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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

使用証明

平成31(行ケ)10036  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年9月18日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判にて不使用と認定されましたが、知財高裁3部は、これを取り消しました。

 (5)以上の次第で,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア Kは,原告から本件商標の使用許諾を受け,平成28年1月頃から「アンドホーム」との名称を用いて,現場監督ができるもう一人の者とともに,建築等の事業を開始した。(甲19,58)
イ Kは,平成28年4月7日,注文者1との間で,建物の建築工事を内容 とする工事請負契約1を締結し,同年9月20日頃,建物を完成させた。 かかる契約の締結の際,Kは,注文者1との間で,「アンドホーム」を請 負業者とする工事請負契約書1(請負代金額合計1302万3192円) を作成して,注文者1に交付した。(甲58,60,70)
ウ また,Kは,工事請負契約1に関して,土地を探すところから協力し, 少なくとも平成28年3月2日頃から同年5月14日頃にかけて,建物の デザインや設計についても注文者1と打ち合わせを複数回にわたって行 い,金銭面を含めて注文者1の要望を建築工事に反映させた。かかる打ち 合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が付された建築\n費用合計代金(3300万円台から3600万円台の金額である。)及び その内訳等を示す資金計画表(甲30,31,33から35,38,4\n3,45)や,建物の平面図や立面図が記載された建築図面を,打ち合わ せを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者1に示すなどし た。上記資金計画表のうち,作成日を平成28年3月23日以降とするもの\nについては,その右下に「◎土地契約時は土地手付け現金100万円+印 紙代…をご準備下さい。」,「◎建物契約時は建物手付け現金10万円+ 印紙代1万円…をご持参で当社にお越し下さい。」,「◎土地決済時に建 物着手金・上棟金として,1000万円を当社にお振り込み頂きま す。」,「◎最終の建物お引き渡し時に,残金を現金もしくはお振り込み 頂きます。」などと記載されている。 (甲29から38,40,43,45,58,62)
エ Kは,平成28年4月24日,注文者3との間で,建物の建築工事を内 容とする工事請負契約3を締結し,同年10月頃,建物を完成させた。か かる契約の締結の際,Kと注文者3は,「アンドホーム」を請負業者とす る工事請負契約書3(請負代金額合計1241万3270円)を作成して 注文者3に交付した。(甲56,58,71)
オ また,Kは,工事請負契約3に関し,ある程度土地が決まっている段階 で関与し始めて,少なくとも平成28年3月30日頃から同年5月29日 頃にかけて,建物のデザインや設計についても注文者3と打ち合わせを複 数回にわたって行い,金銭面を含めて注文者3の要望を建築工事に反映さ せた。 かかる打ち合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が\n付された建築費用合計代金(2600万円台から2700万円台の金額で ある。)及びその内訳等を示す資金計画表(甲51,52)や建築図面\nを,打ち合わせを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者3に 示すなどした。 (甲51,52,56,58,66,71)
カ Kは,工事請負契約1及び3に関して,東昇技建に対し,地盤の調査を 依頼して,これを行わせた上で,その調査結果を注文者1及び3に説明し た。(甲19,50,58,62,64,66,69) キ Kは,平成28年6月9日頃に株式会社シンプルハウスを設立し,「ア ンドホーム」との名称の使用をやめて,同月15日には工事契約1にかか る建築確認申請の工事施工者を,同社へと変更した。(甲19,58,5\n9,60)
2 取消事由2(Kによる本件商標の使用についての判断の誤り)について 原告は,Kが,前記1(5)カのとおり東昇技建に依頼して地盤の調査を行い, 同ウ及びオ記載の本件資金計画表を注文者1及び3に交付したことが商標法2\n条3項8号に該当し,「地質の調査」の役務について,本件商標を使用した (商標法50条2項)と主張するので,この点について検討する。 (1) まず,Kが,取消対象役務のひとつである「地質の調査」を提供したか否 かについてみると,Kは,前記1(5)カのとおり,工事請負契約1及び3に関 して,東昇技建に依頼して地盤調査を行うなどしている。 そして,前記1(5)イ及びエのとおり,Kは,「アンドホーム」の名称にて 工事請負契約1及び3を締結しているところ,これらの契約の前後に注文者 らに対して示した本件資金計画表において地盤改良工事費用の中に地盤調査\n費用が含まれており(前記1(3)イ参照),当該費用を含めた建築費用合計代 金の全額をKに支払うべきこととされて,現実に注文者らに対応したのは主 としてKであったことなどに照らすと,Kは,工事請負契約1及び3の締結 とともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものと 認められる。 そうすると,Kが東昇技建に依頼して行った地盤調査は,Kが注文者1及 び3から請け負った債務の履行としてされたものであるといえるから,Kが 「地質の調査」を提供したと認められる。
(2) 次に,商標法2条3項8号の該当性についてみる。
本件では,Kが「地質の調査」の役務を提供することは,本件資金計画表\nの「地盤改良工事費用」「地盤調査の結果により工事費用が変動いたしま す。」などとの記載に表れており,本件資金計画表\は,上記役務に対応して 作成された見積書としての書面であるといえるから,上記役務に関する「取 引書類」に当たる。そうすると,前記1⑸ウ及びオのとおり,Kが,本件資 金計画表に,本件商標を付して,その作成日付頃(平成28年3月2日頃か\nら同年5月29日頃),それぞれ注文者1及び3に交付した行為は,商標法 2条3項8号所定の使用に該当する。
(3)これに対し,被告は,Kが本件商標を使用して工事請負契約1及び3を請 け負った後,実際に建築工事を開始した時点では,「シンプルハウス」へと 屋号を変更していたことなどをもって,取消対象役務を「アンドホーム」の 名称にて提供していないと主張する。 しかしながら,前記認定のとおり,Kは,工事請負契約1及び3の締結と ともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものであ るところ,Kは,これらの契約に関して,平成28年3月2日頃から同年5 月29日頃にかけて,本件資金計画表を,注文者1及び3に交付しているか\nら,当該交付の時点で「アンドホーム」との標章に対する業務上の信用が発 生したといえる。その後,Kが,その事業について「シンプルハウス」との 名称に変更したとしても,かかる信用が,直ちに保護に値しなくなるもので はない。また,少なくとも工事請負契約3に係る地盤調査は,屋号変更前で ある同年5月25日に行われたことが明らかである。 したがって,Kは,「アンドホーム」との標章を取消対象役務のひとつで ある「地質の調査」について使用したといえる。
(4) また,被告は,Kによる本件商標の使用が名目的な使用であると主張す る。しかしながら,不使用取消に言及する被告から原告に対する連絡は平成 29年3月24日付けであって,Kが「アンドホーム」との標章を使用した 平成28年1月から同年6月頃までの期間よりも相当遅い時期であること (甲15)や,前記認定のKによる本件商標の使用態様に照らすと,Kによ る本件商標の使用が名目的な使用であるとまでは認められず,被告の主張は 採用できない。

◆判決本文

関連事件です。

◆平成31(行ケ)10033

◆平成31(行ケ)10034

◆平成31(行ケ)10035

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平成30(行ケ)10179  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和元年7月11日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判が請求され、商標権者は、カタログギフトのカタログを提出しました。特許庁、裁判所とも、35類の小売業における使用と認めました。

 前記1によると,被告のカタログオーダーギフト事業においては,「受取手」 に被告が発行したギフトカタログが送られ,「受取手」は被告に同ギフトカタログに 掲載された各種の商品の中から選んで商品を注文し,被告から商品を受け取り,そ の商品の代金は,「贈り主」から被告に支払われるのであるから,被告は,「贈り主」 との間では,「贈り主」の費用負担で,「受取手」が注文した商品を「受取手」に譲 渡することを約し,「受取手」に対しては,「受取手」から注文を受けた商品を引き 渡していると認められる。したがって,被告は,ギフトカタログに掲載された商品 について,業として,ギフトカタログを利用して,一般の消費者に対し,贈答商品 の譲渡を行っているものと認められるから,被告は,小売業者であると認められ, 小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供を行っているものと認められ る。そして,上記便益の提供には,本件使用カタログが用いられているから,本件 使用カタログは,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」と認 められる。
(2)ア これに対し,原告は,被告の事業は,「贈り主」から「受取手」への贈 答の媒介又は代行であり,これによって「ギフトを通じて人と人とを結びつけ」る という役務を提供している,「受取手」に対する商品の配送業務は,ギフトカタログ の販売に付随するものであって,独立した商取引の対象となってないなどと主張す る。 しかし,被告,「贈り主」及び「受取手」の間で行われる一連の取引の流れからす ると,被告は,「受取手」に対し,「受取手」が被告に注文した商品を「贈り主」の 費用負担のもとに譲渡しているということができるのであって,これは,贈答の媒 介又は代行をしているということはできず,また,独立した商取引であると認めら れ,「受取手」に対する商品の配送も単なる付随的なものということはできないから, 原告の上記主張を採用することはできない。 なお,被告がプレスリリースにおいて,被告の事業を「ギフトを通し人と人を結 びつけ」ると記載している(甲5)としても,被告の事業についての紹介(宣伝) の文言であって,上記判断を左右するものではない。
イ 原告は,被告も,被告の事業において需要者が「贈り主」であることを 認めていると主張する。 しかし,被告は,被告の事業について,前記「第4 被告の主張」のとおり主張 しており,被告の事業の需要者は「贈り主」だけでなく「受取手」も需要者である と主張している(被告が「贈り主」が需要者であると主張したからといって,「受取 手」も需要者であると主張することが妨げられる理由はない。)。そして,上記(1)の とおり,被告の事業を全体的にみると,被告は,需要者である「受取手」に対し, 「受取手」が被告に注文した商品を「贈り主」の費用負担のもとに譲渡したものと 認められる。
ウ 上記(1)のとおり,被告の事業は,被告が「受取手」に対し,「受取手」 が注文した商品を譲渡しているということができるのであって,この注文が「贈り 主」の費用負担のもとにギフトカタログを利用して行われ,また,ギフトカタログ が二次流通することがあるとしても,上記のとおり小売の業務における便益の提供 が行われているということができるものである。 また,被告の事業が資金決済に関する法律3条1項2号の前払式支払手段の発行 に当たるとしても,上記のとおり,小売の業務における便益の提供が行われている ということができるのであり,前払式支払手段の発行がされているかどうかは上記 判断を左右するものではない。
(3)前記1によると,本件要証期間内である平成29年に発行された被告の本 件使用カタログには,本件使用カタログ標章が表示されているところ,その中のや\nやデザイン化した「MUSUBI」の文字(本件使用商標)は,本件商標と社会通 念上同一と認められる。そして,前記1によると,本件使用カタログには本件使用 商品1及び2が掲載され,被告は,同カタログに掲載された本件使用商品1及び2 を,それぞれ同年12月2日又は同年11月27日までに,「受取手」に送付したこ とが認められるところ,本件使用商品1は商品「家具」の範ちゅうに属する商品で あり,本件使用商品2は商品「台所用品」の範ちゅうに属する商品であることが認 められる。
そうすると,被告は,本件要証期間内に日本国内において,本件審判の請求に係 る指定役務中「家具・金庫及び宝石箱の小売又は卸売の業務において行われる顧客 に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務にお いて行われる顧客に対する便益の提供」について,「役務の提供に当たりその提供を 受ける者の利用に供する物」に当たる本件使用カタログに本件商標と社会通念上同 一と認められる本件使用商標を付し,これを用いて小売の業務において行われる顧 客に対する便益の提供という役務を提供したと認めることができる。この行為は, 商標法2条3項3号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に 標章を付する行為」及び同項4号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用 に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当するので,被 告は,本件要証期間内に,日本国内において,本件審判の請求に係る指定役務につ いて本件商標の使用をしていることを証明したと認められる。 したがって,原告の請求は理由がないことになる。

◆判決本文

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