不使用取消審判の取消訴訟です。審決、知財高裁とも、「旧 関西国際学友会日本語学校」が、登録商標「関西国際学友会」の使用であると判断しました。
(1) 使用商標は,「旧」の文字と「関西国際学友会日本語学校」の文字とを半
角又は全角の空白を介して結び,かつ全体を括弧で囲んで表したものである。
(2) まず,これらの文字は,書体も大きさも同一であり,全体が括弧で囲まれ
ているものの,「旧」と「関西国際学友会日本語学校」とは,空白によって
明確に分離されていること,「旧」は,「昔。過去。」といった意味を有し,
「今は主流ではないもの,過去のものとなっていることを表す語」であり(広\n辞苑〔第7版〕),その後に続く語がかつて用いられていた名称等であるこ
とを指し示すものとして一般的に多用されている語であること(乙5の1〜
5の5)からすると,使用商標に接した需要者は,「旧 関西国際学友会日
本語学校」の意味は,かつての名称が関西国際学友会日本語学校であったこ
とにあると理解すると認められる。
続いて,「関西国際学友会日本語学校」の部分について検討する。
ア この文字部分中,「日本語学校」は,教育の分野において,日本語を教
授する教育機関又は施設を意味する一般的名称と認められ(甲7の1〜7
の8),一般通常人にとっても馴染みのある語というべきであるから,需
要者が「関西国際学友会日本語学校」の文字に接したときに,これは「関
西国際学友会」と「日本語学校」の各語を組み合わせたものであると理解
することは明らかである。
イ 次に,「関西国際学友会」についてみると,「学友会」の文字部分だけ
をみれば,学生及び卒業生の交流を図る会ないし団体といった程度の一般
的な意味を有する語と解する余地があるものの,その前に「関西国際」が
付されていることを考え合わせると,これに接した需要者は,全体として,
関西地方に所在し又は同地方において活動している,国際的に学生等の交
流を図ることを目的として設立された特定の団体の名称であると理解する
と認めるのが相当である。
また,上記のとおり,「日本語学校」は,日本語を教授する教育機関又
は施設を意味する一般的名称と認められるから,需要者は,「日本語学校」
の部分を,提供される役務の内容,又はその役務を提供する施設を示して
いるものと理解し,当該部分が出所を表示する機能\を有するものであると
は考えないと認めるのが相当である。
ウ 上記イにおいて説示した各語が有する意味合いに鑑みると,「関西国際
学友会日本語学校」は「関西国際学友会」が運営する「日本語学校」とい
った程度の意味を有する語として理解されるというべきである。
そして,「関西国際学友会」と「日本語学校」とは,一体不可分の関係
にあると理解されなければならない語であるとは言い難い上に,「日本語
学校」は,日本語を教授する教育機関又は施設を意味する一般的名称であ
るから,需要者は,使用商標中の「関西国際学友会日本語学校」につき,
「関西国際学友会」の部分が出所を示す機能を果たしていると認識すると\nいうべきである。
◆判決本文
関連事件です。
◆平成30(行ケ)10038
不使用による商標取消訴訟について、共有商標権者の一部が提訴しました。被告は固有必要的共同訴訟として訴えは不適切と主張しましたが、裁判所はかかる主張は認めませんでした。ただ、最終的に使用が証明できず、取消審決は維持されました。これは、登録商標を使用しているとはいえないというものです。登録商標は、漢字、かたかな、ひらがな、ローマ字表記を4段で書しており、使用していたのは、漢字のみを書したものでした。
被告は,原告といきいき緑健は,本件商標に係る商標権を共有するところ,原告
は,単独で本件審決の取消しを請求するから,本件訴えは不適法であると主張する。
しかし,いったん登録された商標権について,登録商標の使用をしていないこと
を理由に商標登録の取消審決がされた場合に,これに対する取消訴訟を提起するこ
となく出訴期間を経過したときは,商標権は審判請求の登録日に消滅したものとみ
なされることとなり,登録商標を排他的に使用する権利が消滅するものとされてい
る(商標法54条2項)。したがって,上記取消訴訟の提起は,商標権の消滅を防
ぐ保存行為に当たるから,商標権の共有者の1人が単独でもすることができるもの
と解される。そして,商標権の共有者の1人が単独で上記取消訴訟を提起すること
ができるとしても,訴え提起をしなかった共有者の権利を害することはない。
また,商標権の設定登録から長期間経過した後に他の共有者が所在不明等の事態
に陥る場合や,訴訟提起について他の共有者の協力が得られない場合なども考えら
れるところ,このような場合に,共有に係る商標登録の取消審決に対する取消訴訟
が固有必要的共同訴訟であると解して,共有者の1人が単独で提起した訴えは不適
法であるとすると,出訴期間の満了と同時に取消審決が確定し,商標権は審判請求
の登録日に消滅したものとみなされることとなり,不当な結果となりかねない。
さらに,商標権の共有者の1人が単独で取消審決の取消訴訟を提起することがで
きると解しても,その訴訟で請求認容の判決が確定した場合には,その取消しの効
力は他の共有者にも及び(行政事件訴訟法32条1項),再度,特許庁で共有者全
員との関係で審判手続が行われることになる(商標法63条2項の準用する特許法
181条2項)。他方,その訴訟で請求棄却の判決が確定した場合には,他の共有
者の出訴期間の満了により,取消審決が確定し,商標権は審判請求の登録日に消滅
したものとみなされることになる(商標法54条2項)。いずれの場合にも,合一
確定の要請に反する事態は生じない。なお,各共有者が共同して又は各別に取消訴
訟を提起した場合には,これらの訴訟は,類似必要的共同訴訟に当たると解すべき
であるから,併合の上審理判断されることになり,合一確定の要請は充たされる。
以上によれば,商標権の共有者の1人は,共有に係る商標登録の取消審決がされ
たときは,単独で取消審決の取消訴訟を提起することができると解するのが相当で
ある(最高裁平成13年(行ヒ)第142号同14年2月22日第二小法廷判決・
民集56巻2号348頁参照)。
よって,原告は,単独で本件審決の取消しを請求することができる。被告の本案
前の抗弁は,理由がない。
・・・・
以上のとおり,甲1カタログ,甲2カタログ及び甲3雑誌は,いずれも要証期間
内に頒布されたものとは認められない。また,そもそも,本件商標は,「緑健青汁」,
「りょくけん青汁」,「リョクケン青汁」及び「RYOKUKEN AOJIRU」
の文字を4段に書して成るものであるのに対し,甲1カタログ,甲2カタログ及び
甲3雑誌に記載された商標は,「緑健青汁」の文字のみを書して成るものである。
このような本件商標と使用商標とは,商標法50条1項にいう「平仮名,片仮名及
びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ず\nる商標…その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」であると,直
ちに認めることはできない。
◆判決本文