2024.12. 5
令和6(行ケ)1004 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年10月31日 知的財産高等裁判所
商標「ZOOM」について、9類「電子計算機、電子計算機用プログラム、電子式卓上計算機」は不使用と認定されました。もともとはトンボ鉛筆が所有していましたが、米国法人のZOOMに分割譲渡しています。審決は、不使用と判断し、知財高裁もこれを認めました。争点は、書き換え時に「電子計算機」とした場合に、周辺機器が含まれるか否かです。
(9) 本件商標の本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」の意味につい
て上記(7)で検討した結果を本件に当てはめると、まず、使用商品2について
は、その仕様は「別紙1 使用商品2」記載のとおりであるところ、上記(8)
のとおり、使用商品2は静電容量式のタッチペン付きの尾栓であって、人の
指などの導電性の物に代わる入力手段に過ぎないから、上記(7)のとおり、電
子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものだけを含むと\nする「電子計算機」に含まれるものとは解しがたい。加えて、「電子計算機」
につき、上記のとおり中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させ
た電子回路等の周辺機器のみを含み、補助記憶装置であるハードディスクユ
ニット等の電子計算機外部の周辺機器ですら含まれないと解されることから
すれば、電子計算機の中央処理装置及び電子計算機用プログラムの記憶とは
何ら関係しない、多機能ペンの尾栓である使用商品2は、電子計算機に含ま\nれる周辺機器に当たるものとは解しがたいというべきである。
次に、使用商品1は、多機能ペンであって筆記具である上、静電容量式の\nタッチペン付きの尾栓を備えていることを考慮しても、上記と同様に、人の
指などの導電性の物に代わる入力手段に過ぎないから、電子の作用をその機
械器具の機能の本質的な要素としているものだけを含むとする「電子計算機」\nに含まれるものとは解しがたく、電子計算機の中央処理装置及び電子計算機
用プログラムの記憶とは何ら関係しない多機能ペンである使用商品1は、電\n子計算機に含まれる周辺機器に当たるものとも解しがたいというべきである。
その他、本件取消対象指定商品につき、本件要証期間における本件商標の
使用の事実の立証はされていない。
そうすると、本件取消対象指定商品について、本件要証期間における本件
商標の使用の事実は立証されていないこととなるから、これと同旨の本件審
決の判断に誤りはない。したがって、原告らの主張する取消事由には理由がない。
2 原告らの主張に対する判断
(1) 原告らは、前記第3の1〔原告らの主張〕(1)及び(2)のとおり、各使用商品
は「電子計算機」ないしそこに含まれる周辺機器に当たるから、本件商標の
本件取消対象指定商品についての使用の事実の立証がされていると主張する。
しかし、既に述べたとおり、本件商標の本件書換登録後の指定商品である
「電子計算機」は、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素として\nいるものだけを含み、その電子計算機に含まれる周辺機器も、中央処理装置
及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器のみがこれ
に当たり、ハードディスクユニット等の外部周辺機器はこれに当たらないと
解されるところ、各使用商品は、いずれもそこにいう「電子計算機」に該当
するものとは認められないというべきである。なお、原告らの主張のうち、
本件書換登録が書換登録ガイドラインに従ったものであるとする点について
の判断は後記(3)のとおりである。したがって、原告らの上記主張は採用することができない。
(2) 原告らは、前記第3の1〔原告らの主張〕(3)のとおり、「商品及び役務の区
分解説〔国際分類第9版対応〕」(甲56)によれば、本件書換登録の申請時\nにおいても、電子計算機は周辺機器を含むものとして考えられていたとし、
「周辺機器」についての辞書等の記載によれば、スタイラスペンが入力装置
として解説されていることなどから、各使用商品は、入力装置であるスタイ
ラスペン(ペン型データ入力具)の性質を有するものとして、「電子計算機」
の周辺機器に含まれる旨を主張する。しかし、上記1(3)イの「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕」(甲56)の記載を含め、本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」に含まれる周辺機器については、中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器のみがこれに当たるものであり、ハード
ディスクユニット等の外部周辺機器がこれに当たらないと解されることにつ
いては既に述べたとおりである。そして、上記1(8)のとおり、使用商品1の
外箱には「Stylus pen」とのシールが貼付されていたけれども、各使用商品\nが本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」に含まれないことについ
ては、上記1(9)で述べたとおりである。したがって、原告らの上記主張は採用することができない。
(3) 原告らは、前記第3の1〔原告らの主張〕(2)及び(4)のとおり、原告トンボ
鉛筆は、本件書換登録の申請に当たり、本件書換登録申\請日当時の書換ガイ
ドラインに沿って書き換えを行ったに過ぎないから、本件書換登録後の指定
商品「電子計算機」は、本件書換登録前の「電子計算機〔中央処理装置及び
その周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディス
ク、磁気テープを含む)〕」と同義であるところ、書換前の「その周辺機器」
には各使用商品が含まれるから、書換後の「電子計算機」についても同様に
解すべき旨を主張する。
しかし、上記1(5)エのとおり、書換ガイドラインの一覧表上に昭和34年\n法に基づく商品として記載されているのは「電子計算機」であって、本件書
換登録前の本件商標の指定商品であった「電子計算機〔中央処理装置及びそ
の周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、
磁気テープを含む)〕」と同一ではないから、原告トンボ鉛筆の行った書換は、
必ずしも書換ガイドラインの一覧表に示された通りの書換を行ったものとは\nいえない。加えて、そもそも書換ガイドラインは、上記1(5)ウにあるとおり、
基準的な性格のものに過ぎない上に、一覧表の書換表\示以外の書換表示であ\nっても、それが書換登録申請に係る商標権の指定商品の範囲内の適切な商品\n表示であれば、その書換表\示による書換も認められるのであるから、本件申\n請時の商品等区分に従い、本件書換登録前の指定商品の記載に基づいて原告
トンボ鉛筆が指定商品に含まれると考える商品について書換申請を行うこと\nも可能であったということができる(上記1(5)エ)。なお、本件書換登録申請\n日当時の「類似商品・役務審査基準」が適用される間における書換登録にお
いても、書換前の第11類「電子計算機〔中央処理装置およびその周辺機器
(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テー
プを含む)〕」及びこれと類似する記載を、第9類「電子計算機〔中央処理装
置及びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気
ディスク、磁気テープを含む)」などや、これと類似する記載に書き換えた例
も存するところである(乙47ないし49、51)。
さらに、上記の点を措くとしても、上記1(5)ウの書換ガイドライン利用上
の注意事項(「旧区分の1の商品に対して書換表示が複数の商品となる場合\nは、各商品の配列を五十音順とし、各商品間をカンマ(,)で区切っている。」)\nから明らかなとおり、そもそも同ガイドラインの一覧表に示された記載に沿\nって商品「電子計算機」の書換登録を行ったとする場合の書換後の商品は、
上記1(5)エのとおり「電子計算機」及び「電子計算機用プログラム」の二つ
の商品であり、指定商品を実質的に超えない範囲で書換登録がなされるもの
であること(上記1(5)ア、イ)に鑑みれば、二つの商品に書換えられた後の
一方の商品である「電子計算機」が、書換前の商品「電子計算機」と内容的
に全く同一とはいえないことも明らかである。
そして、商標法附則12条3項が「(書換の)申請書に記載されなかった指\n定商品に係る商標権は、登録の時に消滅する。」と規定するところから、書換
登録がなされた後にあっては、該商標の指定商品については、書換後の指定
商品の内容に従って客観的に定まるものと解される。これに沿って解した場
合の、本件書換登録後の本件商標の指定商品である「電子計算機」の意義、
及び各使用商品がこれに当たらないことについては、既に検討したとおりで
ある。
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2024.02.23
令和5(行ケ)10018 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年1月30日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判段階では、証拠を提出せず、知財高裁で使用証拠を提出し、不使用取消審決が取り消されました。
ア 被告は、前記第3の2〔被告の主張〕(1)のとおり、平成3年最高裁判決
は、本件において適用されるべきではなく、本件訴訟において、原告によ
る本件訴訟の使用に関する新たな立証を許すべきではないと主張する。
しかし、商標法50条2項本文は、商標登録の不使用取消審判の請求が
あった場合において、被請求人である商標権者が登録商標の使用の事実を
証明しなければ、商標登録は取消しを免れない旨規定しているが、これは、
登録商標の使用の事実をもって商標登録の取消しを免れるための要件と
し、その存否の判断資料の収集につき商標権者にも責任の一端を分担させ、
もって審判における審判官の職権による証拠調べの負担を軽減させたも
のであり、商標権者が審決時において使用の事実を証明したことをもって、
商標登録の取消しを免れるための要件としたものではないと解される(平
成3年最高裁判決)。平成3年最高裁判決の事案も、本件と同様、審判手続
段階において、商標登録取消請求の被請求人が商標使用の事実について何
ら主張立証しなかったものであり、本件において原告が本件審判手続の中
で本件商標の使用に関する主張立証をしなかったことにより、平成3年最
高裁判決が説示した商標法50条2項本文の上記趣旨が本件に当てはま
らないとは解されない。したがって、被告の上記主張は採用することができない。
イ 被告は、前記第3の2〔被告の主張〕(2)アないしエのとおり、本件商標
の使用の事実が立証されたとはいえない旨主張する。
(ア) 前記第3の2〔被告の主張〕(2)アについて
証拠(甲13〜15)及び弁論の全趣旨によって、「Pleasure」の文字
が記載された本件眼鏡フレームを、オリエント眼鏡が原告の下請けとし
て製造し、原告に納入したものであると認められることは、前記(4)のと
おりであり、原告が、本件眼鏡フレームを使用した眼鏡を、原告の経営
する店舗で販売したことは、商標法50条2項にいう「登録商標の使用」
に当たると認められる。
甲1の1ないし3の写真は、本件眼鏡フレームが存在することを立証
するものであり、甲2の1ないし5等その他の証拠と併せて、要証期間
内に原告が商標を使用した事実を立証するものであるから、甲1の1な
いし3の写真の撮影日が要証期間内ではないことをもって、原告が要証
期間内に商標を使用した事実が立証されていないとはいえない。
甲1の1ないし3の写真に撮影されている眼鏡が眼鏡フレームのみな
らずレンズにも「Pleasure」の文字が存在している一方、原告のウェブ
サイトに掲載された「オグラ眼鏡店オリジナル」の商品の中に眼鏡のレ
ンズ部分に商標が刻印されているものが存在しないとしても、甲1の1
ないし3の写真に撮影されている眼鏡が実際に販売されたものであると
認められないことにはならない。
(イ) 前記第3の2〔被告の主張〕(2)イについて
甲2の1ないし5の「お客様カード」は、「Pleasure」の文字が記載さ
れた本件眼鏡フレームを用いた眼鏡の販売の事実を立証する証拠である。
原告は、これらの「お客様カード」に上記商標を記載したことが商標法
2条3項8号にいう「取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し」
た行為に該当するなどとは主張立証していないから、上記「お客様カー
ド」が同号にいう「取引書類」に該当しないとしても、前記(2)ないし(6)
の認定及び判断は左右されない。
ジャーナル(甲7の1ないし4)及び日計表(甲8の1・2)には、\n「オグラ眼鏡店亀有店」との記載があるが、これらの書類に記載された
店舗の電話番号は、原告のウェブサイトに記載されたオグラ眼鏡店イト
ーヨーカドー亀有駅前店の電話番号と同一であるから(乙4の1ないし
6)、上記資料に記載された「オグラ眼鏡店亀有店」はオグラ眼鏡店イト
ーヨーカドー亀有駅前店を指すと認められ、このことからすれば、甲2
の1ないし5の「お客様カード」に記載された「亀有店」もオグラ眼鏡
店イトーヨーカドー亀有駅前店を指すと認めることができるのであって、
これらの「お客様カード」は、オグラ眼鏡店イトーヨーカドー亀有駅前
店における売上げに関する資料であると認められる。
ジャーナル(甲7の1ないし4)は、これのみをもって本件眼鏡フレ
ームを用いた眼鏡の販売の事実を立証するものではなく、甲2の1ない
し5の「お客様カード」等の証拠を併せて上記販売の事実が立証されて
いるといえるから、甲7の1ないし4に本件商標あるいは「Pleasure」
の商標が記載されていないとしても、前記(2)ないし(6)の認定及び判断は
左右されない。
(ウ) 前記第3の2〔被告の主張〕(2)ウについて
前記(2)ないし(6)のとおり、甲4以外の証拠により、「Pleasure」の記載
のある眼鏡フレームを用いた眼鏡の販売の事実が立証されているといえ
るから、甲4に関する被告の主張は前記(2)ないし(6)の判断を左右しない。
なお、被告は、甲4が「商品に関する広告、価格表若しくは取引書類」\n(商標法2条3項8号)に該当しないから、商標の使用を立証するため
の証拠とならないという趣旨の主張をする。しかし、原告は、甲4を同
法2条3項8号にいう「取引書類」に該当すると主張するものではなく、
「Pleasure」の記載のある眼鏡フレームを用いた眼鏡の販売が同法50
条2項の使用に該当する旨主張しているのであり、このような使用を立
証するために証拠として提出する資料が上記「取引書類」に該当する必
要もないから、被告の主張は失当である。
(エ) 前記第3の2〔被告の主張〕(2)エについて
現在の原告のウェブサイトの「オグラ眼鏡店オリジナル」の箇所に
「Pleasure」又は「PLEASURE」という名称の商品が掲載されていない
としても、そのことをもって、前記(2)ないし(6)の認定及び判断は左右さ
れない。
乙3の1ないし6及び乙4の1ないし6のウェブサイトの画面が、甲
2の1ないし5において「Pleasure」の記載のある眼鏡フレームを用い
た眼鏡が販売されたとされる時期(令和2年11月11日から令和3年
3月7日)の原告のウェブサイトの画面であるか否かは、乙3の1ない
し6及び乙4の1ないし6の画面の内容からは明らかでない。また、仮
に上記画面が上記時期における原告のウェブサイトの画面であり、この
ウェブサイトに「Pleasure」又は「PLEASURE」の名称の商品が掲載さ
れていなかったとしても、このことから、上記時期において原告の店舗
で「Pleasure」の記載のある本件眼鏡フレームを用いた眼鏡が販売され
たことがあり得ないということはできない。
「オグラ眼鏡店新宿サブナード店」の店員が、令和5年4月29日、
被告代理人に対し、「『Pleasure』という商品は扱っていない、在庫切れ
ではなく全ての店舗において既にその商品はない、昔はあったが現在は
取り扱いがない。」という趣旨の回答をしたとの事実を裏付ける証拠は何
ら提出されていない。また、仮に、上記店舗の店員が上記発言をしたと
しても、その発言の根拠は明らかでなく、前記(2)ないし(6)の認定及び判
断を左右するものではない。
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2022.12.17
令和2(行ケ)10120 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年11月9日 知的財産高等裁判所
不使用取り消しとなった商標について、知財高裁は、「使用権者による使用とは認められない」とした審決の判断を維持しました。
(1) 原告は,前記1(4)の本件ウェブページの記載を基に,本件商標が本件要証
期間中に,原告の商品である「Packard Bell Easy Note TK37 シリーズ」の本件液晶パ
ネルを販売するために使用されていると主張する。
また,前記1(4)によると,本件ウェブページには,「Amazon.co.jpで
の取り扱い開始日」が,本件要証期間中の平成29年8月8日と記載されているこ
と,原告が販売する商品には,「Packard Bell Easy Note TK37 シリーズ」があること
(甲23)が認められる。
(2) しかし,本件証拠上,CHIKAZOが本件商標権について,「商標権者,
専用使用権者,通用使用権者」(本件商標権者等)に当たると認めることはできない
のはもとより,本件商標権者等といかなる関係にある者であるかは全く明らかでは
ない。
また,CHIKAZOは,自らを米国からの直輸入品を扱う輸入業者であるとし
ている(前記1(4))ところ,原告は,米国において,製品を販売しているとは認め
られないこと(前記1(1),(2)),原告からCHIKAZOに原告の商品が流通した経
路が本件において全く明らかになっていないことを考慮すると,本件ウェブページ
には,「Packard Bell Easy Note tk37 シリーズ 15.6」等の表示があるものの,本件ウェブページを用いてCHIKAZOが販売していた「Packard Bell Easy Note TK37 シ
リーズ」が,原告の製品であるかどうかは本件の証拠上,明らかでないというほか
ない。このことは,Amazonサイトにおいては,販売業者に,詐欺行為がないようにする制度を構\築し,ブランド名を使用する際のポリシーを定めていること(前記1(4))など前記1認定の事実によっても左右されない。
そうすると,仮に,本件ウェブページにおいて,本件商標が使用されているとし
ても,上記のとおり,本件商標権者等との関係が全く不明であり,しかも,販売し
ている商品も不明である商標の使用をもって,本件商標権者等による本件商標の使
用を認めることはできない。
(3) 以上によると,原告は,本件要証期間内に,日本国内において,商標権者,
専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件指定商品について,本件商標の
使用をしていることを証明したとは認められないから,本件指定商品に係る本件商
標登録は,取り消されるべきである。
なお,原告の主張するFashion Walker事件判決は,流通業者が,
ウェブサイトなどを通じて,商標の通常使用権者の商品を販売していたことが認定
された事案であり,本件とは,事案を異にする。
3 原告は,被告の本件審判請求が信義則に反し権利の濫用であると主張する。
前記2のとおり,商標法50条は,一定期間使用されていない商標については,
商標権者等の業務上の信用の維持を図る必要はない上,かえって国民一般の利益を
害することになるため,第三者による商標登録の取消請求を認めたものであると解
される。
そうすると,一定期間使用していない商標について,第三者が,それと同一又は
類似する商標を商標登録することを目的として,商標法50条により,商標登録の
取消しを求めたとしても,商標権者等の商標登録を維持する必要性が認められない
以上,当該第三者が,商標権者等の登録商標の使用をあえて妨害するなどの特段の
事情がない限り,その商標登録の取消請求が信義則に反するとか権利濫用になると
認めることはできない。
本件において,前記1のような事実関係が認められるとしても,被告が,原告の
登録商標の使用をあえて妨害するなどの特段の事情があるとは認められないから,
被告の本件審判請求が信義則に反するとか権利濫用になると認めることはできない。
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2022.10. 1
令和4(行ケ)10038 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年9月28日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判の審決取消請求事件です。ネット上における商標の使用について、審決は使用していたと認定しました。知財高裁も同じ判断です。
前記1(2)の認定事実によれば、使用商標2のみならず、使用商標1につ
いても、本件投資信託(「香港籍指数連動型上場投資信託」及び「私募外
国投資信託(香港ドル建)」)の名称であることは明らかであるから、使
用商標1は、要証期間を含む期間において、請求に係る指定役務中、第3
6類「証券投資信託受益証券の募集・売出し、投資、金融資産の管理」の
範ちゅうに含まれる役務に使用されていることになる。
エ 楽天証券のウェブサイトにおける使用商標1の使用が本件投資信託の販
売会社としてのものであることは明らかである。前記イ のとおり、被告
の本件投資信託の交付運用報告書では、運用報告書(全体版)については、
販売会社である楽天証券のウェブサイトで電磁的方法により提供されて
いるとしてURLを表示しているのであるから、被告が、楽天証券におい\nて使用商標1をウェブサイトで使用していることを認識していることも
明らかである。そうすると、被告が楽天証券に使用商標1の通常使用権を
許諾していることは優に推認される。
そして、前記1(1)のとおり、楽天証券のウェブサイトでは、過去10年
の本件投資信託の価格等、本件投資信託に関する重要な情報が示され、本
件投資信託の売買も可能なのであるから、「役務に関する広告・・・を内\n容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」が行われて
いたことになる。
オ 以上によれば、本件商標の通常使用権者である楽天証券は、要証期間に
日本国内において、請求に係る指定役務中、第36類「証券投資信託受益
証券の募集・売出し」等に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社
会通念上同一の商標である使用商標1を付して、自社のウェブサイト上で
表示し、役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法\n(インターネット)により提供する行為(商標法2条3項8号)をしてい
たものと認められる。
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2022.03.31
令和3(行ケ)10087 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年3月22日 知的財産高等裁判所
本件商標は、指定商品が「フランス製の被服・・」となっています。これに対して不使用取消審判が請求されました。審決は、使用していた商品がフランス製ではないとして、不使用としました。知財高裁はこれを維持しました。商標は、「IRO PARIS」です。
2 登録商標を使用すべき商品について
(1) 商標法50条2項によれば,本件の場合,商標権者たる原告が本件商標の
登録取消しを免れるためには,本件指定商品のいずれかについての本件登録
商標の使用の事実を証明しなければならない。そして,使用の事実は本件指
定商品と同一の商品に限られるのであって,指定商品に類似する商品につい
ての使用の事実を証明しても,登録取消しを免れ得ないことは,同条項の文
理上明らかである。商標権のうち禁止権に係る部分すなわち類似部分の使用
は,権利としての使用でなく事実上の使用であるため,商標法50条の意図
する登録商標の使用義務の履行とは認められないからである。
なお,商標法50条2項の適用に当たり,使用する商標については商標法
38条5項かっこ書きが適用されるため,「登録商標と社会通念上同一と認
められる商標」の使用であっても登録取消しを免れ得るが,いかなる商品に
ついての使用であるかに関しては商標法に同旨の定めはないから,上記「社
会通念上同一」とは登録商標に関する記述であって,「指定商品と社会通念
上同一と認められる商品」について使用の事実を証明しても,商標の登録取
消しを免れることはできないと解される。
(2) そして,本件指定商品は,「フランス製の被服」であり,「フランス製」
とは,フランス国内で製造された物を意味すると解されるところ,前記認定
のとおり,本件使用商品は,フランス国以外の国で製造された物であるから,
本件使用商品の使用によっては本件指定商品について本件登録商標を使用し
たものと認めることはできないというべきである。
3 原告の個別の主張について
(1) 原告は,本件使用商品がフランス国以外の国で製造されたことを自認しつ
つも,フランス国で企画,デザイン及び品質管理が行われていることを理由
に,「フランス製の」被服等に当たると認められるべきであるとして,前記
第3の1及び2のとおり種々の主張をする。
しかしながら,同主張に係る事実関係を前提としても,原告の主張は,結
局のところ,本件使用商品(フランスで企画等が行われた被服等)は本件指
定商品(「フランス製の」被服等)と類似すること,あるいは社会通念上同
一と認められることを理由に,本件商標の登録取消しを免れ得ると主張する
に等しいものであり,上記のとおり,商標法50条2項の文理に反するから,
採用できない。そして,このことは,商品の原産地表示に関する不正競争防\n止法,関税法並びに不当景品類及び不当表示防止法の一般的な運用(乙2,\n3,5〜8,11)に照らしても明らかである。
(2) 商標審査便覧に係る主張(前記第3の3)につき
原告は,商標審査便覧において,商標法4条1項16号の拒絶理由を解消
するための補正として指定商品に「○○製の」との限定を付すことが示され
ているところ,この限定が「製造された」の趣旨であるとは明記されていな
いことを指摘する。
しかしながら,商標審査便覧の内容が当裁判所における商標法の解釈適用
を左右しないことは当然である。また,原告の指摘箇所において,「○○製
の」との限定を付す補正は一例として教示されているにすぎないと解され,
現に,「イタリア製の」との限定を付す補正を教示する拒絶理由通知書(甲
21の2)に対して「イタリアにてデザインされイタリア国法人としての出
願人による厳格かつ恒常的な品質管理の下で出願人の指示に従って生産され
た」等の限定を付す補正を行い登録査定に至った登録第6430949号
(甲21の3)のような例もみられるのであるから,商標出願の実務におい
て,「○○製の」と「〇〇国でデザインされた」等とは区別されているとい
うべきである。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(3) 商標法50条の趣旨に係る主張(前記第3の4)につき
確かに,上記認定の事実関係を前提とすれば,本件使用商品はフランス国
で企画等がされた被服等であって「フランス製の」被服等と著しく類似する
から,商標の使用を通じた信用の蓄積がない商標を整理しようとする商標法
50条の趣旨に照らして,本件商標の登録を取り消すことはいささか酷であ
るともいえる。また,本件商標の場合,出願人(原告)が「フランス製の」
との限定を付す補正をしたのは商標法4条1項16号の拒絶理由を解消する
ためやむなく行ったことにすぎず,例えば「フランスで製造,企画,デザイ
ン又は品質管理された」のような限定を付す補正が拒絶理由通知書や商標審
査便覧等において教示されていたとすればそれに従った可能性が高い,とい\nう事情もある。
しかしながら,そのような事情があるとしても,前記2のとおり,商標法
50条2項の文理からすれば,「指定商品」を「指定商品と社会通念上同一
と認められる商品」に拡張解釈することは認められないのであるから,かか
る拡張解釈を排した本件審決の判断に誤りはない。
なお,原告は,商標法2条1項1号における「商標」と「標章」との使い
分けを根拠に,「社会通念上同一と認められる商標」とは「『社会通念上同
一と認められる標章』が,『社会通念上同一と認められる商品』について使
用されている」と解釈されるべきとも主張するが,独自の解釈であって採用
することができない。
(4) 特許庁における審査実務の一貫性に係る主張(前記第3の5)につき
原告は,外国の地名を含む商標の出願に対して商標法4条1項16号該当
の拒絶理由通知がされた後,「○○製の」ではなく「○○でデザインされ
た」等の限定を付す補正によって登録査定に至った例があると主張する。
しかしながら,そのことは,当該補正によって商標法4条1項16号該当
の拒絶理由が解消したと判断されたことを示すにすぎず,「○○でデザイン
された」等と「○○製の」とが同義であると判断されたことを示すわけでは
ない。したがって,原告の上記主張は,上記2の判断を何ら左右しない。
◆判決本文
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2022.03.29
令和3(行ケ)10112 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年3月23日 知的財産高等裁判所
不使用であったとした審決が維持されました。争点は「IC電子点滅器」が「電子応用機械器具」に該当するか否かです。
(2) 本件指定商品は、本件商標について書換登録申請がされた日(平成13年\n3月15日(甲7、8)。以下「本件申請日」という。)に施行されていた商標法\n施行規則別表(平成13年経済産業省令第202号による改正前のもの。以下「省\n令別表」という。)第9類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」を意味\nするものと解されるので、同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」の
意義について検討する。
ア 本件申請日に施行されていた商標法施行令別表\(平成13年政令第265号
による改正前のもの)には、「第9類 科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、
映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械
器具及び電気式又は光学式の機械器具」との定めがある。
イ 省令別表には、次の定めがある。\n
(ア) 「第9類3 配電用又は制御用の機械器具
開閉器 継電器 遮断機 制御器 整流器 接続器 断路器 蓄電器 抵抗器
点滅器 配線函 配電盤 ヒューズ 避雷器 変圧器 誘導電圧調整器 リアクト
ル」
(イ) 「第9類15 電子応用機械器具及びその部品
(1) 電子応用機械器具
ガイガー計数器 高周波ミシン サイクロトロン 産業用X線機械器具 産業用
ベータートロン 磁気探鉱機 磁気探知機 磁気ディスク用シールドケース 地震
探鉱機械器具 水中聴音機械器具 超音波応用測探器 超音波応用探傷器 超音波
応用探知機 電子応用静電複写機 電子応用扉自動開閉装置 電子計算機(中央処
理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テ
ープその他の周辺機器を含む。) 電子顕微鏡 電子式卓上計算機 ワードプロセ
ッサ
・・・
ウ なお、弁論の全趣旨により本件申請日の後に発行されたものと認められる類\n似商品・役務審査基準(乙1、2)においても、「配電用又は制御用の機械器具」
として「開閉器」及び「点滅器」が掲げられているが、「電子応用機械器具及びそ
の部品」としては、「開閉器」も「点滅器」も掲げられていない。
エ 上記ア及びイによると、本件指定商品(「電子応用機械器具及びその部品」)
は、上記イ(イ)のとおり省令別表第9類15に定める「電子応用機械器具及びその\n部品」に該当するものとして掲げられた「電子計算機」、「X線管」、「ダイオー
ド」、「集積回路」等の商品を含み、上記イ(ア)のとおり同類3に定める「配電用
又は制御用の機械器具」に該当するものとして掲げられた「開閉器」及び「点滅器」
を含まないと解するのが相当である。そして、証拠(甲13〜15)及び弁論の全
趣旨によると、ここでいう「開閉器」ないし「点滅器」とは、電気回路を開閉する
装置、すなわち、スイッチを意味するものと認められる。
(3) これを本件各商品についてみるに、証拠(甲5、9〜12、16の1、甲
17〜19、23、24)及び弁論の全趣旨によると、本件各商品は、いずれも照
明器具の点滅を制御したり、その色を調節したりするICスイッチであると認めら
れるから、本件各商品は、少なくとも省令別表第9類3に定める「制御用の機械器\n具」としての「開閉器」ないし「点滅器」に該当するというべきである。したがっ
て、本件各商品は、同類15に定める「電子応用機械器具及びその部品」、すなわ
ち、本件指定商品には該当しないといわざるを得ない。
(4) 原告は、本件各商品の部品(CPU、IC等)はいずれも本件指定商品に
該当するから、本件各商品も本件指定商品に該当する旨主張する。しかしながら、
本件において本件指定商品に該当するか否かが問題とされるのは、完成品たる本件
各商品であり、その部品ではないから、仮に原告が主張するとおり本件各商品の全
ての部品が本件指定商品に該当するとしても、そのことは、本件各商品が本件指定
商品に該当しないとの上記判断を左右しない。
また、原告は、「配電」は変電所から需要端までの屋外の電力輸送を意味し、家
庭内等において使用する照明器具の内部に配設される本件商品1は「配電用の機械
器具」の範ちゅうに属しないとして、本件商品1が「配電用の機械器具」の範ちゅ
うに属し、「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属しないとした本件審
決の判断は誤りである旨主張する。しかしながら、上記(3)において説示したとお
り、本件商品1は、少なくとも「制御用の機械器具」としての「開閉器」ないし
「点滅器」に該当するものであるから、仮に「配電」の意義が原告の主張するとお
りであったとしても、そのことは、本件商品1が本件指定商品に該当しないとの上
記判断を左右しない。
◆判決本文
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2022.02.23
令和2(行ケ)10114 商標権 行政訴訟 令和4年2月10日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判の請求自体が信義則に反するとして、不使用とした審決が取り消されました。なお被告は欠席裁判です。
原告らとブランデッドボースト社が平成27年(2015年)11月4日
に締結した本件和解契約には,1)原告らは,「BOAST」の商号で「BO
AST」商標を付した商品を米国外で自由に販売することができることを確
認する旨の条項(12項),2)ブランデッドボースト社は,世界中でボース
ト社又は原告によるその他の登録により保護される原告らの商号権及び商標
権を妨害しない旨の条項(14項)が存在することは,前記1(4)認定のとお
りである。
前記1認定の本件和解契約締結に至る経緯,本件和解条項12項及び14
項の文言に鑑みると,本件和解条項14項の「世界中でボースト社又は原告
によるその他の登録により保護される原告らの商号権及び商標権を妨害しな
い」にいう「妨害しない」との文言は,ブランデッドボースト社が,原告ら
が有する米国外で商標登録された「BOAST」ブランドに係る商号権及び
商標権の有効性を争わない義務(いわゆる不争義務)を負うことを定めた趣
旨を含むものと解される。
そうすると,ブランデッドボースト社は,本件和解契約に基づき,原告に
対し,本件商標の商標権について不争義務を負うものと認められる。
そして,前記1(5)認定のとおり,被告は,平成29年(2017年)10
月3日,ブランデッドボースト社から,米国内の「BOAST」ブランドに
係る事業を買収し,同社が保有する「BOAST」ブランドに係る米国登録
商標の移転を受け,これに伴い,ブランデッドボースト社の本件和解契約に
基づく契約上の地位を承継したのであるから,被告は,原告に対し,本件和
解契約に基づいて,本件商標の商標権について不争義務を負うものと認めら
れる。
(2) 商標法50条1項が,「何人も」,同項所定の商標登録取消審判を請求す
ることができる旨を規定し,請求人適格について制限を設けていないのは,
不使用商標の累積により他人の商標選択の幅を狭くする事態を抑制するとと
もに,請求人を「利害関係人」に限ると定めた場合に必要とされる利害関係
の有無の審理のための時間を削減し,審理の迅速を図るという公益的観点に
よるものと解される。
一方で,商標権に関する紛争の解決を目的として和解契約が締結され,そ
の和解契約において当事者の一方が他方(商標権者)に対して当該商標権に
ついて不争義務を負うことが合意された場合には,そのような当事者間の合意の効力を尊重することは,当該商標権の利用を促進するという効果をもた
らすものである。また,このように当事者間の合意の効力を尊重するとして
も,第三者が当該商標権に係る商標登録について同項所定の商標登録取消審
判を請求することは可能であるから,上記公益的観点による利益を損なうも\nのとはいえない。
したがって,和解契約に基づいて商標権について不争義務を負う者が,当
該商標権に係る商標登録について同項所定の商標登録取消審判を請求するこ
とは,信義則に反し許されないと解するのが相当である。
しかるところ,前記(1)認定のとおり,被告は,原告に対し,本件和解契約
に基づいて,本件商標の商標権について不争義務を負うものであるから,被
告による本件審判の請求は,信義則に反し,許されないというべきである。
これと異なる本件審決の判断は誤りであある。
◆判決本文
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2022.02.22
令和3(行ケ)10076 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年2月9日 知的財産高等裁判所
商標「知本主義」の不使用取消審判の審決取消訴訟です。会報のタイトルとして「賢主主義と知本主義」を使用していましたが、審決は不使用と認定しました。裁判所も同様です。本件会報は市場における独立した商取引の対象たる商品ではないとされています。
商標法上,商標の本質的機能は,自他商品又は役務の識別機能\にあると解するの
が相当であるから(同法3条参照),同法50条にいう「登録商標の使用」という
ためには,当該登録商標が商品又は役務の出所を表示し,自他商品又は役務を識別\nするものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されることを要すると
解するのが相当である。
この点に関し,原告は,上記「登録商標の使用」といえるためには,当該登録商
標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足りる旨
主張するが,上記のとおりの商標の本質的機能に照らし,採用することができない。\n
(2) 本件各書籍について
証拠(甲8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,36の
1及び2)によれば,本件各書籍(表紙,裏表\紙,書籍に付された帯等も含む。)
には,「知本主義の時代を生きろ」,「私は資本主義ではなく「知本主義」時代が
到来すると思う。」,「資本主義に代わる知本主義」,「「資本主義」から「知本
主義」へ」など,「知本主義」の文字を用いた表現が一定程度記載されているもの\nと認められる。
しかしながら,原告が「知本」の語につき辞書にも記載がないと主張するとおり,
「知本主義」の語の観念は不明確であり,「主義」との語尾から何らかの主義主張
を指すことがうかがわれるのみである。そうすると,上記のとおり本件各書籍にお
いて「知本主義」の文字を用いた表現が一定程度記載されていることや,本件各書\n籍が通信販売サイト等において宣伝されていること(甲9,11,13,15,1
7,19,21,23,25,27,37)を考慮しても,「知本主義」の文字又
はこれを含む表現に触れた取引者及び需要者は,これらの文字等を書籍の副題の一\n部,記載内容,宣伝文句,著者の主張等であると認識するにとどまり,これらの文
字等が当該書籍に係る自他商品識別機能を果たすと認識するとは考え難い(これは,\n「知本主義」の文字が鍵括弧でくくられている場合であっても変わるところではな
い。)。なお,この点に関し,原告も,「知本主義」の文字等が書籍に付された場
合,「知本」の主義主張に関する分野ないし事項の書籍であることを取引者及び需
要者に想起させる旨主張しているところである。
したがって,本件各書籍における「知本主義」の文字の記載は,商標法50条に
いう「登録商標の使用」に該当しない。
(3) 甲28会報について
ア 証拠(甲28)によれば,甲28会報には,「賢主主義と知本主義」との表\n題が付され,「X会のうた」として,「いっぱい 知本主義」との記載がされ,
「「知本主義」を実践するX会12月例会」なる会合の告知がされているものと認
められるが,甲28の記載やその他の証拠によっても,甲28会報が市場における
独立した商取引の対象たる商品であると認めることはできないから,甲28会報に
おける上記表題等の記載をもって,本件商標が商品について使用されたということ\nはできない。
イ 証拠(甲28)によれば,甲28会報には,「令和元年12月23日」との
日付の記載があるものと認められ,その他,甲28会報が本件要証期間内に発行さ
れたものと認めるに足りる証拠はない。
ウ 以上のとおりであるから,甲28会報における上記アの記載をもって,原告
又は本件商標の専用使用権者若しくは通常使用権者(以下「原告ら」という。)が
本件要証期間内に本件指定商品について本件商標を使用したと認めることはできな
い。
(4) 甲29の選挙公報について
証拠(甲29)によれば,甲29は,東京都選挙管理委員会が平成11年4月1
1日執行の東京都知事選挙に際して発行した選挙公報(原告に係るもの)であり,
「資本主義(拝金主義)から知本主義へ」との記載がされているものと認められる。
しかしながら,一般に選挙公報が「新聞」,「雑誌」若しくは「書籍」又はこれ
らに係る広告等に該当しないことは明らかである。また,上記認定のとおりの選挙
の執行期日にも照らすと,同選挙公報が本件要証期間内に発行されたと認めること
もできない。
そうすると,甲29の選挙公報における上記記載をもって,原告らが本件要証期
間内に本件指定商品について本件商標を使用したと認めることはできない。
(5) 甲30の社歌について
証拠(甲30)及び弁論の全趣旨によれば,甲30の書面には,「知本主義・知
財企業「B 勤務心得の歌」」と題する歌の歌詞が記載され,その歌詞の中に「知
本主義」の語が用いられているものと認められる。
しかしながら,本件全証拠によっても,甲30の書面が「新聞」,「雑誌」若し
くは「書籍」又はこれらに係る広告等に該当すると認めることはできないし,同書
面の作成時期も不明である(同書面には,「SINCE1957」との記載がみられるのみ
である。)。
そうすると,甲30の書面における上記記載をもって,原告らが本件要証期間内
に本件指定商品について本件商標を使用したと認めることはできない。
(6) 甲34のウェブサイトについて
証拠(甲34)及び弁論の全趣旨によれば,甲34は,原告の著書を宣伝するウ
ェブサイトであって,原告が代表取締役を務める株式会社Bが運営するものの画面\nを印刷した書面であると認められる。
しかし,甲34をみても,本件商標又は社会通念上これと同一の商標が当該ウェ
ブサイトに表示されているということはできない。\nしたがって,原告らが甲34のウェブサイトにおいて本件商標を使用したとは認
められない。
(7) 甲37のウェブサイトについて
証拠(甲37)及び弁論の全趣旨によれば,甲37は,原告の著書(甲36の1
及び2)を宣伝するウェブサイトであって,上記株式会社Bが運営するものの画面
を印刷した書面であり,同画面には,同著書を宣伝する文言として,「資本主義社
会は「知本主義」へ」との記載がされているものと認められる。
しかしながら,前記(2)において説示したとおり,「知本主義」の文字を含む上
記記載に触れた取引者及び需要者は,これを同著書の記載内容,宣伝文句,著者の
主張等であると認識するにとどまり,これが同著書に係る自他商品識別機能を果た\nすと認識するとは考え難い。
したがって,甲37のウェブサイトにおける上記記載は,商標法50条にいう
「登録商標の使用」に該当しない。
◆判決本文
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2022.01.24
令和2(行ケ)10113 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年1月19日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判の請求が権利濫用かが争われました。知財高裁は、権利濫用とまではいえないとした審決を取り消しました。
上記各事実によれば,被告は,ブランデッドボースト社を買収した後,本
件審判請求に及ぶ直前まで,原告との間で,原告が保有する本件商標を含む
日本及びその他の国のBOASTブランドに係る登録商標の買取りについて
協議をしていたが,協議中断の数か月後に本件審判請求に及んだものである。
こうした経緯に加え,被告は,本件審判請求における手続において,原告
が,「2017年10月3日,請求人は,ブランドボースト社(当審注:ブ
ランデッドボースト社のこと)より,同社の「BOAST」ブランド事業を
買収し,同社が保有する米国「BOAST」登録商標の移転を受けた(乙1)。
したがって,請求人は,被請求人が保有する日本「BOAST」登録商標に
干渉しない義務を含む,本件和解契約に基づく義務を履行する責任を負う」,
「また,請求人は,本件和解契約に基づき,日本「BOAST」登録商標に
係る被請求人の権利に対する干渉を行ってはならない義務を負う」旨主張し
たのに対して,具体的に弁駁していないことは記録上明らかであり,また,
本訴における原告による同旨の主張についても反論していないことからする
と,被告は,ブランデッドボースト社から米国内における「BOAST」事
業を買収するに際して,原告らと同社との間では,同社が,世界中でボース
ト社又は原告によるその他の登録により保護される原告らの商号権及び商標
権を妨害しない旨の本件和解契約に基づく義務を負担しており,上記買収に
より被告も同義務を履行する責任を負うことを認識しながら,これを前提と
して,原告との間で,原告が保有する本件商標を含む日本及びその他の国の
BOASTブランドに係る登録商標の買取り交渉をしていたものと認められ
る。
そうすると,被告は,原告との間で,原告が保有する本件商標を含む日本
及びその他の国のBOASTブランドに係る登録商標の買取り交渉が頓挫す
るや否や,原告が保有する商標権を妨害してはならない旨の上記義務に反す
ることを知りながら,本件商標の取消しを求めて本件審判請求に及んだもの
と認めるのが相当である。したがって,本件審判請求は,金銭的負担をすることなく本件商標を使用することを企図し,取消審判制度が何人も申し立てることができることに藉\n口して,専ら原告を害する目的でしたものと認められるから,権利の濫用に
当たるものというべきである。
◆判決本文
審決(取消2018−300722)は、下記のように、権利濫用とまではいえないとして、不使用であるので登録を取り消すと判断していました。
イ 判断
上記事実によれば、被請求人らとブランドボースト社との間で、互いの商号及び商標に係る権利について妨害しないことを含む本件和解契約が結ばれていたことは窺えるものの、そのような当事者間の合意が、本件商標に対する不使用取消審判の請求までも禁止するものであるかは、証拠上明らかでなく、当該契約違反か否かは措くとしても、請求人による本件審判の請求が専ら被請求人を害することを目的としていると認められる事情を見いだすこともできない。また、前記(1)の不使用取消制度の趣旨からすれば、登録商標は使用をしているからこそ、保護を受けられるのであって、一定期間登録商標が使用されていない場合には、保護すべき信用が存しないのであるから、取り消されてもやむを得ないものである。
そして、後述するとおり、被請求人は本件商標の使用について、何らの主張、立証もしていないものである。なお、請求人と被請求人との登録商標買取り交渉が合意に至らなかった状況において、本件商標の不使用を理由として、請求人が本件審判請求を行ったとしても、そのこと自体は格別不自然とはいえない。その他、請求人による本件審判の請求が専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情は見いだせず、本件審判請求が権利の濫用であるとはいえないし、信義則違反であるとして本件審判請求が成り立たないとすべきともいえない。
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2022.01. 7
平成18(行ケ)10043 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成18年6月29日 知的財産高等裁判所
かなり昔の判決ですが、興味深いのであげておきます。登録商標の同一性および、取説における使用も使用と認定されました。
標章「速脳速聴基本プログラム」の使用が、登録「速脳速聴」の使用と認定されました。指定商品は「中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・
磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器」です。
本件関連標章1は,「速脳速聴」(本件商標)と「基本プログラム」と
が結合した語から成るものである。この構成中の「速脳速聴」の部分は,\n高速で聴くことによって脳の回転を高めるといった程度の意味を有するも
のと理解されないこともないが,明確な意味を有するとまではいえず,取
引者・需要者において,既存の明確な観念を伴わない新たな造語であると
認識するものと認められる。一方,「プログラム」の語は,本件商標の指
定商品である電子応用機械器具の分野において,その一種である電子計算
機のためのプログラムを示す普通名称であり,これに冠して付加されてい
る「基本」の語は,「物事が成り立つためのよりどころとなるおおもと。
基礎。」(甲27の2,ウェブサイトの「 辞書」),「物事がそれに goo
基づいて成り立つような根本。」(甲28,株式会社岩波書店平成3年1
1月15日発行「広辞苑第4版」)を意味し,後に「応用」若しくは「発
展」など次の段階へと続くことを想起,連想させる一般的な記載にすぎな
いから,本件関連標章1に接した取引者・需要者は,通常,その構成中の\n「基本プログラム」の部分は,商品の特定のために当該商品の用途等を表\n示したものと理解して,それ自体を自他商品の識別力を有する部分とは考
えないと認めるのが相当である。
そして,「速脳速聴」と「基本プログラム」とは,一体不可分の密接な
関係にあるとはいえないし,「速脳速聴基本プログラム」の称呼は,「ソ\nクノウソクチョウキホンプログラム」と著しく冗長であって,この一連一\n体の称呼によることが取引の実情に即したものであるとは言いがたく,む
しろ,取引の実際においては,冒頭の「速脳速聴」の部分に即して「ソク\nノウソクチョウ」との称呼を生ずるのが通常であるということができる。\nそうすると,本件関連標章1の「速脳速聴基本プログラム」の語は,
「速脳速聴」の部分において,取引者・需要者の注意を引くものであり,
その部分が自他商品の識別力を有するものというべきである。
もっとも,本件関連標章1の「速脳速聴」の部分について,高速で聴く
ことによって脳の回転を高めるといった程度の意味のものととらえ,本件
関連標章1について,一体として「速脳速聴の基本的なプログラム」,あ
るいは,「速脳速聴に関する基本的なプログラム」との観念を生ずること
もあり得ないものではない。しかし,一般には,「速脳速聴」の観念が必
ずしも明確でないことに照らしても,「速脳速聴の基本的なプログラム」
等の観念が生ずる可能性がないわけではないことによって,「速脳速聴」\nの部分の自他商品識別力が否定されるものではないというべきである。
そして,この「速脳速聴」は,本件商標と同一なのであるから,本件関
連標章1は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標とみるのが相当
であり,上記1及び2・・・ に照らせば,プランニングラボは,本件予\n告登録前3年以内に,本件関連標章1により,本件商標の指定商品である
本件商品1につき,商標法2条3項1号及び8号にいう本件商標の「使
用」をしていたというべきである。
ウ ところで,被告は,本件CDに付されている商標は,「速脳速聴基本プ
ログラム」であるから,本件商標「速脳速聴」とは,同一の商標ではない
し,「速脳速聴基本プログラム」は,一体として「速脳速聴の基本プログ
ラム」の観念が生じ,当然,一連一体として観察,称呼しなければならず,
本件商標とは,称呼,外観,観念のすべてを異にするものであり,識別力
を異にすることが明らかであるから,本件関連標章1は,本件商標と社会
通念上同一と認められる商標でないと主張する。
しかし,「速脳速聴基本プログラム」がそれ自体一つの商標であるとし
ても,上記のとおり,取引の実際においては,「速脳速聴」の部分,すな
わち,本件商標に相当する部分が商標として自他商品識別力を有している
ものというべきである。また,「速脳速聴基本プログラム」から,一体と
して「速脳速聴の基本プログラム」の観念が生ずる可能性があることは,\n上記のとおりであるが,そのことから,このような結合語を,直ちに一連
一体として観察,称呼しなければならないものとはいえず,一体として
「速脳速聴の基本プログラム」の観念が生ずる可能性があることによって,\n「速脳速聴」の部分の自他商品識別力が否定されるものではないことも,
上記のとおりである。
(4) 次に,本件取扱説明書の表紙に記載されている「速脳速聴<R>基本プログ
ラム」(以下「本件関連標章2」という。)について検討する。
ア 本件関連標章2が,本件商標と社会通念上同一といえるかについてみる
と,本件関連標章2は,「速脳速聴」と「基本プログラム」とが<R>マー
クで区分された語であるところ,この<R>マークは,米国における連邦登
録商標の商標表示の方法(米国連邦商標法1111条〔ランナム法29\n条〕)であって,商標法73条,同法施行規則17条にいう商標登録表示\nではないが,我が国でも登録商標に簡明な<R>マークを付すことが慣行的
に行われていることは,当裁判所に顕著である。そして,本件関連標章2
においては,<R>マークによって,「速脳速聴」と「基本プログラム」と
が明確に分離されており,また,上記のとおり,本件取扱説明書の裏表紙\nには,「『速脳』『速脳速読』『速脳速聴』等は新日本速読研究会(X
〔注,原告〕)が保有する商標です。」等の記載があることから,取引者
・需要者は,「速脳速聴」が商標であると容易に理解することができるも
のである。
そうすると,本件関連標章2は,本件関連標章1以上に,「速脳速聴」
の部分に自他商品識別力があるということができるから,本件商標と社会
通念上同一と認められる商標であり,プランニングラボは,本件関連標章
2によっても,本件関連標章1と同様,本件商標の使用をしていたといわ
なければならない。
◆判決本文
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2022.01. 4
令和1(ワ)30282 損害賠償請求事件 商標権 民事訴訟 令和3年11月29日 東京地方裁判所
本件登録商標を使用していたとする虚偽の主張を行い,原告に対し本件連絡書を送付して損害賠償を請求し,本件仮処分命令申立てをしたという,IBEX社による一連の行為は,原告に対する故意による不法行為を構\成するとして、IBEX社の代表取締役に、約1600万円の損害賠償が認められました。
前記1(1)イ(ア)のとおり,原告は,従前から使用していたブランド
である「Attractions」に係る原告標章を商標登録しよう
と考え,本件弁理士に対し相談したところ,本件登録商標の存在が判
明したため,その取消請求をすることとした。こうした経緯に照らす
と,原告は,今後「Attractions」のブランドを事業展開
するに当たり,原告標章の使用が本件商標権を侵害するおそれがあっ
たことから,それを避けることを目的として上記取消請求をすること
としたものと認められる。
また,証拠(原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,I\nBEX社との和解交渉が難航していたことや,原告代理人から,IB
EX社が原告に対し保全命令を申し立て,原告の商品が差し押さえら\nれるなどする可能性があるとの説明を受けたことなどを契機として,\n平成29年7月末頃から「Attractions」のブランドの使
用を取り止めることを選択肢の一つとして検討し始めたこと,同年8
月8日頃にIBEX社から本件連絡書の送付を受けたため,「Att
ractions」のブランドの使用を取り止め,別ブランドに変更
することを決定したこと,さらに,同年9月1日以降,実際に「At
tractions」の商標を切り替える対応を採り,商標を切り替
えることができない本件在庫商品については販売の停止を決定したこ
とが認められる。
さらに,前記(1)ア(ア)のとおり,平成28年9月1日から平成29
年8月31日までの会計年度における原告の売上高は1億0794万
2353円であると認められるのに対し,前記(1)ア(イ)のとおり,平
成29年8月31日の時点において原告が保有していた本件在庫商品
の販売価額は合計2875万7760円であると認められるから,こ
れらの数値を基礎とすれば,本件在庫商品が原告の総売上高に占める
割合は26%余りであることになる。
以上のように,原告は,そもそも本件商標権を侵害するリスクを避
けるために本件審判請求事件に係る請求をしたところ,IBEX社が
これを争い,同社の主張に沿う外観の証拠が提出され,その一方でI
BEX社との手続外での和解交渉が難航していたことからすると,遅
くとも平成29年7月頃には,本件在庫商品を販売することにより本
件商標権を侵害し,原告の商品が差し押さえられるなどするリスクを
相当程度具体的に認識していたと認められる。そして,本件在庫商品
が原告の総売上高に占める割合が26%余りであったことからすると,
これが差し押さえられた場合には原告の経営に大きな影響を及ぼす可
能性があったと認められる。こうした中で,本件連絡書を送付され,\nIBEX社から同年8月18日までの回答を迫られたという経緯に照
らせば,原告において,同年9月1日以降に「Attraction
s」のブランドの使用を取り止めるという判断をするのはやむを得な
いものであったというべきである。
以上によれば,IBEX社の前記1(2)の不法行為と原告の損害と
の間に相当因果関係が認められることはもとより,被告に認められる
善管注意義務違反が,IBEX社の代表取締役としての権限を行使す\nることなく,Bらに業務を任せきりにし,IBEX社による上記不法
行為を惹起したというものであることに照らすと,被告の任務懈怠と
原告の損害との間にも相当因果関係があると認めるのが相当である。
b これに対し,被告は,原告が商標を切り替える対応を採り,本件在
庫商品の販売を取り止めるという行為に及んだのは,原告自身の経営
判断によるものであるとして,被告の任務懈怠と原告の損害との相当
因果関係は認められないと主張する。
しかし,原告の上記行為が経営判断に基づくものであるとしても,
前記 a で説示したとおり,それはやむを得ないものであったというこ
とができ,むしろ,経営判断として合理的かつ自然なものであるとい
うべきであるから,原告の経営判断が介在したことをもって,被告の
任務懈怠と原告の損害との間の相当因果関係を否定することはできな
い。したがって,被告の上記主張を採用することはできない。
c また,被告は,IBEX社の経営を実質的に支配していたのはBで
あり,被告がBの判断を翻意させることはできなかったから,被告の
任務懈怠と原告の損害との間には相当因果関係は認められないと主張
する。
しかし,前記1(1)アのとおり,被告は,Bの大学の同級生であり,
IBEX社の経営会議やBとF弁護士との打ち合わせに同席するなど,
代表取締役として一応の役割を果たしていた。また,被告は同社の代\n表取締役であり,被告の他に同社には役員が選任されていなかったの\nであるから,法的には同社の業務に関する一切の権限を被告のみが有
しており,同社の代表取締役として,主体的に行動することは可能\で
あったというべきである。したがって,被告は,IBEX社の一連の
不法行為により原告が損害を被ることについても,これを阻止するこ
とができなかったとまではいえない。
以上によれば,被告が代表取締役としての任務を懈怠することなく,\n原告に不法行為による損害を与えないようにする善管注意義務を果た
し,本件審判請求事件や本件仮処分命令申立て等について適切に対処\nしていれば,原告が主張する損害が発生していなかったということが
できる。
してみると,IBEX社の経営をBが実質的に支配していたことか
ら直ちに被告の任務懈怠と原告の損害との間の相当因果関係が否定さ
れるものではなく,被告の上記主張は採用することができない。
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2021.11. 5
令和3(行ケ)10061 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和3年11月4日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判事件です。商標権者の使用について立証責任は権利者にありますが、特定技術を用いて製造されたか否かの立証までは、被告の防御の準備の機会を著しく損なうとして、使用義務を果たしていると知財高裁2部は、審決の判断を維持しました。
ア 原告は,本件商標の使用が特定乳化技術を用いて製造した化粧品ではない化
粧品についてのものであることまで被告が主張立証しなければならないと主張する
が,既に判示したとおり,同主張を採用することはできない。
イ 原告は,その主張の根拠として商標法50条2項を挙げるところ,同項は,
「その請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をし
ていることを被請求人が証明しない限り」と定めるが,上記のうち「その請求に係
る指定商品又は指定役務」という文言から,直ちに,本件商標の使用が特定乳化技
術を用いて製造した化粧品ではない化粧品についてのものであることまで被告が主
張立証しなければならないとはいえない。
商標法50条が定める取消審判請求の審理の対象となる指定商品の範囲は,設定
登録において表示された指定商品の記載に基づいて決められるのではなく,審判請求人において取消しを求めた審判請求書の「請求の趣旨」の記載に基づいて決めら\nれるものではあるが,審判請求書の「請求の趣旨」は,審判における審理の対象・
範囲を画し,取消審決が確定した場合における登録商標の効力の及ぶ指定商品の範
囲を決定づけるという意味のほか,被請求人における防御の要否の判断・防御の準
備の機会を保障するという意味でも重要なものというべきである。
しかるに,本件のように,要証期間における本件商標の指定商品のうち関連部分が第3類「化粧品」であったにもかかわらず,専ら審判請求人において,本件商標の登録の日の後に認知されてきたものとみられる一方で要証期間を通じて周知のものであるとも認めら
れない商品の製造方法である特定乳化技術に基づいて,本件審判請求と対の審判請
求とに取消審判請求を分けた上で,被告に対し,対の審判請求においては化粧品が
特定乳化技術に基づいて製造したものであることも含めた本件商標の使用の主張立
証を求め,本件審判請求においては特定乳化技術を用いて製造した化粧品でないこ
とをも含めた本件商標の使用の主張立証を求めることは,被告の防御の準備の機会
を著しく損なうものであって,前記のとおり,被請求人において,審判請求に係る
指定商品又は指定役務の「いずれかについて」の登録商標の使用を証明すれば足り
ると定める商標法50条2項が,上記のような要請まで含むものとは解されないと
ころである。
特に,本件のように,製造方法に係る特定を審判請求人が任意に付し
た場合に,商標権者において,自らの商品の製造方法を開示して立証しない限り,
商標登録の取消しを免れないとみることは,商標権者に過度の負担を課すものであ
って不合理であることが明らかであり,そのような立証を求めるに帰する原告の主
張は,信義誠実の原則に照らしても採用することができない。
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2021.10. 8
令和3(行ケ)10046 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和3年9月29日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判の審決取消訴訟事件です。知財高裁は、指定商品に使用していたとした審決を維持しました。
本件商標は,「Nクール」の文字を標準文字で表してなるものである。\n次に,本件使用商標は,別紙1のとおり,「Nクール(R)ベストII」の緑色
の文字を表してなるものである。そして,本件使用商標の構\成中の「ベス
ト」の文字部分は,本件使用商品(「メッシュベスト」)との関係では,
商品の種類を表すものであり,「(R)」の文字部分は登録商標を意味する記
号及び「II」の文字部分はローマ数字の2を表するものであって,いずれ\nも自他商品識別標識としての機能を有するものと認められないから,本件\n使用商標の要部は,「Nクール」の文字部分であると認めるのが相当である。
そこで,本件商標と本件使用商標の要部の「Nクール」の文字部分を対
比すると,外観は異なるが,構成文字が共通であり,「エヌクール」とい\nう同一の称呼が生じることからすると,本件使用商標は,全体として本件
商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
ウ 以上によれば,被告は,要証期間内の令和2年1月23日から同年4月
2日までの間,日本国内において,本件使用商品に関する広告(本件カタ
ログデータ)に本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を付
して電磁的方法により提供したものと認められるから,かかる被告の行為
は,本件商標の使用(商標法2条3項8号)に該当するものと認められる。
2 本件使用商品の本件商標の指定商品該当性について
(1) 本件使用商品が本件審判の請求に係る指定商品である第25類「ベスト」
に該当するかについて検討する。
ア(ア) 本件商標の登録出願時(登録出願日平成28年6月20日)に施行
されていた商標法施行令別表(以下「政令別表\」という。)には,第25
類の名称として「被服及び履物」が挙げられている。
また,本件商標の登録出願時に施行されていた商標法施行規則別表(平\n成28年経済産業省令第109号による改正前のもの。以下「省令別表」\nという。)には,第25類に属する商品として「一 被服」を掲げ,その
細分類として定められた「(一) 洋服」から「(十一) ナイトキャップ
帽子」までに商品が例示列挙されているが,「ベスト」については掲げら
れていない。
(イ) 次に,本件商標の登録出願時に用いられていた国際分類(第10−
2016版)を構成する類別表\(以下「国際分類類別表」という。)の第\n25類の「注釈」(Explanatory Note)には,「この類
には,特に,次の商品は含まない:特殊な用途に供する被服及び履物(商
品のアルファベット順一覧表参照).」と記載されている。一方で,国際\n分類類別表の「商品のアルファベット順一覧表\」には,「ベスト」(「ve
sts」,「waistcoats」)は,第25類に属する商品として掲
げられている。
(ウ) 「ベスト」(「vests」,「waistcoats」)とは,一般に,
「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着の一種」を意味するもの
と認められる(甲3,4)。
イ 前記ア認定の政令別表第25類の名称,省令別表\に第25類に属するも
のとされた商品の内容,国際分類類別表の第25類の「注釈」において示\nされた商品の説明及び国際分類類別表の「商品のアルファベット順一覧表\」
の記載,「ベスト」の用語の意義を総合考慮すると,本件審判の請求に係る
指定商品である第25類「ベスト」とは,省令別表第25類に属する商品\nとして掲げられた「被服」に含まれる「丈が短く,体にぴったりつく,袖
のない胴着の一種」であって,「特殊な用途に供するものではないもの」と
解するのが相当である。
これを本件使用商品についてみるに,証拠(甲7,8,13の2,14
の3,15の3)によれば,本件使用商品は,メッシュ生地で作られた,
丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着であると認められる。
また,前記1(1)ウの認定事実によれば,本件使用商品は,被告が販売す
る「空調服」(電動ファンを内蔵した上着)(甲9)の下に着用する「専用
メッシュベスト」であるが,「空調服」自体,その有する機能から暑さ対策\nが必要となる場面で着用されることが想定された商品であり,実際に,業
界を問わず,様々な場面で利用されており(本件カタログデータの2頁に
「建設,建築業界を始め,土木・自動車・流通・運輸・金属・農業など・・・
業界を問わず,あらゆるシーンで採用されています。」との記載(前記1(1)
ウ(イ))がある。),その用途が限定されていないことからすれば,本件使
用商品も,同様にその用途が限定されていないものと認められるから,「特
殊な用途に供するものではないもの」と認められる。
したがって,本件使用商品は,「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない
胴着の一種」であって,「特殊な用途に供するものではないもの」であるか
ら,本件商標の指定商品第25類「ベスト」に含まれるものと認められる。
(2) これに対し原告は,1)類似商品・役務審査基準によれば,第25類は,細
分類として「被服」を含み,更にこの「被服」は「洋服,コート,セーター
類,ワイシャツ類」を含み,このうちの「セーター類」には「3 セーター
類 カーディガン,セーター,チョッキ」が含まれるところ,「ベスト」(「v
ests and waistcoats)」は,「1 洋服」とは別の「3
セーター類 カーディガン,セーター,チョッキ」の中に分類されており,
これに準じるものでなければならないから,洋装ファッションとしての「機
能又は用途」と,それにふさわしい「材料」を有するものでなければならな\nい,2)「メッシュベスト」(本件使用商品)は,保冷剤を保持するための装着
具であり,洋装ファッションとしての「機能又は用途」を有せず,また,単\n純にメッシュ(網)を,保冷剤を保持するように縫製したものにすぎず,保
冷剤を装着せずに使用することは実用性がなく実際上も考えられない特別な
「材料」からなり,保冷具の一部材にすぎないから,洋装ファッションとし
てのベストではなく,第25類の一般的な被服に属する「ベスト」(類似群コ
ード17A01)の範疇に属する商品であるとはいえない旨主張する。
しかしながら,1)については,本件審判の請求に係る指定商品である第2
5類「ベスト」は,省令別表第25類に属する商品として掲げられた「被服」\nに含まれる「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着の一種」であって,
「特殊な用途に供するものではないもの」と解すべきであることは,前記(1)
イ認定のとおりである。また,省令別表には,第25類に属する商品として\n掲げた「一 被服」の細分類の「(一) 洋服」から「(十一) ナイトキャップ
帽子」までに「ベスト」は掲げられていないが,上記細分類に掲げられた商
品は,第25類に属する商品の例示列挙であるから,第25類「ベスト」は,
上記細分類中の「(三) セーター類 カーディガン セーター チョッキ」
に準じるものでなければならないと解すべき理由はない。また,国際分類類
別表の第25類の「注釈」において示された商品の説明(前記(1)ア(イ))に
照らしても,第25類「ベスト」は,洋装ファッションとしての「機能又は\n用途」とそれにふさわしい「材料」を有するものでなければならないと解す
べき合理的な根拠はない。
2)については,本件使用商品は,メッシュ生地で作られた,丈が短く,体
にぴったりつく,袖のない胴着であるが(前記(1)イ),その材料は特殊なもの
であるとはいえず,保冷剤を装着することができるという機能を有するとし\nても,そのことによって本件使用商品が保冷具の一部材にすぎないものであ
るともいえない。また,上記のとおり,第25類「ベスト」は,洋装ファッシ
ョンとしてのベストに限られるものではない。
したがって,原告の上記主張は,理由がない。
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2021.09.23
令和3(行ケ)10047 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和3年9月15日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が取り消されました。商標権者は、訴訟にて使用の事実を示す新証拠を提出しました。
これに対し被告は,1)本件各写真(甲28)の撮影日が2018年11月
14日であることについては,客観的な裏付けがなく,撮影日が同日である
ことは疑わしい,2)発行名義を桂ヶ丘開発とする「精算書控」及び「御精算書」
(甲46の1ないし9)は,本件審判段階では提出されず,本件訴訟に至って
初めて提出されたものであること,桂ヶ丘開発は原告が代表取締役を務める会\n社であり,発行名義を桂ヶ丘開発とする精算書をいつでも作成できること,令
和3年6月20日に本件ゴルフ場のクラブハウス内の物販コーナーで「福米」
を表示した米が販売された際に発行された「御精算書」(乙1)には,「福米」\nの文字の記載がなく,甲46の1ないし9記載の発行日付当時に実際に発行さ
れていた精算書に「福米」の文字が表示されていたものとは,にわかに信用し\n難いことに照らすと,甲46の1ないし9の証明力は低い,3)桂ヶ丘開発が本
件ゴルフ場の利用者に対して福米2018を販売したとの原告の主張は,原
告が本件審判段階で本件ゴルフ場のクラブハウス内で一般客に対して自ら商
品「米」の販売を行ったと主張していたこと及びその立証のために提出され
た桂ヶ丘開発の取締役会議事録(甲45)の記載と矛盾する旨主張する。
しかしながら,1)については,本件各写真(甲28の2枚の写真)の画像デ
ータ(甲56)の「プロパティ」の「詳細」の「撮影日時」欄にそれぞれ「2
018/11/14 13:24」(甲28の「下」の写真に係る画像データ)
及び「2018/11/14 13:25」(甲28の「上」の写真に係る画
像データ)と表示されていること,本件各写真に写された本件価格表\には「期
間限定」,「福米2018」及び「2018年11月末日までの限定価格。」と
の表示があり,その表\示内容は,本件各写真の撮影日時が「2018/11
/14 13:24」及び「2018/11/14 13:25」であるこ
とと矛盾しないことに照らすと,本件各写真の撮影日は2018年11月1
4日であると認められる。被告が1)について指摘する原告提出の他の写真(甲
15,29ないし31)に日付が入っていない点,本件ゴルフ場のクラブハウ
スのフロント付近で日常的に販売されている商品を写真撮影する理由も考え難
い点,同日以外の日に他の客の少ない時間にフロント前に商品を陳列し,写真
撮影することは容易であるとの点は,上記認定を覆すものではない。
次に,2)については,甲46の1ないし3,5ないし7は,桂ヶ丘開発が
運営する「桂ヶ丘カントリークラブ」作成名義の「精算書控」,甲46の8は,
甲46の3の「精算書控」に対応する「桂ヶ丘カントリークラブ」作成名義
の「御精算書」であり,それぞれ利用者の氏名,「お客様番号」,発行日時,
「精算金額」のほか,「精算項目」欄にプレーフィ,利用税等とともに,「福
米(5kg)」,「数量」欄に「1」又は「2」,「単価」欄に「2,200」,
「金額」欄に「2,200」又は「4,400」との記載があり,その体裁に
特段不自然な点は認められないから,甲46の1ないし3,5ないし8の記載
内容は信用できるものといえる。この点に関し被告が提出する「桂ヶ丘カント
リークラブ」作成名義の「御精算書」(乙1)には,「2021年6月20日 1
3:29」,「精算項目」欄に「〈軽〉新米(2kg)」,「数量」欄に「1」,「単
価」欄に「800」,「金額」欄に「800」と記載され,「福米」の記載はな
いことが認められる。しかし,乙1は,要証期間経過後の令和3年6月20
日に単価800円で販売された「新米(2kg)」の精算書であり,甲46の
1ないし3,5ないし8に係る「福米」とは販売時期が異なること,本件各
写真に撮影された本件価格表に表\示された「福米2018」の「2kg」の
販売価格「700円」と単価が異なることに照らすと,乙1に係る「新米(2
kg)」は,甲46の1ないし3,5ないし8に係る「福米」と異なる商品で
あると認められるから,乙1に「福米」の記載がないことは,甲46の1な
いし3,5ないし8の記載内容の信用性を揺るがすものではない。また,原告
は,本件審決において本件審判段階で主張した本件商標の使用の事実が認め
られなかったため,本件訴訟において,本件商標の使用の事実を改めて整理
して主張し,その立証のため,甲46の1ないし9を新たに提出したものであ
るから,甲46の1ないし9が本件審判段階では提出されなかったことや桂
ヶ丘開発は原告が代表取締役を務める会社であることは,甲46の1ないし3,\n5ないし8の信用性を左右する事情には当たらない。
さらに,3)については,本件審決は,原告による「桂ヶ丘カントリークラ
ブ」(本件ゴルフ場)のクラブハウス内の物販コーナーにおける「米」の販売
に係る本件商標の使用の主張について,平成30年10月1日に開催された
桂ヶ丘開発の取締役会議事録(審判乙34・本訴甲45)には,「第1号議案
として,本件商標権者が個人事業主として生産している米(福米2018)
を桂ケ丘カントリークラブのロビー内の物販コーナーで販売することについ
て承認された旨の記載があるが,当該米についての販売期間の記載はない。」
(審決書13頁36行〜14頁1行)として,上記主張は認められない旨判
断した。原告は,本件審決の上記判断を踏まえて,本件訴訟において,上記
物販コーナーにおける「米」の販売に係る本件商標の使用の主体を,原告か
ら原告が代表取締役を務める桂ヶ丘開発に構\成し直して,桂ヶ丘開発が本件
ゴルフ場の利用者に対して本件ステッカーが米袋に貼付された福米2018\nを販売したとの主張をするに至ったものと認められるから,原告の主張の変
遷が不自然であるということはできないし,上記取締役会議事録の記載と矛
盾するということもできない。
◆判決本文
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2021.08.10
令和2(行ケ)10151等 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和3年7月29日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が取り消されました。
1 取引に係る認定事実
(1) 証拠(甲6の2,甲12の2,甲20,23,24)によると,1)原告が,愛知県在住の特定人(以下「A」という。)から,令和2年1月10日,PayPalで1万7940円の支払を受けたこと及び2)同支払を原告に連絡するPayPalからのメールには,同支払金額について,「エクス:バイアージュ6個(送料無料)」,「¥17,940JPY」が,数量「1」であるとの記載があることが認められる。また,証拠(甲13の2)によると,3)問い合わせ番号「6271−4993−2452」のレターパックプラスについて,令和2年1月12日に福岡県で引受けがされ,同月13日に愛知県の届け先に届けられたことが認められる。さらに,証拠(甲7の2,甲28の3)及び弁論の全趣旨によると,4)原告が「6271−4993−2452」と記載されたレターパックプラスの追跡番号シールを所持しており,同シールは,本件納品書写し(甲7の2)と同一内容の納品書の控え(甲28の3)の裏面に貼付されていることが認められる。\n
(2) 本件チラシ(甲4)には,「送料無料」,「美容クリーム(エクスバイアージュ)¥2,990」との記載がある。また,原告が提出する別のチラシ(甲3)には,「特別販売(2,990円&送料無料)」,「感謝を込めて【1個2,990円&送料無料】の特別販売続行中」との記載がある。なお,同チラシには,「EX:biargue(エクスバイアージュ)」について「40,000円(税込)」との記載もある。さらに,本件サイト(甲5)には,「EX:biargue」との表示がされたクリームの瓶の写真及び本件使用商標1−2の表\\示(別紙3の2)の右側に,「特別販売キャンペーン」,「1個(送料無料)2,990円」,「6個(送料無料)17,940円」などの記載がある。以上の各チラシ及び本件サイトの各記載は,上記(1)2)の事実と整合するもので,上記(1)2)の事実と合わせると,上記(1)1)のAからの支払が,本件チラシに記載された「美容クリーム(エクスバイアージュ)」(本件使用商品1)6個の代金の支
払であることを推認させるものである。
(3)ア本件納品書写し(甲7の2)及びこれと同一内容で上記(1)4)のとおり裏にレターパックプラスの追跡番号シールが貼付された納品書の控え(甲28の3)の記載内容をみると,「今回の商品配送詳細【無料】」,「【商品名】日本郵便・レターパックプラス(対面でのお受取)」,「【追跡番号(商品番号)】627149932452」との記載のほか,「商品」として「美容クリーム」,「単価」として「¥2,990」,「個数」として「6」,「計」として「¥17,940」,「備考」として「送料無料」の記載があり,宛名欄にはAの氏名の記載がある。そして,本件納品書写し及び上記納品書の控えには,上部に,「DOLGES」の文字の下に「D」及び「S」を重ねるように組み合わせて円で囲んだ図形を配置した商標(以下「本件使用商標1−3」という。)が表\\示され,右下部に本件使用商標2−2が表示されている。\n
イ上記アの事実に,上記(1)1)〜4)の事実及び上記(2)のとおり推認される事実を併せ考慮すると,原告が,上記(1)1)の令和2年1月10日のAからの支払を受けて,本件チラシに記載された「美容クリーム(エクスバイアージュ)」(本件使用商品1)6個を発送し,それが同月13日に愛知県在住のAに届けられたという事実が推認され,この推認を覆す事情は認められない。
(4) 原告の本人尋問における供述及び陳述書(甲25)の記載(以下,併せて「原告供述等」という。)によると,原告が,上記(1)1)の令和2年1月10日のAからの支払を受けて,本件使用商品1(6個)に,本件納品書の写し(甲7の2)の原本及び本件チラシ(甲4)を同封したレターパックプラスを発送し,それが同月13日にAに届けられたという取引(以下「本件取引」という。)の事実が認められる。原告供述等は,上記(1)〜(3)で指摘した各事実と整合しており,本件取引について述べる部分について,その信用性を否定すべき事情は見受けられない。2本件商標1及び2の使用について(1)ア本件チラシ(甲4)には,本件使用商標1−1を紙製の外装箱に表示し\nた美容クリームである本件使用商品1の写真(別紙3の1)が掲載されているとともに,本件使用商標2−1を容器側面に表示した美容ミストである本件使用商品2の写真が掲載されている。本件チラシは,原告が作成したものである(原告供述等,弁論の全趣旨)。
イ本件納品書写し(甲7の2)には,前記1(3)アのとおり,本件使用商標1−3が表示されている。本件納品書写しの原本は,原告が作成したものである(原告供述等,弁論の全趣旨)ウ本件使用商標1−1及び1−3は,本件商標1と,本件使用商標2−1は,本件商標2と,それぞれ社会通念上同一であると認められる。\n
(2) 上記(1)の事実及び前記1(4)のとおり認められる本件取引の事実からすると,本件商標1及び2の商標権者である原告が,要証期間内である令和2年1月10日から同月13日までの間に,本件商標1の指定商品のうち「化粧品」に含まれる本件使用商品1について,本件商標1の使用(商標法2条3項2号[商品の包装に標章を付したものの譲渡],8号[広告に標章を付して頒布])をするとともに,本件商標2の指定商品のうち「化粧品」に含まれる本件使用商品2について,本件商標2の使用(同項8号[広告に標章を付して頒布])をしたものと認められる。
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2021.07.29
令和3(行ケ)10003 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和3年7月19日 知的財産高等裁判所
知財高裁(1部)は、Webサイト上の使用について、使用証明が要証期間内のものかが不明として、使用ありとして審決を取り消しました。
被告は,平成28年頃,本件サービスの有料会員のみが閲覧可能な本件ウェ\nブサイトの本件トップページ(甲15)に本件使用商標が表示された本件バナ\nーを,本件バナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件
ウェブページ(甲17)に本件バナーの画像をそれぞれアップロードして,本
件バナー及びその画像を掲載したこと,ファンプラス社が,令和2年4月1月
以降,本件トップページ及び本件ウェブページにそれぞれ本件バナー及びその
画像を継続的に掲載したことにより,被告又はファンプラス社が要証期間内に
本件使用商標を使用した旨を主張するので,以下において判断する。
(1) 甲15は,本件トップページを印刷した書証であり,甲15には,「Fの
ぶらり商店街」の見出しの下に,別紙記載の本件バナーを含む複数のバナー
が表示されている。また,甲17は,本件ウェブページを印刷した書証であ\nり,甲17には,「美少女図鑑 作品一覧」の見出しの下に,本件バナーの
画像が表示され,その画像の下には,複数の電子写真集のサムネイルが表\示
されている。本件バナーには,別紙記載のとおり,女性を被写体とする3枚
の写真(本件写真1ないし3)を背景に,白く縁取りされたピンク色の書体
の「美少女図鑑」の文字からなる本件使用商標が表示されている。\nそして,証拠(甲15,17,32)及び弁論の全趣旨によれば,本件ト
ップページに表示された本件バナーのリンク先が本件ウェブページであるこ\nと,本件ウェブページに表示された各サムネイルの横には,例えば,「女子\n校生 先輩は僕のいいなり A 2018−09−01」,「女子校生 純
白 B 2018−09−01」等の記載があることが認められる。
しかしながら,甲15及び17は,いずれも要証期間経過後の本件審判請
求後に印刷されたものであるから,甲15及び17が存在するからといって,
要証期間(平成29年6月18日から令和2年6月17日までの間)に,本
件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像が表示され\nていたものと直ちに認めることはできない。
また,本件バナーのアップロード時のログ等の電子記録は提出されておら
ず,平成28年頃,本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及
びその画像がアップロードされて掲載されたことを客観的に裏付ける証拠は
存在しない。
もっとも,甲17には,本件ウェブページに表示された各サムネイルに係\nる「2018−09−01」等の日付の記載があるが,これらの日付は,当
該サムネイルに係る電子写真集の販売開始日等を示したものとうかがわれ,
また,本件バナーのアップロード時期とサムネイルのアップロード時期が当
然に同じ時期になるものとはいえないから,これらの日付から,本件バナー
が平成28年頃にアップロードされたものと認めることはできない。
(2)次に,C作成の令和3年4月14日付け陳述書(乙3)中には,1)Cが代
表取締役を務める友ミュージック社は,およそ5,6年前に,被告の依頼を\n受け,本件ウェブサイトの会員限定ページに本件バナーをアップロードした,
2)同ページの本件バナーとリンクさせる形で,美少女図鑑のコンテンツ用ペ
ージをアップロードした,3)その後,本件バナーはアップロード時と同じ状
態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで本件バナーに変
更を加えていない旨の記載部分がある。
しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は,
およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,上記記載部分は,本件使用
商標を表示する本件トップページ及び本件ウェブページをアップロードした\n時期が「2015年3月25日」であることを証明する旨のC作成の令和2
年9月23日付け証明書(甲20)の記載部分と齟齬するものであるから,
措信することができない。
また,G(以下「G」という。)作成の令和3年6月11日付け陳述書(乙
8)には,1)Gは,被告に在籍していた,今から5,6年前,被告が保有す
るコンテンツ(乙5ないし7)から女性3名の写真と本件使用商標を使用し
て,本件バナーを作成し,友ミュージック社に依頼して,本件ウェブサイト
の有料会員のみが閲覧できる本件トップページに本件バナーを掲載し,本件
バナーのリンク先において,年齢の若い女性を被写体とするコンテンツを一
覧化した本件ウェブページを作成した,2)本件バナーに表示された女性3名\nの写真は,直近1,2年前に出版された,女子高生シリーズの中で比較的新
しい3冊の写真集から選んだものである,3)その後,本件バナーはアップロ
ード時と同じ状態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで
本件バナーに変更を加えていない旨の記載部分がある。
しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は,
およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,本件バナーの背景の本件写
真1ないし3は,Cが挙げる乙5ないし7(電子写真集1ないし3)記載の
写真と異なる構図の写真であるから,乙5ないし7は,本件バナーのアップ\nロードが平成28年頃にされたことを直ちに裏付けるものでないことからす
ると,上記記載部分は措信することができない。
したがって,乙3及び8から,本件トップページ及び本件ウェブページに
それぞれ本件バナー及びその画像が掲載されたことを認めることはできない。
他に本件使用商標が表示された本件バナー及びその画像が要証期間内に\n本件トップページ及び本件ウェブページに掲載されていたことを認めるに足
りる証拠はない。
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2021.07.27
令和3(行ケ)10013 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和3年7月20日 知的財産高等裁判所
不使用取消を請求しましたが、棄却されました。知財高裁も同様に「動画である本件動画における商標の使用は,商標的使用とはいえないと判断をしました。
事案の性質に鑑み,まず本件商標の使用の有無の点から検討,判断する。
商標法は,50条において,「日本国内」において「商標権者,専用使用権
者又は通常使用権者」のいずれかが「不使用取消審判請求に係る指定役務」
のいずれかについての登録商標の「使用」をしていることを商標権者が証明
しない限り,当該指定役務について当該商標の登録が取り消されると定め,
また,2条において,商標とは「業として」使用するものであり,その「使
用」とは,同条3項各号に列記されているのものに限ることを定めている。
したがって,本件において,商標権者である原告は,本件サービス又は本
件チャンネルにおける本件商標の使用が,日本国内において原告又はリンガ
フランカ社によって,本件指定役務について,業務に係る標章として同条3
項各号に列記されている態様で行われていることを立証することを要する。
(2)本件サービスにおける本件商標の使用について
ア 前記1(8)のとおり,本件サービスに係る会員認証ページ(甲8)には,
本件商標と同一の商標が表示されており,また,同(1)ウ及び(3)のとおり,
本件サービスは日本国内における日本人も対象としていることが明らか
であるから,本件商標は,日本国内において使用されているといえる。
しかしながら,上記ページは,要証期間経過後で本件審判請求がされた
後の平成31年4月16日に印刷されたものにすぎず,要証期間に同ペー
ジに本件商標が表示されていたことを直ちに明らかにするものではない\nし,自己のウェブサイトの表示を変えることは容易であるから,この証拠\nだけから要証期間に本件商標が表示されていたことを推認できるもので\nもない。
したがって,要証期間に本件サービスで本件商標が使用されていること
を認めるに足りる証拠はないというべきである。
イ 仮に,要証期間に本件サービスに係る会員認証ページに本件商標が表示\nされていたとしても,本件商標は本件指定役務の範囲に含まれる役務につ
いて使用されているとはいえない。
すなわち,本件指定役務のうち,「語学に関する知識の教授」,「国際文化
に関する知識の教授」又は「教育研修のための施設の提供」は,人に対す
る教育又は知能を開発するための役務であるが,本件サービスは,会員が\nSNSを利用して会員同士で情報発信,情報交換をするものであり,その
際に使用できる言葉をグロービッシュの基本単語1500語又はその派
生語に限定したというにすぎず,実態としては個人間の交流の場を提供し
ているだけのサービスである。したがって,本件サービスが主体的に知識
の教授や教育研修を行っているとはいえず,本件サービスを利用すること
でグロービッシュについての能力が向上することがあるとしても,それは,\n単なる副次的な作用,効果にすぎない。
そうすると,本件サービスの提供は,「語学に関する知識の教授」,「国際
文化に関する知識の教授」又は「教育研修のための施設の提供」のいずれ
にも該当しないというべきである。
ウ したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件サービスに
おいて,要証期間に上記各指定役務について本件商標の使用がされていた
とは認められない。
(3) 本件チャンネルにおける本件商標の使用について
ア 前記1(4)のとおり,本件動画1)ないし4)には,その冒頭に本件商標と同
一の商標が使用されており,また,本件サービスやグロービッシュ・ラー
ニング・センターの案内を内容とするなど日本国内における日本人を対象
としていることが明らかであるから,当該商標は日本国内において使用さ
れているといえる。
また,前記1(4)のとおり,本件動画1)ないし4)の投稿日は要証期間開始
前の平成25年3月9日から同年7月9日にかけてであるところ,要証期
間経過後である令和2年10月9日時点においても本件動画1)ないし4)
を視聴することが可能であり,同日時点の本件動画1)の視聴回数が750
回,本件動画2)の視聴回数が1125回,本件動画3)の視聴回数が431
回,本件動画4)の視聴回数が437回となっているから(甲10),要証期
間に本件動画1)ないし4)が視聴され得る状態であったことは十分に推認\nすることができる。したがって,要証期間に本件商標が本件チャンネルに
おいて使用されたことが認められる(なお,被告は,要証期間に本件チャ
ンネルが閉鎖されていた可能性を否定することはできない旨主張するが,\n閉鎖されていたことを疑うに足りる事情は見当たらない。)。
イ しかしながら,本件サービスの提供は,前記(2)イで判示したとおり,「語
学に関する知識の教授」又は「国際文化に関する知識の教授」,さらには「語
学教育に携わる教師の育成のための教育又は研修」のいずれの役務にも当
たらないというべきであるから,本件動画1)ないし4)が本件サービスの案
内を内容とするとしても,それが上記各指定役務に関する「広告」(商標法
2条3項8号)に該当する余地はない。
また,本件動画1)及び2)は,専らグロービッシュそのものの紹介を内容
とするものと把握される動画であって,具体的な役務との関連性が明確に
されているとはいえず,この点からも「役務に関する広告」(商標法2条3
項8号)とはいい難いものである。したがって,本件動画1)及び2)におけ
る本件商標の使用が,商標法2条3項所定の「使用」に該当するとは認め
られない。
さらに,本件動画3)は,専らリンガフランカ社の前記1(1)ウ2)のサービ
スの紹介を,本件動画4)は,専ら前記1(1)ウ3)のサービスの紹介を内容と
するとものとそれぞれ把握される動画であるところ,前記1(6)及び(7)のと
おり,リンガフランカ社は,要証期間前の平成25年9月30日には上記
両サービスを終了させており,原告は,同サービスの運営を引き継いでい
ないから,本件動画3)及び4)を「役務に関する広告」(商標法2条3項8号)
と捉えるとしても,その内容は,事業として行われていない実態のサービ
スに関するものにすぎない。そうすると,本件動画3)及び本件動画4)は,
業として行われている役務について使用されているものではないから,そ
こに本件商標が表示されているとしても,その本件商標の使用を商標とし\nての使用と解することはできない。
ウ 以上によれば,本件チャンネルで公開されている動画である本件動画1)
ないし4)における本件商標の使用は,いずれにしても商標法2条3項所定
の「使用」とはいえない,あるいは商標的使用とはいえないことになる。
(4) 小括
以上の次第で,本件商標が,要証期間中,本件指定役務のうち,「語学に関
する知識の教授」,「国際文化に関する知識の教授」,「教育研修のための施設
の提供」又は「語学教育に携わる教師の育成のための教育又は研修」の役務
について使用されていたと認めることはできず,また,原告は,本件指定役
務のうち,上記役務を除く役務について要証期間に本件商標が使用されてい
る点について具体的に主張立証をしておらず,本件証拠からもその使用をう
かがうことはできない。
したがって,要証期間に本件商標が本件指定役務について使用された旨の
立証はないというべきであるから,本件商標の使用者に係る点について判断
するまでもなく,いずれにしても本件審決の判断に誤りはない。
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2021.04.16
令和2(行ケ)10127 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和3年3月25日 知的財産高等裁判所
商標の不使用が争われた事件で、指定商品「工楽松右衛門の創製した帆布」に使用したのかが争われました。知財高裁は指定商品の意義を検討した上、使用に該当すると判断した審決を維持しました。
(ア) 本件指定商品における「工楽松右衛門の創製した帆布」の意義につい
て,まず検討する。
前記(1)エで認定した各文献の記載によると,播州高砂の船頭であった工樂松右
衛門は,江戸時代後期の天明年間に,従来使われていた刺し帆より耐久性や強度な
どに優れる織り帆を発明し,それが「松右衛門帆」として全国に伝播し,明治時代
頃まで帆船の帆などとして広く利用されていたものと認められる。
もっとも,前記(1)エの各文献の記載にあるとおり,現代において帆船が用いられ
なくなったことに伴い,「松右衛門帆」は急速に姿を消していったものと認められ,
B論文(甲7)の表にあるとおり,現代においては,残存する「松右衛門帆」も限\nられたものとなっていたと認められる。そして,前記(1)エの各文献等の記載や前記
(1)ウ(ア)のとおり,被告による「松右衛門帆」の復元に当たって,D教授が改めて
調査を行っていることも考え併せると,被告が,平成22年頃から「松右衛門帆」
を復元したとする本件布地を用いた商品の製造販売を始めるまでの間,「松右衛門
帆」が,具体的にどのようなものであるのかについて,B教授のような一部の専門
家以外の者には,その詳細は不明なものとなっていて,本件指定商品の取引者,需
要者たる一般人が,容易に調査できる範囲の資料から得られる「松右衛門帆」につ
いての情報は,前記(1)エ(ア)の各辞典に記載されていた「太い綿糸で織られた幅広
の厚手の帆布」程度のものになっていたと認められる。
このような状況において,前記(1)ウ(ア),(イ)のとおり,被告は,D教授の協力を
得て,神戸大学海事博物館に所蔵されていた,原告らの実父で,帆船について研究
をしていたCによって寄贈された「松右ヱ門帆」という資料名の布の調査に基づい
て,1)現在,一般に流通している帆布と異なり,2本の単糸を引き揃えにしている
点や2)緯糸が経糸より3倍太くなっていて,極端に太い点などの特徴を有する布地
(本件布地)による,かばん等の商品の製造販売を始めた。
そして,前記(1)ウ(ウ)認定の被告や御影屋による広告宣伝活動や同エ(イ)f以降
及び同(ウ)の第三者による文献等の記載から分かるとおり,平成22年頃以降から
要証期間中にかけて,被告や御影屋が「松右衛門帆」を復元したとする本件布地を
用いた商品の製造販売を開始して広告宣伝活動を行うことで,「松右衛門帆」とは,
被告が復元した上記1),2)のような特徴を持つ本件布地を指すものであるという認
識が,取引者,需要者の間に広まっていたものと認められる。
そうすると,遅くとも,本件商標を付した本件かばん2が,一般消費者に販売さ
れ,平成30年2月5日に納品された時点で,本件指定商品の取引者,需要者は,
「松右衛門帆」,すなわち,「工楽松右衛門の創製した帆布」とは,本件布地のよう
な「太い木綿糸を用い,太さの違う経糸と緯糸を2本引き揃えて織った厚く丈夫な
布地」(前記(1)ウ(ア))であると認識していたものと認められる。
(イ) 原告らは,1)本件指定商品中の「工楽松右衛門の創製した帆布」とは,
「天明年間に播州高砂に実在した船頭である工樂松右衛門がはじめてつくりだした
帆布」を意味しており,「松右衛門帆」は,「工楽松右衛門の創製した帆布」の上位
概念であるから,「松右衛門帆」から「工楽松右衛門の創製した帆布」の意義を解釈・
認定するのは誤りである,2)布の耳部(両端)1寸ほどについては縦糸1本横糸2
本で織り,それ以外の部分については縦糸2本横糸2本で織っている(特徴1)),幅
の長さは2尺5寸(約75センチ)ほどのものである(特徴2))という二つの特徴
を備えないと,「工楽松右衛門の創製した帆布」とはいえない,3)神戸大学海事博物
館所蔵の帆布はその出自が不明である上,耳部が失われているから,「工楽松右衛門
の創製した帆布」とはいえない,4)工樂松右衛門が創製した当時の「松右衛門帆」
に使われていた糸は2.2番手相当であり(甲68),神戸大学海事博物館に所蔵さ
れていた帆布や本件布地とは糸の太さが異なるし,織布の密度も異なる上,本件布
地の織り方は他の織り方においても認められる構造である,5)本件指定商品の意義
は,登録事項に基づき客観的に認定判断されるべきであり,商標権者である被告自
身の広告宣伝によって定まるとするのは不当であるなどと主張する。
a 上記1)について
前記(1)エの文献の記載を見るに,各辞典(甲46〜48)では,「工楽松右衛門
の創製した帆布」と「松右衛門帆」を同じものとして扱っており,また,各文献(甲
3〜7)においても,「この松右衛門が開発した,いわゆる『松右衛門帆』」(甲4),「松右衛門帆は,高砂在住の松右衛門帆が天明(1785)に創製した」(甲7)な
どと,各辞典と同様に「工楽松右衛門の創製した帆布」と「松右衛門帆」を同じも
のとして扱っているから,「工楽松右衛門の創製した帆布」と「松右衛門帆」は同じ
ものであると認められ,原告らが主張するように両者が異なるものであるとは認め
られず,上記(ア)の認定判断は左右されない。
b 上記2)について
前記(1)エ(イ)a,dのとおり,甲3には「工楽家に現存する帆」として幅3尺の
ものが存在する旨の記載がある上,B論文(甲7)の表の中にも,幅が2尺5寸と\nは大きく異なる1尺9寸5分のものが記載されているし,同論文には,「現在の工業
製品と違って,織り幅を規格化していたかどうか疑問で,また,織り手によって多
少差があったのではないだろうか。」と記載されている。そして,前記(1)エ(イ)a,
eのとおり,「松右衛門帆」は,人伝いに各地に伝播していったもので,中には地方
において見様見真似で織ったものも存在していた(甲3,4)とされている。そう
すると,「松右衛門帆」とされるものの幅やその他の性状といったものについては,
「松右衛門帆」が船の帆として使用されていた当時から既に相当にバラつきがあっ
たものと推認できるところである。
また,前記(1)ウ(イ)で認定したように,被告の商品のかばん類に耳部が用いられ
ておらず,裁断されるなどして,織り上げられた時点とは幅も異なるものとなって
いることからすると,布地の耳部は,一般的に布地から製品を作る際に必ずしも使
用されるものではなく,また,布地の幅も,それぞれの製品に応じて裁断されるな
どして異なったものとなると認められるところ,前記(1)エ(イ)d,e のとおり,「松
右衛門帆」は,船の帆として利用されただけでなく,前垂れや覆い,敷物などの他
の用途にも利用されていた(甲4,7)のであるから,そのような中で,「松右衛門
帆」が,幅二尺五寸以外の大きさに加工されたり,耳部がない形で利用されたりす
ることもあったものと推認できる。
さらに,現代において,帆船の減少に伴い,「松右衛門帆」の意義が不明確なもの
となっていたのは,上記(ア)で認定したとおりである。
以上からすると,「松右衛門帆」が船の帆として使用されていた当時から,特徴1),
2)が,「松右衛門帆」の特徴として広く認識されていたとは認められないし,まして,
「松右衛門帆」の意義が一旦不明確となった以降で,かつ,前記(1)エ(イ)aのとお
り,一般に帆布が船の帆に限られず幅広く様々な製品で使われるようになった本件
査定日や要証期間の時点において,特徴1),2)が,「工楽松右衛門の創製した帆布」
の特徴として,本件指定商品の取引者,需要者に認識されていたとは認められず,
原告らの上記主張は,上記(ア)の認定判断を左右するものではない。
なお,原告らは,被告も,耳部が「松右衛門帆」の特徴であるとして宣伝してい
る(甲9)から,特徴1)が「松右衛門帆」の特徴である旨主張するが,甲9にも記
載されているように,被告や御影屋が製造販売するかばんには,耳部は使われてい
ないのであるから,原告らの上記主張は採用できない。
c 上記3)について
前記(1)ウ(ア)のとおり,神戸大学海事博物館所蔵の帆布は,帆船の研究をしてい
た原告らの実父によって寄贈され,同博物館で「松右ヱ門帆」として保管されてき
たものであるから,前記(1)ウ(イ)のとおり同帆布の調査に基づいて復元された本件
布地が「松右衛門帆」とはいえないということはできない。原告らが主張する耳部
に関する特徴1)が,現代において,「松右衛門帆」の特徴として,本件指定商品の取
引者,需要者に認識されていたとはいえないことは,上記bで認定判断したとおり
であり,原告らの主張はその前提を欠いている。
d 上記4)について
上記bのとおり,「松右衛門帆」が船の帆として使われていた当時から,その規格
にはバラつきがあったものと認められるところ,神戸大学海事博物館に所蔵されて
いた「松右ヱ門帆」は,上記cのとおりのものであって,これとは異なる「松右衛
門帆」が存在するからといって,神戸大学海事博物館に所蔵されていた「松右ヱ門
帆」が「松右衛門帆」であることを否定することはできない。
また,神戸大学海事博物館に所蔵されていた「松右ヱ門帆」や本件布地の織り方
が他にも認められる構造のものであったとしても,それが「松右衛門帆」であるこ\nとを否定することにはならない。
e 上記5)について
上記(ア)で認定判断したように,現代において「松右衛門帆」の意義が不確かなも
のとなっていたところ,被告や御影屋による広告宣伝活動の結果として,要証期間
までの間にその意義が再度認識されるようになってきているのであり,取引の実情
として,「松右衛門帆」,すなわち,「工楽松右衛門の創製した帆布」の意義を認定す
るに当たり,被告や御影屋の広告宣伝活動の結果を考慮に入れることは何ら不当で
はないし,上記(ア)で認定判断した事実経過からすると,第三者の地位を著しく不安
定にするということはない。
また,前記(1)ウ(ア),(イ)のとおり,被告は,神戸大学海事博物館において「松右
ヱ門帆」として所蔵されていた,帆船の研究家である原告らの実父が寄贈した帆布
を調査し,これを復元することを試みて,本件布地を完成させている上,本件布地
の特徴が,前記(1)エ(ア)の各辞典に記載されている「松右衛門帆」の特徴と合致す
るのみならず,同(イ)の文献に記載されている「松右衛門帆」の特徴とも耳部以外の
点で概ね合致するものであることからすると,被告や御影屋が,本件布地を「松右
衛門帆」,すなわち,「工楽松右衛門の創製した帆布」として販売することは,本件
指定商品の品質について誤認を生じさせて公益を害するものとはいえず,本件にお
いて,被告や御影屋の広告宣伝の結果を考慮に入れることは,このような観点から
も相当なものといえる。
したがって,原告らの上記5)の主張は採用することができない。
f 小括
以上から,原告らの上記1)〜5)の主張はいずれも採用することができないし,そ
の他原告らが主張するところも,いずれも上記(ア)の認定判断を左右するものでは
ない。
イ 本件かばんが,「工楽松右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」である
のかについて
前記アで認定した本件指定商品における「工楽松右衛門の創製した帆布」の意義
に基づいて,本件かばん2が,「工楽松右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」に
該当するかについて検討する。
前記(1)ウ(ア),(イ)のとおり,被告は,D教授が神戸大学海事博物館において「松
右ヱ門帆」として所蔵されていた帆布についてした調査に基づき復元した本件布地
を使用して,本件かばん2を製作したところ,本件布地は,太い木綿糸を用いて,
2本の単糸を引き揃えにして平織りにし,かつ,緯糸の太さが,経糸より約3倍太
くなっていた厚手の帆布なのであるから,本件布地は,取引者,需要者が観念し得
る「工楽松右衛門の創製した帆布」としての要件を満たすものであったといえる。
したがって,本件布地を使用した本件かばん2は,「工楽松右衛門の創製した帆布
を用いたかばん類」に該当するものであったと認めるのが相当である。
以上のとおり,本件商標の通常使用権者である御影屋は,要証期間内である平成
30年2月頃に本件商標を付した「工楽松右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」
に該当する本件かばん2を一般消費者に販売していたのであるから,本件商標は,
要証期間中に,日本国内において,通常使用権者により,本件指定商品中,「工楽松
右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」について使用されていた(商標法2条3
項1,2号)ということができる。
◆判決本文
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2021.02. 2
令和2(行ケ)10095 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和3年1月26日 知的財産高等裁判所
商標法50条にて登録を取り消された審決取消訴訟です。知財高裁は、不使用とした審決を維持しました。指定商品は新聞で、使用していたのは電子新聞でした。
ア 原告は,新聞や書籍といった情報伝達媒体に属する商品において,取
引の対象となっているのは,その物理的な性状である紙ではなく,実質的には,そ
の内容(コンテンツ)であり,この種の商品の流通とは,情報の流通のことを指し,
インターネットを通じて流通できるため,新聞等は紙である必要性はなくなったし,
電子版も含まなければならないから,「紙媒体」に限定した本件審決の判断には誤り
がある旨主張する。
商標法における商品に,電子情報財等の無体物が含まれることを否定するもので
はないが,たとえ,新聞や書籍などの情報伝達媒体に属する商品が,原告がいうと
ころの「その内容(コンテンツ)」に価値を見いだして購入する需要者がいるとして
も,いわゆる収集家の如く,紙媒体としての新聞や書籍について,「その内容(コン
テンツ)」以外の点に価値を見いだす需要者も存在する。また,インターネットが普
及し,「内容(コンテンツ)」がインターネットを通じて流通することが可能であるとしても,これにより紙媒体としての「新聞」の存在自体が完全に否定されるもの\nではないし,実際に,紙媒体としての「新聞」は依然として流通している。そうす
ると,紙媒体としての「新聞」の流通とは,紙媒体としての「新聞」という物品そ
のものの流通として捉えられるべきものである。
イ 原告は,本件アンケート(甲28)の結果をもとに,本件商標が指定商
品である「新聞」に実質的に使用されていると主張する。
しかし,本件アンケート調査は,その対象者がどのような条件・方法により抽出
されたものであり,どのような方法によりインターネットを通じて実施されたもの
であるかは明らかでなく,本件アンケート調査によって得られた結果が,「電子版の
新聞及び本件ウェブサイトを一般購読者がどのように捉えているか」を示すものと
して参酌することはできない。
また,本件アンケートは,ウェブサイト上におけるアーカイブの提供が,「電子化
された新聞の内容を提供(供覧)する役務」に該当するものであるか否かに関する
ものであるから,これによって得られた結果を,本件商標が指定商品である紙媒体
である新聞に使用されているか否かを検討するに当たり,参酌することはできない。
さらに,本件アンケートの回答について,原告は,「どちらとも言えない,わから
ない」という回答を,「新聞かもしれない,と消極的に感じている」と恣意的に認定
しているから,本件アンケート調査が,「需要者の約75%が本件ウェブサイトを
『新聞』と認識している。」ことを示すものでもない。
◆判決本文
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2020.12. 7
令和2(行ケ)10072 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和2年12月2日 知的財産高等裁判所
使用証明として「奥西木工」の文字部分が記載されていない証明書を提出しました。審決は当該部分が出所表示機能\を有する要部であるとして登録を取り消しました。知財高裁(2部)も同じく使用証明として認めませんでした。登録商標は判決本文内に参照されています。
1 本件商標のうち,「奥西木工」の文字部分が,出所表示機能\を有する要部に当
たるかについて
本件商標は,前記第2の1のとおり,全体が一様に朱色の家具の催事についての
広告チラシを縮小した構成からなり,その上部には,上が欠けた円図形の内側に大\nきな赤い文字で「大処分」と記載され,その右側に「キズ物 半ぱ物 山積」と記
載された白抜きの将棋の駒様の図形を配し,さらに,上記円図形の右内側に大きく
「家具」の文字が記載され,内側に家具の絵が配されており,上記円図形の左上に
「京都最大の家具専門店奥西木工の魅力あるキズもの」と大きく記載され,同図形
の上に「キズ物市」とより大きく記載され,同図形の左には「大放出」と大きく記
載されており,その下部には,矢印と共に「うら面へつづく」と記載され,最下部
には赤色の長方形の中に白抜き文字で「奥西木工」等の文字が記載されているもの
である。
上記のような本件商標の構成からすると,本件商標に接した需要者,取引者は,\n本件商標が,「キズ物市」という家具の催事についてのチラシであると認識すると認
められるところ,「大処分」,「家具」,「キズ物市」,「大放出」といった記載や家具の絵は,販売される商品や催事の内容などを表すものと認識されるのであって,本件\n商標には,「奥西木工」の文字部分以外に,本件商標に記載された各商品(家具)の
出所を示すような表示はない。そうすると,本件商標に接した需要者,取引者は,\n「奥西木工」の記載をもって,指定商品である家具の出所を表示するものとして認\n識するものと認められ,「奥西木工」の文字部分は,要部であるというべきである。
・・・
そうすると,本件チラシ1は,その全体のレイアウトは,本件商標と共通する部
分があるものの,本件チラシ1のいずれにも本件商標の要部である「奥西木工」と
いう文字部分がなく,「タキソウパルクス刈谷店」,「タキソ\ウ家具」,「タキソウ家具本店」,「タキソ\ウパルクス吉原店」などとの記載があるのみであるから,本件チラ
シ1に記載された本件使用商標1は,本件商標とは外観が大きく異なる上,本件商
標から生じる「オクニシモッコウ」などの称呼や「奥西木工の主催するキズ物市」
といった観念も本件使用商標1からは生じない。以上からすると,本件使用商標1が,本件商標と社会通念上同一ということはできない。
◆判決本文
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2020.07.14
令和1(行ケ)10094 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和2年6月4日 知的財産高等裁判所
商標motoについて、商品「腕時計」について不使用取消審判が請求され、不使用として登録が取り消されました。知財高裁はこれを維持しました。
原告ウェブページについて
ア 腕時計の画像の表示\n
原告は,原告ウェブページに,本件商標が付された原告腕時計4本の画
像(甲23の1〜3)を掲載した旨主張する。
しかしながら,原告ウェブページの写真である甲23の1〜3は,そこ
に表示された4本の腕時計の画像が不鮮明であるため,同画像からは,こ\nれらの腕時計の文字盤にいかなる標章が付されているのかを認識すること
はできず,その他に,原告ウェブページに本件商標を付した腕時計が表示\nされていることを認めるに足りる証拠はない。
これに対し原告は,仮に上記画像のみから「moto」の文字をはっきり認
識できないとしても,同画像の右横に本件商標が大きく表示され,更に\n「moto」が原告の登録商標である旨の記載もあること,腕時計の文字盤に
商標が付されることは極めて多いことに鑑みれば,画像の文字盤に付され
た欧文字が「moto」であることを十分に認識できる旨主張する。\nしかしながら,そもそも,原告ウェブページに表示された腕時計の画像\nは不鮮明であって,文字盤に欧文字が付されていると認識することは困難
であるし,腕時計の文字盤に常に商標が付されるものであるとも認められ
ない。また,前記1(2)で認定した原告ウェブページにおける画像等の配置
や全体の構成に照らしても,「moto」が登録商標である旨の説明文は,その
上方に近接して表示された本件商標について説明する文章と理解するのが\n自然であるから,これらの表示から,腕時計の画像に「moto」の標章が付
されていることを認識するものではないといえる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
以上によれば,要証期間内に,本件商標が付された腕時計の画像が原告
ウェブページに表示されたと認めることはできない。\n
イ 本件商標の表示\n
(ア) 前記1(2)のとおり,原告ウェブページには,腕時計の品名,品番,
値段,商品説明等についての記載や,原告の腕時計が将来発売予定であ\nること,個別の商談により購入が可能であることを説明する記載はない。\nそして,かかる原告ウェブページの体裁,記載からは,少なくとも平
成30年3月6日頃に原告更新ウェブページが作成され,腕時計の品名,
品番,値段,商品説明等についての具体的な記載が掲載されるまでの間
は,原告において,同ウェブページに画像が表示された腕時計が実際に\n製造され,商品として購入できる実態があったことを推認することはで
きないというべきである。
以上によれば,原告ウェブページに表示された本件商標や「moto 時計」
のウェブページである旨の表示は,商品である「腕時計」について使用\nされたものとは認められない。
(イ) これに対し原告は,(1)原告ウェブページに原告腕時計の商品名等を
表示しなかったのは,原告腕時計の画像を原告ウェブページに掲載した\n当時は,原告腕時計の販売や取引先に対する営業活動の開始前だったか
らである,(2)原告ウェブページに掲載された原告腕時計の画像は,原告
が君園に発注して納品を受けた腕時計につき,中華撮影が広告用に撮影
したものを使用して,原告ウェブページ掲載用に作成したものであって,
甲44ないし46は君園から受領した原告腕時計の見積書及びデザイン
画像,甲49は中華撮影から受領した原告腕時計の写真の納品書,甲5
0は原告ウェブページ用に作成した写真である旨主張し,原告の従業員
であるEの本件審判における証人尋問録音の反訳(甲20,80)及び
同人の陳述書(甲28。上記反訳と併せて,以下「Eの陳述書等」とい
う。),君園の社長の陳述書(甲94)及び中華撮影の写真家の陳述書(甲
95)中には,これに沿う部分がある。
しかしながら,(1)についていえば,原告主張の事情は,原告更新ウェ
ブページが作成されるまでの1 年以上にわたり,原告ウェブページに原
告腕時計の品目,品番,商品説明等の一切が表示されていないことの説\n明になるものではない。また,(2)も,以下の点に照らせば,採用できる
ものではない。
すなわち,甲45のデザイン画像は,腕時計本体の写真がやや不鮮明
であるのと対照的に,文字盤上の「moto」の文字又は文字盤全体が不自
然なほど鮮明で浮き上がっているように見えるものであり,画像データ
を加工等して作成された画像であることがうかがえる。また,同画像が
添付された電子メール(甲45)には本文がなく,これらの画像の作成
目的,作成方法等も証拠上明らかでない。
そして,甲44の見積書には,「製品明細」(「ステンレス サファイア
ガラス 日本製ムーブメント 手作箱及び説明書」),「注意事項」(「腕時
計サンプル製作」),「数量」(合計16個)等の記載があるものの,商品
の単価やサンプル製作納期の記載がないなど,不自然な点も少なくなく,
「製品明細」に記載されたとおりの製品が製造されたことを示す写真等
の客観的な証拠もない。また,原告は,甲46の見積書は,納品書兼領
収書の役割を果たすものであって,甲44の見積書に対応するものであ
る旨主張するが,甲46の見積書にも製品の単価等の記載はない。
さらに,甲49の納品書には,中華撮影が原告に対して単価400台
湾ドルの写真19枚を納入し,原告からその代金を受領した旨の記載が
あるものの,納品する写真の画像等は添付されていないため,これらの
証拠からは,納入された写真が原告腕時計のものであるかは明らかでな
い。
加えて,文字盤に「moto」の標章が付されていることが認識できる4
本の腕時計の写真(甲50)も,その作成時期,作成経緯は明らかでな
く,これが原告ウェブページ上の腕時計の画像と同一のものであること
を裏付ける客観的な証拠はない。
以上によれば,原告の上記主張を採用することはできないというべき
である。
ウ 本件商標の使用の有無
前記ア及びイによれば,原告が,原告ウェブページに腕時計の画像及び
本件商標の表示等を表\示したことをもって,本件商標の使用(商標法2条
3項8号)に該当すると認めることはできない。
◆判決本文
同一商標権の侵害訴訟の控訴審です。
◆平成31(ネ)10024
上記控訴審の1審判決です。
◆平成29(ワ)15776
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2020.03. 6
平成31(行ケ)10059 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和2年2月26日 知的財産高等裁判所
不使用とした審決が取り消されました。原告は本件訴訟で、新たな証拠
を提出しました。被告がシャネルで、本件商標は「COCO」です。
ア(ア) 原告は,平成19年9月3日に設立された,衣料品及び服飾雑貨の
卸,小売販売,製造及び輸出入等を目的とする株式会社である。
(イ) ダンエンタープライズは,要証期間(平成24年4月23日から平
成27年4月22日までの間)において,本件商標権の商標権者であっ
た。
(ウ) ジーティーオーは,ダンエンタープライズの有する商標権(本件商
標権を含む。)の使用許諾の窓口として,ダンエンタープライズから購
入した使用許諾を証明する「証紙」を使用許諾先に販売する業務を行っ
ていた。一方,ダンエンタープライズは,ジーティーオーから,「商品
化申請管理表\」及び「証紙申請書」の提出を受けて,商標を付する予\定
の商品を確認して,商標の使用を承認した上で,商品化権使用料名義で
商標の使用料を受け取り,「証紙」をジーティーオーに引き渡していた。
イ(ア) 原告は,平成25年9月3日及び4日,ジーティーオーに対し,原
告が商品化を企画している「COCO」の欧文字を付した4種類のトー
トバッグの商品(「COC−COB01」,「COC−COB02」,
「COC−CV01」,「COC−CV02」)のデザイン及び12種
類のカラーのデータ画像を添付したメール(甲89の1,2,90の1,
2,134の1,2,135の1,2)を送信し,本件商標の使用許諾
を求める旨の申請をした。\nその後,原告とダンエンタープライズは,同月30日,期間同年10
月1日から3年間,指定商品第14類,第18類,第25類及び第26
類「身飾品他か」,使用許諾地域日本国内の約定で,ダンエンタープラ
イズが原告に対し,本件商標権の使用権を独占的に許諾し,原告が本件
商標を付した「かばん・小物類」の商品を製造及び販売することを許諾
する旨の本件使用許諾契約(甲24)を締結した。
(イ) 原告は,平成25年10月29日,韓国のミラクル社(甲124の
2,3)に対し,「2013.10」,「COC−BGT01」,「C
OC−CV01」,「COC−BGT02」,「COC−CV02」と
の表示の下に,「COCO」の欧文字が付されたトートバッグのデザイ\nン及び寸法等を記載した画像データ(甲91の2,3,136の1,2)
を添付した,「COCOバッグサンプル作成のお願いになります。」,
「指示書添付致します。」,「大,中2サイズでWHITE(生成り)
とBLACKで作成お願いします。」などと記載したメール(甲91の
1)を送信した。
(ウ) 原告は,平成25年12月4日,ミラクル社に対し,「Re:商品
発注になります:COCOバッグ発注」との件名で,「商品発注の件」
と題する書面2通(甲93の2,3,137の1,2)を添付した,「発
注書2件添付しております。」,「COC−BGT」,「COC−CV」,
「納期が確定しましたら教えて下さい。」などと記載したメール(甲9
3の1)を送信した。上記添付書面中には,「(COC−BGTビッグ
トート)1st」として品番「COC−BGT01」のカラー5色を3
500枚,品番「COC−BGT02」のカラー5色を3500枚の合
計7000枚を単価US4.8ドルで発注(甲93の2,137の1)
し,「(COC−CVキャンバストート)1st」として品番「COC
−CV01」の5色を2500枚,「COC−CV02」の5色を25
00枚の合計5000枚を単価US4.0ドルで発注(甲93の3,1
37の2)する旨の記載がある。
(エ) 原告は,平成25年12月27日,ミラクル社に対し,「付属指示:
COCOビッグトート修正」との件名で,(1)作成日「2012.12.
25」,品番「COC−BGT01,02/COC−CV01,02」,
ブランド「COCO」と記載した「付属仕様書」(甲116の2,13
9の1),(2)「2013.12.25」,「COC−BGT02」,「C
OC−CV02」,「COC−BGT01」,「COC−CV01」と
の表示の下に,「COCO」の欧文字が付されたトートバッグのデザイ\nン等を記載した画像データ(甲116の3,4,139の2,3)を添
付した,「COCO付属の指示になります。」,「混率修正致しました。」
などの記載のあるメール(甲116の1)を送信した。上記「付属仕様
書」には,「COCO」の欧文字,品番,素材等を記載したステッカー
の仕様が記載されていた。
(オ) ジーティーオ―は,原告の依頼を受けて,平成26年1月17日付\nけの証紙申請書(甲3)を作成し,ダンエンタープライズに対し提出し\nた。上記申請書には,「株式会社ダンエンタープライズの許諾により「C\nOCO」の商品化権を下記掲載の商品に使用致しますので証紙の発行を
依頼いたします。」との記載に続き,以下の記載がある。
「商品名 承認NO. 製造数量
COCOトートバック(中) 44516 1900
COCOトートバック(中) 42832 1900
COCOトートバック(大) 44515 1900
COCOトートバック(大) 42831 1900
COCOエコバッグ 43015 15000
(合計) 22600」
(カ) ジーティーオ―は,平成26年1月20日,ダンエンタープライズ\nから,甲3の証紙申請に係る証紙合計2万2600枚の納品(甲4)を\n受け,そのころ,原告に対し,上記証紙を引き渡した。
ウ(ア) 原告は,平成26年3月25日,日本PMSに対し,「※再送です
【COCO 商品のご案内】【E−COME】」との件名で,「Coc
oバッグ BIGトートNo.1」のファイル名及び「Cocoバッグ
キャンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータ(甲127の
2)等を添付した,「再送致します。現状では,圧倒的にトート・ミニ
トートの方が予約段階での付きは良い状況です。」,「早速ではござい\nますが【COCO絵型】を添付しております。何卒よろしくお願い致し
ます。」などと記載したメール(甲127の1)を送信した。
「Cocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名のPDFデ
ータ(甲127の2の1枚目)には,「Coco ビッグトートNo.
1」,「Coco ビッグトートNo.2」との表題の下に表\が記載さ
れ,表の枠内には,「STYLENO」欄に「COC−BGT01」,\n「COC−BGT02」,「納期」欄に「4月上旬頃〜随時発送予定 下
代@990−」とする「COCO」の欧文字が表示されたそれぞれカラ\nー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外にはトートバッグを\n持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標登録番号:第14
93277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)ダンエンター
プライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を独占契約した
正規国内ライセンス商品です。」との表示があった。\nまた,「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」のファイル名
のPDFデータ(甲127の2の2枚目)には,「Coco キャンバ
ストートNo.1」,「Coco キャンバストートNo.2」との表\n題の下に表が記載され,表\の枠内には,「STYLENO」欄に「CO
C−CV01」,「COC−CV02」,「納期」欄に「4月上旬頃〜
随時発送予定 下代@930−」とする「COCO」の欧文字が表示さ\nれたそれぞれカラー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外に\nはトートバッグを持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標
登録番号:第1493277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)
ダンエンタープライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を
独占契約した正規国内ライセンス商品です。」との表示があった。\n
(イ) 原告は,平成26年4月23日,埼京三喜に対し,「【COCO絵
型】【イーカム】」との件名で,「Cocoバッグ BIGトートNo.
1」のファイル名及び「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」
のファイル名のPDFデータ(甲128の2)等を添付した,「早速で
はございますが【COCO絵型】を添付しております。」,「こちらの
商品の中の,トート2アイテムに関しましては5月GW明け納期商品と
なっております。」などと記載したメール(甲128の1)を送信した。
「Cocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名のPDFデ
ータ(甲128の2の1枚目)には,「Coco ビッグトートNo.
1」,「Coco ビッグトートNo.2」との表題の下に表\が記載さ
れ,表の枠内には,「STYLENO」欄に「COC−BGT01」,\n「COC−BGT02」,「納期」欄に「5月中旬頃〜随時発送予定 下
代@1134−」とする「COCO」の欧文字が表示されたそれぞれカ\nラー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外にはトートバッグ\nを持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標登録番号:第1
493277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)ダンエンタ
ープライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を独占契約し
た正規国内ライセンス商品です。販売許諾地域:日本国内限定 商品可
能化アイテム:かばん,小物類」との表\示があった。
また,「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」のファイル名
のPDFデータ(甲128の2の2枚目)には,「Coco キャンバ
ストートNo.1」,「Coco キャンバストートNo.2」との表\n題の下に表が記載され,表\の枠内には,「STYLENO」欄に「CO
C−CV01」,「COC−CV02」,「納期」欄に「5月中旬頃〜
随時発送予定 下代@1026」とする「COCO」の欧文字が表示さ\nれたそれぞれカラー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外に\nはトートバッグを持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標
登録番号:第1493277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)
ダンエンタープライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を
独占契約した正規国内ライセンス商品です。販売許諾地域:日本国内限
定 商品可能化アイテム:かばん,小物類」との表\示があった。
エ ミラクル社は,(1)「荷送人/輸出者」欄にミラクル社,「買い手名」欄
に原告,「積荷港」欄に「中国,上海」,「最終仕向港」欄に「日本,博
多」,「出港予定日」欄に「2014年4月19日」,「インボイスNo.
作成日」欄に「MC140417 2014年4月17日」,「L/C
No.日付」欄に「L/C:211−612−14457」,「品名の詳細」
欄に「鞄 COC−BGT01 424枚 USD2,035.20」,
「鞄 COC−BGT02 390枚 USD1,872.00」,「鞄
COC−CV01 131枚 USD524.00」,「鞄 COC−C
V02 195枚 USD780.00」などと記載された「コマーシャ
ルインボイス」(甲130の2,4),(2)「パッキングリスト詳細」欄に
「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」,
「COC−CV02」の「カラー」が「ホワイト」である旨の記載のある
「パッキングリスト」(甲130の2,4)を発行した。
原告は,平成26年4月28日,輸入者を原告,ミラクル社を輸入取引
者,積出地を上海,船卸港を博多,仕入書番号を「MC140417」と
する貨物の輸入について,博多税関支署長から,輸入許可(甲130の1,
3)を受けた。
原告は,同日,乙仲業者のSGHグローバルジャパン株式会社(以下「S
GH社」という。)に対し,輸入関税,費用等(甲130の1)を支払い,
上記貨物の引渡しを受けた。
オ 原告は,平成26年10月14日,ユニーから,「ディズニー,COC
O,スクールの発注明細を添付します。確認をお願いします。本日,伝票
発行しました。」,「10/19までに納品をお願いします。」などと記
載したメール(甲107の1)を受信した。上記メールの添付ファイル(甲
107の2)には「COCOキャンバストート COC−CV01 各色
20」,「COCOキャンバストート COC−CV02 各色20」と
の記載があった。
原告は,同月15日,ユニーに対し,上記発注の内容を確認し,商品確
保が完了した旨のメール(甲108)を送信し,同月18日,ユニーに対
し,「COCOキャンバストート COC−CV01 各色」及び「CO
COキャンバストート COC−CV02 各色」を納品(甲110の1
ないし20,111の1ないし20)した。
(2) これに対し被告は,前記(1)掲記の証拠に関し,(1)甲91の1ないし93,
107の1,2,110の1ないし20,111の1ないし20,112,
127の1,2,128の1,2等は,原告が所持し,その提出も極めて容
易であったにもかかわらず,4年の審理がされた本件審判の段階では提出さ
れずに,本件訴訟に至って初めて提出されたのは極めて不自然であるから,
そもそも信用することができない,(2)甲91の1,116の1,117の1,
127の1,128の1の各メール等に添付されていたファイルであるとし
て,当該メールと合わせて提出された書面(甲91の2,3,116の2な
いし4,117の2,127の2,128の2等)について,実際に当該メ
ールに添付されたファイルの中身と同一のものであることについての立証が
ない,(3)原告提出のUSBメモリ(甲148)に保存されたメールデータに
ついては,メールの作成日について,インターネットヘッダーの「Received
from」の表示時刻は容易に変更可能\であり,当該変更を反映する形で,メー
ル自体の送受信日時も同様に変更されることになるから,上記メールデータ
によっても,各メールが表示されたとおりの日時に送受信されたとは限らな\nい,(4)甲148に保存された甲127の1,128の1のメールデータのイ
ンターネットヘッダーには「Received from」の項目が存在しておらず,この
ことは,当該メールが実際に送信された形跡が存在しないことを意味するな
どと主張する。
しかしながら,上記(1)の点については,本件審判の経過及び本件訴訟の審
理経過に照らすと,原告は,本件審決を踏まえて,本件訴訟において,本件
審判段階では主張していなかった本件商標の使用の事実を新たに主張し又は
主張を補充し,新たな証拠を提出したものと認められ,被告主張の上記甲各
号が本件審判段階で提出されていなかったことから直ちにその信用性がない
ということはできない。
次に,上記(2)の点については,甲89ないし91,93,107,116,
117,120ないし122,124,126ないし128,132(いず
れも枝番を含む。)の各メールのメールデータを保存したUSBメモリ(甲
148)によれば,印刷された各メールの本文(甲89ないし91,93,
107,116,117,120ないし122,124,126ないし12
8,132の各1)にそれぞれの添付ファイルを印刷した書面(甲89の2,
3,90の2,3,91の2,3,93の2,3,107の2,116の2
ないし4,117の2,120の2,121の2,122の2,124の2,
3,126の2ないし5,127の2,128の2,132の2)が添付さ
れていた事実を確認することができるから,上記(2)の点は理由がない。
さらに,上記(3)の点については,アプリケーションを用いて電子メールデ
ータ自体を編集することで,各メールの送受信日時を変更することが可能で\nあるとしても(乙37,38),甲148から,上記のとおり各メールに記
載された添付ファイルが添付されていることを確認することができ,これら
のメールが送受信されたことが認められることに照らすと,原告において各
メールの送受信日時のみの変更を行ったものと認めることは困難である。
また,上記(4)の点については,「Received from」の項目は,メールを受信
した際の項目であるから,原告が送信した甲127の1,128の1のメー
ルに上記項目が存在しないことは何ら不自然なことではない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
他に前記(1)の認定を左右するに足りる証拠はない。
2 原告による本件4商品の輸入及び販売の事実の有無等について
(1)ア 前記1の認定事実を総合すれば,(1)原告は,平成25年9月30日,ダ
ンエンタープライズとの間で,期間同年10月1日から3年間,使用許諾
地域日本国内の約定で,ダンエンタープライズが原告に対し,ダンエンタ
ープライズが有する本件商標権の使用権を独占的に許諾し,原告が本件商
標を付した「かばん・小物類」の商品を製造及び販売することを許諾する
旨の本件使用許諾契約(甲24)を締結した後,同月29日,韓国のミラ
クル社に対し,「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「C
OC−CV01」,「COC−CV02」との表示の下に,「COCO」\nの欧文字が付されたトートバッグのデザイン及び寸法等を記載した画像デ
ータ添付したメール(甲91の1ないし3)で,「COCOバッグ」のサ
ンプル品の作成を依頼したこと,(2)原告は,同年12月4日,ミラクル社
に対し,品番「COC−BGT01」のカラー5色を3500枚,品番「C
OC−BGT02」のカラー5色を3500枚,品番「COC−CV01」
のカラー5色を2500枚,「COC−CV02」のカラー5色を250
0枚の合計1万2000枚のトートバッグ(「COCOバッグ」)をメー
ル(甲93の1ないし3)で発注し,同月27日,ミラクル社に対し,「付
属仕様書」と「COCO」の欧文字が付されたトートバッグのデザイン等
を記載した画像データを添付したメール(甲116の1ないし4)で,品
番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV0
1」及び「COC−CV02」の仕様,デザイン等について指示をしたこ
と,(3)原告は,平成26年3月25日,日本PMSに対し,「Cocoバ
ッグ BIGトートNo.1」のファイル名及び「Cocoバッグ キャ
ンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータを添付したメール(甲
127の1,2)で,品番「COC−BGT01」,「COC−BGT0
2」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」のトートバッグの
商品の案内をし,また,原告は,同年4月23日,埼京三喜に対し,「C
ocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名及び「Cocoバッ
グ キャンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータを添付した
メール(甲128の1,2)で品番「COC−BGT01」,「COC−
BGT02」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」のトート
バッグの商品の案内をしたこと,(4)上記(3)の各PDFデータには,「CO
CO」の欧文字がそれぞれ表示されたカラー5色のトートバッグの写真が\n掲載され,そのうちの一つには,別紙2の「COCO」の欧文字の標章が
付されていたこと,(5)ミラクル社は,「荷送人/輸出者」欄にミラクル社,
「買い手名」欄に原告,「積荷港」欄に「中国,上海」,「最終仕向港」
欄に「日本,博多」,「出港予定日」欄に「2014年4月19日」,「イ\nンボイスNo.作成日」欄に「MC140417 2014年4月17日」,
「品名の詳細」欄に「鞄 COC−BGT01 424枚 USD2,0
35.20」,「鞄 COC−BGT02 390枚 USD1,872.
00」,「鞄 COC−CV01 131枚 USD524.00」,「鞄
COC−CV02 195枚 USD780.00」などと記載された「コ
マーシャルインボイス」(甲130の2,4)及び「COC−BGT01」,
「COC−BGT02」,「COC−CV01」,「COC−CV02」
の「カラー」が「ホワイト」である旨の記載のある「パッキングリスト」
(甲130の2,4)を発行した後,原告は,平成26年4月28日,輸
入者を原告,ミラクル社を輸入取引者,積出地を上海,船卸港を博多,仕
入書番号を「MC140417」とする貨物の輸入について,博多税関支
署長から,輸入許可を受け,同日,上記貨物の引渡しを受けたこと,(6)原
告が輸入許可を受けた品番「COC−BGT01」,「COC−BGT0
2」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」の「ホワイト」の
「鞄」は,上記(3)の各PDFデータに掲載された「COCO」の欧文字を
付した白色のトートバッグの画像の商品と同一の商品であることが認めら
れる。
以上によれば,原告は,平成26年4月28日,ミラクル社から,「C
OCO」の欧文字からなる標章(別紙2)を付したトートバッグである本
件4商品(品番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「C
OC−CV01」及び「COC−CV02」)を輸入したことが認められ
る。
イ これに対し被告は,(1)「ミラクルチームコーポレーション(英語表記:\nMIRACLE. TEAM CORPORATION)」なる会社は,イン
ターネット上で検索しても関連する情報を確認することができず(乙10,
11),ミラクル社が発行する輸入関係資料に同社の住所として表示され\nた住所(「(省略)」)も実在しないこと(乙12),原告は,「Whi
te(生成り)」及び「Black」の2色のサンプル品を受領しただけ
で,その直後に同サンプル品とは全く色合いの異なる商品6000枚を含
む合計1万2000枚の本件4商品をミラクル社に発注する取引を行った
というのは経営判断として明らかに合理性を欠いていることからすると,
そもそもミラクル社の存在自体が疑わしく,原告がミラクル社を通じて中
国の工場において本件4商品を製造した事実は存在しないから,原告が本
件4商品をミラクル社から輸入した事実も存在しない,(2)原告がミラクル
社から輸入したとする「COMMERCIAL INVOICE」(イン
ボイス)及び「PACKING LIST」(梱包明細書)記載の「CO
C−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」及び
「COC−CV02」の商品が「COCO」の欧文字からなる標章(本件
使用商標)を付した本件4商品を指すことを示す証拠はなく,一方で,原
告が「COCO」ないし「ココ」との名称のキャラクター等を用いた「キ
ャンバストート」等を取り扱っていた可能性も十\分にあり,このような商
品について,「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「CO
C−CV01」及び「COC−CV02」との品番が付けられていたとし
ても何ら不思議ではないなどとして,原告がミラクル社から本件使用商標
を付した本件4商品を輸入した事実は存在しない旨主張する。
しかしながら,上記(1)の点については,原告は,平成26年4月28日,
輸入者を原告,ミラクル社を輸入取引者,積出地を上海,船卸港を博多,
仕入書番号を「MC140417」とする貨物の輸入について,博多税関
支署長から,輸入許可を受け,同日,上記貨物の引渡しを受けたこと(前
記1(1)エ),上記輸入許可に係る輸入許可通知書(甲130の3)記載の
ミラクル社の「住所」は,韓国の税務署長作成の2013年4月25日付
け事業者登録証(甲124の2,3)記載のミラクル社の「事業場所所在
地」と一致することに照らすと,ミラクル社は実在する事業者であるもの
と認められ,被告が主張するようにインターネット上の検索サイトで「M
IRACLE.TEAM CORPORATION」を検索してもミラク
ル社の情報が表示されず,ミラクル社が発行する輸入関係資料に同社の住\n所として表示された住所が表\示されなかったとしても,そのことから直ち
にミラクル社が存在(実在)しないということはできないし,ひいては原
告が本件4商品をミラクル社から輸入した事実も存在しないということは
できない。また,原告が「White(生成り)」及び「Black」の
2色のサンプル品を確認しただけで,他の色の商品を含む本件4商品の発
注を行ったことが特段不合理であるということはできない。
次に,上記(2)の点については,前記ア認定のとおり,原告が輸入した品
番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV0
1」及び「COC−CV02」の「ホワイト」の「鞄」は,甲127の2,
128の2の各PDFデータに掲載された「COCO」の欧文字を付した
白色のトートバッグの画像の商品と同一の商品であることが認められる。
また,原告が上記輸入の当時,上記画像の商品とは異なる他の商品につい
て,「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV
01」及び「COC−CV02」の品番を付していたことを認めるに足り
る証拠はない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
(2)ア 次に,前記1の認定事実及び前記(1)アの認定事実を総合すれば,(1)原
告は,平成26年10月14日,ユニーに対し,「COC−CV01」及
び「COC−CV02」の商品を販売し,同月18日,これを納品したこ
と,(2)上記「COC−CV01」及び「COC−CV02」の商品は,甲
127の2,128の2のPDFデータに掲載された「COCO」の欧文
字を付した各トートバッグの画像の商品と同一の商品であることが認めら
れる。
上記認定事実によれば,原告は,平成26年10月14日,ユニーに対
し,「COCO」の欧文字からなる標章(別紙2)を付した「COC−C
V01」及び「COC−CV02」の商品を販売したことが認められる。
イ これに対し被告は,(1)原告がユニーに納品した品番「COC−CV01」
及び「COC−CV02」の商品にどのような商標が付されていたかは不
明である,(2)原告のユニーあての請求書は,伝票番号や明細事項が物品受
領書及び納品書(控)と一致しない上,上記請求書記載の請求額及び支払
明細書の合計金額がいずれも異なることからすると,ユニーがそのような
取引をしたとは考えられない,(3)原告ホームページの平成27年(201
5年)9月7日時点の「ブランド紹介」ページ(乙18)及び同月8日時
点での「お知らせ」ページ(乙19)には,本件商標に係るブランドの掲
載はないことに照らすと,要証期間において,原告が本件商標に係るブラ
ンドを展開していなかったことが強く推認されるなどとして,原告がユニ
ーに対し本件使用商標を付した「COC−CV01」及び「COC−CV
02」を販売した事実は存在しない旨主張する。
しかしながら,上記(1)の点については,前記ア認定のとおり,原告が平
成26年10月18日にユニーに納品した「COC−CV01」及び「C
OC−CV02」の商品は,甲127の2,128の2のPDFデータに
掲載された「COCO」の欧文字を付した各トートバッグの画像の商品と
同一の商品であることが認められる。
また,被告主張の上記(2)及び(3)の事情があったとしても,上記認定を左
右するものではない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
(3) 前記(1)及び(2)の認定事実によれば,原告は,平成26年4月28日,ミ
ラクル社から,「COCO」の欧文字からなる標章(別紙2)を付したトー
トバッグである本件4商品(品番「COC−BGT01」,「COC−BG
T02」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」)を輸入したこ
と,原告は,同年10月14日,ユニーに対し,本件4商品のうち,「CO
C−CV01」及び「COC−CV02」の商品を販売したことが認められ
る。
そして,原告による「COCO」の欧文字からなる標章(別紙2)を付し
た本件4商品の輸入及び本件4商品のうちの「COC−CV01」及び「C
OC−CV02」の商品の販売は,商標法2条3項1号の「商品に標章を付
したもの」の輸入及び譲渡に該当するものと認められる。
また,本件4商品に付された「COCO」の欧文字からなる標章(別紙2
参照)は,「COCO」の欧文字から構成され,本件商標(別紙1)とは書\n体が異なるが,本件商標と社会通念上同一の商標であることが認められる。
そうすると,原告は,本件商標の通常使用権者であった原告が,要証期間
内に,日本国内において,本件審判請求に係る指定商品である第18類「か
ばん」を輸入及び販売することによって,本件商標と社会通念上同一の商標
の使用をしていることを証明したものと認められる。
したがって,原告主張の取消事由は理由がある。
◆判決本文
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2020.02. 7
令和1(行ケ)10078 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和2年1月28日 知的財産高等裁判所
商標権者または使用権者以外の使用について、審決は不使用と判断しましたが、知財高裁3部は、これを取り消しました。審決を確認したところ、審判段階では商標権者は答弁していませんでしたので、審決では「使用」に関して、実質判断がなされていません。
第4 被告の反論
・・・
上記の不使用取消審判制度の趣旨に鑑みれば,商標権者及び商標使用権者以
外の第三者による日本国内での使用を安易に商標権者又は商標使用権者による
使用と同視してはならず,かかる評価は極めて例外的かつ厳格に行う必要があ
る。具体的には,商標権者又は商標使用権者が,登録商標を付した商品の譲受人
が日本国内でこれを販売することを単に事実として認識していただけでは足り
ず,少なくとも商標権者又は商標使用権者が,第三者と締結する販売代理店契約
等に基づき第三者が商標権者を代理して日本国内で販売することを契約上認識
していることが必要であると解すべきである。
・・・
第5 裁判所の判断
・・・
証拠によれば,以下の事実を認定することができる。
(1) ランジュビオは,フランスに在住する日本人Aが運営するオンラインショッ
プであり,日本語で運営され,日本向けに商品販売を行っている。(甲7,38)
(2) Aは,氏名のアルファベット表記としてAを用いている。(甲40)
(3) 原告は,Aに対し,2013年(平成25年)から,本件商標を付した瓶や
スパチュラ(化粧品や料理に用いる「へら」)を含むさまざまな製品を販売し
てきた。この販売に当たり,原告は,A がランジュビオを運営していること
及びランジュビオが上記製品を日本で消費者向けに販売していることを認識し
ていた。(甲41)
(4) 本件要証期間中の2016年(平成28年)3月1日,原告はプラスチック
製の瓶及びガラス製の容器をAに販売した。(甲12,17,18)
(5) 本件要証期間中の同年2月から2018年(平成30年)8月までの間のラ
ンジュビオのウェブページには,原告製品である瓶やガラス製容器が販売商品
として掲載され,日本円で価格が表示されている。(甲21ないし26)\n
(6) 本件要証期間中の2016年3月のランジュビオのウェブページには,原告
製品であるスパチュラが販売商品として掲載され,用途の一つとして「お料理
に」と記載され,日本円で価格が表示されている。(甲19,20)\n
(7) 原告が販売する製品の本体又は包装には,本件商標が直接表示されるか,本件商標を表\示したタグ又はラベルが付されるかしている。(甲27,38,39の各枝番)
2 上記1の各事実を総合すると,原告は,ランジュビオに対し,日本において消
費者に販売されることを認識しつつ本件商標を付して使用立証対象商品を譲渡
し,ランジュビオは,本件要証期間中に,本件商標を付した状態で日本の消費者
に対して本件使用対象商品を譲渡した事実を推認することができるし,少なくと
も,ランジュビオが譲渡のための展示をしたことは明らかである。
かかる事実によれば,本件商標は,本件要証期間内に,商標権者である原告に
よって,日本国内で,使用立証対象商品に,使用されたものと評価することがで
きる。
3 被告の主張について
(1)被告は,商標権者が商標の使用をしたというためには,商標権者が,登録商
標を付した商品の譲受人が日本国内でこれを販売することを単に事実として
認識していただけでは足りず,少なくとも商標権者が,第三者と締結する販売
代理店契約等に基づき第三者が商標権者を代理して日本国内で販売すること
を契約上認識していることが必要である旨主張する。
しかしながら,商標権者が,日本国内で販売されることを認識しつつ商標を
付した商品を譲渡し,実際に,その商標が付されたまま当該商品が日本国内で
販売されたのであれば,日本国内における上記商標の使用(商標を付した商品
の譲渡)は,商標権者の意思に基づく「使用」といえるから,それ以上に,被
告のいう「契約上」の「認識」なるものを要求する根拠はないというべきであ
る。したがって,被告の主張は失当である。
◆判決本文
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2020.01.24
平成31(行ケ)10036 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和元年9月18日 知的財産高等裁判所
知財高裁3部は、不使用とした審決を取り消しました。
ア まず,上記各書証の成立の真正についてみると,原本で提出されている
もの(甲62から64まで,66,71)と写しが原本として提出されて
いるもの(甲21,29から38まで,40,43,45,49,51,
52,65,67から70まで)とが存在する。そして,信用性の点につ
き別途の検討を要するとしても,その記載内容や外観,この点に関する本
件審判手続の証人尋問におけるKの供述内容(甲58)によれば,当該各
書証の名義人として表示された者の意思に基づいて当該各書証が作成され\nたこと,すなわち各書証の成立の真正(写しを原本として提出する書証に
ついてはその原本の存在も含む。)が認められる。
イ これに対し,被告は上記のとおり各書証の成立の真正を争うものの,被
告自身が名義人であるなど,被告がその作成過程を認識し得る書証は含ま
れておらず,当該各書証に名義人として表示された特定の作成者の意思に\n基づかずに当該各書証が作成されたことについて具体的な事実関係を主張
するものではない。むしろ,被告の主張は,各書証の作成名義ではなく,
その作成時期や記載内容の信用性を争うものである(前記第4の2(3)参
照)。そうすると,当該各書証の成立の真正に関する被告の主張は採用で
きず,前記アの通り,前記(1)にみた各書証の成立の真正が認められる。
(3)次に,書証の信用性について検討する。
ア 前提として,各書証の作成経過についてみると,Kは,本件審判手続の
証人尋問(甲58)において,建設会社の従業員を辞めて事業を始める際
に,原告に相談したところ,原告から本件商標の使用を許されたため,平
成28年1月末頃から,「アンドホーム」の名称で,客から注文を受けて
建物の設計と建築をする住宅の事業を始めたこと,「アンドホーム」の名
称で,少なくとも3件の契約をしたこと,その3件の契約は,Kが,名刺
を渡して自己紹介をした上で,その注文者らと直接やりとりをしながら,
何度も資金計画表や建築図面等を修正して注文者らに提案し,最終的に契\n約書を交わして契約を締結したこと,上記建築図面は,K自らがラフな図
面を描いた上で他の設計士に依頼して作ってもらったこと,上記資金計画
表は全てKが作成したこと,資金計画表\の「建物の設計申請費用」とは,\n建築図面を作って市の検査に出すための費用であること,同表に記載され\nている「地盤改良工事費用」は,地盤調査費用及びその調査の結果土地が
軟らかいことが判明した場合に必要となる改良工事の費用が計上されてい
ること,資金計画表の「建物工事費」及び消費税と,「建物付帯工事」費\n用の合計額から,先にもらっている「建物契約印紙費用」を引いて,「ア
ンドホーム契約値引き(役員承認)」を引くと,契約書の請負代金額とな
ること(なお,建物印紙の金額を足すかのような供述をするが,文脈に照
らし言い間違いであることは明らかである。),地盤調査は東昇技建に依
頼して行ってもらったこと,平成28年6月9日に「アンドホーム」から
「シンプルハウス」に名前を変えて法人化したこと,契約をした3件につ
いてはいずれも建築工事を完了したことを供述する。
また,Kは,上記尋問において,建築確認申請書については,「アンド\nホーム」で出したか「シンプルハウス」で出したかは今手控えがないので
分からないとしつつも,平成28年6月9日以降,銀行との関係では,
「アンドホーム」で出した事前審査関係書類をシンプルハウス名義のもの
に差し替えるなどしたが,役所の関係の申請等は現場監督がしていたので\n分からないなどという趣旨の供述をする。
そして,Kは,陳述書(甲19,50)においても,概ね同趣旨の供述
をしている。
イ 工事請負契約1に係る確認済証及びその添付書類一式(甲59)及び同
契約に係る建築計画概要書(甲60)は,行政官庁に提出され,行政官庁
において保管されていた文書の写しであるから,当該行政官庁に対して行
った手続の内容に関する証拠としては信用性が高いといえるところ,これ
によれば,平成28年6月9日の建築確認申請の際にKが営業所名を「ア\nンドホーム」として手続をし,同月15日に営業所名を「株式会社シンプ
ルハウス」に変更する手続をしたことが認められる。かかる事実は,前記
アのKの供述内容のうち,Kが,平成28年6月9日に「アンドホーム」
から「シンプルハウス」に名前を変えて法人化したが,それまでの間は
「アンドホーム」の名称で建物の建築等の事業を行っていたという,最も
重要な部分を裏付けるものである。
そうすると,前記アのKの供述内容のうち,「アンドホーム」の名称で
の契約締結やその契約において提供した役務等に係る点については,上記
のとおり,重要な点において裏付けが存する上,その供述内容全体も,合
理的なものであって不自然な点は存しないから,基本的には信用できると
いうべきである。
そして,本件では,工事請負契約1に関する契約書の写し(甲70)及
び工事請負契約3に関する契約書の原本(甲71)が提出されているとこ
ろ,これらの各契約書の記載,特に注文者や建築時期等の記載は,上記工
事請負契約1に関する確認済証及び建築計画概要書の記載並びに工事請負
契約3に係る建物の登記事項証明書(甲56)及びその底地である土地の
登記事項証明書(甲55)といった各種公的書類の記載と合致しており,
少なくともこれらの契約が存在することが裏付けられている。
また,工事請負契約1及び3に関しては,契約の締結経過や役務の内容
に関する書証として,前記(1)ア及びウにみた各書証も提出されているとこ
ろ,その作成時期及び記載内容は,上記契約書やKの供述と概ね合致して
いる(例えば,工事請負契約書1及び3の工事請負代金についてみると,
工事請負契約書1の代金は,甲38記載の建物工事費にKの供述する計算
方法を適用したものと合致し,また,工事請負契約書3の代金も,同様の
計算方法を適用することにより,甲52の代金と概ね合致する。契約日に
近接する資金計画表は提出されていないが,これをもって本件において信\n用性が損なわれるものではない。また,工事請負契約3に係る地盤調査報
告書によれば,地盤改良工事は不要とされるところ,かかる地盤調査後に
作成された資金計画表(甲52)においても,なお地盤改良工事費用とし\nて7万9920円が計上されていることは,同書面における地盤改良工事
費用には,地盤調査の費用が含まれていることを裏付けるといえる。)。
注文者1及び3の陳述書(甲62,66)における陳述内容もこれに沿う
ものである。
なお,これらの各書証にはマスキングされている箇所も存在するもの
の,施工面積や敷地面積,把握できる建築場所等の記載を対照すると,各
資金計画表(甲30,31,33から35まで,38,43,45),各\n建築図面(甲29,32,36,37,40),保証書(甲64)が工事
請負契約1に関する書面であり,各資金計画表(甲51,52),保証書\n(甲69)及び地盤調査報告書(甲49)が工事請負契約3に関する書面
であると認められる。
以上によれば,少なくとも,工事請負契約1及び3に関する各工事請負
契約書(甲70,71),各資金計画表(甲30,31,33から35,\n38,43,45,51,52。以下,全てを指して「本件資金計画表」\nという。),各建築図面(甲29,32,36,37,40),各保証書
(甲64,69)及び地盤調査報告書(甲49)については,Kの供述又
は陳述(甲19,49,58)と相まってその信用性が認められる。ま
た,注文者らの陳述書(甲62,66)についても,Kの供述及び陳述並
びに上記各書証と整合するものであるから,信用性が認められる。
(4) 被告の主張
ア 被告は,資金計画表や建築図面の注文者又は宛先がマスキングされてい\nることから証拠としての関連性がないと主張するが,工事請負契約1及び
3に関するマスキングされた各書証が,これらの契約に関する書面である
と認められることは,前記(3)イで説示したとおりである。また,被告は,
写しが原本として提出されていることも問題とするが,写しであっても成
立の真正及び信用性が認められることは,前記(2)ア及び(3)イで説示したと
おりである。
イ 被告は,資金計画表に書き込みがないことをもってねつ造であると主張\nするが,打ち合わせにおいて同表に書き込むことが打ち合わせの内容を記\n録する唯一の方法であるとはいえず,本件事情の下で,同表の信用性に疑\nいを抱かせるものではない。
ウ 被告は,原告が,当初,注文者の氏名等をマスキングしていたことをも
って原告の提出する書証のねつ造を主張するが,注文者らと原告とは,K
を介した希薄な関係しかないことに照らすと,原告が注文者らの個人情報
の開示を躊躇することも理解できる。本件においては,最終的に工事請負
契約1及び3についてマスキングを外した書証が提出され,各種公的書類
の記載等に照らし,各書証の成立の真正及び信用性が認められることは,
既に説示したとおりである。
エ 被告は,Kが要証期間に建築事務所として登録していなかったこと,K
が建築工事中の看板に表示された標章についての供述を変遷させたこと,\nKが設計に関する供述を変遷させたことをもって,Kの本件審判手続の証
人尋問における供述及び陳述書の信用性を争う。しかしながら,Kは本件
審判手続において最初に提出した陳述書(甲19)の中で,当初から,設
計については一緒にやっている設計士がいること及び平成28年6月9日
になされた建築確認の申請の段階までは「アンドホーム」名で事業を行な\nっていたことを述べており,被告が指摘する証人尋問における供述の変遷
は,尋問におけるやりとりの中でそれを具体的に述べる際に,記憶の混乱
等が生じたものに過ぎないといえるから,Kの供述の信用性に疑いを生じ
させるものとまではいえない。また,協力する設計士がいたことに照らす
と,K自身が建築事務所として登録していなかったことは,Kが設計に関
与したとの供述の信用性に疑いを生じさせるものではない。
オ 被告は,原告提出の甲62から甲69の提出時期が遅いことなどをもっ
て,提出の直前に作成されたものであるなどと主張する。書証の早期提出
が望ましいことはもちろんであるが,原告と注文者1及び3との関係が希
薄であることは前記のとおりであり,本件審決で本件商標が取り消された
ことを受けて改めて協力を仰ぐなどしたとしても殊更に不合理であるとは
言い難い。なお,本件では,本件審判手続において提出されたKの陳述書
(甲19)においても言及されていた確認済証及びその付属書類一式が,
本件訴訟において甲59として原本で提出されて取り調べられており,そ
の記載内容が,Kの供述の最も重要な部分を裏付けることは前記のとおり
である。
カ 各書証の信用性を争うその他の主張も,信用性判断に関する上記認定を
左右するものではない。
したがって,各書証の信用性に関する被告の主張はいずれも採用でき
ない。
(5) 以上の次第で,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めら
れる。
ア Kは,原告から本件商標の使用許諾を受け,平成28年1月頃から「ア
ンドホーム」との名称を用いて,現場監督ができるもう一人の者ととも
に,建築等の事業を開始した。(甲19,58)
イ Kは,平成28年4月7日,注文者1との間で,建物の建築工事を内容
とする工事請負契約1を締結し,同年9月20日頃,建物を完成させた。
かかる契約の締結の際,Kは,注文者1との間で,「アンドホーム」を請
負業者とする工事請負契約書1(請負代金額合計1302万3192円)
を作成して,注文者1に交付した。(甲58,60,70)
ウ また,Kは,工事請負契約1に関して,土地を探すところから協力し,
少なくとも平成28年3月2日頃から同年5月14日頃にかけて,建物の
デザインや設計についても注文者1と打ち合わせを複数回にわたって行
い,金銭面を含めて注文者1の要望を建築工事に反映させた。かかる打ち
合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が付された建築\n費用合計代金(3300万円台から3600万円台の金額である。)及び
その内訳等を示す資金計画表(甲30,31,33から35,38,4\n3,45)や,建物の平面図や立面図が記載された建築図面を,打ち合わ
せを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者1に示すなどし
た。
上記資金計画表のうち,作成日を平成28年3月23日以降とするもの\nについては,その右下に「◎土地契約時は土地手付け現金100万円+印
紙代…をご準備下さい。」,「◎建物契約時は建物手付け現金10万円+
印紙代1万円…をご持参で当社にお越し下さい。」,「◎土地決済時に建
物着手金・上棟金として,1000万円を当社にお振り込み頂きま
す。」,「◎最終の建物お引き渡し時に,残金を現金もしくはお振り込み
頂きます。」などと記載されている。
(甲29から38,40,43,45,58,62)
エ Kは,平成28年4月24日,注文者3との間で,建物の建築工事を内
容とする工事請負契約3を締結し,同年10月頃,建物を完成させた。か
かる契約の締結の際,Kと注文者3は,「アンドホーム」を請負業者とす
る工事請負契約書3(請負代金額合計1241万3270円)を作成して
注文者3に交付した。(甲56,58,71)
オ また,Kは,工事請負契約3に関し,ある程度土地が決まっている段階
で関与し始めて,少なくとも平成28年3月30日頃から同年5月29日
頃にかけて,建物のデザインや設計についても注文者3と打ち合わせを複
数回にわたって行い,金銭面を含めて注文者3の要望を建築工事に反映さ
せた。
かかる打ち合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が\n付された建築費用合計代金(2600万円台から2700万円台の金額で
ある。)及びその内訳等を示す資金計画表(甲51,52)や建築図面\nを,打ち合わせを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者3に
示すなどした。
(甲51,52,56,58,66,71)
カ Kは,工事請負契約1及び3に関して,東昇技建に対し,地盤の調査を
依頼して,これを行わせた上で,その調査結果を注文者1及び3に説明し
た。(甲19,50,58,62,64,66,69)
キ Kは,平成28年6月9日頃に株式会社シンプルハウスを設立し,「ア
ンドホーム」との名称の使用をやめて,同月15日には工事契約1にかか
る建築確認申請の工事施工者を,同社へと変更した。(甲19,58,5\n9,60)
2 取消事由2(Kによる本件商標の使用についての判断の誤り)について
原告は,Kが,前記1(5)カのとおり東昇技建に依頼して地盤の調査を行い,
同ウ及びオ記載の本件資金計画表を注文者1及び3に交付したことが商標法2\n条3項8号に該当し,「地質の調査」の役務について,本件商標を使用した
(商標法50条2項)と主張するので,この点について検討する。
(1) まず,Kが,取消対象役務のひとつである「地質の調査」を提供したか否
かについてみると,Kは,前記1(5)カのとおり,工事請負契約1及び3に関
して,東昇技建に依頼して地盤調査を行うなどしている。
そして,前記1(5)イ及びエのとおり,Kは,「アンドホーム」の名称にて
工事請負契約1及び3を締結しているところ,これらの契約の前後に注文者
らに対して示した本件資金計画表において地盤改良工事費用の中に地盤調査\n費用が含まれており(前記1(3)イ参照),当該費用を含めた建築費用合計代
金の全額をKに支払うべきこととされて,現実に注文者らに対応したのは主
としてKであったことなどに照らすと,Kは,工事請負契約1及び3の締結
とともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものと
認められる。
そうすると,Kが東昇技建に依頼して行った地盤調査は,Kが注文者1及
び3から請け負った債務の履行としてされたものであるといえるから,Kが
「地質の調査」を提供したと認められる。
(2)次に,商標法2条3項8号の該当性についてみる。
本件では,Kが「地質の調査」の役務を提供することは,本件資金計画表\nの「地盤改良工事費用」「地盤調査の結果により工事費用が変動いたしま
す。」などとの記載に表れており,本件資金計画表\は,上記役務に対応して
作成された見積書としての書面であるといえるから,上記役務に関する「取
引書類」に当たる。そうすると,前記1(5)ウ及びオのとおり,Kが,本件資
金計画表に,本件商標を付して,その作成日付頃(平成28年3月2日頃か\nら同年5月29日頃),それぞれ注文者1及び3に交付した行為は,商標法
2条3項8号所定の使用に該当する。
(3)これに対し,被告は,Kが本件商標を使用して工事請負契約1及び3を請
け負った後,実際に建築工事を開始した時点では,「シンプルハウス」へと
屋号を変更していたことなどをもって,取消対象役務を「アンドホーム」の
名称にて提供していないと主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,Kは,工事請負契約1及び3の締結と
ともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものであ
るところ,Kは,これらの契約に関して,平成28年3月2日頃から同年5
月29日頃にかけて,本件資金計画表を,注文者1及び3に交付しているか\nら,当該交付の時点で「アンドホーム」との標章に対する業務上の信用が発
生したといえる。その後,Kが,その事業について「シンプルハウス」との
名称に変更したとしても,かかる信用が,直ちに保護に値しなくなるもので
はない。また,少なくとも工事請負契約3に係る地盤調査は,屋号変更前で
ある同年5月25日に行われたことが明らかである。
したがって,Kは,「アンドホーム」との標章を取消対象役務のひとつで
ある「地質の調査」について使用したといえる。
(4) また,被告は,Kによる本件商標の使用が名目的な使用であると主張す
る。しかしながら,不使用取消に言及する被告から原告に対する連絡は平成
29年3月24日付けであって,Kが「アンドホーム」との標章を使用した
平成28年1月から同年6月頃までの期間よりも相当遅い時期であること
(甲15)や,前記認定のKによる本件商標の使用態様に照らすと,Kによ
る本件商標の使用が名目的な使用であるとまでは認められず,被告の主張は
採用できない。
(5)したがって,通常使用権者であるKが,要証期間内である平成28年3月
2日頃から同年5月29日頃にかけて,日本国内において,取消対象役務の
ひとつである「地質の調査」について,本件商標を使用した(商標法50条
2項)と認められる。
◆判決本文
関連事件は下記です。
◆平成31(行ケ)1003
◆平成31(行ケ)10034
◆平成31(行ケ)10033
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2019.10. 2
平成31(行ケ)10036 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和元年9月18日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判にて不使用と認定されましたが、知財高裁3部は、これを取り消しました。
(5)以上の次第で,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア Kは,原告から本件商標の使用許諾を受け,平成28年1月頃から「アンドホーム」との名称を用いて,現場監督ができるもう一人の者とともに,建築等の事業を開始した。(甲19,58)
イ Kは,平成28年4月7日,注文者1との間で,建物の建築工事を内容
とする工事請負契約1を締結し,同年9月20日頃,建物を完成させた。
かかる契約の締結の際,Kは,注文者1との間で,「アンドホーム」を請
負業者とする工事請負契約書1(請負代金額合計1302万3192円)
を作成して,注文者1に交付した。(甲58,60,70)
ウ また,Kは,工事請負契約1に関して,土地を探すところから協力し,
少なくとも平成28年3月2日頃から同年5月14日頃にかけて,建物の
デザインや設計についても注文者1と打ち合わせを複数回にわたって行
い,金銭面を含めて注文者1の要望を建築工事に反映させた。かかる打ち
合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が付された建築\n費用合計代金(3300万円台から3600万円台の金額である。)及び
その内訳等を示す資金計画表(甲30,31,33から35,38,4\n3,45)や,建物の平面図や立面図が記載された建築図面を,打ち合わ
せを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者1に示すなどし
た。上記資金計画表のうち,作成日を平成28年3月23日以降とするもの\nについては,その右下に「◎土地契約時は土地手付け現金100万円+印
紙代…をご準備下さい。」,「◎建物契約時は建物手付け現金10万円+
印紙代1万円…をご持参で当社にお越し下さい。」,「◎土地決済時に建
物着手金・上棟金として,1000万円を当社にお振り込み頂きま
す。」,「◎最終の建物お引き渡し時に,残金を現金もしくはお振り込み
頂きます。」などと記載されている。
(甲29から38,40,43,45,58,62)
エ Kは,平成28年4月24日,注文者3との間で,建物の建築工事を内
容とする工事請負契約3を締結し,同年10月頃,建物を完成させた。か
かる契約の締結の際,Kと注文者3は,「アンドホーム」を請負業者とす
る工事請負契約書3(請負代金額合計1241万3270円)を作成して
注文者3に交付した。(甲56,58,71)
オ また,Kは,工事請負契約3に関し,ある程度土地が決まっている段階
で関与し始めて,少なくとも平成28年3月30日頃から同年5月29日
頃にかけて,建物のデザインや設計についても注文者3と打ち合わせを複
数回にわたって行い,金銭面を含めて注文者3の要望を建築工事に反映さ
せた。
かかる打ち合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が\n付された建築費用合計代金(2600万円台から2700万円台の金額で
ある。)及びその内訳等を示す資金計画表(甲51,52)や建築図面\nを,打ち合わせを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者3に
示すなどした。
(甲51,52,56,58,66,71)
カ Kは,工事請負契約1及び3に関して,東昇技建に対し,地盤の調査を
依頼して,これを行わせた上で,その調査結果を注文者1及び3に説明し
た。(甲19,50,58,62,64,66,69)
キ Kは,平成28年6月9日頃に株式会社シンプルハウスを設立し,「ア
ンドホーム」との名称の使用をやめて,同月15日には工事契約1にかか
る建築確認申請の工事施工者を,同社へと変更した。(甲19,58,5\n9,60)
2 取消事由2(Kによる本件商標の使用についての判断の誤り)について
原告は,Kが,前記1(5)カのとおり東昇技建に依頼して地盤の調査を行い,
同ウ及びオ記載の本件資金計画表を注文者1及び3に交付したことが商標法2\n条3項8号に該当し,「地質の調査」の役務について,本件商標を使用した
(商標法50条2項)と主張するので,この点について検討する。
(1) まず,Kが,取消対象役務のひとつである「地質の調査」を提供したか否
かについてみると,Kは,前記1(5)カのとおり,工事請負契約1及び3に関
して,東昇技建に依頼して地盤調査を行うなどしている。
そして,前記1(5)イ及びエのとおり,Kは,「アンドホーム」の名称にて
工事請負契約1及び3を締結しているところ,これらの契約の前後に注文者
らに対して示した本件資金計画表において地盤改良工事費用の中に地盤調査\n費用が含まれており(前記1(3)イ参照),当該費用を含めた建築費用合計代
金の全額をKに支払うべきこととされて,現実に注文者らに対応したのは主
としてKであったことなどに照らすと,Kは,工事請負契約1及び3の締結
とともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものと
認められる。
そうすると,Kが東昇技建に依頼して行った地盤調査は,Kが注文者1及
び3から請け負った債務の履行としてされたものであるといえるから,Kが
「地質の調査」を提供したと認められる。
(2) 次に,商標法2条3項8号の該当性についてみる。
本件では,Kが「地質の調査」の役務を提供することは,本件資金計画表\nの「地盤改良工事費用」「地盤調査の結果により工事費用が変動いたしま
す。」などとの記載に表れており,本件資金計画表\は,上記役務に対応して
作成された見積書としての書面であるといえるから,上記役務に関する「取
引書類」に当たる。そうすると,前記1⑸ウ及びオのとおり,Kが,本件資
金計画表に,本件商標を付して,その作成日付頃(平成28年3月2日頃か\nら同年5月29日頃),それぞれ注文者1及び3に交付した行為は,商標法
2条3項8号所定の使用に該当する。
(3)これに対し,被告は,Kが本件商標を使用して工事請負契約1及び3を請
け負った後,実際に建築工事を開始した時点では,「シンプルハウス」へと
屋号を変更していたことなどをもって,取消対象役務を「アンドホーム」の
名称にて提供していないと主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,Kは,工事請負契約1及び3の締結と
ともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものであ
るところ,Kは,これらの契約に関して,平成28年3月2日頃から同年5
月29日頃にかけて,本件資金計画表を,注文者1及び3に交付しているか\nら,当該交付の時点で「アンドホーム」との標章に対する業務上の信用が発
生したといえる。その後,Kが,その事業について「シンプルハウス」との
名称に変更したとしても,かかる信用が,直ちに保護に値しなくなるもので
はない。また,少なくとも工事請負契約3に係る地盤調査は,屋号変更前で
ある同年5月25日に行われたことが明らかである。
したがって,Kは,「アンドホーム」との標章を取消対象役務のひとつで
ある「地質の調査」について使用したといえる。
(4) また,被告は,Kによる本件商標の使用が名目的な使用であると主張す
る。しかしながら,不使用取消に言及する被告から原告に対する連絡は平成
29年3月24日付けであって,Kが「アンドホーム」との標章を使用した
平成28年1月から同年6月頃までの期間よりも相当遅い時期であること
(甲15)や,前記認定のKによる本件商標の使用態様に照らすと,Kによ
る本件商標の使用が名目的な使用であるとまでは認められず,被告の主張は
採用できない。
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2019.07.21
平成30(行ケ)10179 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和元年7月11日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判が請求され、商標権者は、カタログギフトのカタログを提出しました。特許庁、裁判所とも、35類の小売業における使用と認めました。
前記1によると,被告のカタログオーダーギフト事業においては,「受取手」
に被告が発行したギフトカタログが送られ,「受取手」は被告に同ギフトカタログに
掲載された各種の商品の中から選んで商品を注文し,被告から商品を受け取り,そ
の商品の代金は,「贈り主」から被告に支払われるのであるから,被告は,「贈り主」
との間では,「贈り主」の費用負担で,「受取手」が注文した商品を「受取手」に譲
渡することを約し,「受取手」に対しては,「受取手」から注文を受けた商品を引き
渡していると認められる。したがって,被告は,ギフトカタログに掲載された商品
について,業として,ギフトカタログを利用して,一般の消費者に対し,贈答商品
の譲渡を行っているものと認められるから,被告は,小売業者であると認められ,
小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供を行っているものと認められ
る。そして,上記便益の提供には,本件使用カタログが用いられているから,本件
使用カタログは,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」と認
められる。
(2)ア これに対し,原告は,被告の事業は,「贈り主」から「受取手」への贈
答の媒介又は代行であり,これによって「ギフトを通じて人と人とを結びつけ」る
という役務を提供している,「受取手」に対する商品の配送業務は,ギフトカタログ
の販売に付随するものであって,独立した商取引の対象となってないなどと主張す
る。
しかし,被告,「贈り主」及び「受取手」の間で行われる一連の取引の流れからす
ると,被告は,「受取手」に対し,「受取手」が被告に注文した商品を「贈り主」の
費用負担のもとに譲渡しているということができるのであって,これは,贈答の媒
介又は代行をしているということはできず,また,独立した商取引であると認めら
れ,「受取手」に対する商品の配送も単なる付随的なものということはできないから,
原告の上記主張を採用することはできない。
なお,被告がプレスリリースにおいて,被告の事業を「ギフトを通し人と人を結
びつけ」ると記載している(甲5)としても,被告の事業についての紹介(宣伝)
の文言であって,上記判断を左右するものではない。
イ 原告は,被告も,被告の事業において需要者が「贈り主」であることを
認めていると主張する。
しかし,被告は,被告の事業について,前記「第4 被告の主張」のとおり主張
しており,被告の事業の需要者は「贈り主」だけでなく「受取手」も需要者である
と主張している(被告が「贈り主」が需要者であると主張したからといって,「受取
手」も需要者であると主張することが妨げられる理由はない。)。そして,上記(1)の
とおり,被告の事業を全体的にみると,被告は,需要者である「受取手」に対し,
「受取手」が被告に注文した商品を「贈り主」の費用負担のもとに譲渡したものと
認められる。
ウ 上記(1)のとおり,被告の事業は,被告が「受取手」に対し,「受取手」
が注文した商品を譲渡しているということができるのであって,この注文が「贈り
主」の費用負担のもとにギフトカタログを利用して行われ,また,ギフトカタログ
が二次流通することがあるとしても,上記のとおり小売の業務における便益の提供
が行われているということができるものである。
また,被告の事業が資金決済に関する法律3条1項2号の前払式支払手段の発行
に当たるとしても,上記のとおり,小売の業務における便益の提供が行われている
ということができるのであり,前払式支払手段の発行がされているかどうかは上記
判断を左右するものではない。
(3)前記1によると,本件要証期間内である平成29年に発行された被告の本
件使用カタログには,本件使用カタログ標章が表示されているところ,その中のや\nやデザイン化した「MUSUBI」の文字(本件使用商標)は,本件商標と社会通
念上同一と認められる。そして,前記1によると,本件使用カタログには本件使用
商品1及び2が掲載され,被告は,同カタログに掲載された本件使用商品1及び2
を,それぞれ同年12月2日又は同年11月27日までに,「受取手」に送付したこ
とが認められるところ,本件使用商品1は商品「家具」の範ちゅうに属する商品で
あり,本件使用商品2は商品「台所用品」の範ちゅうに属する商品であることが認
められる。
そうすると,被告は,本件要証期間内に日本国内において,本件審判の請求に係
る指定役務中「家具・金庫及び宝石箱の小売又は卸売の業務において行われる顧客
に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務にお
いて行われる顧客に対する便益の提供」について,「役務の提供に当たりその提供を
受ける者の利用に供する物」に当たる本件使用カタログに本件商標と社会通念上同
一と認められる本件使用商標を付し,これを用いて小売の業務において行われる顧
客に対する便益の提供という役務を提供したと認めることができる。この行為は,
商標法2条3項3号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に
標章を付する行為」及び同項4号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用
に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当するので,被
告は,本件要証期間内に,日本国内において,本件審判の請求に係る指定役務につ
いて本件商標の使用をしていることを証明したと認められる。
したがって,原告の請求は理由がないことになる。
◆判決本文
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2019.07. 9
平成30(行ケ)10139 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和元年6月20日 知的財産高等裁判所
商標権者は、電動スクーターや二輪自転車についての使用を主張しましたが、知財高裁2部は、取消対象の指定商品ではないとして、取消審決を維持しました。
本件審判請求は,本件商標の指定商品中「自動車並びにその部品及び付属品」に
ついてされたものであるところ,原告が,「自動車並びにその部品及び付属品」につ
いて,本件審判請求の登録日である平成28年10月3日の前3年以内に本件商標
を使用した事実を認めるに足りる証拠はないし,また,使用していないことについ
て正当な理由があったとも認められない。
したがって,本件商標登録は,その指定商品中「自動車並びにその部品及び付属
品」について取消しを免れないというべきである。
この点,原告は,商標登録の不使用取消審判の請求が認められるのは,請求に係
る指定商品又は指定役務の全部について登録商標の使用がされていない場合である
ところ,原告は,電動スクーターや二輪自転車については本件商標を使用している
と主張する。しかし,商標登録の不使用取消審判の請求は,当該商標の指定商品中
の任意の指定商品についてすることができる。そして,その請求がされた指定商品
のいずれかについて商標の使用が立証されない限り,請求された指定商品すべてに
ついて商標登録が取り消される。しかるところ,本件審判請求は,指定商品を「自
動車並びにその部品及び付属品」としてされたのであるから,「自動車並びにその部
品及び付属品」のいずれかについて商標の使用が立証されない限り,本件審判請求
に係る上記指定商品すべてについて商標登録の取消しを免れない。原告が,電動ス
クーターや二輪自転車について本件商標を使用しているとしても,そのことは,上
記判断を左右するものではない。
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2019.02.20
平成30(行ケ)10059 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成31年1月29日 知的財産高等裁判所(2部)
商標「QRコード」について、使用されていたとした審決が維持されました。争点は、商標的使用か、登録商標との同一か等です。
(2)ア 前記(1)アで認定した78頁最下部部分の本件太字部分の記載と本件説
明部分の記載を併せて読むと,本件太字部分のうちの「QRコード(R)リーダー”Q”」
又は「”Q”」の部分が商品名を記載したものであり,本件説明部分が上記商品の機
能等を説明した記載であると認められる。\nそして,上記事実に,本件カタログは,被告の総合カタログであり,被告の商品
の紹介等がされていること,78頁最下部部分には,「ダウンロード(無料)はこち
らから!」との記載とQRコード規格の2次元コードのラベルの記載があり,上記
商品「QRコード(R)リーダー”Q”」又は「”Q”」のダウンロードの案内がされている
ことを併せ考慮すると,78頁最下部部分は,本件商品2に含まれる上記商品「Q
Rコード(R)リーダー”Q”」又は「”Q”」の広告であると認められる。
なお,前記(1)アで認定した78頁最下部部分の記載からすると,上記商品「”Q”」
は,QRコード規格の2次元コードの読み取り等の機能を有するプログラムソ\フト
ウェアであるから,本件商標の指定商品のうちの「電子応用機械器具及びその部品」
に含まれる。
イ 前記(1)アのとおり,使用商標3は,本件商品2の広告である78頁最下
部部分に記載されているところ,前記(1)イのとおり,78頁最下部部分が掲載され
た本件カタログは,要証期間内である平成27年3月6日に本件展示会の会場で頒
布されている。
ウ 次に,使用商標3が、本件商品2についての自他商品等を識別するもの
として使用されているかどうかを検討する。
(ア) 後掲証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
a 株式会社技術評論社が発行する「最新パソコン用語事典2006−’\n07」及び「最新パソコン・IT用語事典2010−’11」には,「QRコード」\nの項目に,「株式会社デンソーウェーブが開発した,2次元コード(縦と横の両方\n向に意味を持たせてある符号)の一種。・・・1999年にJIS,2000年に
ISOの国際規格として制定されている。」との記載がある(甲24,25)。
b 株式会社秀和システムが発行する「最新標準パソコン用語事典20\n13−2014年版」には,「QRコード」の項目に,「1994年に自動車メー
カーでもあるデンソー社が開発した,バーコードに代わる2次元のマトリクス式コ\nードの1つ。・・・1999年にはJIS X0510に,2000年にはISO
/IEC18004として標準化された。」との記載がある(甲26)。
c 被告は,「QRコードについては(株)デンソーウェーブの登録商標\nです。」との表示をしているほか,「QRコード」には「○R 」の表示を付している\n(甲81,甲92の1,甲98の1,乙1,27)。また,被告以外の会社の開設
した複数のウェブサイトにおいても「QR Code」又は「QRコード」につい
て被告の登録商標である旨の表示がされている(乙23の1〜5)。さらに,原告の\n広告においても,「QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。」との\n記載がある(乙24〜26)。
d スマートフォン用のQRコードリーダー等のアプリのアイコンとして,図形と,その下に「QRコード」,「QR Code」又は「QR code」
と記載されたものが多数存在する(以下,同アイコンを「甲52アイコン」と総称
する。)ところ,甲52アイコンのうちの文字部分は,いずれも,何ら特徴のない白
抜きの文字である(甲52の2)。
e 平成18年8月22日付けの新聞には,「QRコード」は,カメラ付
き携帯電話の普及に伴い,爆発的に普及したものであり,現在は被告の登録商標で
あるとの記事がある(甲70)。
(イ) 前記(ア)の事実によると,「QR Code」及び「QRコード」は,2
次元コードの規格の一種であると認識されることがあるものと認められるが,他方,
被告は,本件商標登録を有しており,前記(ア)のとおり,「QRコードについては(株)
デンソーウェーブの登録商標です。」との表\示をしたり,「○R 」の表示を付して,\n商標登録を有していることを広く知らせており,また,前記(ア)のとおり,被告以外
の会社も,原告を含め,そのウェブサイトや広告において,「QR Code」又は
「QRコード」が被告の登録商標である旨の表示をしていることを考慮すると,「Q\nR Code」又は「QRコード」が常に2次元コードの規格の一種であるとのみ
認識されると認めることはできず,自他商品等の識別機能を発揮する態様で使用さ\nれることがあり得るというべきである。
(ウ) 使用商標3は,前記(1)ア(ア)のような態様で表示されているもので,\n他の記載とは独立して表示されている。そして,使用商標3は,「Q」の文字の右\n端の部分と「R」の文字の左端の部分が重なっており,僅かではあるが図形化され
ており,赤色で表示されているものであって,単に,商品名であると認識される「Q\nRコードリーダー”Q”」又は「”Q”」の説明として記載されているものと認めるこ
とはできず,上記商品についての識別標識として記載されているものと認められ,
本件カタログを見た需要者・取引者もそのように認識するものと認められる。
したがって,使用商標3は,本件商品2についての自他商品等の識別機能を有し\nていると認められる。
なお,甲52アイコンの各文字部分は,使用商標3とは表示態様が全く異なるか\nら,甲52アイコンの存在によって,使用商標3が自他商品等の識別機能を有しているという上記の判断が左右されるものではない。\n
(エ) 原告は,「QR コード」及び「QR Code」の文字からは,2
次元コードの規格の一種であるQRコード規格との認識しか生じ得ないことは,特
許庁が15例にも上る拒絶理由通知及び拒絶理由で一貫して認定していると主張す
るが,いずれも本件とは異なる事例についての特許庁の判断であり,使用商標3が
自他商品等の識別機能を有しているとの上記の判断が左右されるものではない。\nまた,原告は,「『QR Code』はデンソーウェーブの登録商標です。」との表\
示は,虚偽表示(商標法74条1号違反)であると主張するが,後記エのとおり,\n本件商標は,「QR Code」と社会通念上同一のものであるから,この表示が虚\n偽表示ということはできない。\n
(オ) 原告は,1)本件カタログに用いられている商標は「DENSO WAV
E」又は「デンソーウェーブ」である,2)使用商標3は,本件カタログのうち,Q
Rコード規格についての解説等をする頁で使用されており,被告の製品を紹介する場面で使用されていないから,一般の需要者・取引者からは,単に当該2次元コー
ドが「QRコード規格に基づいた2次元コード」であると理解されるにすぎず,自
他商品等の識別標識として理解されることはない,3)使用商標3,「ダウンロード
(無料)/はこちらから!」という記載及びQRコード規格の2次元コードの配置
からすると,使用商標3が本件商品2のアプリとの具体的関係において使用されて
いると理解することは不可能である,4)本件商品2は本件カタログの78頁のQR
コード規格等についての技術的な解説,紹介の中で隅に記載されているにすぎない
ことからすると,本件カタログが本件商品2を紹介するものではなく,本件商品2
の広告に該当しないと主張する。
しかし,既に認定,判断したとおり,使用商標3は,78頁最下部部分において,
本件商品2についての広告として使用されているものであり,このことは,本件カ
タログの商標として「DENSO WAVE」又は「デンソーウェーブ」が使用され\nていることや使用商標3が本件カタログの「基礎知識」の頁に記載されていること
によって妨げられるものではなく,また,前記(1)ア(ア)で判示した78頁最下部部分
の記載内容からすると,使用商標3は,本件商品2との具体的な関係において使用
されていることも明らかであるから,原告の上記主張はいずれも理由がない。
エ 次に,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるかどうかについ
て検討する。
(ア) まず,本件商標は,別紙1のとおり,「QR コード」及び「QR C
ode」を上下二段に配置した商標であり,上段の「コード」の部分は,下段の「C
ode」の部分を片仮名にしたものと理解されるから,「キューアールコード」の称
呼が生じ,また,QRコード規格の2次元コードの観念が生じる。
一方,使用商標3からも,「キューアールコード」の称呼と,QRコード規格の2
次元コードの観念が生じる。
このように,本件商標と使用商標3とは,称呼及び観念において共通する。
(イ) 次に,本件商標と使用商標3の外観を比較すると,使用商標3は,本
件商標の下段の「QR Code」とは,同一の文字綴りであり,上段の「QR
コード」とは,片仮名及びローマ字の文字表示を相互に変更するものであり,この点で共通性が認められるが,1)本件商標は,「QR コード」及び「QR Code」
の標準文字が上下二段に配置されているのに対し,使用商標3は,「QR Code」
のみから構成されている点,2)使用商標3は,「Q」の文字の右端の部分と「R」の
文字の左端の部分が重なっており,同重なり部分が,両文字の一部を兼ねているよ
うに 図形化されている点,3)使用商標3は,赤色で記載されている点で異なって
いる。
しかし,前記(ア)のとおり,「QR コード」は,「QR Code」の「Code」
の部分を片仮名にしたものと理解されるのであり,「QR コード」及び「QR C
ode」の称呼及び観念は同一であることからすると,上記1)の相違点の存在が,
使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与えるもの
ではないというべきである。
また,「Q」の文字と「R」の文字が重なった部分は僅かであり,双方の文字を独
立した文字として認識できること,図形化の程度も僅かであることからすると,上
記2)の相違点の存在が,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの
判断に影響を与えるものではないというべきである。
さらに,商標に色を付けても,通常,商標の同一性を失わせるような変更とはえ
いないから,上記3)の相違点の存在が,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与えるものではないというべきである。
(ウ) 以上からすると,使用商標3は本件商標と社会通念上同一であると認
められる。
(エ) この点について,原告は,本件商標上段の「QR コード」から下段
の「QR Code」以外のものを想起させるし,下段の「QR Code」から
上段の「QR コード」以外のものを想起させると主張するが,本件商標は,「QR
コード」と「QR Code」を上下段に配置した商標であって,前記ウのとお
り,「QR コード」及び「QR Code」が2次元コードの規格としても知られ
ていることを考慮すると,「QR コード」と「QR Code」からそれら以外の
ものを想起することは考え難いというべきである。このことは,被告が「QR コ
ード」と「QR Code」について商標登録出願をしていることによって左右さ
れるものではない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
オ 次に,本件商品2が商標法上の「商品」に当たるかどうかについて検討
する。
(ア) 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
a 被告の開設しているウェブサイトには,平成26年11月6日付け
で,以下の記載がある(甲61)。
(a) 「デンソーウェーブとレピカが資本・業務提携/QRコード(R)によ
るクラウドサービス『Q−revoTM』活用の第一弾として,/食品及び工業製品
の『トレーサビリティ』サービスの提供を開始」
(b) 「レピカは,子会社であるアララ株式会社を通じてスマートフォン
事業を手がけており,コンシューマー向けにQRコードをトリガーとしたAR(A
RAPPLI(アラプリ)』を展開しています。両社はこれまでにより精度の高いス
マートフォン向けQRコードリーダーアプリの開発において共同でプロジェクトを
行っており,今後更に両者のノウハウを活用してより付加価値の高い事業を展開し
ていくため,デンソーウェーブがレピカに出資することにしました。」\n
(c) 「両社は,今後,『Q−revo』および『QR Code Re
ader “Q”』を活用し,食品をはじめ,工業製品において,『トレーサビリテ
ィ』をキーワードに両社のノウハウを活かしたサービスを展開していきます。」
b payment naviのウェブサイトには,平成26年11月
10日付けで,以下の記載がある(乙16)。
(a) 「デンソーウェーブとレピカがQRコードによるクラウドサービス提供」\n
(b) 「両社では,提携の第一弾として,SQRC,フレームQRなど,
進化したQRコードの生成・配信,読み取り,データ蓄積を行うクラウドサーバと
『QR Code Reader “Q”』を活用した次世代型サービス『Q−re
vo』を開発。今後は,食品や工業製品において,『トレーサビリティ』をキーワー
ドに両者のノウハウを活かしたサービスを展開していく方針だ。」
(c) 「なお,具体的な売り上げ目標については,トレーサビリティシス
テムの検証を進め,サービスとして整った際,発表する方針だ。」\n
(イ) 商標法上の商品というためには,商取引の対象となり得ることが必要
であり,そのためには,必ずしも当該商品が有償で譲渡される必要はなく,当該商
品自体は無償で譲渡されるものであっても,当該商品の譲渡によって利益を得る仕
組みがあり,その仕組みの一環として,当該商品が無償で譲渡されるのであれば,
当該商品は交換価値を有し,商取引の対象となっていると認めることができるとい
うべきである。
前記(1)ア(ア)で認定した事実からすると,本件商品2は,無償でダウンロードでき
ることが認められるが,前記(ア)で認定したウェブサイトにおける記載からすると,
被告は,アララ社と共同で,本件商品2を活用したサービスを展開していく計画を
有していることが認められるところ,同サービスを利用するためには,本件商品2をスマートフォンにダウンロードしておく必要があるのであるから,本件商品2の
無償配布は,同サービスの展開に大きく寄与するものと考えられ,したがって,本
件商品2の無償配布は,本件商品2を利用したサービスを提供し,同サービスの提
供によって利益を得るというビジネスモデルの一環としてされたものと評価できる。
したがって,本件商品2には交換価値があるものと認められ,本件商品2は,商
取引の対象となり得るというべきである。
なお,このように,本件商品2を無償配布した上で,本件商品2を活用したサー
ビスを提供することにより利益を得るというビジネスモデルにおいても,本件商品
2を無償配布する際の商取引の対象は,あくまでも本件商品2であり,使用商標3
は,本件商品2の広告に付されたものであり,上記サービスの商標として使用され
たものではない。
カ 以上のとおり,被告は,本件商標と社会通念上同一であると認められる
使用商標3を付した,商標法上の「商品」に当たる本件商品2の広告を,要証期間
内に頒布したことが認められる。
キ 原告は,使用商標3は,197号商標の一部にすぎず,使用商標3のみ
が独立して認識されることはない,被告は本件QRアイコンについて商標の登録を
受けているから,本件商品2の識別標識となり得るのは本件QRアイコンのみであ
る,197号商標が登録された以降は,本件商品2について197号商標を表示す\nる行為は,専ら197号商標を使用するものであることから,本件パンフレットに
表示されている商標は,197号商標であって,使用商標3ではないなどと主張す\nる。
しかし,使用商標3は,前記(1)ア(ア)のとおり,本件カタログの78頁最下部部分
に記載されており,本件QRアイコンとは完全に独立していることは明らかである
から,197号商標が登録されているかどうかや本件QRアイコンについて商標登
録がされているかどうかにかかわらず,独立の商標として認識できるものである。
また,同一の商品の商標として,複数の商標を付することも認められるから,1
97号商標が登録された以降は,その一部である使用商標3を商標として使用でき
ないという理由はない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
ク 原告は,本件商品2に係る無料アプリは,アララ社が提供するものであって,被告が提供するものではないから,被告が,本件カタログにアララ社が提供
する本件商品2を掲載すると共に使用商標3を付して頒布したとしても,商標法5
0条1項の「使用」に該当することはないと主張する。
しかし,本件カタログにおける広告は,被告が,前記オで認定したビジネスモデ
ルの一環として行っているものであって,本件商品2はアララ社が提供するもので
あったとしても,前記認定の本件商標の「使用」の事実が左右されることはない。
◆判決本文
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2019.01. 7
平成30(行ケ)10103 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年12月20日 知的財産高等裁判所(3部)
BlogMagaとブロマガの二段併記の登録商標について、カタカナ表記のみを使用証明として提出しましたが、登録商標と同一ではないとして、特許庁にて取り消されました。知財高裁も同様の判断をしました。FC2が商標権者、ドワンゴが取消審判請求人です。二段併記でもそれしか読めない場合は、一方の使用でも登録商標の使用と認めてもらえますが、BlogMaga=ブロマガとしか読めないとまではいえないとの判断です。
本件商標は,前記第2の1(1)のとおり,ゴシック体風の「ブロマガ」
の片仮名とセンチュリー体風の「BlogMaga」の欧文字を上下2段
に配置した商標であり,上段と下段の間は文字の高さの半分程度の間隔が
あり,上段と下段のフォントの大きさは概ね同じで,上段より下段の方が
やや横幅が大きく構成されている。上段の「ブロマガ」部分からは,「ブロマガ」という称呼が生じる。また,下段の「BlogMaga」部分は,「Maga」が大文字の「M」で始まること,「dog」,「frog」のような「og」の語尾を持つ\n一般的な英語で「g」の発音を省略することはないこと,「Blog」は
ウェブログの省略語として浸透している「ブログ」を想起させることから,
全体として「ブログマガ」という称呼が生じるものと認められる。そうす
ると,本件商標からは,「ブロマガブログマガ」という称呼が生じるとい
える。
また,「ブロマガ」及び「BlogMaga」はいずれも造語であり,
特段の観念を生じるとは認め難く,本件商標からは特段の観念を生じない。
イ 他方,本件使用商標は「ブロマガ」の文字のみからなるものであるから,
本件商標とは使用する文字の一部が共通するものの,外観,観念及び称呼
のいずれについても同一とはいえない。
ウ 以上に照らせば,本件使用商標について,本件商標の「書体のみに変更
を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の
表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外\n観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標(本件商標)
と社会通念上同一と認められる商標」ということはできない。
エ また,原告は,原告のウェブサイトのURL中の「blomaga」の
文字の使用について,本件商標と「社会通念上同一の商標」の「使用」に
当たると主張するが,仮にURLにおける「blomaga」の使用が商
標法50条1項所定の「商標」の「使用」に当たるとしても,「blom
aga」は本件商標と外観,観念及び称呼のいずれにおいても同一とはい
えないことは本件使用商標と同様であるから,本件商標と「blomag
a」の文字からなる「商標」が「社会通念上同一」であるとは認められな
い。
(2) 原告の主張について
ア 原告は,欧文字の称呼については,特定の発音に固執せず,ある程度幅
のある発音を念頭に,日本における一般的な認識や連想等を含めて,総合
的に判断すべきであるとして,「HongKong」,「Ping-Pon
g」,「Sign」,「Foreign」のように「g」を発音しない例
がしばしば存在する一方,「KING KONG」では「G」を発音する
という風に日本で欧文字を読む際に「g」を発音する場合と発音しない場
合があること,2語からなる外来語や固有名詞等の略語の生成において各
語の冒頭の二拍ずつ取るのが基本であることから,本件商標の下段の「B
logMaga」部分は「ブロマガ」の称呼を生じると主張する。
しかし,原告が指摘する「g」を発音しない例は「ng」,「gn」と
いう語尾を有するから本件商標の欧文字部分には妥当しないし,造語の欧
文字である「BlogMaga」から原告主張の略語が生じるとも認めら
れない。
さらに,原告は,社会一般では「BlogMaga」の表記を「ブロマ\nガ」と記載していることが多いと主張するが,原告がその立証のために提
出した証拠(甲36〜38)から,社会一般において「BlogMaga」
を「ブロマガ」と表記していることは認められない。また,上記(1)アのと
おりの本件商標の構成からは「ブロマガ」が「BlogMaga」の表\音
であるとは認め難い。
イ 原告は,「BlogMaga」は,「Weblog」の略語である「B
log」と雑誌を意味する「Magazine」の略語である「Maga」
が結合された造語であり,いろいろなブログを配信するサービスという観
念が生じ,「ブログ」と「マガジン」の略語が結合した「ブロマガ」から
も,いろいろなブログを配信するサービスという観念が生じるから,「B
logMaga」と「ブロマガ」から生じる観念は同一であると主張する。
しかし,本件商標の「ブロマガ」は4文字の造語で,同種同大のフォン
トが均等の間隔で配置されていることからすれば,「ブロ」の部分を分離
して観念を想起し得るかは疑問であり,「ブロマガ」からブログとマガジ
ンの略語の結合を想起するとはいえない。したがって,「BlogMag
a」と「ブロマガ」がブログとマガジンの略語が結合したものとして理解
され,同一の観念を生じさせるとは認められない。
◆判決本文
関連事件です。同一商標権についての別の指定役務についての取消審判の取消訴訟です。
◆平成30(行ケ)10102
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2018.12.21
平成30(行ケ)10101 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年12月19日 知的財産高等裁判所
ブリジストンがカンパニョロの「POTENZA」に不使用取消審判を請求しました。審決は使用を認めました。裁判所も審決維持です。
カンパニョロの指定商品は、第12類「競技用自転車の部品及び付属品・・・」です。問題の商標は、判決文の最後にあります。原告は、「POTENZA」と同一の標章について,第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」を指定商品とする防護標章登録を受けていました。カンパニョロの登録に対して、異議申し立てをしましたが、当該指定商品については、類似しないとして登録されていました。\n
イ 本件使用商品の柄の部品(クランク)の中央には,横長の白塗りの平行
四辺形内に黒色のデザイン化された文字で表された「POTENZA」の\n欧文字と,「POTENZA」の欧文字の4文字目の「E」が表された箇\n所の背後に重なるように交差する縦長の白塗りの平行四辺形内に黒色で表\nされた「11」の数字とからなる,別紙記載の本件使用商標(甲14の1,
15,16)が付されている。
しかるところ,「POTENZA」の欧文字部分は,横長の白塗りの平
行四辺形内に横書きで表されているのに対し,「11」の数字部分は,縦\n長の白塗りの平行四辺形内に縦書きで表示されていること,「11」の数\n字部分は,上に重なった「POTENZA」の欧文字部分を表する横長の\n平行四辺形によって中央で上下に分断され,数字の一部が隠されているの
に対し,「POTENZA」の欧文字部分は,分断された「11」の数字
部分の前面に表されていることからすると,「POTENZA」の欧文字\n部分は,他の構成要素と分離して観察することが取引上不自然と思われる\nほど不可分的に結合しているとはいえない。
そして,「POTENZA」の欧文字部分は,「11」の数字部分の前
面の目につきやすい位置にまとまりよく配置されており,本件使用商標全
体から「ポテンザ」あるいは「ポテンツァ」の称呼が自然に生じることか
らすると,「POTENZA」の欧文字部分は,その部分のみから自他商
品識別標識としての機能を発揮しているものと認められる。\n一方で,「11」の数字部分は,上記のとおり,中央で上下に分断され,
数字の一部が隠されており,注視しなければ,数字の「11」と判読でき
ないことに照らすと,「11」の数字部分の自他商品識別標識としての機
能は,「POTENZA」の欧文字部分よりも,明らかに低いものと認め\nられる。また,「POTENZA」の欧文字部分が表されている横長の白\n塗りの平行四辺形は,ありふれた形状であって,黒と白のコントラストに
より,「POTENZA」の欧文字部分を構成する黒色の7文字を目立つ\nように表示するための背景図形であると認識されるから,それ自体に自他\n商品識別標識としての機能があるものとはいえない。\nそして,本件使用商標の「POTENZA」の欧文字部分と本件商標と
を対比すると,「POTENZA」の欧文字部分は,標準文字の本件商標
と字体の違いがあるが,構成する文字は同一であり,その字体の違いも特\nに目立ったものではないこと,両者の称呼は同一であることからすると,
本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であるものと認められ
る。
(2) これに対し原告は,1)本件使用商標は,2種の略平行四辺形を前後に重ね
て,それぞれの中に「POTENZA」と「11」を配置した,統一感のあ
るスタイリッシュなロゴデザインであること,本件使用商標の「11」を含
む部分は,被告の自転車用ギアクランクにおいて11速を暗示させる識別標
識として機能していること,「POTENZA」の部分は,特段特徴的な態\n様で表されているとはいえず,他に比して目立っているような事情もないこ\nとからすると,本件使用商標は,「POTENZA」,「11」,略平行四
辺形の図形等の各構成要素が一体として結合した態様によって識別性が発揮\nされており,本件使用商標から「POTENZA」の部分だけを分離抽出す
ることはできない,2)本件使用商品に付された本件使用商標の隣には,「P
OTENZA」の部分と同じデザインで,横長の白塗りの「CAMPAGN
OLO」の欧文字が表された平行四辺形が配されており,これに接した需要\n者,取引者は,本件使用商標と「CAMPAGNOLO」の欧文字が表され\nた平行四辺形の態様を含めた全体を使用商標と認識することもあるとして,
本件使用商標は,「POTENZA」の標準文字からなる本件商標とは明ら
かに異なり,本件商標と社会通念上同一とはいえない旨主張する。
しかしながら,上記1)の点については,前記(1)イ認定のとおり,本件使用
商標の「POTENZA」の欧文字部分は,他の構成要素と分離して観察す\nることが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえず,
「POTENZA」の欧文字部分のみから自他商品識別標識としての機能を\n発揮しているものと認められる。また,原告が述べるように「11」の数字
が,被告の自転車用ギアクランクにおいて11速を暗示させるものであった
としても,前記(1)イ認定のとおり,「11」の数字部分は,中央で上下に分
断され,数字の一部が隠されており,注視しなければ,数字の「11」と判
読できないことに照らすと,「11」の数字部分が11速を暗示させる識別
標識として機能しているものと直ちにはいえない。\n
次に,上記2)の点については,本件使用商品の柄の部品(クランク)には,
「POTENZA」の欧文字が表された平行四辺形の右隣に「CAMPAG\nNOLO」の欧文字が表された平行四辺形が付されているが(甲14の1,\n15,16),二つの平行四辺形の間には,スペースがあり,それぞれの平
行四辺形内の「POTENZA」の欧文字部分と「CAMPAGNOLO」
の欧文字部分とは,明瞭に区別される態様で示されている。加えて,前記1
の認定事実によれば,本件商標の指定商品の需要者である自転車競技や競技
用自転車に関心のある者の間では,被告は,競技用自転車の部品メーカーと
して広く知られていたものと認められることに照らすと,本件使用商品に接
した需要者は,「CAMPAGNOLO」の欧文字は,被告の名称を外国語
表記したものとして,それ自体を独立の商標として認識するものと認められ\nるから,本件使用商標と「CAMPAGNOLO」の欧文字が表された平行\n四辺形の態様を含めた全体がひとまとまりの商標として認識されるというこ
とはできない。
・・・・
3 本件使用商品の本件商標の指定商品該当性について
(1) 前記1の認定事実によれば,本件使用商品は,競技用自転車の部品メーカ
ーである被告が製造,販売する自転車用ギアクランク(クランクセット)で
あること,本件使用商品について,「新ラインナップに加わったポテンツァ
11は,スーパーレコードに採用されているエンブレイステクノロジーをは
じめとした,トップグレードの性能とデザインを継承した機械式アルミグル\nープセット」,「ハードな変速ラインにも対応するレーシングパーツ」など
と雑誌(甲15)に紹介されていることが認められる。
上記認定事実によれば,本件使用商品は,自転車競技に使用される自転車
のギアクランクとして用いることができるものと認められる。
そして,本件商標の指定商品「競技用自転車の部品及び付属品(自転車の
フレーム・タイヤ・チューブ・車輪・リム・スポークを除く。)」にいう「競
技用自転車」の用語について,「競技」の具体的なレベルを特に限定する記
載はないこと,自転車競技は,プロのロードレーサーなどが参加する世界的
な競技のほかに,趣味として競技を行っている者を含め,様々なレベルの者
が参加できる競技が行われていることは一般に知られていることに照らすと,
自転車競技に使用される自転車に用いることができる部品であれば,本件商
標の指定商品にいう「競技用自転車の部品」に含まれるものと認められる。
そうすると,本件使用商品は,本件商標の指定商品に該当するものと認め
られる。
(2) これに対し原告は,1)原告は,原告の著名な登録商標である「POTEN
ZA」と同一の標章について,第12類「二輪自動車・自転車並びにそれら
の部品及び附属品」を指定商品とする防護標章登録を受けていること,特許
庁は,別件異議申立事件について,「競技用自転車は,競技用としてその用\n途が限られ,かつ,専門性の高い商品」であると認定した上で,本件商標の
商標登録時の指定商品の一部を取り消す旨の別件異議決定をしたことなどの
事情を勘案すると,本件商標の指定商品は,競技専用又はそれに近い商品を
意図するものといえるから,「競技用としてその用途が限られ,かつ,専門
性の高い商品」と理解すべきである,2)被告の最上位機種の「SUPERR
ECORD」と本件使用商品とでは,商品の性能が格段に異なり,その用途\n及び需要者の範囲も異なる上,本件使用商品の需要者は一般の自転車愛好家
であることからすると,本件使用商品は,「競技用としてその用途が限られ,
かつ,専門性の高い商品」とはいえないとして,本件使用商品は,本件商標
の指定商品に該当しない旨主張する。
しかしながら,上記1)の点については,別件異議決定(甲30)の理由中
に,「被請求人の主張及び職権による調査によれば,競技用自転車は,競技
用としてその用途が限られ,かつ,専門性の高い商品であることから,一般
用自転車に比して高額であり,需要者の範囲も限られ,かつ,販売場所も専
門店やウェブサイトにおける注文販売などが一般的であることが認められる
から,需要者が,自己の自転車に装着する商品を申立人又はブリヂストンサ\nイクルの商品であると誤認混同することは考えがたいというのが相当であ
る。」との記載部分(6頁)があるが,この記載部分は,一般用自転車と対
比する意味で,「競技用自転車は,競技用としてその用途が限られ,かつ,
専門性の高い商品」であることを示したものにすぎず,自転車競技の具体的
なレベルや商品の具体的な性能についてまで述べたものではないから,本件\n商標の指定商品にいう「競技用自転車」の用語を特定のレベルの競技に限定
する根拠とはならない。また,原告がその登録商標である「POTENZA」
と同一の標章について上記防護標章登録を受けたのは平成24年4月27日
(甲23)であって,別件異議決定日(平成23年10月3日)よりも後で
あるから,原告が防護標章登録を受けたことは,別件異議決定の認定及び判
断に影響を及ぼしたものとは認められない。
次に,上記2)の点については,本件使用商品が,被告の最上位機種の「S
UPERRECORD」ではなく,ミドルクラスの機種であるからといって,
本件商標の指定商品にいう「競技用自転車の部品」に該当しないということ
はできない。
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2018.10. 4
平成30(行ケ)10046 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年9月26日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判(商50条)に対する審決取消し訴訟です。商品「ウィッグ」を展示した各展示ブースで来訪者に対し販促品として無償配布した行為は,商標法2条3項8号の「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当するか?が争われました。
上記認定事実によれば,被告による本件付箋紙の配布行為は,上記各併設
展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品の広
告の一環として行われたものと認められる。
そして,本件付箋紙の見開き内面部分に掲載された本件使用商標は,全体
として「スヴェンソンのウィッグ」商品の出所識別標識として認識することができる態様で使用されているものと認められることは,前記2(2)認定の
とおりである。
そうすると,本件付箋紙は,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品(「ス
ヴェンソンのウィッグ」商品)の広告媒体に当たるものであって,被告による本件付箋紙の配布行為は,上記商品に関する広告に本件使用商標を付\nして頒布する行為(商標法2条3項8号)に該当するものと認められる。
したがって,本件審決における商標法2条3項8号該当性の判断に誤
りはない。
(2) これに対し原告は,1)本件商標は,被告のウェブサイト,被告が運営
する通販サイト,商品「ウィッグ」のいずれにも,これまで一切使用された
ことはなく,被告の公式キャラクターも,これまで商品「ウィッグ」に使用
されたことはなかったことに照らすと,本件付箋紙は,被告そのものを広告
するためのノベルティ(販促品)と認識されるにとどまる,2)本件付箋紙の
見開き内面部分の文章の記載は,「ウィッグ」の語が含まれているというだ
けであって,商品自体を宣伝したものではなく,「ウィッグ」の前に「スヴ
ェンソンの」と付いているように,被告と商品「ウィッグ」との関係を強調したものであり,本件使用商標と商品「ウィッグ」とのつながりを示すもの\nとはいえないなどとして,本件付箋紙は,単なる被告を宣伝広告するノベル
ティ(販促品)に過ぎず,商品「ウィッグ」の宣伝広告とはいえないし,商
品「ウィッグ」との具体的関係において使用されているものとはいえないか
ら,本件付箋紙は,商標法2条3項8号所定の「商品に関する広告」に該当
せず,被告による本件付箋紙の配布行為は,同号に該当しない旨主張する。
しかしながら,前記(1)認定のとおり,被告による本件付箋紙の配布行為
は,前記各併設展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッ
グ等の商品の広告の一環として行われたものであり,本件付箋紙は,被告の
販売する医療用ウィッグ等の商品(「スヴェンソンのウィッグ」商品)の広告媒体に当たり,上記商品に関する広告に該当するものと認められる。\nもっとも,本件付箋紙の表紙部分を含む本件付箋紙全体の記載内容(前記2(1))に照らすと,本件付箋紙は,被告それ自体を広告する広告媒体とし
ての機能をも有するものと認められるが,そのことは,本件付箋紙が上記商品に関する広告に該当することを否定する事情になるものではない。また,\n本件付箋紙に「ウィッグ」に関する具体的な商品情報の記載がないことは,
本件使用商標が本件付箋紙において「スヴェンソンのウィッグ」商品の出所識別標識として認識することができる態様で使用されているとの認定の妨\nげになるものではなく(前記2(3)),しかも,被告による本件付箋紙の配
布行為は,前記各併設展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用
ウィッグ等の商品の展示とともに行われたのであるから,本件付箋紙の配布
を受けた参加者は,本件付箋紙は,上記商品の広告のために配布されたもの
と認識したものと認められる。
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2018.08.29
平成30(行ケ)10037 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年8月23日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判の取消訴訟です。審決、知財高裁とも、「旧 関西国際学友会日本語学校」が、登録商標「関西国際学友会」の使用であると判断しました。
(1) 使用商標は,「旧」の文字と「関西国際学友会日本語学校」の文字とを半
角又は全角の空白を介して結び,かつ全体を括弧で囲んで表したものである。
(2) まず,これらの文字は,書体も大きさも同一であり,全体が括弧で囲まれ
ているものの,「旧」と「関西国際学友会日本語学校」とは,空白によって
明確に分離されていること,「旧」は,「昔。過去。」といった意味を有し,
「今は主流ではないもの,過去のものとなっていることを表す語」であり(広\n辞苑〔第7版〕),その後に続く語がかつて用いられていた名称等であるこ
とを指し示すものとして一般的に多用されている語であること(乙5の1〜
5の5)からすると,使用商標に接した需要者は,「旧 関西国際学友会日
本語学校」の意味は,かつての名称が関西国際学友会日本語学校であったこ
とにあると理解すると認められる。
続いて,「関西国際学友会日本語学校」の部分について検討する。
ア この文字部分中,「日本語学校」は,教育の分野において,日本語を教
授する教育機関又は施設を意味する一般的名称と認められ(甲7の1〜7
の8),一般通常人にとっても馴染みのある語というべきであるから,需
要者が「関西国際学友会日本語学校」の文字に接したときに,これは「関
西国際学友会」と「日本語学校」の各語を組み合わせたものであると理解
することは明らかである。
イ 次に,「関西国際学友会」についてみると,「学友会」の文字部分だけ
をみれば,学生及び卒業生の交流を図る会ないし団体といった程度の一般
的な意味を有する語と解する余地があるものの,その前に「関西国際」が
付されていることを考え合わせると,これに接した需要者は,全体として,
関西地方に所在し又は同地方において活動している,国際的に学生等の交
流を図ることを目的として設立された特定の団体の名称であると理解する
と認めるのが相当である。
また,上記のとおり,「日本語学校」は,日本語を教授する教育機関又
は施設を意味する一般的名称と認められるから,需要者は,「日本語学校」
の部分を,提供される役務の内容,又はその役務を提供する施設を示して
いるものと理解し,当該部分が出所を表示する機能\を有するものであると
は考えないと認めるのが相当である。
ウ 上記イにおいて説示した各語が有する意味合いに鑑みると,「関西国際
学友会日本語学校」は「関西国際学友会」が運営する「日本語学校」とい
った程度の意味を有する語として理解されるというべきである。
そして,「関西国際学友会」と「日本語学校」とは,一体不可分の関係
にあると理解されなければならない語であるとは言い難い上に,「日本語
学校」は,日本語を教授する教育機関又は施設を意味する一般的名称であ
るから,需要者は,使用商標中の「関西国際学友会日本語学校」につき,
「関西国際学友会」の部分が出所を示す機能を果たしていると認識すると\nいうべきである。
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◆平成30(行ケ)10038
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2018.06.20
平成30(行ケ)10015 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年6月13日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判において使用が争われました。知財高裁は「使用として認める」とした審決を維持しました。
原告は,1)本件商品が平成29年3月15日に被告のオンラインショップ
でタオルとして販売開始されていること,2)「TL」という品番からして本件商品
は当初から「タオル」であって「ふきん」ではないと考えられること,3)アシスト
社への販売価格がライフブリッジ社からの仕入価格と同一であって不自然であるこ
となどからすると,甲30〜33,36の信用性には重大な疑いがあると主張する。
まず,上記1)の主張は,被告のオンラインショップで発売されたタオル(甲2)
が,本件商品と全く同一のものであることを前提としていると解されるが,被告代
表者は,当審において,オンラインショップで発売されたタオル(甲2)は,素材\nやデザイン等は本件商品と同一であるものの,本件商品とは別に,当初から「タオ
ル」として,本件使用商標を付すことなく生産した本件商品とは異なる物であると
述べている。そして,この供述は,オンラインショップで発売されたタオル(甲2)
には本件下げ札が付けられていないことと整合している上,内容的に明らかに不自
然な点も見当たらない。そうすると,本件商品と同じ素材やデザイン等からなる「タ
オル」が被告のオンラインショップで平成29年3月から発売されたとしても,不
自然ではなく,前記2の認定を左右するものということはできない。
また,上記2)の主張について,「TL」という品番から直ちに本件商品が実際には
「タオル」であったとまで断ずることはできず,また,被告においては,オンライ
ンショップでの販売は主たる事業ではなく,卸売が主たる事業であって,オンライ
ンショップで販売される商品は,全取扱商品の20パーセントに満たない程度の商
品であり,オンラインショップの担当者がその判断で品名と発売時期を決定してい
るものと認められる(被告代表者[当審])から,ふきんがオンラインショップで販\n売されていないとしても不自然ではない。
さらに,上記3)の主張について,証拠(甲18,19,被告代表者[当審])及び\n弁論の全趣旨によると,被告とアシスト社は代表者を同じくするグループ会社であ\nると認められることや被告がその他の商品と合わせて単価を決定した旨主張してい
ることからすると,仕入価格と販売価格が同一であるとしても,直ちに不自然であ
るとはいえない。
(2) 原告は,1)一緒に写りこんでいる商品のオンラインショップにおける発売
時期からすると,商品写真(甲29)は実際には平成29年2月末又は3月初めに
撮影されたものである,2)被告とアシスト社との関係やその内容からすると,証明
書2(甲37)は信用できない,3)請求書(甲35)は宛名がなく不自然である,
4)出荷伝票(甲34)は品番に誤りや不自然な点があって信用できないなどと主張
する。
まず,上記1)の主張について,上記(1)記載のとおり,被告においてはオンライン
ショップでの販売は主たる事業ではなく,卸売が主たる事業であって,オンライン
ショップの担当者がその判断で品名と発売時期を決定していることを踏まえると,
一緒に写りこんでいる他の商品が平成29年になって被告のオンラインショップで
発売されたからといって,商品写真(甲29)が,原告の主張するとおり,平成2
9年になってから撮影されたものと断ずることまではできない。
また,上記2)の主張について,証明書2(甲37)は,被告のグループ会社であ
るアシスト社の従業員によって作成されたものであるが,他の証拠(甲34,35,
被告代表者[当審])と符合しており(前記2(2)),その限度では信用することがで
きるものである。特許庁に提出された回答書(甲25)の内容に言及している点は,
自らが経験していない事実についての言及を含むものであるが,そうであるからと
いって,その他の点まで信用することができないということにはならない。
さらに,上記3)の主張について,請求書(甲35)には宛名が記載されていない
が,代表者を同じくするグループ会社間の取引について発行されたものであること\nを踏まえると,不自然で,請求書そのものの信用性が失われるとまではいえない。
そして,上記4)の主張について,出荷伝票(甲34)に記載された品名がオンラ
インショップや被告のウェブサイトに記載された品名と異なっているからといって,
直ちに誤りであるとか不自然であるとか捏造されたということはできない。
(3) 原告は,1)口頭審理を拒否するなどの審判における被告の対応,2)4500
枚の本件商品のうち本件店舗に引き渡されたわずかのもの以外の行方が明らかとさ
れていないこと及び3)第三者が作成した客観的な書類が提出されていないことなど
からも,被告による本件商標の使用事実は存しないと主張する。
しかし,被告は,本件商標のブランド化がうまく進まない中で,本件商標を維持
するために費用や時間を費やすのに消極的な姿勢を見せているのであり(被告代表\n者[当審],弁論の全趣旨),そのような被告が,弁理士に要する費用や本件に対応
するための時間を節約しようと考えて,口頭審理を拒否するなど必要最小限の主張
立証しかしなかったとしても,直ちに不自然,不合理であるとはいえない。
また,本件では第三者たるライフブリッジ社の納品責任者が作成した客観的な取
引書類といえる納品書(甲31)が提出されているのであって,その他の第三者が
作成した書類が提出されていないからといって,前記2の認定が左右されるもので
はない。
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2018.06.15
平成29(行ケ)10228 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年6月13日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判において、「使用していた」との審決が維持されました。知財高裁は、本件ベルトの販売,納品は,売買取引の実体を伴うと判断しました。
この点に関し原告は,フィールドハウスのヴァンヂャケットに対する本件
ベルトの譲渡行為は,関連会社間の単なる商品の移動であって,本件商標の
登録の不使用取消しを免れる目的で,名目的に本件使用商標を使用する外観
を呈する行為にすぎないから,商標法2条3項2号の使用に該当しない旨主
張する。
そこで検討するに,原告が主張するように,被告の代表取締役のAは,フ\nィールドハウス及びヴァンヂャケットの筆頭株主であること,被告の取締役
のBは,ヴァンヂャケットの社長であること,フィールドハウスの代表者の\nCは,ヴァンヂャケットの取締役であることが認められ(甲3ないし5,弁
論の全趣旨),被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,役員の一
部が共通し,相互に資本関係のある関連会社であるといえる。
しかしながら,被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,別個の
法人であって,前記1(1)認定のとおり,フィールドハウスのヴァンヂャケッ
トに対する本件使用商標を付した本件ベルトの販売,納品は,売買取引の実
体を伴うものであり,関連会社間の単なる商品の移動ということはできない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
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2018.05.30
平成30(行ケ)10003 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年5月28日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判の取消訴訟です。知財高裁は、「本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく・・・」と、不使用とした審決を維持しました。
原告の提出する証拠(甲5,7,9〜12,25)から認められるのは,せいぜい,本件商品が本件セールの際に倉庫からセール会場に移動され,各500円(消費税別)で販売されたという事実にすぎず,本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく,そのほかに,原告の主張を認めるに足りる証拠はない。原告の主張は,客観的な裏付けを欠くものであり,以下のアないしウの事実に照らしても,不自然,不合理であって,採用できない。
ア 本件タグは,その表面に本件商標が表\示され,その裏面に,原告の名称のほ
か,当該商品の品番,サイズ,素材,生産国,バーコード情報,本体価格,税込価
格等が表示されているところ,この税込価格は,消費税率を5%として計算したも\nのである(甲3,4の1・2)。しかし,我が国の消費税率は,本件セールの開催
日より2年半以上前の平成26年4月1日に,5%から現行の8%に改定されてい
る(乙3)。この点について,原告は,特価であることの理由を示すために発売当
時の下げ札をそのまま付けておいた旨主張するが,消費税改定後に展示販売する商
品に消費税改定前の税込価格を表示したタグを付すことは,商品の購入者を混乱さ\nせたり,当該商品が古い物であるという印象を与えたりしかねないことから,通常
は,そのような取扱いはされないものと考えられる。
イ 本件タグに表示された前記アの情報は,購入者にとって重要な情報であり,\nかかる情報が表示されたタグは,それが付された商品とともに購入者に引き渡すの\nが通常であると考えられる。また,タグは,紐や結束バンドによって被服に取り付
けられるのが通常であるところ,本件タグは,タグの上部に結束バンドがくくり付
けられており,結束バンドは切断されていない(甲3,4の1・2)。かかる事実
は,本件タグが,本件商品を顧客に引き渡した際に本件商品から取り外されたもの
ではないことを推認させるものである。なお,原告は,本件タグは結束バンドでは
なく下げ紐により本件商品にくくり付けられていた旨主張するが,下げ紐を取り外
す際に,ハサミなどで切断せずに,その都度紐をほどくという煩瑣な方法をとって
いたというのは,不自然である。また,原告は,上記のとおり購入者にとって重要
な情報が表示された本件タグを本件商品の購入者に引き渡さなかった理由について,\n何ら合理的な説明をしていない。
ウ 原告は,平成30年3月11日に,本件セールと同じ会場において,本件セ
ールと同様のファミリーセールを開催し,そこで展示された原告商品の中には,本
件商品と同じ500円均一の価格(消費税別)と表示されたものも存在するが,「本\n体価格 ¥500」等の価格表示以外のタグは付されていない(乙1,2)。そう\nすると,仮に,本件セールにおいて本件商品が販売された事実があるとしても,本
件商品を展示して販売する際に,本件タグが付されていなかった可能性は高い。な\nお,原告は,上記平成30年のセールにおいて展示販売された原告の在庫資産であ
る商品には,本件タグと同様の下げ札が付されていた旨主張するが,これを裏付け
る的確な証拠はない。
(3)以上のとおり,原告が本件セールにおいて本件商品に本件タグを付して展示
販売することにより,本件商標を使用したとの事実を認めることはできない。また,
原告は,そのほかに,指定商品のうち第25類「被服」について,本件商標を要証
期間内に使用したことの主張立証をしない。
(4) 小括
よって,本件商標が要証期間内に指定商品のうち第25類「被服」について使用
されたとの事実は認められないというべきであり,本件商標の指定商品のうち第2
5類「被服」についての商標登録は,商標法50条の規定により取り消されるべき
ものである。
◆判決本文
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2018.01.19
平成29(行ケ)10107 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年1月15日 知的財産高等裁判所(4部)
不使用による商標取消訴訟について、共有商標権者の一部が提訴しました。被告は固有必要的共同訴訟として訴えは不適切と主張しましたが、裁判所はかかる主張は認めませんでした。ただ、最終的に使用が証明できず、取消審決は維持されました。これは、登録商標を使用しているとはいえないというものです。登録商標は、漢字、かたかな、ひらがな、ローマ字表記を4段で書しており、使用していたのは、漢字のみを書したものでした。
被告は,原告といきいき緑健は,本件商標に係る商標権を共有するところ,原告
は,単独で本件審決の取消しを請求するから,本件訴えは不適法であると主張する。
しかし,いったん登録された商標権について,登録商標の使用をしていないこと
を理由に商標登録の取消審決がされた場合に,これに対する取消訴訟を提起するこ
となく出訴期間を経過したときは,商標権は審判請求の登録日に消滅したものとみ
なされることとなり,登録商標を排他的に使用する権利が消滅するものとされてい
る(商標法54条2項)。したがって,上記取消訴訟の提起は,商標権の消滅を防
ぐ保存行為に当たるから,商標権の共有者の1人が単独でもすることができるもの
と解される。そして,商標権の共有者の1人が単独で上記取消訴訟を提起すること
ができるとしても,訴え提起をしなかった共有者の権利を害することはない。
また,商標権の設定登録から長期間経過した後に他の共有者が所在不明等の事態
に陥る場合や,訴訟提起について他の共有者の協力が得られない場合なども考えら
れるところ,このような場合に,共有に係る商標登録の取消審決に対する取消訴訟
が固有必要的共同訴訟であると解して,共有者の1人が単独で提起した訴えは不適
法であるとすると,出訴期間の満了と同時に取消審決が確定し,商標権は審判請求
の登録日に消滅したものとみなされることとなり,不当な結果となりかねない。
さらに,商標権の共有者の1人が単独で取消審決の取消訴訟を提起することがで
きると解しても,その訴訟で請求認容の判決が確定した場合には,その取消しの効
力は他の共有者にも及び(行政事件訴訟法32条1項),再度,特許庁で共有者全
員との関係で審判手続が行われることになる(商標法63条2項の準用する特許法
181条2項)。他方,その訴訟で請求棄却の判決が確定した場合には,他の共有
者の出訴期間の満了により,取消審決が確定し,商標権は審判請求の登録日に消滅
したものとみなされることになる(商標法54条2項)。いずれの場合にも,合一
確定の要請に反する事態は生じない。なお,各共有者が共同して又は各別に取消訴
訟を提起した場合には,これらの訴訟は,類似必要的共同訴訟に当たると解すべき
であるから,併合の上審理判断されることになり,合一確定の要請は充たされる。
以上によれば,商標権の共有者の1人は,共有に係る商標登録の取消審決がされ
たときは,単独で取消審決の取消訴訟を提起することができると解するのが相当で
ある(最高裁平成13年(行ヒ)第142号同14年2月22日第二小法廷判決・
民集56巻2号348頁参照)。
よって,原告は,単独で本件審決の取消しを請求することができる。被告の本案
前の抗弁は,理由がない。
・・・・
以上のとおり,甲1カタログ,甲2カタログ及び甲3雑誌は,いずれも要証期間
内に頒布されたものとは認められない。また,そもそも,本件商標は,「緑健青汁」,
「りょくけん青汁」,「リョクケン青汁」及び「RYOKUKEN AOJIRU」
の文字を4段に書して成るものであるのに対し,甲1カタログ,甲2カタログ及び
甲3雑誌に記載された商標は,「緑健青汁」の文字のみを書して成るものである。
このような本件商標と使用商標とは,商標法50条1項にいう「平仮名,片仮名及
びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ず\nる商標…その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」であると,直
ちに認めることはできない。
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2017.12.28
平成29(行ケ)10126 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年12月25日 知的財産高等裁判所(1部)
使用していたとした審決が取り消されました。知財高裁は、登録商標「ベガス」ではなく「ベガスベガス」の使用であると判断しました。
上記認定事実によれば,本件折込チラシ1には,「ベガス発寒店ファンのお
客様へ」と記載されている部分が認められ,この部分には本件文字部分(ベガス)
が使用されており,本件文字部分は本件商標と同一のものと認められる。他方,本
件折込チラシ1の下部には,登録商標であることを示す○R の文字を付した「ベガス
ベガス(R)」という文字が大きく付されているほか,「VEGAS VEGAS」,「ベ
ガスベガス発寒店」という文字も併せて記載されている。
これらの事実関係によれば,本件折込チラシ1に接した需要者は,同チラシにお
いて,パチンコ,スロットマシンなどの娯楽施設の提供という役務に係る出所を示
す文字は,同チラシにおいて多用されている「ベガスベガス」又は「VEGAS V
EGAS」であって,一箇所だけで用いられた本件文字部分は,店内改装のため一
時休業する店舗の名称を一部省略した略称を表示したものにすぎず,本件折込チラ\nシ1に係る上記役務の出所自体を示すものではないと理解するのが自然である。
そうすると,本件折込チラシ1に本件文字部分を付する行為は,本件商標につい
て商標法2条3項にいう「使用」をするものであると認めることはできない。
したがって,本件文字部分が出所識別機能を果たし得るものと認定した上,本件\n折込チラシ1に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていると認定
した審決の各判断には,いずれも誤りがあるから,取消事由4及び5は,理由があ
る。
(2) これに対し,被告は,本件文字部分が「ベガスベガス発寒店」の略称表示\n又は愛称表示として解釈できるのであるから,本件折込チラシ1には本件商標と社\n会通念上同一と認められる商標が付されたといえるなどと主張する。
しかしながら,被告が本件文字部分を「ベガスベガス」又は「VEGAS VEG
AS」の略称表示であると認めるとおり,本件折込チラシ1に係る役務の出所を示\nす表示は,多用された「ベガスベガス」又は「VEGAS VEGAS」の標章であ
ると認めるのが相当であるから,これらと異なる標章である本件文字部分が出所識
別機能を果たし得るとは認められない。かえって,「ベガス」という略称表\示の使用
をもって,本件商標についての使用であると認めることは,実質的には商標として
は異なる略称表示に係る信用までを保護することを意味するから,商標法50条1\n項の不使用取消制度の趣旨に照らしても,相当ではない。のみならず,実質的にみ
ても,前記認定事実によれば,被告が「ベガス発寒店」という文字を使用したチラ
シは,同文字を一箇所でのみ使用した本件折込チラシ1のほかは一切提出されてい
ないのであるから,そもそも「ベガス発寒店」という文字に係る標章の信用を保護
すべき特段の事情もうかがわれず,被告の上記主張は,前記認定を左右するもので
はない。
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2017.12.13
平成29(行ケ)10071 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年11月29日 知的財産高等裁判所
不使用であるとして取り消した審決を、知財高裁は取り消しました。争点は、本件ウェブサイトが日本の需要者を対象とした注文サイトまたは広告として機能しているか否かです(1部)。
前記第2の1記載の事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実
が認められる。
(1) 原告は,平成23年11月23日,冒頭に「Coverderm Product Order Form」
と付した本件ウェブサイトにおいて,本件商標及び日本語でこれを仮名書きした「カ
バーダーム」という名称を表題に付して,「カバーダームは最先端のスキンケア化粧\n品の専門ブランドです。」,「輝かしい歴史を誇り,さらに成長を続ける製品ラインナ
ップを,長年にわたり80ヶ国以上の国々にお届けしています。」,「顔や体の気にな
る箇所をカバーしてくれる,理想的なアイテムを多数揃えています!」,「世界中の
皮膚科医やメイクアップアーティストにも長年支持されています!」という文章を
掲載した。
そして,原告は,その下に「下記の空欄に必要事項をご記入のうえ,ご注文くだ
さい。」という文章を掲載した上,名,姓,住所,製品名,数量,メールアドレス,
コメントの記入欄と送信ボタンを設けるなどして,原告の商品をインターネットで
注文できるように設定するとともに,その下に「弊社製品に関する詳しい説明はこ
ちらをクリックしてください。」という文章を掲載し,COVERDERMの商品の
紹介ページにリンクさせていた。
なお,本件ウェブサイトの末尾には,「Copyright Farmeco S.A. Dermocosmetics
All rights reserved.」と表記され,本件ウェブサイトの著作権者が原告である\nことが明記されている。(甲14の1)
(2) 原告の代表者は,平成20年10月30日から少なくとも本件口頭弁論終\n結時まで,本件ウェブサイトに係る「coverderm.jp」という日本のドメイン名を個
人名で取得し,これを原告に使用させていた(甲14の2,甲20の1ないし3,
甲44の1及び2)。
(3) 本件ウェブサイトは,本件商標が付された原告のCOVERDERMの商
品につき,日本における販売促進及び日本の消費者から直接注文を受けることを目
的として,平成20年に作成されたものである。また,原告のインターネット経由
での売上げは,平成23年が7863.49ユーロ,平成24年が8129.44
ユーロ,平成25年が7555.50ユーロ,平成26年上半期が4289.94
ユーロであることがそれぞれ認められる(甲15)。
2 商標法50条1項該当性
上記認定事実によれば,原告は,少なくとも本件要証期間内である平成23年1
1月23日に,本件ウェブサイトにおいて,日本の需要者に向けて原告の「COV
ERDERM」の商品に関する広告及び当該商品の注文フォームに本件商標を付し
て電磁的方法により提供していたことが認められる。
したがって,原告は,本件商標について,少なくとも本件要証期間内に日本国内
で商標法2条3項8号にいう使用をしたものといえるから,同法50条1項に該当
するものとは認められず,原告の前記第3の3の取消事由は,理由がある。
3 被告の主張について
被告は,本件ウェブサイトは日本語で作成されているものの,リンク先とされる
COVERDERMの商品の紹介ページは原告の英語ウェブサイトであり,商品の
発送方法や代金の支払等について何ら記載がないのであるから,本件ウェブサイト
が日本の需要者を対象とした注文サイトとして機能しているかどうかは疑わしく,\n仮に,本件ウェブサイトにおける本件商標が広告として機能されることがあるとし\nても,日本の需要者の目に触れることのない状況において,本件ウェブサイトは形
式的にインターネット上にアップされているにすぎず,正当な商標の使用とはいえ
ないなどと主張する。
しかしながら,前記1の認定事実によれば,本件ウェブサイトは,日本語で本件
商標に関するブランドの歴史,実績等を紹介するとともに,注文フォーム及び送信
ボタンまで日本語で記載されているのであるから,リンク先の商品の紹介が英語で
記載されているという事情を考慮しても,本件ウェブサイトが日本の需要者を対象
とした注文サイトであることは明らかである。そうすると,審決が認定するとおり,
本件商標を付した商品が日本の需要者に引き渡されたことまで認めるに足りないか
否かはさておき,少なくとも,原告は,本件商標について本件要証期間内に日本国
内で商標法2条3項8号にいう使用をしたものと認められる。
また,証拠(甲63の1ないし3)によれば,グーグルで検索する場合において,
検索キーワードを「カバーダーム」,「COVERDERM 化粧品」としたとき及び日本語の
ページを検索するように設定した上で検索キーワードを「COVERDERM」としたときは,
本件ウェブサイトのリンク及び本件ウェブサイトの説明が表示されるものと認めら\nれるから,本件ウェブサイトは形式的にインターネット上にアップされているとは
いえず,被告の主張は,その前提を欠くものである。
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2017.11.10
平成29(行ケ)10118 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年10月26日 知的財産高等裁判所(2部)
不使用請求を認めなかった審決が維持されました。争点は商標の同一性および使用の評価です。
ア 本件チラシ1の下段に記載されている「ピーアールタイムズ」の片仮名
は,本件商標の下段の片仮名と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章
であると認められる。
イ 本件チラシ2の下段に記載されている「PRTIMES」の欧文字は,
本件商標の上段の欧文字と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章であ
ると認められる。
(3) 使用役務等について
上記1(2)のとおり,本件チラシ1には,「広告をご検討の事業主の皆様!まずは
お気軽にご相談ください」,「広告のプロが広告主様と一緒に,売上・集客に繋がる
広告戦略を練らせていただきます。広告の事なら何でもご相談ください。」と記載さ
れており,被告が広告の役務を提供することを広告しているものと認められる。
上記1(3)のとおり,本件チラシ2には,「広告をご検討の事業主の皆様!まずは
お気軽にご相談ください」,「広告出稿や広告に関するコンサルティングの事なら」
と記載されており,被告が広告の役務を提供することを広告しているものと認めら
れる。
そして,上記1(2)及び(3)のとおり,本件チラシには被告の会社名及び連絡先が
記載されており,本件チラシは,合計3000部作成され,頒布されたのであるか
ら,被告は,本件チラシを見た者が被告に広告依頼などの連絡をしてくればこれに
応じ,業として広告の役務を提供する意思であったと認められる。
したがって,被告は,広告の役務に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商
標を付して頒布し,これを使用したものと認められる。
ア 本件チラシの頒布に関する証拠である,本件チラシ(甲6,12),並び
に,ニューアシストから被告に対する領収書(甲7,13)及び納品書(甲8,1
4)は,いずれも,当法廷において被告から原本が提示されており,その作成日当
時作成され,授受されたものであることに合理的な疑いを差し挟むべき不自然な点
はない。
イ ニューアシストのホームページに記載されているのは,「事業概要」であ
って(甲21の2),その余の業務を行っていないという趣旨とは解されないから,
ニューアシストがチラシの作成やポスティングの業務を行っていないとまではいえ
ない。
被告の本店所在地と池尻大橋駅が遠く離れているとはいい難い上,チラシの配布
地域や配布部数などは,広告を行う者がその広告戦略などを考慮して決定するもの
であるから,本件チラシの配布場所が池尻大橋駅周辺であり,配布部数が合計30
00部であることなどは,本件チラシの頒布を否定すべき事情とはいえない。広告
業務はその態様によって価格が異なるものと考えられる上,個別に連絡してきた者
に対して説明することもできるから,本件チラシに価格が記載されていないことは,
本件チラシの頒布を否定すべき事情とはいえない。
上記1(2)(3)のとおり,本件チラシ,領収書及び納品書によって,本件チラシの
頒布の事実が認定できるから,その他の取引に関する契約書,Eメールのやりとり,
報告書等が証拠として提出されていないことは,本件チラシの頒布を認定すること
を妨げる事情とはならない。各2通の領収書(甲7,13)と納品書(甲8,14)
の内容が同一であることは,同一の取引を2回行ったことを示すものにすぎず,ま
た,被告の住所の誤りは,同一のデータを使いまわしたことによるものであると推
認されるから,これらの書証の信用性を疑わせる事情とはならない。
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2017.09.23
平成28(行ケ)10230 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年9月14日 知的財産高等裁判所
不使用取消請求(50条)に対して、アルファベットの「X」状のマークを付したスニーカーを販売していたと争いましたが、靴の図形商標の使用とは認められませんでした。
本件商標は,前記第2の1のとおり,平成16年6月22日に国際登録が
され,同年12月13日に日本国が事後指定がされたもの(同日に商標登録出願が
されたものとみなされる[商標法68条の9第1項])であって,平成18年1月
24日に登録査定がされ,同年7月21日に登録されたものである。
平成26年法律第36号による商標法の一部改正(平成27年4月1日施行)に
よって,位置商標について,その出願の手続が定められた(商標法5条2項5号,
同条4項,5項,商標法施行規則4条の6〜8)が,それより前には,我が国にお
いて,位置商標の出願についての規定はなく,本件商標についても,位置商標では
なく,通常の平面図形の商標であると解するほかない(本件商標が位置商標ではな
いことは,原告も認めている。)。
そうすると,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されているというためには,
黒い実線で囲まれたX字状の部分のみならず,靴の形状をした点線部分も,平面図
形の商標として使用されていなければ,本件商標と社会通念上同一の商標が使用さ
れているということはできない。
原告各製品には,X字状の標章が付されているものの,靴の形状をした点線部分
の標章が平面図形の商標として使用されているということはできないから,本件商
標と社会通念上同一の商標が使用されているとは認められない。
(3) この点について,原告は,原告各製品には,X字状の標章が付されている
上,スニーカー自体の形状もほぼ同じであると主張するが,スニーカー自体の形状
がどうであれ,平面図形の商標として点線部分の標章が使用されているということ
はできないから,原告の主張を採用することはできない。
また,原告は,本件商標の基礎登録商標に基づく主張や欧州共同体商標意匠庁な
ど各国における本件商標についての判断に基づく主張をするが,商標の出願及び登
録の要件は各国において定められるべきものである(パリ条約6条1項及び3項)
から,他国における本件商標についての判断と同じ判断をしなければならない理由
はないし,本件商標の基礎登録商標に関する前記1(2)の事実は,スペイン国の商標
についてのものであって,直ちに我が国の商標について判断を左右するものではな
い。
さらに,原告は,商標法50条の趣旨から本件商標は取り消されるべきではない
と主張するが,商標法50条の趣旨が原告主張のとおりであるとしても,本件商標
と社会通念上同一の商標の使用が認められない以上,本件商標は取消しを免れない
のであって,商標法50条の趣旨によって左右されるものではない。
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2017.08.11
平成29(行ケ)10017 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年7月24日 知的財産高等裁判所
8区分の指定商品・役務の商標権について、9件の不使用取消審判を請求するのは取消権の濫用だと主張しましたが、裁判所は認めませんでした。
以上指摘した点も踏まえて検討すると,まず,原告が依拠する法50
条2項及び56条の規定は,複数の指定商品等を対象とした1つの不使
用取消審判請求がされた場合,その対象となった指定商品等のいずれか
について使用事実の立証がされれば,当該請求全部について不使用取消
しを免れることと,1つの不使用取消審判請求の一部について請求を取
り下げることはできないことを定めるにとどまり,不使用取消審判請求
をする場合に,審判請求の仕方に制約があるのかどうか(すなわち,原
告が主張するとおり,審判請求をする場合には,1つにまとめて請求を
しなければならないのかどうか)については,何ら触れていない。そも
そも,仮に請求の仕方(すなわち審判請求権の行使の仕方)に制約があ
るのであれば,その旨が明示的に定められるべきであることを考慮する
と,そのような明示的な定めがされているわけではない以上,上記各規
定により,原告主張のような制約が課されたと解することは困難である。
実質論として考えてみても,前記のとおり,3年以上使用されていない
商標登録は取り消されるべきであり,また,不使用取消審判手続におい
ては,商標の使用について一番よく知り得る立場にある被請求人が商標
使用の事実について証明責任を負うべきであるというのが不使用取消審
判制度に関する法の趣旨である以上,多数の指定商品等について商標登
録を得た商標権者は,不使用取消審判請求を受けた場合に相応の立証の
負担等を負うことを予期すべきものである。これに対し,原告の主張を\n敷衍すると,不使用取消審判請求をされた被請求人の立証の負担や経済
的負担への配慮を優先し,多数の指定商品等のうち1つでも使用の事実
を立証すれば,全ての指定商品等について不使用取消しを免れるという
のが法の趣旨であることになるが,そのような解釈は本末転倒であって,
到底成り立たないものであるといわざるを得ない。
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◆平成29(行ケ)10016等
◆平成29(行ケ)10027
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2017.07. 7
平成28(行ケ)10276 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年6月28日 知的財産高等裁判所
商標「Crest」(16類「印刷物」)について、不使用取消請求がなされ、審決は、「新潮クレスト・ブック」による使用で請求棄却しました。知財高裁(3部)もこれを維持しました。
商標法50条1項においては,使用の対象となる商標について,「登録商標
(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びロー
マ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる\n商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会
通念上同一と認められる商標を含む。…)」と規定されており,「登録商標と
社会通念上同一と認められる商標」も含むものとされている。
そこで,使用商標B−1が,本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」
といえるか否かについて検討する。
(1) 本件商標は,「Crest」の欧文字を標準文字で横書きしてなる商標で
あるところ,「crest」の語は,「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの
意味を有する英語として認識されるものであるから,本件商標からは,通常
の英語読みに従った「クレスト」の称呼が生じるとともに,その英語の意味に
従った「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの観念が生じるものといえる。
(2) 他方,使用商標B−1は,「新潮クレスト・ブックス」の漢字及び片仮名
を横書きで一連表記してなるものであるところ,「新潮」の文字と「クレスト\n・ブックス」の文字は,漢字と片仮名という文字種の違いから,明確に区別し
て認識されるものである。また,「クレスト」の文字と「ブックス」の文字に
ついても,その間が「・」によって区切られていることに加え,後述のとおり,
「ブックス」の語が「書籍」を表す英語の片仮名表\記として明確に認識される
ことからすると,同様に区別して認識されるものといえる。してみると,使用
商標B−1は,「新潮」,「クレスト」及び「ブックス」の3つの独立した語
が組み合わされて表記された商標として認識されるものといえる。\n そこで,以上を前提に,使用商標B−1を「書籍」についての商品識別標識
として見てみると,まず,「新潮」の漢字部分は,我が国における著名な出版
社である被告の略称として広く知られているものであり,「書籍」に使用され
た使用商標B−1に接した取引者・需要者は,「新潮」の漢字部分を,当該書
籍を発行する出版社が被告であることを表示するものにすぎないと認識する\nから,この「新潮」の漢字部分は,商標の同一性という観点からは重要性を持
たない部分といえる。
次に,使用商標B−1のうち,「ブックス」の片仮名部分は,「本,書籍」
を意味する英語「book」の複数形を片仮名表記したものであることが明\nらかである。また,「書籍」の出版の分野においては,特定のシリーズに属す
る書籍群に,特定のブランド名と「ブックス(books)」の語を合わせた,
「○○ブックス(books)」の名称を付けて出版,販売することが一般的
に行われていることが認められる(甲10,12,14,16,18,20,
22,23,80〜82,84〜87,89,91,92,94〜99,10
1〜104(枝番を含む。))。してみると,「書籍」に使用された使用商標B
−1に接した取引者・需要者は,「ブックス」の片仮名部分を,これが付され
た商品が「書籍」であること,あるいは,その商品が「特定のシリーズに属す
る書籍」であることを表示するものとして認識するといえるから,これも商\n標の同一性という観点からは重要性を持たない部分であるといえる。
他方,「クレスト」の片仮名部分は,「(ものの)頂上,山頂,波頭」など
の意味を有する英語「crest」を片仮名表記したものとして認識され,そ\nの意味に従った観念を生じるものといえるところ,このような「クレスト」の
語は,「書籍」との関係で特段の結びつきを有するものではないから,「書籍」
に係る商品識別標識としての機能を果たし得るものであり,商標の同一性を\n基礎づける中核的部分といえる。
この点,原告は,被告自らがそのホームページ等で「クレスト・ブックス」
を一体として使用していることを理由に挙げ,取引者・需要者からは,「クレ
スト・ブックス」で一つの商標として理解され認識される旨主張する。しか
し,「書籍」に関する広告等において,「クレスト・ブックス」が一連表記さ\nれていたとしても,これに接した取引者・需要者からは,「クレスト」と「ブ
ックス」が独立した語として認識され,そのうち,特に「クレスト」の部分が
独立して自他商品の識別標識の機能を発揮する部分として認識されることは\n上記で述べたとおりであるから,原告の主張は採用できない。
(3) 以上のとおり,使用商標B−1のうち,商標の同一性を基礎づける中核的
部分として把握される「クレスト」の片仮名部分を,本件商標と比較すると,
両者は,片仮名と欧文字という文字種の違いからくる外観上の相違はあるも
のの,「クレスト」の称呼及び「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの観念を
いずれも共通にするものであることからすると,使用商標B−1は,本件商
標と社会通念上同一の商標であると認めるのが相当である。
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2017.06.16
平成29(行ケ)10033 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年6月8日 知的財産高等裁判所
不使用であるとして審決が取消されました。多機能物品(十\徳ナイフ)について、一部の機能の商品に関しても使用がなされていたと判断されました。また、使用形態として別の文字とともに使用していましたが、社会通念上同一の商標と判断されました。\n
前記1(5)のとおり,本件商品1〜3は,革製のケースであって,スイスアーミー
ナイフに適合するものとして販売されているものの,その形状は略直方体であって
スイスアーミーナイフ以外の物を収納することも可能であること,その販売形態は,\n収納物を伴うことなく本件商品1〜3のみで購入することが可能であること,スイ\nスアーミーナイフには,刃物であるナイフ等以外に,栓抜きやつまようじなど,他
の物も組み込まれていることからすると,第18類「small persona
l leather goods」(革製の小さな身の回りの物)に該当するという
ことができる。
・・・・
(2) 被告は,ビクトリノックス日本支社が使用していた標章には,いずれも「W
ENGER」の文字の右上にRマークが付されているから,同標章は図形単体では
なく,図形と文字を組み合わせた一体の標章として使用していたものであり,本件
商標と社会的同一性はない,と主張する。
しかし,前記1(2)(5)のとおり,本件商標と「WENGER」の欧文字とは左右
に配されており分離可能であること,ビクトリノックス日本支社のウェブサイトに\n表示されたものは,本件商標が赤で「WENGER」の欧文字は黒であることから\nすると,本件商標と「WENGER」の欧文字とは分離して観察することができる。
また,Rマークについても,登録商標を示すものとして分離して観察する
ことができる。これらのことからすると,本件商標と社会通念上同一の商標が使用
されていたと認めることができる。したがって,被告の主張は,採用することがで
きない。
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2016.12.14
平成28(行ケ)10093 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成28年11月7日 知的財産高等裁判所
商標「KIRIN」について、使用していたとの審判が維持されました。原告は、小笠原製粉株式会社で、ウェブサイトによると、「キリンラーメン」という商品を販売していますね。
原告は,再使用許諾契約書は,1)提出された写しの契印の印影が各ペー
ジで1つずつであり,しかも半分にすぎず,押印原本も提示されていない,2)再使
用許諾契約書が原使用許諾契約書に基づくものであれば,原使用許諾契約書が先に
作成されるはずだが,契約日は再使用許諾契約書が原使用許諾契約書に先行してお
り,契約期間も,原使用許諾契約書が1年間であるのに対し,再使用許諾契約書は
半年間であることとは不自然である,3)原使用許諾契約書で被告がキリンホールデ
ィングスに対して再使用許諾を認めた商標と,再使用許諾契約書でキリンホールデ
ィングスがキリン協和フーズに使用許諾した商標とが一致せず不自然である,4)原
使用許諾契約書における使用許諾対象商標「KIRIN」に「麒麟」「キリン」が含
まれるとすることは,VIマニュアルの「KIRIN/キリン/麒麟」の使用区分
についての記載と整合しないし,再使用許諾契約書において「KIRIN」等を態
様の一部に含む商標及び「KIRIN」等と類似する商標について使用許諾するこ
とは,VIマニュアルの「KIRIN」を変形したものの使用禁止に反する,と主
張する。
しかし,1)契約書の契印を,契約当事者全員が必ず行うという商習慣を認定する
に足る証拠はなく,審判手続において提出する証拠の写しを作成する際,契印のみ
が存在する契約書用紙の裏のコピーを省略することも,不合理ではない。
また,2)原使用許諾契約書の契約締結日について,被告は,平成25年12月1
日時点における使用許諾対象商標,再使用許諾先及び対価の確認,確定手続を当事
者間で完了した段階で契約締結したため,締結日が同年12月20日となったと主
張しており,そのような主張内容は不合理ではないことに加え,キリン協和フーズ
による本件商標を含む被告所有商標の使用が,三菱商事への株式譲渡前から継続さ
れていたのであって,新たに被告らの有する商標の使用を開始させるものではない
ことからすれば,契約締結日が原使用許諾契約書と再使用許諾契約書とで異なるこ
とは不自然ではない。原使用許諾契約書は,再使用許諾契約書の根拠となるもので
あり,前者が後者より契約期間が長いことは,不合理ではない。
さらに,3)原使用許諾契約書と再使用許諾契約書との間で,許諾対象商標に文言
上の齟齬はあるが,許諾対象商標に「麒麟」「キリン」及び「きりん」が含まれる再
使用許諾契約書が作成された後に原使用許諾契約書が作成された上で,その許諾対
象商標が文言上「KIRIN」等となっていること,被告,キリンホールディング
ス及びキリン協和フーズとの間で,許諾対象商標についての争いがあったとは認め
られないことからすれば,原使用許諾契約書の「KIRIN」には,「麒麟」「キリ
ン」及び「きりん」が含まれるものと被告及びキリンホールディングスとが合意し
ていたものと解することができる(甲54参照)。
◆判決本文
◆関連事件です。
平成28(行ケ)10094
◆平成28(行ケ)10095
◆平成28(行ケ)10096
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2016.09. 8
平成28(行ケ)10048 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成28年8月25日 知的財産高等裁判所
知財高裁は、「知識の教授」に含まれる「リスクマネジメント研修」について,本件商標を不使用と認定し、使用していたとした審決を取り消しました。
問題となった商標は、「ファイナンシャル・リスクマネジャー」と「FRM」の2段併記商標です。
当裁判所は,本件配布行為をもって,本件審判請求の登録前3年以内に日本
国内において,商標権者が,本件取消請求役務のうち,「知識の教授」に含ま
れる「リスクマネジメント研修」について,本件商標と社会通念上同一と認め
られる商標を使用していたことを証明したものと認められるとした本件審決の
判断は誤りであり,原告主張の取消事由2には理由があるから,その余の点に
つき判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきものと判断する。
・・・
以上のとおり,被告は,遅くとも平成19年8月には,自社が開講する
講座について,受講希望者向けに講座の概要等を説明するための資料とし
て,FRM養成講座についての記載がある案内書を作成し,その後,平成
20年6月及び平成23年10月に同案内書を改訂したが,これらの改訂
後の案内書においても,FRM養成講座についての記載はそのまま残され
ていることが認められる。そして,このような事実からすれば,被告は,
要証期間である平成23年11月13日以降においても,FRM養成講座
についての記載がある本件案内書を,受講希望者らへの案内資料として保
有し,これを受講希望者らに配布するなどして使用していたことが推認さ
れるものといえる。
2 「知識の教授」の役務についての使用の有無について
原告は,仮に本件配布行為が認められるとしても,要証期間内に,被告が
FRM養成講座を実際に開講し,又は,開講の準備を整えていたとの事実が
認められないことからすれば,本件商標と社会通念上同一の商標を,「知識の
教授」という役務について使用したものとは認められない旨主張するので,
以下検討する。
要証期間内に,被告がFRM養成講座の名称を使用した講座を開講して
いた事実が認められるか否かについて
ア 証拠上認められる客観的事実について
前記第2の2のとおり,平成22年12月にプロフェッショナル協
会が設立され,同協会が,コンサルタント協会に代わって,被告が開
講する講座に対応する資格の認定・管理等を行うこととなった際,被
告は,関係者らに対し,甲2書面をもって,従前コンサルタント協会
が認定・管理していたFRMの資格について,その名称をFRCに変
更した上で,プロフェッショナル協会において認定・管理していく旨
を通知している事実が認められる。他方,その後,被告が,関係者ら
に対し,上記通知に係る事項を訂正したり,変更したりする旨の通知
をした事実をうかがわせる証拠はない。
しかるところ,甲2書面の上記内容は,被告がそれまで開講してき
たFRM養成講座についても,上記資格名の変更に対応した名称に変
更することを意味するものといえるから,被告が甲2書面による通知
を行い,その後これを訂正・変更する通知も行っていないということ
は,特段の事情がない限り,被告が,平成23年以降は,FRM養成
講座の名称を使用した講座を開講していないことを示す事情というこ
とができる。
また,次のような事情も,被告が平成23年以降FRM養成講座の
名称を使用した講座を開講していないことをうかがわせる事情という
ことができる。
すなわち,被告が開設するホームページの記載をみると,平成18
年の時点では,被告が開講する講座名として,1)リスクコンサルタン
ト(マネジャー)養成講座・基礎課程,2)リスクコンサルタント(マ
ネジャー)養成講座・上級課程,3)CRO養成講座に加え,4)FRM
ファイナンシャル・リスクマネジャー養成講座の記載がある(甲6)
のに対し,平成23年及び平成24年の時点では,上記1)ないし3)の
記載はあるものの,「FRMファイナンシャル・リスクマネジャー養成
講座」の記載はない(甲8,9)。また,平成25年,平成26年及び
平成28年の時点においても,「リスクマネジメント・プロ養成講座・
基礎課程」,「リスクマネジメント・プロ養成講座・上級課程」等の記
載はあるものの,FRM養成講座の記載はない(甲10ないし13,
72)。
このように,被告が開設するホームページをみる限り,平成23年
以降,被告がFRM養成講座の名称を使用した講座を開講している形
跡は何らみられず,かえって,被告のホームページでは,被告が開講
する他の講座については継続して紹介されているのに対し,FRM養
成講座については,被告が当該講座を開講していたことが明らかな平
成18年当時には紹介されていたのに,平成23年以降には全く紹介
されていないことからすれば,平成23年以降は,被告において,F
RM養成講座の名称を使用した講座を開講していないことがうかがわ
れるものといえる。
以上のとおり,証拠上認められる客観的・外形的な事実をみる限り,
本件案内書中にFRM養成講座の記載があること以外には,被告が平
成23年以降にFRM養成講座の名称を使用した講座を開講している
形跡は見当たらず,むしろ,そのような講座を開講していないことが
積極的にうかがわれるものといえる。
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2016.07.29
平成28(行ケ)10004 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成28年7月27日 知的財産高等裁判所
登録商標について不使用かどうかが争われました。知財高裁は使用していたとした審決を維持しました。認められたのは、パンフレット配布、ウェブサイトの使用、でんぴょううしていたなどの使用事実の理由も示されています。ただ、下記理由は、個人的には納得しがたいです。これだけコンピュータ化された時代に、印刷済み伝票に商品名を、ましてや(R)まで手書き追記するものなのでしょうか?
前記認定事実(7)のとおり,被告は,平成26年4月1日,東芝ホームアプ
ライアンスに対し,品名を「ASY−PWB−BRUSH」とする商品を100個
納品しているところ,東芝ホームアプライアンスにおいては,品名を「ASY−P
WB−BRUSH」とする商品は,制御基盤に関する商品を指すのであるから(甲
15),被告は,東芝ホームアプライアンスに,制御基盤を100個納品したもの
と認められる。
イ 次に,前記認定事実(7)のとおり,被告と東芝ホームアプライアンスとの間
で授受された伝票には,品名略号欄に「ASY−PWB−BRUSH」との印字だ
けではなく,「クリーンマスター(R)」との手書文字も記載されている。
また,被告と東芝ホームアプライアンスとの間で授受された伝票のうち,「検査
表D(検査控)」と題する伝票,「受入/検収票C(受入控)」と題する伝票は,\n被告が,東芝ホームアプライアンスに,制御基盤の納品時に交付したものと認めら
れる(甲16,乙10,16)。そして,これらの伝票は,東芝ホームアプライア
ンスが管理していたものであるから,被告が,原告との紛争に備えるために,わざ
わざ東芝ホームアプライアンスから,これらの伝票の返還を受け,「クリーンマス
ター(R)」と手書文字を記載したとは考えにくい。
したがって,被告は,東芝アプライアンスに制御基盤を納品する際,その伝票に,
当該制御基盤に関して「クリーンマスター(R)」との標章を付したものと認められる。
ウ よって,被告は,平成26年4月1日,少なくとも1社に対し,制御基盤に
関する取引書類に,「クリーンマスター(R)」なる標章を付して配布したものである。
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2016.06.28
平成27(行ケ)10202 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成28年6月21日 知的財産高等裁判所
変わった事件です。不使用取消審判が当事者適格の欠如として取り消されました。出願人と原簿の登録名義人が異なるというものです。
前記第2「前提事実」1記載のとおり,本件商標は,昭和38年5月
24日に登録出願,昭和39年8月18日に設定登録されたものであるが,商
標公報(甲40)によれば,その出願人は「株式会社伊勢半 東京都千代田区
<以下略> 代表者 A」であることが認められる。他方,商標登録原簿(甲
41)によれば,現在,本件商標につき「東京都千代田区<以下略> 株式会
社伊勢半」を商標権者として登録がされているところ,その登録年月日は「昭
和39年8月18日」とされていることが認められる。
これらの事情を総合的に考慮すると,本件商標の商標権者は訴外会社であっ
て,原告ではないと見るほかない。そうである以上,本件審判請求は,正しく
は商標権者である訴外会社を被請求人としなければならないところ,原告を被
請求人としてされた不適法なものであり,かつ,その補正をすることはできな
いことから,これを却下すべきであったにもかかわらず,本件審決がこれをし
なかったことは違法であり,取り消すのが相当である。
これに対し,被告はるる主張するが,本件商標の設定登録が行われた昭和3
9年8月18日時点においては,原告は未だ設立されていなかったのであるか
ら,原告が,本件商標の商標権者として登録されたということはあり得ない事
柄であるといわざるを得ない。なお,冒頭で認定した各事実に証拠(乙1ない
し4)を併せると,昭和49年に本件商標の存続期間の更新登録がされた際,
誤って訴外会社ではなく原告が更新登録申請手続を行い,その当時,原告の商\n号が「株式会社伊勢半」,所在地が「東京都千代田区<以下略>」であって,
当初登録当時の訴外会社の商号,所在地と同様であったところから,特許庁長
官も,申請者が訴外会社とは異なることを看過して更新登録をしてしまった可\n能性はあり得るものと認められる(そのように考えれば,被告が主張する識別\n番号の点も,理解できることになる。)。しかし,商標権は,いったん設定登
録がされた後は,その存続期間が更新されていくだけであって,更新の際に,
新たな権利が設定・登録されるものではないから(商標法19条,20条参
照),更新手続が上記のように誤って行われたとしても,本件商標に係る商標
権者は,依然として訴外会社であったと解すべきものである。したがって,被
告の上記主張を採用することはできない。
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2016.05. 6
平成27(行ケ)10179 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成28年4月26日 知的財産高等裁判所
不使用ではないとした審決が維持されました。争点は、使用されていた商標は、登録商標と実質同一の商標か、さらに、使用していた商品が「電子計算機用プログラム」か否かでした。
そこで,本件使用商標が,本件商標と社会通念上同一の商標ということがで
きるかどうか,以下検討する。
(1) 「MFX」の文字部分が本件使用商標の要部に当たるか
ア 本件使用商標は,前記1(3)アのとおりの外観を有し,「MFX」の欧
文字,「−」の記号,「EV」の欧文字,「シリーズ」の片仮名文字が,
順次,横書き一段に記載されてなるものである。
そして,「MFX」の文字部分と「EVシリーズ」の文字部分は,「−」
(ハイフン)によって接続されているのに対し,本件使用商標を構成する\n文字の大きさには特段の差異はなく,また,上記ハイフン部分を除く各文
字の間隔にも特段の差異はないから,上記ハイフンの前にある「MFX」
の文字部分は,上記ハイフンの後の文字部分と対比して,外観上まとまっ
たものとして看取されるというべきである。
これに対し,上記ハイフンの後の「EVシリーズ」の文字部分は,「E
V」の文字部分それ自体には,出所識別標識としての特段の称呼や観念を
生ずるものではなく,むしろ,「連続性を持つ一連のもの」との意味を有
する日本語であることを容易に理解することができる「シリーズ」の文字
部分がその後ろに付されていることや,電子応用機械器具の取引分野にお
いては,それ自体としては必ずしも固有の意味を生じるものとはいえない
欧文字等の組合せを,商品の種別や型番を表す記号として用いることがあ\nることからすると,取引者,需要者において,「MFX」の語によって表\n象される一連の製品における個々の製品の種別や型番を表す語と理解する\nことができるというべきである。
イ 以上を総合すると,本件使用商標の「MFX」の文字部分は,本件使用
商標のその余の文字部分から分離して観察することが取引上不自然である
と思われるほど不可分的に結合しているものではなく,むしろ,電子応用
機械器具の取引者,需要者において,被告が製造販売する製品を表すひと\nまとまりの表示として認識するものと認められ,また,本件使用商標のそ\nの余の文字部分からは,出所識別標識としての称呼や観念は生じないから,
「MFX」の文字部分が独立して自他商品の識別標識として機能し得るも\nのであると認められる。
したがって,「MFX」の文字部分は,本件使用商標の要部であると認
められ,本件商標は,これと同一の文字からなるものであるから,本件使
用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
・・・・
前記1(3)によれば,被告は,要証期間内に,ワタキューセイモアに対し,
本件使用商標が表示された本件ソ\フトウェアのバージョンアップ版が格納され
たCD−ROMを引き渡したことが認められる。
かかる行為をもって,本件商標と社会通念上同一の商標を,本件審判請求の
対象となった指定商品に含まれる「電子計算機用プログラム」について使用し
たということができるかどうかについて,以下検討する。
(1) 本件集中管理装置と本件ソフトウェアの関係について\nア 前記1(1)アのとおり,本件集中管理装置の取扱説明書には,「装置全
体」の説明として,パソコン本体及びその周辺機器から構\成されるとの記
載があり,被告のウェブサイト(甲3,甲26の1及び2)や本件集中管
理装置のパンフレット(甲9),取扱説明書(甲8,25)には,パソコ\nン本体及びその周辺機器が納められたテーブルの写真や,その見取図が,
本件集中管理装置として掲載されている。
一方,本件集中管理装置の取扱説明書には,その冒頭付近で,「本管理
装置は,Microsoft®社のWindows®上で稼働するシステ
ムです。」として,本件集中管理装置の本質が,むしろソフトウェア(本\n件ソフトウェア)にあると受け取れるような説明がされている(1⑴イ)
ほか,その記述内容も,ソフトウェアの操作方法を説明したものと受け取\nることが十分に可能\なものになっている(甲8,25)。そして,被告が,
パソコン本体及びその周辺機器自体を製造しているとは認められず,これ\nらの機器は,専ら,被告が,他のメーカーから既製品を調達して組み合わ
せたものと認められる。さらに,これらの機器自体は,パソコン本体,キ\nーボード,ディスプレイ,マウス,通信アダプタ,プリンタ,無停電電源
装置といった,パソコンでソ\フトウェアを操作するために使われるありふ
れたものばかりである上,汎用のものであれば足りるのであって,本件集
中管理装置を構成する機器としての特有のハード面での仕様や性能\が,被
告によって付加されているとは認められない。そして,これらの機器が集
中管理装置としての前記1(1)イのとおりの機能を果たすためには,アプ\nリケーションソフトウェアである本件ソ\フトウェアが,パソコン本体にイ\nンストールされることが必要となる。
また,前記1(1)オによれば,本件集中管理装置は,最新機器に対応す
るための機能追加を,本件ソ\フトウェアのバージョンアップ版を格納した
CD−ROMを用いた本件ソフトウェアのバージョンアップという形態で\n行っているものと認められるが,上記のような形態による本件集中管理装
置の機能追加に当たって,パソ\コン本体及びその周辺機器自体の更新が必
須のものであると認めるに足りる証拠はない。
イ そうすると,本件集中管理装置の機能,性能\は,専ら本件ソフトウェア\nの機能,性能\に依存しているものであって,むしろ,その本質はソフトウ\nェアである本件ソフトウェアにあるということも可能\である。そして,本
件集中管理装置を最新機器に対応させるためには,少なくとも本件ソフト\nウェアのバージョンアップが必要であり,この場合には,本件集中管理装
置が所要の機能を果たすための必須の構\成要素である本件ソフトウェアの\nバージョンアップ版が格納されたCD−ROMが顧客に販売されるから,
かかるバージョンアップ版を対象とする独立の取引を観念することができ
る。
以上によれば,本件ソフトウェアのバージョンアップ版は,本件集中管\n理装置の単なる付属品ではなく,それ自体を独立した商品として観念する
ことができるというべきである。
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2016.03.30
平成27(行ケ)10203 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成28年3月24日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が維持されました。争点の一つが、3段併記の商標のうち、一部の文字列の使用が50条の使用に該当するかです。裁判所は審決と同様に、社会通念上同一とはいえないと判断しました。
ア 本件使用商標1は,別掲1のとおり,最上段に「Rubotan」の欧
文字,その下段に「LINE」の欧文字,さらに,その下段に「LIQU
ID」の欧文字,「ルボタン」の片仮名文字及び「ライン」の片仮名文字
を三段に配してなる五段の標章である。
上段二段の「Rubotan」及び「LINE」の欧文字は,下段三段
の「LIQUID」,「ルボタン」及び「ライン」よりも文字が大きいこ
と,「LIQUID」の下部の「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字
は,同じ大きさ,同じ書体でまとまりよく併記されていることからすると,
「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字は,「Rubotan」及び
「LINE」の欧文字の表音を示したものとして,本件使用商標1から\n「ルボタンライン」の称呼が自然に生じるものと認められる。「LIQU
ID」の欧文字は,「液状」の意味を有し,本件使用商品が液状であるこ
とを表示したものと理解することができ,しかも,上段二段の「Rubo\ntan」及び「LINE」の欧文字よりも文字が小さいことからすると,
出所識別標識としての機能は弱いものといえる。\n一方で,「Rubotan」の欧文字と「LINE」の欧文字は,上下
2段にまとまりよく併記されており,「Rubotan」の欧文字は筆書
き風の書体であり,「LINE」の欧文字は「Rubotan」の欧文字
よりもやや文字が大きいが,「Rubotan」の欧文字はゴシック体の
「LINE」の欧文字とは異なる筆書き風の書体であることからすると,
外観上,いずれかが顕著に際立っているということはできない。
加えて,本件使用商品は,販売名を「ルボタン ライン」とする「アイ
ライナー」であり(前記(1)),本件使用商品の宣伝広告においては,本
件商品の画像とともに「ルボタンライン」,「ルボタンライン リキッド
アイライナー」,「ルボタンアイライナー」などと表記され(甲22ない\nし27),本件証拠上,本件使用商品について,「LINE」の部分のみ
をその出所の識別標識として使用していた事情は認められない。
イ 以上を総合すると,本件使用商標1の構成中の「Rubotan」及び\n「LINE」の欧文字は,分離して観察することが取引上不自然であると
思われるほど不可分的に結合しているものではないが,需要者,取引者に
おいては,ひとまとまりの表示として認識するものと認められるから,\n「LINE」の欧文字部分が独立して自他商品識別標識として機能し得る\nものということはできない。
したがって,「LINE」の欧文字及びその表音を示した「ライン」の\n片仮名文字が,本件使用商標1の要部に当たるとの原告の主張は採用する
ことができない。
ウ この点に関し,原告は,化粧品業界においては,書体,大きさ,段等を
異にする2以上の構成要素からなる商標については,それぞれの構\成要素
について商標登録を受けて使用するのが一般的であるという取引の実情が
あり,このような取引の実情を考慮すると,「LINE」の欧文字が本件
使用商標1の要部に当たる旨主張する。
しかしながら,個々の商標の要部をどのように認定するかは,需要者,
取引者の認識等を前提に個別的に検討すべき問題であり,原告が主張する
ような取引の実情があるからといって直ちに「LINE」の欧文字が本件
使用商標1の要部に当たることの根拠となるものではない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
エ 以上のとおり,本件使用商標1の構成中の「LINE」の欧文字及び\n「ライン」の片仮名文字は本件使用商標1の要部に当たるものと認められ
ないから,本件使用商標1は本件商標と社会通念上同一と認められる商標
であるとの原告の主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。
(3) 本件使用商標2と本件商標の社会通念上同一性について
原告は,要証期間内に,別掲2のとおり,本件使用商品を6個梱包するた
めの包装用容器(本件包装用箱)に,「 」の片仮名文字,その
下段にゴシック体で大きく表された「ライン」の片仮名文字を表\示して使用
していたものであり,「ライン」の片仮名文字の標章(本件使用商標2)は,
本件商標と社会通念上同一性のある商標であるから,原告又は通常使用権者
であるエリザベスは,要証期間内に,本件商標と社会通念上同一と認められ
る商標(本件使用商標2)を本件使用商品に使用した旨主張する。
しかしながら,前記(2)ア認定のとおり,本件使用商品は,販売名を「ル
ボタン ライン」とする「アイライナー」であり,本件使用商品の宣伝広告
においては,本件商品の画像とともに「ルボタンライン」,「ルボタンライ
ン リキッドアイライナー」,「ルボタンアイライナー」などと表記され,\n本件証拠上,本件使用商品について,本件使用商標1の構成中の「LIN\nE」の部分のみをその出所の識別標識として使用していた事情は認められな
いこと,本件包装用箱は,本件使用商品を6個梱包するための包装用容器で
あること(甲95)に照らすと,本件包装用箱に接した需要者,取引者は,
本件包装用箱に付された別掲2の「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字
を,ひとまとまりの標章として認識し,上記標章から「ルボタンライン」の
称呼が自然に生じるものと認められるから,「ライン」の片仮名文字のみが
独立して自他商品識別標識として機能し得るものということはできない。\n
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2015.10.26
平成27(行ケ)10032 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成27年9月30日 知的財産高等裁判所
指定商品「コーヒー」について「ヨーロピアン」が商標として機能する使用であるかが争われました。知財高裁は、「他の自他商品識別機能\の強い商標と併用されることなく,単独で使用され,かつ,他の文字に比べると大きく,商品の目立つ位置に表示され,さらに(R)が付されて表示されている場合には、書体の違いおよび(R)の記載があり・・」なので、需用者は一応自他商品識別機能を有する商標と認識すると判断しました。原告はコカコーラです。
このような例について考察すると,「ヨーロピアン」の語は,他の自他商品識別機
能が強い商標と併用されてコーヒーやコーヒー豆に使用されている場合には,単に\nコーヒーの品質を表示するだけであり,自他商品識別機能\を有する商標として使用
されているものとは認めることはできない場合が多い,ということができる。
(2) これに対し,本件包装袋には「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章が
付されていることは前記認定のとおりである。本件包装袋には,このほかに,「無糖」,「お湯を注ぐだけ」との表示と「ホットコーヒーが入ったコーヒーカップの図柄」\nとが表示されているだけであり,これらが本件商品の品質や内容の単なる説明であ\nって,商標として表示されているものではないことは明らかであり,本件商品には,\nほかに自他商品識別機能を有する商標は使用されていない。そして,本件包装袋に\nおける「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章は,いずれも同じ書体で同じ大
きさの文字で,他の文字に比べると大きく,包装袋の表面上部の目立つ位置に表\示
され,さらにが付されて表示されているものである。これらの本件包装袋に\nおけるが登録商標であることを示す記号として広く使用されていることを考慮すると,取引者及び需要者は,本件包装袋における「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章が,本件商品の商標として本件包装袋に表示されていると認識し,理解するほかなく,その観念も「ヨーロッパ風のコーヒー」とかあるいは「深煎りの豆を使用したコーヒー」,「苦味が強いコーヒー」又は「コクが強いコーヒー」として認識されるものと認められる。\n(3) 以上によれば,「ヨーロピアン」との標章は,コーヒーあるいはコーヒー豆
に使用されている場合は,ほかに強い自他商品識別機能を有する商標と併用されて\nいるときには,単なる品質を表示するものとして使用されていると解される場合が\n多いものの,本件包装袋における「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章のよ
うに,他の自他商品識別機能の強い商標と併用されることなく,単独で使用され,\nかつ,他の文字に比べると大きく,商品の目立つ位置に表示され,さらにが\n付されて表示されているときには,それ程強いものではないけれども,一応自他商\n品識別機能を有する商標として使用されているものと認められる。\n
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2015.10. 6
平成27(行ケ)10086 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成27年9月30日 知的財産高等裁判所
不使用であると認定した審決が取り消されました。
登録商標は,上段に「ハイガード」下段に「HIGUARD」を配した商標です。使用商標は「ハイガード」でした。審決では「HIGUARD」は造語であり,特定の観念を有しないのに対し,上段の「ハイガード」のみが表示された場合には,「high guard」の欧文字を想起し,その表音を表\記したものと容易に理解し,「ハイガード」の片仮名は,「高いガード(保護)」,すなわち「商品を守る保護の程度が高い」との観念を有するとして、同一ではないと判断しました。裁判所は、同一の称呼及び観念が生ずると判断しました。
片仮名の「ハイガード」から生ずる観念について
片仮名の「ハイガード」は,それ自体が辞書等に登載された既成の用語
として特定の観念を有するものではない。
しかし,「ハイ」の部分は,英語の「high」に由来し,「程度の高
いこと。高度。高級。」などの意味を有する外来語として,また,「ガー
ド」の部分は,英語の「guard」に由来し,「警戒。監視。防御。」
などの意味を有する外来語として,いずれも一般的に使用されていること
(広辞苑第六版),また,片仮名の「ハイ」は,例えば,「ハイスピード」,
「ハイジャンプ」,「ハイクラス」などのように,その後に続く外来語と
結合して一連表記され,「高い○○」,「高度な○○」の意味で使用され\nる用例が一般的にみられること(広辞苑第六版)からすれば,本件審判請
求に係る指定商品である第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層
シート,繊維と貼り合わせたプラスチックシート,シート状・フィルム状\n・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品,その他のプラスチック
基礎製品」に係る取引者,需要者が,片仮名の「ハイガード」からなる商
標に接した場合には,これを上記のような意味を有する「ハイ」の語と「ガ
ード」の語が結合した用語として認識すると考えられる。そして,これを
前提とすれば,片仮名の「ハイガード」からなる商標からは,「高度な防
御」といった観念が生ずるというべきであり,更には,これが上記指定商
品に使用されることを想定すると,これらの商品の用途や性能等に関連し\nた印象が生ずることの結果として,「物を保護する程度が高い。」といっ
た観念が生ずるものと認めることができる。
イ 本件商標から生ずる観念について
片仮名の「ハイガード」からは,上記アのような観念が生ずるといえる
ところ,本件商標は,片仮名の「ハイガード」の下に「HIGUARD」
の欧文字が配されていることから,これらを全体としてみた場合にも,上
記アと同様の観念が生ずるといえるかが問題となる。
そこで検討するに,前記(1)のとおり,本件商標の上段の「ハイガード」
の片仮名文字は下段の「HIGUARD」の欧文字の表音を示したものと\nして両者は一体的に把握されるものといえるから,本件商標に接した取引
者,需要者においては,欧文字の「HIGUARD」について,片仮名の
「ハイガード」の「ハイ」の語に相応する「HI」の語と,片仮名の「ハ
イガード」の「ガード」の語に相応する「GUARD」の語とが結合した
ものであることを自然に認識するというべきである。
そして,このうち,「GUARD」の語が,「警戒。監視。防御。」等
の意味を有する英単語として,我が国においても一般的に認識されている
ことは,前記(1)のとおりである。
次に,「HI」の語については,「やあ。」などの呼び掛けを表す間投\n詞に当たる英単語としての用例が一般的ではあるが,そのような間投詞が
他の用語と結合して一連表記される用例は一般的ではないから,上記のよ\nうに「GUARD」の語と結合して一連表記された「HI」の語が,間投\n詞の「HI」の語であると認識されることは考え難い。他方,「hi」の
語には,「高い。高度な。高級な。」等の意味を有する英単語「high」
の略語としての意味もあり(甲34),しかも,「hi」の語には,例え
ば,高品位テレビジョンの日本方式の愛称として「hi−vision」,
高度先端技術を表すものとして「hi−tech(technology\nの略)」などのように,その後に続く英単語と結合して一連表記され,「高\n度な○○」の意味で使用される用例が,我が国においても一般的にみられ
るところである(甲17,18)。
以上のような「HI」の語及び「GUARD」の語に対する我が国にお
ける一般的な認識を前提とすれば, 上記アのような観念が生ずるものと認
められる片仮名の「ハイガード」の下に配された「HIGUARD」の欧
文字から構成された本件商標に接した本件審判請求に係る指定商品の取引\n者,需要者においては,これを上記用例と同様に,「HI」は「high」
の略語として認識し,あるいは「HI」の語から「high」の語を想起
又は連想し,本件商標は,「high」の語を表す「HI」と「警戒。監\n視。防御。」等の意味を有する英単語の「GUARD」とが結合して一連
表記されたものであって,上段の「ハイガード」の片仮名と同様の意味を\n有するものとして認識するというべきである。
してみると,本件商標からは,片仮名の「ハイガード」単独の場合と同
一の観念,すなわち,「高度な防御」あるいは「物を保護する程度が高い。」
といった観念が生ずるものと認めるのが相当である。
◆判決本文
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2015.10. 2
平成27(行ケ)10032 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成27年9月30日 知的財産高等裁判所
商標「ヨーロピアン」(指定商品コーヒーなど)について、「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章の使用が、商標法50条の使用に該当するのか争われました。知財高裁は使用に該当するとした審決を維持しました。
カタカナの「ヨーロピアン」は,「ヨーロッパに関するさま,ヨーロッパ人
に関するさま」を意味する語であり(甲4),英語の「European」は,「ヨーロッパ
の」,「ヨーロッパ人の」を意味する語である(甲5)。
そして,コーヒーやコーヒー豆については,その取引者等により「ヨーロピアン
スタイル」,「ヨーロピアンタイプ」,「ヨーロピアンテイスト」,「ヨーロピアンブレンド」,「ヨーロピアンロースト」あるいは「ヨーロピアン」などの表示や表\現が用
いられることが多く,これらは,いずれも深煎りの豆を使用したコーヒー,苦味が
強いコーヒー又はコクが強いコーヒーというコーヒーの味等の品質等を示すものと
して使用されている。また,コーヒーの一般の需要者も,これを受けて,「ヨーロピ
アン」の語が「深煎りの」とか「苦みが強い」「コクが強い」コーヒーとの意味であ
ると理解する者もいれば,中にはより漠然と「ヨーロッパ風のコーヒー」などと理
解する者もいるものと推認されるところである。(甲6ないし40,64,65,8
2ないし141,乙4)
そして,「ヨーロピアン」の文字をコーヒーあるいはコーヒー豆に使用している例
としては,例えば,ベルギーのロンバウツが「ROMBOUTS」商標を付して販
売している3種類のコーヒー豆には,それぞれ「ロイヤル」「マイルド」「ヨーロピ
アン」の3種類の品質を表す表\示が付されており,また,オフィスリングが「A4
カフェ12」商標を付して販売している3種類のコーヒー豆には,それぞれ「マイ
ルド」「シアトル」「ヨーロピアン」の3種類の品質を表す表\示が付されており,さ
らに,UCC FOODSが「UCC」の商標を付して販売しているコーヒー豆に
は,「ROYAL EUROPEAN」がその品質を表す表\示として付されており,
さらにまた,キーコーヒー株式会社が「KEY COFFEE」の商標を付して販
売しているコーヒー豆には,「ヨーロピアンリッチ」あるいは「ヨーロピアンテイス
ト」がその品質を表す表\示として付されており,そして,原告が「GEORGIA」
のブランドを付して販売している缶コーヒーには,「EUROPEAN」との表示が\nそのコーヒーの風味(品質)を表すものとして表\示されている例がある(甲28,
30,65,83,90,乙4)。
このような例について考察すると,「ヨーロピアン」の語は,他の自他商品識別機
能が強い商標と併用されてコーヒーやコーヒー豆に使用されている場合には,単に\nコーヒーの品質を表示するだけであり,自他商品識別機能\を有する商標として使用
されているものとは認めることはできない場合が多い,ということができる。
(2) これに対し,本件包装袋には「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章が
付されていることは前記認定のとおりである。本件包装袋には,このほかに,「無糖」,「お湯を注ぐだけ」との表示と「ホットコーヒーが入ったコーヒーカップの図柄」\nとが表示されているだけであり,これらが本件商品の品質や内容の単なる説明であ\nって,商標として表示されているものではないことは明らかであり,本件商品には,\nほかに自他商品識別機能を有する商標は使用されていない。そして,本件包装袋に\nおける「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章は,いずれも同じ書体で同じ大
きさの文字で,他の文字に比べると大きく,包装袋の表面上部の目立つ位置に表\示
され,さらにが付されて表示されているものである。これらの本件包装袋に\nおけるが登録商標であることを示す記号として広く
使用されていることを考慮すると,取引者及び需要者は,本件包装袋における「ヨ
ーロピアン コーヒー」の二段書き標章が,本件商品の商標として本件包装袋に表\n示されていると認識し,理解するほかなく,その観念も「ヨーロッパ風のコーヒー」
とかあるいは「深煎りの豆を使用したコーヒー」,「苦味が強いコーヒー」又は「コ
クが強いコーヒー」として認識されるものと認められる。
(3) 以上によれば,「ヨーロピアン」との標章は,コーヒーあるいはコーヒー豆
に使用されている場合は,ほかに強い自他商品識別機能を有する商標と併用されて\nいるときには,単なる品質を表示するものとして使用されていると解される場合が\n多いものの,本件包装袋における「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章のよ
うに,他の自他商品識別機能の強い商標と併用されることなく,単独で使用され,\nかつ,他の文字に比べると大きく,商品の目立つ位置に表示され,さらにが\n付されて表示されているときには,それ程強いものではないけれども,一応自他商\n品識別機能を有する商標として使用されているものと認められる。\n(4) 原告は,本件包装袋における「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章な
いしその中の「ヨーロピアン」との表示は,当該商品が,深煎りの豆を使用したコ\nーヒーであるなどというコーヒーの味等の品質を有するインスタントコーヒーであ
ると認識されるものであり,自他商品を識別する機能を有する商標としての使用と\n
は認められない,と主張する。
しかし,「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章からは,「ヨーロッパ風のコ
ーヒー」とか深煎りの豆を使用したコーヒー等の観念が生じるとしても,本件包装
袋には,同標章のほかには,自他商品識別機能を有する商標として表\示されたもの
はないだけでなく,「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章は,他の文字に比べ
ると大きく,本件包装袋の表面上部の目立つ位置に表\示され,さらにが付さ
れて表示されているのであるから,同商標に一応の自他商品識別機能\があることは
前記認定のとおりである。したがって,本件包装袋における「ヨーロピアン コー
ヒー」の二段書き標章の使用を自他商品識別機能のない商標としての使用であると\nまでいうことはできず,原告の主張を採用することはできない。
3 本件包装袋に使用された「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章は,本
件商標と社会通念上同一の商標であるか。
法50条1項は,登録商標の使用について,「書体のみに変更を加えた同一の文字
からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するもので\nあって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商
標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」の「使用」と規定し
ている。
法は,不使用登録商標を徒に許容することにより,他者の商標選択の範囲を不当
に狭めるとの弊害が生じることを防止するために,登録商標と社会通念上同一の商
標の使用をしていないときに,不使用登録商標取消審判の制度を設けている。この
ような同規定の趣旨に照らし,本件包装袋に使用されている「ヨーロピアン コー
ヒー」の二段書き標章が本件商標と社会通念上同一の商標といえるかについて,次
に判断する。
一般に,自他商品識別機能を有する登録商標を指定商品に使用する場合,その登\n録商標に加えて,自他商品識別機能を奏さない商品名等の文字を加えて表\示しても,
その付加された標章は自他商品識別機能を奏さないのが通常であるから,この場合\n
も,登録商標を単独で使用した場合と同様に,登録商標と社会通念上同一の商標の
使用と解すべき場合は多い。
被告が本件包装袋に使用している「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章に
ついても,「コーヒー」は,本件商品の名称に過ぎないものであるから,自他商品識
別機能が全くないことは明らかである。そうすると,本件包装袋に使用された「ヨ\nーロピアン コーヒー」の二段書き標章に一応の自他商品識別機能があるのは,「ヨ\nーロピアン」の標章によるものである。よって,本件包装袋における「ヨーロピア
ン コーヒー」の二段書き標章の使用は,「コーヒー」が商品の名称に過ぎない以上,
本件商標である「ヨーロピアン」を単独で使用した場合と同様に解することができ,
本件商標と社会通念上同一の商標の使用であると解すべきである。
◆判決本文
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2015.08. 7
平成27(行ケ)10057 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成27年7月30日 知的財産高等裁判所
商標「加護亜依」について、指定役務に不使用であるとした審決が維持されました。
すなわち,原告が,本件取消審判請求において提出した「navi☆Road U
SA」と題するウェブページ(乙1の1添付資料)の作成者と思われる「アメリカ
留学 ナビロード」という団体又は会社が本件商標の商標権者,専用使用権者又は
通常使用権者であるとは認められない上に,「加護ちゃん的・・・」という記載や加
護亜依の写真の掲載しかなく,これらの記載等が,本件商標と同一又は社会通念上
同一の商標の使用とは認められず,本件指定役務のいずれかに関する使用ともいえ
ない。また,原告の了解を取得せずにテレビ番組に出演したことに関して交わされ
た,原告と株式会社C.A.Lとの間の合意書(乙1の1添付資料)における「加
護亜依」という記載は,原告に所属するタレントの氏名を明らかにするために使用
されただけであって,本件指定役務である「放送番組の制作」に関し,出所識別標
識として表示されたものではなく,商標法2条3項各号に定める「使用」のいずれ\nにも該当しない。
さらに,原告は,本件取消審判請求において,商標不使用の正当事由として,加
護亜依が商標権使用に協力的でなかったことや,加護亜依のスキャンダルのために
使用ができなかったことを主張したが(乙1の2),これらは,いずれも原告の所属
タレント自身ないし同人と原告との関係に関する事情であって,いわば,原告の内
部的な紛争にかかわる事情にすぎないから,本件商標の不使用がやむを得なかった
といえる事情には該当せず,本件商標の不使用についての正当な理由とは認められ
ない。
◆判決本文
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2015.07.10
平成26(行ケ)10141 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成27年6月30日 知的財産高等裁判所
不使用取り消し審判の審決取消訴訟です。審決では登録商標の「使用」と認定され、知財高裁はこれを維持しました。
使用商標2の「ROYAL ENFIELD BULLET 500 EFI」の文字よりなる。構成中の「ROYAL ENFIELD」は,旧社名から派生した二輪自動車のブランド名であり(甲4),「500」は排気量の数字,「EFI」はエンジンにおける燃料噴射の電子制御システムである「Electronic Fuel Injection」の略語(甲11)等として理解されるから,外観上常に一体不可分のものとして認識されるとはいえず,「BULLET」の文字部分が,独立して要部として認識され得る。
本件商標と「BULLET」の文字部分は,その文字綴りを同一にするものであるから,使用商標2は,その他の文字を伴っている構成であるが,「BULLET」を要部として認識され得る以上,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。\n
◆判決本文
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2014.11. 7
平成26(行ケ)10113 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年10月29日 知的財産高等裁判所
原告による使用は、「出所識別標識としての機能を有しないから,「商標の使用」に該当しない。」として、不使用であるとした審決が維持されました。
被告は,平成21年3月16日件契約を同年6月30日をもって終了させるとして,本件契約を解除する旨の意思表示を行い,同意思表\示は,同年3月17日以後,原告に到達した。
われていないとして本件契約の解除の効力を争い,平成24年12月1日付けで,被告に対し,平成19年から平成23年までの日本における被告の各年当たりの販売に関するデータを提供した上で手数料を支払うよう要請するなどしながら,被告が本件契約の解除の効力が発生したと主張する平成21年6月30日以後も,少なくとも平成25年11月に至るまで,引き続き,本件見本帳や壁紙の現物見本等を顧客となり得る企業や事業者に提示し,被告の製造販売する商品である「壁紙」の販売促進,宣伝広告等の営業活動を継続した。(甲5〜12,乙3,4)
2 原告による本件商標の使用の有無
原告は,本件契約に基づき,本件使用商標を付した本件見本帳や壁紙現物見本等を携え,企業や事業所を訪問して商品「壁紙」の販売促進の営業活動を行っていることから,かかる原告の行為は,法2条3項1号,2号及び8号の使用行為に該当する旨主張する。
法50条2項によれば,法50条1項に基づいて商標登録を取り消すことについて審判の請求があった場合においては,その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求
に係る指定商品についての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り,商標権者は,その指定商品に係る商標登録の取消しを免れないところ,本件においては,商標権者である原告による「商標の使用」があるかが問題となる。
法において,「商標」とは,標章(文字,図形若しくは記号,若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合)であって,業として商品を生産し加工し証明し又は譲渡する者がその商品について使用するものであり(法2条1項柱書き,1号),使用される自己の特定の商品を他の商品から識別する,すなわち,商標の付された商品の出所を表示するためのものである。そして,法は,この商標を保護することによって,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発展に寄与し,併せて需要者の利益を保護することを目的とする(法1条)ものであるから,業として商品を生産し証明し又は譲渡する者がその商品について使用するものでない限り(法2条1項1号),「商標の使用」(法2条3項)には該当しないと解するのが相当である。したがって,他人が業として生産し証明し又は譲渡する「商品」について商標を付したとしても,当該商標は,自己の商品を他の商品から識別する出所識別標識としての機能\を有しないから,「商標の使用」に該当するものではない。
しかるに,前記1の認定事実によれば,原告は,被告との間で締結した本件契約に基づき,あるいは被告から本件契約解除の意思表示を受けた後も,解除の効力を争い,本件契約が存続しているとの見解に立って,本件契約の趣旨に基づき,本件使用商標を付した本件見本帳を顧客に対して提示するなどして,被告が製造販売する商品である「壁紙」の販売促進,宣伝広告等の営業活動を行っており,商品である「壁紙」の販売・引渡しは,専ら被告及び顧客間において行われている。このように原告は,業として商品である「壁紙」を生産し加工し証明し又は譲渡する者ではなく,本件見本帳に付された本件使用商標も,被告の商品である「壁紙」を他の商品から識別する出所識別標識としての機能\
を有するにすぎず,原告の商品を他の商品から識別する出所識別標識としての機能を何ら有しないものである。\nそうすると,そもそも原告が本件使用商標の付された本件見本帳を顧客に対して提示する行為は,原告が業として生産し加工し証明し又は譲渡する「商品」に関する広告に本件商標を付して展示する行為ということはできないから,法2条3項8号の商標の使用があったということはできない。
また,要証期間内において,原告が業として生産し加工し証明し又は譲渡する「商品」(本件取消請求に係る指定商品「コンデンサーペーパー,石綿紙,バルカンファイバー」及び「壁紙」)について,「商品又は商品の包装に標章を付する行為」(法2条3項1号),「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,又は電気通信回線を通じて提供する行為」(法2条3項2号)及び「商品…に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(法2条3項8号)があったことを認めるに足りる証拠はない。\n
◆判決本文
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2014.08.13
平成26(行ケ)10036 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年7月17日 知的財産高等裁判所
商標の譲渡先による使用が、通常使用権者による使用が争われました。珍しいことに商標の譲渡先が取り消し審判の請求人です。審決は不使用と認定しましたが裁判所はこれを取り消しました。
前記第2の3において認定したところに照らすと,本件商標権は,本件契約による譲渡の対象に含まれるものと認められる。もっとも,商標権の移転は登録しなければその効力を生じない(商標法35条,特許法98条1項1号)。そして,前記第2の3認定のとおり,被告は,本件商標権につき移転登録を経ていないので,上記認定のとおり本件商標権が本件契約による譲渡の対象となるとしても,被告が本件商標の商標権者であるということはできない。しかし,本件契約は,原告がその営業の全部を被告に譲渡することを内容とするもので,その一環として本件商標権の譲渡がなされるのであるから,被告が,譲渡を受けた営業を行うに当たり,本件商標権の移転登録前といえども本件商標を使用できることは当事者間の当然の前提であったものと解される。しかも,本件契約の文言上,本件商標権の移転登録前の被告による本件商標の使用を禁止する旨の明示的な定めはないこと,前記1において認定したところによれば,本件商標は実際には洗濯用洗剤に付されて使用されるものであることがうかがえるところ,このような商品は日々販売され得るものであることに照らすと,本件契約が,被告に対し,本件商標権の移転登録がなされるまでの間,本件商標を付した商品の販売の停止等まで求めることを内容とするとは解し難い。その上,前記1掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,被告は,実際に,本件契約締結後,本件商標権の移転登録を経ることなく本件商標ないしは本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用してきたと認められることも併せ考えると,本件契約は,本件商標権の移転登録がなされるまでの間,原告が,被告に対し,少なくとも本件商標権についての通常使用権を許諾する旨の黙示の合意を含むものであったと認めるのが相当である。
被告の主張について
ア 被告は,将来的に本件商標の権利者になり得る立場として被告自身の出所表示として本件商標を使用しており,本件においては本件契約後の被告による商標の使用によって得られる信用が原告に帰属するような状況とはなっていない以上,被告による本件商標の使用は,通常使用権者としての使用に該当するものではない旨主張する。\nしかし,被告は,本件契約上,本件商標権の移転登録がなされるまでの間,本件商標権についての通常使用権者の立場にあったものと認められるのは前記認定のとおりである。なお,商標法上,被告の主張する将来的に本件商標の権利者になり得る立場なるものを商標の使用権原として観念し得ると解することもできない。
また,被告が,原告とは異なる本店所在地を会社案内の冊子に記載するなどして(甲6),自らの出所表示とする意思で,前記1認定のとおり本件商標と社会通念上同一の商標を使用したとしても,本件商標の商標権者として登録されているのが原告である以上,被告による本件商標の使用は,通常使用権者としての使用にとどまるものというほかない。\nよって,被告の上記主張を採用することはできない。
◆判決本文
◆関連事件です。平成26(行ケ)10037
◆関連事件です。平成26(行ケ)10038
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2014.02.10
平成25(行ケ)10257 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年01月29日 知的財産高等裁判所
経過がややこしいです。被告は、「電球類及び照明器具」のうち、「LEDライト」について、前件不使用取消審決を請求しました。審判では、使用しているとして棄却されましたが、審取では、商品への使用ではないことを理由として、「LEDライト」のみ取り消し決定がなされ、審判では「LEDライトを除く、電球類及び照明器具」に変更されました。被告はさらに、「LEDライトを除く、電球類及び照明器具」についても不使用取り消しを求め、本件審決にて、不使用であると認定されました。本件は、その取消訴訟です。裁判所は審決を維持しました。
前記1(1)ないし(3)認定のとおり,被告は,光源としてLEDを使用する電球類及び青色防犯灯を販売する訴外会社の代表取締役であり,平成20年8月11日以来,継続して使用している「ECOLUX」の商標(被告商標)を登録してこれを訴外会社の商品に使用する目的で,前件審判及び本件審判を請求したものである。また,第一次訴訟における和解交渉の経緯は,前記1(4)認定のとおりであって,被告の提示した解決金の算定方法である「過去1年間の本件商標を使用した商品の売上額×5%×10年分」とは,被告が被告商標の使用を中止することの代償として,被告が第一次訴訟に勝訴し,被告商標が登録された場合の実施料相当額を求めたものである。和解が,一方当事者の提案に対して他方当事者が対案を提示するなどして互譲により紛争を解決するものであることからすれば,被告による上記和解案の提示は,一方当事者による提案として格別不合理なものとまでいうことはできず,まして被告が虚偽の事実に基づいて法外な和解金を要求した事実は認められない。そして,第一次判決が前記1(5)において認定したとおり,原告は,前件審判及び前件訴訟において,特定のLED電球の包装に本件商標を付したとの事実を主張し,それ以外の使用に関する事実を主張しなかったため,これを争う被告は,原告によるLED電球に関する本件商標の使用事実を否認して争えば足り,それ以上に「LEDランプ」との用語が,乾電池式LEDセンサーライト(本件商品)のようなものを含むものであることを主張する理由も必要もなかったのであって,被告が前件審判及び前件訴訟において,「LEDランプ」の用語についてこの点を明確に主張していないからといって,そのことは,何らかの意味において原告の信頼の根拠となるものではない。また,訴外会社は,平成19年7月10日頃には,LEDを光源として使用する青色防犯灯を販売するようになり,平成20年8月11日頃から,当該青色防犯灯に被告商標を付し継続して使用しており,被告は,前件審判の請求に当たり,「LEDランプ」との用語が光源としてLEDを使用する防犯灯を含む意図を有していたものである。そうすると,原告において,LED電球以外の照明器具については,前件審判の取消しの対象である「LEDランプ」には当たらないと信じ,本件商標を本件商品その他の照明器具について使用し,平成22年ないし平成24年6月までの期間に,総額16億円以上の費用を負担して宣伝広告を行い,その結果,取引界において,本件商標が原告の出所を表示するものとの幅広い信用が形成されていたとの原告の主張を前提としたとしても,被告による本件審判請求が権利の濫用に当たるということはできず,他に被告による本件審判請求が権利濫用に当たることを基礎付けるに足りる事実を認めることはできない。\n
◆判決本文
◆関連事件はこちらです。平成25(行ケ)10256
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2014.02.10
平成25(行ケ)10123 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年01月30日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判にて「使用」であると認定した審決が維持されました。
原告は,「シータヒーリング(Theta healing)」の表記は,説明会等の内容を示す一般名詞として使用されたものであり,役務の出所を示す識別表\示として使用されたものではないと主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,1)被告が平成21年9月に開催した心理療法によるカウンセリング等に係るセミナーのチラシには,上方に大きな文字で「The Theta Healing Seminar」と,その下に「シータヒーリング・セミナー」と目立つように表記され,また,同月に行ったセッションの申\込書には,「シータヒーリング・セッションのご案内」と記載されていること,2)被告が平成23年及び平成24年に開催した心理療法によるカウンセリング等に係る出張説明会及び出張説明会後の個人セッションの実施を告知したチラシには,上方に「シータヒーリング(Theta healing)○R 出張説明会開催決定!」又は「シータヒーリング(Theta healing)○R 勉強会開催のお知らせ」と記載され,また,個人セッション申込のための本件依頼書には,「シータヒーリング(Thetahealing)○R 依頼書」と記載され,登録商標であることを明示するための○R記号を付して用いていること等の事実を総合すれば,チラシや申込書,本件依頼書に記載された「Theta Healing」「シータヒーリング」「シータヒーリング(Theta healing)」(以下,以上を併せて「本件使用商標」という。)は,被告の提供に係る役務の出所を識別するための表示として使用されたことは明らかである。\n
◆判決本文
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2014.02.10
平成25(行ケ)10090 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年01月29日 知的財産高等裁判所
不使用取り消し審判にて、使用商標「DEROS JAPAN」、登録商標「デーロス」では、特許庁は不使用と判断しましたが、裁判所は、社会通念上の同一性があるとして、使用として認めました。
使用商標「DEROS JAPAN」は,全体が普通に用いられる字体で表示されているものであり,「DEROS」と「JAPAN」との大きさが異なる態様で使用されているほか(甲12の1,13の1),両者の間に空白がある態様で使用されており(甲12の1,13の1,24,25,28の1〜3,29,32〜34,35の1,36,37),また,「JAPAN」が我が国に広く了解されている英単語であり,個別の語として容易に理解されることから,「DEROS JAPAN」が,常に一連一体のものとして称呼・観念されるものとはいえない。ところで,前半の「DEROS」は,「デロウズ 帰還予定日(和)」に対応する英単語であるが,我が国において一般に馴染みのある単語ではなく,一方で,「DEROS」をローマ字読みした「デ ロ ス」は,我が国において一般に馴染みのあるギリシャ共和国のデロス島の和名(デロス島の正しい綴りは「DELOS」である。)と音を共通にし,そのように読まれることが多いものと理解される。したがって,「DEROS」は,ローマ字表記に準じるものとして「デロス」との称呼が生じ(観念は不明である。),後半からは「ジ ャ パ ン」の称呼と「日本」との観念が生じる。しかるところ,商標において片仮名とローマ字とを相互に変更する場合は,社会通念上の同一性を失わないものと解されるから(商標法50条1項かっこ書き),本件商標の使用の有無の検討に当たって比較対象すべき点は,「デロス ジャパン」(「DEROS JAPAN」)と「デーロス」(本件商標)との社会通念上の同一性の有無になるところ,上記aに説示したとおり,「ジャパン」を付加することによって取引者・需要者に別異の観念を抱かせるものでなく,また,長音化したもの(デーロス)とそうでないもの(デロス)とは,外観上の差異がわずかである上,いずれもが特定の観念を抱かせないものであるから,その称呼の差異によって別個の観念は生じないものと解される。以上からすると,「DEROS JAPAN」と本件商標(デーロス)とは,社会通念上の同一性を有するものと認めるのが相当である。(イ) 被告の主張に対して被告は,デーロス・ジャパンと被告との間をめぐる取引の実情を加味して社会通念上の同一性を判断すべき趣旨を主張する。そして,上記1(1)〜(3)の認定によれば,原告又はAは,「デーロス」と「デーロス・ジャパン」とに同一性がないと考えたことにより,「デーロス」の商号の使用禁止約定に応じて,Aが代表者を務める株式会社デーロスの商号を「株式会社デーロス・ジャパン」に変更したものと推測される。しかしながら,商標の使用の有無の判断に際しての,当該登録商標と使用商標との社会通念上の同一性の検討においては,両商標の有する客観的要素が重視されるべきであり(例えば,商標法50条1項かっこ書き所定の変更事由について,当事者が同一性を欠くものと認識したとしても,その認識により判断が左右されるものではない。),本件においても,被告が指摘する当事者間の極めて特殊な個別事情やその主観的認識状況のみでは,上記(ア)の認定判断を左右するものとはいえず,被告の上記主張は採用することができない。
◆判決本文
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2014.01.17
平成25(行ケ)10164 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年12月25日 知的財産高等裁判所
商標不使用取消審判にて「使用」と認定した審決が取り消されました。
本件各広告に表示されている「パールフィルター」や「PEARL FILTER」は,本件各広告では,いずれも中程度の大きさのフォントで,中見出しのような位置に表示され,その下に1,2行ないし数行の宣伝文言が記載されているものである(なお,本件広告A及びDではその1枚目ないし表\面ではなく,その2枚目ないし裏面に表示されている。)。そして,本件広告A,B及びDの「キラキラきらめくパールフィルター」(上下2段ないし1行)の表\示は,「キュッと詰まったメンソール」,「におい・煙り少ない」,「20本入りなのにコンパクト」(上下2段ないし1行)と同様の大きさのフォントと中見出し的な態様で表\示されている(本件広告Cの「PEARL FILTER」や「パールフィルター」も,その前後の記載文言等は異なるが,概ね同様である。)。そして,たばこ業界においては,フィルター付きたばこのブランドとして「○○フィルター」と称する例が存在し,世界的に販売数量の多いたばこブランドである「ウィンストン・フィルター」や「キャメル・フィルター」などの例が存在すること(乙2,3),及び本件各広告における「パールフィルター」や「PEARL FILTER」の表示は,本件商品のメインブランドである「ピアニッシモ スーパースリム」ないし「PIANISSIMO」程ではないにせよ,本件各広告中において前記認定のとおり中程度に目立つ態様で表示されており,同程度に表\示されている「キュッと詰まったメンソール」「20本入りなのにコンパクト」「におい・煙り少ない」(本件広告A,B,D)及び「この細さでこの刺激。直径5mmのセンセーション。」(本件広告C2)等に比べると,単なる商品の内容や形状を説明しただけのものではなく,そのフィルターにパール状の光沢や色つやがあるとの特徴があるフィルター付きたばこである本件商品を,「パールフィルター」や「PEARL FILTER」と称してその宣伝広告活動しているものと認めることは可能である(「キラキラきらめく」は「パールフィルター」を修飾する形容詞として表\示されているものと解される。)。これらの事実からすると,被告は,そのブランド戦略からして,本件商品に「ピアニッシモ・スーパースリム・メンソール・ワン」との商品名を付し,「ピアニッシモ・ファミリー」と称される商品群に属する一銘柄として,「PIANISSIMO」の商標を強調するなどした上で,フィルターにパールのような光沢とつやのあるたばこである本件商品の特徴に由来する「パールフィルター」や「PEARL FILTER」という二次的なブランドも採用したものと認めるのが相当である。以上によれば,被告は,本件各広告において,「ピアニッシモ スーパースリム」「PIANISSIMO SUPER SLIM」ないし「PIANISSIMO」等を本件商品のメインブランドとして広告宣伝し,取引者及び需要者は,これらの商標によって,本件商品を他の商品から識別するものであるけれども,同時に,「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との標章も,本件商品の特徴を表す二次的ブランドとして,本件各広告に使用されたものと認められる。ウ 次に,本件各広告における「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との商標が,本件商標と社会通念上同一の商標といえるか否かについて判断する。本件広告A,B,C2及びD中の「パールフィルター」や本件広告C1中の「PEARL FILTER」のうち,「フィルター」ないし「FI-LETER」は,本件商標の指定商品であるたばこのフィルターを指す語であって,これをフィルター付きたばこに使用した場合,それ自体識別力を有しない語である。これに対し,「PEARL」の文字は,真珠という意味の英語であり,そのカタカナ表記である「パール」を含め,日本人によく知られている言葉であるから,これをたばこという商品に使用した場合に,自他識別機能\を有する商標となり得るものである。しかし,前記イ認定のとおり,本件各広告においては,「パール」や「PEARL」は,本件商品の二次的ブランドである「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との商標の一部として使用されているにとどまるものである。「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との商標は,本件商品の二次的ブランドとして使用されているものである以上,取引者及び需要者はこれを一連一体のものとして認識し,把握するものであって,「パール」や「PEARL」のみを分離して認識し,把握するものではない。したがって,本件各広告において使用されている「パールフィルター」ないし「PEARL FILTER」との商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であるということはできない。
◆判決本文
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2013.10. 8
平成25(行ケ)10032 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年09月25日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が取り消されました。本件商標は「グラム」の片仮名と「GRAM」の欧文字とを二段表記したものであるのに対して使用商標は「Gram」でした。
被告は,本件商品にマックハウス商標が付されていることなどから,東麗商事,サン・メンズウェア及びマックハウスの間の取引について,内部的な下請け又は製造委託に基づく行為であって,通常の譲渡には該当しない旨主張する。しかし,本件商品はODM型生産という,委託者のブランド名での販売を前提に,受託先である東麗商事が商品企画から生産,その後の流通まで行い,委託先であるサン・メンズウェア,更にはマックハウスに商品(完成品)を提供するという形態で取引がなされているものと認められるのであり(甲15の2,甲29,30,弁論の全趣旨),また,本件商品には,東麗商事により,本件使用商標(本件下げ札)も付されているのであるから,本件商品にマックハウス商標が付されていることをもって,東麗商事,サン・メンズウェア及びマックハウスの間の取引について,商標法2条3項2号にいう「譲渡」に該当しないということはできず,被告の上記主張を採用することはできない。
・・・
以上によれば,本件商品がマックハウスの「navy natural」ブランドの製品であること,また,東レ(原告)の繊維である特殊な素材を使用することにより本件商品が上記の特徴を有することが認識され得るものといえる。しかし,他方で,本件商品は,上記認定のとおり,東麗商事によりODM型生産され,サン・メンズウェアに譲渡されたものであり,本件下げ札は,その際に本件商品に付されたものである上,東麗商事がODM型生産をした本件商品に使用した東レの素材が非常に軽いため,ダウンジャケットである本件商品が,軽量感のあるソフトな風合いの機能\性,快適性に優れるものであることを示すものであるとも解することができ,本件商品が東レの素材を使用した,「Gram」ブランドの衣類であるなどというように,被服である本件商品の出所及び品質等を示すものとして用いられているものとも理解し得るものである。このように,本件商品は,マックハウスの商品として,マックハウス商標が付されると共に,東麗商事により東レの特殊軽量素材の生地を使用してODM型生産された,軽量感のあるソフトな風合いの機能\性,快適性に優れた衣類であることも表示するものとして,本件使用商標が付されて販売されたものであり,単に,本件商品に使用された素材を示すために,本件使用商標が本件商品に付されたものとみることは相当ではない。\n
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◆関連事件です。こちらは商標が「グラム」ですがアルファベットの使用も社会通念上同一と認定されています。平成25(行ケ)10031
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2013.08. 7
平成24(行ケ)10442 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年07月17日 知的財産高等裁判所
2段併記の登録商標について、不使用ではないとした審決が維持されました。
本件商標は,「SAMURAI」と「サムライ」の文字を上下2段に表記したものであるのに対し,使用商標はいずれも,「SAMURAI」又は「Samurai」の文字を単独で表\記したものである。また,本件商標は標準の活字体が使用され,使用商標は概ね標準の活字体又は筆記体が使用されていること等に照らすならば,使用商標は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するというべきである。
(2) これに対し,原告は,使用商標はいずれも,「SAMURAI」又は「サムライ」の文字を2段併記ではなく1段に表記され,相当にデザイン化された書体に変更され,また,「GENUINE JEANS」の文字が併記されており,本件商標と社会通念上同一とはいえないと主張する。しかし,使用商標は,様々な絵柄や「侍」「刃」「零」「極」などの文字や「GENUINE JEANS」の文字と併記されている例があるが,いずれも「SAMURAI」「Samurai」との欧文字が,概ね標準の書体により,明瞭に表示されており,社会通念上同一といえる範囲に含まれるものというべきであり,この点の原告の主張は採用の限りでない。また,原告は,使用商標は,「SAMURAI」ないし「サムライ」という社名と同一の文字をデザイン化した,多数の異なる標章が用いられており,被告商品の出所を示すものと認識されない態様で用いられていると主張する。しかし,使用商標は,工夫が施された図柄とともに使用されているが,前記のとおり,フラッシャーに「SAMURAI」「Samurai」との欧文字が,概ね標準の書体で表\示されている使用状況に照らすならば,取引者,需要者は,商品の出所を示すための表示と認識することは明らかである。さらに,原告は,登録商標に大幅な変更を加えた標章の使用を当該登録商標の使用として認めることは,商標権者に不当に広い権利を与えることとなるとともに,国民一般の利益を不当に侵害するなどと主張する。しかし,前記のとおり,使用商標は登録商標に大幅な変更を加えたものであるとはいえず,原告の主張はその前提において失当である。\n
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◆関連事件です。平成24(行ケ)10441
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2013.07. 9
平成25(行ケ)10010 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年07月04日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が取り消されました。
(1) 原告が平成23年10月21日に本件商標を使用した証拠として提出している甲6の請求書の「品番」には「VIRUS 84002」とあるところ,甲34の品番・型番一覧表によれば,これが型番「PRVCA84002」のジーンズパンツで,・・・・と記載されており,本件商標と社会通念上同一の商標が付された商品であると認められる。そして,甲6の請求書の宛名は「有限会社ズーティック」であり,単価5000円,数量3で税込み価格が1万5750円,作成日付は平成23年10月21日であるところ,原告の保有する甲7の1の領収書(控)には「(有)ズーティック様」「商品代として」「¥15,750−」「入金日 2011年10月21日」と記載されており,両書類の記載は,品番や色などが書かれているか否かにおいて違いがあるが,宛先,商品代金及び日付で一致している。甲35の履歴全部事項証明書及び甲36のホームページによれば,ズーティックは衣料品の販売等を行う実在の会社と認められるところ,同社社長のAは平成23年10月21日に48サイズのインディゴのジーンズパンツを1万5750円で購入した事実を陳述書において自認している(甲24)。同陳述書で,各ジーンズパンツは平成24年3月20日に実施された展示会で社員が譲り受けたと記載されているところ,同社の社員であるBは同譲受けの事実を認めているし(甲25),実際に原告ブランドが参加したか否か,本件ジーンズパンツが使用されたか否かは必ずしも明らかではないものの,少なくとも同日に合同展示会があったことは客観的な事実である(甲37)。以上の事実によれば,原告が平成23年10月21日にズーティックに対して型番「PRVCA84002」のジーンズパンツを3枚合計1万5750円で売却したことを推認することができる。そして,甲26の写真及び甲33の領収書綴りによれば,領収書の控えは時系列順に並んでいて,上記甲7の1の領収書もそのように編綴されているうちの1枚として,後から偽造,加工した形跡は認められないし,未使用の領収書には原告の記名印が押捺されたものもあるが,領収書の控えだけが残っているものも多数存在し,全体を概観すると,実際に使用されたもの,未使用のものが混在していると認められるのであって,後日体裁を整えたものとはうかがわれない。また,その領収書綴りの1枚の領収書(控)(甲7の2)には,「(株)リバースプロジェクト様」「お品代として」「¥44,856−」「入金日 2011年10月15日」と記載されているところ,同社の代表取締役であるCは原告の東京事務所において原告の在庫(商標は本件とは別のもの)を半額で買い取った事実を認めており(甲38),この点でも領収書綴りが後日作成されたものでないことが裏付けられる。
(2) この点,原告の提出する証拠の中には,逆に原告が宛名になったり,本来領収書本体を原告が所持すべきなのに控えだけが残っているものが散見される(甲41の1ないし41の4)。しかしながら,ただし書部分を見るとモデル代,アルバイト代金等であり,モデルやアルバイトをした人物が領収書を手元に持ち合わせておらず,代金を支払った際に原告の領収書綴りを用い支払者の原告が控えを所持することになったとしても事実としてあながち不自然とまではいえない。また,一般的に控えの方は切り取れるようになっていないから,領収書と控えを厳密に使い分けなかった点をもって不自然ともいえない。甲41の1の領収書を受け取ったDがモデルをしていたことについては裏付けがあり(甲42,43),このことからしても,宛名が逆である点をもって領収書の信用性を覆すには至らない。また,原告の提出する領収書綴り(甲33)は枚数にしてみれば使用期間があまりに長い点において不自然さが看取される。しかしながら,この点,原告は,原告の東京事務所において販売した際に使用していた領収書綴りであると説明しているところ,現に記名印の住所は,原告の本店のある横浜市戸塚区ではなく「」となっており(甲33),東京事務所で受け取ったとする上記Cの陳述内容(甲38)とも合致している。また,原告は,大口の取引については銀行振込を利用しており(甲45),必ずしも領収書を発行する必要がなかった取引があったと認められる上に,甲33の領収書綴り以外の領収書を使用していた事実(甲48の1,48の2。甲48の2の取引については裏付けのメモ〔甲50〕や,取引された商品の売却に関するホームページ〔甲51の1,51の2〕が存在する。)もまた認められるから,この点をもって必ずしも不自然とはいえない。さらに,本件取引では定価である1万2800円を大幅に下回る5000円で3本売却されたことになる。しかしながら,本件取引以外にも,原告の東京事務所で行われた上記Cに対する売却代金は半額であったというし(甲38),原告の主張するように値下げの理由が在庫処分ということであれば,値下げの動機はあり,3本というまとめ買いであったことも合わせ考えると,売却価格の点においても不自然とはいえない。被告は,甲6の請求書控えが,被告による無効審判請求以降に出力されたことをもって,後日新たに作成した可能性を指摘するが,請求書の原本は,請求を受けたズーティックの手元に渡っていて原告が所持していなくても不自然ではないし,後日にデータの内容を書き換えたないし新たに作成したという具体的根拠を欠く。いずれにせよ被告の批判は当たらない。\n
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2013.06. 4
平成24(行ケ)10411 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年05月30日 知的財産高等裁判所
登録商標の使用かが争われました。裁判所は使用を認めた審決を維持しました。「ただ1回の広告・宣伝の事実だけはかろうじて認定が可能」と言及している点が気になります。
商標使用は,商標権者が登録商標管理として入念に配慮しなければならず,その関係の内部資料を保管しているべきであって,たやすく立証可能な事実であるのに,被告はネットの掲載などの断片的な証拠を提出するのに甘んじている。しかし,上記1認定の各事実を総合すると,レイラニ社は「2012−02−06」すなわち平成24年2月6日に「ALL STATE」の文字を含む本件標章を取り入れた革製ジャケットについてネット上で広告・宣伝したことはかろうじて認めることができる。同社のこの行為自体は,商標法2条3項8号に規定する「商品に関する広告・・・を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するというべきである。なお,アメーバブログの登録者である会員が個人であってもリンク元は当該個人の所属する会社のショップサイトであるから,リンク元のショップで販売している商品の広告・宣伝をしていることに何ら変わりはない。商品の宣伝・広告を目的としたショップスタッフによるブログが利用規約に違反するとしても,それは利用者と管理者の間の問題にすぎないから上記認定を左右しない。
(3) なお,上記1(4)の認定事実によれば,在庫商品の「ALL STATE」の革製ジャケットに本件商標が付されていたのか不明であり,商標法2条3項1号に該当する使用の事実があったか必ずしも明らかではないといわざるを得ない。ただし,上記1(1)の認定事実によれば,レイラニ社の在庫商品として刻印,下げ札等により商品に本件商標を付していたことがうかがわれ,かかる行為自体は,商標法2条3項1号に該当するといってよい。もっとも,その時期は特定されておらず,本件審判請求の登録前3年以内であるか否かは必ずしも明らかではないといわざるを得ない。また,レイラニ社の本件商標の付いた在庫商品の数は平成23年7月10日分しか判明しておらず,その前後の変動は不明であり,在庫商品が実際に販売に供されて譲渡されていたかもまた不明といわざるを得ず,商標法2条3項2号に該当する行為があったとは認められない。
以上のとおり,本件商標使用の事実立証は極めて雑ぱくなものといわざるを得ないが,当裁判所は,上記(2)におけるただ1回の広告・宣伝の事実だけはかろうじて認定が可能と評価したものである。\n
◆判決本文
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2013.04. 3
平成24(行ケ)10382 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年03月21日 知的財産高等裁判所
商標「RHYTHM」について、不使用取消請求がなされました。商標権者が使用していたのは、「NEO RHYTHM」です、特許庁は、使用と認めましたが、裁判所は、これを取り消しました。使用形態としては、「NEO」の文字は白抜きで籠字風に表され,「RHYTHM」の文字は塗り潰しのゴシック体風の文字で表\されていました。
本件商標は,「rhythm」の文字からなり,「リズム」という称呼を生じ,「リズム」,「調子」という観念を生じるのに対し,使用商標は,いずれも,「NEO」の文字を伴って,「NEORHYTHM」又は「NEO RHYTHM」の文字からなり,「ネオリズム」という称呼を生じ,「新しいリズム」,「新しい調子」という観念を生じる。そして,使用商標は,「NEORHYTHM」又は「NEO RHYTHM」の文字からなり,「NEO」の文字は白抜きで籠字風に表され,「RHYTHM」の文字は塗り潰しのゴシック体風の文字で表\されているところ,1)本件商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標とはいえないし,2)本件商標のローマ字の文字の表示を平仮名や片仮名に変更して同一の称呼及び観念を生ずる商標でもなく,また,3)外観において本件商標と同視される図形からなる商標でもなく,これらと同程度のものということもできない。よって,使用商標は,本件商標と社会通念上同一のものと認められる商標ということはできない。なお,前記1(3)認定のとおり,被告自ら,本件商標とは別個に,同様の指定商品(第25類「履物,乗馬靴」)について,「neorhythm」又は「neo rhythm」という別件登録商標の登録出願をした上でその商標登録を得ていることに照らしても,本件商標と使用商標とが社会通念上同一であると認めることはできない。
イ 被告の主張について
(ア) 被告は,使用商標において「RHYTHM」の部分が要部となっているから,本件商標と社会通念上同一であると主張する。しかしながら,前記1(1)認定の使用商標の態様並びに同(2)認定の被告の婦人靴の取引の実情を総合すると,同一の大きさ,同一の書体で表された「NEORHYTHM」又は「NEO RHYTHM」の文字からなる使用商標において,「RHYTHM」の部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとまではいうことはできない。また,「NEO」の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないともいうことはできない。よって,使用商標から「RHYTHM」の部分のみを抽出し,この部分だけを本件商標と比較して商標そのものの同一性を判断することは,許されない。(イ) 被告は,籠字風に表示された「NEO」の文字部分は,塗り潰された状態で表\示された「RHYTHM」の文字部分とは,視覚上異なり,その背景に埋没するような表示態様であって,看者をして「RHYTHM」の部分が強く印象づけられると主張する。しかし,使用商標の文字は,いずれも同一の大きさ,同一の書体で表\され,外観上まとまりよく一体的に表示されているのであって,籠字風に表\示されたからといって,「NEO」の部分が捨象されるとはいえない。(ウ) 被告は,「NEO RHYTHM」又は「NEORHYTHM」全体が既成の観念を有する成語として親しまれていないと主張する。しかし,「NEO」は「新,新しい」なる意味を有する英語に通じ,また「RHYTHM」は「リズム,調子」なる意味を有する英語に通じる既成語として一般に親しまれている。したがって,これらを結合した「NEO RHYTHM」又は「NEORHYTHM」については,それ自体が既成の成語として認識されていないとしても,「新しいリズム」,「新しい調子」なる意味合いのものとして理解することは容易であり,そこから「ネオリズム」という称呼が生じる。(エ) 被告は,「NEO」が接頭辞であり,自他商品の識別力がないか極めて弱いと主張する。しかし,接頭語として使用されるからといって,直ちに使用商標と本件商標とが社会通念上同一であるということはできない。
◆判決本文
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2013.03.28
平成24(行ケ)10310 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年03月25日 知的財産高等裁判所
不使用請求を棄却(使用されていたと認定)した審決が、維持されました。
商標法50条1項には,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者等」という。)のいずれもが,同項に規定する登録商標の使用をしていないときは,取消しの審判により,その商標登録は取り消される旨規定されている。ここで,商標権者等が登録商標の使用をしている場合とは,特段の事情のある場合はさておき,商標権者等が,その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり,登録商標を使用する場合のみを指すのではなく,商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において,流通業者等が,商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり,当該登録商標を使用する場合を含むものと解するのが相当である。このように解すべき理由は,今日の商品の流通に関する取引の実情に照らすならば,商品を製造した者が,自ら直接消費者に対して販売する態様が一般的であるとはいえず,むしろ,中間流通業者が介在した上で,消費者に販売することが常態であるといえるところ,このような中間流通業者が,当該商品を流通させる過程で,当該登録商標を使用している場合に,これを商標権者等の使用に該当しないと解して,商標法50条の不使用の対象とすることは,同条の趣旨に反することになるからである。
本件においてこれをみると,1)アイ・ティ・エム・ユーは,グンゼが製造し,本件商標が付されたパンティストッキングを仕入れ,楽天株式会社の運営に係るウエブサイト(楽天市場,本件サイト)において,上記パンティストッキングを表示して,販売を継続しており,平成21年5月,同年8月,平成22年3月,同年6月,同年7月,同年10月,平成23年9月頃,本件サイトを利用して,一般消費者に上記パンティストッキングを販売していることが確認できること,2)本件サイトには,本件使用商標の表示されたグンゼの製造に係るパンティストッキングの包装の写真が掲載されており,その掲載態様に照らすならば,本件使用商標は,その商品の出所がグンゼであることを示しているといえること,3)グンゼの製造に係るパンティストッキングは,流通業者を介して,消費者に販売することを前提として,市場に置かれた商品であることが明確に理解でき,グンゼも,そのことを念頭に置いた上で,パンティストッキングを販売し,アイ・ティ・エム・ユーはこれを仕入れていると解されること等の事実が認められる(甲18の1ないし18の3,乙19)。
以上のとおり,本件商標の通常使用権者であるグンゼは,流通業者を介して,本件審判請求の予告登録前3年以内に,指定商品である「靴下」に該当するパンティストッキングに,本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたと認めることができる。\n
◆判決本文
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2013.01.18
平成24(行ケ)10250 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年01月10日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が取り消されました。
前記のとおり,イタリア法人である原告は,平成21年5月15日,日本における独占的販売店であるドウシシャに対し,本件使用商標を付した時計を輸出し,ドウシシャがこれを取引書類に付して展示していたものである。
・・・
商標権は,国ごとに出願及び登録を経て権利として認められるものであり,属地主義の原則に支配され,その効力は当該国の領域内においてのみ認められるのが原則である。もっとも,商標権者等が商品に付した商標は,その商品が転々流通した後においても,当該商標に手が加えられない限り,社会通念上は,当初,商品に商標を付した者による商標の使用であると解される。そして,外国法人が商標を付した商品が,日本において独占的販売店等を通じて輸入され,国内において取引される場合の取引書類に掲載された商品写真によって,当該外国法人が独占的販売店等を通じて日本における商標の使用をしているものと解しても,商標法50条の趣旨に反することはないというべきである。
ウ よって,本件においては,商標権者である原告が,原告の時計に本件使用商標を付し,日本国内において,独占的販売店であるドウシシャを通じて上記時計に関する取引書類に本件使用商標を付した商品写真を掲載してこれを展示したものであるから,本件商標と社会通念上同一の商標を使用(商標法2条3項8号)していたということができる。
◆判決本文
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2012.12.13
平成24(行ケ)10277 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年12月05日 知的財産高等裁判所
指定商品の使用に該当するのかが争われました。裁判所は指定商品の使用ではないとした審決を取り消しました。
本件商品の商品名は,「ロゴチャーム(LOGO Charm)」であり,その構成は,フック,リング,チェーン及びチェーンの先端に付いたチャームで構\成されており,リングにフック及びチェーンがつながれているが,フック及びチェーンは,それぞれリングから容易に取り外すことが可能なものである(甲9〜15,18〜20)。イ 本件商品は,原告のホームページにおいては,「キラキラ☆ラインストーンが輝くチャーム」,「ハート型の赤いハートと鍵がポイントのアクセサリー」などと紹介されている(甲43)。ウ 本件商品の商品名は,「ロゴチャーム」であるところ,「ロゴ」とは,商標等のデザインされた文字又は図形を意味している。また,「チャーム」とは,「お守り」又は「魅力」を意味し,時計やブレスレット,ネックレス等の装飾品の鎖部分などに付ける小さな飾りをいい,近年では,多種多様なフックの普及に伴い,携帯電話やバッグのほか,直接洋服に付ける場合もある(甲30)。なお,チャーム及び鎖用宝飾品(Charms)は,いずれも,商標法施行令別表第14類に属する(甲31,32)。エ 山陽商事株式会社の取引先は,本件商品が,バッグ,携帯電話,キーホルダー等の飾り物としての使用を含め,客の好みに応じていろいろな用途に使用されるものと認識している(甲35,37)。オ 本件商品と同種の商品は,フックの部分をバッグの金具等に飾りとして付けることができるほか(バッグチャーム),ズボン等のベルトループに通し又はベルトの穴に付けたり(ベルトチャーム),キーホルダーに付けたり(キーチャーム),ブラウスに付けたりして使用することができ,また,それ自体をブレスレットやネックレスとして使用することもでき,ファッション雑誌等において上記のような使用状況が掲載されている。そして,このようなものも「チャーム」とも呼ばれている(甲91〜99,105,106,116,123,124,126,127。なお,甲62ないし90は,平成24年8月又は9月に印刷したウェブページであるが,本件審判請求の登録の日である平成23年10月11日の前3年間においても,同様であったものと推認することができる。)。カ 本件商標を付した山陽商事株式会社の平成22年の商品カタログには,「SAVOY」ブランドのバッグが約860点掲載されているが,バッグ自体にチャームを取り付けることができるものは,そのうち約94点にすぎない(甲135,136)。 本件商品の「身飾品」該当性前記認定の本件商品の名称や構成,販売時の広告態様,本件商品及びこれと同種の商品についての使用状況やこれから推認される取引者及び需要者の認識等に照らせば,本件商品は,時計やブレスレット,ネックレス等の装飾品の鎖部分などに付ける飾りであるが,バッグに取り付けて使用するのみならず,これを洋服に付けたり,それ自体をブレスレットやネックレスとして,使用することもできるものであり,「アクセサリー」として紹介されているものということができる。このように,本件商品は,洋服に付けたり,それ自体をブレスレットやネックレスとしても使用することができるものであるから,前記認定の,おしゃれを目的として使用される装飾品である「身飾品」にも該当するということができる。よって,本件商品は,「バッグの装飾品」であって,「チャーム(鎖用宝飾品)」ということはできず,対象指定商品に当たらないとした本件審決の認定判断には,誤りがある。
3 被告の主張について
被告は,本件商品は,キーホルダーとして使用され得るが,併せて,「身飾品」としておしゃれ小物の用途に使用される可能性があるとはいえないと主張する。しかしながら,1つの商品が複数の機能\・用途を有することもあり得るのであるから,ある商品が常にいずれか1つの商品に属すべきものであって,他の用途に使用されることがあり得ないとするのは相当でない。よって,キーホルダーとして使用される商品が,異なる用途に使用される可能性がないということはできない。 被告は,取引者である原告の本件商品の名称についての認識は揺れ動いており,本訴において,本件商品の用途を追加する主張を行ったとして問題視する。しかし,本件においては,通常使用権者が本件審判請求の登録前3年間に本件商標を包装に付して販売した本件商品が,客観的にみて対象指定商品に係る「身飾品」に該当するか否かが問題になるのであり,原告の訴訟における主張や認識のみが問題になるものではない。 被告は,「チャーム」とは,ネックレスとして下げる飾りの部分をいい,「飾り小物」を意味する語で,社会通念上使用される用法であると主張する。しかしながら,「チャーム」は,鎖の先に付いたような飾り小物として使用されるのみならず,ネックレスやブレスレットとしての用途も有するものであり,そのような用途が広くファッション雑誌等に掲載されていることは,前記のとおりである。 被告は,原告が商品を購入した人の「工夫次第で広がる使用法」をも自己の商品の用途に取り込もうとするものであると主張する。しかしながら,現にファッション雑誌等に様々な使用方法が紹介されていることに照らすと,おしゃれに敏感な需要者が,それと同様の使用を試みるであろうことが推認され,そのような用途のものとして商品を認定することに,何ら問題はない。
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2012.11.21
平成24(行ケ)10088 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年11月19日 知的財産高等裁判所
「愛犬手づくりごはん」教室の開催は,「愛玩動物の美容及び看護の教授」,及び「愛玩動物の美容及び看護に関するセミナーの企画・運営又は開催」に含まれるとして、審決が取り消されました。
(1) 「美容」とは,「適度の睡眠・食事・便通や洗顔・入浴・運動により常に健康な素肌を保つことや,女性が髪型を整えたり,肌の若さを保つために手入れをしたりすること」(新明解国語辞典第5版,甲12),「美しい容貌。容貌・容姿・髪型を美しくすること」(広辞苑第4版,乙14),「顔や体つきを美しくすること」(大辞林,乙15),「容姿を美しく整えること。美しい顔かたち」(旺文社国語辞典第10版,乙16)をいう。また,美容専門学校であるハリウッドビューティ専門学校が,美容技術(ヘア,メイクアップ,ネイルケア,エステティック等)とともに美容健康食を含む美容理論を美容科の必修科目としていること(甲36)や,インターネット上には食事と美容を結びつけた多数のウェブサイトが存在すること(甲14)に照らすと,美容を獲得し維持する手段として食事が挙げられることは広く社会一般に受け入れられていると認められる。上記辞書に定義される「美容」の手段にも制限はなく,食事が挙げられることもある。そして,人間と犬などの愛玩動物との間で「美容」の意義を異なるものと考え,愛玩動物の「美容」をグルーミングやトリミングといった被毛の手入れに限定し,食事を介した美容の概念を排除しなければならない理由はない。また,特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説〔国際分類第10版対応〕」(乙33)には,第44類の「人又は動物に関する衛生及び美容」のうち人間に対する「美容」の解説として,「パーマネントウェーブ,結髪,化粧等の方法により,容姿を美しくするサービスです。」旨記載され,「動物の美容」の解説として「このサービスには,トリミングやグルーミングといわれる動物に対して行われる美容に関するサービスが含まれます。」と記載されているが,これらの記載から愛玩動物の「美容」をグルーミングやトリミングといった被毛の手入れに限定しなければならないということもできない。したがって,本件商標の指定役務である「愛玩動物の美容の教授」,「愛玩動物の美容に関するセミナーの企画・運営又は開催」から,愛玩動物の被毛の手入れのみならず,食事(食餌)を介して愛玩動物の美容の獲得・維持する方法の教授,セミナーの開催等が排除されるものではなく,これらも含まれるというべきである。かかる見地から見るに,前記1の認定事実によれば,原告が開催している「愛犬手づくりごはん」教室は,犬の飼い主に対し,飼い犬のための健康で役立つ食餌の作り方を教授するものであるところ,「手作りご飯にしてから毛艶が良くなった」との声があることを教室の紹介の一環として挙げている。毛艶がよくなることは犬の容貌が良くなることであるから,この点において食餌を通した飼い犬の美容の獲得を教室の目的及び効果としているということができる。また,「愛犬手づくりごはん」教室では肥満対策をテーマとしたものが開催されているところ,肥満は,愛玩動物の健康を害するのみならず,美容の点からも好ましくないと一般に考えられていることからすれば,肥満対策をテーマとした犬の食餌の作り方の教授も,食餌を介した飼い犬の美容の獲得・維持をその内容の一つとしているということができる。(2) そうすると,原告が開催する「愛犬手づくりごはん」教室は,「愛玩動物の美容の教授」,「愛玩動物の美容に関するセミナーの企画・運営又は開催」に該当するというべきである。
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2012.09.14
平成24(行ケ)10102 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年09月12日 知的財産高等裁判所
経緯は複雑です。元々は、本件商標権の指定商品は「電球類及び照明器具」でしたが、「LEDランプ」について不使用取消が請求されて、その部分についての登録が取り消されました。この事件は、残りの商品についての不使用取消事件です。商標権者は、使用証明を出しましたが、裁判所は、本件商標を使用していたのは、取り消された「LEDランプ」であるとして、指定商品について使用があるとした審決を取り消しました。
裁判所は、「「LEDランプ」との用語は,辞書にも掲載されておらず,「電球類」と「照明器具」のいずれに含まれるのか,双方に含まれるのか,被告にも特許庁にも誤解を招いたことは否めないものの,それが多義的であるからといって直ちに最狭義ないし特定の意義(例えば,「LED電球類」)に解釈されるべき理由にはならず,本件商品が「LEDランプ」に含まれることに変わりはない。」と述べました。
・・・「LEDランプ」との用語は,本件審決が説示するようにLED電球類を指称するものに限定して使用されているものとは認め難く,むしろ,取引者により,現時点において,光源としてLEDを使用した多様な商品又は部材を指称するものとして広く使用されており,それ以上に対象に応じて厳密に使い分けられているものではないばかりか,少なくとも,前記の複数の使用例にみられるように,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものも指称すると認識されているものと認められる。そして,発光ダイオード(LED)を利用する歴史が浅いことを併せ考えると,このことは,本件審判の請求の登録(平成22年6月30日)前3年間においても同じであったものと推認される。なお,被告も,「LEDランプ」という用語が現時点において多義的であることを自認しているところ,「LEDランプ」との用語の本件審判の請求の登録(平成22年6月30日)前3年間における意義は,上記のとおりと認められるので,これに反する被告のその余の主張は,採用することができない。
(2) 使用の有無について登録商標の指定商品又は指定役務は,第三者との関係で当該登録商標の権利の範囲を確定するものであるから,その用語については取引者による通常の使用法に基づいて客観的に解釈されるべきものである。そして,前記1のとおり,商標権者である被告及び通常使用権者であるアイリスプラザは,平成21年8月4日頃から本件審判の請求の登録の日までの間,本件商標と同一又は社会通念上同一のものというべき「エコルクス」又は「ECOLUX」との標章を,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものである本件商品の包装に付して,日本国内で第三者に対して譲渡したものである。しかるところ,前記(1)のとおり,「LEDランプ」との用語は,取引者により,本件審判の請求の登録(平成22年6月30日)前3年間において,光源としてLEDを使用した多様な商品又は部材を指称するものとして広く使用されており,それ以上に対象に応じて厳密に使い分けられているものではないばかりか,少なくとも,防犯等を目的として室内又は室外に設置するために作られた,人の動きを探知して自動的に点灯する乾電池を電源とするセンサーライトであって,LEDを光源とするものも指称すると認識されていたものと認められる。したがって,本件商品は,上記のとおり,第2次審決の確定により前件審判の請求の登録の日(平成21年4月30日)に本件商標の指定商品から消滅したものとみなされる「LEDランプ」に該当するから,同日から本件審判の請求の登録の日(平成22年6月30日)までの間において,本件商標の指定商品に該当しない。そして,被告は,上記期間内における本件商品に対する本件商標の使用のほかに,本件商標又はこれと社会通念上同一の標章を本件商標の指定商品について使用したとの事実を何ら主張立証していない。以上によれば,被告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて本件商標の使用をしていることを証明していないというほかない。
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◆こちらは関連事件です。平成24(行ケ)10103
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2012.08.13
平成24(行ケ)10080 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年07月25日 知的財産高等裁判所
登録商標を使用してないと判断とした審決が取り消されました。
上記商品カタログ(甲3)は,海外旅行の出発前にあらかじめおみやげを注文することの予約をしておくと,指定した日時,場所に当該おみやげが配送されるという販売システムにおいて使用される商品カタログであり,平成21年4月頃から平成22年4月頃までの間に,需要者に配布されるなどしたものである(甲3,弁論の全趣旨)。したがって,本件使用商標は,本件審判請求の登録前3年以内に,日本国内において,原告の商品(メープルシロップ)に関する広告に付されていたものということができる。
イ 以上によれば,原告は,商品カタログ(甲3)において,指定商品であるメープルシロップに本件使用商標を表示して頒布したものであり,その行為は,商標法2条3項8号の「商品・・・に関する広告・・・に標章を付して・・・頒布・・・する行為」に当たり,商標の使用に該当するものといわなければならない。
ウ なお,原告は,甲4をもって,本件商標を使用した旨主張するが,カタログの原本が提出されたわけでもなく,その一部分によって,これが展示されたり頒布されたりしたことを認めるに足りない。また,甲5の1ないし5の写真は,撮影年月日及び撮影場所すら明らかではなく,本件商標の使用を証する証拠足り得ない。
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2012.06. 8
平成24(行ケ)10011等 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年06月06日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が取り消されました。
ここで,ネオンブラケットが用いられるパイロットランプは,これが取り付けられた機器の状態(例えばスイッチのオン,オフ)を示す表示灯としての機能\を果たすものであるが,甲第25,第44号証によれば,ネオンランプ(ネオンブラケット)をその定電圧特性を活かして回路保護のために用いることがあることが認められるから,上記カタログにおける使用商標1,2の使用をもって,「電子応用機械器具及び部品」についての使用と評価することが可能である。この点,被告は,ネオンランプの主たる用途は照明にあるとか,原告の「ネオンランプ」が電球の類として用いられることは明らかであると主張するが,種々の発光色のネオンランプを用いて照明装置を構\成することがあるとしても,原告の「ネオンブラケット」を照明装置ないしその部品にすぎないとしてよいと断定することはできないし,カタログ(甲8の3)に電球交換型ネオンブラケットのための「ネオン交換電球」が掲載されているとしても(21頁),ネオンランプを交換できるようにするために電球型のネオンランプが採用されているにすぎず,その名称ゆえに一般の照明用の「電球」と単純に同一視してよいかは疑問である(上記カタログには,ネオンランプを交換できないタイプのネオンブラケットも掲載されている。)。そうすると,被告の上記主張を採用することはできない。2 甲第10ないし第19号証によれば,原告は,平成20年7月ないし平成23年1月ころ,顧客に対し商品「センサー用LED基板Assy」,「拡散照明装置」,「透過照明装置」,「2面バックライト照明」を納入するに当たり,取引書類である納品書や納入仕様書に使用商標1を使用したことが認められる。上記「センサー用LED基板Assy」は基板上に複数のLED(発光ダイオード)を並べて実装したもの(甲10),「拡散照明装置」,「透過照明装置」は基板上にLEDのほかに,ツェナーダイオード,トランジスタ,コンデンサー等を実装して装置を構成したもの(甲11,12,29,30,51),「2面バックライト照明」も基板上にLEDのほかに,定電圧ダイオード等を実装し,偏光板と組み合わせるなどして装置を構\成するもの(甲13,14)であるが,これらは顧客が画像解析装置を製造するために,注文を受けた原告においてその構成部品(装置)を設計,製造したものである(弁論の全趣旨)。ここで,上記「センサー用LED基板Assy」等が画像解析を行うために,対象となる物に光を照射する機能\を果たすものであるとしても,日常生活において光を照らして空間を明るくする目的とは程遠いことは明らかである。そして,上記「センサー用LED基板Assy」等は,電子部品であるLEDやダイオード等を使用して構成されており,その機能\に照らせば,電子の作用を応用し,その電子の作用が当該機械器具にとっての構成要素となっているということができる。そうすると,原告は,「電子応用機械器具及びその部品」につき,取引書類である納品書や納入仕様書に使用商標1を使用したということができる。\n
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2012.06. 7
平成23(行ケ)10348 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年05月31日 知的財産高等裁判所
指定商品である「印刷物」における使用ではないとして、商標取消審決が取り消されました。
上記(1)イ(ア) 認定の事実によれば,甲17の印刷物には「THE BRIDGE」,「The Bridge(R) 」,「The Bridge」との記載があり,「The Bridge」については原告の商標であることが明確に注記されているから,甲17における「TheBridge」は,原告の出所を識別するものとして使用されていることが認められる。「The Bridge」と本件商標とは,文字の外観(大文字と小文字において若干の相違がある。),称呼及び観念において共通し,両者は,社会通念上同一の商標である。また,上記(1)イ(イ) 認定の事実によれば,甲17の印刷物は,サイエントロジー哲学を学習する者,又は,その学習を始めようとする者に対し,「完全なる自由」という意識の特性に至るチャートを示して,人間の回復と精神的な人の能力とパワーの究極的な拡張への道筋を説明し,その過程で受けることのできるサービスやトレーニングを紹介し,もしくは,自己の学習の進行状況を確認させることを目的として作成されたものと解される。さらに,甲17は,サイエントロジー東京の生徒向けの資料として輸入し,保有され,その部数も限られていることに照らすならば,同印刷物は,サイエントロジー哲学を学習する者,又は,その学習を始めようとする者に対して,供与されるものであって,不特定多数の者に対する販売することを目的としたものではないと解される。そうすると,甲17の印刷物は,サイエントロジー哲学の教授という役務の提供を受ける者の利用に供する物であるというべきであるから,これに本件商標と社会通念上同一の商標を付する行為は,本件商標の指定役務である「哲学の教授その他の技芸・スポーツ又は知識の教授」中,「哲学の教授」について本件商標を使用したものと評価すべきである(商標法2条3項3号)。したがって,甲17の印刷物は,商標法上の商品に該当し,これに本件商標が表\示されているとしても,請求に係る指定役務についての本件商標の使用とはいえないとした審決の認定,判断は,誤りである。
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2012.02.27
平成23(行ケ)10243 審決取消請求事件(商標) 商標権 行政訴訟 平成24年02月21日 知的財産高等裁判所
不使用であるとして商標登録を取り消した審決について、裁判所は使用されていたと認定しました。
被告は,本件での通常使用権許諾証書は,いずれもねつ造されたもので,信用できない旨主張する。確かに,本訴で提出された通常使用権許諾証書(甲34,36,38)は,いずれも定型的な文書で,体裁,形式もほぼ同じであって,許諾を受ける者の署名押印もないが,他方で,これらの使用許諾は,いずれも無償で行われており,責任を伴うものでもないため,使用許諾を受ける者にとって何ら不利益にならないものであるから,使用許諾を受ける者が,必ずしも慎重な手続を採る必要はないといえる。
・・・
イ 被告は,本訴で提出された写真(甲39ないし42添付のもの等)は,いずれも基準時(取消審判請求の登録時)以降に作成されたものであり,証拠価値がない旨主張する。被告の主張どおり,これらの写真(甲39〜42添付のもの)自体は,基準時以降に撮影されたものであるが,本件では,B及びAの供述等により,フルーツキングミズノ(梅田店)において,上記基準時以前も,上記写真に写されたものと同じ商品タグが用いられていたと認められる。また,そもそもこれらの写真は,フルーツキングミズノ(梅田店)において商品タグを使用していた態様を立証するために,事後的に撮影されたものであって,上記基準時以前に撮影されたものではないから,その具体的状況において,例えば,たまたま「さくらももいちご」商品しか撮影されていないとか,「ももいちご」の箱が空箱であるといった状況は重要ではなく,この点に関する被告の主張は意味がない。また,被告は,フルーツキングミズノ(梅田店)において,フルーツキングミズノの「M」をかたどったマークではなく,「徳島」の「徳」をかたどった,いわゆる「丸徳」のマークが用いられている点も不自然であると主張するが,どのような方法で販売するか,どのような商品タグ等を用いるかは,各販売者の判断であって,フルーツキングミズノ(梅田店)が,自らの店舗における商品タグのデザインを統一せず「丸徳」のマークを用いたとしても,必ずしも不合理とはいえない。
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2012.01. 5
平成21(行ヒ)217 審決取消請求事件 平成23年12月20日 最高裁判所第三小法廷 判決 破棄自判 知的財産高等裁判所
平成20年(行ケ)第10414号平成21年3月24日知財高裁にて、不使用であるとした審決について、これを取り消す旨の判決がなされましたが、最高裁はこれを破棄しました。
政令別表第35類は,その名称を「広告,事業の管理又は運営及び事務処理」とするものであるところ,上記区分に属するものとされた省令別表\第35類に定められた役務の内容や性質に加え,本件商標登録の出願時に用いられていた国際分類(第7版)を構成する類別表\注釈が,第35類に属する役務について,「商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又は商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助を主たる目的とするもの」を含むとしていること,「商品の販売に関する情報の提供」は,省令別表\第35類中の同区分に属する役務を1から11までに分類して定めているうちの3において,「経営の診断及び指導」,「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と並べて定められ,類似商品・役務審査基準においても,これらと同一の類似群に属するとされていることからすれば,「商品の販売に関する情報の提供」は,「経営の診断及び指導」,「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と同様に,商業等に従事する企業の管理,運営等を援助する性質を有する役務であるといえる。このことに,「商品の販売に関する情報の提供」という文言を併せて考慮すれば,省令別表第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」とは,商業等に従事する企業に対して,その管理,運営等を援助するための情報を提供する役務であると解するのが相当である。そうすると,商業等に従事する企業に対し,商品の販売実績に関する情報,商品販売に係る統計分析に関する情報などを提供することがこれに該当すると解されるのであって,商品の最終需要者である消費者に対し商品を紹介することなどは,「商品の販売に関する情報の提供」には当たらないというべきである。
(3) なお,本件商標登録の出願時に用いられていた前記国際分類を構成する類別表\注釈では,第35類に属する役務について,平成9年1月1日に発効した改訂によって,「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く。),顧客がこれらの商品を見,かつ,購入するための便宜を図ること」が同類に属する役務に含まれる旨の記載が追加されており,その後,平成18年法律第55号により,商標の使用対象となる役務として「小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が追加されて(商標法2条2項),これに伴い,商標法施行令別表第35類に小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供の役務が追加され,商標法施行規則別表\第35類にも,接客,カタログを通じた商品選択の便宜を図ることなど商品の最終需要者である消費者に対して便益を提供する役務が商標の使用対象となる役務として認められるようになったなどの経緯がある。しかしながら,本件商標登録の出願時には,上記の法令の改正はいまだ行われていなかったのであって,上記の経緯を考慮しても,本件商標登録の出願時に,消費者に対して便益を提供する役務が,上記の法令の改正等がされる以前から定められている省令別表第35類3の「商品の販売に関する情報の提供」に含まれていたものと解する余地はないというべきである。
(4) そこで,本件各行為について検討すると,前記事実関係によれば,本件各行為は,被上告人のウェブサイトにおいて,被上告人が開発したゲームソフトを紹介するのに併せて,他社の販売する本件各商品を消費者に対して紹介するものにすぎず,商業等に従事する企業に対して,その管理,運営等を援助するための情報を提供するものとはいえない。したがって,本件各行為により,被上告人が本件指定役務についての本件商標の使用をしていたということはできない。\n
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◆原審(平成20年(行ケ)第10414号)は下記です。
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2011.12. 1
平成23(行ケ)10096 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年11月30日 知的財産高等裁判所
不使用なので登録を取消とした審決が、「使用していた」と判断されて、審決取消になりました。
社会通念上同一の商標と認められる「GENESIS」の標章を,原告の製造,販売に係る「ファクシミリ」の広告,価格表等について使用をしたものと解すべきであり,審決が,「ファクシミリ」に搭載された機能\の一つである画像処理技術の名称として使用するにとどまるとした点には,誤りがあると判断する。・・・・確かに,前記商品カタログ等の説明文には,「GENESIS」について,原告の独自に開発した画像処理技術を指す旨の記載がある。しかし,原告の製造,販売に係るファクシミリに用いられている「原告の独自に開発した画像処理技術」が,どのような技術を指すかについての詳細の説明は格別されていないこと,前記商品カタログ等は,画像処理技術の販売等に係る配布物等ではなく,ファクシミリの販売等に係る配布物等であることに照らすならば,そのような説明は,原告の製造,販売に係る「ファクシミリ」が,いかに性能が高く,品質等が優位性を有しているかを強調するために用いられた,ごく一般的な広告手法であるといえる。したがって,そのような説明がされているからといって,取引者,需要者が,「GENESIS」の標章について,原告の開発した画像処理技術について使用されていると理解,認識すると解することは困難であり,むしろ,原告の製造,販売する「ファクシミリ」の広告などに,同商品の出所を示す趣旨で使用されているものと理解,認識すると解するのが自然であり,合理的である。\n
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2011.10.25
平成23(行ケ)10128 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年10月13日 知的財産高等裁判所
「ドクターズサロン」が第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧」について不使用であるので商標登録を取り消すとした審決が、維持されました。
(1) 原告は,ホームページやブログの開設は,本件役務中の「電子出版物の提供」に該当すると主張する。(2) しかしながら,ホームページやブログが「電子出版物」の範疇に含まれるとしても,商標法上の役務とは,他人のためにする労務又は便益であって,独立して商取引の目的たり得るものをいうから,ホームページやブログを開設することが,その開設者にとって直ちに商標法上の役務である「電子出版物の提供」に該当するということはできないし,原告が開設したとするブログ(甲1の1〜甲5)がそのような商標法上の役務の提供に該当すると認めるに足りる証拠もない。(3) なお,原告が開設したとするブログについて,仮に,商標法上の役務である「電子出版物の提供」に該当すると認める余地があるとしても,原告が同ブログに本件商標を使用している証拠として提出した各投稿記事(前掲各証拠)のうち,甲1の1の記事にある「(ドクターズ・サロン A)」との記載は,「A」という人物が「ドクターズ・サロン」に所属することを示しているに止まり,この記載から,当該ブログの開設のために本件商標が使用されているものと認めることはできない。また,甲5の記事には,「ドクターズ・サロン情報のネット化」との記載や「ドクターズ・サロンを主宰するX です。」との記載があるが,前者は,一体として,当該記事の表題を構\成しているものであり,後者は,原告が「ドクターズ・サロン」の主宰者であることを示しているに止まるものであるから,これらの記載から,当該ブログの開設のために本件商標が使用されているものと認めることもできない。しかも,この記事は,投稿日時欄の表示から平成23年2月21日に投稿されたものと認められるから,本件審判請求の登録前3年以内である平成19年6月9日から平成22年6月8日までの間に,原告がブログの開設について本件商標を使用していたことを裏付けるものとはいえない。さらに,その余の投稿記事には,本件商標の記載は見当たらず,結局,原告が本件審判請求の登録前3年以内にブログの開設について本件商標を使用していたと認めるに足りる証拠はない。\n
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2011.03.18
平成22(行ケ)10359 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年03月17日 知的財産高等裁判所
登録商標の使用でないとした審決が取り消されました。
本件使用商標1についてみると,上部から順に,二重円間に「(社)日本照明器具工業会」と,二重円の一番内側に「適合」と,二重円間に「JIL5501」との記載をするものである。そして,これらのうちの上段の「(社)日本照明器具工業会」は,照明器具の製造・販売を行う我が国の主要な事業者及び団体を会員として構成する社団法人であって,非常用照明器具自主評定事業や埋込み形照明器具の自主認証等を行っている原告の名称を示すものと,また,中段の「適合」とは照明器具の何らかの規格等に適合したことを示すものとみることができるところ,下段の「JIL5501」は,原告の規格であるJIL5501 に係る記載であるが,一般的には必ずしもその意味が明らかなものとみることができない。また,これらの上,中,下段の各記載は明瞭に分けられており,かつ,それぞれが関連性を有するものと解することもできないから,それぞれが独立したものとしてもみることができる。その上で,下段の「JIL5501」について改めてみると,何らかの記号であると推測されるとしても,上記のとおりの原告の規格であるJIL5501 に係る記載であると一見して認識されるものではなく,必ずしも特定の観念を生ずるものではないところ,これは,欧文字の「JIL」と算用数字である「5501」とからなるものであるから,これを一体のものとしてみるほかに,「JIL」と「5501」とを区切ってみることが可能であって,「JIL」との独立した表\示も抽出して認識されるものということができる。・・・ そして,以上のように本件使用商標の構成中から独立した表\示として抽出される「JIL」の欧文字についてみると,それは,本件商標の指定商品である「電気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」との関係で何らかの性状等を示すものと認めることもできないから,同部分は,本件商標との関係において,自他商品識別標識としての機能を果たし得るものということができ,当該部分のみが独立して自他商品識別標識としての機能\を果たし得るとはいい難いとした本件審決の判断は首肯することができない。
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2010.12.17
平成22(行ケ)10013 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年12月15日 知的財産高等裁判所
使用に該当しないとして、審決が取消されました。
商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」とは,同号に並列して掲げられている「商品に標章を付する行為」と同視できる態様のもの,すなわち,指定商品を現実に包装したものに標章を付し又は標章を付した包装用紙等で指定商品を現実に包装するなどの行為をいい,指定商品を包装していない単なる包装紙等に標章を付する行為又は単に標章の電子データを作成若しくは保持する行為は,商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」に当たらないものと解するのが相当である。(2) これを本件についてみると,前記認定のとおり,被告は,本件請求登録日以前から,本件容器に本件商標を付して販売するための準備を進めていたところ,被告が平成21年4月10日に外部会社から受領したものは,本件容器のパッケージデザインの電子データであるにすぎない。したがって,被告が上記電子データを受領し,これを保持することになったからといって,これをもって商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」ということはできない。むしろ,前記認定のとおり,本件商品は,同年6月11日に中国において生産が開始されたものであるから,それよりも前に我が国において本件容器で本件商品を包装することは,不可能である。そして,本件商品が本件請求登録日よりも前に我が国において,被告により本件容器で包装されたと認めるに足りる証拠は存在しない。したがって,被告は,本件商標について,本件請求登録日よりも前の3年以内に我が国において商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」がされた事実を証明していないというほかない。\n
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◆関連事件はこちら。平成22年(行ケ)第10012号
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2010.10. 1
平成22(行ケ)10078 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年09月30日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が取り消されました。争点の1つは「国際事務局への届け出が遅れた場合に真の住所とはどこか」です。
本件取消審判請求の副本の送達は,原告が,日本国内に営業所を持たない法人であり,上記登録手続から審決までの間,日本において,いわゆる商標管理人を置いていなかったことを理由として,審判長により,航空扱いとした書留郵便に付して,国際登録に記載された原告の住所地に宛てて発送されているので,法の要求する要件を,一応備えているといえる。しかし,前記のとおり,「送達」は,送達を受けるべき者が,現実に書類の内容を了知したか否かにかかわらず,手続を進行させることを可能とさせるものであり,当事者の実体上及び手続上の権利・利益に重大な影響を及ぼすおそれがある手続であることに照らすならば,送達が適法であるか否かについては,送達を受けるべき者にとって,防御の機会が十\分に確保されていたか否かを基準として判断すべきである。そのような観点に照らすならば,航空扱いとした書留郵便に付してされた送達が,適法なものとして扱われるためには,特段の事情の存在しない限り,送達を受けるべき当事者の真の住所に宛ててされた場合であることを要すると解するのが相当である。上記認定事実によれば,審判長は,本件取消審判請求書の副本について,航空扱いとした書留郵便に付して発送したが,その送達は,原告の旧住所地に宛てたものであって,原告の真の住所に宛てたものではないから,上記送達には,瑕疵があり,原告は,審判手続において審理を受ける機会を実質的に奪われたと評価すべきである。
・・・(4) また,平成21年12月29日,大阪市西区内の店舗内において,本件商標が付された商品が陳列されている。もっとも,商品が陳列されている時期は,本件取消審判請求の予告登録後ではあるが,商品が陳列されている写真が残されている事実から,それに先立つ時期に,原告が,日本市場に参入できるかを試みるために,日本の個人業者を選んで,市場展開の可能\性などを調査したことが推測され,撮影の対象とされた商品は,原告が日本の業者に販売した原告商品であると推認して差し支えない(甲9)。以上認定した事実経緯を総合するならば,原告は,本件取消審判請求の登録前3年以内である平成18年1月から平成20年4月に,少なくとも5回にわたり,大阪府羽曳野市の個人に対して指定商品に該当する原告商品を販売し,その際,同販売に関する取引書類(請求書)に,本件商標を付して,本件商標を使用したことを認定することができ,同認定に反する証拠はない。
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2010.10. 1
平成22(行ケ)10100 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年09月30日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が取り消されました。
被告は,審判において何ら使用の事実を主張,立証しなかったものであるから,約1年後の本件訴訟になってから新たな使用の事実を主張立証することは許されないと主張する。しかし,被告の主張は,採用の限りでない。すなわち,商標登録の不使用取消審判において審理の対象となるのは,その審判請求の登録前3年以内における登録商標の使用の事実の存否であるが,その審決取消訴訟においては,その事実の立証は事実審の口頭弁論終結時に至るまで許されるものと解するのが相当である(最高裁判所昭和63年(行ツ)第37号平成3年4月23日第3小法廷判決参照)。
イ また,被告は,原告提出の証拠は,本件商標の使用との関連性がなかったり,パソコンにより誰でも自由に後で作成することが可能\なものであったり,内部書類にすぎなかったり,弱い立場のサブ・ライセンス先を介して容易に捏造することができるようなものであるから,いずれも信用性がないと主張する。しかし,被告の主張は採用の限りでない。すなわち,i)ファインプラス作成のSmileyWorld 製品販売報告書(甲5の1ないし3),今泉作成の2009 年度製品カタログ(甲7),並びに株式会社エムディーエス(甲13),株式会社サンエイ(甲14),大平紙業株式会社(甲15)及びERG株式会社(甲16)作成の各物品受領書は,いずれも原本であって,商品コード(製品番号)にも同一性が見られ,本件商標の使用と関連性があると認めることができるから,被告主張のように,パソコンにより誰でも後で作成することが可能\なものであるとか,捏造されたものであるなどとはいえない。また,ii)第1回口頭弁論期日において写しとして提出された契約書(甲3,6,11)についても,裁判所からの求釈明に応じて,第2回口頭弁論期日においてその原本が追加提出されていること(甲3,34,35)に照らせば,本件の各許諾契約書の信用性を否定することはできない。さらに,iii)ファインプラスの代表者が原告主張のとおり通常使用権者として本件商標を使用した旨を述べた陳述書(甲33)が原告から追加提出されている。以上の諸点に照らせば,使用の事実に係る原告提出の証拠はすべて信用性がないとする被告の前記主張は,採用の限りでない。そして,本件において,前記(1)の本件商標の使用事実の認定を覆すに足りる証拠はない。\n
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2010.09.10
平成21(行ケ)10393 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年08月31日 知的財産高等裁判所
不使用と判断された審決が取り消されました。
もっとも,技術援助契約書(甲18)は,A,C 及び同夫人D を当事者として,作成されたものであること,本件商標は,同契約の対象に含まれていないこと等の事実に照らすならば,同技術援助契約を直接の根拠として,原告がエレクター社に対し本件商標の通常使用権を許諾したものではない。しかし,エレクター社とインターメトロ社とは,上記技術援助契約書に沿って,円滑な取引を継続してきたものであり,インターメトロ社は,所定のロイヤリティの支払を受けていたこと,平成21年8月に,上記技術援助契約のロイヤリティに関する合意が改訂されているが,エレクター社とインターメトロ社とは,上記技術援助契約が,両社に対して効力を及ぼすものであったことを当然の前提として,改訂交渉を行っていること等の事情を総合参酌するならば,インターメトロ社(知的財産権の管理のために運営されていた同社の完全子会社である原告を含む。)が,エレクター社に対して,本件商標に係る通常使用権の許諾を与えたと認定するのが合理的である。すなわち,エレクター社とインターメトロ社(子会社である原告を含む。)とは,本件商標の使用許諾に関して書面を作成してないが,少なくとも書面によることなく,本件商標の使用を許諾していると認めることができる。この点に関する被告の主張は,採用の限りでない。その他,被告は,縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。
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◆関連事件です。平成21(行ケ)10392 平成22年08月31日
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2010.07.30
平成22(行ケ)10083 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年07月28日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が維持されました。
原告は,本件卸売先との間において,「バイオタッチ800」という名称で取引されているプラスチック製包装用容器の外装段ボール箱(本件段ボール箱)に,本件商標を付していることをもって,商標法50条1 項の「登録商標の使用」に該当するものであると主張するものであって,プラスチック製包装用容器自体に本件商標が付されていると主張するものではない。実際,本件卸売先との取引において作成された各書類には,いずれも商品名としては,「PO BIOTCH SHCO 800 JP 95853593」,「SHCO 800JP 95853593」等と記載され,本件メールにも,「バイオタッチ800ml」と記載されていたものであり,本件段ボール箱以外に本件商標「ECOPAC」が表示されていたことはない。イそして,本件段ボール箱には,確かに本件商標「ECOPAC」が表\示されていたが,本件段ボール箱は,バイオタッチ800 の名称で取引されているプラスチック製包装用容器を注文主である本件卸売先に納品するために使用されているものと認め得るにすぎない。本件段ボール箱には,梱包された商品がどのようなものであるかに関する表示はされておらず,また,本件写真によると,梱包された商品は,注文主である本件卸売先自身が内容物を充填し,各種印刷を施した上で商品として販売することが予\定されているようであり,その外面には,何の記載もされていないものであって,梱包された商品にも,本件商標「ECOPAC」が表示されているものではない。したがって,バイオタッチ800 が収納されている本件段ボール箱に本件商標「ECOPAC」が表示されていたとしても,内容物であるバイオタッチ800 との関連性はなく,当該表示がバイオタッチ800 の出所を表示しているものということはできないから,バイオタッチ800 という名称のプラスチック製包装用容器について,本件商標が使用されているものという余地もなく,商標法2条3項1号の「商品…に標章を付する行為」には該当しない。この点について,原告は,商標法50条1項にいう「登録商標の使用」とは,商標がその指定商品について何らかの態様で使用されていれば足りると主張するが,そもそもバイオタッチの容器であるプラスチック製包装用容器に本件商標が使用されているという余地がないのであるから,原告の主張は,その前提を欠き,採用することができない。ウ以上からすると,本件指定商品のプラスチック製包装用容器ではなく,これを梱包するにすぎない外装段ボール箱の表面に,商標「ECOPAC(エコパック)」を付したからといって,本件商標の指定商品であるプラスチック製包装用容器に本件商標を使用したものと認めることはできない。\n
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2010.05. 7
平成21(行ケ)10327 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年04月27日 知的財産高等裁判所
専用使用権者から許諾をうけた通常使用権者が使用をしていましたが、専用使用権の契約満了後の使用は、50条2項の通常使用権者による使用ではないとした審決が維持されました。
当裁判所は,ライテック社が,平成19年5月9日まで,本件商標と社会通念上同一のSMILEY関連の商標を使用して喫煙具(ライター,携帯灰皿)の製造・販売等をしたとしても,そのことが,通常使用権者による使用に該当するとはいえず,結局,原告は,商標法50条2項所定の通常使用権者等が登録商標を使用していることを証明していないものと判断する。すなわち,ライテック社は,専用使用権者であるジャス社から本件商標の使用の再許諾を受けていたが,ジャス社と商標権者である原告との間の本件専用使用権設定契約は,平成16年10月30日に契約期間満了により終了したこと(当事者間に争いがない。)によって,ライテック社の通常使用権者としての地位は,当然に消滅した。したがって,その後の平成9年7月11日に,ライテック社が,指定商品「スマイリーLED」に,本件商標と社会通念上同一の商標を付してインターネットのホームページにおいて販売目的で展示していたとしても(甲12),商標法50条2項にいう「通常使用権者」としての使用に該当しない。これに対して,原告は,本件のように商標の専用使用権の設定が期間満了により消滅したとしても,その抹消登録をしなければその効力を生じないことになる(商標法30条4項,特許法98条1項2号参照),ジャス社の専用使用権も存続し,ライテック社の通常使用権者としての地位も存続すると主張する。しかし,原告の主張は,理由がない。すなわち,専用使用権の設定,消滅等は,「登録しなければ,その効力を生じない。」(商標法30条,特許法98条1項2号)とされているとおり,商標法は,登録を,対抗要件としてではなく,効力要件と定めたが,同規定は,実体上,専用使用権が存在しないにもかかわらず,登録されてさえいれば,その効力が生ずるものと扱われる趣旨を定めたものでないことは明らかである。したがって,原告とジャス社との間において専用使用権設定契約が期間満了により終了した以上,ジャス社の専用使用権は,当然に消滅し,その再許諾を受けていたライテック社の通常使用権者としての地位も当然に消滅する。
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2010.04.16
平成21(行ケ)10354 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年04月14日 知的財産高等裁判所
ネット上の使用が不使用に該当するかが争われました。知財高裁は、該当しないとした審決を取り消しました。
前記1認定のとおり,原告は,メールマガジン及びWeb版に「クラブハウス」なる標章を表示している。メールマガジン及びWeb版には,加工食料品を中心とした原告商品に直接関係し,原告商品を広告宣伝する情報が掲載されているから,メールマガジン及びWeb版は,顧客に原告商品を認知させ理解を深め,いわば,電子情報によるチラシとして,原告商品の宣伝媒体としての役割を果たしているものということができる。このように,メールマガジン及びWeb版が,原告商品を宣伝する目的で配信され,多数のリンクにより,直接加工食料品等の原告商品を詳しく紹介する原告ウェブサイトの商品カタログ等のページにおいて商品写真や説明を閲覧することができる仕組みになっていることに照らすと,メールマガジン及びWeb版は,原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報ということができ,そこに表\示された「クラブハウス」標章は,原告の加工食料品との具体的関係において使用されているものということができる。したがって,「クラブハウス」標章は,加工食料品を中心とする原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報に付されているものということができる。ウ この点に関して,被告は,原告が「クラブハウス」標章をメールマガジンの名称・識別標識としてのみ使用しているから,商品についての使用に当たらないと主張する。なるほど,前記1(2)認定のとおりの使用態様によれば,「クラブハウス」の表示はメールマガジンの名称としても使用されていることは否定することができない。しかしながら,商標法2条3項1号所定の使用とは異なり,同項8号所定の使用においては,指定商品に直接商標が付されていることは必要ではないところ,リンクを通じて原告のウェブページの商品カタログに飛び,加工食料品たる原告商品の広告を閲覧できること,そして,そのような広告はインターネットを利用した広告として一般的な形態の一つであると解されること(甲189)からすると,原告のメールマガジン及びWeb版における「クラブハウス」の表\示が,原告商品に関する広告に当たらないということはできない。また,被告は,原告のメールマガジン及びWeb版には,全体の商品には「ハウス食品」商標が表示され,個々の商品にはそれぞれ個々の商標が表\示されているから,「クラブハウス」標章が表示されているとしても,商品についての使用に当たらないとも主張する。しかしながら,個々の商品に2つ以上の商標が付されることもあり得るところ,製造販売の主体である原告を表\す「ハウス食品」商標が付されているからといって,原告商品を宣伝する目的で配信されるメールマガジン及びWeb版に原告を表す「クラブハウス」標章を付すことが,商標の使用に当たらないということはできない。さらに,被告は,メールマガジンの受信者は,単なる一般の食品購入者でなく,メールマガジン「クラブハウス」の会員のみであると主張する。しかし,だれでも無料で上記会員になることができることに照らし,これが広告に当たらないということはできない。エ よって,「クラブハウス」標章は,加工食料品を中心とする原告商品に関する広告に付され,又は原告商品を内容とする情報に付され,原告の製造販売する加工食料品との具体的関係において使用されているものということができる。\n
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2010.02.26
平成21(行ケ)10104 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年02月24日 知的財産高等裁判所
商標が不使用であるとした審決が取消されました。
これに対し被告は,本件商標に係る「堤」の表示は仙台市の「堤町」を表\す産地表示又は「堤人形」の普通名称の略称を意味するにすぎず,「堤」の文字を堤人形に使用しても,これらの「堤」の文字は商品の産地表\示であって,自他商品識別機能又は商品の出所表\示機能を発揮するものではなく,商標的使用に当たらないと主張する。しかし,前記(1)のとおり,包装箱に貼付された説明書きにおける「堤」の文字や,包装紙に押捺された四角で囲んだ「堤」の文字は,その配置,文字の大きさに照らして,容易に目につく部分に顕著に表\示されているのであって,単なる産地の表示や堤人形であることの表\示としての機能を超えて,原告の製作する土人形を他の土人形と識別し,その出所を示すという格別の意図及び機能\をもって表示していることは明らかであるから,かかる使用は商標としての使用に当たるというべきである。したがって,被告の主張は採用することができない。\n
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2010.02. 3
平成21(行ケ)10305 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年02月03日 知的財産高等裁判所
商標の不使用が争われました。不使用請求は成り立たないとした審決が維持されました。
原告は,「PINK BERRY」の表示は,特定の商品との密接な関連性がなく,単に店舗における小売サービスを認識させるにとどまるから,小売等役務の出所を表\示するにすぎず,指定商品の出所を識別させるものではなく,本件商標が指定商品について使用されていたとはいえないと主張する。平成19年4月1日に小売等役務商標制度が新たに施行されたところ,商標を小売等役務について使用した場合に,商品についての使用とは一切みなされないとまではいうことができない。すなわち,商品に係る商標が「業として商品を…譲渡する者」に与えられるとする規定(商標法2条1項1号)に改正はなく,「商品A」という指定商品に係る商標と「商品Aの小売」という指定役務に係る商標とは,当該商品と役務とが類似することがあり(同条6項),商標登録を受けることができない事由としても商品商標と役務商標とについて互いに審査が予定されていると解されること(同法4条1項10号,11号,15号,19号等)からすると,その使用に当たる行為(同法2条3項)が重なることもあり得るからである。そして,商品の製造元・発売元を表\示する機能を商品商標に委ね,商品の小売業を示す機能\を小売等役務商標に委ねることが,小売等役務商標制度本来の在り方であり,小売等役務商標制度が施行された後においては,商品又は商品の包装に商標を付することなく専ら小売等役務としてのみしか商品商標を使用していない場合には,商品商標としての使用を行っていないと評価する余地もある。しかしながら,本件商標は,小売等役務商標制度導入前の出願に係るものであるところ,前記1の認定事実によれば,被告は,小売等役務商標制度が施行される前から本件商標を使用していたものである。このように,小売等役務商標制度の施行前に商標の「使用」に当たる行為があったにもかかわらず,その後小売等役務商標制度が創設されたことの一事をもって,これが本件商標の使用に当たらないと解すると,指定商品から小売等役務への書換登録制度が設けられなかった小売等役務商標制度の下において,被告に対し,「洋服」等を指定商品とする本件商標とは別に「洋服の小売」等を指定役務とする小売等役務商標の取得を強いることになり,混乱を生ずるおそれがある。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
◆判決本文
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2010.01. 4
平成21(行ケ)10171 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年12月28日 知的財産高等裁判所
不使用とした審決が取り消されました。
「被告は,原告商品が「建築用又は建築用のスチール製専用材料」に該当するから「鋼」には含まれない,したがって,審決の認定,判断に誤りはないと主張するようである。しかし,被告の主張は,以下のとおり失当である。商標法50条は,何人も,登録商標に係る指定商品等について,その登録商標の取消しの審判を請求することができる旨,及び,被請求人(商標権者)が,その請求に係る指定商品等のいずれかについて登録商標の使用を証明しない限り,登録商標の取消しを免れない旨を規定する。不使用取消しに係る審判請求人において,広範な範囲の指定商品等を不使用取消請求の対象として選択すれば,広範な範囲で取消しの効果を得ることができるが,他方,被請求人(商標権者)は,広範な範囲の指定商品等のいずれかについて,登録商標を使用していることを証明することによって,登録商標の取消しを回避することができ,立証負担は軽減されることになる。同条は,そのような公平の観点から規定されたものであり,不使用取消に係る審判請求人は,これらの得失を考慮して,取消しを求める指定商品の範囲を選択することになる。ところで,本件において,被告が請求した本件不使用取消しの審判は,指定商品「鋼」についての登録商標の不使用を理由とするものであって,「建築用又は建築用のスチール製専用材料を除外した,その余の鋼」についての登録商標の不使用を理由とするものではない(このような特定方法が,取消請求の適法な特定として許されるか否かについて,ここでは言及しない。)。そして,原告(登録商標権者)は,同審判において,本件商標を「鋼」について使用したこと証明できた以上,不使用を理由とする取消しを免れるのはいうまでもない。なお,本件商標の指定商品は,「鋼」とともに「建築用又は構築用のスチール製専用材料」の両者が併記して登録されているが,そのような指定商品の登録があるからといって,指定商品「鋼」の意義を,下位概念である指定商品を除く趣旨に解釈しなければならない根拠とはなり得ないのみならず,被告のした不使用取消審判の対象とした指定商品について,「建築用又は建築用のスチール製専用材料を除外した『鋼』」と解する根拠にもなり得ない。」\n
◆判決本文
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2009.12.22
平成21(行ケ)10177 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年12月17日 知的財産高等裁判所
商品商標の不使用が争われました。不使用審判請求人は、パナとかカロッツエリアなどのメーカ製造品を販売しても使用には該当しないと争いましたが、裁判所は、使用しているとした審決を維持しました。
「上記(1)認定のとおり,本件広告には,「カーナビゲーション装置」,「DVDプレーヤー」及び「スピーカー」といった商品の写真とともに各商品の品番,価格等が表示されているから,本件商標の指定商品の一つである「電気通信機械器具」についての広告であるということができ,上記(1)認定のとおり,その広告の右上角に本件使用標章が付されているのであるから,本件使用標章の使用は,本件商標の指定商品についての使用ということができる。・・・また,上記(1)認定のとおり,本件広告の商品の写真には,「SANYO」,「JVC」,「carrozeria」,「macAudio」等の製造業者の商標が付されているが,一つの商品に複数の商標が使用されるということも妨げないのであるから,本件広告の商品の写真にこれらの製造業者の商標が付されているからといって,本件使用標章がこれらの商品について使用されていないということはできないというべきである。」
◆判決本文
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2009.12. 2
平成21(行ケ)10203 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年11月26日 知的財産高等裁判所
不使用でないとした審決が取り消されました。
商標法50条2項は,登録商標の取消しを免れるためには,被請求人において,「・・・通常使用権者・・・が・・・登録商標の使用をしていること」を証明すべき旨を規定している。ところで,法律効果そのものは証明の対象にすることはできないのであって,証明の対象にされるのは,当該法律効果を発生,変更又は消滅等させる根拠となる具体的な要件事実の存在である。本件の主たる争点は,本件予告登録がされた平成19年12月14日より前の3年以内の時期に本件商標を使用したベスト社が,本件商標権についての通常使用権者であるか否かであるが,「ベスト社が通常使用権者である」という点は法律効果であるから,それ自体を直接証明の対象にすることはできない。立証の対象にすることができるのは,ベスト社が通常使用権を取得した根拠となった具体的な事実が存在したこと(例えば,それが契約であれば,当該契約が,いつ,どこで,いかなる当事者間で,どのような内容の意思の合致がされたかに係る事実の存在等)である。本件では,ジャス社の本件専用使用権設定契約は平成16年10月30日に期間満了により終了し,これに伴いベスト社の通常使用権者たる地位も消滅したのであるから,「ベスト社が通常使用権者である」という法律効果を導くためには,その要件に該当する具体的事実の存在することが立証されることが不可欠となる。そのためには,要件事実に該当する具体的事実が何であるかを,主張立証責任を負担する被請求人(被告)に求釈明するなどした上,それが証拠によって裏付けられるかを検討することが必要不可欠となる。審決では,通常使用権者としての地位を取得した根拠となる具体的な要件事実がどのようなものであるか,どのような証拠によって裏付けられたかについて審理及び判断をすることなく,直接「ベスト社が通常使用権者である」との結論を導いている点において不備があるというべきである。」\n
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2009.10.13
平成21(行ケ)10141 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年10月08日 知的財産高等裁判所
審決は、自他商品識別力を発揮する使用でないとして不使用としましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
この「DEEPSEA」の表示については,「深海」の意味を示す用語として,需要者において,テレビ番組等においても目にする機会がめったにない深海や深い海の神秘的なイメージをも与えていると理解することができ,このことは,需要者に対して,これが付された腕時計である原告商品の自他の識別標識としての機能\をも果たしているものであって,「DEEPSEA」の表示は,原告商品に自他商品の識別標識としての機能\を果たす態様で用いるものとして付されているということができる。この点について,被告は,原告商品が実際に水中で使用できる「ダイバーズウォッチ」であること,原告商品と同程度の防水機能のついた腕時計は多数存在し,一般消費者であっても,腕時計の防水機能\の表示等について一定の知識を有するといえ,「660ft=200M」の表\示の意味合いを容易に把握することができること,原告商品における「DEEPSEA」の表示態様や「DEEPSEA」の語の意味が容易に理解できることを考慮すれば,取引者・需要者は,「660ft=200M」の表\示とあいまって,「DEEPSEA」の表示を「水深200メートルの深海においても使用できる機能\及び主な使用表示」と認識するということができ,同表\示をもって,原告製品と他の製品を識別するための手掛かりとして認識しているということはできないと主張するが,商品に付された1つの標章が常に1つの機能しか果たさないと解すべき理由はなく,原告商品に付された「DEEPSEA」の表\示が,次行の「660ft=200M」の表示とあいまって,需要者において,水深200メートルの深海においても使用できる耐水性を有するとの機能\を表示するものと理解し得るとしても,その表\示が,同時に,自他商品を識別させるために付されている商標でもあると解することができるものであり,上記のとおりの「DEEPSEA」の持つイメージ等に照らすと,この表示が原告商品に自他商品を識別させる機能\をも果たす態様で用いるものとして付されていると解することができるものであって,被告の主張は採用することができない。そうすると,原告が主張している取消事由2について検討するまでもなく,本件商標について法50条1項にいう「使用」の事実は認められるべきものであるから,その事実を認めることができないとして原告の商標登録を取り消した本件審決は誤りというほかない。
◆平成21(行ケ)10141 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年10月08日 知的財産高等裁判所
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2009.06.26
◆平成20(行ケ)10482 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年06月25日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が取り消されました。
「1つの商品である「本件米」の包装に,いずれも指定商品を「米」とする異なる2つの商標が並列的に表示される状態となっているから,商品の出所が原告(セラの苑)であるのか,株式会社純情米いわてであるのか定かではなく,このような場合には,法2条3項1号ないし3号に規定された「行為」に該当しないと主張するが,上記1(3)及び(4)のとおり,本件袋に本件ラベルが貼付されることによって,1つの商品の包装に2つの商標が表\示される結果となっていることは被告が指摘するとおりであるとしても,株式会社純情米いわてが販売した本件米の流通過程において,第三者が何らかの価値を付加するなどして再販売する場合に,当該再販業者がその再販売する本件米に第三者の商標を付して再販業者としての出所を明らかにし,その商標に化体した信用を本件米に与えることができるのは当然ともいうべきものであって,本件米の出所を混同させるとか,誤認させるとかいった批判は当てはまらないというべきである。現に,上記1(2)で認定したところからしても,少なくとも,原告自身が本件米を顧客に配送する場合(再販売の場合)においては,顧客はそのような本件米を「忠臣蔵」の名称によって識別しており,かつ,同(4)のとおりの本件袋へ本件ラベルが貼付されている状況からすると,顧客が販売業者としての株式会社純情米いわてと再販売者としての原告を混同するおそれがないことも明らかである。そうすると,法2条3項に規定された「行為」に該当するか否かを判断する際に,出所の混同ないし誤認の有無といった見地からも併せて検討する必要があると仮定しても,本件においては,上記いずれの観点からも,被告の主張を採用することはできないというべきである。」
◆平成20(行ケ)10482 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年06月25日 知的財産高等裁判所
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2009.03.26
◆平成20(行ケ)10414 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年03月24日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした取消審決(商標法50条)が取り消されました。
「被告は,原告の行為は他人のために行う役務ではなく,各甲号証についても他人のためではなく原告自らの利益のために行う自社広告であるから,本件商標を「商品の販売に関する情報の提供」の役務に使用したことにはならないと主張する。しかし,上記(3)で認定した事実によれば,「ザ・ナイトメア・オブ・ドルアーガ不思議のダンジョン」の音楽CDは株式会社スーパースィープが製作,販売するものであり,ゲームソフト「ロックマンエグゼトランスミッション」「ストリートファイターEX plus α」についても株式会社カプコンが販売するものであるから,これらに関する情報の提供は他人のために行う役務ということができ,「商品の販売に関する情報の提供」に該当するものと認められる。被告の主張は採用することができない。
◆平成20(行ケ)10414 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年03月24日 知的財産高等裁判所
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2008.11.21
◆平成20(行ケ)10103 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判(商標法50条)について、使用していたとした審決を取り消しました。
「以上のとおり,被告は,本訴において,本件売買1及び2に係る取引書類として存在するのが通常であると考えられるものを提出せず,また,その提出を試みようともしないところ,被告のかかる応訴態度は,上記1の各取引書類の内容の信用性を減殺させる無視できない事情であるというべきである。なお,上記アのとおり,被告は,上記各取引書類を提出しない理由として,当該各取引書類が審決において認定判断の対象となった書類でないことを挙げるので,念のため付言するに,仮に,かかる被告の主張が,「審判で審理判断されなかった公知事実との対比における特許無効原因を審決取消訴訟において主張することは,許されない」とした最大判昭和51年3月10日(民集30巻2号79頁)の判旨を前提とするものであったとしても,商標の不使用取消審判に係る審決の取消訴訟において,審判で主張立証がなく,審決の認定判断の対象とならなかった事実について新たに主張立証をすることが上記判旨に反するものではないから(最3小判平成3年4月23日・民集45巻4号538頁),被告の上記主張は失当である。」
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◆平成20(行ケ)10102 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所
◆平成20(行ケ)10101 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所
◆平成20(行ケ)10103 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年10月29日 知的財産高等裁判所
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2008.09. 2
◆平成19(行ケ)10277 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年08月29日 知的財産高等裁判所
不使用取り消し審判では『使用有り』と認定されましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
「この点につき,株式会社大丸ピーコック関西仕入営業部衣料品部バイ
ヤーGは,上記のとおり平成18年9月4日の「株式会社アイ・シー・シー
殿」と題する書面(甲27)で,被告からの仕入時に,商品によって取扱
品番が同じで商品又は材質が異なるものを納品してもらうことがあるとす
るが,そうすると被告の主張するとおりの品番の商品が販売されたとして,
これと被告主張の本件商標の刺繍等が付された商品との同一性についても
疑問が生じるというべきである。
原告は,同一の品番で商品ないし品質が異なる商品を納入することが業
界慣行としてありえないとし,これに沿う証拠として上記甲38ないし4
0の陳述書を提出している。
上記によれば,被告による株式会社大丸ピーコックに対する販売につい
て,本件商標が使用されたとする事実については,これを認めるに足りな
いというべきである(「PARIS」とする部分については,使用された
と認める余地があるが,これだけでは本件商標が使用されたということは
できない)。・・・
上記甲1によれば,マルエツに対し原告の社員らが訪問,問い
合わせを行った範囲では被告が販売したとする女性用ティーシャツの取扱
いの事実が確認できず,さらに原告が被告に対し,株式会社マルエツ,ブ
ルーピーター株式会社の担当者を明らかにし立証するよう求めたにもかか
わらず,被告は当審においても更なる主張立証を行わない。」
◆平成19(行ケ)10277 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年08月29日 知的財産高等裁判所
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2007.10.29
◆平成19(行ケ)10205 商標登録取消決定取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年10月25日 知的財産高等裁判所
4条1項11号違反の先願既登録商標について、審決がなされた後、不使用取消審判で取り消された場合の審決の違法性について争われました。裁判所は、11号の判断時期は査定審決時であるので、その後の取消によっては先願既登録商標であったことについて影響はないとしたものの、類似判断に影響があるとして、審決を取り消しました。
「そうすると,引用商標に係る商標登録(登録第4442542号)は,上記不使用取消審判請求の予告登録日である平成19年2月28日に消滅したものとみなされることになる(法54条2項)。しかし,商標登録が法4条1項11号に違反するかどうかの判断の基準時は登録査定時であると解されるところ,本件商標登録の登録査定日は,前記のとおり平成17年8月23日である(争いがない)から,そのときには,引用商標に係る商標登録(登録第4442542号)が,いまだ消滅していないことは明らかである。原告は,本件決定の日である平成19年4月19日には引用商標に係る商標登録は消滅していたから同決定は違法であるとか,訴外会社による本件登録異議申\立ては遡及的に申立ての利益がないことになるとか主張するが,本件商標登録が法4条1項11号に違反するかどうかの判断基準時は,前記のとおり登録査定時たる平成17年8月23日であると解されるから,原告の上記主張は採用することができない。もっとも,これらの事情は,後記のとおり,商標の類否判断における取引の実情として斟酌されるべきものである。・・・原告による法50条1項による不使用取消審判請求の登録時前3年以内(平成16年3月1日から平成19年2月28日)に,引用商標を使用していなかったものと認められる。したがって,訴外会社は,本件商標登録の登録査定時(平成17年8月23日)はもとより,その以前から引用商標を使用していなかったものと認められるから,本件商標登録の登録査定時(平成17年8月23日)に,引用商標に何らかの信用が形成されていたとは認めることはできない。(6) 類否の有無以上(2)ないし(5)を総合すると,本件商標と引用商標は,外観は類似せず,観念はある程度類似し,称呼は共通する点があるものの異なる点もある程度であり,これらの諸要素に,取引の実情として,本件商標登録の登録査定時(平成17年8月23日)に本件商標には一定の信用が形成されていたものの引用商標に何らかの信用が形成されていたとはいえないという事実があることを総合勘案すると,本件商標登録の登録査定時たる平成17年8月23日の時点において商品の出所を誤認混同するおそれがあったとは認められないというべきであり,本件商標と引用商標が類似するということはできない。したがって,本件商標と引用商標が類似するとした本件決定の判断には,類似性についての判断を誤った違法があることになる。」
◆平成19(行ケ)10205 商標登録取消決定取消請求事件 商標権行政訴訟 平成19年10月25日 知的財産高等裁判所
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2007.07.27
◆平成19(行ケ)10049 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所
使用していた商標は社会通念上同一あり、よって不使用であるとした審決を取り消しました。
「本件商標は,前記第3の1(1)アに述べたとおり,・・・というものであって,カタカナによる「チェチェ」との文字とアルファベットによる「CHECHE」との文字を2段に配した構成によりなる商標であり,これに対し本件標章は,前記のとおり,「CH.cCH.」というものである。これを対比してみると,本件商標が2段の構成をしているのに対し,本件標章はアルファベットのみの構\成である点,本件標章には「CHE」と「CHE」との間に「c」が挿入されている点,本件標章の「E」の部分が筆記体の「.」となっている点で,外観上の差異が認められる。ところで,本件商標のカタカナ部分は,アルファベット部分を日本語によって表記したものにすぎない。また,ハートの図形は,かわいらしさ,キユートさを想起させる図形として,女性用の衣料品・装身具類等のアクセントとしてしばしば用いられるデザインであり,本件標章におけるハートの図形についても,これが女性用の靴に用いられているものであって,しかも,同列のアルファベットの文字とほぼ同大,同間隔,同色であることからすれば,当該ハートの図形部分だけが看者に特別な印象を与えるものとはいえない。さらに,「E」の部分を「.」としている点も,アルファベットの「E」を筆記体で表記したものとして,きわめてありふれたものであって,看者においてことさらに別異のものとして認識されるものではない。そして,ハートの図形部分や「E」の筆記体から独自の称呼は生じないことからすると,本件標章の称呼は,本件商標の称呼である「チェチェ」と同一と解して妨げなく,観念として新たなものを付加するものでもない。そうすると,本件標章は,本件商標と社会通念上同一と認めるのが相当である。」
◆平成19(行ケ)10049 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所
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2006.11.13
◆平成18(行ケ)10183 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月08日 知的財産高等裁判所
登録商標を使用していたと認定した不使用取消審判の審決が取り消されました。
「このように,上記(i)(ii)の事実のみに基づき,本件登録商標の使用がなされたのが本件審判請求がされることを原告が知った後であるとした審決の認定は,事実認定についての経験則に反し,明らかに誤ったものである。そして,本件証拠により認定できる他の事実を総合しても,原告が本件登録商標を使用したのが,本件審判の請求がされることを知った後であると認めることはできない。」
◆平成18(行ケ)10183 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月08日 知的財産高等裁判所
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2006.08.10
◆平成18(行ケ)10105 審決取消請求事件 平成18年08月09日 知的財産高等裁判所
役務について不使用とした審決を取り消しました。
「被告は,通常使用権の許諾契約の存在を示す証拠方法が全く提出されていないから,東急ストリームラインは通常使用権者でないと主張する。しかしながら,契約書などの書面によらなければ,通常使用権を許諾することができないというわけではなく,また,契約書などの書面が証拠として提出されない場合であっても,上記1の事実によれば,原告が本件商標について東急ストリームラインに通常使用権を許諾した事実は優に推認されるのである。被告の主張及びこの点に関する審決の事実認定に関する手法は,あたかも,実体法的には要式行為性を要求し,手続法的には法定証拠力を想定するものであって,誤りである。また,被告は,システムは,商品に当たるとしても,役務には当たるものではないと主張するが,上記2のとおり,原告の旅費精算・管理システムは,Web上で電子的に処理・管理しようとするプログラムであるから,これをもって,有体物を観念することはできない。さらに,被告は,ウェブページでは,「旅費精算・管理システム」の名称として本件商標を使用しているにすぎないし,提案書等は,商標法2条3項8号の「取引書類」に当たらない上,特定の一企業に提示されただけであるから,同号の「頒布」に当たらないと主張する。しかしながら,上記1の事実によれば,東急ストリームラインのウェブページの掲載は,商標法2条3項8号にいうところの,本件役務に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供する行為に当たるものである。また,提案書は取引上必要な書類であるから,本件役務に関する取引書類に当たるところ,通常,このような提案書は提供を求める特定の顧客に交付されるものであるから,現実に提供を求める顧客に交付されている以上,これを頒布したということができる。」
◆平成18(行ケ)10105 審決取消請求事件 平成18年08月09日 知的財産高等裁判所
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2006.07. 4
◆平成17(行ケ)10043 審決取消請求事件 平成18年06月29日 知的財産高等裁判所
「本件商標は不使用である」とした審決が取り消されました。
「本件関連標章2においては,<R>マークによって,「速脳速聴」と「基本プログラム」とが明確に分離されており,また,上記のとおり,本件取扱説明書の裏表紙には,「『速脳』『速脳速読』『速脳速聴』等は新日本速読研究会(X〔注,原告〕)が保有する商標です。」等の記載があることから,取引者・需要者は,「速脳速聴」が商標であると容易に理解することができるものである。
そうすると,本件関連標章2は,本件関連標章1以上に,「速脳速聴」の部分に自他商品識別力があるということができるから,本件商標と社会通念上同一と認められる商標であり,プランニングラボは,本件関連標章2によっても,本件関連標章1と同様,本件商標の使用をしていたといわなければならない。」
◆平成17(行ケ)10043 審決取消請求事件 平成18年06月29日 知的財産高等裁判所
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2006.05.31
◆平成17(行ケ)10817 審決取消請求事件 平成18年05月25日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判の使用認定について、審決を取り消ししました。
「前記のとおり,商標法50条2項本文は,商標の不使用による登録取消しの審判請求があった場合,被請求人は,日本国内における登録商標の使用を証明しなければならないことを規定しているところ,商標法2条3項2号にいう「譲渡」が日本国内において行われたというためには,譲渡行為が日本国内で行われる必要があるというべきであって,日本国外に所在する者が日本国外に所在する商品について日本国内に所在する者との間で譲渡契約を締結し,当該商品を日本国外から日本国内に発送したとしても,それは日本国内に所在する者による「輸入」に該当しても,日本国外に所在する者による日本国内における譲渡に該当するものとはいえない。」
◆平成17(行ケ)10817 審決取消請求事件 平成18年05月25日 知的財産高等裁判所
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2005.12.22
◆H17.12.20 知財高裁 平成17(行ケ)10098 商標権 行政訴訟事件
商標法50条2項の「正当な理由」に関する判断です。裁判所は、「正当理由に該当する」とした審決を取り消しました。
「我が国の商標法は,商標権者による商標の現実的使用を重視している(3条1項柱書,50条)ことからすると,同法50条2項にいう「正当な理由」とは,前述したように,商標権者において登録商標を使用できなかったことが真にやむを得ないと認められる特別の事情がある場合に限られると解すべきところ,被告の上記主張は,企業たる被告の内部事情にすぎず(被告がその経営判断により本件商標を日本国内において使用することは十分に可能\であった),これをもって前記特別の事情と認めることはできない。したがって,商標権者である被告が上記のように外国企業であっても,本件商標の指定役務である「飲食物の提供」について本件商標を使用することができないことにつき「正当な理由」があったと認めることはできない。
(4) 以上検討したところによれば,被告が本件商標を日本において使用していないことについて商標法50条2項ただし書の「正当な理由」があるということはできない。」
◆H17.12.20 知財高裁 平成17(行ケ)10098 商標権 行政訴訟事件
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2005.07.24
◆H17. 7.20 知財高裁 平成17(行ケ)10246 商標権 行政訴訟事件
商標の使用が争われた事例です。争点は何点かありますが、あるソフトに同梱されている付属品ないし付加されている場合に、そのソ\フトが商標法上の商品に該当するのかが1つの争点となりました。
裁判所は、「ソフトウエアが必ずしも常に単独で販売されるとは限らず,独立した複数のソ\フトウエアを収録して1つの商品として販売されることがあることは,よく知られているところであるが,OCRソフトウエアは,画像データとして読み取った文字情報を文字データに変換するという機能\を有するソフトウエアであり,そのようなソ\フトウエアが各種機器や文字データを扱う別のソフトウエアに添付,同梱される例が多いこと,その種類も決して少なくなく,多くのメーカーからさまざまな名称が付されて提供されていることは,当裁判所に顕著である。そして,そのような添付,同梱されたOCRソ\フトウエアがいかなる者(会社)によって開発,作成,販売されているものであるかは,機器等を購入する者にとっても大きな関心事であり,需要者としては,これを商品パッケージ等に付された当該ソフトウエアに係る商標によって識別することになるのであるから,本件ソ\フトウエアが商標法上の商品に当たらないということはできない」と特許庁の審決を維持しました。
◆H17. 7.20 知財高裁 平成17(行ケ)10246 商標権 行政訴訟事件
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2005.03.31
◆H17. 3.24 東京高裁 平成16(行ケ)555 商標権 行政訴訟事件
不使用取消審判で「不使用とは認められない」とした審決が取り消されました。ただ、本件被告は「使用の必要がなくなった」として、準備書面等の手続きを行わなかった事案です。
◆H17. 3.24 東京高裁 平成16(行ケ)555 商標権 行政訴訟事件
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2004.12.23
◆H16.12.21 東京高裁 平成16(行ケ)161 商標権 行政訴訟事件
商品か、それとも、役務か(電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守に関する労務)が争われました。役務であるので指定商品に使用していないと認定した審決を取り消しました。
◆H16.12.21 東京高裁 平成16(行ケ)161 商標権 行政訴訟事件
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2003.05.30
◆H15. 5.28 東京高裁 平成14(行ケ)591 商標権 行政訴訟事件
「DON/ドン」の2段書きの商標権について、「DON」の語の使用が、商標法50条の登録商標の使用に該当するかが争われました。
特許庁は、登録商標の使用に該当しないと判断しましたが、裁判所はこれを取り消しました。
「上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,我が国においては「DON」の語は,一般の取引者及び需要者には,「ドン」と称呼され,また,「スペインなどの男子に対する敬称」,「首領,ボス」といった観念を生じさせるものと認めるのが相当である。・・ 被告は,「DON」の語は,「ディー・オー・エヌ」の称呼も生ずる旨主張するところ,我が国では複数の語を連ねてなる外来語等の複合語については,これを構成する各語の頭文字(欧文字)を並べてこれを当該複合語の略称とすることがよく行われ,その意味において,「DON」の語について,これを複合語の略称であるととらえて,「ディー・オー・エヌ」と称呼する取引者及び需要者が存在する可能\性を否定することはできない。しかしながら,我が国において,「DON」の語が何らかの複合語の略称であるとする記載は公知の一般辞書類には見出せないのであって,取引者及び需要者の中に,「DON」の語を上記の複合語の略称としてとらえ,これを「ディー・オー・エヌ」と称呼する者がいるとしても,それは例外に属すると認めるのが相当である。・・・・
イ 被告は,原告が「DON」の文字を使用しているとする商品はシャンプ ーであるところ,このような商品に付された「DON」の標章が「首領,ボス,親分,大人物」を意味するとみるのは普通人の感覚に合わないことであり,上記標章は「ディー・オー・エヌ」と称呼される可能性が大きいとし,同商品の取引者及び需要者において,上記「DON」のみの使用が本件商標の使用であるとみるのは困難である旨主張する。しかしながら,特定の商品の取引者及び需要者は,その商標の構\成自体から受ける印象によりその称呼,観念を認識するものが一般的であると考えられ,せっけん類等を含む各種家庭用品の購入を通じて得られる経験則に照らしても,商品の種類や性質から,その商品に付された商標をどのように称呼し,その商標がいかなる観念を示すものかを考え,認識するというのは例外に属するというべきである。この点に関する被告の主張は採用できない。」
◆H15. 5.28 東京高裁 平成14(行ケ)591 商標権 行政訴訟事件
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