2025.01.12
令和6(行ケ)10028 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年11月11日 知的財産高等裁判所
商品・役務は類似するとして、無効理由無し(4条1項11号)とした審決が取り消されました。
(1) 事業者について
ア 証拠(甲12〜21、44、52、54〜57)によれば、株式会社ア
ジアス、株式会社日本メディックス、フクダ電子株式会社、アイ・エ
ム・アイ株式会社、株式会社三笑堂、さくらメディカル株式会社、株式
会社セントラルメディカル、ジーエムメディカル株式会社、株式会社ナ
ンブ、中嶋メディカルサプライ株式会社、コニカミノルタ株式会社、株
式会社アールエフ、オムロンヘルスケアサービス株式会社、三井温熱株
式会社、伊藤超短波株式会社といった多数の医療機器メーカー等につい
て、製造・販売と貸与(レンタル・リース)の両方の事業を行っている
ことが認められる。
また、キヤノンメディカルシステムズ株式会社(製造・販売)とキヤ
ノンメディカルファイナンス株式会社(リース)(甲50)、パラマウ
ントベッド株式会社(製造・販売)とパラマウントケアサービス株式会
社(レンタル)(甲53)についても、同一のハウスマークを用いて営
業を行う系列会社であること、これらの需要者は、そうした系列会社間
の法人格の異同にさほど関心を持たないと考えられる一般の需要者が含
まれていること(後記(4)参照)等の事情を考慮すると、「商品の製造・
販売と役務の提供が同一事業者によって行われている場合」に準ずるも
のということができる。
この点、被告は、「同一事業者」とは、狭義の混同を生じさせる同一
の事業者のことであって、親子会社や系列会社等は含まれない旨主張す
る。しかし、企業の経営戦略として、同じブランド(特にハウスマーク)
を使用しつつ多様な事業展開を円滑に行う等の目的で、特定の事業部門
を分社化したり、持株会社(ホールディングス)が傘下の複数の事業会
社を統括するような法人格の運用は、ごく一般的なものであり、そのよ
うな場合、形式的に見れば別法人が展開する事業であっても、外部の第
三者(特に一般需要者)からみて、同一の営業主体による事業と認識さ
れることも珍しくないと解される。上記1で述べた商品・役務に係る営
業主体の誤認のおそれは、取引者・需要者の認識を基準に判断すべきも
のであるから、上記のような理由により「別法人が展開する事業であっ
ても同一の営業主体による事業と認識されても不思議でない場合」には、
「商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われている場
合」に準ずるものとして扱うのが相当である。
この点に関する被告の上記主張は、商品・役務に係る営業主体の誤認
のおそれは取引者・需要者の認識を基準に判断すべきことを看過したも
のであり、採用できない。
イ 次に、証拠(甲7〜9)によれば、医療用機械器具の製造、販売、貸与
等を行う企業を会員とする団体である商工組合日本医療機器協会におい
ては、医療機器の製造販売業又は販売・貸与業の許可等を受けている企
業が77社あり、そのうち、製造販売業と販売・貸与業の両方の許可等
を受けている企業は53社(68.8%)あることも認められ、約3分
の2の割合という多数の製造・販売業を行う事業者が、貸与業も行うこ
とができる状況にあるといえる。
この点、甲43によれば、令和2年度末における医療機器の製造販売業
許可数が2799件となっていることが認められるが、上記協会に加入
している企業のうちの対象企業数77社が、サンプルサイズとして小さ
すぎるとまではいえない。そして、商工組合日本医療機器協会の会員か
非会員かの違いが、販売・貸与業の許可等取得割合に実質的な違いを生
じさせているといった事情もうかがわれない。そうすると、比較対象た
る企業集団の母数の違いのみから、上記の傾向、すなわち、医療機器の
製造・販売業を行う事業者の多数が貸与業についても許可等を受けてい
るとの事実を否定することはできない。
加えて、証拠(甲10、42)によれば、東京都が用いている「高度
管理医療機器等販売業/貸与業許可申請」(様式第87)、「管理医療\n機器販売業/貸与業届出」(様式第88)の書式では、「販売業」と
「貸与業」の許可申請・届出を1通の書類で行う様式がデフォルトと\nなっており、販売業と貸与業の「どちらか一方の時は、不要の文字を消
してください」という記載例の注意書きが示されていることが認められ
る。これは、医療機器の販売業と貸与業の双方の許可申請・届出を行う\n例が現実に多い実情を示すものと理解できる。
ウ また、被告は、国内の主要な医療用機械器具メーカー(甲33)と、主
要な医療用機械器具のリースサービスを提供する事業者(甲35、36)
又はレンタルサービスを提供する事業者(甲37)が一致していない点
を指摘し、同一事業者が機械器具の製造・販売と機械器具の貸与を行う
ことは一般的でないと主張する。
しかし、業界における主要な事業者とは、企業の経済活動の規模(売
上等)や商品・サービスの内容から様々な基準によって選出されるにす
ぎず、仮にある事業者が製造販売業と貸与業の両者の業務を行っている
としても、企業の経営戦略等によってどちらに重きを置くのかは当然異
なり得るのであるから、製造販売業における主要企業と貸与業における
主要企業が一致していないからといって、このことから直ちに両者を同
時に行う事業者が少ないとまで断言できない。
(2) 用途について
医療用機械器具の貸与は、他人の求めに応じて当該機械器具を貸与する
ことであるところ(甲34)、貸与という行為は、単に貸渡し行為をするこ
とのみならず、需要者に当該機械器具を使用させることを当然に予定するも\nのである(民法601条参照)。よって、その貸与の用途は、医療用機械器
具の医療目的での使用ということができ、本件指定商品・医療用機械器具の
用途と共通するといえる。
(3) 提供場所・販売場所について
上記のとおり、多数の医療用機械器具の製造・販売を行う事業者が同時
に貸与も行っている取引の実情があることや、各事業者は、ホームページを
設けて申込みや問合せを受け付けており、その際には販売と貸与を共に説明\nしていること(甲68〜71)に鑑みると、医療用機械器具の販売場所と貸
与の提供場所は、いずれも当該企業の営業所所在地やインターネット上の
ホームページ(同一のサイト)等であると認められる。そうすると、本件指
定役務・医療用機械器具の貸与と、本件指定商品・医療用機械器具について
は、提供場所・販売場所が同じである場合が多いということができる。
これに対し、被告は、現代社会ではあらゆる物品がインターネット上の
ウェブページで貸与、販売されているから、本件においても商品の販売や役
務の提供がインターネット上のウェブページで行われていることを理由とし
て提供場所が一致するというのは暴論であると主張する。しかし、商品・役\n務の類似性判断の考慮要素として、商品の製造・販売と役務の提供が同一事
業者によって行われている実情の有無・程度等とは別に、その提供場所・販
売場所の同一性を独立の考慮要素としているのは、同一事業者が扱う商品・
役務であっても、商品と役務とで全く異なる営業形態を取るような場合も考
えられるからである。そのような場合と異なり、同一事業者が、そのホーム
ページ等の同一のサイトで商品の販売と役務の提供の両方の営業を行ってい
るとすれば、その商品・役務の類似性を肯定する方向で考慮すべきことは当
然である。被告の上記主張は失当である。
(4) 需要者の範囲について
本件指定商品・医療用機械器具は、医療機関で用いられるものに限らず、
一般家庭内で健康状況に応じて使用されるものも含まれること、その需要者
には、医療機関のみならず、一般の需要者等が含まれることについては、い
ずれも当事者間に争いがない。そして、証拠(甲48、53、56、57)
によれば、本件指定役務・医療用機械器具の貸与においても、広く一般の需
要者(消費者)が想定されている場合があることが認められるから、両者の
需要者は実質的に重なるといえる。
これに対し、被告は、医療用機械器具の貸与の対象となるものは、専ら
高額な機械器具であり、その需要者は事業者、すなわち医療機関に限られる
と主張する。確かに、貸与の対象となる医療用機械器具は、販売の対象とな
る医療用機械器具よりも相対的に高額なものが多いであろうことは想像に難
くなく、それに伴う需要者の範囲の相対的な違いはあり得るとしても、医療
用ベッドや家庭用治療器、リハビリテーション機器等のレンタルサービスを
一般需要者向けの広告で扱っている事例が実際にあることは紛れもない事実
である(甲53、56、57)。本件指定役務・医療用機械器具の貸与の需
要者が「医療機関に限られる」という被告の主張は、証拠に基づかない極論
といわざるを得ない。
結局、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と本件指定商品・医療用機
械器具の需要者の範囲は、相対的な違いはあれ、医療機関と一般の需要者等
を含む点で実質的には重なっているというべきである。
(5) 小括
以上によれば、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と、本件指定商
品・医療用機械器具の製造・販売とは、同一事業者によって行われている例
が多数みられ、これらの用途は共通し、販売場所と提供場所は同一である場
合が多く、需要者の範囲は実質的に重なっているということができる。この
ような取引の実情を踏まえると、本件指定役務・医療用機械器具の貸与と本
件指定商品・医療用機械器具に同一の構成の商標(「AWG治療」)を使用\nする場合には、同一の営業主体の製造・販売又は提供する商品・役務と取引
者・需要者に誤認されるおそれがあるというべきである。
なお、本件指定商品・医療用機械器具は、「歩行補助器・松葉づえ」を
除くものとされており、このような除外のない本件指定役務・医療用機械器
具の貸与と異なっているが、この違いが商品・役務の類否に影響を及ぼすと
はいえない。
3 商標権の効力の観点からの弊害について
原告は、先願に係る引用商標の商標権者であり、「AWG治療」の商標を医
療用機械器具に付した上でこれを引き渡す行為を第三者が行った場合、当該商
標権の侵害を理由に禁止権を行使することができるはずである(商標法36条、
37条1号、2条3項2号)。しかし、本件商標の登録が有効なものだとする
と、「AWG治療」の商標を医療用機械器具に付した上でこれを貸与する行為
(当然に「引渡し」を包含する。)は、通常、本件商標に係る商標の使用と認
めるのが自然であり(同法2条3項3号)、商標権の及ぶ範囲の重複・抵触が
生じかねない。このような状況を招来させるのは、権利範囲の問題と登録要件
の問題が理論上は別個の問題であるにせよ、商標法全体の整合的解釈という観
点からは好ましいことでない。以上の理由からも、本件指定役務・医療用機械
器具の貸与と、本件指定商品・医療用機械器具とは、類似するものと判断する
のが適切である。
◆判決本文
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2025.01.12
令和6(行ケ)10006 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年10月29日 知的財産高等裁判所
商標「Air liquid」について、4条1項10号、15号違反の無効理由無しとした審決が維持されました。
ア 原告は、フランスに本社がある会社であり、我が国における原告の子会
社は日本エア・リキード社である。(甲3、4、24、42)
イ 原告及び日本エア・リキード社は、産業ガス・医療ガスに関する事業を
行う会社である。産業ガスは、鉄鋼、化学、機械・金属加工、自動車・輸
送機器、食品等の各産業における製品の製造の過程で用いられるガスの総
称であり、酸素、窒素、水素、アルゴンなどがこれに含まれる。また、医
療ガスは、病院で使用される酸素等のガスであり、「産業ガス」の語が医療
ガスを含む意味で用いられることもある。日本エア・リキード社は我が国
において、事業者に対して産業ガス・医療ガスを供給する事業を行ってい
る。原告は、その子会社を含む売上げで、産業ガスの分野において、20
21年(令和3年)の世界の市場シェアで全体の2位を占めている。また、
日本エア・リキード社は、我が国における2018年(平成30年)3月
期の産業ガス事業において国内第3位のシェアを占めており、同社を含む
上位3社で産業ガスのシェアの約8割を占めている。(甲3、4、24、4
1、42、52)
ウ 日本エア・リキード社は、昭和5年(1930年)に「帝國酸素株式会
社」として設立された会社であり、その後同社の商号は、「帝国圧縮瓦斯株
式会社」(昭和18年)、「帝国酸素株式会社」(昭和21年)、「テイサン株
式会社」(昭和56年)と変更され、平成10年に「日本エア・リキード株
式会社」に変更された。また、平成5年8月頃から、別紙1「原告商標目
録」記載1ないし4の各「商標の構成」の箇所に掲げた図柄(「AIR
LIQUIDE」の文字が入った図柄、以下「先代ロゴマーク」という。)が、
会社のロゴとして用いられるようになった。ただし、商号が「テイサン株
式会社」である間は、先代ロゴマークの右下に小ぶりの字で「TEISAN」
という文字を入れて使用していた(甲61、62)。その後、日本エア・リ
キード社は、平成29年1月頃から、別紙1「原告商標目録」記載6及び
7の各「商標の構成」の箇所に掲げた図柄(「Air Liquide」の
文字が入った図柄、以下「現ロゴマーク」という。)を会社のロゴマークと
して用いるようになり、現在も現ロゴマークを使用している。日本エア・
リキード社は、これらのロゴマーク(先代ロゴマーク、及び現ロゴマーク
採用後は現ロゴマーク)を、会社案内のパンフレット、ホームページ、設
置したタンク及び水素ステーション、使用するタンクローリー等に表示し\nている。(甲4、5、6、24、36、42、60〜68)
現ロゴマークを用いた日本エア・リキード社の広告が、日本経済新聞(甲
34、35)、日経産業新聞(甲31〜33)、雑誌「週刊エコノミスト」
(甲69、70)に掲載されたが、これらの広告には、日本エア・リキー
ド社の親会社がフランス法人の原告であることは示されておらず、現ロゴ
マーク又は引用商標がフランス法人である原告の業務に係る商品又は役
務を表示するものであることも示されていなかった。\n
(2) 周知性について
前記(1)の事実によれば、原告は、その子会社を含む売上げで、産業ガスの
分野において、2021年(令和3年)の世界の市場シェアで全体の2位を
占めている。そして、日本エア・リキード社が、我が国における産業ガスの
事業において大きなシェアを占めており、2018年(平成30年)3月期
においては、上位3社でシェアの約8割を占める産業ガス事業において第3
位のシェアを得ていたことが認められる。また、日本エア・リキード社は、
平成5年8月頃から「AIR LIQUIDE」の文字が入った先代ロゴマークを使
用し、平成29年1月頃からは、現在に至るまで「Air Liquide」
の文字が入った図柄の現ロゴマークを使用しており、先代ロゴマーク、及び
現ロゴマーク採用後は現ロゴマークを会社のパンフレットや設備等にも表示\nしていることが認められる。
しかし、我が国において、事業者に対して産業ガス・医療ガスを供給して
いるのは、原告の子会社である日本エア・リキード社であって、原告自体が、
我が国において事業者に対して産業ガス・医療ガスを供給しているとは認め
られない。また、日本エア・リキード社は、平成10年に商号が「日本エア・
リキード株式会社」となったが、それ以前は、昭和5年(1930年)の設
立以来、「帝國酸素株式会社」、「帝国圧縮瓦斯株式会社」、「帝国酸素株式会社」、
「テイサン株式会社」という商号を用いており、これらの従前の商号は、当
該商号の会社が原告の子会社であることや、外国の会社の子会社であること
すら推知させないものであった。日本エア・リキード社は、平成5年8月頃
から「AIR LIQUIDE」の文字が入った先代ロゴマークの使用を開始した後
も、商号が「テイサン株式会社」である間は、先代ロゴマークの右下に小ぶ
りの字で「TEISAN」という文字を入れて使用していた(甲61、62)。現
ロゴマークを用いた日本エア・リキード社の広告が、日本経済新聞(甲34、
35)、日経産業新聞(甲31〜33)、雑誌「週刊エコノミスト」(甲69、
70)に掲載されたことが認められるが、これらの広告には、日本エア・リ
キード社の親会社がフランス法人の原告であることは示されておらず、現ロ
ゴマーク又は引用商標がフランス法人である原告の業務に係る商品又は役務
を表示するものであることも示されていなかった。そして、日本エア・リキ\nード社がフランス法人である原告の子会社であることについて、これが広告
に記載されるなどして広く知らしめられた事実は認められない。これらのこ
とを考慮すると、日本エア・リキード社がフランス法人である原告の子会社
であることは、広く認識されているとは認められない。
そうすると、我が国において産業ガス・医療ガスの供給を受ける事業者を
引用商標の需要者と解するとした場合、その中では、一定の範囲で、引用商
標が日本エア・リキード社の商標として認識されていることは認められるが、
フランス法人である原告の商標として広く認識されているとは認められない
い。
また、本件商標の需要者は、一般消費者のうち喫煙者及びたばこに関心の
ある者と解されるところ、産業ガス・医療ガスの供給を受ける事業者は、そ
れに応じた設備等を有する者に限られることに鑑みれば、本件商標の需要者
の大半は、産業ガス・医療ガスの分野の知識をそれほど有しないと推認され、
本件商標の需要者の間では、引用商標が日本エア・リキード社の商標として
認識されているとは認められず、まして、引用商標がフランス法人である原
告の商標として広く認識されているとは認められない。
原告は、引用商標「Air Liquide」が原告の業務に係る商品又
は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると主張するが、\nこれまで述べたところによれば、この点に関する原告の主張は、採用するこ
とができない。
(3) 商品の類似性について
商品が類似のものであるかどうかは、それらの商品が通常同一営業主によ
り製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の
商標を使用する場合には、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認され
るおそれがあると認められる関係があるか否かによって判断するのが相当で
ある(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷
判決・民集15巻6号1730頁)。
前記(1)の認定事実によれば、引用商標が使用されている商品は、産業ガス
及び医療ガスである。原告が商標登録又は国際登録を受けている商標であっ
て「Air Liquide」又は「AIR LIQUIDE」の文字が構\n成に含まれるもの(別紙1「原告商標目録」記載1ないし7の各商標)は、
その指定商品及び指定役務として、産業ガス及び医療ガス以外の多様な種類
の商品及び役務が指定されているが(甲10、12、14、16〜22)、こ
れは、日本エア・リキード社の製造、販売する産業ガスの製造過程等におい
て用いられている商品及びこの産業ガスが使用されている役務を指定商品及
び指定役務として登録したものであって(弁論の全趣旨(令和6年2月22
日付け原告準備書面(第1回)17頁))、日本エア・リキード社が、上記各
商標の指定商品とされた多様な種類の商品の販売や多様な役務の提供を行っ
ているとは認められず、産業ガス及び医療ガス以外について引用商標が使用
されていると認めることもできない。
他方、本件商標の指定商品は、前記第2の1(1)のとおり、第34類の「喫
煙用薬草、喫煙用ライター、喫煙用具、喫煙パイプ用吸収紙、電子たばこ、
水パイプ、電子たばこ用リキッド、喫煙者用の経口吸入器、たばこ、喫煙パ
イプ、代用たばこを含む紙巻きたばこ(医療用のものを除く。)、シガーライ
ター用ガス容器、シガリロ」である。これらの本件商標の指定商品と、引用
商標が使用されている商品である産業ガス及び医療ガスとは、それらの性質、
目的、用途、使用方法、使用者、製造者、販売者、取引態様等が大きく異な
るものと認められ、これらが通常同一営業主により製造販売されているとの
事情は存在せず、その他、これらの商品に同一又は類似の商標を使用する場
合に、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると解
すべき根拠となる事情は認められない。
別紙1「原告商標目録」記載5及び6の商標の指定商品には、第5類の「医
療用又は治療用の喫煙用剤(単独で又はたばこと混ぜて販売されるもの)、
医療用又は治療用のたばこの代用品」が含まれているが(甲17〜20)、
原告又は日本エア・リキード社がこれらの商品を我が国で製造販売している
とは認められず、その他、原告又は日本エア・リキード社が、本件商標の指
定商品である「喫煙用薬草、喫煙用ライター、喫煙用具、喫煙パイプ用吸収
紙、電子たばこ、水パイプ、電子たばこ用リキッド、喫煙者用の経口吸入器、
たばこ、喫煙パイプ、代用たばこを含む紙巻きたばこ(医療用のものを除く。)、
シガーライター用ガス容器、シガリロ」を製造販売しているとも認められな
い。
したがって、引用商標が使用されている商品と、本件商標の指定商品との
間には、これらの商品に同一又は類似の商標を使用する場合に、同一営業主
の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるとは認められないから、
引用商標が使用されている商品と本件商標の指定商品は、類似しているとは
認められない。
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2025.01.12
令和6(行ケ)10066 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年12月10日 知的財産高等裁判所
商標「UNITED GOLD」が、「UNITED」と類似するかが争われました。知財高裁は非類似とした審決を維持しました。
原告は、本件商標のうち、「UNITED」の部分が要部として抽出される
から、本件商標からは「ユナイテッド」の称呼も生じる旨を主張する。
この点、「UNITED」は、英語で、「結ばれた、団結した、連合した」
(甲7、30−1)などの意味を持つ形容詞、「GOLD」は、英語で、「(鉱
物)金、黄金」(甲8、30−2)などの意味を持つ名詞であり、我が国にお
いても、それぞれの意味する英語の単語として、一般に知られているところ
である。
本件商標は、「UNITED GOLD」の欧文字を同書体、同大で、「U
NITED」と「GOLD」との間に一文字分の空白を空けるほかは等間隔
で横書きにしてなるものであり、特段「UNITED」の部分が強調されて
いるものでもない。本件商標を構成する「UNITED」と「GOLD」は、\n前者はアルファベット6文字、後者はアルファベット4文字にとどまるから、
本件商標は全体として冗長なものとはいえず、それらの間に一文字分の空白
があるとしても、両者が別個独立の構成であるとの印象を受けるものではな\nく、前記のとおり、「UNITED」は「結ばれた」などの意味を有する形容
詞であるから、通常は他の語と一体となってその語を修飾するために用いら
れるもので、単独では意味を取りにくい語である。そうすると、本件商標で
ある「UNITED GOLD」の構成のうちの「UNITED」の部分のみが強く支配的な印象を与えるものではない。\n
加えて、本件請求商品役務の一部であり、本件商標と引用商標1の指定商
品等が重複する「被服」(類似群コード「17A01」)において、登録商標
に「UNITED」を含む商標であって原告が権利者でないものは155件
あり(乙1)、これらは、「UNITED ARROWS」、「UNITED C
OLORS OF BENETTON」、「UNITED ATHLE」、「U
NITEDWORKS」、「UNITED DOORS」、「UNITED A
SH」、「UNITED CARR」、「UNITED RIVERS」、「UN
ITED TOKYO」、「United Prime」などであるところ、
これら「UNITED」(文字列に小文字があるものを含む)を含む商標のう
ちには、被服の業界でそれなりの知名度を有するものも多くある。このうち、
本件請求商品役務と関連のある指定商品又は役務に係るものとして、「UN
ITED ASH」は、洋服、コートを指定商品として、「United P
rime」は、運動用特殊靴、被服及び履物を指定商品として、「UNITE
D TOKYO」は、靴クリーム、身飾品、貴金属製靴飾り、時計、文房具
類、被服、履物、被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する
便益の提供、おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便
益の提供、履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の
提供、身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益
の提供、時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する
便益の提供等を指定商品及び指定役務として、それぞれ商標登録がされてい
る(甲31の1ないし3)。
また、Amazonのサイトにおいて、「United スラックス メン
ズ」の条件で検索をすると、原告に係る「UNITED」、被告に係る「UN
ITED GOLD」のほか、「UNITED ARROWS」、「UNITE
D DOORS」、「UNITED ARROWS green label」
等、上記「UNITED(United)」を含む商標に係る商品が数多く検
索結果に現れる(乙1、4)との取引の実情も認められる。そうすると、被
服やそれに伴う身の回り品等を取り扱うファッション業界及びそれらの小売
業界においては、「UNITED」という部分の識別力は弱いものと認められ
る。
したがって、本件商標のうち、「UNITED」の部分に格別の識別力があ
るものとは認められないから、本件商標は、「UNITED GOLD」との
一体不可分の構成の商標としてみるのが相当であり、「UNITED」と「G\nOLD」とに分離して観察されるものではないと認められるから、本件商標
からは「ユナイテッド」の称呼は生じないと解するのが相当である。
・・・
本件請求商品役務と、各引用商標の指定商品は、いずれもその指定商品・
役務の内容から、需要者は一般の消費者であると認められるところ、一般の
消費者は、必ずしも商標の構成を細部にわたり記憶して取引に当たるものと\nはいえないから、そのような需要者が通常有する注意力の程度を踏まえて、
本件商標と各引用商標の外観、称呼及び観念の要素を総合勘案することとな
る。
本件商標と各引用商標は、外観、称呼においていずれも異なる上に、観念
においても比較できないから、時と所を異にして離隔的に観察した場合、本
件商標と各引用商標とは互いに紛れるおそれのある類似の商標であるとは認
められない。
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2025.01.12
令和6(行ケ)10055 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年11月25日 知的財産高等裁判所
商標「至福のギリシャ」が、識別力、品質誤認、公序良俗違反かが争われました。知財高裁は、無効理由無しとした審決を維持しました。原告はギリシャ共和国です。
原告は、本件商標が、日本国産であり、乳蛋白質が添加されていることか
ら「ギリシャ国の伝統製法」ではないヨーグルトの商品、すなわち産地や製
法と関係がない製品に用いられており、需要者の信頼を裏切るものであるか
ら、「指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の福祉に反し、
社会の一般的道徳観念に反する場合」に当たる旨主張する。
しかし、前記1のとおり、本件商標は、ギリシャという国あるいは地域か
ら連想される抽象的なイメージを「至福の」という肯定的なイメージととも
に需要者に連想させ、ギリシャと何らかの形で関連する商品であることを表\n示するに止まるものである。
また、本件指定商品における「ギリシャ国の伝統製法」とは、社会通念上、
およそ「ギリシャ国の伝統製法」という範疇に含ませることが相当なヨーグ
ルトの製法を広く指すものであり、被告において、この意味における「ギリ
シャ国の伝統製法によるヨーグルト」を製造販売する蓋然性はあり、本件商
標を本件指定商品に使用する意思もあったことは、前記3のとおりである。
そうすると、被告が本件商標を登録し、本件指定商品すなわち「ギリシャ
国の伝統製法によるヨーグルト」について使用することが、社会公共の福祉
に反し、社会一般の道徳に反するということはできない。
(2) 原告は、本件商標の登録を認めることは、日本の一事業者にすぎない被告
が一方的にギリシャ国に付した漠然としたイメージを、日本が国家として是
認することになり、「特定の国若しくはその国民を侮辱する場合」に当たる
と主張する。
しかし、「特定の国若しくはその国民を侮辱する」かどうかは、イメージ
の内容如何によるのであり、「至福の」という肯定的な修飾語を伴う本件商
標により想起される「この上もない幸せの国ギリシャ」というギリシャ国に
対する「漠然としたイメージ」がギリシャ国又はその国民を侮辱するものと
いうことはできない。もとより、本件商標の登録を認めたからといって、商
標法上の保護が与えられるだけであり、ギリシャ国についての特定のイメー
ジを日本が国家として承認するなどといった法的効果が発生することはない。
また、原告は、「ギリシャ国の伝統製法」なる指定商品を認めることは、
同様に、ギリシャ国における「伝統」を特許庁あるいは一事業者が一方的に
これを定めることを認めることになると主張する。
しかし、本件指定商品である「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」
の「伝統製法」がいかなるものであれ、本件指定商品を指定商品とする商標
登録を認めたからといって、「ギリシャ国の伝統製法によるヨーグルト」の
具体的内容が一義的に決まるわけではないから、ギリシャ国における「伝統」
を特許庁又は一事業者が一方的に定めたことにはならない。
なお、将来、本件商標に係る不使用取消審判等の審判やその審決取消訴訟
において、具体的な商品が本件指定商品に当たるか否かについて、特許庁や
裁判所による判断がされることがあるとしても、その判断は、客観的事実を
踏まえ、社会通念に照らしなされるものであり、そのことが、直ちにギリシ
ャ国又はその国民を侮辱することに当たるとは認められない。もとより、ギ
リシャ国は、これに拘束されることなく、必要に応じ、自らが妥当と考える
「伝統製法」の内容を決めることは何ら妨げられない。
したがって、本件指定商品を認めたからといって、特許庁や一事業者がギ
リシャ国の「伝統」を一方的に定めたなどということはできない。
(3) 原告は、地理的表示に関する国際的趨勢や動向を踏まえると、「ギリシャ\nヨーグルト」という用語ですら産地と結び付けて理解されるのであるから、
本件商標のように国家名のみが示されている場合は端的に産地を示している
との考慮がなされるべきであるから、本件商標の登録は、「一般に国際信義
に反する場合」に当たると主張する。
しかし、「ギリシャヨーグルト」がTRIPs協定22条にいう地理的表\n示に当たるか否かはともかく、本件商標は国家名のみを示したものではなく、
「至福のギリシャ」という表示は、産地を示す表\現であると認めることはで
きないことは前記のとおりである。すなわち、本件商標は、商品の原産地を
特定する表示であることを内容とする同条の「地理的表\示」に当たるもので
はない。したがって、本件商標の登録を認めることが、一般に国際信義に反
するとは認められない。原告が引用する英国控訴院の判決(甲8、9)は、
米国の会社が米国で生産し、英国に輸入して販売していた「ギリシャヨーグ
ルト(Greek yoghurt)」という商品に関し、英国内の購入者の多く(5
0%以上)が当該商品はギリシャ産の製品だと誤認しているという事実関係
のもとで、ギリシャヨーグルトの表示の差止めを認めた原審を維持したもの\nであって、客観的にみて表示自体では産地を表\示したものとは認められず、
本件商標を付した被告商品をギリシャ産であると需要者が一般的に認識する
とも認め難い本件において、当然に妥当するものではない。
(4) 原告は、被告がギリシャ産のヨーグルトや本件指定商品に用いる意思がな
いにもかかわらず本件商標の登録出願をしたことは、虚偽的かつギリシャ国
のイメージに積極的にフリーライドすることを企図していたとも評価し得る
から、「当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を
認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場\n合」に当たると主張する。
しかし、被告において、本件商標を本件指定商品に使用する意思があった
ことが認められることは前記のとおりであるから、原告の主張はその前提を
欠くものである。その他、本件商標の出願の経緯等が社会相当性を欠くもの
であったことを認めるに足りる主張立証はないから、原告の主張は採用する
ことができない。
◆判決本文
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2025.01.12
令和6(行ケ)10051 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年11月27日 知的財産高等裁判所
9類「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライブ」と、引用商標の指定商品「第9類「ウエイトトレーニング機械器具で測定された負荷重量・マシーンの変位量・回動数・回動スピードのうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置、運動用トレッドミルで測定されたローラーベルトの傾斜角度・走行距離・運動経過時間・平均走行速度・消費カロリ・利用者の体重・歩数・歩幅・ピッチ・心拍数のうちいずれか一以上の値を受信して表\示するデータ処理装置」が類似するかが争われました。
知財高裁は、類似するとした審決を維持しました。
したがって、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフ\nトウェアは、いずれも電子計算機に関連する商品として、電子計算機によ
る処理を行う際に通常用いられるという商品であるという意味において、
共通性がある。
(2) 生産及び販売の実情
ア 本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアのよ\nうなディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェアは、いずれも製造業\nの同一事業者が生産、販売している例が多く認められる。
・・・
また、家電量販店やパソコン及び周辺機器を扱う専門店(ビックカメラ.\ncom、ヨドバシ.com、ヤマダウェブコム、エディオン公式通販、パ
ソコン工房、TSUKUMO、ドスパラ、パソ\コンSHOPアーク〔乙3
7〜44〕)においても、ディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェア\nは、同一販売店において扱われていることが認められる。
したがって、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフ\nトウェアは、同一営業主により製造及び販売され、又は、同一販売店によ
り販売される実情にある。
イ この点について、原告は、本願指定商品と引用商標データ処理装置及び
引用商標ソフトウェアは、総務省日本標準産業分類において属する産業を\n異にするなどと主張する。しかしながら、引用商標データ処理装置は、電
子計算機であるから、本願指定商品と同じ「(中分類)情報通信機械器具製
造業」(甲25)に属するというべきであり、原告の主張する「(中分類)
業務用機械器具製造業」「(細分類)その他の事務用機械器具製造業」(甲2
6)に属するものと解することはできない。
また、原告は、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソ\nフトウェアは、いずれも専門的に製造する業者が多数存在する実情がある
ので生産部門は共通しないとか、本願指定商品が一般需要者向けの直販サ
イト又は家電量販店等で販売されるのに対し、引用商標データ処理装置及
び引用商標ソフトウェアは、企業間取引に対応する特定の専門業者により\n販売されるから、販売部門も共通しないなどと主張する。しかしながら、
前記のとおり、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフ\nトウェアは、いずれもディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェアと\nいう電子計算機に関連する商品として同一営業主により開発され、製造及
び販売され、又は、同一販売店により販売される実情にあるから、営業主
の同一性を誤認させるような生産・販売形態における共通性があるものと
認めるのが相当である。よって、原告の主張を採用することはできない。
(3) 用途
ア 前記のとおり、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソ\nフトウェアは、それぞれディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェア\nであり、いずれも電子計算機に関連する商品である。
そして、本願指定商品と引用商標データ処理装置は、いずれも電子計算
機に関連し、電子データを利用し、これを読み込み・再生し、又はこれを
処理することを目的とするものである。
また、本願指定商品と引用商標ソフトウェアは、いずれも電子計算機に\n関連し、本願指定商品は電子計算機を動作させて音楽・映像データの取り
込み・再生を行う周辺機器として、引用商標ソフトウェアは電子データを\n利用し、電子計算機の周辺機器又は電子計算機を動作させるためのプログ
ラムとして、それぞれ電子計算機の機能を実現させることを目的とするも\nのである。
これらの点に照らすと、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引
用商標ソフトウェアは、それぞれ役割が異なるものの、いずれも電子計算\n機による処理又は電子データの利用を行うために用いられる商品という
意味において、その用途に共通点があるということができる。
イ この点につき、原告は、本願指定商品の用途は、光学ディスクに記録さ
れた音楽・映像に関する電子データの読み取り・再生であり、引用商標デ
ータ処理装置の用途は、運動に関するデータを取り込み表示するためのデ\nータ処理であって用途を異にし、また、引用商標ソフトウェアは、データ\nの読み取りという用途は、本願指定商品の用途と共通するが、ディスクド
ライブとその動作のためのアプリケーションソフトは担う具体的な役割\nが異なるなどと主張する。しかしながら、前記のとおり、本願指定商品、
引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、電子計算機による\n処理又は電子データの利用を行うために用いられる商品であるという共
通点があり、およそ営業主の同一性誤認の可能性を否定するほど用途を異\nにするものということはできないから、原告の主張を採用することはでき
ない。
(4) 需要者の範囲
ア 本願指定商品は「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライ
ブ」であるから、電子計算機の周辺機器として、その需要者は、電子計算
機の利用者全般である一般の消費者を含むものということができる。
他方、引用商標データ処理装置は「ウエイトトレーニング機械器具で測
定された負荷重量・マシーンの変位量・回動数・回動スピードのうちいず
れか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置、運動用トレッドミル\nで測定されたローラーベルトの傾斜角度・走行距離・運動経過時間・平均
走行速度・消費カロリ・利用者の体重・歩数・歩幅・ピッチ・心拍数のう
ちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置」であるから、\n前記の情報を受信して表示するためのデータ処理装置(電子計算機)とし\nて、その需要者は、前記のウエイトトレーニング機械器具又は運動用トレ
ッドミルの利用者である。そして、これらの運動用器具は、家庭用又は自
宅利用のためにも販売され(乙45〜47)、モバイル端末とともに利用さ
れる場合もあることからすると(乙17、21)、その需要者は、前記の運
動用器具を利用する施設等の取引者のほか、一般の消費者を含むものとい
うことができる。
また、引用商標ソフトウェアは「ダウンロード可能\なモバイル機器用の
アプリケーションソフトウェア」であるから、モバイル端末を動作させる\nためのプログラムとして、その需要者は、モバイル機器を利用する取引者
のほか、一般の消費者を含むものである。よって、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアの各需要者は、いずれも広く一般の消費者を含むものとして需要者の範囲において共通している。\n
イ この点につき、原告は、本願指定商品の需要者の範囲は、一般家電需要
者であるのに対し、引用商標データ処理装置の需要者の範囲は、主に運動
用機械の使用施設を運営する専門的知見を持つ事業者等であるから共通
せず、引用商標ソフトウェアの需要者の範囲は、広く一般消費者のほか特\n定分野の専門家又は事業者等であるから、一部共通しても一致しないなど
と主張する。
しかしながら、引用商標データ処理装置が、専門的知見を持つ事業者に
より利用されている実情があるとしても、前記のとおり、一般消費者にお
いても利用されている実情にあるから、需要者の範囲に係る原告の主張は、
利用態様の一部をいうにとどまる。また、引用商標ソフトウェアについて\nは、原告においても、需要者の範囲に一般消費者が含まれることを認める
のであるから、本願指定商品の需要者の範囲と共通するものと認めるのが
相当である。そして、このように本願指定商品、引用商標データ処理装置
及び引用商標ソフトウェアの需要者にはいずれも一般消費者が含まれて\nいると認められる以上、これらの商品やソフトウェアには需要者の共通性\nが認められるというべきである。原告の主張を採用することはできない。
(5) 完成品と部品の関係等
本願指定商品と引用商標データ処理装置又は本願指定商品と引用商標ソフ\nトウェアは、いずれも完成品と部品の関係にはなく、需要者の範囲は共通し
ている。その他、本願指定商品、引用商標データ処理装置又は引用商標ソフ\nトウェアについて、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそ
れがないことを窺わせるような特段の事情も見当たらない。
(6) 小括
以上によれば、本願指定商品と引用商標データ処理装置及び引用商標ソフ\nトウェアは、その生産・販売形態、用途、需要者の範囲において共通性があ
り、これらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製
造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にあると
いうべきであるから、本願指定商品と引用商標の指定商品は類似の商品に該
当すると認めるのが相当である。
◆判決本文
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