり、いずれかの部分が目立つ態様で記載
されているものではない上、後記3(2)で検討するところに照らせば、本
件商標の登録査定時において、「一升パン」の語が、原告商品を表示するものとして、本件商標の取引者及び需要者の間において広く認識されて\nいたものとはいえない。
以上の各事情を考慮すると、本件商標の「一升パン」部分は、取引者、
需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるも
のであるとは認められない。
(エ) 以上によれば、本件商標について、「一升パン」部分が取引者、需要
者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと
は認められず、また、「一升パン」部分以外の部分である「三橋の森」部
分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないとも認められないか
ら、本件商標の「一升パン」の部分を抽出し、この部分だけを引用商標
と比較して商標そのものの類否を判断することは許されないというべ
きである。
(オ) したがって、原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は、本件商標のように「○○の△△」という商標出願については、
「の」の前後の語のいずれかが要部として抽出された上で、他の商標と類
似するとして拒絶された例が多数存在する旨主張する(前記第3の1〔原
告の主張〕(5))。しかしながら、商標登録の可否は、商標の構成、指定商品又は指定役務、取引の実情等を踏まえて、具体的な実情に基づき商標ごとに個別に判断すべきものであるから、原告が指摘するような他の例があるからといって、\n前記の結論が左右されるものではないというべきである。
◆判決本文
関連事件です。こちらは、本件原告が、本件被告の「一升パン」は3条1項3号、または4条1項16号違反として無効審判を請求し、無効理由無しと判断されています。知財高裁も同様です。
◆令和3(行ケ)10154
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2022.06. 1
令和4(行ケ)10006 商標登録取消決定取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年5月25日 知的財産高等裁判所
指定商品「時計」に商標「OMECO」が、周知商標「OMEGA」と混同するか、また、公序良俗に反するとして異議申立が成されました。審決、知財高裁とも、公序良俗に反すると判断しました。\n
本件商標は、その構成文字に相応して「オメコ」の称呼を生じるものであり、\nこの点は当事者間にも争いがないところ、その称呼の語は、「大辞林 第四版」
(2019年 三省堂。乙12)に「俗に、女陰の称」を、「大辞泉 第二版
上巻」(2012年 小学館。乙13)に「女性性器の俗称」を、「国語大辞
典 新装版」(1988年 小学館。乙14)に「女陰の異名」を、「精選版
日本国語大辞典」(小学館。乙15)に「女陰の異名。また、男女の交合」を
意味するとされているものである一方、その称呼から異なる意味合いを直ちに
想起させる語は見当たらない。加えて、現に、本件商標は、ドメイン名を「om
eco.buyshop.jp」とする原告の運営に係るウェブサイトのページ上部左上に、「変態高級腕時計」の文字と、女性器を模した、二重丸とその中心を縦断する
縦線及び円の外側の放射状の短い線で構成される円状図形と一体となって、ロ\nゴマーク様の図形を構成する一部として表\示されているほか(甲10の1ない
し甲10の3)、このウェブサイトでは、原告の販売に係る腕時計として、上
記円状図形及び本件商標が付された腕時計の画像や(甲10の1ないし甲10
の3)、「パイパンマン」等の性的な意味合いを認識させる表示が付されたT\nシャツの画像等の商品画像が多数掲載されているのであるから(乙22ないし
25)、本件商標は、上記各辞典に掲載されたそのとおりの意味合いで使用さ
れていると認められ、それ以外の意味合いのものと理解され得る余地はない。
そうすると、本件商標は、その称呼から、少なくとも需要者に女性器を連想、
想起させるものであるから、その構成自体が卑わい又は他人に不快な印象を与\nえるようなものであって、その余の点について検討するまでもなく、公の秩序
又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきである。したがって、本
件商標は、商標法4条1項7号に該当するものであり、商標登録を受けること
ができないものに当たる。
2 原告の主張について
(1) 原告は、本件商標の称呼が女性器等を示す俗語であったとしても、本件商
標は欧文字で表記されているから、女性器等が連想、想起されることはない、\nあるいは、このような俗語は関西地方で用いられる方言、俗語であり、日本
の社会一般で理解されるものであるとはいえない旨主張する。しかしながら、
本件商標の綴りからは自然に女性器が連想、想起される称呼が生じ、それ以
外の称呼が自然と生じるものとはいい難いし、また、仮に、関西地方で用い
られる方言、俗語であったとしても、関西地方で用いられているならば、周
知の用語というに十分である。そして、何より、原告自身が女性器等を連想、\n想起させるものとして本件商標を使用していることは、前記1において説示
したとおりであるから、欧文字で表記されていることや関西地方で用いられ\nる方言、俗語であることが女性器を連想、想起させることを何ら妨げるもの
ではない。
したがって、原告の上記主張は、いずれにしても採用し得ない。なお、本
件商標と同一の称呼を生じさせる原告の商号が現時点で維持されていること
は、商標法に従い商標登録の適否を判断する本件の結論を何ら左右しない。
(2)原告は、本件商標が用いられても、取引の実情からみて、被告補助参加人
の業務との間に誤認混同は生じないから、引用商標の信用等又は被告補助参
加人の業務上の信用を毀損させるおそれはない旨主張するが、本件商標は、
その構成自体から卑わい又は他人に不快な印象を与えるような文字であるか\nら、引用商標の信用等又は被告補助参加人の業務上の信用を毀損させている
か否かの点は、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商
標であるとの判断を何ら左右しない。
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2022.05. 2
令和3(行ケ)10148 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年4月25日 知的財産高等裁判所
文字の一部を図形化した商標について、先願文字商標と類似するとした審決が維持されました。判決の末尾に本件商標が添付されています。
本願商標は、別紙1の1のとおり、1)上段には「natural baby soap」の文
字が、水色の手書き風の書体で、下段部分の文字より小さく、また、下段部
分よりも幅が狭く、上側に湾曲する形で配され、2)下段には、Doodle Pen の
特徴を備えた書体で、上段の欧文字よりも目立つ大きさで「nico」の欧文字
が水色で横書きに表され、「nico」の「o」の上部には「サボテン」のような
図形が配され、「o」の内側には、横並びに2つの点とその下に両端上がりの
弧線が配されて顔を表すように図案化された、結合商標である。\n ところで、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の\n出所識別機能として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、そ\nれ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる
場合等には、商標の構成部分の一部を要部として取り出し、これと他人の商\n標とを比較して商標そのものの類否を判断することも、許されると解するの
が相当である。そして、本件においては、要部が本件商標の下段部分である
ことについては、当事者間に争いがなく、本願商標が、全体の構成からみる\nと、上段部分と下段部分とを分離して観察することが取引上不自然とはいえ
ず、上段部分は下段部分と比して全体の大きさは小さく、出所識別標識とし
て特定の称呼、観念を生じさせないものであること等に照らしても、本件商
標の要部は下段部分であるとするのが相当である
次に、本件商標の要部である下段部分について検討する。
前記(1)のとおり、本件商標の要部である下段部分は、「nico」の欧文字が横
書きに表され、「nico」の「o」の上部には「サボテン」のような図形が配さ
れ、「o」の内側には、横並びに2つの点とその下に両端上がりの弧線が配さ
れて顔を表すように図案化されているところ、店舗名や商品名等に含まれる\n欧文字の「o」の内側に横並びに2つの点とその下に両端上がりの弧線を配し
て顔を表すように図案化したり(乙3ないし8、10、11、14)、「o」の
文字上部にイラストを配して図案化する(乙9ないし14)ことは慣用され
ていることが認められる。そうすると、本願商標の下段部分に接した取引者
及び需要者は、末尾の欧文字は一般的に慣用されているものと同様に図案化
されたものと理解し、認識するものということができる。そして、この下段
部分からは「nico」の欧文字に相応して「ニコ」の称呼を生じるものである
が、「nico」の欧文字は辞書等に載録されているものでなく、特定の観念を生
じさせるものではない。
これに対し、原告は、前記第3の1(1)のとおり、欧文字の称呼「ニコ」と
イラスト部分が「にこにこ笑う」との共通の印象を与えるものであり、「nico」
ないし「ニコ」の欧文字は、これを含む商品が多数存在し、登録商標等が合
計30件あることから、必ずしも取引者及び需要者に強い印象を与えるもの
ではないのに対し、イラスト部分は、独自性を有するものであり、イラスト
部分からは観念が生じ、出所識別標識として強い支配的な印象を与えること
を前提とした類否判断をすべきである旨主張する。
しかし、「nico」ないし「ニコ」の欧文字は、原告が提出する証拠によれば、
本願商標の指定商品と同一又は類似する商品では2件しか使用されておらず
(甲9、10)、少なくとも本願商標の指定商品と同一又は類似する分野にお
いて、「nico」ないし「ニコ」が出所識別標識としての機能が弱いとまではい\nえない。また、前記(2)のとおり、欧文字の「o」の内側に横並びに2つの点と
その下に両端上がりの弧線を配して顔を表すように図案化したり、「o」の文
字上部にイラストを配して図案化することは慣用されているところ、本願商
標の下段部分の「o」の部分も一般的に慣用されている態様と同様であるし、
また、サボテンのようなイラストも特定の観念を生じさせるような特異なも
のとはいえず、その大きさや態様において強い印象を与えるものとはいい難
い。そうすると、特に商標の細部にまで注意を払うことがない一般消費者が、
取引に際して、下段部分のうちイラスト部分にことさら着目し、それにより
特異な観念が生じ、出所識別標識として強い支配的な印象を受けるものとは
認め難いから、原告の主張は理由がない。
・・・・
これに対し、原告は、前記第3の1(3)イのとおり、本願商標の下段部分は
特徴的なイラスト部分があるが、引用商標の欧文字はこうした特徴的なもの
を備えておらず、また、本願商標と引用商標の字体、イラスト、文字の与え
る印象を挙げて、本願商標と引用商標は、外観において、離隔的観察のもと
でも称呼における類似性をしのぐほどの差異を取引者及び需要者に与える旨
主張する。
しかし、原告が指摘するイラスト部分は、欧文字の「o」を顔等の図案化す
るものとしてこれまで慣用されてきたものと大きく異なるものではなく、イ
ラスト部分が強い支配的印象を与えるものではないことは繰り返し説示して
きたとおりであり、また、本願商標と引用商標の字体、イラスト、文字の与
える外観上の差異については、離隔的観察のもとでは、取引者及び需要者に
大きく異なる印象を与えるものであるとまではいえない。
また、原告は、前記第3の1(3)ウのとおり、本願商標の下段部分全体から、
「にこにこ笑った」印象を与えるものであるのに対し、引用商標は特定の観
念を生じさせない旨主張するが、前記1(2) において判示したところに照らせ
ば、その前提を誤るものというべきである。
さらに、原告は、前記第3の1(3)エのとおり、本願商標を付した原告の商
品について、現在までに本願商標と引用商標その他の第三者の商標と混同し
たような内容の問い合わせがないことを「取引の実情」として挙げて、称呼
が共通していても、外観及び観念の相違から誤認混同が生じていない旨主張
するが、商標の類否判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは、そ
の指定商品全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであつて、該商
標が現在使用されている商品についてのみの特殊的、限定的なそれを指すも
のではない(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同49年4月25日第一小
法廷判決参照)ところ、原告の上記主張は、本願商標が現在使用されている
商品についての取引の実情をいうものであるから、当を得ない。
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2022.03.15
令和3(行ケ)10101 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年2月22日 知的財産高等裁判所
経過概要は以下です。PUMAが「ジャンピングシーサー」の図形商標につき、4条1項7号、15号違反の無効審判を請求しました。これに対して、被告は商標権放棄をしました。また、5年の除斥期間経過しているとして、却下審決がなされました。原告は除斥期間は不正目的の場合は適用がないとして審決取消を求めました。
原告の主張によると、被告はアダルトグッズに使用し、ブランドイメージ毀損されているとのことです。裁判所は、審決維持しました。
商標法4条1項15号を無効理由とする本件審判の請求について
ア 本件審判の請求は,本件商標権の設定登録の日から5年の除斥期間を経
過した後にされたものであるから,本件審判の請求中,商標法4条1項1
5号を理由とする請求は,本件商標が「不正の目的で商標登録を受けた場
合」(商標法47条1項括弧書き)に限りする
原告は,1)本件商標の動物図形と原告の業務に係る周知著名な引用商標に
は高い類似性があり,本件商標と引用商標が同一又は類似の商品に使用され
た場合,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあること,2)被告によ
る被告標章の商標登録の無効審決の確定後の被告標章の使用及びアダルトグ
ッズへの被告標章の使用の事実があること,3)本件審判において,被告の自
白をもとに,被告の不正の目的を推認させる事情を原告が具体的かつ詳細に
立証した後,被告がこれに争わない意向を表明した経緯があることを総合考\n慮すれば,被告は,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,
その出所表示機能\を希釈化させ,又はその名声を毀損させる「不正の目的」
で本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたものである旨主張する。
ア そこで検討するに,1)については,引用商標は原告の業務に係る周知著
名な商標ではあるが,前記(1)ウ(イ)認定のとおり,本件商標と引用商標と
は,外観,称呼,観念のいずれにおいても異なり,本件商標と引用商標は,
類似しない。
また,本件商標の動物図形と引用商標は,四足動物が右から左に向けて
跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿
でシルエット風に描かれている点で共通し,その基本的姿勢等に似通った
点があることから,本件商標に接した需要者は,本件商標の動物図形は引
用商標を模倣したものと連想,想起するものと一応いい得るが,「JUM
PING SHI−SA」の文字部分があることによって,本件商標の動
物図形からは,引用商標から生じる「PUMA」ブランドの観念や「プー
マ」の称呼は生じないものと認められること(前記(1)ウ(ア)a)に照らす
と,本件商標の動物図形は引用商標を模倣したものと連想,想起するから
といって,被告が本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたことに
ついて,周知著名な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出
所表示機能\を希釈化させる「不正の目的」があったものと認めることはで
きない。
イ 2)については,証拠(甲61ないし63)によれば,知的財産高等裁判
所は,別紙3のとおりの構成からなる被告標章についての商標登録無効審\n判請求を不成立とした審決(無効2016−890014号事件)の審決
を取り消す旨の判決をした後,特許庁が被告標章が商標法4条1項15号
に該当することを理由に被告標章の商標登録を無効とする別件無効審決
をし,別件無効審決は,令和元年9月2日,確定したことが認められる。
しかしながら,本件商標と被告標章の外観は,四足動物が右から左に向
けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見
た姿でシルエット風に描かれている点で共通し,その基本的姿勢等に似通
った点があるものの,被告標章には本件商標において大きな構成部分であ\nる文字部分を有していないという顕著な相違があり,両商標は,外観,称
呼及び観念において異なり,類似しないことに照らすと,原告が主張する
被告による被告標章の商標登録の無効審決の確定後の被告標章の使用及
びアダルトグッズへの被告標章の使用の事実があるからといって,被告が
本件商標の登録出願をし,その商標登録を受けたことについて,周知著名
な引用商標に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能\を希釈
化させ,又はその名声を毀損させる「不正の目的」があったものと認める
ことはできない。
ウ 3)については,商標登録無効審判の審判手続においては,職権で証拠調
べをすることができ,当事者が申し立てない理由についても審理すること\nができるなどの職権探知主義が採用され(商標法56条において準用する
特許法150条1項,153条1項),自白法則は適用されないから(商
標法56条において準用する特許法151条が準用する民事訴訟法17
9条の規定から「当事者が自白した事実は証明することを要しない」とし
た部分の準用が除かれている。),商標登録無効審判の請求人は被請求人
が商標登録の無効理由を基礎づける事実について自白した場合であって
も,当該事実を証拠によって証明する必要がある。また,被請求人には特
許庁がした審決を取り消す権限がなく,商標登録無効審判に処分権主義の
適用はないから,被請求人は,請求人の請求を認諾することはできないも
のと解される。
しかるところ,原告が3)の根拠として挙げる被告作成の令和2年9月2
8日付け上申書(甲104)には,「被請求人は,請求人の主張を認め,\n請求の趣旨に対し,請求人が主張するとおりの審決がなされ,本件商標権
が遡及消滅することを争わない。」との記載があるが,上記記載中の「請
求人の主張を認め」にいう「請求人の主張」を基礎づける具体的な事実が
特定されていないから,上記記載をもって被告が具体的事実について自白
したものと認めることはできないのみならず,具体的事実を証明する供述
証拠として評価することもできない。また,上記記載中の「請求の趣旨に
対し,請求人が主張するとおりの審決がなされ…争わない。」との部分は
請求の認諾の趣旨のものとうかがわれるが,商標登録無効審判においては
請求の認諾はできないから,上記部分を斟酌することはできない。
次に,原告が3)の根拠として挙げる被告作成の平成19年9月12日付
け「商標登録第5040036号について1)」と題する書面(甲41)に
は,商標の制作経緯等に関し,「2003年(平成15年)年末ごろ,弊
社も新アイテムとして『シーサー』を分かりやすく,そして現代の若者に
も受け入れられるデザインをコンセプトにしようと改めてデザインを構\n想しました。2004年(平成16年)3月ごろ,コンセプトであげた『分
かりやすく・シンプルに』と言うことでデザインに当時では珍しいピクト
グラム(道路標識や公共施設,非常口など図柄だけで意味を表現するデザ\nイン)を取り入れてはどうか?と,社内で議論しました。そこで,(スポ
ーツブランド)にはシンプルなデザイン(ロゴ)が多数使用されていたこ
とから世界的に有名な『ラコステ』『ポロ・ラルフローレン』『マンシン
グウェア』『プーマ』など,動物(生物)をモチーフにしたデザインを参
考にして図3)のように大まかなデザインができあがりました。空想上の生
物なので,伝統工芸の焼き物や民芸雑貨などをシルエット(影)にしてみ
たものの形状はまだ複雑でシンプルを追求すると(プーマ)風なデザイン
になっていました。しかし,デザイン(ロゴ)だけでは『シーサー』を表\n現していると誰も気づかないのでは?等の意見もあり,前述で述べた『獅
子面T-シャツ』のように文字(読み方・言い方)をデザインに組み合わせ
てはどうか?ということで図4)になりました」,「その後,何度かデザイ
ンを変更して図5)〜7)を経て現在は図8)(平成17年から発売)になって
います。」との記載がある。しかし,上記記載中の「『プーマ』など,動
物(生物)をモチーフにしたデザインを参考にし」た,「(プーマ)風な
デザインになっていました」旨の部分は,これに引き続きく「デザイン(ロ
ゴ)だけでは『シーサー』を表現していると誰も気づかないのでは?等の\n意見もあり,前述で述べた『獅子面T-シャツ』のように文字(読み方・言
い方)をデザインに組み合わせてはどうか?ということで図4)になりまし
た」との部分と併せて読めば,本件商標(図6))は,『プーマ』など,動
物(生物)をモチーフにしたデザインを参考にして『シーサー』を表現す\nる意図で作成されたものとうかがわれるから,被告が周知著名な引用商標
に化体した顧客吸引力にただ乗りし,その出所表示機能\を希釈化させる
「不正の目的」で本件商標(図6))の登録出願をし,その商標登録を受け
たことを認め,あるいはこれを裏付ける趣旨の記載であると評価すること
はできない。
したがって,上記書面から,被告に上記「不正の目的」があったものと
認めることはできない。
(3) 小括
以上によれば,本件商標は「不正の目的」で商標登録を受けたものに該当
しないとした本件審決の判断に誤りはないから, 原告主張の取消事由1は,
理由がない。
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◆令和3(行ケ)10103
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2022.03.15
令和3(行ケ)10041 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年3月8日 知的財産高等裁判所
本件商標「BREZTRI」が商標「BREEZHALER」と類似または出所混同するかが争われました。裁判所は、無効理由なしとした審決を維持しました。争点は文理解釈が可能かどうかです。\n
ア 本件商標に係る主張について
(ア) 原告は,本件商標につき,「BREZ」部分を要部として分離観察す
ることが可能である旨主張する(前記第3の1〔原告の主張〕(1))。
(イ) しかしながら,前記のとおり,本件商標は,「BREZTRI」の欧
文字を標準文字で書してなるものであり,いずれかの部分が目立つ態様
で記載されているものではない。また,本件商標の構成文字数は7文字\nと少なく,全体を「ブレズトリ」と自然に発音することが可能である。\nさらに,「BREZ」は,辞書等に掲載されていない語であり,後記のと
おり,この部分が取引者,需要者に格別の造語として認識されている事
実も認められないことからすれば,独立した単語として認識されるもの
とはいえない。加えて,「TRI」は,接頭辞として用いられた場合に「三,
三重の」等を意味する旨が辞書等に掲載されてはいるものの(甲22),
本件商標の「TRI」部分は語尾に位置することからすれば,直ちに「三,
三重の」や「triple」を意味する単語として認識されるものとは
いえない。
これらの事情によれば,本件商標は,各構成部分がそれを分離して観\n察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合してい
る商標というべきであるから,全体を一連一体のものとして観察するの
が相当であり,「BREZ」部分と「TRI」部分とを分離して観察する
ことはできないというべきである。
(ウ) 上記の点に関して原告は,「TRI」部分につき,薬剤の名称とし
末尾に「tri」を付すことが多い実情が存するから,識別力が弱い旨
主張する。
確かに,証拠(甲38,39)によれば,原告が主張するような使用
例が複数あることが認められる。しかしながら,本件商標の構成文字数\nが少ないこと,「BREZ」は独立した単語として認識されるものとはい
えないことからすれば,「TRI」部分について,単に薬剤の名称の末尾
に付された語であり,「BREZ」部分とは区別すべきものであると直ち
に認識されるものとはいい難い。そうすると,原告が主張するような実
情があるからといって,「TRI」部分の識別力が弱いということはでき
ない。
(エ) また,原告は,「BREZ」部分につき,需要者の間で広く認識され
た引用商標1の「BREZ」部分と同様に,特徴的で識別力の強い部分
である旨主張する。
しかしながら,後記のとおり,引用商標1それ自体はある程度の周知
性を有しているといえるものの,だからといって同商標の「BREZ」
部分も周知であるということはできないから,本件商標の「BREZ」
部分につき,特徴的で識別力の強い部分であるということはできない。
(オ) 以上によれば,本件商標につき,「BREZ」部分を要部として分離
観察することはできないというべきである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない
◆判決本文
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2022.02. 8
令和3(行ケ)10092 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年1月27日 知的財産高等裁判所
本件商標「hihachi」が「HITACHI」と出所混同するとして異議申立がなされました。知財高裁は、4条1項15号違反とした審決を維持しました。
ア 上記(1)ないし(3)のとおり,本件商標及び引用商標は,観念において類
似するものではないものの,外観及び称呼が互いに相紛らわしいものであ
るというべきである。
そして,前記3で検討したとおり,本件商標及び引用商標に係る需要者
には一般消費者が含まれるものであるところ,一般消費者が通常有する注
意力を踏まえると,外観及び称呼が互いに相紛らわしい両商標を取り違え
ることは十分にあり得るといえることからすれば,両商標の類似性の程度\nは,相当程度高いというべきである。
イ 原告は,引用商標の取引の実情に関して,商標中の大文字のアルファベ
ットを小文字表記に変えて使用することなどは全く行われておらず,この\nことは引用商標においても同様である旨主張する。
しかしながら,上記(1)イのとおり,アルファベットからなる商標の使用
においては,その構成文字について,大文字と小文字とを相互に変換して\n表記することが一般に行われているといえる。また,商標法においても,\n商標登録の取消しの審判について,登録商標と社会通念上同一と認められ
る商標(例えば,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更\nするものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標)の使用を証明するこ
とによって商標登録の取消しを免れることができる旨が規定されている
が(商標法50条1項,2項,38条5項),これは,商標の使用において
は,同一の称呼及び観念が生じる範囲内で商標の構成文字の文字種を相互\nに変換して表記したり,デザイン化したりすることが一般によく行われる\nことを前提とした規定であるといえる。これらの事情を考慮すると,商標
中の大文字のアルファベットを小文字表記に変えて使用することが全く\n行われていないということはできない。
以上によれば,原告の上記主張は採用することができない。
5 出所混同が生ずるおそれの有無
本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基
準として,前記2ないし4において検討した事情を総合的に考慮すると,注意
力がそれほど高いとはいえない一般消費者が,被告補助参加人及びそのグルー
プ会社の業務に係る商品及び役務を表示するものとして極めて高い周知著名性\nを有する引用商標に相当程度類似し,取り扱う商品も密接に関連する本件商標
が付された商品に接した場合には,当該商品が被告補助参加人及びそのグルー
プ会社の業務に係る商品であると混同するおそれがあるというべきである。
◆判決本文
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2022.01.24
令和3(行ケ)10107 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年1月19日 知的財産高等裁判所
商標「花間堂」が、商標法4条1項10号,15号,19号又は7号の無効理由があるかが争われました。知財高裁は、無効理由無しとした審決を維持しました。
また,仮に,引用商標の中国における周知性が認められると仮定しても,前
記認定事実によれば,被告は,中国人であるものの,来日してから長らく我が
国に居住し,本件商標の登録出願に先立って「旅程管理業務を行う主任(国内)」
の資格を取得し,本件商標の商標登録後,引用商標が登録出願されるまでに,
実際に本件商標を構成する「花間堂」の文字を含む名称のツアーを主催したこ\nとが認められることからすると,本件商標の指定役務である「宿泊施設の提供,
宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」等のために本件商標を登録出願して
登録を受けたものと推認されるところであり,また,本件商標を構成する文字\nを選択した理由についても具体的に陳述しているところである。このような事
実関係からすれば,被告が本件商標の登録出願をした経緯に,不正の利益を得
る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的があったとは認め難く,
本件全証拠を検討してみても,被告に上記のような目的があったと認めるに足
りる証拠はない(なお,引用商標の中国における周知性についても,原告提出
の書証中には,原告が運営する「花間堂」を「中国大陸で有名な高級チェーン
ホテル」(前記1(3)イ(ウ)),「中国の有名な民宿ブランド」(同(エ)),「中
国大陸の有名な高級ホテルブランド」(同(オ)),「中国国内の有名な優れた
リゾートホテルブランド花間堂」(同(カ))として紹介するものがあるものの,
該当部分の抄訳であり,当該記事内容やその記事がどういった媒体からによる
ものであるのかの詳細が不明であるし,その他のものを併せても,これらの記
事等のみから,引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,
中国の需要者の間で原告の業務に係る役務を表示するものとして周知であると\n認定することはできず,また,「花間堂」の中国国内における売上高,利用者
数,旅行業界におけるシェア等に関する証拠もないから,上記中国における周
知性を認めることはできないことを念のため付言する。)。
そうすると,本件商標は,商標法4条1項19号に該当するものとはいえず,
これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
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