2022.02.22
令和3(行ケ)10076 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年2月9日 知的財産高等裁判所
商標「知本主義」の不使用取消審判の審決取消訴訟です。会報のタイトルとして「賢主主義と知本主義」を使用していましたが、審決は不使用と認定しました。裁判所も同様です。本件会報は市場における独立した商取引の対象たる商品ではないとされています。
商標法上,商標の本質的機能は,自他商品又は役務の識別機能\にあると解するの
が相当であるから(同法3条参照),同法50条にいう「登録商標の使用」という
ためには,当該登録商標が商品又は役務の出所を表示し,自他商品又は役務を識別\nするものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されることを要すると
解するのが相当である。
この点に関し,原告は,上記「登録商標の使用」といえるためには,当該登録商
標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足りる旨
主張するが,上記のとおりの商標の本質的機能に照らし,採用することができない。\n
(2) 本件各書籍について
証拠(甲8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,36の
1及び2)によれば,本件各書籍(表紙,裏表\紙,書籍に付された帯等も含む。)
には,「知本主義の時代を生きろ」,「私は資本主義ではなく「知本主義」時代が
到来すると思う。」,「資本主義に代わる知本主義」,「「資本主義」から「知本
主義」へ」など,「知本主義」の文字を用いた表現が一定程度記載されているもの\nと認められる。
しかしながら,原告が「知本」の語につき辞書にも記載がないと主張するとおり,
「知本主義」の語の観念は不明確であり,「主義」との語尾から何らかの主義主張
を指すことがうかがわれるのみである。そうすると,上記のとおり本件各書籍にお
いて「知本主義」の文字を用いた表現が一定程度記載されていることや,本件各書\n籍が通信販売サイト等において宣伝されていること(甲9,11,13,15,1
7,19,21,23,25,27,37)を考慮しても,「知本主義」の文字又
はこれを含む表現に触れた取引者及び需要者は,これらの文字等を書籍の副題の一\n部,記載内容,宣伝文句,著者の主張等であると認識するにとどまり,これらの文
字等が当該書籍に係る自他商品識別機能を果たすと認識するとは考え難い(これは,\n「知本主義」の文字が鍵括弧でくくられている場合であっても変わるところではな
い。)。なお,この点に関し,原告も,「知本主義」の文字等が書籍に付された場
合,「知本」の主義主張に関する分野ないし事項の書籍であることを取引者及び需
要者に想起させる旨主張しているところである。
したがって,本件各書籍における「知本主義」の文字の記載は,商標法50条に
いう「登録商標の使用」に該当しない。
(3) 甲28会報について
ア 証拠(甲28)によれば,甲28会報には,「賢主主義と知本主義」との表\n題が付され,「X会のうた」として,「いっぱい 知本主義」との記載がされ,
「「知本主義」を実践するX会12月例会」なる会合の告知がされているものと認
められるが,甲28の記載やその他の証拠によっても,甲28会報が市場における
独立した商取引の対象たる商品であると認めることはできないから,甲28会報に
おける上記表題等の記載をもって,本件商標が商品について使用されたということ\nはできない。
イ 証拠(甲28)によれば,甲28会報には,「令和元年12月23日」との
日付の記載があるものと認められ,その他,甲28会報が本件要証期間内に発行さ
れたものと認めるに足りる証拠はない。
ウ 以上のとおりであるから,甲28会報における上記アの記載をもって,原告
又は本件商標の専用使用権者若しくは通常使用権者(以下「原告ら」という。)が
本件要証期間内に本件指定商品について本件商標を使用したと認めることはできな
い。
(4) 甲29の選挙公報について
証拠(甲29)によれば,甲29は,東京都選挙管理委員会が平成11年4月1
1日執行の東京都知事選挙に際して発行した選挙公報(原告に係るもの)であり,
「資本主義(拝金主義)から知本主義へ」との記載がされているものと認められる。
しかしながら,一般に選挙公報が「新聞」,「雑誌」若しくは「書籍」又はこれ
らに係る広告等に該当しないことは明らかである。また,上記認定のとおりの選挙
の執行期日にも照らすと,同選挙公報が本件要証期間内に発行されたと認めること
もできない。
そうすると,甲29の選挙公報における上記記載をもって,原告らが本件要証期
間内に本件指定商品について本件商標を使用したと認めることはできない。
(5) 甲30の社歌について
証拠(甲30)及び弁論の全趣旨によれば,甲30の書面には,「知本主義・知
財企業「B 勤務心得の歌」」と題する歌の歌詞が記載され,その歌詞の中に「知
本主義」の語が用いられているものと認められる。
しかしながら,本件全証拠によっても,甲30の書面が「新聞」,「雑誌」若し
くは「書籍」又はこれらに係る広告等に該当すると認めることはできないし,同書
面の作成時期も不明である(同書面には,「SINCE1957」との記載がみられるのみ
である。)。
そうすると,甲30の書面における上記記載をもって,原告らが本件要証期間内
に本件指定商品について本件商標を使用したと認めることはできない。
(6) 甲34のウェブサイトについて
証拠(甲34)及び弁論の全趣旨によれば,甲34は,原告の著書を宣伝するウ
ェブサイトであって,原告が代表取締役を務める株式会社Bが運営するものの画面\nを印刷した書面であると認められる。
しかし,甲34をみても,本件商標又は社会通念上これと同一の商標が当該ウェ
ブサイトに表示されているということはできない。\nしたがって,原告らが甲34のウェブサイトにおいて本件商標を使用したとは認
められない。
(7) 甲37のウェブサイトについて
証拠(甲37)及び弁論の全趣旨によれば,甲37は,原告の著書(甲36の1
及び2)を宣伝するウェブサイトであって,上記株式会社Bが運営するものの画面
を印刷した書面であり,同画面には,同著書を宣伝する文言として,「資本主義社
会は「知本主義」へ」との記載がされているものと認められる。
しかしながら,前記(2)において説示したとおり,「知本主義」の文字を含む上
記記載に触れた取引者及び需要者は,これを同著書の記載内容,宣伝文句,著者の
主張等であると認識するにとどまり,これが同著書に係る自他商品識別機能を果た\nすと認識するとは考え難い。
したがって,甲37のウェブサイトにおける上記記載は,商標法50条にいう
「登録商標の使用」に該当しない。
◆判決本文
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2022.01. 7
平成18(行ケ)10043 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成18年6月29日 知的財産高等裁判所
かなり昔の判決ですが、興味深いのであげておきます。登録商標の同一性および、取説における使用も使用と認定されました。
標章「速脳速聴基本プログラム」の使用が、登録「速脳速聴」の使用と認定されました。指定商品は「中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・
磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器」です。
本件関連標章1は,「速脳速聴」(本件商標)と「基本プログラム」と
が結合した語から成るものである。この構成中の「速脳速聴」の部分は,\n高速で聴くことによって脳の回転を高めるといった程度の意味を有するも
のと理解されないこともないが,明確な意味を有するとまではいえず,取
引者・需要者において,既存の明確な観念を伴わない新たな造語であると
認識するものと認められる。一方,「プログラム」の語は,本件商標の指
定商品である電子応用機械器具の分野において,その一種である電子計算
機のためのプログラムを示す普通名称であり,これに冠して付加されてい
る「基本」の語は,「物事が成り立つためのよりどころとなるおおもと。
基礎。」(甲27の2,ウェブサイトの「 辞書」),「物事がそれに goo
基づいて成り立つような根本。」(甲28,株式会社岩波書店平成3年1
1月15日発行「広辞苑第4版」)を意味し,後に「応用」若しくは「発
展」など次の段階へと続くことを想起,連想させる一般的な記載にすぎな
いから,本件関連標章1に接した取引者・需要者は,通常,その構成中の\n「基本プログラム」の部分は,商品の特定のために当該商品の用途等を表\n示したものと理解して,それ自体を自他商品の識別力を有する部分とは考
えないと認めるのが相当である。
そして,「速脳速聴」と「基本プログラム」とは,一体不可分の密接な
関係にあるとはいえないし,「速脳速聴基本プログラム」の称呼は,「ソ\nクノウソクチョウキホンプログラム」と著しく冗長であって,この一連一\n体の称呼によることが取引の実情に即したものであるとは言いがたく,む
しろ,取引の実際においては,冒頭の「速脳速聴」の部分に即して「ソク\nノウソクチョウ」との称呼を生ずるのが通常であるということができる。\nそうすると,本件関連標章1の「速脳速聴基本プログラム」の語は,
「速脳速聴」の部分において,取引者・需要者の注意を引くものであり,
その部分が自他商品の識別力を有するものというべきである。
もっとも,本件関連標章1の「速脳速聴」の部分について,高速で聴く
ことによって脳の回転を高めるといった程度の意味のものととらえ,本件
関連標章1について,一体として「速脳速聴の基本的なプログラム」,あ
るいは,「速脳速聴に関する基本的なプログラム」との観念を生ずること
もあり得ないものではない。しかし,一般には,「速脳速聴」の観念が必
ずしも明確でないことに照らしても,「速脳速聴の基本的なプログラム」
等の観念が生ずる可能性がないわけではないことによって,「速脳速聴」\nの部分の自他商品識別力が否定されるものではないというべきである。
そして,この「速脳速聴」は,本件商標と同一なのであるから,本件関
連標章1は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標とみるのが相当
であり,上記1及び2・・・ に照らせば,プランニングラボは,本件予\n告登録前3年以内に,本件関連標章1により,本件商標の指定商品である
本件商品1につき,商標法2条3項1号及び8号にいう本件商標の「使
用」をしていたというべきである。
ウ ところで,被告は,本件CDに付されている商標は,「速脳速聴基本プ
ログラム」であるから,本件商標「速脳速聴」とは,同一の商標ではない
し,「速脳速聴基本プログラム」は,一体として「速脳速聴の基本プログ
ラム」の観念が生じ,当然,一連一体として観察,称呼しなければならず,
本件商標とは,称呼,外観,観念のすべてを異にするものであり,識別力
を異にすることが明らかであるから,本件関連標章1は,本件商標と社会
通念上同一と認められる商標でないと主張する。
しかし,「速脳速聴基本プログラム」がそれ自体一つの商標であるとし
ても,上記のとおり,取引の実際においては,「速脳速聴」の部分,すな
わち,本件商標に相当する部分が商標として自他商品識別力を有している
ものというべきである。また,「速脳速聴基本プログラム」から,一体と
して「速脳速聴の基本プログラム」の観念が生ずる可能性があることは,\n上記のとおりであるが,そのことから,このような結合語を,直ちに一連
一体として観察,称呼しなければならないものとはいえず,一体として
「速脳速聴の基本プログラム」の観念が生ずる可能性があることによって,\n「速脳速聴」の部分の自他商品識別力が否定されるものではないことも,
上記のとおりである。
(4) 次に,本件取扱説明書の表紙に記載されている「速脳速聴<R>基本プログ
ラム」(以下「本件関連標章2」という。)について検討する。
ア 本件関連標章2が,本件商標と社会通念上同一といえるかについてみる
と,本件関連標章2は,「速脳速聴」と「基本プログラム」とが<R>マー
クで区分された語であるところ,この<R>マークは,米国における連邦登
録商標の商標表示の方法(米国連邦商標法1111条〔ランナム法29\n条〕)であって,商標法73条,同法施行規則17条にいう商標登録表示\nではないが,我が国でも登録商標に簡明な<R>マークを付すことが慣行的
に行われていることは,当裁判所に顕著である。そして,本件関連標章2
においては,<R>マークによって,「速脳速聴」と「基本プログラム」と
が明確に分離されており,また,上記のとおり,本件取扱説明書の裏表紙\nには,「『速脳』『速脳速読』『速脳速聴』等は新日本速読研究会(X
〔注,原告〕)が保有する商標です。」等の記載があることから,取引者
・需要者は,「速脳速聴」が商標であると容易に理解することができるも
のである。
そうすると,本件関連標章2は,本件関連標章1以上に,「速脳速聴」
の部分に自他商品識別力があるということができるから,本件商標と社会
通念上同一と認められる商標であり,プランニングラボは,本件関連標章
2によっても,本件関連標章1と同様,本件商標の使用をしていたといわ
なければならない。
◆判決本文
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2020.12. 7
令和2(行ケ)10072 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和2年12月2日 知的財産高等裁判所
使用証明として「奥西木工」の文字部分が記載されていない証明書を提出しました。審決は当該部分が出所表示機能\を有する要部であるとして登録を取り消しました。知財高裁(2部)も同じく使用証明として認めませんでした。登録商標は判決本文内に参照されています。
1 本件商標のうち,「奥西木工」の文字部分が,出所表示機能\を有する要部に当
たるかについて
本件商標は,前記第2の1のとおり,全体が一様に朱色の家具の催事についての
広告チラシを縮小した構成からなり,その上部には,上が欠けた円図形の内側に大\nきな赤い文字で「大処分」と記載され,その右側に「キズ物 半ぱ物 山積」と記
載された白抜きの将棋の駒様の図形を配し,さらに,上記円図形の右内側に大きく
「家具」の文字が記載され,内側に家具の絵が配されており,上記円図形の左上に
「京都最大の家具専門店奥西木工の魅力あるキズもの」と大きく記載され,同図形
の上に「キズ物市」とより大きく記載され,同図形の左には「大放出」と大きく記
載されており,その下部には,矢印と共に「うら面へつづく」と記載され,最下部
には赤色の長方形の中に白抜き文字で「奥西木工」等の文字が記載されているもの
である。
上記のような本件商標の構成からすると,本件商標に接した需要者,取引者は,\n本件商標が,「キズ物市」という家具の催事についてのチラシであると認識すると認
められるところ,「大処分」,「家具」,「キズ物市」,「大放出」といった記載や家具の絵は,販売される商品や催事の内容などを表すものと認識されるのであって,本件\n商標には,「奥西木工」の文字部分以外に,本件商標に記載された各商品(家具)の
出所を示すような表示はない。そうすると,本件商標に接した需要者,取引者は,\n「奥西木工」の記載をもって,指定商品である家具の出所を表示するものとして認\n識するものと認められ,「奥西木工」の文字部分は,要部であるというべきである。
・・・
そうすると,本件チラシ1は,その全体のレイアウトは,本件商標と共通する部
分があるものの,本件チラシ1のいずれにも本件商標の要部である「奥西木工」と
いう文字部分がなく,「タキソウパルクス刈谷店」,「タキソ\ウ家具」,「タキソウ家具本店」,「タキソ\ウパルクス吉原店」などとの記載があるのみであるから,本件チラ
シ1に記載された本件使用商標1は,本件商標とは外観が大きく異なる上,本件商
標から生じる「オクニシモッコウ」などの称呼や「奥西木工の主催するキズ物市」
といった観念も本件使用商標1からは生じない。以上からすると,本件使用商標1が,本件商標と社会通念上同一ということはできない。
◆判決本文
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2019.02.20
平成30(行ケ)10059 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成31年1月29日 知的財産高等裁判所(2部)
商標「QRコード」について、使用されていたとした審決が維持されました。争点は、商標的使用か、登録商標との同一か等です。
(2)ア 前記(1)アで認定した78頁最下部部分の本件太字部分の記載と本件説
明部分の記載を併せて読むと,本件太字部分のうちの「QRコード(R)リーダー”Q”」
又は「”Q”」の部分が商品名を記載したものであり,本件説明部分が上記商品の機
能等を説明した記載であると認められる。\nそして,上記事実に,本件カタログは,被告の総合カタログであり,被告の商品
の紹介等がされていること,78頁最下部部分には,「ダウンロード(無料)はこち
らから!」との記載とQRコード規格の2次元コードのラベルの記載があり,上記
商品「QRコード(R)リーダー”Q”」又は「”Q”」のダウンロードの案内がされている
ことを併せ考慮すると,78頁最下部部分は,本件商品2に含まれる上記商品「Q
Rコード(R)リーダー”Q”」又は「”Q”」の広告であると認められる。
なお,前記(1)アで認定した78頁最下部部分の記載からすると,上記商品「”Q”」
は,QRコード規格の2次元コードの読み取り等の機能を有するプログラムソ\フト
ウェアであるから,本件商標の指定商品のうちの「電子応用機械器具及びその部品」
に含まれる。
イ 前記(1)アのとおり,使用商標3は,本件商品2の広告である78頁最下
部部分に記載されているところ,前記(1)イのとおり,78頁最下部部分が掲載され
た本件カタログは,要証期間内である平成27年3月6日に本件展示会の会場で頒
布されている。
ウ 次に,使用商標3が、本件商品2についての自他商品等を識別するもの
として使用されているかどうかを検討する。
(ア) 後掲証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
a 株式会社技術評論社が発行する「最新パソコン用語事典2006−’\n07」及び「最新パソコン・IT用語事典2010−’11」には,「QRコード」\nの項目に,「株式会社デンソーウェーブが開発した,2次元コード(縦と横の両方\n向に意味を持たせてある符号)の一種。・・・1999年にJIS,2000年に
ISOの国際規格として制定されている。」との記載がある(甲24,25)。
b 株式会社秀和システムが発行する「最新標準パソコン用語事典20\n13−2014年版」には,「QRコード」の項目に,「1994年に自動車メー
カーでもあるデンソー社が開発した,バーコードに代わる2次元のマトリクス式コ\nードの1つ。・・・1999年にはJIS X0510に,2000年にはISO
/IEC18004として標準化された。」との記載がある(甲26)。
c 被告は,「QRコードについては(株)デンソーウェーブの登録商標\nです。」との表示をしているほか,「QRコード」には「○R 」の表示を付している\n(甲81,甲92の1,甲98の1,乙1,27)。また,被告以外の会社の開設
した複数のウェブサイトにおいても「QR Code」又は「QRコード」につい
て被告の登録商標である旨の表示がされている(乙23の1〜5)。さらに,原告の\n広告においても,「QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。」との\n記載がある(乙24〜26)。
d スマートフォン用のQRコードリーダー等のアプリのアイコンとして,図形と,その下に「QRコード」,「QR Code」又は「QR code」
と記載されたものが多数存在する(以下,同アイコンを「甲52アイコン」と総称
する。)ところ,甲52アイコンのうちの文字部分は,いずれも,何ら特徴のない白
抜きの文字である(甲52の2)。
e 平成18年8月22日付けの新聞には,「QRコード」は,カメラ付
き携帯電話の普及に伴い,爆発的に普及したものであり,現在は被告の登録商標で
あるとの記事がある(甲70)。
(イ) 前記(ア)の事実によると,「QR Code」及び「QRコード」は,2
次元コードの規格の一種であると認識されることがあるものと認められるが,他方,
被告は,本件商標登録を有しており,前記(ア)のとおり,「QRコードについては(株)
デンソーウェーブの登録商標です。」との表\示をしたり,「○R 」の表示を付して,\n商標登録を有していることを広く知らせており,また,前記(ア)のとおり,被告以外
の会社も,原告を含め,そのウェブサイトや広告において,「QR Code」又は
「QRコード」が被告の登録商標である旨の表示をしていることを考慮すると,「Q\nR Code」又は「QRコード」が常に2次元コードの規格の一種であるとのみ
認識されると認めることはできず,自他商品等の識別機能を発揮する態様で使用さ\nれることがあり得るというべきである。
(ウ) 使用商標3は,前記(1)ア(ア)のような態様で表示されているもので,\n他の記載とは独立して表示されている。そして,使用商標3は,「Q」の文字の右\n端の部分と「R」の文字の左端の部分が重なっており,僅かではあるが図形化され
ており,赤色で表示されているものであって,単に,商品名であると認識される「Q\nRコードリーダー”Q”」又は「”Q”」の説明として記載されているものと認めるこ
とはできず,上記商品についての識別標識として記載されているものと認められ,
本件カタログを見た需要者・取引者もそのように認識するものと認められる。
したがって,使用商標3は,本件商品2についての自他商品等の識別機能を有し\nていると認められる。
なお,甲52アイコンの各文字部分は,使用商標3とは表示態様が全く異なるか\nら,甲52アイコンの存在によって,使用商標3が自他商品等の識別機能を有しているという上記の判断が左右されるものではない。\n
(エ) 原告は,「QR コード」及び「QR Code」の文字からは,2
次元コードの規格の一種であるQRコード規格との認識しか生じ得ないことは,特
許庁が15例にも上る拒絶理由通知及び拒絶理由で一貫して認定していると主張す
るが,いずれも本件とは異なる事例についての特許庁の判断であり,使用商標3が
自他商品等の識別機能を有しているとの上記の判断が左右されるものではない。\nまた,原告は,「『QR Code』はデンソーウェーブの登録商標です。」との表\
示は,虚偽表示(商標法74条1号違反)であると主張するが,後記エのとおり,\n本件商標は,「QR Code」と社会通念上同一のものであるから,この表示が虚\n偽表示ということはできない。\n
(オ) 原告は,1)本件カタログに用いられている商標は「DENSO WAV
E」又は「デンソーウェーブ」である,2)使用商標3は,本件カタログのうち,Q
Rコード規格についての解説等をする頁で使用されており,被告の製品を紹介する場面で使用されていないから,一般の需要者・取引者からは,単に当該2次元コー
ドが「QRコード規格に基づいた2次元コード」であると理解されるにすぎず,自
他商品等の識別標識として理解されることはない,3)使用商標3,「ダウンロード
(無料)/はこちらから!」という記載及びQRコード規格の2次元コードの配置
からすると,使用商標3が本件商品2のアプリとの具体的関係において使用されて
いると理解することは不可能である,4)本件商品2は本件カタログの78頁のQR
コード規格等についての技術的な解説,紹介の中で隅に記載されているにすぎない
ことからすると,本件カタログが本件商品2を紹介するものではなく,本件商品2
の広告に該当しないと主張する。
しかし,既に認定,判断したとおり,使用商標3は,78頁最下部部分において,
本件商品2についての広告として使用されているものであり,このことは,本件カ
タログの商標として「DENSO WAVE」又は「デンソーウェーブ」が使用され\nていることや使用商標3が本件カタログの「基礎知識」の頁に記載されていること
によって妨げられるものではなく,また,前記(1)ア(ア)で判示した78頁最下部部分
の記載内容からすると,使用商標3は,本件商品2との具体的な関係において使用
されていることも明らかであるから,原告の上記主張はいずれも理由がない。
エ 次に,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるかどうかについ
て検討する。
(ア) まず,本件商標は,別紙1のとおり,「QR コード」及び「QR C
ode」を上下二段に配置した商標であり,上段の「コード」の部分は,下段の「C
ode」の部分を片仮名にしたものと理解されるから,「キューアールコード」の称
呼が生じ,また,QRコード規格の2次元コードの観念が生じる。
一方,使用商標3からも,「キューアールコード」の称呼と,QRコード規格の2
次元コードの観念が生じる。
このように,本件商標と使用商標3とは,称呼及び観念において共通する。
(イ) 次に,本件商標と使用商標3の外観を比較すると,使用商標3は,本
件商標の下段の「QR Code」とは,同一の文字綴りであり,上段の「QR
コード」とは,片仮名及びローマ字の文字表示を相互に変更するものであり,この点で共通性が認められるが,1)本件商標は,「QR コード」及び「QR Code」
の標準文字が上下二段に配置されているのに対し,使用商標3は,「QR Code」
のみから構成されている点,2)使用商標3は,「Q」の文字の右端の部分と「R」の
文字の左端の部分が重なっており,同重なり部分が,両文字の一部を兼ねているよ
うに 図形化されている点,3)使用商標3は,赤色で記載されている点で異なって
いる。
しかし,前記(ア)のとおり,「QR コード」は,「QR Code」の「Code」
の部分を片仮名にしたものと理解されるのであり,「QR コード」及び「QR C
ode」の称呼及び観念は同一であることからすると,上記1)の相違点の存在が,
使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与えるもの
ではないというべきである。
また,「Q」の文字と「R」の文字が重なった部分は僅かであり,双方の文字を独
立した文字として認識できること,図形化の程度も僅かであることからすると,上
記2)の相違点の存在が,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの
判断に影響を与えるものではないというべきである。
さらに,商標に色を付けても,通常,商標の同一性を失わせるような変更とはえ
いないから,上記3)の相違点の存在が,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与えるものではないというべきである。
(ウ) 以上からすると,使用商標3は本件商標と社会通念上同一であると認
められる。
(エ) この点について,原告は,本件商標上段の「QR コード」から下段
の「QR Code」以外のものを想起させるし,下段の「QR Code」から
上段の「QR コード」以外のものを想起させると主張するが,本件商標は,「QR
コード」と「QR Code」を上下段に配置した商標であって,前記ウのとお
り,「QR コード」及び「QR Code」が2次元コードの規格としても知られ
ていることを考慮すると,「QR コード」と「QR Code」からそれら以外の
ものを想起することは考え難いというべきである。このことは,被告が「QR コ
ード」と「QR Code」について商標登録出願をしていることによって左右さ
れるものではない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
オ 次に,本件商品2が商標法上の「商品」に当たるかどうかについて検討
する。
(ア) 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
a 被告の開設しているウェブサイトには,平成26年11月6日付け
で,以下の記載がある(甲61)。
(a) 「デンソーウェーブとレピカが資本・業務提携/QRコード(R)によ
るクラウドサービス『Q−revoTM』活用の第一弾として,/食品及び工業製品
の『トレーサビリティ』サービスの提供を開始」
(b) 「レピカは,子会社であるアララ株式会社を通じてスマートフォン
事業を手がけており,コンシューマー向けにQRコードをトリガーとしたAR(A
RAPPLI(アラプリ)』を展開しています。両社はこれまでにより精度の高いス
マートフォン向けQRコードリーダーアプリの開発において共同でプロジェクトを
行っており,今後更に両者のノウハウを活用してより付加価値の高い事業を展開し
ていくため,デンソーウェーブがレピカに出資することにしました。」\n
(c) 「両社は,今後,『Q−revo』および『QR Code Re
ader “Q”』を活用し,食品をはじめ,工業製品において,『トレーサビリテ
ィ』をキーワードに両社のノウハウを活かしたサービスを展開していきます。」
b payment naviのウェブサイトには,平成26年11月
10日付けで,以下の記載がある(乙16)。
(a) 「デンソーウェーブとレピカがQRコードによるクラウドサービス提供」\n
(b) 「両社では,提携の第一弾として,SQRC,フレームQRなど,
進化したQRコードの生成・配信,読み取り,データ蓄積を行うクラウドサーバと
『QR Code Reader “Q”』を活用した次世代型サービス『Q−re
vo』を開発。今後は,食品や工業製品において,『トレーサビリティ』をキーワー
ドに両者のノウハウを活かしたサービスを展開していく方針だ。」
(c) 「なお,具体的な売り上げ目標については,トレーサビリティシス
テムの検証を進め,サービスとして整った際,発表する方針だ。」\n
(イ) 商標法上の商品というためには,商取引の対象となり得ることが必要
であり,そのためには,必ずしも当該商品が有償で譲渡される必要はなく,当該商
品自体は無償で譲渡されるものであっても,当該商品の譲渡によって利益を得る仕
組みがあり,その仕組みの一環として,当該商品が無償で譲渡されるのであれば,
当該商品は交換価値を有し,商取引の対象となっていると認めることができるとい
うべきである。
前記(1)ア(ア)で認定した事実からすると,本件商品2は,無償でダウンロードでき
ることが認められるが,前記(ア)で認定したウェブサイトにおける記載からすると,
被告は,アララ社と共同で,本件商品2を活用したサービスを展開していく計画を
有していることが認められるところ,同サービスを利用するためには,本件商品2をスマートフォンにダウンロードしておく必要があるのであるから,本件商品2の
無償配布は,同サービスの展開に大きく寄与するものと考えられ,したがって,本
件商品2の無償配布は,本件商品2を利用したサービスを提供し,同サービスの提
供によって利益を得るというビジネスモデルの一環としてされたものと評価できる。
したがって,本件商品2には交換価値があるものと認められ,本件商品2は,商
取引の対象となり得るというべきである。
なお,このように,本件商品2を無償配布した上で,本件商品2を活用したサー
ビスを提供することにより利益を得るというビジネスモデルにおいても,本件商品
2を無償配布する際の商取引の対象は,あくまでも本件商品2であり,使用商標3
は,本件商品2の広告に付されたものであり,上記サービスの商標として使用され
たものではない。
カ 以上のとおり,被告は,本件商標と社会通念上同一であると認められる
使用商標3を付した,商標法上の「商品」に当たる本件商品2の広告を,要証期間
内に頒布したことが認められる。
キ 原告は,使用商標3は,197号商標の一部にすぎず,使用商標3のみ
が独立して認識されることはない,被告は本件QRアイコンについて商標の登録を
受けているから,本件商品2の識別標識となり得るのは本件QRアイコンのみであ
る,197号商標が登録された以降は,本件商品2について197号商標を表示す\nる行為は,専ら197号商標を使用するものであることから,本件パンフレットに
表示されている商標は,197号商標であって,使用商標3ではないなどと主張す\nる。
しかし,使用商標3は,前記(1)ア(ア)のとおり,本件カタログの78頁最下部部分
に記載されており,本件QRアイコンとは完全に独立していることは明らかである
から,197号商標が登録されているかどうかや本件QRアイコンについて商標登
録がされているかどうかにかかわらず,独立の商標として認識できるものである。
また,同一の商品の商標として,複数の商標を付することも認められるから,1
97号商標が登録された以降は,その一部である使用商標3を商標として使用でき
ないという理由はない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
ク 原告は,本件商品2に係る無料アプリは,アララ社が提供するものであって,被告が提供するものではないから,被告が,本件カタログにアララ社が提供
する本件商品2を掲載すると共に使用商標3を付して頒布したとしても,商標法5
0条1項の「使用」に該当することはないと主張する。
しかし,本件カタログにおける広告は,被告が,前記オで認定したビジネスモデ
ルの一環として行っているものであって,本件商品2はアララ社が提供するもので
あったとしても,前記認定の本件商標の「使用」の事実が左右されることはない。
◆判決本文
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2019.01. 7
平成30(行ケ)10103 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年12月20日 知的財産高等裁判所(3部)
BlogMagaとブロマガの二段併記の登録商標について、カタカナ表記のみを使用証明として提出しましたが、登録商標と同一ではないとして、特許庁にて取り消されました。知財高裁も同様の判断をしました。FC2が商標権者、ドワンゴが取消審判請求人です。二段併記でもそれしか読めない場合は、一方の使用でも登録商標の使用と認めてもらえますが、BlogMaga=ブロマガとしか読めないとまではいえないとの判断です。
本件商標は,前記第2の1(1)のとおり,ゴシック体風の「ブロマガ」
の片仮名とセンチュリー体風の「BlogMaga」の欧文字を上下2段
に配置した商標であり,上段と下段の間は文字の高さの半分程度の間隔が
あり,上段と下段のフォントの大きさは概ね同じで,上段より下段の方が
やや横幅が大きく構成されている。上段の「ブロマガ」部分からは,「ブロマガ」という称呼が生じる。また,下段の「BlogMaga」部分は,「Maga」が大文字の「M」で始まること,「dog」,「frog」のような「og」の語尾を持つ\n一般的な英語で「g」の発音を省略することはないこと,「Blog」は
ウェブログの省略語として浸透している「ブログ」を想起させることから,
全体として「ブログマガ」という称呼が生じるものと認められる。そうす
ると,本件商標からは,「ブロマガブログマガ」という称呼が生じるとい
える。
また,「ブロマガ」及び「BlogMaga」はいずれも造語であり,
特段の観念を生じるとは認め難く,本件商標からは特段の観念を生じない。
イ 他方,本件使用商標は「ブロマガ」の文字のみからなるものであるから,
本件商標とは使用する文字の一部が共通するものの,外観,観念及び称呼
のいずれについても同一とはいえない。
ウ 以上に照らせば,本件使用商標について,本件商標の「書体のみに変更
を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の
表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外\n観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標(本件商標)
と社会通念上同一と認められる商標」ということはできない。
エ また,原告は,原告のウェブサイトのURL中の「blomaga」の
文字の使用について,本件商標と「社会通念上同一の商標」の「使用」に
当たると主張するが,仮にURLにおける「blomaga」の使用が商
標法50条1項所定の「商標」の「使用」に当たるとしても,「blom
aga」は本件商標と外観,観念及び称呼のいずれにおいても同一とはい
えないことは本件使用商標と同様であるから,本件商標と「blomag
a」の文字からなる「商標」が「社会通念上同一」であるとは認められな
い。
(2) 原告の主張について
ア 原告は,欧文字の称呼については,特定の発音に固執せず,ある程度幅
のある発音を念頭に,日本における一般的な認識や連想等を含めて,総合
的に判断すべきであるとして,「HongKong」,「Ping-Pon
g」,「Sign」,「Foreign」のように「g」を発音しない例
がしばしば存在する一方,「KING KONG」では「G」を発音する
という風に日本で欧文字を読む際に「g」を発音する場合と発音しない場
合があること,2語からなる外来語や固有名詞等の略語の生成において各
語の冒頭の二拍ずつ取るのが基本であることから,本件商標の下段の「B
logMaga」部分は「ブロマガ」の称呼を生じると主張する。
しかし,原告が指摘する「g」を発音しない例は「ng」,「gn」と
いう語尾を有するから本件商標の欧文字部分には妥当しないし,造語の欧
文字である「BlogMaga」から原告主張の略語が生じるとも認めら
れない。
さらに,原告は,社会一般では「BlogMaga」の表記を「ブロマ\nガ」と記載していることが多いと主張するが,原告がその立証のために提
出した証拠(甲36〜38)から,社会一般において「BlogMaga」
を「ブロマガ」と表記していることは認められない。また,上記(1)アのと
おりの本件商標の構成からは「ブロマガ」が「BlogMaga」の表\音
であるとは認め難い。
イ 原告は,「BlogMaga」は,「Weblog」の略語である「B
log」と雑誌を意味する「Magazine」の略語である「Maga」
が結合された造語であり,いろいろなブログを配信するサービスという観
念が生じ,「ブログ」と「マガジン」の略語が結合した「ブロマガ」から
も,いろいろなブログを配信するサービスという観念が生じるから,「B
logMaga」と「ブロマガ」から生じる観念は同一であると主張する。
しかし,本件商標の「ブロマガ」は4文字の造語で,同種同大のフォン
トが均等の間隔で配置されていることからすれば,「ブロ」の部分を分離
して観念を想起し得るかは疑問であり,「ブロマガ」からブログとマガジ
ンの略語の結合を想起するとはいえない。したがって,「BlogMag
a」と「ブロマガ」がブログとマガジンの略語が結合したものとして理解
され,同一の観念を生じさせるとは認められない。
◆判決本文
関連事件です。同一商標権についての別の指定役務についての取消審判の取消訴訟です。
◆平成30(行ケ)10102
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2018.08.29
平成30(行ケ)10037 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年8月23日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判の取消訴訟です。審決、知財高裁とも、「旧 関西国際学友会日本語学校」が、登録商標「関西国際学友会」の使用であると判断しました。
(1) 使用商標は,「旧」の文字と「関西国際学友会日本語学校」の文字とを半
角又は全角の空白を介して結び,かつ全体を括弧で囲んで表したものである。
(2) まず,これらの文字は,書体も大きさも同一であり,全体が括弧で囲まれ
ているものの,「旧」と「関西国際学友会日本語学校」とは,空白によって
明確に分離されていること,「旧」は,「昔。過去。」といった意味を有し,
「今は主流ではないもの,過去のものとなっていることを表す語」であり(広\n辞苑〔第7版〕),その後に続く語がかつて用いられていた名称等であるこ
とを指し示すものとして一般的に多用されている語であること(乙5の1〜
5の5)からすると,使用商標に接した需要者は,「旧 関西国際学友会日
本語学校」の意味は,かつての名称が関西国際学友会日本語学校であったこ
とにあると理解すると認められる。
続いて,「関西国際学友会日本語学校」の部分について検討する。
ア この文字部分中,「日本語学校」は,教育の分野において,日本語を教
授する教育機関又は施設を意味する一般的名称と認められ(甲7の1〜7
の8),一般通常人にとっても馴染みのある語というべきであるから,需
要者が「関西国際学友会日本語学校」の文字に接したときに,これは「関
西国際学友会」と「日本語学校」の各語を組み合わせたものであると理解
することは明らかである。
イ 次に,「関西国際学友会」についてみると,「学友会」の文字部分だけ
をみれば,学生及び卒業生の交流を図る会ないし団体といった程度の一般
的な意味を有する語と解する余地があるものの,その前に「関西国際」が
付されていることを考え合わせると,これに接した需要者は,全体として,
関西地方に所在し又は同地方において活動している,国際的に学生等の交
流を図ることを目的として設立された特定の団体の名称であると理解する
と認めるのが相当である。
また,上記のとおり,「日本語学校」は,日本語を教授する教育機関又
は施設を意味する一般的名称と認められるから,需要者は,「日本語学校」
の部分を,提供される役務の内容,又はその役務を提供する施設を示して
いるものと理解し,当該部分が出所を表示する機能\を有するものであると
は考えないと認めるのが相当である。
ウ 上記イにおいて説示した各語が有する意味合いに鑑みると,「関西国際
学友会日本語学校」は「関西国際学友会」が運営する「日本語学校」とい
った程度の意味を有する語として理解されるというべきである。
そして,「関西国際学友会」と「日本語学校」とは,一体不可分の関係
にあると理解されなければならない語であるとは言い難い上に,「日本語
学校」は,日本語を教授する教育機関又は施設を意味する一般的名称であ
るから,需要者は,使用商標中の「関西国際学友会日本語学校」につき,
「関西国際学友会」の部分が出所を示す機能を果たしていると認識すると\nいうべきである。
◆判決本文
関連事件です。
◆平成30(行ケ)10038
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2018.01.19
平成29(行ケ)10107 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年1月15日 知的財産高等裁判所(4部)
不使用による商標取消訴訟について、共有商標権者の一部が提訴しました。被告は固有必要的共同訴訟として訴えは不適切と主張しましたが、裁判所はかかる主張は認めませんでした。ただ、最終的に使用が証明できず、取消審決は維持されました。これは、登録商標を使用しているとはいえないというものです。登録商標は、漢字、かたかな、ひらがな、ローマ字表記を4段で書しており、使用していたのは、漢字のみを書したものでした。
被告は,原告といきいき緑健は,本件商標に係る商標権を共有するところ,原告
は,単独で本件審決の取消しを請求するから,本件訴えは不適法であると主張する。
しかし,いったん登録された商標権について,登録商標の使用をしていないこと
を理由に商標登録の取消審決がされた場合に,これに対する取消訴訟を提起するこ
となく出訴期間を経過したときは,商標権は審判請求の登録日に消滅したものとみ
なされることとなり,登録商標を排他的に使用する権利が消滅するものとされてい
る(商標法54条2項)。したがって,上記取消訴訟の提起は,商標権の消滅を防
ぐ保存行為に当たるから,商標権の共有者の1人が単独でもすることができるもの
と解される。そして,商標権の共有者の1人が単独で上記取消訴訟を提起すること
ができるとしても,訴え提起をしなかった共有者の権利を害することはない。
また,商標権の設定登録から長期間経過した後に他の共有者が所在不明等の事態
に陥る場合や,訴訟提起について他の共有者の協力が得られない場合なども考えら
れるところ,このような場合に,共有に係る商標登録の取消審決に対する取消訴訟
が固有必要的共同訴訟であると解して,共有者の1人が単独で提起した訴えは不適
法であるとすると,出訴期間の満了と同時に取消審決が確定し,商標権は審判請求
の登録日に消滅したものとみなされることとなり,不当な結果となりかねない。
さらに,商標権の共有者の1人が単独で取消審決の取消訴訟を提起することがで
きると解しても,その訴訟で請求認容の判決が確定した場合には,その取消しの効
力は他の共有者にも及び(行政事件訴訟法32条1項),再度,特許庁で共有者全
員との関係で審判手続が行われることになる(商標法63条2項の準用する特許法
181条2項)。他方,その訴訟で請求棄却の判決が確定した場合には,他の共有
者の出訴期間の満了により,取消審決が確定し,商標権は審判請求の登録日に消滅
したものとみなされることになる(商標法54条2項)。いずれの場合にも,合一
確定の要請に反する事態は生じない。なお,各共有者が共同して又は各別に取消訴
訟を提起した場合には,これらの訴訟は,類似必要的共同訴訟に当たると解すべき
であるから,併合の上審理判断されることになり,合一確定の要請は充たされる。
以上によれば,商標権の共有者の1人は,共有に係る商標登録の取消審決がされ
たときは,単独で取消審決の取消訴訟を提起することができると解するのが相当で
ある(最高裁平成13年(行ヒ)第142号同14年2月22日第二小法廷判決・
民集56巻2号348頁参照)。
よって,原告は,単独で本件審決の取消しを請求することができる。被告の本案
前の抗弁は,理由がない。
・・・・
以上のとおり,甲1カタログ,甲2カタログ及び甲3雑誌は,いずれも要証期間
内に頒布されたものとは認められない。また,そもそも,本件商標は,「緑健青汁」,
「りょくけん青汁」,「リョクケン青汁」及び「RYOKUKEN AOJIRU」
の文字を4段に書して成るものであるのに対し,甲1カタログ,甲2カタログ及び
甲3雑誌に記載された商標は,「緑健青汁」の文字のみを書して成るものである。
このような本件商標と使用商標とは,商標法50条1項にいう「平仮名,片仮名及
びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ず\nる商標…その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」であると,直
ちに認めることはできない。
◆判決本文
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2017.12.28
平成29(行ケ)10126 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年12月25日 知的財産高等裁判所(1部)
使用していたとした審決が取り消されました。知財高裁は、登録商標「ベガス」ではなく「ベガスベガス」の使用であると判断しました。
上記認定事実によれば,本件折込チラシ1には,「ベガス発寒店ファンのお
客様へ」と記載されている部分が認められ,この部分には本件文字部分(ベガス)
が使用されており,本件文字部分は本件商標と同一のものと認められる。他方,本
件折込チラシ1の下部には,登録商標であることを示す○R の文字を付した「ベガス
ベガス(R)」という文字が大きく付されているほか,「VEGAS VEGAS」,「ベ
ガスベガス発寒店」という文字も併せて記載されている。
これらの事実関係によれば,本件折込チラシ1に接した需要者は,同チラシにお
いて,パチンコ,スロットマシンなどの娯楽施設の提供という役務に係る出所を示
す文字は,同チラシにおいて多用されている「ベガスベガス」又は「VEGAS V
EGAS」であって,一箇所だけで用いられた本件文字部分は,店内改装のため一
時休業する店舗の名称を一部省略した略称を表示したものにすぎず,本件折込チラ\nシ1に係る上記役務の出所自体を示すものではないと理解するのが自然である。
そうすると,本件折込チラシ1に本件文字部分を付する行為は,本件商標につい
て商標法2条3項にいう「使用」をするものであると認めることはできない。
したがって,本件文字部分が出所識別機能を果たし得るものと認定した上,本件\n折込チラシ1に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていると認定
した審決の各判断には,いずれも誤りがあるから,取消事由4及び5は,理由があ
る。
(2) これに対し,被告は,本件文字部分が「ベガスベガス発寒店」の略称表示\n又は愛称表示として解釈できるのであるから,本件折込チラシ1には本件商標と社\n会通念上同一と認められる商標が付されたといえるなどと主張する。
しかしながら,被告が本件文字部分を「ベガスベガス」又は「VEGAS VEG
AS」の略称表示であると認めるとおり,本件折込チラシ1に係る役務の出所を示\nす表示は,多用された「ベガスベガス」又は「VEGAS VEGAS」の標章であ
ると認めるのが相当であるから,これらと異なる標章である本件文字部分が出所識
別機能を果たし得るとは認められない。かえって,「ベガス」という略称表\示の使用
をもって,本件商標についての使用であると認めることは,実質的には商標として
は異なる略称表示に係る信用までを保護することを意味するから,商標法50条1\n項の不使用取消制度の趣旨に照らしても,相当ではない。のみならず,実質的にみ
ても,前記認定事実によれば,被告が「ベガス発寒店」という文字を使用したチラ
シは,同文字を一箇所でのみ使用した本件折込チラシ1のほかは一切提出されてい
ないのであるから,そもそも「ベガス発寒店」という文字に係る標章の信用を保護
すべき特段の事情もうかがわれず,被告の上記主張は,前記認定を左右するもので
はない。
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2017.11.10
平成29(行ケ)10118 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年10月26日 知的財産高等裁判所(2部)
不使用請求を認めなかった審決が維持されました。争点は商標の同一性および使用の評価です。
ア 本件チラシ1の下段に記載されている「ピーアールタイムズ」の片仮名
は,本件商標の下段の片仮名と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章
であると認められる。
イ 本件チラシ2の下段に記載されている「PRTIMES」の欧文字は,
本件商標の上段の欧文字と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章であ
ると認められる。
(3) 使用役務等について
上記1(2)のとおり,本件チラシ1には,「広告をご検討の事業主の皆様!まずは
お気軽にご相談ください」,「広告のプロが広告主様と一緒に,売上・集客に繋がる
広告戦略を練らせていただきます。広告の事なら何でもご相談ください。」と記載さ
れており,被告が広告の役務を提供することを広告しているものと認められる。
上記1(3)のとおり,本件チラシ2には,「広告をご検討の事業主の皆様!まずは
お気軽にご相談ください」,「広告出稿や広告に関するコンサルティングの事なら」
と記載されており,被告が広告の役務を提供することを広告しているものと認めら
れる。
そして,上記1(2)及び(3)のとおり,本件チラシには被告の会社名及び連絡先が
記載されており,本件チラシは,合計3000部作成され,頒布されたのであるか
ら,被告は,本件チラシを見た者が被告に広告依頼などの連絡をしてくればこれに
応じ,業として広告の役務を提供する意思であったと認められる。
したがって,被告は,広告の役務に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商
標を付して頒布し,これを使用したものと認められる。
ア 本件チラシの頒布に関する証拠である,本件チラシ(甲6,12),並び
に,ニューアシストから被告に対する領収書(甲7,13)及び納品書(甲8,1
4)は,いずれも,当法廷において被告から原本が提示されており,その作成日当
時作成され,授受されたものであることに合理的な疑いを差し挟むべき不自然な点
はない。
イ ニューアシストのホームページに記載されているのは,「事業概要」であ
って(甲21の2),その余の業務を行っていないという趣旨とは解されないから,
ニューアシストがチラシの作成やポスティングの業務を行っていないとまではいえ
ない。
被告の本店所在地と池尻大橋駅が遠く離れているとはいい難い上,チラシの配布
地域や配布部数などは,広告を行う者がその広告戦略などを考慮して決定するもの
であるから,本件チラシの配布場所が池尻大橋駅周辺であり,配布部数が合計30
00部であることなどは,本件チラシの頒布を否定すべき事情とはいえない。広告
業務はその態様によって価格が異なるものと考えられる上,個別に連絡してきた者
に対して説明することもできるから,本件チラシに価格が記載されていないことは,
本件チラシの頒布を否定すべき事情とはいえない。
上記1(2)(3)のとおり,本件チラシ,領収書及び納品書によって,本件チラシの
頒布の事実が認定できるから,その他の取引に関する契約書,Eメールのやりとり,
報告書等が証拠として提出されていないことは,本件チラシの頒布を認定すること
を妨げる事情とはならない。各2通の領収書(甲7,13)と納品書(甲8,14)
の内容が同一であることは,同一の取引を2回行ったことを示すものにすぎず,ま
た,被告の住所の誤りは,同一のデータを使いまわしたことによるものであると推
認されるから,これらの書証の信用性を疑わせる事情とはならない。
◆判決本文
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2017.09.23
平成28(行ケ)10230 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年9月14日 知的財産高等裁判所
不使用取消請求(50条)に対して、アルファベットの「X」状のマークを付したスニーカーを販売していたと争いましたが、靴の図形商標の使用とは認められませんでした。
本件商標は,前記第2の1のとおり,平成16年6月22日に国際登録が
され,同年12月13日に日本国が事後指定がされたもの(同日に商標登録出願が
されたものとみなされる[商標法68条の9第1項])であって,平成18年1月
24日に登録査定がされ,同年7月21日に登録されたものである。
平成26年法律第36号による商標法の一部改正(平成27年4月1日施行)に
よって,位置商標について,その出願の手続が定められた(商標法5条2項5号,
同条4項,5項,商標法施行規則4条の6〜8)が,それより前には,我が国にお
いて,位置商標の出願についての規定はなく,本件商標についても,位置商標では
なく,通常の平面図形の商標であると解するほかない(本件商標が位置商標ではな
いことは,原告も認めている。)。
そうすると,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されているというためには,
黒い実線で囲まれたX字状の部分のみならず,靴の形状をした点線部分も,平面図
形の商標として使用されていなければ,本件商標と社会通念上同一の商標が使用さ
れているということはできない。
原告各製品には,X字状の標章が付されているものの,靴の形状をした点線部分
の標章が平面図形の商標として使用されているということはできないから,本件商
標と社会通念上同一の商標が使用されているとは認められない。
(3) この点について,原告は,原告各製品には,X字状の標章が付されている
上,スニーカー自体の形状もほぼ同じであると主張するが,スニーカー自体の形状
がどうであれ,平面図形の商標として点線部分の標章が使用されているということ
はできないから,原告の主張を採用することはできない。
また,原告は,本件商標の基礎登録商標に基づく主張や欧州共同体商標意匠庁な
ど各国における本件商標についての判断に基づく主張をするが,商標の出願及び登
録の要件は各国において定められるべきものである(パリ条約6条1項及び3項)
から,他国における本件商標についての判断と同じ判断をしなければならない理由
はないし,本件商標の基礎登録商標に関する前記1(2)の事実は,スペイン国の商標
についてのものであって,直ちに我が国の商標について判断を左右するものではな
い。
さらに,原告は,商標法50条の趣旨から本件商標は取り消されるべきではない
と主張するが,商標法50条の趣旨が原告主張のとおりであるとしても,本件商標
と社会通念上同一の商標の使用が認められない以上,本件商標は取消しを免れない
のであって,商標法50条の趣旨によって左右されるものではない。
◆判決本文
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2017.07. 7
平成28(行ケ)10276 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年6月28日 知的財産高等裁判所
商標「Crest」(16類「印刷物」)について、不使用取消請求がなされ、審決は、「新潮クレスト・ブック」による使用で請求棄却しました。知財高裁(3部)もこれを維持しました。
商標法50条1項においては,使用の対象となる商標について,「登録商標
(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びロー
マ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる\n商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会
通念上同一と認められる商標を含む。…)」と規定されており,「登録商標と
社会通念上同一と認められる商標」も含むものとされている。
そこで,使用商標B−1が,本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」
といえるか否かについて検討する。
(1) 本件商標は,「Crest」の欧文字を標準文字で横書きしてなる商標で
あるところ,「crest」の語は,「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの
意味を有する英語として認識されるものであるから,本件商標からは,通常
の英語読みに従った「クレスト」の称呼が生じるとともに,その英語の意味に
従った「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの観念が生じるものといえる。
(2) 他方,使用商標B−1は,「新潮クレスト・ブックス」の漢字及び片仮名
を横書きで一連表記してなるものであるところ,「新潮」の文字と「クレスト\n・ブックス」の文字は,漢字と片仮名という文字種の違いから,明確に区別し
て認識されるものである。また,「クレスト」の文字と「ブックス」の文字に
ついても,その間が「・」によって区切られていることに加え,後述のとおり,
「ブックス」の語が「書籍」を表す英語の片仮名表\記として明確に認識される
ことからすると,同様に区別して認識されるものといえる。してみると,使用
商標B−1は,「新潮」,「クレスト」及び「ブックス」の3つの独立した語
が組み合わされて表記された商標として認識されるものといえる。\n そこで,以上を前提に,使用商標B−1を「書籍」についての商品識別標識
として見てみると,まず,「新潮」の漢字部分は,我が国における著名な出版
社である被告の略称として広く知られているものであり,「書籍」に使用され
た使用商標B−1に接した取引者・需要者は,「新潮」の漢字部分を,当該書
籍を発行する出版社が被告であることを表示するものにすぎないと認識する\nから,この「新潮」の漢字部分は,商標の同一性という観点からは重要性を持
たない部分といえる。
次に,使用商標B−1のうち,「ブックス」の片仮名部分は,「本,書籍」
を意味する英語「book」の複数形を片仮名表記したものであることが明\nらかである。また,「書籍」の出版の分野においては,特定のシリーズに属す
る書籍群に,特定のブランド名と「ブックス(books)」の語を合わせた,
「○○ブックス(books)」の名称を付けて出版,販売することが一般的
に行われていることが認められる(甲10,12,14,16,18,20,
22,23,80〜82,84〜87,89,91,92,94〜99,10
1〜104(枝番を含む。))。してみると,「書籍」に使用された使用商標B
−1に接した取引者・需要者は,「ブックス」の片仮名部分を,これが付され
た商品が「書籍」であること,あるいは,その商品が「特定のシリーズに属す
る書籍」であることを表示するものとして認識するといえるから,これも商\n標の同一性という観点からは重要性を持たない部分であるといえる。
他方,「クレスト」の片仮名部分は,「(ものの)頂上,山頂,波頭」など
の意味を有する英語「crest」を片仮名表記したものとして認識され,そ\nの意味に従った観念を生じるものといえるところ,このような「クレスト」の
語は,「書籍」との関係で特段の結びつきを有するものではないから,「書籍」
に係る商品識別標識としての機能を果たし得るものであり,商標の同一性を\n基礎づける中核的部分といえる。
この点,原告は,被告自らがそのホームページ等で「クレスト・ブックス」
を一体として使用していることを理由に挙げ,取引者・需要者からは,「クレ
スト・ブックス」で一つの商標として理解され認識される旨主張する。しか
し,「書籍」に関する広告等において,「クレスト・ブックス」が一連表記さ\nれていたとしても,これに接した取引者・需要者からは,「クレスト」と「ブ
ックス」が独立した語として認識され,そのうち,特に「クレスト」の部分が
独立して自他商品の識別標識の機能を発揮する部分として認識されることは\n上記で述べたとおりであるから,原告の主張は採用できない。
(3) 以上のとおり,使用商標B−1のうち,商標の同一性を基礎づける中核的
部分として把握される「クレスト」の片仮名部分を,本件商標と比較すると,
両者は,片仮名と欧文字という文字種の違いからくる外観上の相違はあるも
のの,「クレスト」の称呼及び「(ものの)頂上,山頂,波頭」などの観念を
いずれも共通にするものであることからすると,使用商標B−1は,本件商
標と社会通念上同一の商標であると認めるのが相当である。
◆判決本文
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2017.06.16
平成29(行ケ)10033 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年6月8日 知的財産高等裁判所
不使用であるとして審決が取消されました。多機能物品(十\徳ナイフ)について、一部の機能の商品に関しても使用がなされていたと判断されました。また、使用形態として別の文字とともに使用していましたが、社会通念上同一の商標と判断されました。\n
前記1(5)のとおり,本件商品1〜3は,革製のケースであって,スイスアーミー
ナイフに適合するものとして販売されているものの,その形状は略直方体であって
スイスアーミーナイフ以外の物を収納することも可能であること,その販売形態は,\n収納物を伴うことなく本件商品1〜3のみで購入することが可能であること,スイ\nスアーミーナイフには,刃物であるナイフ等以外に,栓抜きやつまようじなど,他
の物も組み込まれていることからすると,第18類「small persona
l leather goods」(革製の小さな身の回りの物)に該当するという
ことができる。
・・・・
(2) 被告は,ビクトリノックス日本支社が使用していた標章には,いずれも「W
ENGER」の文字の右上にRマークが付されているから,同標章は図形単体では
なく,図形と文字を組み合わせた一体の標章として使用していたものであり,本件
商標と社会的同一性はない,と主張する。
しかし,前記1(2)(5)のとおり,本件商標と「WENGER」の欧文字とは左右
に配されており分離可能であること,ビクトリノックス日本支社のウェブサイトに\n表示されたものは,本件商標が赤で「WENGER」の欧文字は黒であることから\nすると,本件商標と「WENGER」の欧文字とは分離して観察することができる。
また,Rマークについても,登録商標を示すものとして分離して観察する
ことができる。これらのことからすると,本件商標と社会通念上同一の商標が使用
されていたと認めることができる。したがって,被告の主張は,採用することがで
きない。
◆判決本文
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2016.05. 6
平成27(行ケ)10179 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成28年4月26日 知的財産高等裁判所
不使用ではないとした審決が維持されました。争点は、使用されていた商標は、登録商標と実質同一の商標か、さらに、使用していた商品が「電子計算機用プログラム」か否かでした。
そこで,本件使用商標が,本件商標と社会通念上同一の商標ということがで
きるかどうか,以下検討する。
(1) 「MFX」の文字部分が本件使用商標の要部に当たるか
ア 本件使用商標は,前記1(3)アのとおりの外観を有し,「MFX」の欧
文字,「−」の記号,「EV」の欧文字,「シリーズ」の片仮名文字が,
順次,横書き一段に記載されてなるものである。
そして,「MFX」の文字部分と「EVシリーズ」の文字部分は,「−」
(ハイフン)によって接続されているのに対し,本件使用商標を構成する\n文字の大きさには特段の差異はなく,また,上記ハイフン部分を除く各文
字の間隔にも特段の差異はないから,上記ハイフンの前にある「MFX」
の文字部分は,上記ハイフンの後の文字部分と対比して,外観上まとまっ
たものとして看取されるというべきである。
これに対し,上記ハイフンの後の「EVシリーズ」の文字部分は,「E
V」の文字部分それ自体には,出所識別標識としての特段の称呼や観念を
生ずるものではなく,むしろ,「連続性を持つ一連のもの」との意味を有
する日本語であることを容易に理解することができる「シリーズ」の文字
部分がその後ろに付されていることや,電子応用機械器具の取引分野にお
いては,それ自体としては必ずしも固有の意味を生じるものとはいえない
欧文字等の組合せを,商品の種別や型番を表す記号として用いることがあ\nることからすると,取引者,需要者において,「MFX」の語によって表\n象される一連の製品における個々の製品の種別や型番を表す語と理解する\nことができるというべきである。
イ 以上を総合すると,本件使用商標の「MFX」の文字部分は,本件使用
商標のその余の文字部分から分離して観察することが取引上不自然である
と思われるほど不可分的に結合しているものではなく,むしろ,電子応用
機械器具の取引者,需要者において,被告が製造販売する製品を表すひと\nまとまりの表示として認識するものと認められ,また,本件使用商標のそ\nの余の文字部分からは,出所識別標識としての称呼や観念は生じないから,
「MFX」の文字部分が独立して自他商品の識別標識として機能し得るも\nのであると認められる。
したがって,「MFX」の文字部分は,本件使用商標の要部であると認
められ,本件商標は,これと同一の文字からなるものであるから,本件使
用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
・・・・
前記1(3)によれば,被告は,要証期間内に,ワタキューセイモアに対し,
本件使用商標が表示された本件ソ\フトウェアのバージョンアップ版が格納され
たCD−ROMを引き渡したことが認められる。
かかる行為をもって,本件商標と社会通念上同一の商標を,本件審判請求の
対象となった指定商品に含まれる「電子計算機用プログラム」について使用し
たということができるかどうかについて,以下検討する。
(1) 本件集中管理装置と本件ソフトウェアの関係について\nア 前記1(1)アのとおり,本件集中管理装置の取扱説明書には,「装置全
体」の説明として,パソコン本体及びその周辺機器から構\成されるとの記
載があり,被告のウェブサイト(甲3,甲26の1及び2)や本件集中管
理装置のパンフレット(甲9),取扱説明書(甲8,25)には,パソコ\nン本体及びその周辺機器が納められたテーブルの写真や,その見取図が,
本件集中管理装置として掲載されている。
一方,本件集中管理装置の取扱説明書には,その冒頭付近で,「本管理
装置は,Microsoft®社のWindows®上で稼働するシステ
ムです。」として,本件集中管理装置の本質が,むしろソフトウェア(本\n件ソフトウェア)にあると受け取れるような説明がされている(1⑴イ)
ほか,その記述内容も,ソフトウェアの操作方法を説明したものと受け取\nることが十分に可能\なものになっている(甲8,25)。そして,被告が,
パソコン本体及びその周辺機器自体を製造しているとは認められず,これ\nらの機器は,専ら,被告が,他のメーカーから既製品を調達して組み合わ
せたものと認められる。さらに,これらの機器自体は,パソコン本体,キ\nーボード,ディスプレイ,マウス,通信アダプタ,プリンタ,無停電電源
装置といった,パソコンでソ\フトウェアを操作するために使われるありふ
れたものばかりである上,汎用のものであれば足りるのであって,本件集
中管理装置を構成する機器としての特有のハード面での仕様や性能\が,被
告によって付加されているとは認められない。そして,これらの機器が集
中管理装置としての前記1(1)イのとおりの機能を果たすためには,アプ\nリケーションソフトウェアである本件ソ\フトウェアが,パソコン本体にイ\nンストールされることが必要となる。
また,前記1(1)オによれば,本件集中管理装置は,最新機器に対応す
るための機能追加を,本件ソ\フトウェアのバージョンアップ版を格納した
CD−ROMを用いた本件ソフトウェアのバージョンアップという形態で\n行っているものと認められるが,上記のような形態による本件集中管理装
置の機能追加に当たって,パソ\コン本体及びその周辺機器自体の更新が必
須のものであると認めるに足りる証拠はない。
イ そうすると,本件集中管理装置の機能,性能\は,専ら本件ソフトウェア\nの機能,性能\に依存しているものであって,むしろ,その本質はソフトウ\nェアである本件ソフトウェアにあるということも可能\である。そして,本
件集中管理装置を最新機器に対応させるためには,少なくとも本件ソフト\nウェアのバージョンアップが必要であり,この場合には,本件集中管理装
置が所要の機能を果たすための必須の構\成要素である本件ソフトウェアの\nバージョンアップ版が格納されたCD−ROMが顧客に販売されるから,
かかるバージョンアップ版を対象とする独立の取引を観念することができ
る。
以上によれば,本件ソフトウェアのバージョンアップ版は,本件集中管\n理装置の単なる付属品ではなく,それ自体を独立した商品として観念する
ことができるというべきである。
◆判決本文
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2016.03.30
平成27(行ケ)10203 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成28年3月24日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が維持されました。争点の一つが、3段併記の商標のうち、一部の文字列の使用が50条の使用に該当するかです。裁判所は審決と同様に、社会通念上同一とはいえないと判断しました。
ア 本件使用商標1は,別掲1のとおり,最上段に「Rubotan」の欧
文字,その下段に「LINE」の欧文字,さらに,その下段に「LIQU
ID」の欧文字,「ルボタン」の片仮名文字及び「ライン」の片仮名文字
を三段に配してなる五段の標章である。
上段二段の「Rubotan」及び「LINE」の欧文字は,下段三段
の「LIQUID」,「ルボタン」及び「ライン」よりも文字が大きいこ
と,「LIQUID」の下部の「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字
は,同じ大きさ,同じ書体でまとまりよく併記されていることからすると,
「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字は,「Rubotan」及び
「LINE」の欧文字の表音を示したものとして,本件使用商標1から\n「ルボタンライン」の称呼が自然に生じるものと認められる。「LIQU
ID」の欧文字は,「液状」の意味を有し,本件使用商品が液状であるこ
とを表示したものと理解することができ,しかも,上段二段の「Rubo\ntan」及び「LINE」の欧文字よりも文字が小さいことからすると,
出所識別標識としての機能は弱いものといえる。\n一方で,「Rubotan」の欧文字と「LINE」の欧文字は,上下
2段にまとまりよく併記されており,「Rubotan」の欧文字は筆書
き風の書体であり,「LINE」の欧文字は「Rubotan」の欧文字
よりもやや文字が大きいが,「Rubotan」の欧文字はゴシック体の
「LINE」の欧文字とは異なる筆書き風の書体であることからすると,
外観上,いずれかが顕著に際立っているということはできない。
加えて,本件使用商品は,販売名を「ルボタン ライン」とする「アイ
ライナー」であり(前記(1)),本件使用商品の宣伝広告においては,本
件商品の画像とともに「ルボタンライン」,「ルボタンライン リキッド
アイライナー」,「ルボタンアイライナー」などと表記され(甲22ない\nし27),本件証拠上,本件使用商品について,「LINE」の部分のみ
をその出所の識別標識として使用していた事情は認められない。
イ 以上を総合すると,本件使用商標1の構成中の「Rubotan」及び\n「LINE」の欧文字は,分離して観察することが取引上不自然であると
思われるほど不可分的に結合しているものではないが,需要者,取引者に
おいては,ひとまとまりの表示として認識するものと認められるから,\n「LINE」の欧文字部分が独立して自他商品識別標識として機能し得る\nものということはできない。
したがって,「LINE」の欧文字及びその表音を示した「ライン」の\n片仮名文字が,本件使用商標1の要部に当たるとの原告の主張は採用する
ことができない。
ウ この点に関し,原告は,化粧品業界においては,書体,大きさ,段等を
異にする2以上の構成要素からなる商標については,それぞれの構\成要素
について商標登録を受けて使用するのが一般的であるという取引の実情が
あり,このような取引の実情を考慮すると,「LINE」の欧文字が本件
使用商標1の要部に当たる旨主張する。
しかしながら,個々の商標の要部をどのように認定するかは,需要者,
取引者の認識等を前提に個別的に検討すべき問題であり,原告が主張する
ような取引の実情があるからといって直ちに「LINE」の欧文字が本件
使用商標1の要部に当たることの根拠となるものではない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
エ 以上のとおり,本件使用商標1の構成中の「LINE」の欧文字及び\n「ライン」の片仮名文字は本件使用商標1の要部に当たるものと認められ
ないから,本件使用商標1は本件商標と社会通念上同一と認められる商標
であるとの原告の主張は,その前提を欠くものであり,理由がない。
(3) 本件使用商標2と本件商標の社会通念上同一性について
原告は,要証期間内に,別掲2のとおり,本件使用商品を6個梱包するた
めの包装用容器(本件包装用箱)に,「 」の片仮名文字,その
下段にゴシック体で大きく表された「ライン」の片仮名文字を表\示して使用
していたものであり,「ライン」の片仮名文字の標章(本件使用商標2)は,
本件商標と社会通念上同一性のある商標であるから,原告又は通常使用権者
であるエリザベスは,要証期間内に,本件商標と社会通念上同一と認められ
る商標(本件使用商標2)を本件使用商品に使用した旨主張する。
しかしながら,前記(2)ア認定のとおり,本件使用商品は,販売名を「ル
ボタン ライン」とする「アイライナー」であり,本件使用商品の宣伝広告
においては,本件商品の画像とともに「ルボタンライン」,「ルボタンライ
ン リキッドアイライナー」,「ルボタンアイライナー」などと表記され,\n本件証拠上,本件使用商品について,本件使用商標1の構成中の「LIN\nE」の部分のみをその出所の識別標識として使用していた事情は認められな
いこと,本件包装用箱は,本件使用商品を6個梱包するための包装用容器で
あること(甲95)に照らすと,本件包装用箱に接した需要者,取引者は,
本件包装用箱に付された別掲2の「ルボタン」及び「ライン」の片仮名文字
を,ひとまとまりの標章として認識し,上記標章から「ルボタンライン」の
称呼が自然に生じるものと認められるから,「ライン」の片仮名文字のみが
独立して自他商品識別標識として機能し得るものということはできない。\n
◆判決本文
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2015.10. 6
平成27(行ケ)10086 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成27年9月30日 知的財産高等裁判所
不使用であると認定した審決が取り消されました。
登録商標は,上段に「ハイガード」下段に「HIGUARD」を配した商標です。使用商標は「ハイガード」でした。審決では「HIGUARD」は造語であり,特定の観念を有しないのに対し,上段の「ハイガード」のみが表示された場合には,「high guard」の欧文字を想起し,その表音を表\記したものと容易に理解し,「ハイガード」の片仮名は,「高いガード(保護)」,すなわち「商品を守る保護の程度が高い」との観念を有するとして、同一ではないと判断しました。裁判所は、同一の称呼及び観念が生ずると判断しました。
片仮名の「ハイガード」から生ずる観念について
片仮名の「ハイガード」は,それ自体が辞書等に登載された既成の用語
として特定の観念を有するものではない。
しかし,「ハイ」の部分は,英語の「high」に由来し,「程度の高
いこと。高度。高級。」などの意味を有する外来語として,また,「ガー
ド」の部分は,英語の「guard」に由来し,「警戒。監視。防御。」
などの意味を有する外来語として,いずれも一般的に使用されていること
(広辞苑第六版),また,片仮名の「ハイ」は,例えば,「ハイスピード」,
「ハイジャンプ」,「ハイクラス」などのように,その後に続く外来語と
結合して一連表記され,「高い○○」,「高度な○○」の意味で使用され\nる用例が一般的にみられること(広辞苑第六版)からすれば,本件審判請
求に係る指定商品である第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層
シート,繊維と貼り合わせたプラスチックシート,シート状・フィルム状\n・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品,その他のプラスチック
基礎製品」に係る取引者,需要者が,片仮名の「ハイガード」からなる商
標に接した場合には,これを上記のような意味を有する「ハイ」の語と「ガ
ード」の語が結合した用語として認識すると考えられる。そして,これを
前提とすれば,片仮名の「ハイガード」からなる商標からは,「高度な防
御」といった観念が生ずるというべきであり,更には,これが上記指定商
品に使用されることを想定すると,これらの商品の用途や性能等に関連し\nた印象が生ずることの結果として,「物を保護する程度が高い。」といっ
た観念が生ずるものと認めることができる。
イ 本件商標から生ずる観念について
片仮名の「ハイガード」からは,上記アのような観念が生ずるといえる
ところ,本件商標は,片仮名の「ハイガード」の下に「HIGUARD」
の欧文字が配されていることから,これらを全体としてみた場合にも,上
記アと同様の観念が生ずるといえるかが問題となる。
そこで検討するに,前記(1)のとおり,本件商標の上段の「ハイガード」
の片仮名文字は下段の「HIGUARD」の欧文字の表音を示したものと\nして両者は一体的に把握されるものといえるから,本件商標に接した取引
者,需要者においては,欧文字の「HIGUARD」について,片仮名の
「ハイガード」の「ハイ」の語に相応する「HI」の語と,片仮名の「ハ
イガード」の「ガード」の語に相応する「GUARD」の語とが結合した
ものであることを自然に認識するというべきである。
そして,このうち,「GUARD」の語が,「警戒。監視。防御。」等
の意味を有する英単語として,我が国においても一般的に認識されている
ことは,前記(1)のとおりである。
次に,「HI」の語については,「やあ。」などの呼び掛けを表す間投\n詞に当たる英単語としての用例が一般的ではあるが,そのような間投詞が
他の用語と結合して一連表記される用例は一般的ではないから,上記のよ\nうに「GUARD」の語と結合して一連表記された「HI」の語が,間投\n詞の「HI」の語であると認識されることは考え難い。他方,「hi」の
語には,「高い。高度な。高級な。」等の意味を有する英単語「high」
の略語としての意味もあり(甲34),しかも,「hi」の語には,例え
ば,高品位テレビジョンの日本方式の愛称として「hi−vision」,
高度先端技術を表すものとして「hi−tech(technology\nの略)」などのように,その後に続く英単語と結合して一連表記され,「高\n度な○○」の意味で使用される用例が,我が国においても一般的にみられ
るところである(甲17,18)。
以上のような「HI」の語及び「GUARD」の語に対する我が国にお
ける一般的な認識を前提とすれば, 上記アのような観念が生ずるものと認
められる片仮名の「ハイガード」の下に配された「HIGUARD」の欧
文字から構成された本件商標に接した本件審判請求に係る指定商品の取引\n者,需要者においては,これを上記用例と同様に,「HI」は「high」
の略語として認識し,あるいは「HI」の語から「high」の語を想起
又は連想し,本件商標は,「high」の語を表す「HI」と「警戒。監\n視。防御。」等の意味を有する英単語の「GUARD」とが結合して一連
表記されたものであって,上段の「ハイガード」の片仮名と同様の意味を\n有するものとして認識するというべきである。
してみると,本件商標からは,片仮名の「ハイガード」単独の場合と同
一の観念,すなわち,「高度な防御」あるいは「物を保護する程度が高い。」
といった観念が生ずるものと認めるのが相当である。
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2015.07.10
平成26(行ケ)10141 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成27年6月30日 知的財産高等裁判所
不使用取り消し審判の審決取消訴訟です。審決では登録商標の「使用」と認定され、知財高裁はこれを維持しました。
使用商標2の「ROYAL ENFIELD BULLET 500 EFI」の文字よりなる。構成中の「ROYAL ENFIELD」は,旧社名から派生した二輪自動車のブランド名であり(甲4),「500」は排気量の数字,「EFI」はエンジンにおける燃料噴射の電子制御システムである「Electronic Fuel Injection」の略語(甲11)等として理解されるから,外観上常に一体不可分のものとして認識されるとはいえず,「BULLET」の文字部分が,独立して要部として認識され得る。
本件商標と「BULLET」の文字部分は,その文字綴りを同一にするものであるから,使用商標2は,その他の文字を伴っている構成であるが,「BULLET」を要部として認識され得る以上,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。\n
◆判決本文
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2014.02.10
平成25(行ケ)10123 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年01月30日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判にて「使用」であると認定した審決が維持されました。
原告は,「シータヒーリング(Theta healing)」の表記は,説明会等の内容を示す一般名詞として使用されたものであり,役務の出所を示す識別表\示として使用されたものではないと主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,1)被告が平成21年9月に開催した心理療法によるカウンセリング等に係るセミナーのチラシには,上方に大きな文字で「The Theta Healing Seminar」と,その下に「シータヒーリング・セミナー」と目立つように表記され,また,同月に行ったセッションの申\込書には,「シータヒーリング・セッションのご案内」と記載されていること,2)被告が平成23年及び平成24年に開催した心理療法によるカウンセリング等に係る出張説明会及び出張説明会後の個人セッションの実施を告知したチラシには,上方に「シータヒーリング(Theta healing)○R 出張説明会開催決定!」又は「シータヒーリング(Theta healing)○R 勉強会開催のお知らせ」と記載され,また,個人セッション申込のための本件依頼書には,「シータヒーリング(Thetahealing)○R 依頼書」と記載され,登録商標であることを明示するための○R記号を付して用いていること等の事実を総合すれば,チラシや申込書,本件依頼書に記載された「Theta Healing」「シータヒーリング」「シータヒーリング(Theta healing)」(以下,以上を併せて「本件使用商標」という。)は,被告の提供に係る役務の出所を識別するための表示として使用されたことは明らかである。\n
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2014.02.10
平成25(行ケ)10090 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成26年01月29日 知的財産高等裁判所
不使用取り消し審判にて、使用商標「DEROS JAPAN」、登録商標「デーロス」では、特許庁は不使用と判断しましたが、裁判所は、社会通念上の同一性があるとして、使用として認めました。
使用商標「DEROS JAPAN」は,全体が普通に用いられる字体で表示されているものであり,「DEROS」と「JAPAN」との大きさが異なる態様で使用されているほか(甲12の1,13の1),両者の間に空白がある態様で使用されており(甲12の1,13の1,24,25,28の1〜3,29,32〜34,35の1,36,37),また,「JAPAN」が我が国に広く了解されている英単語であり,個別の語として容易に理解されることから,「DEROS JAPAN」が,常に一連一体のものとして称呼・観念されるものとはいえない。ところで,前半の「DEROS」は,「デロウズ 帰還予定日(和)」に対応する英単語であるが,我が国において一般に馴染みのある単語ではなく,一方で,「DEROS」をローマ字読みした「デ ロ ス」は,我が国において一般に馴染みのあるギリシャ共和国のデロス島の和名(デロス島の正しい綴りは「DELOS」である。)と音を共通にし,そのように読まれることが多いものと理解される。したがって,「DEROS」は,ローマ字表記に準じるものとして「デロス」との称呼が生じ(観念は不明である。),後半からは「ジ ャ パ ン」の称呼と「日本」との観念が生じる。しかるところ,商標において片仮名とローマ字とを相互に変更する場合は,社会通念上の同一性を失わないものと解されるから(商標法50条1項かっこ書き),本件商標の使用の有無の検討に当たって比較対象すべき点は,「デロス ジャパン」(「DEROS JAPAN」)と「デーロス」(本件商標)との社会通念上の同一性の有無になるところ,上記aに説示したとおり,「ジャパン」を付加することによって取引者・需要者に別異の観念を抱かせるものでなく,また,長音化したもの(デーロス)とそうでないもの(デロス)とは,外観上の差異がわずかである上,いずれもが特定の観念を抱かせないものであるから,その称呼の差異によって別個の観念は生じないものと解される。以上からすると,「DEROS JAPAN」と本件商標(デーロス)とは,社会通念上の同一性を有するものと認めるのが相当である。(イ) 被告の主張に対して被告は,デーロス・ジャパンと被告との間をめぐる取引の実情を加味して社会通念上の同一性を判断すべき趣旨を主張する。そして,上記1(1)〜(3)の認定によれば,原告又はAは,「デーロス」と「デーロス・ジャパン」とに同一性がないと考えたことにより,「デーロス」の商号の使用禁止約定に応じて,Aが代表者を務める株式会社デーロスの商号を「株式会社デーロス・ジャパン」に変更したものと推測される。しかしながら,商標の使用の有無の判断に際しての,当該登録商標と使用商標との社会通念上の同一性の検討においては,両商標の有する客観的要素が重視されるべきであり(例えば,商標法50条1項かっこ書き所定の変更事由について,当事者が同一性を欠くものと認識したとしても,その認識により判断が左右されるものではない。),本件においても,被告が指摘する当事者間の極めて特殊な個別事情やその主観的認識状況のみでは,上記(ア)の認定判断を左右するものとはいえず,被告の上記主張は採用することができない。
◆判決本文
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2013.10. 8
平成25(行ケ)10032 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年09月25日 知的財産高等裁判所
不使用であるとした審決が取り消されました。本件商標は「グラム」の片仮名と「GRAM」の欧文字とを二段表記したものであるのに対して使用商標は「Gram」でした。
被告は,本件商品にマックハウス商標が付されていることなどから,東麗商事,サン・メンズウェア及びマックハウスの間の取引について,内部的な下請け又は製造委託に基づく行為であって,通常の譲渡には該当しない旨主張する。しかし,本件商品はODM型生産という,委託者のブランド名での販売を前提に,受託先である東麗商事が商品企画から生産,その後の流通まで行い,委託先であるサン・メンズウェア,更にはマックハウスに商品(完成品)を提供するという形態で取引がなされているものと認められるのであり(甲15の2,甲29,30,弁論の全趣旨),また,本件商品には,東麗商事により,本件使用商標(本件下げ札)も付されているのであるから,本件商品にマックハウス商標が付されていることをもって,東麗商事,サン・メンズウェア及びマックハウスの間の取引について,商標法2条3項2号にいう「譲渡」に該当しないということはできず,被告の上記主張を採用することはできない。
・・・
以上によれば,本件商品がマックハウスの「navy natural」ブランドの製品であること,また,東レ(原告)の繊維である特殊な素材を使用することにより本件商品が上記の特徴を有することが認識され得るものといえる。しかし,他方で,本件商品は,上記認定のとおり,東麗商事によりODM型生産され,サン・メンズウェアに譲渡されたものであり,本件下げ札は,その際に本件商品に付されたものである上,東麗商事がODM型生産をした本件商品に使用した東レの素材が非常に軽いため,ダウンジャケットである本件商品が,軽量感のあるソフトな風合いの機能\性,快適性に優れるものであることを示すものであるとも解することができ,本件商品が東レの素材を使用した,「Gram」ブランドの衣類であるなどというように,被服である本件商品の出所及び品質等を示すものとして用いられているものとも理解し得るものである。このように,本件商品は,マックハウスの商品として,マックハウス商標が付されると共に,東麗商事により東レの特殊軽量素材の生地を使用してODM型生産された,軽量感のあるソフトな風合いの機能\性,快適性に優れた衣類であることも表示するものとして,本件使用商標が付されて販売されたものであり,単に,本件商品に使用された素材を示すために,本件使用商標が本件商品に付されたものとみることは相当ではない。\n
◆判決本文
◆関連事件です。こちらは商標が「グラム」ですがアルファベットの使用も社会通念上同一と認定されています。平成25(行ケ)10031
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2013.08. 7
平成24(行ケ)10442 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年07月17日 知的財産高等裁判所
2段併記の登録商標について、不使用ではないとした審決が維持されました。
本件商標は,「SAMURAI」と「サムライ」の文字を上下2段に表記したものであるのに対し,使用商標はいずれも,「SAMURAI」又は「Samurai」の文字を単独で表\記したものである。また,本件商標は標準の活字体が使用され,使用商標は概ね標準の活字体又は筆記体が使用されていること等に照らすならば,使用商標は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するというべきである。
(2) これに対し,原告は,使用商標はいずれも,「SAMURAI」又は「サムライ」の文字を2段併記ではなく1段に表記され,相当にデザイン化された書体に変更され,また,「GENUINE JEANS」の文字が併記されており,本件商標と社会通念上同一とはいえないと主張する。しかし,使用商標は,様々な絵柄や「侍」「刃」「零」「極」などの文字や「GENUINE JEANS」の文字と併記されている例があるが,いずれも「SAMURAI」「Samurai」との欧文字が,概ね標準の書体により,明瞭に表示されており,社会通念上同一といえる範囲に含まれるものというべきであり,この点の原告の主張は採用の限りでない。また,原告は,使用商標は,「SAMURAI」ないし「サムライ」という社名と同一の文字をデザイン化した,多数の異なる標章が用いられており,被告商品の出所を示すものと認識されない態様で用いられていると主張する。しかし,使用商標は,工夫が施された図柄とともに使用されているが,前記のとおり,フラッシャーに「SAMURAI」「Samurai」との欧文字が,概ね標準の書体で表\示されている使用状況に照らすならば,取引者,需要者は,商品の出所を示すための表示と認識することは明らかである。さらに,原告は,登録商標に大幅な変更を加えた標章の使用を当該登録商標の使用として認めることは,商標権者に不当に広い権利を与えることとなるとともに,国民一般の利益を不当に侵害するなどと主張する。しかし,前記のとおり,使用商標は登録商標に大幅な変更を加えたものであるとはいえず,原告の主張はその前提において失当である。\n
◆判決本文
◆関連事件です。平成24(行ケ)10441
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2013.04. 3
平成24(行ケ)10382 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年03月21日 知的財産高等裁判所
商標「RHYTHM」について、不使用取消請求がなされました。商標権者が使用していたのは、「NEO RHYTHM」です、特許庁は、使用と認めましたが、裁判所は、これを取り消しました。使用形態としては、「NEO」の文字は白抜きで籠字風に表され,「RHYTHM」の文字は塗り潰しのゴシック体風の文字で表\されていました。
本件商標は,「rhythm」の文字からなり,「リズム」という称呼を生じ,「リズム」,「調子」という観念を生じるのに対し,使用商標は,いずれも,「NEO」の文字を伴って,「NEORHYTHM」又は「NEO RHYTHM」の文字からなり,「ネオリズム」という称呼を生じ,「新しいリズム」,「新しい調子」という観念を生じる。そして,使用商標は,「NEORHYTHM」又は「NEO RHYTHM」の文字からなり,「NEO」の文字は白抜きで籠字風に表され,「RHYTHM」の文字は塗り潰しのゴシック体風の文字で表\されているところ,1)本件商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標とはいえないし,2)本件商標のローマ字の文字の表示を平仮名や片仮名に変更して同一の称呼及び観念を生ずる商標でもなく,また,3)外観において本件商標と同視される図形からなる商標でもなく,これらと同程度のものということもできない。よって,使用商標は,本件商標と社会通念上同一のものと認められる商標ということはできない。なお,前記1(3)認定のとおり,被告自ら,本件商標とは別個に,同様の指定商品(第25類「履物,乗馬靴」)について,「neorhythm」又は「neo rhythm」という別件登録商標の登録出願をした上でその商標登録を得ていることに照らしても,本件商標と使用商標とが社会通念上同一であると認めることはできない。
イ 被告の主張について
(ア) 被告は,使用商標において「RHYTHM」の部分が要部となっているから,本件商標と社会通念上同一であると主張する。しかしながら,前記1(1)認定の使用商標の態様並びに同(2)認定の被告の婦人靴の取引の実情を総合すると,同一の大きさ,同一の書体で表された「NEORHYTHM」又は「NEO RHYTHM」の文字からなる使用商標において,「RHYTHM」の部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとまではいうことはできない。また,「NEO」の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないともいうことはできない。よって,使用商標から「RHYTHM」の部分のみを抽出し,この部分だけを本件商標と比較して商標そのものの同一性を判断することは,許されない。(イ) 被告は,籠字風に表示された「NEO」の文字部分は,塗り潰された状態で表\示された「RHYTHM」の文字部分とは,視覚上異なり,その背景に埋没するような表示態様であって,看者をして「RHYTHM」の部分が強く印象づけられると主張する。しかし,使用商標の文字は,いずれも同一の大きさ,同一の書体で表\され,外観上まとまりよく一体的に表示されているのであって,籠字風に表\示されたからといって,「NEO」の部分が捨象されるとはいえない。(ウ) 被告は,「NEO RHYTHM」又は「NEORHYTHM」全体が既成の観念を有する成語として親しまれていないと主張する。しかし,「NEO」は「新,新しい」なる意味を有する英語に通じ,また「RHYTHM」は「リズム,調子」なる意味を有する英語に通じる既成語として一般に親しまれている。したがって,これらを結合した「NEO RHYTHM」又は「NEORHYTHM」については,それ自体が既成の成語として認識されていないとしても,「新しいリズム」,「新しい調子」なる意味合いのものとして理解することは容易であり,そこから「ネオリズム」という称呼が生じる。(エ) 被告は,「NEO」が接頭辞であり,自他商品の識別力がないか極めて弱いと主張する。しかし,接頭語として使用されるからといって,直ちに使用商標と本件商標とが社会通念上同一であるということはできない。
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2007.07.27
◆平成19(行ケ)10049 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所
使用していた商標は社会通念上同一あり、よって不使用であるとした審決を取り消しました。
「本件商標は,前記第3の1(1)アに述べたとおり,・・・というものであって,カタカナによる「チェチェ」との文字とアルファベットによる「CHECHE」との文字を2段に配した構成によりなる商標であり,これに対し本件標章は,前記のとおり,「CH.cCH.」というものである。これを対比してみると,本件商標が2段の構成をしているのに対し,本件標章はアルファベットのみの構\成である点,本件標章には「CHE」と「CHE」との間に「c」が挿入されている点,本件標章の「E」の部分が筆記体の「.」となっている点で,外観上の差異が認められる。ところで,本件商標のカタカナ部分は,アルファベット部分を日本語によって表記したものにすぎない。また,ハートの図形は,かわいらしさ,キユートさを想起させる図形として,女性用の衣料品・装身具類等のアクセントとしてしばしば用いられるデザインであり,本件標章におけるハートの図形についても,これが女性用の靴に用いられているものであって,しかも,同列のアルファベットの文字とほぼ同大,同間隔,同色であることからすれば,当該ハートの図形部分だけが看者に特別な印象を与えるものとはいえない。さらに,「E」の部分を「.」としている点も,アルファベットの「E」を筆記体で表記したものとして,きわめてありふれたものであって,看者においてことさらに別異のものとして認識されるものではない。そして,ハートの図形部分や「E」の筆記体から独自の称呼は生じないことからすると,本件標章の称呼は,本件商標の称呼である「チェチェ」と同一と解して妨げなく,観念として新たなものを付加するものでもない。そうすると,本件標章は,本件商標と社会通念上同一と認めるのが相当である。」
◆平成19(行ケ)10049 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成19年07月19日 知的財産高等裁判所
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2003.05.30
◆H15. 5.28 東京高裁 平成14(行ケ)591 商標権 行政訴訟事件
「DON/ドン」の2段書きの商標権について、「DON」の語の使用が、商標法50条の登録商標の使用に該当するかが争われました。
特許庁は、登録商標の使用に該当しないと判断しましたが、裁判所はこれを取り消しました。
「上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,我が国においては「DON」の語は,一般の取引者及び需要者には,「ドン」と称呼され,また,「スペインなどの男子に対する敬称」,「首領,ボス」といった観念を生じさせるものと認めるのが相当である。・・ 被告は,「DON」の語は,「ディー・オー・エヌ」の称呼も生ずる旨主張するところ,我が国では複数の語を連ねてなる外来語等の複合語については,これを構成する各語の頭文字(欧文字)を並べてこれを当該複合語の略称とすることがよく行われ,その意味において,「DON」の語について,これを複合語の略称であるととらえて,「ディー・オー・エヌ」と称呼する取引者及び需要者が存在する可能\性を否定することはできない。しかしながら,我が国において,「DON」の語が何らかの複合語の略称であるとする記載は公知の一般辞書類には見出せないのであって,取引者及び需要者の中に,「DON」の語を上記の複合語の略称としてとらえ,これを「ディー・オー・エヌ」と称呼する者がいるとしても,それは例外に属すると認めるのが相当である。・・・・
イ 被告は,原告が「DON」の文字を使用しているとする商品はシャンプ ーであるところ,このような商品に付された「DON」の標章が「首領,ボス,親分,大人物」を意味するとみるのは普通人の感覚に合わないことであり,上記標章は「ディー・オー・エヌ」と称呼される可能性が大きいとし,同商品の取引者及び需要者において,上記「DON」のみの使用が本件商標の使用であるとみるのは困難である旨主張する。しかしながら,特定の商品の取引者及び需要者は,その商標の構\成自体から受ける印象によりその称呼,観念を認識するものが一般的であると考えられ,せっけん類等を含む各種家庭用品の購入を通じて得られる経験則に照らしても,商品の種類や性質から,その商品に付された商標をどのように称呼し,その商標がいかなる観念を示すものかを考え,認識するというのは例外に属するというべきである。この点に関する被告の主張は採用できない。」
◆H15. 5.28 東京高裁 平成14(行ケ)591 商標権 行政訴訟事件
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