2022.10. 1
令和4(行ケ)10038 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年9月28日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判の審決取消請求事件です。ネット上における商標の使用について、審決は使用していたと認定しました。知財高裁も同じ判断です。
前記1(2)の認定事実によれば、使用商標2のみならず、使用商標1につ
いても、本件投資信託(「香港籍指数連動型上場投資信託」及び「私募外
国投資信託(香港ドル建)」)の名称であることは明らかであるから、使
用商標1は、要証期間を含む期間において、請求に係る指定役務中、第3
6類「証券投資信託受益証券の募集・売出し、投資、金融資産の管理」の
範ちゅうに含まれる役務に使用されていることになる。
エ 楽天証券のウェブサイトにおける使用商標1の使用が本件投資信託の販
売会社としてのものであることは明らかである。前記イ のとおり、被告
の本件投資信託の交付運用報告書では、運用報告書(全体版)については、
販売会社である楽天証券のウェブサイトで電磁的方法により提供されて
いるとしてURLを表示しているのであるから、被告が、楽天証券におい\nて使用商標1をウェブサイトで使用していることを認識していることも
明らかである。そうすると、被告が楽天証券に使用商標1の通常使用権を
許諾していることは優に推認される。
そして、前記1(1)のとおり、楽天証券のウェブサイトでは、過去10年
の本件投資信託の価格等、本件投資信託に関する重要な情報が示され、本
件投資信託の売買も可能なのであるから、「役務に関する広告・・・を内\n容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」が行われて
いたことになる。
オ 以上によれば、本件商標の通常使用権者である楽天証券は、要証期間に
日本国内において、請求に係る指定役務中、第36類「証券投資信託受益
証券の募集・売出し」等に関する広告を内容とする情報に、本件商標と社
会通念上同一の商標である使用商標1を付して、自社のウェブサイト上で
表示し、役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法\n(インターネット)により提供する行為(商標法2条3項8号)をしてい
たものと認められる。
◆判決本文
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2021.07.29
令和3(行ケ)10003 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和3年7月19日 知的財産高等裁判所
知財高裁(1部)は、Webサイト上の使用について、使用証明が要証期間内のものかが不明として、使用ありとして審決を取り消しました。
被告は,平成28年頃,本件サービスの有料会員のみが閲覧可能な本件ウェ\nブサイトの本件トップページ(甲15)に本件使用商標が表示された本件バナ\nーを,本件バナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件
ウェブページ(甲17)に本件バナーの画像をそれぞれアップロードして,本
件バナー及びその画像を掲載したこと,ファンプラス社が,令和2年4月1月
以降,本件トップページ及び本件ウェブページにそれぞれ本件バナー及びその
画像を継続的に掲載したことにより,被告又はファンプラス社が要証期間内に
本件使用商標を使用した旨を主張するので,以下において判断する。
(1) 甲15は,本件トップページを印刷した書証であり,甲15には,「Fの
ぶらり商店街」の見出しの下に,別紙記載の本件バナーを含む複数のバナー
が表示されている。また,甲17は,本件ウェブページを印刷した書証であ\nり,甲17には,「美少女図鑑 作品一覧」の見出しの下に,本件バナーの
画像が表示され,その画像の下には,複数の電子写真集のサムネイルが表\示
されている。本件バナーには,別紙記載のとおり,女性を被写体とする3枚
の写真(本件写真1ないし3)を背景に,白く縁取りされたピンク色の書体
の「美少女図鑑」の文字からなる本件使用商標が表示されている。\nそして,証拠(甲15,17,32)及び弁論の全趣旨によれば,本件ト
ップページに表示された本件バナーのリンク先が本件ウェブページであるこ\nと,本件ウェブページに表示された各サムネイルの横には,例えば,「女子\n校生 先輩は僕のいいなり A 2018−09−01」,「女子校生 純
白 B 2018−09−01」等の記載があることが認められる。
しかしながら,甲15及び17は,いずれも要証期間経過後の本件審判請
求後に印刷されたものであるから,甲15及び17が存在するからといって,
要証期間(平成29年6月18日から令和2年6月17日までの間)に,本
件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像が表示され\nていたものと直ちに認めることはできない。
また,本件バナーのアップロード時のログ等の電子記録は提出されておら
ず,平成28年頃,本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及
びその画像がアップロードされて掲載されたことを客観的に裏付ける証拠は
存在しない。
もっとも,甲17には,本件ウェブページに表示された各サムネイルに係\nる「2018−09−01」等の日付の記載があるが,これらの日付は,当
該サムネイルに係る電子写真集の販売開始日等を示したものとうかがわれ,
また,本件バナーのアップロード時期とサムネイルのアップロード時期が当
然に同じ時期になるものとはいえないから,これらの日付から,本件バナー
が平成28年頃にアップロードされたものと認めることはできない。
(2)次に,C作成の令和3年4月14日付け陳述書(乙3)中には,1)Cが代
表取締役を務める友ミュージック社は,およそ5,6年前に,被告の依頼を\n受け,本件ウェブサイトの会員限定ページに本件バナーをアップロードした,
2)同ページの本件バナーとリンクさせる形で,美少女図鑑のコンテンツ用ペ
ージをアップロードした,3)その後,本件バナーはアップロード時と同じ状
態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで本件バナーに変
更を加えていない旨の記載部分がある。
しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は,
およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,上記記載部分は,本件使用
商標を表示する本件トップページ及び本件ウェブページをアップロードした\n時期が「2015年3月25日」であることを証明する旨のC作成の令和2
年9月23日付け証明書(甲20)の記載部分と齟齬するものであるから,
措信することができない。
また,G(以下「G」という。)作成の令和3年6月11日付け陳述書(乙
8)には,1)Gは,被告に在籍していた,今から5,6年前,被告が保有す
るコンテンツ(乙5ないし7)から女性3名の写真と本件使用商標を使用し
て,本件バナーを作成し,友ミュージック社に依頼して,本件ウェブサイト
の有料会員のみが閲覧できる本件トップページに本件バナーを掲載し,本件
バナーのリンク先において,年齢の若い女性を被写体とするコンテンツを一
覧化した本件ウェブページを作成した,2)本件バナーに表示された女性3名\nの写真は,直近1,2年前に出版された,女子高生シリーズの中で比較的新
しい3冊の写真集から選んだものである,3)その後,本件バナーはアップロ
ード時と同じ状態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで
本件バナーに変更を加えていない旨の記載部分がある。
しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は,
およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,本件バナーの背景の本件写
真1ないし3は,Cが挙げる乙5ないし7(電子写真集1ないし3)記載の
写真と異なる構図の写真であるから,乙5ないし7は,本件バナーのアップ\nロードが平成28年頃にされたことを直ちに裏付けるものでないことからす
ると,上記記載部分は措信することができない。
したがって,乙3及び8から,本件トップページ及び本件ウェブページに
それぞれ本件バナー及びその画像が掲載されたことを認めることはできない。
他に本件使用商標が表示された本件バナー及びその画像が要証期間内に\n本件トップページ及び本件ウェブページに掲載されていたことを認めるに足
りる証拠はない。
◆判決本文
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2021.07.27
令和3(行ケ)10013 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和3年7月20日 知的財産高等裁判所
不使用取消を請求しましたが、棄却されました。知財高裁も同様に「動画である本件動画における商標の使用は,商標的使用とはいえないと判断をしました。
事案の性質に鑑み,まず本件商標の使用の有無の点から検討,判断する。
商標法は,50条において,「日本国内」において「商標権者,専用使用権
者又は通常使用権者」のいずれかが「不使用取消審判請求に係る指定役務」
のいずれかについての登録商標の「使用」をしていることを商標権者が証明
しない限り,当該指定役務について当該商標の登録が取り消されると定め,
また,2条において,商標とは「業として」使用するものであり,その「使
用」とは,同条3項各号に列記されているのものに限ることを定めている。
したがって,本件において,商標権者である原告は,本件サービス又は本
件チャンネルにおける本件商標の使用が,日本国内において原告又はリンガ
フランカ社によって,本件指定役務について,業務に係る標章として同条3
項各号に列記されている態様で行われていることを立証することを要する。
(2)本件サービスにおける本件商標の使用について
ア 前記1(8)のとおり,本件サービスに係る会員認証ページ(甲8)には,
本件商標と同一の商標が表示されており,また,同(1)ウ及び(3)のとおり,
本件サービスは日本国内における日本人も対象としていることが明らか
であるから,本件商標は,日本国内において使用されているといえる。
しかしながら,上記ページは,要証期間経過後で本件審判請求がされた
後の平成31年4月16日に印刷されたものにすぎず,要証期間に同ペー
ジに本件商標が表示されていたことを直ちに明らかにするものではない\nし,自己のウェブサイトの表示を変えることは容易であるから,この証拠\nだけから要証期間に本件商標が表示されていたことを推認できるもので\nもない。
したがって,要証期間に本件サービスで本件商標が使用されていること
を認めるに足りる証拠はないというべきである。
イ 仮に,要証期間に本件サービスに係る会員認証ページに本件商標が表示\nされていたとしても,本件商標は本件指定役務の範囲に含まれる役務につ
いて使用されているとはいえない。
すなわち,本件指定役務のうち,「語学に関する知識の教授」,「国際文化
に関する知識の教授」又は「教育研修のための施設の提供」は,人に対す
る教育又は知能を開発するための役務であるが,本件サービスは,会員が\nSNSを利用して会員同士で情報発信,情報交換をするものであり,その
際に使用できる言葉をグロービッシュの基本単語1500語又はその派
生語に限定したというにすぎず,実態としては個人間の交流の場を提供し
ているだけのサービスである。したがって,本件サービスが主体的に知識
の教授や教育研修を行っているとはいえず,本件サービスを利用すること
でグロービッシュについての能力が向上することがあるとしても,それは,\n単なる副次的な作用,効果にすぎない。
そうすると,本件サービスの提供は,「語学に関する知識の教授」,「国際
文化に関する知識の教授」又は「教育研修のための施設の提供」のいずれ
にも該当しないというべきである。
ウ したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件サービスに
おいて,要証期間に上記各指定役務について本件商標の使用がされていた
とは認められない。
(3) 本件チャンネルにおける本件商標の使用について
ア 前記1(4)のとおり,本件動画1)ないし4)には,その冒頭に本件商標と同
一の商標が使用されており,また,本件サービスやグロービッシュ・ラー
ニング・センターの案内を内容とするなど日本国内における日本人を対象
としていることが明らかであるから,当該商標は日本国内において使用さ
れているといえる。
また,前記1(4)のとおり,本件動画1)ないし4)の投稿日は要証期間開始
前の平成25年3月9日から同年7月9日にかけてであるところ,要証期
間経過後である令和2年10月9日時点においても本件動画1)ないし4)
を視聴することが可能であり,同日時点の本件動画1)の視聴回数が750
回,本件動画2)の視聴回数が1125回,本件動画3)の視聴回数が431
回,本件動画4)の視聴回数が437回となっているから(甲10),要証期
間に本件動画1)ないし4)が視聴され得る状態であったことは十分に推認\nすることができる。したがって,要証期間に本件商標が本件チャンネルに
おいて使用されたことが認められる(なお,被告は,要証期間に本件チャ
ンネルが閉鎖されていた可能性を否定することはできない旨主張するが,\n閉鎖されていたことを疑うに足りる事情は見当たらない。)。
イ しかしながら,本件サービスの提供は,前記(2)イで判示したとおり,「語
学に関する知識の教授」又は「国際文化に関する知識の教授」,さらには「語
学教育に携わる教師の育成のための教育又は研修」のいずれの役務にも当
たらないというべきであるから,本件動画1)ないし4)が本件サービスの案
内を内容とするとしても,それが上記各指定役務に関する「広告」(商標法
2条3項8号)に該当する余地はない。
また,本件動画1)及び2)は,専らグロービッシュそのものの紹介を内容
とするものと把握される動画であって,具体的な役務との関連性が明確に
されているとはいえず,この点からも「役務に関する広告」(商標法2条3
項8号)とはいい難いものである。したがって,本件動画1)及び2)におけ
る本件商標の使用が,商標法2条3項所定の「使用」に該当するとは認め
られない。
さらに,本件動画3)は,専らリンガフランカ社の前記1(1)ウ2)のサービ
スの紹介を,本件動画4)は,専ら前記1(1)ウ3)のサービスの紹介を内容と
するとものとそれぞれ把握される動画であるところ,前記1(6)及び(7)のと
おり,リンガフランカ社は,要証期間前の平成25年9月30日には上記
両サービスを終了させており,原告は,同サービスの運営を引き継いでい
ないから,本件動画3)及び4)を「役務に関する広告」(商標法2条3項8号)
と捉えるとしても,その内容は,事業として行われていない実態のサービ
スに関するものにすぎない。そうすると,本件動画3)及び本件動画4)は,
業として行われている役務について使用されているものではないから,そ
こに本件商標が表示されているとしても,その本件商標の使用を商標とし\nての使用と解することはできない。
ウ 以上によれば,本件チャンネルで公開されている動画である本件動画1)
ないし4)における本件商標の使用は,いずれにしても商標法2条3項所定
の「使用」とはいえない,あるいは商標的使用とはいえないことになる。
(4) 小括
以上の次第で,本件商標が,要証期間中,本件指定役務のうち,「語学に関
する知識の教授」,「国際文化に関する知識の教授」,「教育研修のための施設
の提供」又は「語学教育に携わる教師の育成のための教育又は研修」の役務
について使用されていたと認めることはできず,また,原告は,本件指定役
務のうち,上記役務を除く役務について要証期間に本件商標が使用されてい
る点について具体的に主張立証をしておらず,本件証拠からもその使用をう
かがうことはできない。
したがって,要証期間に本件商標が本件指定役務について使用された旨の
立証はないというべきであるから,本件商標の使用者に係る点について判断
するまでもなく,いずれにしても本件審決の判断に誤りはない。
◆判決本文
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2020.12. 7
令和2(行ケ)10072 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和2年12月2日 知的財産高等裁判所
使用証明として「奥西木工」の文字部分が記載されていない証明書を提出しました。審決は当該部分が出所表示機能\を有する要部であるとして登録を取り消しました。知財高裁(2部)も同じく使用証明として認めませんでした。登録商標は判決本文内に参照されています。
1 本件商標のうち,「奥西木工」の文字部分が,出所表示機能\を有する要部に当
たるかについて
本件商標は,前記第2の1のとおり,全体が一様に朱色の家具の催事についての
広告チラシを縮小した構成からなり,その上部には,上が欠けた円図形の内側に大\nきな赤い文字で「大処分」と記載され,その右側に「キズ物 半ぱ物 山積」と記
載された白抜きの将棋の駒様の図形を配し,さらに,上記円図形の右内側に大きく
「家具」の文字が記載され,内側に家具の絵が配されており,上記円図形の左上に
「京都最大の家具専門店奥西木工の魅力あるキズもの」と大きく記載され,同図形
の上に「キズ物市」とより大きく記載され,同図形の左には「大放出」と大きく記
載されており,その下部には,矢印と共に「うら面へつづく」と記載され,最下部
には赤色の長方形の中に白抜き文字で「奥西木工」等の文字が記載されているもの
である。
上記のような本件商標の構成からすると,本件商標に接した需要者,取引者は,\n本件商標が,「キズ物市」という家具の催事についてのチラシであると認識すると認
められるところ,「大処分」,「家具」,「キズ物市」,「大放出」といった記載や家具の絵は,販売される商品や催事の内容などを表すものと認識されるのであって,本件\n商標には,「奥西木工」の文字部分以外に,本件商標に記載された各商品(家具)の
出所を示すような表示はない。そうすると,本件商標に接した需要者,取引者は,\n「奥西木工」の記載をもって,指定商品である家具の出所を表示するものとして認\n識するものと認められ,「奥西木工」の文字部分は,要部であるというべきである。
・・・
そうすると,本件チラシ1は,その全体のレイアウトは,本件商標と共通する部
分があるものの,本件チラシ1のいずれにも本件商標の要部である「奥西木工」と
いう文字部分がなく,「タキソウパルクス刈谷店」,「タキソ\ウ家具」,「タキソウ家具本店」,「タキソ\ウパルクス吉原店」などとの記載があるのみであるから,本件チラ
シ1に記載された本件使用商標1は,本件商標とは外観が大きく異なる上,本件商
標から生じる「オクニシモッコウ」などの称呼や「奥西木工の主催するキズ物市」
といった観念も本件使用商標1からは生じない。以上からすると,本件使用商標1が,本件商標と社会通念上同一ということはできない。
◆判決本文
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2020.07.14
令和1(行ケ)10094 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和2年6月4日 知的財産高等裁判所
商標motoについて、商品「腕時計」について不使用取消審判が請求され、不使用として登録が取り消されました。知財高裁はこれを維持しました。
原告ウェブページについて
ア 腕時計の画像の表示\n
原告は,原告ウェブページに,本件商標が付された原告腕時計4本の画
像(甲23の1〜3)を掲載した旨主張する。
しかしながら,原告ウェブページの写真である甲23の1〜3は,そこ
に表示された4本の腕時計の画像が不鮮明であるため,同画像からは,こ\nれらの腕時計の文字盤にいかなる標章が付されているのかを認識すること
はできず,その他に,原告ウェブページに本件商標を付した腕時計が表示\nされていることを認めるに足りる証拠はない。
これに対し原告は,仮に上記画像のみから「moto」の文字をはっきり認
識できないとしても,同画像の右横に本件商標が大きく表示され,更に\n「moto」が原告の登録商標である旨の記載もあること,腕時計の文字盤に
商標が付されることは極めて多いことに鑑みれば,画像の文字盤に付され
た欧文字が「moto」であることを十分に認識できる旨主張する。\nしかしながら,そもそも,原告ウェブページに表示された腕時計の画像\nは不鮮明であって,文字盤に欧文字が付されていると認識することは困難
であるし,腕時計の文字盤に常に商標が付されるものであるとも認められ
ない。また,前記1(2)で認定した原告ウェブページにおける画像等の配置
や全体の構成に照らしても,「moto」が登録商標である旨の説明文は,その
上方に近接して表示された本件商標について説明する文章と理解するのが\n自然であるから,これらの表示から,腕時計の画像に「moto」の標章が付
されていることを認識するものではないといえる。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
以上によれば,要証期間内に,本件商標が付された腕時計の画像が原告
ウェブページに表示されたと認めることはできない。\n
イ 本件商標の表示\n
(ア) 前記1(2)のとおり,原告ウェブページには,腕時計の品名,品番,
値段,商品説明等についての記載や,原告の腕時計が将来発売予定であ\nること,個別の商談により購入が可能であることを説明する記載はない。\nそして,かかる原告ウェブページの体裁,記載からは,少なくとも平
成30年3月6日頃に原告更新ウェブページが作成され,腕時計の品名,
品番,値段,商品説明等についての具体的な記載が掲載されるまでの間
は,原告において,同ウェブページに画像が表示された腕時計が実際に\n製造され,商品として購入できる実態があったことを推認することはで
きないというべきである。
以上によれば,原告ウェブページに表示された本件商標や「moto 時計」
のウェブページである旨の表示は,商品である「腕時計」について使用\nされたものとは認められない。
(イ) これに対し原告は,(1)原告ウェブページに原告腕時計の商品名等を
表示しなかったのは,原告腕時計の画像を原告ウェブページに掲載した\n当時は,原告腕時計の販売や取引先に対する営業活動の開始前だったか
らである,(2)原告ウェブページに掲載された原告腕時計の画像は,原告
が君園に発注して納品を受けた腕時計につき,中華撮影が広告用に撮影
したものを使用して,原告ウェブページ掲載用に作成したものであって,
甲44ないし46は君園から受領した原告腕時計の見積書及びデザイン
画像,甲49は中華撮影から受領した原告腕時計の写真の納品書,甲5
0は原告ウェブページ用に作成した写真である旨主張し,原告の従業員
であるEの本件審判における証人尋問録音の反訳(甲20,80)及び
同人の陳述書(甲28。上記反訳と併せて,以下「Eの陳述書等」とい
う。),君園の社長の陳述書(甲94)及び中華撮影の写真家の陳述書(甲
95)中には,これに沿う部分がある。
しかしながら,(1)についていえば,原告主張の事情は,原告更新ウェ
ブページが作成されるまでの1 年以上にわたり,原告ウェブページに原
告腕時計の品目,品番,商品説明等の一切が表示されていないことの説\n明になるものではない。また,(2)も,以下の点に照らせば,採用できる
ものではない。
すなわち,甲45のデザイン画像は,腕時計本体の写真がやや不鮮明
であるのと対照的に,文字盤上の「moto」の文字又は文字盤全体が不自
然なほど鮮明で浮き上がっているように見えるものであり,画像データ
を加工等して作成された画像であることがうかがえる。また,同画像が
添付された電子メール(甲45)には本文がなく,これらの画像の作成
目的,作成方法等も証拠上明らかでない。
そして,甲44の見積書には,「製品明細」(「ステンレス サファイア
ガラス 日本製ムーブメント 手作箱及び説明書」),「注意事項」(「腕時
計サンプル製作」),「数量」(合計16個)等の記載があるものの,商品
の単価やサンプル製作納期の記載がないなど,不自然な点も少なくなく,
「製品明細」に記載されたとおりの製品が製造されたことを示す写真等
の客観的な証拠もない。また,原告は,甲46の見積書は,納品書兼領
収書の役割を果たすものであって,甲44の見積書に対応するものであ
る旨主張するが,甲46の見積書にも製品の単価等の記載はない。
さらに,甲49の納品書には,中華撮影が原告に対して単価400台
湾ドルの写真19枚を納入し,原告からその代金を受領した旨の記載が
あるものの,納品する写真の画像等は添付されていないため,これらの
証拠からは,納入された写真が原告腕時計のものであるかは明らかでな
い。
加えて,文字盤に「moto」の標章が付されていることが認識できる4
本の腕時計の写真(甲50)も,その作成時期,作成経緯は明らかでな
く,これが原告ウェブページ上の腕時計の画像と同一のものであること
を裏付ける客観的な証拠はない。
以上によれば,原告の上記主張を採用することはできないというべき
である。
ウ 本件商標の使用の有無
前記ア及びイによれば,原告が,原告ウェブページに腕時計の画像及び
本件商標の表示等を表\示したことをもって,本件商標の使用(商標法2条
3項8号)に該当すると認めることはできない。
◆判決本文
同一商標権の侵害訴訟の控訴審です。
◆平成31(ネ)10024
上記控訴審の1審判決です。
◆平成29(ワ)15776
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2020.03. 6
平成31(行ケ)10059 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和2年2月26日 知的財産高等裁判所
不使用とした審決が取り消されました。原告は本件訴訟で、新たな証拠
を提出しました。被告がシャネルで、本件商標は「COCO」です。
ア(ア) 原告は,平成19年9月3日に設立された,衣料品及び服飾雑貨の
卸,小売販売,製造及び輸出入等を目的とする株式会社である。
(イ) ダンエンタープライズは,要証期間(平成24年4月23日から平
成27年4月22日までの間)において,本件商標権の商標権者であっ
た。
(ウ) ジーティーオーは,ダンエンタープライズの有する商標権(本件商
標権を含む。)の使用許諾の窓口として,ダンエンタープライズから購
入した使用許諾を証明する「証紙」を使用許諾先に販売する業務を行っ
ていた。一方,ダンエンタープライズは,ジーティーオーから,「商品
化申請管理表\」及び「証紙申請書」の提出を受けて,商標を付する予\定
の商品を確認して,商標の使用を承認した上で,商品化権使用料名義で
商標の使用料を受け取り,「証紙」をジーティーオーに引き渡していた。
イ(ア) 原告は,平成25年9月3日及び4日,ジーティーオーに対し,原
告が商品化を企画している「COCO」の欧文字を付した4種類のトー
トバッグの商品(「COC−COB01」,「COC−COB02」,
「COC−CV01」,「COC−CV02」)のデザイン及び12種
類のカラーのデータ画像を添付したメール(甲89の1,2,90の1,
2,134の1,2,135の1,2)を送信し,本件商標の使用許諾
を求める旨の申請をした。\nその後,原告とダンエンタープライズは,同月30日,期間同年10
月1日から3年間,指定商品第14類,第18類,第25類及び第26
類「身飾品他か」,使用許諾地域日本国内の約定で,ダンエンタープラ
イズが原告に対し,本件商標権の使用権を独占的に許諾し,原告が本件
商標を付した「かばん・小物類」の商品を製造及び販売することを許諾
する旨の本件使用許諾契約(甲24)を締結した。
(イ) 原告は,平成25年10月29日,韓国のミラクル社(甲124の
2,3)に対し,「2013.10」,「COC−BGT01」,「C
OC−CV01」,「COC−BGT02」,「COC−CV02」と
の表示の下に,「COCO」の欧文字が付されたトートバッグのデザイ\nン及び寸法等を記載した画像データ(甲91の2,3,136の1,2)
を添付した,「COCOバッグサンプル作成のお願いになります。」,
「指示書添付致します。」,「大,中2サイズでWHITE(生成り)
とBLACKで作成お願いします。」などと記載したメール(甲91の
1)を送信した。
(ウ) 原告は,平成25年12月4日,ミラクル社に対し,「Re:商品
発注になります:COCOバッグ発注」との件名で,「商品発注の件」
と題する書面2通(甲93の2,3,137の1,2)を添付した,「発
注書2件添付しております。」,「COC−BGT」,「COC−CV」,
「納期が確定しましたら教えて下さい。」などと記載したメール(甲9
3の1)を送信した。上記添付書面中には,「(COC−BGTビッグ
トート)1st」として品番「COC−BGT01」のカラー5色を3
500枚,品番「COC−BGT02」のカラー5色を3500枚の合
計7000枚を単価US4.8ドルで発注(甲93の2,137の1)
し,「(COC−CVキャンバストート)1st」として品番「COC
−CV01」の5色を2500枚,「COC−CV02」の5色を25
00枚の合計5000枚を単価US4.0ドルで発注(甲93の3,1
37の2)する旨の記載がある。
(エ) 原告は,平成25年12月27日,ミラクル社に対し,「付属指示:
COCOビッグトート修正」との件名で,(1)作成日「2012.12.
25」,品番「COC−BGT01,02/COC−CV01,02」,
ブランド「COCO」と記載した「付属仕様書」(甲116の2,13
9の1),(2)「2013.12.25」,「COC−BGT02」,「C
OC−CV02」,「COC−BGT01」,「COC−CV01」と
の表示の下に,「COCO」の欧文字が付されたトートバッグのデザイ\nン等を記載した画像データ(甲116の3,4,139の2,3)を添
付した,「COCO付属の指示になります。」,「混率修正致しました。」
などの記載のあるメール(甲116の1)を送信した。上記「付属仕様
書」には,「COCO」の欧文字,品番,素材等を記載したステッカー
の仕様が記載されていた。
(オ) ジーティーオ―は,原告の依頼を受けて,平成26年1月17日付\nけの証紙申請書(甲3)を作成し,ダンエンタープライズに対し提出し\nた。上記申請書には,「株式会社ダンエンタープライズの許諾により「C\nOCO」の商品化権を下記掲載の商品に使用致しますので証紙の発行を
依頼いたします。」との記載に続き,以下の記載がある。
「商品名 承認NO. 製造数量
COCOトートバック(中) 44516 1900
COCOトートバック(中) 42832 1900
COCOトートバック(大) 44515 1900
COCOトートバック(大) 42831 1900
COCOエコバッグ 43015 15000
(合計) 22600」
(カ) ジーティーオ―は,平成26年1月20日,ダンエンタープライズ\nから,甲3の証紙申請に係る証紙合計2万2600枚の納品(甲4)を\n受け,そのころ,原告に対し,上記証紙を引き渡した。
ウ(ア) 原告は,平成26年3月25日,日本PMSに対し,「※再送です
【COCO 商品のご案内】【E−COME】」との件名で,「Coc
oバッグ BIGトートNo.1」のファイル名及び「Cocoバッグ
キャンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータ(甲127の
2)等を添付した,「再送致します。現状では,圧倒的にトート・ミニ
トートの方が予約段階での付きは良い状況です。」,「早速ではござい\nますが【COCO絵型】を添付しております。何卒よろしくお願い致し
ます。」などと記載したメール(甲127の1)を送信した。
「Cocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名のPDFデ
ータ(甲127の2の1枚目)には,「Coco ビッグトートNo.
1」,「Coco ビッグトートNo.2」との表題の下に表\が記載さ
れ,表の枠内には,「STYLENO」欄に「COC−BGT01」,\n「COC−BGT02」,「納期」欄に「4月上旬頃〜随時発送予定 下
代@990−」とする「COCO」の欧文字が表示されたそれぞれカラ\nー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外にはトートバッグを\n持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標登録番号:第14
93277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)ダンエンター
プライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を独占契約した
正規国内ライセンス商品です。」との表示があった。\nまた,「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」のファイル名
のPDFデータ(甲127の2の2枚目)には,「Coco キャンバ
ストートNo.1」,「Coco キャンバストートNo.2」との表\n題の下に表が記載され,表\の枠内には,「STYLENO」欄に「CO
C−CV01」,「COC−CV02」,「納期」欄に「4月上旬頃〜
随時発送予定 下代@930−」とする「COCO」の欧文字が表示さ\nれたそれぞれカラー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外に\nはトートバッグを持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標
登録番号:第1493277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)
ダンエンタープライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を
独占契約した正規国内ライセンス商品です。」との表示があった。\n
(イ) 原告は,平成26年4月23日,埼京三喜に対し,「【COCO絵
型】【イーカム】」との件名で,「Cocoバッグ BIGトートNo.
1」のファイル名及び「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」
のファイル名のPDFデータ(甲128の2)等を添付した,「早速で
はございますが【COCO絵型】を添付しております。」,「こちらの
商品の中の,トート2アイテムに関しましては5月GW明け納期商品と
なっております。」などと記載したメール(甲128の1)を送信した。
「Cocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名のPDFデ
ータ(甲128の2の1枚目)には,「Coco ビッグトートNo.
1」,「Coco ビッグトートNo.2」との表題の下に表\が記載さ
れ,表の枠内には,「STYLENO」欄に「COC−BGT01」,\n「COC−BGT02」,「納期」欄に「5月中旬頃〜随時発送予定 下
代@1134−」とする「COCO」の欧文字が表示されたそれぞれカ\nラー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外にはトートバッグ\nを持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標登録番号:第1
493277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)ダンエンタ
ープライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を独占契約し
た正規国内ライセンス商品です。販売許諾地域:日本国内限定 商品可
能化アイテム:かばん,小物類」との表\示があった。
また,「Cocoバッグ キャンバストートNo.1」のファイル名
のPDFデータ(甲128の2の2枚目)には,「Coco キャンバ
ストートNo.1」,「Coco キャンバストートNo.2」との表\n題の下に表が記載され,表\の枠内には,「STYLENO」欄に「CO
C−CV01」,「COC−CV02」,「納期」欄に「5月中旬頃〜
随時発送予定 下代@1026」とする「COCO」の欧文字が表示さ\nれたそれぞれカラー5色のトートバッグの写真が掲載され,表の枠外に\nはトートバッグを持った女性の写真とともに,「商標:COCO 商標
登録番号:第1493277号」,「この商品は,(株)イーカムが(株)
ダンエンタープライズの所有する,商標:COCOの使用,販売許諾を
独占契約した正規国内ライセンス商品です。販売許諾地域:日本国内限
定 商品可能化アイテム:かばん,小物類」との表\示があった。
エ ミラクル社は,(1)「荷送人/輸出者」欄にミラクル社,「買い手名」欄
に原告,「積荷港」欄に「中国,上海」,「最終仕向港」欄に「日本,博
多」,「出港予定日」欄に「2014年4月19日」,「インボイスNo.
作成日」欄に「MC140417 2014年4月17日」,「L/C
No.日付」欄に「L/C:211−612−14457」,「品名の詳細」
欄に「鞄 COC−BGT01 424枚 USD2,035.20」,
「鞄 COC−BGT02 390枚 USD1,872.00」,「鞄
COC−CV01 131枚 USD524.00」,「鞄 COC−C
V02 195枚 USD780.00」などと記載された「コマーシャ
ルインボイス」(甲130の2,4),(2)「パッキングリスト詳細」欄に
「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」,
「COC−CV02」の「カラー」が「ホワイト」である旨の記載のある
「パッキングリスト」(甲130の2,4)を発行した。
原告は,平成26年4月28日,輸入者を原告,ミラクル社を輸入取引
者,積出地を上海,船卸港を博多,仕入書番号を「MC140417」と
する貨物の輸入について,博多税関支署長から,輸入許可(甲130の1,
3)を受けた。
原告は,同日,乙仲業者のSGHグローバルジャパン株式会社(以下「S
GH社」という。)に対し,輸入関税,費用等(甲130の1)を支払い,
上記貨物の引渡しを受けた。
オ 原告は,平成26年10月14日,ユニーから,「ディズニー,COC
O,スクールの発注明細を添付します。確認をお願いします。本日,伝票
発行しました。」,「10/19までに納品をお願いします。」などと記
載したメール(甲107の1)を受信した。上記メールの添付ファイル(甲
107の2)には「COCOキャンバストート COC−CV01 各色
20」,「COCOキャンバストート COC−CV02 各色20」と
の記載があった。
原告は,同月15日,ユニーに対し,上記発注の内容を確認し,商品確
保が完了した旨のメール(甲108)を送信し,同月18日,ユニーに対
し,「COCOキャンバストート COC−CV01 各色」及び「CO
COキャンバストート COC−CV02 各色」を納品(甲110の1
ないし20,111の1ないし20)した。
(2) これに対し被告は,前記(1)掲記の証拠に関し,(1)甲91の1ないし93,
107の1,2,110の1ないし20,111の1ないし20,112,
127の1,2,128の1,2等は,原告が所持し,その提出も極めて容
易であったにもかかわらず,4年の審理がされた本件審判の段階では提出さ
れずに,本件訴訟に至って初めて提出されたのは極めて不自然であるから,
そもそも信用することができない,(2)甲91の1,116の1,117の1,
127の1,128の1の各メール等に添付されていたファイルであるとし
て,当該メールと合わせて提出された書面(甲91の2,3,116の2な
いし4,117の2,127の2,128の2等)について,実際に当該メ
ールに添付されたファイルの中身と同一のものであることについての立証が
ない,(3)原告提出のUSBメモリ(甲148)に保存されたメールデータに
ついては,メールの作成日について,インターネットヘッダーの「Received
from」の表示時刻は容易に変更可能\であり,当該変更を反映する形で,メー
ル自体の送受信日時も同様に変更されることになるから,上記メールデータ
によっても,各メールが表示されたとおりの日時に送受信されたとは限らな\nい,(4)甲148に保存された甲127の1,128の1のメールデータのイ
ンターネットヘッダーには「Received from」の項目が存在しておらず,この
ことは,当該メールが実際に送信された形跡が存在しないことを意味するな
どと主張する。
しかしながら,上記(1)の点については,本件審判の経過及び本件訴訟の審
理経過に照らすと,原告は,本件審決を踏まえて,本件訴訟において,本件
審判段階では主張していなかった本件商標の使用の事実を新たに主張し又は
主張を補充し,新たな証拠を提出したものと認められ,被告主張の上記甲各
号が本件審判段階で提出されていなかったことから直ちにその信用性がない
ということはできない。
次に,上記(2)の点については,甲89ないし91,93,107,116,
117,120ないし122,124,126ないし128,132(いず
れも枝番を含む。)の各メールのメールデータを保存したUSBメモリ(甲
148)によれば,印刷された各メールの本文(甲89ないし91,93,
107,116,117,120ないし122,124,126ないし12
8,132の各1)にそれぞれの添付ファイルを印刷した書面(甲89の2,
3,90の2,3,91の2,3,93の2,3,107の2,116の2
ないし4,117の2,120の2,121の2,122の2,124の2,
3,126の2ないし5,127の2,128の2,132の2)が添付さ
れていた事実を確認することができるから,上記(2)の点は理由がない。
さらに,上記(3)の点については,アプリケーションを用いて電子メールデ
ータ自体を編集することで,各メールの送受信日時を変更することが可能で\nあるとしても(乙37,38),甲148から,上記のとおり各メールに記
載された添付ファイルが添付されていることを確認することができ,これら
のメールが送受信されたことが認められることに照らすと,原告において各
メールの送受信日時のみの変更を行ったものと認めることは困難である。
また,上記(4)の点については,「Received from」の項目は,メールを受信
した際の項目であるから,原告が送信した甲127の1,128の1のメー
ルに上記項目が存在しないことは何ら不自然なことではない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
他に前記(1)の認定を左右するに足りる証拠はない。
2 原告による本件4商品の輸入及び販売の事実の有無等について
(1)ア 前記1の認定事実を総合すれば,(1)原告は,平成25年9月30日,ダ
ンエンタープライズとの間で,期間同年10月1日から3年間,使用許諾
地域日本国内の約定で,ダンエンタープライズが原告に対し,ダンエンタ
ープライズが有する本件商標権の使用権を独占的に許諾し,原告が本件商
標を付した「かばん・小物類」の商品を製造及び販売することを許諾する
旨の本件使用許諾契約(甲24)を締結した後,同月29日,韓国のミラ
クル社に対し,「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「C
OC−CV01」,「COC−CV02」との表示の下に,「COCO」\nの欧文字が付されたトートバッグのデザイン及び寸法等を記載した画像デ
ータ添付したメール(甲91の1ないし3)で,「COCOバッグ」のサ
ンプル品の作成を依頼したこと,(2)原告は,同年12月4日,ミラクル社
に対し,品番「COC−BGT01」のカラー5色を3500枚,品番「C
OC−BGT02」のカラー5色を3500枚,品番「COC−CV01」
のカラー5色を2500枚,「COC−CV02」のカラー5色を250
0枚の合計1万2000枚のトートバッグ(「COCOバッグ」)をメー
ル(甲93の1ないし3)で発注し,同月27日,ミラクル社に対し,「付
属仕様書」と「COCO」の欧文字が付されたトートバッグのデザイン等
を記載した画像データを添付したメール(甲116の1ないし4)で,品
番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV0
1」及び「COC−CV02」の仕様,デザイン等について指示をしたこ
と,(3)原告は,平成26年3月25日,日本PMSに対し,「Cocoバ
ッグ BIGトートNo.1」のファイル名及び「Cocoバッグ キャ
ンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータを添付したメール(甲
127の1,2)で,品番「COC−BGT01」,「COC−BGT0
2」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」のトートバッグの
商品の案内をし,また,原告は,同年4月23日,埼京三喜に対し,「C
ocoバッグ BIGトートNo.1」のファイル名及び「Cocoバッ
グ キャンバストートNo.1」のファイル名のPDFデータを添付した
メール(甲128の1,2)で品番「COC−BGT01」,「COC−
BGT02」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」のトート
バッグの商品の案内をしたこと,(4)上記(3)の各PDFデータには,「CO
CO」の欧文字がそれぞれ表示されたカラー5色のトートバッグの写真が\n掲載され,そのうちの一つには,別紙2の「COCO」の欧文字の標章が
付されていたこと,(5)ミラクル社は,「荷送人/輸出者」欄にミラクル社,
「買い手名」欄に原告,「積荷港」欄に「中国,上海」,「最終仕向港」
欄に「日本,博多」,「出港予定日」欄に「2014年4月19日」,「イ\nンボイスNo.作成日」欄に「MC140417 2014年4月17日」,
「品名の詳細」欄に「鞄 COC−BGT01 424枚 USD2,0
35.20」,「鞄 COC−BGT02 390枚 USD1,872.
00」,「鞄 COC−CV01 131枚 USD524.00」,「鞄
COC−CV02 195枚 USD780.00」などと記載された「コ
マーシャルインボイス」(甲130の2,4)及び「COC−BGT01」,
「COC−BGT02」,「COC−CV01」,「COC−CV02」
の「カラー」が「ホワイト」である旨の記載のある「パッキングリスト」
(甲130の2,4)を発行した後,原告は,平成26年4月28日,輸
入者を原告,ミラクル社を輸入取引者,積出地を上海,船卸港を博多,仕
入書番号を「MC140417」とする貨物の輸入について,博多税関支
署長から,輸入許可を受け,同日,上記貨物の引渡しを受けたこと,(6)原
告が輸入許可を受けた品番「COC−BGT01」,「COC−BGT0
2」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」の「ホワイト」の
「鞄」は,上記(3)の各PDFデータに掲載された「COCO」の欧文字を
付した白色のトートバッグの画像の商品と同一の商品であることが認めら
れる。
以上によれば,原告は,平成26年4月28日,ミラクル社から,「C
OCO」の欧文字からなる標章(別紙2)を付したトートバッグである本
件4商品(品番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「C
OC−CV01」及び「COC−CV02」)を輸入したことが認められ
る。
イ これに対し被告は,(1)「ミラクルチームコーポレーション(英語表記:\nMIRACLE. TEAM CORPORATION)」なる会社は,イン
ターネット上で検索しても関連する情報を確認することができず(乙10,
11),ミラクル社が発行する輸入関係資料に同社の住所として表示され\nた住所(「(省略)」)も実在しないこと(乙12),原告は,「Whi
te(生成り)」及び「Black」の2色のサンプル品を受領しただけ
で,その直後に同サンプル品とは全く色合いの異なる商品6000枚を含
む合計1万2000枚の本件4商品をミラクル社に発注する取引を行った
というのは経営判断として明らかに合理性を欠いていることからすると,
そもそもミラクル社の存在自体が疑わしく,原告がミラクル社を通じて中
国の工場において本件4商品を製造した事実は存在しないから,原告が本
件4商品をミラクル社から輸入した事実も存在しない,(2)原告がミラクル
社から輸入したとする「COMMERCIAL INVOICE」(イン
ボイス)及び「PACKING LIST」(梱包明細書)記載の「CO
C−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV01」及び
「COC−CV02」の商品が「COCO」の欧文字からなる標章(本件
使用商標)を付した本件4商品を指すことを示す証拠はなく,一方で,原
告が「COCO」ないし「ココ」との名称のキャラクター等を用いた「キ
ャンバストート」等を取り扱っていた可能性も十\分にあり,このような商
品について,「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「CO
C−CV01」及び「COC−CV02」との品番が付けられていたとし
ても何ら不思議ではないなどとして,原告がミラクル社から本件使用商標
を付した本件4商品を輸入した事実は存在しない旨主張する。
しかしながら,上記(1)の点については,原告は,平成26年4月28日,
輸入者を原告,ミラクル社を輸入取引者,積出地を上海,船卸港を博多,
仕入書番号を「MC140417」とする貨物の輸入について,博多税関
支署長から,輸入許可を受け,同日,上記貨物の引渡しを受けたこと(前
記1(1)エ),上記輸入許可に係る輸入許可通知書(甲130の3)記載の
ミラクル社の「住所」は,韓国の税務署長作成の2013年4月25日付
け事業者登録証(甲124の2,3)記載のミラクル社の「事業場所所在
地」と一致することに照らすと,ミラクル社は実在する事業者であるもの
と認められ,被告が主張するようにインターネット上の検索サイトで「M
IRACLE.TEAM CORPORATION」を検索してもミラク
ル社の情報が表示されず,ミラクル社が発行する輸入関係資料に同社の住\n所として表示された住所が表\示されなかったとしても,そのことから直ち
にミラクル社が存在(実在)しないということはできないし,ひいては原
告が本件4商品をミラクル社から輸入した事実も存在しないということは
できない。また,原告が「White(生成り)」及び「Black」の
2色のサンプル品を確認しただけで,他の色の商品を含む本件4商品の発
注を行ったことが特段不合理であるということはできない。
次に,上記(2)の点については,前記ア認定のとおり,原告が輸入した品
番「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV0
1」及び「COC−CV02」の「ホワイト」の「鞄」は,甲127の2,
128の2の各PDFデータに掲載された「COCO」の欧文字を付した
白色のトートバッグの画像の商品と同一の商品であることが認められる。
また,原告が上記輸入の当時,上記画像の商品とは異なる他の商品につい
て,「COC−BGT01」,「COC−BGT02」,「COC−CV
01」及び「COC−CV02」の品番を付していたことを認めるに足り
る証拠はない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
(2)ア 次に,前記1の認定事実及び前記(1)アの認定事実を総合すれば,(1)原
告は,平成26年10月14日,ユニーに対し,「COC−CV01」及
び「COC−CV02」の商品を販売し,同月18日,これを納品したこ
と,(2)上記「COC−CV01」及び「COC−CV02」の商品は,甲
127の2,128の2のPDFデータに掲載された「COCO」の欧文
字を付した各トートバッグの画像の商品と同一の商品であることが認めら
れる。
上記認定事実によれば,原告は,平成26年10月14日,ユニーに対
し,「COCO」の欧文字からなる標章(別紙2)を付した「COC−C
V01」及び「COC−CV02」の商品を販売したことが認められる。
イ これに対し被告は,(1)原告がユニーに納品した品番「COC−CV01」
及び「COC−CV02」の商品にどのような商標が付されていたかは不
明である,(2)原告のユニーあての請求書は,伝票番号や明細事項が物品受
領書及び納品書(控)と一致しない上,上記請求書記載の請求額及び支払
明細書の合計金額がいずれも異なることからすると,ユニーがそのような
取引をしたとは考えられない,(3)原告ホームページの平成27年(201
5年)9月7日時点の「ブランド紹介」ページ(乙18)及び同月8日時
点での「お知らせ」ページ(乙19)には,本件商標に係るブランドの掲
載はないことに照らすと,要証期間において,原告が本件商標に係るブラ
ンドを展開していなかったことが強く推認されるなどとして,原告がユニ
ーに対し本件使用商標を付した「COC−CV01」及び「COC−CV
02」を販売した事実は存在しない旨主張する。
しかしながら,上記(1)の点については,前記ア認定のとおり,原告が平
成26年10月18日にユニーに納品した「COC−CV01」及び「C
OC−CV02」の商品は,甲127の2,128の2のPDFデータに
掲載された「COCO」の欧文字を付した各トートバッグの画像の商品と
同一の商品であることが認められる。
また,被告主張の上記(2)及び(3)の事情があったとしても,上記認定を左
右するものではない。
したがって,被告の上記主張は理由がない。
(3) 前記(1)及び(2)の認定事実によれば,原告は,平成26年4月28日,ミ
ラクル社から,「COCO」の欧文字からなる標章(別紙2)を付したトー
トバッグである本件4商品(品番「COC−BGT01」,「COC−BG
T02」,「COC−CV01」及び「COC−CV02」)を輸入したこ
と,原告は,同年10月14日,ユニーに対し,本件4商品のうち,「CO
C−CV01」及び「COC−CV02」の商品を販売したことが認められ
る。
そして,原告による「COCO」の欧文字からなる標章(別紙2)を付し
た本件4商品の輸入及び本件4商品のうちの「COC−CV01」及び「C
OC−CV02」の商品の販売は,商標法2条3項1号の「商品に標章を付
したもの」の輸入及び譲渡に該当するものと認められる。
また,本件4商品に付された「COCO」の欧文字からなる標章(別紙2
参照)は,「COCO」の欧文字から構成され,本件商標(別紙1)とは書\n体が異なるが,本件商標と社会通念上同一の商標であることが認められる。
そうすると,原告は,本件商標の通常使用権者であった原告が,要証期間
内に,日本国内において,本件審判請求に係る指定商品である第18類「か
ばん」を輸入及び販売することによって,本件商標と社会通念上同一の商標
の使用をしていることを証明したものと認められる。
したがって,原告主張の取消事由は理由がある。
◆判決本文
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2020.01.24
平成31(行ケ)10036 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和元年9月18日 知的財産高等裁判所
知財高裁3部は、不使用とした審決を取り消しました。
ア まず,上記各書証の成立の真正についてみると,原本で提出されている
もの(甲62から64まで,66,71)と写しが原本として提出されて
いるもの(甲21,29から38まで,40,43,45,49,51,
52,65,67から70まで)とが存在する。そして,信用性の点につ
き別途の検討を要するとしても,その記載内容や外観,この点に関する本
件審判手続の証人尋問におけるKの供述内容(甲58)によれば,当該各
書証の名義人として表示された者の意思に基づいて当該各書証が作成され\nたこと,すなわち各書証の成立の真正(写しを原本として提出する書証に
ついてはその原本の存在も含む。)が認められる。
イ これに対し,被告は上記のとおり各書証の成立の真正を争うものの,被
告自身が名義人であるなど,被告がその作成過程を認識し得る書証は含ま
れておらず,当該各書証に名義人として表示された特定の作成者の意思に\n基づかずに当該各書証が作成されたことについて具体的な事実関係を主張
するものではない。むしろ,被告の主張は,各書証の作成名義ではなく,
その作成時期や記載内容の信用性を争うものである(前記第4の2(3)参
照)。そうすると,当該各書証の成立の真正に関する被告の主張は採用で
きず,前記アの通り,前記(1)にみた各書証の成立の真正が認められる。
(3)次に,書証の信用性について検討する。
ア 前提として,各書証の作成経過についてみると,Kは,本件審判手続の
証人尋問(甲58)において,建設会社の従業員を辞めて事業を始める際
に,原告に相談したところ,原告から本件商標の使用を許されたため,平
成28年1月末頃から,「アンドホーム」の名称で,客から注文を受けて
建物の設計と建築をする住宅の事業を始めたこと,「アンドホーム」の名
称で,少なくとも3件の契約をしたこと,その3件の契約は,Kが,名刺
を渡して自己紹介をした上で,その注文者らと直接やりとりをしながら,
何度も資金計画表や建築図面等を修正して注文者らに提案し,最終的に契\n約書を交わして契約を締結したこと,上記建築図面は,K自らがラフな図
面を描いた上で他の設計士に依頼して作ってもらったこと,上記資金計画
表は全てKが作成したこと,資金計画表\の「建物の設計申請費用」とは,\n建築図面を作って市の検査に出すための費用であること,同表に記載され\nている「地盤改良工事費用」は,地盤調査費用及びその調査の結果土地が
軟らかいことが判明した場合に必要となる改良工事の費用が計上されてい
ること,資金計画表の「建物工事費」及び消費税と,「建物付帯工事」費\n用の合計額から,先にもらっている「建物契約印紙費用」を引いて,「ア
ンドホーム契約値引き(役員承認)」を引くと,契約書の請負代金額とな
ること(なお,建物印紙の金額を足すかのような供述をするが,文脈に照
らし言い間違いであることは明らかである。),地盤調査は東昇技建に依
頼して行ってもらったこと,平成28年6月9日に「アンドホーム」から
「シンプルハウス」に名前を変えて法人化したこと,契約をした3件につ
いてはいずれも建築工事を完了したことを供述する。
また,Kは,上記尋問において,建築確認申請書については,「アンド\nホーム」で出したか「シンプルハウス」で出したかは今手控えがないので
分からないとしつつも,平成28年6月9日以降,銀行との関係では,
「アンドホーム」で出した事前審査関係書類をシンプルハウス名義のもの
に差し替えるなどしたが,役所の関係の申請等は現場監督がしていたので\n分からないなどという趣旨の供述をする。
そして,Kは,陳述書(甲19,50)においても,概ね同趣旨の供述
をしている。
イ 工事請負契約1に係る確認済証及びその添付書類一式(甲59)及び同
契約に係る建築計画概要書(甲60)は,行政官庁に提出され,行政官庁
において保管されていた文書の写しであるから,当該行政官庁に対して行
った手続の内容に関する証拠としては信用性が高いといえるところ,これ
によれば,平成28年6月9日の建築確認申請の際にKが営業所名を「ア\nンドホーム」として手続をし,同月15日に営業所名を「株式会社シンプ
ルハウス」に変更する手続をしたことが認められる。かかる事実は,前記
アのKの供述内容のうち,Kが,平成28年6月9日に「アンドホーム」
から「シンプルハウス」に名前を変えて法人化したが,それまでの間は
「アンドホーム」の名称で建物の建築等の事業を行っていたという,最も
重要な部分を裏付けるものである。
そうすると,前記アのKの供述内容のうち,「アンドホーム」の名称で
の契約締結やその契約において提供した役務等に係る点については,上記
のとおり,重要な点において裏付けが存する上,その供述内容全体も,合
理的なものであって不自然な点は存しないから,基本的には信用できると
いうべきである。
そして,本件では,工事請負契約1に関する契約書の写し(甲70)及
び工事請負契約3に関する契約書の原本(甲71)が提出されているとこ
ろ,これらの各契約書の記載,特に注文者や建築時期等の記載は,上記工
事請負契約1に関する確認済証及び建築計画概要書の記載並びに工事請負
契約3に係る建物の登記事項証明書(甲56)及びその底地である土地の
登記事項証明書(甲55)といった各種公的書類の記載と合致しており,
少なくともこれらの契約が存在することが裏付けられている。
また,工事請負契約1及び3に関しては,契約の締結経過や役務の内容
に関する書証として,前記(1)ア及びウにみた各書証も提出されているとこ
ろ,その作成時期及び記載内容は,上記契約書やKの供述と概ね合致して
いる(例えば,工事請負契約書1及び3の工事請負代金についてみると,
工事請負契約書1の代金は,甲38記載の建物工事費にKの供述する計算
方法を適用したものと合致し,また,工事請負契約書3の代金も,同様の
計算方法を適用することにより,甲52の代金と概ね合致する。契約日に
近接する資金計画表は提出されていないが,これをもって本件において信\n用性が損なわれるものではない。また,工事請負契約3に係る地盤調査報
告書によれば,地盤改良工事は不要とされるところ,かかる地盤調査後に
作成された資金計画表(甲52)においても,なお地盤改良工事費用とし\nて7万9920円が計上されていることは,同書面における地盤改良工事
費用には,地盤調査の費用が含まれていることを裏付けるといえる。)。
注文者1及び3の陳述書(甲62,66)における陳述内容もこれに沿う
ものである。
なお,これらの各書証にはマスキングされている箇所も存在するもの
の,施工面積や敷地面積,把握できる建築場所等の記載を対照すると,各
資金計画表(甲30,31,33から35まで,38,43,45),各\n建築図面(甲29,32,36,37,40),保証書(甲64)が工事
請負契約1に関する書面であり,各資金計画表(甲51,52),保証書\n(甲69)及び地盤調査報告書(甲49)が工事請負契約3に関する書面
であると認められる。
以上によれば,少なくとも,工事請負契約1及び3に関する各工事請負
契約書(甲70,71),各資金計画表(甲30,31,33から35,\n38,43,45,51,52。以下,全てを指して「本件資金計画表」\nという。),各建築図面(甲29,32,36,37,40),各保証書
(甲64,69)及び地盤調査報告書(甲49)については,Kの供述又
は陳述(甲19,49,58)と相まってその信用性が認められる。ま
た,注文者らの陳述書(甲62,66)についても,Kの供述及び陳述並
びに上記各書証と整合するものであるから,信用性が認められる。
(4) 被告の主張
ア 被告は,資金計画表や建築図面の注文者又は宛先がマスキングされてい\nることから証拠としての関連性がないと主張するが,工事請負契約1及び
3に関するマスキングされた各書証が,これらの契約に関する書面である
と認められることは,前記(3)イで説示したとおりである。また,被告は,
写しが原本として提出されていることも問題とするが,写しであっても成
立の真正及び信用性が認められることは,前記(2)ア及び(3)イで説示したと
おりである。
イ 被告は,資金計画表に書き込みがないことをもってねつ造であると主張\nするが,打ち合わせにおいて同表に書き込むことが打ち合わせの内容を記\n録する唯一の方法であるとはいえず,本件事情の下で,同表の信用性に疑\nいを抱かせるものではない。
ウ 被告は,原告が,当初,注文者の氏名等をマスキングしていたことをも
って原告の提出する書証のねつ造を主張するが,注文者らと原告とは,K
を介した希薄な関係しかないことに照らすと,原告が注文者らの個人情報
の開示を躊躇することも理解できる。本件においては,最終的に工事請負
契約1及び3についてマスキングを外した書証が提出され,各種公的書類
の記載等に照らし,各書証の成立の真正及び信用性が認められることは,
既に説示したとおりである。
エ 被告は,Kが要証期間に建築事務所として登録していなかったこと,K
が建築工事中の看板に表示された標章についての供述を変遷させたこと,\nKが設計に関する供述を変遷させたことをもって,Kの本件審判手続の証
人尋問における供述及び陳述書の信用性を争う。しかしながら,Kは本件
審判手続において最初に提出した陳述書(甲19)の中で,当初から,設
計については一緒にやっている設計士がいること及び平成28年6月9日
になされた建築確認の申請の段階までは「アンドホーム」名で事業を行な\nっていたことを述べており,被告が指摘する証人尋問における供述の変遷
は,尋問におけるやりとりの中でそれを具体的に述べる際に,記憶の混乱
等が生じたものに過ぎないといえるから,Kの供述の信用性に疑いを生じ
させるものとまではいえない。また,協力する設計士がいたことに照らす
と,K自身が建築事務所として登録していなかったことは,Kが設計に関
与したとの供述の信用性に疑いを生じさせるものではない。
オ 被告は,原告提出の甲62から甲69の提出時期が遅いことなどをもっ
て,提出の直前に作成されたものであるなどと主張する。書証の早期提出
が望ましいことはもちろんであるが,原告と注文者1及び3との関係が希
薄であることは前記のとおりであり,本件審決で本件商標が取り消された
ことを受けて改めて協力を仰ぐなどしたとしても殊更に不合理であるとは
言い難い。なお,本件では,本件審判手続において提出されたKの陳述書
(甲19)においても言及されていた確認済証及びその付属書類一式が,
本件訴訟において甲59として原本で提出されて取り調べられており,そ
の記載内容が,Kの供述の最も重要な部分を裏付けることは前記のとおり
である。
カ 各書証の信用性を争うその他の主張も,信用性判断に関する上記認定を
左右するものではない。
したがって,各書証の信用性に関する被告の主張はいずれも採用でき
ない。
(5) 以上の次第で,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めら
れる。
ア Kは,原告から本件商標の使用許諾を受け,平成28年1月頃から「ア
ンドホーム」との名称を用いて,現場監督ができるもう一人の者ととも
に,建築等の事業を開始した。(甲19,58)
イ Kは,平成28年4月7日,注文者1との間で,建物の建築工事を内容
とする工事請負契約1を締結し,同年9月20日頃,建物を完成させた。
かかる契約の締結の際,Kは,注文者1との間で,「アンドホーム」を請
負業者とする工事請負契約書1(請負代金額合計1302万3192円)
を作成して,注文者1に交付した。(甲58,60,70)
ウ また,Kは,工事請負契約1に関して,土地を探すところから協力し,
少なくとも平成28年3月2日頃から同年5月14日頃にかけて,建物の
デザインや設計についても注文者1と打ち合わせを複数回にわたって行
い,金銭面を含めて注文者1の要望を建築工事に反映させた。かかる打ち
合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が付された建築\n費用合計代金(3300万円台から3600万円台の金額である。)及び
その内訳等を示す資金計画表(甲30,31,33から35,38,4\n3,45)や,建物の平面図や立面図が記載された建築図面を,打ち合わ
せを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者1に示すなどし
た。
上記資金計画表のうち,作成日を平成28年3月23日以降とするもの\nについては,その右下に「◎土地契約時は土地手付け現金100万円+印
紙代…をご準備下さい。」,「◎建物契約時は建物手付け現金10万円+
印紙代1万円…をご持参で当社にお越し下さい。」,「◎土地決済時に建
物着手金・上棟金として,1000万円を当社にお振り込み頂きま
す。」,「◎最終の建物お引き渡し時に,残金を現金もしくはお振り込み
頂きます。」などと記載されている。
(甲29から38,40,43,45,58,62)
エ Kは,平成28年4月24日,注文者3との間で,建物の建築工事を内
容とする工事請負契約3を締結し,同年10月頃,建物を完成させた。か
かる契約の締結の際,Kと注文者3は,「アンドホーム」を請負業者とす
る工事請負契約書3(請負代金額合計1241万3270円)を作成して
注文者3に交付した。(甲56,58,71)
オ また,Kは,工事請負契約3に関し,ある程度土地が決まっている段階
で関与し始めて,少なくとも平成28年3月30日頃から同年5月29日
頃にかけて,建物のデザインや設計についても注文者3と打ち合わせを複
数回にわたって行い,金銭面を含めて注文者3の要望を建築工事に反映さ
せた。
かかる打ち合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が\n付された建築費用合計代金(2600万円台から2700万円台の金額で
ある。)及びその内訳等を示す資金計画表(甲51,52)や建築図面\nを,打ち合わせを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者3に
示すなどした。
(甲51,52,56,58,66,71)
カ Kは,工事請負契約1及び3に関して,東昇技建に対し,地盤の調査を
依頼して,これを行わせた上で,その調査結果を注文者1及び3に説明し
た。(甲19,50,58,62,64,66,69)
キ Kは,平成28年6月9日頃に株式会社シンプルハウスを設立し,「ア
ンドホーム」との名称の使用をやめて,同月15日には工事契約1にかか
る建築確認申請の工事施工者を,同社へと変更した。(甲19,58,5\n9,60)
2 取消事由2(Kによる本件商標の使用についての判断の誤り)について
原告は,Kが,前記1(5)カのとおり東昇技建に依頼して地盤の調査を行い,
同ウ及びオ記載の本件資金計画表を注文者1及び3に交付したことが商標法2\n条3項8号に該当し,「地質の調査」の役務について,本件商標を使用した
(商標法50条2項)と主張するので,この点について検討する。
(1) まず,Kが,取消対象役務のひとつである「地質の調査」を提供したか否
かについてみると,Kは,前記1(5)カのとおり,工事請負契約1及び3に関
して,東昇技建に依頼して地盤調査を行うなどしている。
そして,前記1(5)イ及びエのとおり,Kは,「アンドホーム」の名称にて
工事請負契約1及び3を締結しているところ,これらの契約の前後に注文者
らに対して示した本件資金計画表において地盤改良工事費用の中に地盤調査\n費用が含まれており(前記1(3)イ参照),当該費用を含めた建築費用合計代
金の全額をKに支払うべきこととされて,現実に注文者らに対応したのは主
としてKであったことなどに照らすと,Kは,工事請負契約1及び3の締結
とともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものと
認められる。
そうすると,Kが東昇技建に依頼して行った地盤調査は,Kが注文者1及
び3から請け負った債務の履行としてされたものであるといえるから,Kが
「地質の調査」を提供したと認められる。
(2)次に,商標法2条3項8号の該当性についてみる。
本件では,Kが「地質の調査」の役務を提供することは,本件資金計画表\nの「地盤改良工事費用」「地盤調査の結果により工事費用が変動いたしま
す。」などとの記載に表れており,本件資金計画表\は,上記役務に対応して
作成された見積書としての書面であるといえるから,上記役務に関する「取
引書類」に当たる。そうすると,前記1(5)ウ及びオのとおり,Kが,本件資
金計画表に,本件商標を付して,その作成日付頃(平成28年3月2日頃か\nら同年5月29日頃),それぞれ注文者1及び3に交付した行為は,商標法
2条3項8号所定の使用に該当する。
(3)これに対し,被告は,Kが本件商標を使用して工事請負契約1及び3を請
け負った後,実際に建築工事を開始した時点では,「シンプルハウス」へと
屋号を変更していたことなどをもって,取消対象役務を「アンドホーム」の
名称にて提供していないと主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,Kは,工事請負契約1及び3の締結と
ともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものであ
るところ,Kは,これらの契約に関して,平成28年3月2日頃から同年5
月29日頃にかけて,本件資金計画表を,注文者1及び3に交付しているか\nら,当該交付の時点で「アンドホーム」との標章に対する業務上の信用が発
生したといえる。その後,Kが,その事業について「シンプルハウス」との
名称に変更したとしても,かかる信用が,直ちに保護に値しなくなるもので
はない。また,少なくとも工事請負契約3に係る地盤調査は,屋号変更前で
ある同年5月25日に行われたことが明らかである。
したがって,Kは,「アンドホーム」との標章を取消対象役務のひとつで
ある「地質の調査」について使用したといえる。
(4) また,被告は,Kによる本件商標の使用が名目的な使用であると主張す
る。しかしながら,不使用取消に言及する被告から原告に対する連絡は平成
29年3月24日付けであって,Kが「アンドホーム」との標章を使用した
平成28年1月から同年6月頃までの期間よりも相当遅い時期であること
(甲15)や,前記認定のKによる本件商標の使用態様に照らすと,Kによ
る本件商標の使用が名目的な使用であるとまでは認められず,被告の主張は
採用できない。
(5)したがって,通常使用権者であるKが,要証期間内である平成28年3月
2日頃から同年5月29日頃にかけて,日本国内において,取消対象役務の
ひとつである「地質の調査」について,本件商標を使用した(商標法50条
2項)と認められる。
◆判決本文
関連事件は下記です。
◆平成31(行ケ)1003
◆平成31(行ケ)10034
◆平成31(行ケ)10033
関連カテゴリー
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2019.10. 2
平成31(行ケ)10036 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和元年9月18日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判にて不使用と認定されましたが、知財高裁3部は、これを取り消しました。
(5)以上の次第で,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア Kは,原告から本件商標の使用許諾を受け,平成28年1月頃から「アンドホーム」との名称を用いて,現場監督ができるもう一人の者とともに,建築等の事業を開始した。(甲19,58)
イ Kは,平成28年4月7日,注文者1との間で,建物の建築工事を内容
とする工事請負契約1を締結し,同年9月20日頃,建物を完成させた。
かかる契約の締結の際,Kは,注文者1との間で,「アンドホーム」を請
負業者とする工事請負契約書1(請負代金額合計1302万3192円)
を作成して,注文者1に交付した。(甲58,60,70)
ウ また,Kは,工事請負契約1に関して,土地を探すところから協力し,
少なくとも平成28年3月2日頃から同年5月14日頃にかけて,建物の
デザインや設計についても注文者1と打ち合わせを複数回にわたって行
い,金銭面を含めて注文者1の要望を建築工事に反映させた。かかる打ち
合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が付された建築\n費用合計代金(3300万円台から3600万円台の金額である。)及び
その内訳等を示す資金計画表(甲30,31,33から35,38,4\n3,45)や,建物の平面図や立面図が記載された建築図面を,打ち合わ
せを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者1に示すなどし
た。上記資金計画表のうち,作成日を平成28年3月23日以降とするもの\nについては,その右下に「◎土地契約時は土地手付け現金100万円+印
紙代…をご準備下さい。」,「◎建物契約時は建物手付け現金10万円+
印紙代1万円…をご持参で当社にお越し下さい。」,「◎土地決済時に建
物着手金・上棟金として,1000万円を当社にお振り込み頂きま
す。」,「◎最終の建物お引き渡し時に,残金を現金もしくはお振り込み
頂きます。」などと記載されている。
(甲29から38,40,43,45,58,62)
エ Kは,平成28年4月24日,注文者3との間で,建物の建築工事を内
容とする工事請負契約3を締結し,同年10月頃,建物を完成させた。か
かる契約の締結の際,Kと注文者3は,「アンドホーム」を請負業者とす
る工事請負契約書3(請負代金額合計1241万3270円)を作成して
注文者3に交付した。(甲56,58,71)
オ また,Kは,工事請負契約3に関し,ある程度土地が決まっている段階
で関与し始めて,少なくとも平成28年3月30日頃から同年5月29日
頃にかけて,建物のデザインや設計についても注文者3と打ち合わせを複
数回にわたって行い,金銭面を含めて注文者3の要望を建築工事に反映さ
せた。
かかる打ち合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が\n付された建築費用合計代金(2600万円台から2700万円台の金額で
ある。)及びその内訳等を示す資金計画表(甲51,52)や建築図面\nを,打ち合わせを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者3に
示すなどした。
(甲51,52,56,58,66,71)
カ Kは,工事請負契約1及び3に関して,東昇技建に対し,地盤の調査を
依頼して,これを行わせた上で,その調査結果を注文者1及び3に説明し
た。(甲19,50,58,62,64,66,69)
キ Kは,平成28年6月9日頃に株式会社シンプルハウスを設立し,「ア
ンドホーム」との名称の使用をやめて,同月15日には工事契約1にかか
る建築確認申請の工事施工者を,同社へと変更した。(甲19,58,5\n9,60)
2 取消事由2(Kによる本件商標の使用についての判断の誤り)について
原告は,Kが,前記1(5)カのとおり東昇技建に依頼して地盤の調査を行い,
同ウ及びオ記載の本件資金計画表を注文者1及び3に交付したことが商標法2\n条3項8号に該当し,「地質の調査」の役務について,本件商標を使用した
(商標法50条2項)と主張するので,この点について検討する。
(1) まず,Kが,取消対象役務のひとつである「地質の調査」を提供したか否
かについてみると,Kは,前記1(5)カのとおり,工事請負契約1及び3に関
して,東昇技建に依頼して地盤調査を行うなどしている。
そして,前記1(5)イ及びエのとおり,Kは,「アンドホーム」の名称にて
工事請負契約1及び3を締結しているところ,これらの契約の前後に注文者
らに対して示した本件資金計画表において地盤改良工事費用の中に地盤調査\n費用が含まれており(前記1(3)イ参照),当該費用を含めた建築費用合計代
金の全額をKに支払うべきこととされて,現実に注文者らに対応したのは主
としてKであったことなどに照らすと,Kは,工事請負契約1及び3の締結
とともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものと
認められる。
そうすると,Kが東昇技建に依頼して行った地盤調査は,Kが注文者1及
び3から請け負った債務の履行としてされたものであるといえるから,Kが
「地質の調査」を提供したと認められる。
(2) 次に,商標法2条3項8号の該当性についてみる。
本件では,Kが「地質の調査」の役務を提供することは,本件資金計画表\nの「地盤改良工事費用」「地盤調査の結果により工事費用が変動いたしま
す。」などとの記載に表れており,本件資金計画表\は,上記役務に対応して
作成された見積書としての書面であるといえるから,上記役務に関する「取
引書類」に当たる。そうすると,前記1⑸ウ及びオのとおり,Kが,本件資
金計画表に,本件商標を付して,その作成日付頃(平成28年3月2日頃か\nら同年5月29日頃),それぞれ注文者1及び3に交付した行為は,商標法
2条3項8号所定の使用に該当する。
(3)これに対し,被告は,Kが本件商標を使用して工事請負契約1及び3を請
け負った後,実際に建築工事を開始した時点では,「シンプルハウス」へと
屋号を変更していたことなどをもって,取消対象役務を「アンドホーム」の
名称にて提供していないと主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,Kは,工事請負契約1及び3の締結と
ともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものであ
るところ,Kは,これらの契約に関して,平成28年3月2日頃から同年5
月29日頃にかけて,本件資金計画表を,注文者1及び3に交付しているか\nら,当該交付の時点で「アンドホーム」との標章に対する業務上の信用が発
生したといえる。その後,Kが,その事業について「シンプルハウス」との
名称に変更したとしても,かかる信用が,直ちに保護に値しなくなるもので
はない。また,少なくとも工事請負契約3に係る地盤調査は,屋号変更前で
ある同年5月25日に行われたことが明らかである。
したがって,Kは,「アンドホーム」との標章を取消対象役務のひとつで
ある「地質の調査」について使用したといえる。
(4) また,被告は,Kによる本件商標の使用が名目的な使用であると主張す
る。しかしながら,不使用取消に言及する被告から原告に対する連絡は平成
29年3月24日付けであって,Kが「アンドホーム」との標章を使用した
平成28年1月から同年6月頃までの期間よりも相当遅い時期であること
(甲15)や,前記認定のKによる本件商標の使用態様に照らすと,Kによ
る本件商標の使用が名目的な使用であるとまでは認められず,被告の主張は
採用できない。
◆判決本文
関連事件です。
◆平成31(行ケ)10033
◆平成31(行ケ)10034
◆平成31(行ケ)10035
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2019.07.21
平成30(行ケ)10179 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和元年7月11日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判が請求され、商標権者は、カタログギフトのカタログを提出しました。特許庁、裁判所とも、35類の小売業における使用と認めました。
前記1によると,被告のカタログオーダーギフト事業においては,「受取手」
に被告が発行したギフトカタログが送られ,「受取手」は被告に同ギフトカタログに
掲載された各種の商品の中から選んで商品を注文し,被告から商品を受け取り,そ
の商品の代金は,「贈り主」から被告に支払われるのであるから,被告は,「贈り主」
との間では,「贈り主」の費用負担で,「受取手」が注文した商品を「受取手」に譲
渡することを約し,「受取手」に対しては,「受取手」から注文を受けた商品を引き
渡していると認められる。したがって,被告は,ギフトカタログに掲載された商品
について,業として,ギフトカタログを利用して,一般の消費者に対し,贈答商品
の譲渡を行っているものと認められるから,被告は,小売業者であると認められ,
小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供を行っているものと認められ
る。そして,上記便益の提供には,本件使用カタログが用いられているから,本件
使用カタログは,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」と認
められる。
(2)ア これに対し,原告は,被告の事業は,「贈り主」から「受取手」への贈
答の媒介又は代行であり,これによって「ギフトを通じて人と人とを結びつけ」る
という役務を提供している,「受取手」に対する商品の配送業務は,ギフトカタログ
の販売に付随するものであって,独立した商取引の対象となってないなどと主張す
る。
しかし,被告,「贈り主」及び「受取手」の間で行われる一連の取引の流れからす
ると,被告は,「受取手」に対し,「受取手」が被告に注文した商品を「贈り主」の
費用負担のもとに譲渡しているということができるのであって,これは,贈答の媒
介又は代行をしているということはできず,また,独立した商取引であると認めら
れ,「受取手」に対する商品の配送も単なる付随的なものということはできないから,
原告の上記主張を採用することはできない。
なお,被告がプレスリリースにおいて,被告の事業を「ギフトを通し人と人を結
びつけ」ると記載している(甲5)としても,被告の事業についての紹介(宣伝)
の文言であって,上記判断を左右するものではない。
イ 原告は,被告も,被告の事業において需要者が「贈り主」であることを
認めていると主張する。
しかし,被告は,被告の事業について,前記「第4 被告の主張」のとおり主張
しており,被告の事業の需要者は「贈り主」だけでなく「受取手」も需要者である
と主張している(被告が「贈り主」が需要者であると主張したからといって,「受取
手」も需要者であると主張することが妨げられる理由はない。)。そして,上記(1)の
とおり,被告の事業を全体的にみると,被告は,需要者である「受取手」に対し,
「受取手」が被告に注文した商品を「贈り主」の費用負担のもとに譲渡したものと
認められる。
ウ 上記(1)のとおり,被告の事業は,被告が「受取手」に対し,「受取手」
が注文した商品を譲渡しているということができるのであって,この注文が「贈り
主」の費用負担のもとにギフトカタログを利用して行われ,また,ギフトカタログ
が二次流通することがあるとしても,上記のとおり小売の業務における便益の提供
が行われているということができるものである。
また,被告の事業が資金決済に関する法律3条1項2号の前払式支払手段の発行
に当たるとしても,上記のとおり,小売の業務における便益の提供が行われている
ということができるのであり,前払式支払手段の発行がされているかどうかは上記
判断を左右するものではない。
(3)前記1によると,本件要証期間内である平成29年に発行された被告の本
件使用カタログには,本件使用カタログ標章が表示されているところ,その中のや\nやデザイン化した「MUSUBI」の文字(本件使用商標)は,本件商標と社会通
念上同一と認められる。そして,前記1によると,本件使用カタログには本件使用
商品1及び2が掲載され,被告は,同カタログに掲載された本件使用商品1及び2
を,それぞれ同年12月2日又は同年11月27日までに,「受取手」に送付したこ
とが認められるところ,本件使用商品1は商品「家具」の範ちゅうに属する商品で
あり,本件使用商品2は商品「台所用品」の範ちゅうに属する商品であることが認
められる。
そうすると,被告は,本件要証期間内に日本国内において,本件審判の請求に係
る指定役務中「家具・金庫及び宝石箱の小売又は卸売の業務において行われる顧客
に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務にお
いて行われる顧客に対する便益の提供」について,「役務の提供に当たりその提供を
受ける者の利用に供する物」に当たる本件使用カタログに本件商標と社会通念上同
一と認められる本件使用商標を付し,これを用いて小売の業務において行われる顧
客に対する便益の提供という役務を提供したと認めることができる。この行為は,
商標法2条3項3号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に
標章を付する行為」及び同項4号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用
に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当するので,被
告は,本件要証期間内に,日本国内において,本件審判の請求に係る指定役務につ
いて本件商標の使用をしていることを証明したと認められる。
したがって,原告の請求は理由がないことになる。
◆判決本文
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2018.06.20
平成30(行ケ)10015 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年6月13日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判において使用が争われました。知財高裁は「使用として認める」とした審決を維持しました。
原告は,1)本件商品が平成29年3月15日に被告のオンラインショップ
でタオルとして販売開始されていること,2)「TL」という品番からして本件商品
は当初から「タオル」であって「ふきん」ではないと考えられること,3)アシスト
社への販売価格がライフブリッジ社からの仕入価格と同一であって不自然であるこ
となどからすると,甲30〜33,36の信用性には重大な疑いがあると主張する。
まず,上記1)の主張は,被告のオンラインショップで発売されたタオル(甲2)
が,本件商品と全く同一のものであることを前提としていると解されるが,被告代
表者は,当審において,オンラインショップで発売されたタオル(甲2)は,素材\nやデザイン等は本件商品と同一であるものの,本件商品とは別に,当初から「タオ
ル」として,本件使用商標を付すことなく生産した本件商品とは異なる物であると
述べている。そして,この供述は,オンラインショップで発売されたタオル(甲2)
には本件下げ札が付けられていないことと整合している上,内容的に明らかに不自
然な点も見当たらない。そうすると,本件商品と同じ素材やデザイン等からなる「タ
オル」が被告のオンラインショップで平成29年3月から発売されたとしても,不
自然ではなく,前記2の認定を左右するものということはできない。
また,上記2)の主張について,「TL」という品番から直ちに本件商品が実際には
「タオル」であったとまで断ずることはできず,また,被告においては,オンライ
ンショップでの販売は主たる事業ではなく,卸売が主たる事業であって,オンライ
ンショップで販売される商品は,全取扱商品の20パーセントに満たない程度の商
品であり,オンラインショップの担当者がその判断で品名と発売時期を決定してい
るものと認められる(被告代表者[当審])から,ふきんがオンラインショップで販\n売されていないとしても不自然ではない。
さらに,上記3)の主張について,証拠(甲18,19,被告代表者[当審])及び\n弁論の全趣旨によると,被告とアシスト社は代表者を同じくするグループ会社であ\nると認められることや被告がその他の商品と合わせて単価を決定した旨主張してい
ることからすると,仕入価格と販売価格が同一であるとしても,直ちに不自然であ
るとはいえない。
(2) 原告は,1)一緒に写りこんでいる商品のオンラインショップにおける発売
時期からすると,商品写真(甲29)は実際には平成29年2月末又は3月初めに
撮影されたものである,2)被告とアシスト社との関係やその内容からすると,証明
書2(甲37)は信用できない,3)請求書(甲35)は宛名がなく不自然である,
4)出荷伝票(甲34)は品番に誤りや不自然な点があって信用できないなどと主張
する。
まず,上記1)の主張について,上記(1)記載のとおり,被告においてはオンライン
ショップでの販売は主たる事業ではなく,卸売が主たる事業であって,オンライン
ショップの担当者がその判断で品名と発売時期を決定していることを踏まえると,
一緒に写りこんでいる他の商品が平成29年になって被告のオンラインショップで
発売されたからといって,商品写真(甲29)が,原告の主張するとおり,平成2
9年になってから撮影されたものと断ずることまではできない。
また,上記2)の主張について,証明書2(甲37)は,被告のグループ会社であ
るアシスト社の従業員によって作成されたものであるが,他の証拠(甲34,35,
被告代表者[当審])と符合しており(前記2(2)),その限度では信用することがで
きるものである。特許庁に提出された回答書(甲25)の内容に言及している点は,
自らが経験していない事実についての言及を含むものであるが,そうであるからと
いって,その他の点まで信用することができないということにはならない。
さらに,上記3)の主張について,請求書(甲35)には宛名が記載されていない
が,代表者を同じくするグループ会社間の取引について発行されたものであること\nを踏まえると,不自然で,請求書そのものの信用性が失われるとまではいえない。
そして,上記4)の主張について,出荷伝票(甲34)に記載された品名がオンラ
インショップや被告のウェブサイトに記載された品名と異なっているからといって,
直ちに誤りであるとか不自然であるとか捏造されたということはできない。
(3) 原告は,1)口頭審理を拒否するなどの審判における被告の対応,2)4500
枚の本件商品のうち本件店舗に引き渡されたわずかのもの以外の行方が明らかとさ
れていないこと及び3)第三者が作成した客観的な書類が提出されていないことなど
からも,被告による本件商標の使用事実は存しないと主張する。
しかし,被告は,本件商標のブランド化がうまく進まない中で,本件商標を維持
するために費用や時間を費やすのに消極的な姿勢を見せているのであり(被告代表\n者[当審],弁論の全趣旨),そのような被告が,弁理士に要する費用や本件に対応
するための時間を節約しようと考えて,口頭審理を拒否するなど必要最小限の主張
立証しかしなかったとしても,直ちに不自然,不合理であるとはいえない。
また,本件では第三者たるライフブリッジ社の納品責任者が作成した客観的な取
引書類といえる納品書(甲31)が提出されているのであって,その他の第三者が
作成した書類が提出されていないからといって,前記2の認定が左右されるもので
はない。
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2018.05.30
平成30(行ケ)10003 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年5月28日 知的財産高等裁判所
不使用取消審判の取消訴訟です。知財高裁は、「本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく・・・」と、不使用とした審決を維持しました。
原告の提出する証拠(甲5,7,9〜12,25)から認められるのは,せいぜい,本件商品が本件セールの際に倉庫からセール会場に移動され,各500円(消費税別)で販売されたという事実にすぎず,本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく,そのほかに,原告の主張を認めるに足りる証拠はない。原告の主張は,客観的な裏付けを欠くものであり,以下のアないしウの事実に照らしても,不自然,不合理であって,採用できない。
ア 本件タグは,その表面に本件商標が表\示され,その裏面に,原告の名称のほ
か,当該商品の品番,サイズ,素材,生産国,バーコード情報,本体価格,税込価
格等が表示されているところ,この税込価格は,消費税率を5%として計算したも\nのである(甲3,4の1・2)。しかし,我が国の消費税率は,本件セールの開催
日より2年半以上前の平成26年4月1日に,5%から現行の8%に改定されてい
る(乙3)。この点について,原告は,特価であることの理由を示すために発売当
時の下げ札をそのまま付けておいた旨主張するが,消費税改定後に展示販売する商
品に消費税改定前の税込価格を表示したタグを付すことは,商品の購入者を混乱さ\nせたり,当該商品が古い物であるという印象を与えたりしかねないことから,通常
は,そのような取扱いはされないものと考えられる。
イ 本件タグに表示された前記アの情報は,購入者にとって重要な情報であり,\nかかる情報が表示されたタグは,それが付された商品とともに購入者に引き渡すの\nが通常であると考えられる。また,タグは,紐や結束バンドによって被服に取り付
けられるのが通常であるところ,本件タグは,タグの上部に結束バンドがくくり付
けられており,結束バンドは切断されていない(甲3,4の1・2)。かかる事実
は,本件タグが,本件商品を顧客に引き渡した際に本件商品から取り外されたもの
ではないことを推認させるものである。なお,原告は,本件タグは結束バンドでは
なく下げ紐により本件商品にくくり付けられていた旨主張するが,下げ紐を取り外
す際に,ハサミなどで切断せずに,その都度紐をほどくという煩瑣な方法をとって
いたというのは,不自然である。また,原告は,上記のとおり購入者にとって重要
な情報が表示された本件タグを本件商品の購入者に引き渡さなかった理由について,\n何ら合理的な説明をしていない。
ウ 原告は,平成30年3月11日に,本件セールと同じ会場において,本件セ
ールと同様のファミリーセールを開催し,そこで展示された原告商品の中には,本
件商品と同じ500円均一の価格(消費税別)と表示されたものも存在するが,「本\n体価格 ¥500」等の価格表示以外のタグは付されていない(乙1,2)。そう\nすると,仮に,本件セールにおいて本件商品が販売された事実があるとしても,本
件商品を展示して販売する際に,本件タグが付されていなかった可能性は高い。な\nお,原告は,上記平成30年のセールにおいて展示販売された原告の在庫資産であ
る商品には,本件タグと同様の下げ札が付されていた旨主張するが,これを裏付け
る的確な証拠はない。
(3)以上のとおり,原告が本件セールにおいて本件商品に本件タグを付して展示
販売することにより,本件商標を使用したとの事実を認めることはできない。また,
原告は,そのほかに,指定商品のうち第25類「被服」について,本件商標を要証
期間内に使用したことの主張立証をしない。
(4) 小括
よって,本件商標が要証期間内に指定商品のうち第25類「被服」について使用
されたとの事実は認められないというべきであり,本件商標の指定商品のうち第2
5類「被服」についての商標登録は,商標法50条の規定により取り消されるべき
ものである。
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2017.11.10
平成29(行ケ)10118 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成29年10月26日 知的財産高等裁判所(2部)
不使用請求を認めなかった審決が維持されました。争点は商標の同一性および使用の評価です。
ア 本件チラシ1の下段に記載されている「ピーアールタイムズ」の片仮名
は,本件商標の下段の片仮名と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章
であると認められる。
イ 本件チラシ2の下段に記載されている「PRTIMES」の欧文字は,
本件商標の上段の欧文字と同一であるから,本件商標と社会通念上同一の標章であ
ると認められる。
(3) 使用役務等について
上記1(2)のとおり,本件チラシ1には,「広告をご検討の事業主の皆様!まずは
お気軽にご相談ください」,「広告のプロが広告主様と一緒に,売上・集客に繋がる
広告戦略を練らせていただきます。広告の事なら何でもご相談ください。」と記載さ
れており,被告が広告の役務を提供することを広告しているものと認められる。
上記1(3)のとおり,本件チラシ2には,「広告をご検討の事業主の皆様!まずは
お気軽にご相談ください」,「広告出稿や広告に関するコンサルティングの事なら」
と記載されており,被告が広告の役務を提供することを広告しているものと認めら
れる。
そして,上記1(2)及び(3)のとおり,本件チラシには被告の会社名及び連絡先が
記載されており,本件チラシは,合計3000部作成され,頒布されたのであるか
ら,被告は,本件チラシを見た者が被告に広告依頼などの連絡をしてくればこれに
応じ,業として広告の役務を提供する意思であったと認められる。
したがって,被告は,広告の役務に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商
標を付して頒布し,これを使用したものと認められる。
ア 本件チラシの頒布に関する証拠である,本件チラシ(甲6,12),並び
に,ニューアシストから被告に対する領収書(甲7,13)及び納品書(甲8,1
4)は,いずれも,当法廷において被告から原本が提示されており,その作成日当
時作成され,授受されたものであることに合理的な疑いを差し挟むべき不自然な点
はない。
イ ニューアシストのホームページに記載されているのは,「事業概要」であ
って(甲21の2),その余の業務を行っていないという趣旨とは解されないから,
ニューアシストがチラシの作成やポスティングの業務を行っていないとまではいえ
ない。
被告の本店所在地と池尻大橋駅が遠く離れているとはいい難い上,チラシの配布
地域や配布部数などは,広告を行う者がその広告戦略などを考慮して決定するもの
であるから,本件チラシの配布場所が池尻大橋駅周辺であり,配布部数が合計30
00部であることなどは,本件チラシの頒布を否定すべき事情とはいえない。広告
業務はその態様によって価格が異なるものと考えられる上,個別に連絡してきた者
に対して説明することもできるから,本件チラシに価格が記載されていないことは,
本件チラシの頒布を否定すべき事情とはいえない。
上記1(2)(3)のとおり,本件チラシ,領収書及び納品書によって,本件チラシの
頒布の事実が認定できるから,その他の取引に関する契約書,Eメールのやりとり,
報告書等が証拠として提出されていないことは,本件チラシの頒布を認定すること
を妨げる事情とはならない。各2通の領収書(甲7,13)と納品書(甲8,14)
の内容が同一であることは,同一の取引を2回行ったことを示すものにすぎず,ま
た,被告の住所の誤りは,同一のデータを使いまわしたことによるものであると推
認されるから,これらの書証の信用性を疑わせる事情とはならない。
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2016.12.14
平成28(行ケ)10093 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成28年11月7日 知的財産高等裁判所
商標「KIRIN」について、使用していたとの審判が維持されました。原告は、小笠原製粉株式会社で、ウェブサイトによると、「キリンラーメン」という商品を販売していますね。
原告は,再使用許諾契約書は,1)提出された写しの契印の印影が各ペー
ジで1つずつであり,しかも半分にすぎず,押印原本も提示されていない,2)再使
用許諾契約書が原使用許諾契約書に基づくものであれば,原使用許諾契約書が先に
作成されるはずだが,契約日は再使用許諾契約書が原使用許諾契約書に先行してお
り,契約期間も,原使用許諾契約書が1年間であるのに対し,再使用許諾契約書は
半年間であることとは不自然である,3)原使用許諾契約書で被告がキリンホールデ
ィングスに対して再使用許諾を認めた商標と,再使用許諾契約書でキリンホールデ
ィングスがキリン協和フーズに使用許諾した商標とが一致せず不自然である,4)原
使用許諾契約書における使用許諾対象商標「KIRIN」に「麒麟」「キリン」が含
まれるとすることは,VIマニュアルの「KIRIN/キリン/麒麟」の使用区分
についての記載と整合しないし,再使用許諾契約書において「KIRIN」等を態
様の一部に含む商標及び「KIRIN」等と類似する商標について使用許諾するこ
とは,VIマニュアルの「KIRIN」を変形したものの使用禁止に反する,と主
張する。
しかし,1)契約書の契印を,契約当事者全員が必ず行うという商習慣を認定する
に足る証拠はなく,審判手続において提出する証拠の写しを作成する際,契印のみ
が存在する契約書用紙の裏のコピーを省略することも,不合理ではない。
また,2)原使用許諾契約書の契約締結日について,被告は,平成25年12月1
日時点における使用許諾対象商標,再使用許諾先及び対価の確認,確定手続を当事
者間で完了した段階で契約締結したため,締結日が同年12月20日となったと主
張しており,そのような主張内容は不合理ではないことに加え,キリン協和フーズ
による本件商標を含む被告所有商標の使用が,三菱商事への株式譲渡前から継続さ
れていたのであって,新たに被告らの有する商標の使用を開始させるものではない
ことからすれば,契約締結日が原使用許諾契約書と再使用許諾契約書とで異なるこ
とは不自然ではない。原使用許諾契約書は,再使用許諾契約書の根拠となるもので
あり,前者が後者より契約期間が長いことは,不合理ではない。
さらに,3)原使用許諾契約書と再使用許諾契約書との間で,許諾対象商標に文言
上の齟齬はあるが,許諾対象商標に「麒麟」「キリン」及び「きりん」が含まれる再
使用許諾契約書が作成された後に原使用許諾契約書が作成された上で,その許諾対
象商標が文言上「KIRIN」等となっていること,被告,キリンホールディング
ス及びキリン協和フーズとの間で,許諾対象商標についての争いがあったとは認め
られないことからすれば,原使用許諾契約書の「KIRIN」には,「麒麟」「キリ
ン」及び「きりん」が含まれるものと被告及びキリンホールディングスとが合意し
ていたものと解することができる(甲54参照)。
◆判決本文
◆関連事件です。
平成28(行ケ)10094
◆平成28(行ケ)10095
◆平成28(行ケ)10096
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2016.07.29
平成28(行ケ)10004 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成28年7月27日 知的財産高等裁判所
登録商標について不使用かどうかが争われました。知財高裁は使用していたとした審決を維持しました。認められたのは、パンフレット配布、ウェブサイトの使用、でんぴょううしていたなどの使用事実の理由も示されています。ただ、下記理由は、個人的には納得しがたいです。これだけコンピュータ化された時代に、印刷済み伝票に商品名を、ましてや(R)まで手書き追記するものなのでしょうか?
前記認定事実(7)のとおり,被告は,平成26年4月1日,東芝ホームアプ
ライアンスに対し,品名を「ASY−PWB−BRUSH」とする商品を100個
納品しているところ,東芝ホームアプライアンスにおいては,品名を「ASY−P
WB−BRUSH」とする商品は,制御基盤に関する商品を指すのであるから(甲
15),被告は,東芝ホームアプライアンスに,制御基盤を100個納品したもの
と認められる。
イ 次に,前記認定事実(7)のとおり,被告と東芝ホームアプライアンスとの間
で授受された伝票には,品名略号欄に「ASY−PWB−BRUSH」との印字だ
けではなく,「クリーンマスター(R)」との手書文字も記載されている。
また,被告と東芝ホームアプライアンスとの間で授受された伝票のうち,「検査
表D(検査控)」と題する伝票,「受入/検収票C(受入控)」と題する伝票は,\n被告が,東芝ホームアプライアンスに,制御基盤の納品時に交付したものと認めら
れる(甲16,乙10,16)。そして,これらの伝票は,東芝ホームアプライア
ンスが管理していたものであるから,被告が,原告との紛争に備えるために,わざ
わざ東芝ホームアプライアンスから,これらの伝票の返還を受け,「クリーンマス
ター(R)」と手書文字を記載したとは考えにくい。
したがって,被告は,東芝アプライアンスに制御基盤を納品する際,その伝票に,
当該制御基盤に関して「クリーンマスター(R)」との標章を付したものと認められる。
ウ よって,被告は,平成26年4月1日,少なくとも1社に対し,制御基盤に
関する取引書類に,「クリーンマスター(R)」なる標章を付して配布したものである。
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2012.08.13
平成24(行ケ)10080 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年07月25日 知的財産高等裁判所
登録商標を使用してないと判断とした審決が取り消されました。
上記商品カタログ(甲3)は,海外旅行の出発前にあらかじめおみやげを注文することの予約をしておくと,指定した日時,場所に当該おみやげが配送されるという販売システムにおいて使用される商品カタログであり,平成21年4月頃から平成22年4月頃までの間に,需要者に配布されるなどしたものである(甲3,弁論の全趣旨)。したがって,本件使用商標は,本件審判請求の登録前3年以内に,日本国内において,原告の商品(メープルシロップ)に関する広告に付されていたものということができる。
イ 以上によれば,原告は,商品カタログ(甲3)において,指定商品であるメープルシロップに本件使用商標を表示して頒布したものであり,その行為は,商標法2条3項8号の「商品・・・に関する広告・・・に標章を付して・・・頒布・・・する行為」に当たり,商標の使用に該当するものといわなければならない。
ウ なお,原告は,甲4をもって,本件商標を使用した旨主張するが,カタログの原本が提出されたわけでもなく,その一部分によって,これが展示されたり頒布されたりしたことを認めるに足りない。また,甲5の1ないし5の写真は,撮影年月日及び撮影場所すら明らかではなく,本件商標の使用を証する証拠足り得ない。
◆判決本文
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2010.04.16
平成21(行ケ)10354 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年04月14日 知的財産高等裁判所
ネット上の使用が不使用に該当するかが争われました。知財高裁は、該当しないとした審決を取り消しました。
前記1認定のとおり,原告は,メールマガジン及びWeb版に「クラブハウス」なる標章を表示している。メールマガジン及びWeb版には,加工食料品を中心とした原告商品に直接関係し,原告商品を広告宣伝する情報が掲載されているから,メールマガジン及びWeb版は,顧客に原告商品を認知させ理解を深め,いわば,電子情報によるチラシとして,原告商品の宣伝媒体としての役割を果たしているものということができる。このように,メールマガジン及びWeb版が,原告商品を宣伝する目的で配信され,多数のリンクにより,直接加工食料品等の原告商品を詳しく紹介する原告ウェブサイトの商品カタログ等のページにおいて商品写真や説明を閲覧することができる仕組みになっていることに照らすと,メールマガジン及びWeb版は,原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報ということができ,そこに表\示された「クラブハウス」標章は,原告の加工食料品との具体的関係において使用されているものということができる。したがって,「クラブハウス」標章は,加工食料品を中心とする原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報に付されているものということができる。ウ この点に関して,被告は,原告が「クラブハウス」標章をメールマガジンの名称・識別標識としてのみ使用しているから,商品についての使用に当たらないと主張する。なるほど,前記1(2)認定のとおりの使用態様によれば,「クラブハウス」の表示はメールマガジンの名称としても使用されていることは否定することができない。しかしながら,商標法2条3項1号所定の使用とは異なり,同項8号所定の使用においては,指定商品に直接商標が付されていることは必要ではないところ,リンクを通じて原告のウェブページの商品カタログに飛び,加工食料品たる原告商品の広告を閲覧できること,そして,そのような広告はインターネットを利用した広告として一般的な形態の一つであると解されること(甲189)からすると,原告のメールマガジン及びWeb版における「クラブハウス」の表\示が,原告商品に関する広告に当たらないということはできない。また,被告は,原告のメールマガジン及びWeb版には,全体の商品には「ハウス食品」商標が表示され,個々の商品にはそれぞれ個々の商標が表\示されているから,「クラブハウス」標章が表示されているとしても,商品についての使用に当たらないとも主張する。しかしながら,個々の商品に2つ以上の商標が付されることもあり得るところ,製造販売の主体である原告を表\す「ハウス食品」商標が付されているからといって,原告商品を宣伝する目的で配信されるメールマガジン及びWeb版に原告を表す「クラブハウス」標章を付すことが,商標の使用に当たらないということはできない。さらに,被告は,メールマガジンの受信者は,単なる一般の食品購入者でなく,メールマガジン「クラブハウス」の会員のみであると主張する。しかし,だれでも無料で上記会員になることができることに照らし,これが広告に当たらないということはできない。エ よって,「クラブハウス」標章は,加工食料品を中心とする原告商品に関する広告に付され,又は原告商品を内容とする情報に付され,原告の製造販売する加工食料品との具体的関係において使用されているものということができる。\n
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