知財高裁(1部)は、Webサイト上の使用について、使用証明が要証期間内のものかが不明として、使用ありとして審決を取り消しました。
被告は,平成28年頃,本件サービスの有料会員のみが閲覧可能な本件ウェ\nブサイトの本件トップページ(甲15)に本件使用商標が表示された本件バナ\nーを,本件バナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件
ウェブページ(甲17)に本件バナーの画像をそれぞれアップロードして,本
件バナー及びその画像を掲載したこと,ファンプラス社が,令和2年4月1月
以降,本件トップページ及び本件ウェブページにそれぞれ本件バナー及びその
画像を継続的に掲載したことにより,被告又はファンプラス社が要証期間内に
本件使用商標を使用した旨を主張するので,以下において判断する。
(1) 甲15は,本件トップページを印刷した書証であり,甲15には,「Fの
ぶらり商店街」の見出しの下に,別紙記載の本件バナーを含む複数のバナー
が表示されている。また,甲17は,本件ウェブページを印刷した書証であ\nり,甲17には,「美少女図鑑 作品一覧」の見出しの下に,本件バナーの
画像が表示され,その画像の下には,複数の電子写真集のサムネイルが表\示
されている。本件バナーには,別紙記載のとおり,女性を被写体とする3枚
の写真(本件写真1ないし3)を背景に,白く縁取りされたピンク色の書体
の「美少女図鑑」の文字からなる本件使用商標が表示されている。\nそして,証拠(甲15,17,32)及び弁論の全趣旨によれば,本件ト
ップページに表示された本件バナーのリンク先が本件ウェブページであるこ\nと,本件ウェブページに表示された各サムネイルの横には,例えば,「女子\n校生 先輩は僕のいいなり A 2018−09−01」,「女子校生 純
白 B 2018−09−01」等の記載があることが認められる。
しかしながら,甲15及び17は,いずれも要証期間経過後の本件審判請
求後に印刷されたものであるから,甲15及び17が存在するからといって,
要証期間(平成29年6月18日から令和2年6月17日までの間)に,本
件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像が表示され\nていたものと直ちに認めることはできない。
また,本件バナーのアップロード時のログ等の電子記録は提出されておら
ず,平成28年頃,本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及
びその画像がアップロードされて掲載されたことを客観的に裏付ける証拠は
存在しない。
もっとも,甲17には,本件ウェブページに表示された各サムネイルに係\nる「2018−09−01」等の日付の記載があるが,これらの日付は,当
該サムネイルに係る電子写真集の販売開始日等を示したものとうかがわれ,
また,本件バナーのアップロード時期とサムネイルのアップロード時期が当
然に同じ時期になるものとはいえないから,これらの日付から,本件バナー
が平成28年頃にアップロードされたものと認めることはできない。
(2)次に,C作成の令和3年4月14日付け陳述書(乙3)中には,1)Cが代
表取締役を務める友ミュージック社は,およそ5,6年前に,被告の依頼を\n受け,本件ウェブサイトの会員限定ページに本件バナーをアップロードした,
2)同ページの本件バナーとリンクさせる形で,美少女図鑑のコンテンツ用ペ
ージをアップロードした,3)その後,本件バナーはアップロード時と同じ状
態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで本件バナーに変
更を加えていない旨の記載部分がある。
しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は,
およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,上記記載部分は,本件使用
商標を表示する本件トップページ及び本件ウェブページをアップロードした\n時期が「2015年3月25日」であることを証明する旨のC作成の令和2
年9月23日付け証明書(甲20)の記載部分と齟齬するものであるから,
措信することができない。
また,G(以下「G」という。)作成の令和3年6月11日付け陳述書(乙
8)には,1)Gは,被告に在籍していた,今から5,6年前,被告が保有す
るコンテンツ(乙5ないし7)から女性3名の写真と本件使用商標を使用し
て,本件バナーを作成し,友ミュージック社に依頼して,本件ウェブサイト
の有料会員のみが閲覧できる本件トップページに本件バナーを掲載し,本件
バナーのリンク先において,年齢の若い女性を被写体とするコンテンツを一
覧化した本件ウェブページを作成した,2)本件バナーに表示された女性3名\nの写真は,直近1,2年前に出版された,女子高生シリーズの中で比較的新
しい3冊の写真集から選んだものである,3)その後,本件バナーはアップロ
ード時と同じ状態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで
本件バナーに変更を加えていない旨の記載部分がある。
しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は,
およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,本件バナーの背景の本件写
真1ないし3は,Cが挙げる乙5ないし7(電子写真集1ないし3)記載の
写真と異なる構図の写真であるから,乙5ないし7は,本件バナーのアップ\nロードが平成28年頃にされたことを直ちに裏付けるものでないことからす
ると,上記記載部分は措信することができない。
したがって,乙3及び8から,本件トップページ及び本件ウェブページに
それぞれ本件バナー及びその画像が掲載されたことを認めることはできない。
他に本件使用商標が表示された本件バナー及びその画像が要証期間内に\n本件トップページ及び本件ウェブページに掲載されていたことを認めるに足
りる証拠はない。
◆判決本文
不使用取消を請求しましたが、棄却されました。知財高裁も同様に「動画である本件動画における商標の使用は,商標的使用とはいえないと判断をしました。
事案の性質に鑑み,まず本件商標の使用の有無の点から検討,判断する。
商標法は,50条において,「日本国内」において「商標権者,専用使用権
者又は通常使用権者」のいずれかが「不使用取消審判請求に係る指定役務」
のいずれかについての登録商標の「使用」をしていることを商標権者が証明
しない限り,当該指定役務について当該商標の登録が取り消されると定め,
また,2条において,商標とは「業として」使用するものであり,その「使
用」とは,同条3項各号に列記されているのものに限ることを定めている。
したがって,本件において,商標権者である原告は,本件サービス又は本
件チャンネルにおける本件商標の使用が,日本国内において原告又はリンガ
フランカ社によって,本件指定役務について,業務に係る標章として同条3
項各号に列記されている態様で行われていることを立証することを要する。
(2)本件サービスにおける本件商標の使用について
ア 前記1(8)のとおり,本件サービスに係る会員認証ページ(甲8)には,
本件商標と同一の商標が表示されており,また,同(1)ウ及び(3)のとおり,
本件サービスは日本国内における日本人も対象としていることが明らか
であるから,本件商標は,日本国内において使用されているといえる。
しかしながら,上記ページは,要証期間経過後で本件審判請求がされた
後の平成31年4月16日に印刷されたものにすぎず,要証期間に同ペー
ジに本件商標が表示されていたことを直ちに明らかにするものではない\nし,自己のウェブサイトの表示を変えることは容易であるから,この証拠\nだけから要証期間に本件商標が表示されていたことを推認できるもので\nもない。
したがって,要証期間に本件サービスで本件商標が使用されていること
を認めるに足りる証拠はないというべきである。
イ 仮に,要証期間に本件サービスに係る会員認証ページに本件商標が表示\nされていたとしても,本件商標は本件指定役務の範囲に含まれる役務につ
いて使用されているとはいえない。
すなわち,本件指定役務のうち,「語学に関する知識の教授」,「国際文化
に関する知識の教授」又は「教育研修のための施設の提供」は,人に対す
る教育又は知能を開発するための役務であるが,本件サービスは,会員が\nSNSを利用して会員同士で情報発信,情報交換をするものであり,その
際に使用できる言葉をグロービッシュの基本単語1500語又はその派
生語に限定したというにすぎず,実態としては個人間の交流の場を提供し
ているだけのサービスである。したがって,本件サービスが主体的に知識
の教授や教育研修を行っているとはいえず,本件サービスを利用すること
でグロービッシュについての能力が向上することがあるとしても,それは,\n単なる副次的な作用,効果にすぎない。
そうすると,本件サービスの提供は,「語学に関する知識の教授」,「国際
文化に関する知識の教授」又は「教育研修のための施設の提供」のいずれ
にも該当しないというべきである。
ウ したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件サービスに
おいて,要証期間に上記各指定役務について本件商標の使用がされていた
とは認められない。
(3) 本件チャンネルにおける本件商標の使用について
ア 前記1(4)のとおり,本件動画1)ないし4)には,その冒頭に本件商標と同
一の商標が使用されており,また,本件サービスやグロービッシュ・ラー
ニング・センターの案内を内容とするなど日本国内における日本人を対象
としていることが明らかであるから,当該商標は日本国内において使用さ
れているといえる。
また,前記1(4)のとおり,本件動画1)ないし4)の投稿日は要証期間開始
前の平成25年3月9日から同年7月9日にかけてであるところ,要証期
間経過後である令和2年10月9日時点においても本件動画1)ないし4)
を視聴することが可能であり,同日時点の本件動画1)の視聴回数が750
回,本件動画2)の視聴回数が1125回,本件動画3)の視聴回数が431
回,本件動画4)の視聴回数が437回となっているから(甲10),要証期
間に本件動画1)ないし4)が視聴され得る状態であったことは十分に推認\nすることができる。したがって,要証期間に本件商標が本件チャンネルに
おいて使用されたことが認められる(なお,被告は,要証期間に本件チャ
ンネルが閉鎖されていた可能性を否定することはできない旨主張するが,\n閉鎖されていたことを疑うに足りる事情は見当たらない。)。
イ しかしながら,本件サービスの提供は,前記(2)イで判示したとおり,「語
学に関する知識の教授」又は「国際文化に関する知識の教授」,さらには「語
学教育に携わる教師の育成のための教育又は研修」のいずれの役務にも当
たらないというべきであるから,本件動画1)ないし4)が本件サービスの案
内を内容とするとしても,それが上記各指定役務に関する「広告」(商標法
2条3項8号)に該当する余地はない。
また,本件動画1)及び2)は,専らグロービッシュそのものの紹介を内容
とするものと把握される動画であって,具体的な役務との関連性が明確に
されているとはいえず,この点からも「役務に関する広告」(商標法2条3
項8号)とはいい難いものである。したがって,本件動画1)及び2)におけ
る本件商標の使用が,商標法2条3項所定の「使用」に該当するとは認め
られない。
さらに,本件動画3)は,専らリンガフランカ社の前記1(1)ウ2)のサービ
スの紹介を,本件動画4)は,専ら前記1(1)ウ3)のサービスの紹介を内容と
するとものとそれぞれ把握される動画であるところ,前記1(6)及び(7)のと
おり,リンガフランカ社は,要証期間前の平成25年9月30日には上記
両サービスを終了させており,原告は,同サービスの運営を引き継いでい
ないから,本件動画3)及び4)を「役務に関する広告」(商標法2条3項8号)
と捉えるとしても,その内容は,事業として行われていない実態のサービ
スに関するものにすぎない。そうすると,本件動画3)及び本件動画4)は,
業として行われている役務について使用されているものではないから,そ
こに本件商標が表示されているとしても,その本件商標の使用を商標とし\nての使用と解することはできない。
ウ 以上によれば,本件チャンネルで公開されている動画である本件動画1)
ないし4)における本件商標の使用は,いずれにしても商標法2条3項所定
の「使用」とはいえない,あるいは商標的使用とはいえないことになる。
(4) 小括
以上の次第で,本件商標が,要証期間中,本件指定役務のうち,「語学に関
する知識の教授」,「国際文化に関する知識の教授」,「教育研修のための施設
の提供」又は「語学教育に携わる教師の育成のための教育又は研修」の役務
について使用されていたと認めることはできず,また,原告は,本件指定役
務のうち,上記役務を除く役務について要証期間に本件商標が使用されてい
る点について具体的に主張立証をしておらず,本件証拠からもその使用をう
かがうことはできない。
したがって,要証期間に本件商標が本件指定役務について使用された旨の
立証はないというべきであるから,本件商標の使用者に係る点について判断
するまでもなく,いずれにしても本件審決の判断に誤りはない。
◆判決本文