「DON/ドン」の2段書きの商標権について、「DON」の語の使用が、商標法50条の登録商標の使用に該当するかが争われました。
特許庁は、登録商標の使用に該当しないと判断しましたが、裁判所はこれを取り消しました。
「上記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,我が国においては「DON」の語は,一般の取引者及び需要者には,「ドン」と称呼され,また,「スペインなどの男子に対する敬称」,「首領,ボス」といった観念を生じさせるものと認めるのが相当である。・・ 被告は,「DON」の語は,「ディー・オー・エヌ」の称呼も生ずる旨主張するところ,我が国では複数の語を連ねてなる外来語等の複合語については,これを構成する各語の頭文字(欧文字)を並べてこれを当該複合語の略称とすることがよく行われ,その意味において,「DON」の語について,これを複合語の略称であるととらえて,「ディー・オー・エヌ」と称呼する取引者及び需要者が存在する可能\性を否定することはできない。しかしながら,我が国において,「DON」の語が何らかの複合語の略称であるとする記載は公知の一般辞書類には見出せないのであって,取引者及び需要者の中に,「DON」の語を上記の複合語の略称としてとらえ,これを「ディー・オー・エヌ」と称呼する者がいるとしても,それは例外に属すると認めるのが相当である。・・・・
イ 被告は,原告が「DON」の文字を使用しているとする商品はシャンプ ーであるところ,このような商品に付された「DON」の標章が「首領,ボス,親分,大人物」を意味するとみるのは普通人の感覚に合わないことであり,上記標章は「ディー・オー・エヌ」と称呼される可能性が大きいとし,同商品の取引者及び需要者において,上記「DON」のみの使用が本件商標の使用であるとみるのは困難である旨主張する。しかしながら,特定の商品の取引者及び需要者は,その商標の構\成自体から受ける印象によりその称呼,観念を認識するものが一般的であると考えられ,せっけん類等を含む各種家庭用品の購入を通じて得られる経験則に照らしても,商品の種類や性質から,その商品に付された商標をどのように称呼し,その商標がいかなる観念を示すものかを考え,認識するというのは例外に属するというべきである。この点に関する被告の主張は採用できない。」
◆H15. 5.28 東京高裁 平成14(行ケ)591 商標権 行政訴訟事件