指定商品「コーヒー」について「ヨーロピアン」が商標として機能する使用であるかが争われました。知財高裁は、「他の自他商品識別機能\の強い商標と併用されることなく,単独で使用され,かつ,他の文字に比べると大きく,商品の目立つ位置に表示され,さらに(R)が付されて表示されている場合には、書体の違いおよび(R)の記載があり・・」なので、需用者は一応自他商品識別機能を有する商標と認識すると判断しました。原告はコカコーラです。
このような例について考察すると,「ヨーロピアン」の語は,他の自他商品識別機
能が強い商標と併用されてコーヒーやコーヒー豆に使用されている場合には,単に\nコーヒーの品質を表示するだけであり,自他商品識別機能\を有する商標として使用
されているものとは認めることはできない場合が多い,ということができる。
(2) これに対し,本件包装袋には「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章が
付されていることは前記認定のとおりである。本件包装袋には,このほかに,「無糖」,「お湯を注ぐだけ」との表示と「ホットコーヒーが入ったコーヒーカップの図柄」\nとが表示されているだけであり,これらが本件商品の品質や内容の単なる説明であ\nって,商標として表示されているものではないことは明らかであり,本件商品には,\nほかに自他商品識別機能を有する商標は使用されていない。そして,本件包装袋に\nおける「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章は,いずれも同じ書体で同じ大
きさの文字で,他の文字に比べると大きく,包装袋の表面上部の目立つ位置に表\示
され,さらにが付されて表示されているものである。これらの本件包装袋に\nおけるが登録商標であることを示す記号として広く使用されていることを考慮すると,取引者及び需要者は,本件包装袋における「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章が,本件商品の商標として本件包装袋に表示されていると認識し,理解するほかなく,その観念も「ヨーロッパ風のコーヒー」とかあるいは「深煎りの豆を使用したコーヒー」,「苦味が強いコーヒー」又は「コクが強いコーヒー」として認識されるものと認められる。\n(3) 以上によれば,「ヨーロピアン」との標章は,コーヒーあるいはコーヒー豆
に使用されている場合は,ほかに強い自他商品識別機能を有する商標と併用されて\nいるときには,単なる品質を表示するものとして使用されていると解される場合が\n多いものの,本件包装袋における「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章のよ
うに,他の自他商品識別機能の強い商標と併用されることなく,単独で使用され,\nかつ,他の文字に比べると大きく,商品の目立つ位置に表示され,さらにが\n付されて表示されているときには,それ程強いものではないけれども,一応自他商\n品識別機能を有する商標として使用されているものと認められる。\n
◆判決本文
2015.10. 6
不使用であると認定した審決が取り消されました。
登録商標は,上段に「ハイガード」下段に「HIGUARD」を配した商標です。使用商標は「ハイガード」でした。審決では「HIGUARD」は造語であり,特定の観念を有しないのに対し,上段の「ハイガード」のみが表示された場合には,「high guard」の欧文字を想起し,その表音を表\記したものと容易に理解し,「ハイガード」の片仮名は,「高いガード(保護)」,すなわち「商品を守る保護の程度が高い」との観念を有するとして、同一ではないと判断しました。裁判所は、同一の称呼及び観念が生ずると判断しました。
片仮名の「ハイガード」から生ずる観念について
片仮名の「ハイガード」は,それ自体が辞書等に登載された既成の用語
として特定の観念を有するものではない。
しかし,「ハイ」の部分は,英語の「high」に由来し,「程度の高
いこと。高度。高級。」などの意味を有する外来語として,また,「ガー
ド」の部分は,英語の「guard」に由来し,「警戒。監視。防御。」
などの意味を有する外来語として,いずれも一般的に使用されていること
(広辞苑第六版),また,片仮名の「ハイ」は,例えば,「ハイスピード」,
「ハイジャンプ」,「ハイクラス」などのように,その後に続く外来語と
結合して一連表記され,「高い○○」,「高度な○○」の意味で使用され\nる用例が一般的にみられること(広辞苑第六版)からすれば,本件審判請
求に係る指定商品である第17類「繊維布地を合成樹脂で挟んでなる積層
シート,繊維と貼り合わせたプラスチックシート,シート状・フィルム状\n・フォイル状・テープ状のプラスチック基礎製品,その他のプラスチック
基礎製品」に係る取引者,需要者が,片仮名の「ハイガード」からなる商
標に接した場合には,これを上記のような意味を有する「ハイ」の語と「ガ
ード」の語が結合した用語として認識すると考えられる。そして,これを
前提とすれば,片仮名の「ハイガード」からなる商標からは,「高度な防
御」といった観念が生ずるというべきであり,更には,これが上記指定商
品に使用されることを想定すると,これらの商品の用途や性能等に関連し\nた印象が生ずることの結果として,「物を保護する程度が高い。」といっ
た観念が生ずるものと認めることができる。
イ 本件商標から生ずる観念について
片仮名の「ハイガード」からは,上記アのような観念が生ずるといえる
ところ,本件商標は,片仮名の「ハイガード」の下に「HIGUARD」
の欧文字が配されていることから,これらを全体としてみた場合にも,上
記アと同様の観念が生ずるといえるかが問題となる。
そこで検討するに,前記(1)のとおり,本件商標の上段の「ハイガード」
の片仮名文字は下段の「HIGUARD」の欧文字の表音を示したものと\nして両者は一体的に把握されるものといえるから,本件商標に接した取引
者,需要者においては,欧文字の「HIGUARD」について,片仮名の
「ハイガード」の「ハイ」の語に相応する「HI」の語と,片仮名の「ハ
イガード」の「ガード」の語に相応する「GUARD」の語とが結合した
ものであることを自然に認識するというべきである。
そして,このうち,「GUARD」の語が,「警戒。監視。防御。」等
の意味を有する英単語として,我が国においても一般的に認識されている
ことは,前記(1)のとおりである。
次に,「HI」の語については,「やあ。」などの呼び掛けを表す間投\n詞に当たる英単語としての用例が一般的ではあるが,そのような間投詞が
他の用語と結合して一連表記される用例は一般的ではないから,上記のよ\nうに「GUARD」の語と結合して一連表記された「HI」の語が,間投\n詞の「HI」の語であると認識されることは考え難い。他方,「hi」の
語には,「高い。高度な。高級な。」等の意味を有する英単語「high」
の略語としての意味もあり(甲34),しかも,「hi」の語には,例え
ば,高品位テレビジョンの日本方式の愛称として「hi−vision」,
高度先端技術を表すものとして「hi−tech(technology\nの略)」などのように,その後に続く英単語と結合して一連表記され,「高\n度な○○」の意味で使用される用例が,我が国においても一般的にみられ
るところである(甲17,18)。
以上のような「HI」の語及び「GUARD」の語に対する我が国にお
ける一般的な認識を前提とすれば, 上記アのような観念が生ずるものと認
められる片仮名の「ハイガード」の下に配された「HIGUARD」の欧
文字から構成された本件商標に接した本件審判請求に係る指定商品の取引\n者,需要者においては,これを上記用例と同様に,「HI」は「high」
の略語として認識し,あるいは「HI」の語から「high」の語を想起
又は連想し,本件商標は,「high」の語を表す「HI」と「警戒。監\n視。防御。」等の意味を有する英単語の「GUARD」とが結合して一連
表記されたものであって,上段の「ハイガード」の片仮名と同様の意味を\n有するものとして認識するというべきである。
してみると,本件商標からは,片仮名の「ハイガード」単独の場合と同
一の観念,すなわち,「高度な防御」あるいは「物を保護する程度が高い。」
といった観念が生ずるものと認めるのが相当である。
◆判決本文
2015.10. 2
商標「ヨーロピアン」(指定商品コーヒーなど)について、「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章の使用が、商標法50条の使用に該当するのか争われました。知財高裁は使用に該当するとした審決を維持しました。
カタカナの「ヨーロピアン」は,「ヨーロッパに関するさま,ヨーロッパ人
に関するさま」を意味する語であり(甲4),英語の「European」は,「ヨーロッパ
の」,「ヨーロッパ人の」を意味する語である(甲5)。
そして,コーヒーやコーヒー豆については,その取引者等により「ヨーロピアン
スタイル」,「ヨーロピアンタイプ」,「ヨーロピアンテイスト」,「ヨーロピアンブレンド」,「ヨーロピアンロースト」あるいは「ヨーロピアン」などの表示や表\現が用
いられることが多く,これらは,いずれも深煎りの豆を使用したコーヒー,苦味が
強いコーヒー又はコクが強いコーヒーというコーヒーの味等の品質等を示すものと
して使用されている。また,コーヒーの一般の需要者も,これを受けて,「ヨーロピ
アン」の語が「深煎りの」とか「苦みが強い」「コクが強い」コーヒーとの意味であ
ると理解する者もいれば,中にはより漠然と「ヨーロッパ風のコーヒー」などと理
解する者もいるものと推認されるところである。(甲6ないし40,64,65,8
2ないし141,乙4)
そして,「ヨーロピアン」の文字をコーヒーあるいはコーヒー豆に使用している例
としては,例えば,ベルギーのロンバウツが「ROMBOUTS」商標を付して販
売している3種類のコーヒー豆には,それぞれ「ロイヤル」「マイルド」「ヨーロピ
アン」の3種類の品質を表す表\示が付されており,また,オフィスリングが「A4
カフェ12」商標を付して販売している3種類のコーヒー豆には,それぞれ「マイ
ルド」「シアトル」「ヨーロピアン」の3種類の品質を表す表\示が付されており,さ
らに,UCC FOODSが「UCC」の商標を付して販売しているコーヒー豆に
は,「ROYAL EUROPEAN」がその品質を表す表\示として付されており,
さらにまた,キーコーヒー株式会社が「KEY COFFEE」の商標を付して販
売しているコーヒー豆には,「ヨーロピアンリッチ」あるいは「ヨーロピアンテイス
ト」がその品質を表す表\示として付されており,そして,原告が「GEORGIA」
のブランドを付して販売している缶コーヒーには,「EUROPEAN」との表示が\nそのコーヒーの風味(品質)を表すものとして表\示されている例がある(甲28,
30,65,83,90,乙4)。
このような例について考察すると,「ヨーロピアン」の語は,他の自他商品識別機
能が強い商標と併用されてコーヒーやコーヒー豆に使用されている場合には,単に\nコーヒーの品質を表示するだけであり,自他商品識別機能\を有する商標として使用
されているものとは認めることはできない場合が多い,ということができる。
(2) これに対し,本件包装袋には「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章が
付されていることは前記認定のとおりである。本件包装袋には,このほかに,「無糖」,「お湯を注ぐだけ」との表示と「ホットコーヒーが入ったコーヒーカップの図柄」\nとが表示されているだけであり,これらが本件商品の品質や内容の単なる説明であ\nって,商標として表示されているものではないことは明らかであり,本件商品には,\nほかに自他商品識別機能を有する商標は使用されていない。そして,本件包装袋に\nおける「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章は,いずれも同じ書体で同じ大
きさの文字で,他の文字に比べると大きく,包装袋の表面上部の目立つ位置に表\示
され,さらにが付されて表示されているものである。これらの本件包装袋に\nおけるが登録商標であることを示す記号として広く
使用されていることを考慮すると,取引者及び需要者は,本件包装袋における「ヨ
ーロピアン コーヒー」の二段書き標章が,本件商品の商標として本件包装袋に表\n示されていると認識し,理解するほかなく,その観念も「ヨーロッパ風のコーヒー」
とかあるいは「深煎りの豆を使用したコーヒー」,「苦味が強いコーヒー」又は「コ
クが強いコーヒー」として認識されるものと認められる。
(3) 以上によれば,「ヨーロピアン」との標章は,コーヒーあるいはコーヒー豆
に使用されている場合は,ほかに強い自他商品識別機能を有する商標と併用されて\nいるときには,単なる品質を表示するものとして使用されていると解される場合が\n多いものの,本件包装袋における「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章のよ
うに,他の自他商品識別機能の強い商標と併用されることなく,単独で使用され,\nかつ,他の文字に比べると大きく,商品の目立つ位置に表示され,さらにが\n付されて表示されているときには,それ程強いものではないけれども,一応自他商\n品識別機能を有する商標として使用されているものと認められる。\n(4) 原告は,本件包装袋における「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章な
いしその中の「ヨーロピアン」との表示は,当該商品が,深煎りの豆を使用したコ\nーヒーであるなどというコーヒーの味等の品質を有するインスタントコーヒーであ
ると認識されるものであり,自他商品を識別する機能を有する商標としての使用と\n
は認められない,と主張する。
しかし,「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章からは,「ヨーロッパ風のコ
ーヒー」とか深煎りの豆を使用したコーヒー等の観念が生じるとしても,本件包装
袋には,同標章のほかには,自他商品識別機能を有する商標として表\示されたもの
はないだけでなく,「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章は,他の文字に比べ
ると大きく,本件包装袋の表面上部の目立つ位置に表\示され,さらにが付さ
れて表示されているのであるから,同商標に一応の自他商品識別機能\があることは
前記認定のとおりである。したがって,本件包装袋における「ヨーロピアン コー
ヒー」の二段書き標章の使用を自他商品識別機能のない商標としての使用であると\nまでいうことはできず,原告の主張を採用することはできない。
3 本件包装袋に使用された「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章は,本
件商標と社会通念上同一の商標であるか。
法50条1項は,登録商標の使用について,「書体のみに変更を加えた同一の文字
からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するもので\nあって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商
標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」の「使用」と規定し
ている。
法は,不使用登録商標を徒に許容することにより,他者の商標選択の範囲を不当
に狭めるとの弊害が生じることを防止するために,登録商標と社会通念上同一の商
標の使用をしていないときに,不使用登録商標取消審判の制度を設けている。この
ような同規定の趣旨に照らし,本件包装袋に使用されている「ヨーロピアン コー
ヒー」の二段書き標章が本件商標と社会通念上同一の商標といえるかについて,次
に判断する。
一般に,自他商品識別機能を有する登録商標を指定商品に使用する場合,その登\n録商標に加えて,自他商品識別機能を奏さない商品名等の文字を加えて表\示しても,
その付加された標章は自他商品識別機能を奏さないのが通常であるから,この場合\n
も,登録商標を単独で使用した場合と同様に,登録商標と社会通念上同一の商標の
使用と解すべき場合は多い。
被告が本件包装袋に使用している「ヨーロピアン コーヒー」の二段書き標章に
ついても,「コーヒー」は,本件商品の名称に過ぎないものであるから,自他商品識
別機能が全くないことは明らかである。そうすると,本件包装袋に使用された「ヨ\nーロピアン コーヒー」の二段書き標章に一応の自他商品識別機能があるのは,「ヨ\nーロピアン」の標章によるものである。よって,本件包装袋における「ヨーロピア
ン コーヒー」の二段書き標章の使用は,「コーヒー」が商品の名称に過ぎない以上,
本件商標である「ヨーロピアン」を単独で使用した場合と同様に解することができ,
本件商標と社会通念上同一の商標の使用であると解すべきである。
◆判決本文
2015.08. 7
商標「加護亜依」について、指定役務に不使用であるとした審決が維持されました。
すなわち,原告が,本件取消審判請求において提出した「navi☆Road U
SA」と題するウェブページ(乙1の1添付資料)の作成者と思われる「アメリカ
留学 ナビロード」という団体又は会社が本件商標の商標権者,専用使用権者又は
通常使用権者であるとは認められない上に,「加護ちゃん的・・・」という記載や加
護亜依の写真の掲載しかなく,これらの記載等が,本件商標と同一又は社会通念上
同一の商標の使用とは認められず,本件指定役務のいずれかに関する使用ともいえ
ない。また,原告の了解を取得せずにテレビ番組に出演したことに関して交わされ
た,原告と株式会社C.A.Lとの間の合意書(乙1の1添付資料)における「加
護亜依」という記載は,原告に所属するタレントの氏名を明らかにするために使用
されただけであって,本件指定役務である「放送番組の制作」に関し,出所識別標
識として表示されたものではなく,商標法2条3項各号に定める「使用」のいずれ\nにも該当しない。
さらに,原告は,本件取消審判請求において,商標不使用の正当事由として,加
護亜依が商標権使用に協力的でなかったことや,加護亜依のスキャンダルのために
使用ができなかったことを主張したが(乙1の2),これらは,いずれも原告の所属
タレント自身ないし同人と原告との関係に関する事情であって,いわば,原告の内
部的な紛争にかかわる事情にすぎないから,本件商標の不使用がやむを得なかった
といえる事情には該当せず,本件商標の不使用についての正当な理由とは認められ
ない。
◆判決本文
不使用取り消し審判の審決取消訴訟です。審決では登録商標の「使用」と認定され、知財高裁はこれを維持しました。
使用商標2の「ROYAL ENFIELD BULLET 500 EFI」の文字よりなる。構成中の「ROYAL ENFIELD」は,旧社名から派生した二輪自動車のブランド名であり(甲4),「500」は排気量の数字,「EFI」はエンジンにおける燃料噴射の電子制御システムである「Electronic Fuel Injection」の略語(甲11)等として理解されるから,外観上常に一体不可分のものとして認識されるとはいえず,「BULLET」の文字部分が,独立して要部として認識され得る。
本件商標と「BULLET」の文字部分は,その文字綴りを同一にするものであるから,使用商標2は,その他の文字を伴っている構成であるが,「BULLET」を要部として認識され得る以上,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。\n
◆判決本文