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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不使用

平成30(行ケ)10101  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月19日  知的財産高等裁判所

 ブリジストンがカンパニョロの「POTENZA」に不使用取消審判を請求しました。審決は使用を認めました。裁判所も審決維持です。
カンパニョロの指定商品は、第12類「競技用自転車の部品及び付属品・・・」です。問題の商標は、判決文の最後にあります。原告は、「POTENZA」と同一の標章について,第12類「二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品」を指定商品とする防護標章登録を受けていました。カンパニョロの登録に対して、異議申し立てをしましたが、当該指定商品については、類似しないとして登録されていました。\n
イ 本件使用商品の柄の部品(クランク)の中央には,横長の白塗りの平行 四辺形内に黒色のデザイン化された文字で表された「POTENZA」の\n欧文字と,「POTENZA」の欧文字の4文字目の「E」が表された箇\n所の背後に重なるように交差する縦長の白塗りの平行四辺形内に黒色で表\nされた「11」の数字とからなる,別紙記載の本件使用商標(甲14の1, 15,16)が付されている。 しかるところ,「POTENZA」の欧文字部分は,横長の白塗りの平 行四辺形内に横書きで表されているのに対し,「11」の数字部分は,縦\n長の白塗りの平行四辺形内に縦書きで表示されていること,「11」の数\n字部分は,上に重なった「POTENZA」の欧文字部分を表する横長の\n平行四辺形によって中央で上下に分断され,数字の一部が隠されているの に対し,「POTENZA」の欧文字部分は,分断された「11」の数字 部分の前面に表されていることからすると,「POTENZA」の欧文字\n部分は,他の構成要素と分離して観察することが取引上不自然と思われる\nほど不可分的に結合しているとはいえない。 そして,「POTENZA」の欧文字部分は,「11」の数字部分の前 面の目につきやすい位置にまとまりよく配置されており,本件使用商標全 体から「ポテンザ」あるいは「ポテンツァ」の称呼が自然に生じることか らすると,「POTENZA」の欧文字部分は,その部分のみから自他商 品識別標識としての機能を発揮しているものと認められる。\n一方で,「11」の数字部分は,上記のとおり,中央で上下に分断され, 数字の一部が隠されており,注視しなければ,数字の「11」と判読でき ないことに照らすと,「11」の数字部分の自他商品識別標識としての機 能は,「POTENZA」の欧文字部分よりも,明らかに低いものと認め\nられる。また,「POTENZA」の欧文字部分が表されている横長の白\n塗りの平行四辺形は,ありふれた形状であって,黒と白のコントラストに より,「POTENZA」の欧文字部分を構成する黒色の7文字を目立つ\nように表示するための背景図形であると認識されるから,それ自体に自他\n商品識別標識としての機能があるものとはいえない。\nそして,本件使用商標の「POTENZA」の欧文字部分と本件商標と を対比すると,「POTENZA」の欧文字部分は,標準文字の本件商標 と字体の違いがあるが,構成する文字は同一であり,その字体の違いも特\nに目立ったものではないこと,両者の称呼は同一であることからすると, 本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であるものと認められ る。
(2) これに対し原告は,1)本件使用商標は,2種の略平行四辺形を前後に重ね て,それぞれの中に「POTENZA」と「11」を配置した,統一感のあ るスタイリッシュなロゴデザインであること,本件使用商標の「11」を含 む部分は,被告の自転車用ギアクランクにおいて11速を暗示させる識別標 識として機能していること,「POTENZA」の部分は,特段特徴的な態\n様で表されているとはいえず,他に比して目立っているような事情もないこ\nとからすると,本件使用商標は,「POTENZA」,「11」,略平行四 辺形の図形等の各構成要素が一体として結合した態様によって識別性が発揮\nされており,本件使用商標から「POTENZA」の部分だけを分離抽出す ることはできない,2)本件使用商品に付された本件使用商標の隣には,「P OTENZA」の部分と同じデザインで,横長の白塗りの「CAMPAGN OLO」の欧文字が表された平行四辺形が配されており,これに接した需要\n者,取引者は,本件使用商標と「CAMPAGNOLO」の欧文字が表され\nた平行四辺形の態様を含めた全体を使用商標と認識することもあるとして, 本件使用商標は,「POTENZA」の標準文字からなる本件商標とは明ら かに異なり,本件商標と社会通念上同一とはいえない旨主張する。 しかしながら,上記1)の点については,前記(1)イ認定のとおり,本件使用 商標の「POTENZA」の欧文字部分は,他の構成要素と分離して観察す\nることが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえず, 「POTENZA」の欧文字部分のみから自他商品識別標識としての機能を\n発揮しているものと認められる。また,原告が述べるように「11」の数字 が,被告の自転車用ギアクランクにおいて11速を暗示させるものであった としても,前記(1)イ認定のとおり,「11」の数字部分は,中央で上下に分 断され,数字の一部が隠されており,注視しなければ,数字の「11」と判 読できないことに照らすと,「11」の数字部分が11速を暗示させる識別 標識として機能しているものと直ちにはいえない。\n
次に,上記2)の点については,本件使用商品の柄の部品(クランク)には, 「POTENZA」の欧文字が表された平行四辺形の右隣に「CAMPAG\nNOLO」の欧文字が表された平行四辺形が付されているが(甲14の1,\n15,16),二つの平行四辺形の間には,スペースがあり,それぞれの平 行四辺形内の「POTENZA」の欧文字部分と「CAMPAGNOLO」 の欧文字部分とは,明瞭に区別される態様で示されている。加えて,前記1 の認定事実によれば,本件商標の指定商品の需要者である自転車競技や競技 用自転車に関心のある者の間では,被告は,競技用自転車の部品メーカーと して広く知られていたものと認められることに照らすと,本件使用商品に接 した需要者は,「CAMPAGNOLO」の欧文字は,被告の名称を外国語 表記したものとして,それ自体を独立の商標として認識するものと認められ\nるから,本件使用商標と「CAMPAGNOLO」の欧文字が表された平行\n四辺形の態様を含めた全体がひとまとまりの商標として認識されるというこ とはできない。
・・・・
3 本件使用商品の本件商標の指定商品該当性について
(1) 前記1の認定事実によれば,本件使用商品は,競技用自転車の部品メーカ ーである被告が製造,販売する自転車用ギアクランク(クランクセット)で あること,本件使用商品について,「新ラインナップに加わったポテンツァ 11は,スーパーレコードに採用されているエンブレイステクノロジーをは じめとした,トップグレードの性能とデザインを継承した機械式アルミグル\nープセット」,「ハードな変速ラインにも対応するレーシングパーツ」など と雑誌(甲15)に紹介されていることが認められる。 上記認定事実によれば,本件使用商品は,自転車競技に使用される自転車 のギアクランクとして用いることができるものと認められる。 そして,本件商標の指定商品「競技用自転車の部品及び付属品(自転車の フレーム・タイヤ・チューブ・車輪・リム・スポークを除く。)」にいう「競 技用自転車」の用語について,「競技」の具体的なレベルを特に限定する記 載はないこと,自転車競技は,プロのロードレーサーなどが参加する世界的 な競技のほかに,趣味として競技を行っている者を含め,様々なレベルの者 が参加できる競技が行われていることは一般に知られていることに照らすと, 自転車競技に使用される自転車に用いることができる部品であれば,本件商 標の指定商品にいう「競技用自転車の部品」に含まれるものと認められる。 そうすると,本件使用商品は,本件商標の指定商品に該当するものと認め られる。
(2) これに対し原告は,1)原告は,原告の著名な登録商標である「POTEN ZA」と同一の標章について,第12類「二輪自動車・自転車並びにそれら の部品及び附属品」を指定商品とする防護標章登録を受けていること,特許 庁は,別件異議申立事件について,「競技用自転車は,競技用としてその用\n途が限られ,かつ,専門性の高い商品」であると認定した上で,本件商標の 商標登録時の指定商品の一部を取り消す旨の別件異議決定をしたことなどの 事情を勘案すると,本件商標の指定商品は,競技専用又はそれに近い商品を 意図するものといえるから,「競技用としてその用途が限られ,かつ,専門 性の高い商品」と理解すべきである,2)被告の最上位機種の「SUPERR ECORD」と本件使用商品とでは,商品の性能が格段に異なり,その用途\n及び需要者の範囲も異なる上,本件使用商品の需要者は一般の自転車愛好家 であることからすると,本件使用商品は,「競技用としてその用途が限られ, かつ,専門性の高い商品」とはいえないとして,本件使用商品は,本件商標 の指定商品に該当しない旨主張する。 しかしながら,上記1)の点については,別件異議決定(甲30)の理由中 に,「被請求人の主張及び職権による調査によれば,競技用自転車は,競技 用としてその用途が限られ,かつ,専門性の高い商品であることから,一般 用自転車に比して高額であり,需要者の範囲も限られ,かつ,販売場所も専 門店やウェブサイトにおける注文販売などが一般的であることが認められる から,需要者が,自己の自転車に装着する商品を申立人又はブリヂストンサ\nイクルの商品であると誤認混同することは考えがたいというのが相当であ る。」との記載部分(6頁)があるが,この記載部分は,一般用自転車と対 比する意味で,「競技用自転車は,競技用としてその用途が限られ,かつ, 専門性の高い商品」であることを示したものにすぎず,自転車競技の具体的 なレベルや商品の具体的な性能についてまで述べたものではないから,本件\n商標の指定商品にいう「競技用自転車」の用語を特定のレベルの競技に限定 する根拠とはならない。また,原告がその登録商標である「POTENZA」 と同一の標章について上記防護標章登録を受けたのは平成24年4月27日 (甲23)であって,別件異議決定日(平成23年10月3日)よりも後で あるから,原告が防護標章登録を受けたことは,別件異議決定の認定及び判 断に影響を及ぼしたものとは認められない。
次に,上記2)の点については,本件使用商品が,被告の最上位機種の「S UPERRECORD」ではなく,ミドルクラスの機種であるからといって, 本件商標の指定商品にいう「競技用自転車の部品」に該当しないということ はできない。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10046  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月26日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判(商50条)に対する審決取消し訴訟です。商品「ウィッグ」を展示した各展示ブースで来訪者に対し販促品として無償配布した行為は,商標法2条3項8号の「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当するか?が争われました。
 上記認定事実によれば,被告による本件付箋紙の配布行為は,上記各併設 展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品の広 告の一環として行われたものと認められる。 そして,本件付箋紙の見開き内面部分に掲載された本件使用商標は,全体 として「スヴェンソンのウィッグ」商品の出所識別標識として認識することができる態様で使用されているものと認められることは,前記2(2)認定の とおりである。 そうすると,本件付箋紙は,被告の販売する医療用ウィッグ等の商品(「ス ヴェンソンのウィッグ」商品)の広告媒体に当たるものであって,被告による本件付箋紙の配布行為は,上記商品に関する広告に本件使用商標を付\nして頒布する行為(商標法2条3項8号)に該当するものと認められる。 したがって,本件審決における商標法2条3項8号該当性の判断に誤 りはない。
(2) これに対し原告は,1)本件商標は,被告のウェブサイト,被告が運営 する通販サイト,商品「ウィッグ」のいずれにも,これまで一切使用された ことはなく,被告の公式キャラクターも,これまで商品「ウィッグ」に使用 されたことはなかったことに照らすと,本件付箋紙は,被告そのものを広告 するためのノベルティ(販促品)と認識されるにとどまる,2)本件付箋紙の 見開き内面部分の文章の記載は,「ウィッグ」の語が含まれているというだ けであって,商品自体を宣伝したものではなく,「ウィッグ」の前に「スヴ ェンソンの」と付いているように,被告と商品「ウィッグ」との関係を強調したものであり,本件使用商標と商品「ウィッグ」とのつながりを示すもの\nとはいえないなどとして,本件付箋紙は,単なる被告を宣伝広告するノベル ティ(販促品)に過ぎず,商品「ウィッグ」の宣伝広告とはいえないし,商 品「ウィッグ」との具体的関係において使用されているものとはいえないか ら,本件付箋紙は,商標法2条3項8号所定の「商品に関する広告」に該当 せず,被告による本件付箋紙の配布行為は,同号に該当しない旨主張する。 しかしながら,前記(1)認定のとおり,被告による本件付箋紙の配布行為 は,前記各併設展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用ウィッ グ等の商品の広告の一環として行われたものであり,本件付箋紙は,被告の 販売する医療用ウィッグ等の商品(「スヴェンソンのウィッグ」商品)の広告媒体に当たり,上記商品に関する広告に該当するものと認められる。\nもっとも,本件付箋紙の表紙部分を含む本件付箋紙全体の記載内容(前記2(1))に照らすと,本件付箋紙は,被告それ自体を広告する広告媒体とし ての機能をも有するものと認められるが,そのことは,本件付箋紙が上記商品に関する広告に該当することを否定する事情になるものではない。また,\n本件付箋紙に「ウィッグ」に関する具体的な商品情報の記載がないことは, 本件使用商標が本件付箋紙において「スヴェンソンのウィッグ」商品の出所識別標識として認識することができる態様で使用されているとの認定の妨\nげになるものではなく(前記2(3)),しかも,被告による本件付箋紙の配 布行為は,前記各併設展示会の展示ブースにおいて,被告の販売する医療用 ウィッグ等の商品の展示とともに行われたのであるから,本件付箋紙の配布 を受けた参加者は,本件付箋紙は,上記商品の広告のために配布されたもの と認識したものと認められる。

◆判決本文

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平成30(行ケ)10037  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年8月23日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の取消訴訟です。審決、知財高裁とも、「旧 関西国際学友会日本語学校」が、登録商標「関西国際学友会」の使用であると判断しました。
(1) 使用商標は,「旧」の文字と「関西国際学友会日本語学校」の文字とを半 角又は全角の空白を介して結び,かつ全体を括弧で囲んで表したものである。
(2) まず,これらの文字は,書体も大きさも同一であり,全体が括弧で囲まれ ているものの,「旧」と「関西国際学友会日本語学校」とは,空白によって 明確に分離されていること,「旧」は,「昔。過去。」といった意味を有し, 「今は主流ではないもの,過去のものとなっていることを表す語」であり(広\n辞苑〔第7版〕),その後に続く語がかつて用いられていた名称等であるこ とを指し示すものとして一般的に多用されている語であること(乙5の1〜 5の5)からすると,使用商標に接した需要者は,「旧 関西国際学友会日 本語学校」の意味は,かつての名称が関西国際学友会日本語学校であったこ とにあると理解すると認められる。 続いて,「関西国際学友会日本語学校」の部分について検討する。 ア この文字部分中,「日本語学校」は,教育の分野において,日本語を教 授する教育機関又は施設を意味する一般的名称と認められ(甲7の1〜7 の8),一般通常人にとっても馴染みのある語というべきであるから,需 要者が「関西国際学友会日本語学校」の文字に接したときに,これは「関 西国際学友会」と「日本語学校」の各語を組み合わせたものであると理解 することは明らかである。
イ 次に,「関西国際学友会」についてみると,「学友会」の文字部分だけ をみれば,学生及び卒業生の交流を図る会ないし団体といった程度の一般 的な意味を有する語と解する余地があるものの,その前に「関西国際」が 付されていることを考え合わせると,これに接した需要者は,全体として, 関西地方に所在し又は同地方において活動している,国際的に学生等の交 流を図ることを目的として設立された特定の団体の名称であると理解する と認めるのが相当である。 また,上記のとおり,「日本語学校」は,日本語を教授する教育機関又 は施設を意味する一般的名称と認められるから,需要者は,「日本語学校」 の部分を,提供される役務の内容,又はその役務を提供する施設を示して いるものと理解し,当該部分が出所を表示する機能\を有するものであると は考えないと認めるのが相当である。
ウ 上記イにおいて説示した各語が有する意味合いに鑑みると,「関西国際 学友会日本語学校」は「関西国際学友会」が運営する「日本語学校」とい った程度の意味を有する語として理解されるというべきである。 そして,「関西国際学友会」と「日本語学校」とは,一体不可分の関係 にあると理解されなければならない語であるとは言い難い上に,「日本語 学校」は,日本語を教授する教育機関又は施設を意味する一般的名称であ るから,需要者は,使用商標中の「関西国際学友会日本語学校」につき, 「関西国際学友会」の部分が出所を示す機能を果たしていると認識すると\nいうべきである。

◆判決本文

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◆平成30(行ケ)10038

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平成30(行ケ)10015  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月13日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判において使用が争われました。知財高裁は「使用として認める」とした審決を維持しました。
   原告は,1)本件商品が平成29年3月15日に被告のオンラインショップ でタオルとして販売開始されていること,2)「TL」という品番からして本件商品 は当初から「タオル」であって「ふきん」ではないと考えられること,3)アシスト 社への販売価格がライフブリッジ社からの仕入価格と同一であって不自然であるこ となどからすると,甲30〜33,36の信用性には重大な疑いがあると主張する。 まず,上記1)の主張は,被告のオンラインショップで発売されたタオル(甲2) が,本件商品と全く同一のものであることを前提としていると解されるが,被告代 表者は,当審において,オンラインショップで発売されたタオル(甲2)は,素材\nやデザイン等は本件商品と同一であるものの,本件商品とは別に,当初から「タオ ル」として,本件使用商標を付すことなく生産した本件商品とは異なる物であると 述べている。そして,この供述は,オンラインショップで発売されたタオル(甲2) には本件下げ札が付けられていないことと整合している上,内容的に明らかに不自 然な点も見当たらない。そうすると,本件商品と同じ素材やデザイン等からなる「タ オル」が被告のオンラインショップで平成29年3月から発売されたとしても,不 自然ではなく,前記2の認定を左右するものということはできない。 また,上記2)の主張について,「TL」という品番から直ちに本件商品が実際には 「タオル」であったとまで断ずることはできず,また,被告においては,オンライ ンショップでの販売は主たる事業ではなく,卸売が主たる事業であって,オンライ ンショップで販売される商品は,全取扱商品の20パーセントに満たない程度の商 品であり,オンラインショップの担当者がその判断で品名と発売時期を決定してい るものと認められる(被告代表者[当審])から,ふきんがオンラインショップで販\n売されていないとしても不自然ではない。 さらに,上記3)の主張について,証拠(甲18,19,被告代表者[当審])及び\n弁論の全趣旨によると,被告とアシスト社は代表者を同じくするグループ会社であ\nると認められることや被告がその他の商品と合わせて単価を決定した旨主張してい ることからすると,仕入価格と販売価格が同一であるとしても,直ちに不自然であ るとはいえない。
(2) 原告は,1)一緒に写りこんでいる商品のオンラインショップにおける発売 時期からすると,商品写真(甲29)は実際には平成29年2月末又は3月初めに 撮影されたものである,2)被告とアシスト社との関係やその内容からすると,証明 書2(甲37)は信用できない,3)請求書(甲35)は宛名がなく不自然である, 4)出荷伝票(甲34)は品番に誤りや不自然な点があって信用できないなどと主張 する。 まず,上記1)の主張について,上記(1)記載のとおり,被告においてはオンライン ショップでの販売は主たる事業ではなく,卸売が主たる事業であって,オンライン ショップの担当者がその判断で品名と発売時期を決定していることを踏まえると, 一緒に写りこんでいる他の商品が平成29年になって被告のオンラインショップで 発売されたからといって,商品写真(甲29)が,原告の主張するとおり,平成2 9年になってから撮影されたものと断ずることまではできない。 また,上記2)の主張について,証明書2(甲37)は,被告のグループ会社であ るアシスト社の従業員によって作成されたものであるが,他の証拠(甲34,35, 被告代表者[当審])と符合しており(前記2(2)),その限度では信用することがで きるものである。特許庁に提出された回答書(甲25)の内容に言及している点は, 自らが経験していない事実についての言及を含むものであるが,そうであるからと いって,その他の点まで信用することができないということにはならない。 さらに,上記3)の主張について,請求書(甲35)には宛名が記載されていない が,代表者を同じくするグループ会社間の取引について発行されたものであること\nを踏まえると,不自然で,請求書そのものの信用性が失われるとまではいえない。 そして,上記4)の主張について,出荷伝票(甲34)に記載された品名がオンラ インショップや被告のウェブサイトに記載された品名と異なっているからといって, 直ちに誤りであるとか不自然であるとか捏造されたということはできない。
(3) 原告は,1)口頭審理を拒否するなどの審判における被告の対応,2)4500 枚の本件商品のうち本件店舗に引き渡されたわずかのもの以外の行方が明らかとさ れていないこと及び3)第三者が作成した客観的な書類が提出されていないことなど からも,被告による本件商標の使用事実は存しないと主張する。 しかし,被告は,本件商標のブランド化がうまく進まない中で,本件商標を維持 するために費用や時間を費やすのに消極的な姿勢を見せているのであり(被告代表\n者[当審],弁論の全趣旨),そのような被告が,弁理士に要する費用や本件に対応 するための時間を節約しようと考えて,口頭審理を拒否するなど必要最小限の主張 立証しかしなかったとしても,直ちに不自然,不合理であるとはいえない。 また,本件では第三者たるライフブリッジ社の納品責任者が作成した客観的な取 引書類といえる納品書(甲31)が提出されているのであって,その他の第三者が 作成した書類が提出されていないからといって,前記2の認定が左右されるもので はない。

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平成29(行ケ)10228  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年6月13日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判において、「使用していた」との審決が維持されました。知財高裁は、本件ベルトの販売,納品は,売買取引の実体を伴うと判断しました。
 この点に関し原告は,フィールドハウスのヴァンヂャケットに対する本件 ベルトの譲渡行為は,関連会社間の単なる商品の移動であって,本件商標の 登録の不使用取消しを免れる目的で,名目的に本件使用商標を使用する外観 を呈する行為にすぎないから,商標法2条3項2号の使用に該当しない旨主 張する。 そこで検討するに,原告が主張するように,被告の代表取締役のAは,フ\nィールドハウス及びヴァンヂャケットの筆頭株主であること,被告の取締役 のBは,ヴァンヂャケットの社長であること,フィールドハウスの代表者の\nCは,ヴァンヂャケットの取締役であることが認められ(甲3ないし5,弁 論の全趣旨),被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,役員の一 部が共通し,相互に資本関係のある関連会社であるといえる。 しかしながら,被告,フィールドハウス及びヴァンヂャケットは,別個の 法人であって,前記1(1)認定のとおり,フィールドハウスのヴァンヂャケッ トに対する本件使用商標を付した本件ベルトの販売,納品は,売買取引の実 体を伴うものであり,関連会社間の単なる商品の移動ということはできない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

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平成30(行ケ)10003  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年5月28日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の取消訴訟です。知財高裁は、「本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく・・・」と、不使用とした審決を維持しました。
 原告の提出する証拠(甲5,7,9〜12,25)から認められるのは,せいぜい,本件商品が本件セールの際に倉庫からセール会場に移動され,各500円(消費税別)で販売されたという事実にすぎず,本件セールにおいて,本件商品に本件タグが付されて展示,販売された事実を推認させるものではなく,そのほかに,原告の主張を認めるに足りる証拠はない。原告の主張は,客観的な裏付けを欠くものであり,以下のアないしウの事実に照らしても,不自然,不合理であって,採用できない。
ア 本件タグは,その表面に本件商標が表\示され,その裏面に,原告の名称のほ か,当該商品の品番,サイズ,素材,生産国,バーコード情報,本体価格,税込価 格等が表示されているところ,この税込価格は,消費税率を5%として計算したも\nのである(甲3,4の1・2)。しかし,我が国の消費税率は,本件セールの開催 日より2年半以上前の平成26年4月1日に,5%から現行の8%に改定されてい る(乙3)。この点について,原告は,特価であることの理由を示すために発売当 時の下げ札をそのまま付けておいた旨主張するが,消費税改定後に展示販売する商 品に消費税改定前の税込価格を表示したタグを付すことは,商品の購入者を混乱さ\nせたり,当該商品が古い物であるという印象を与えたりしかねないことから,通常 は,そのような取扱いはされないものと考えられる。
イ 本件タグに表示された前記アの情報は,購入者にとって重要な情報であり,\nかかる情報が表示されたタグは,それが付された商品とともに購入者に引き渡すの\nが通常であると考えられる。また,タグは,紐や結束バンドによって被服に取り付 けられるのが通常であるところ,本件タグは,タグの上部に結束バンドがくくり付 けられており,結束バンドは切断されていない(甲3,4の1・2)。かかる事実 は,本件タグが,本件商品を顧客に引き渡した際に本件商品から取り外されたもの ではないことを推認させるものである。なお,原告は,本件タグは結束バンドでは なく下げ紐により本件商品にくくり付けられていた旨主張するが,下げ紐を取り外 す際に,ハサミなどで切断せずに,その都度紐をほどくという煩瑣な方法をとって いたというのは,不自然である。また,原告は,上記のとおり購入者にとって重要 な情報が表示された本件タグを本件商品の購入者に引き渡さなかった理由について,\n何ら合理的な説明をしていない。
ウ 原告は,平成30年3月11日に,本件セールと同じ会場において,本件セ ールと同様のファミリーセールを開催し,そこで展示された原告商品の中には,本 件商品と同じ500円均一の価格(消費税別)と表示されたものも存在するが,「本\n体価格 ¥500」等の価格表示以外のタグは付されていない(乙1,2)。そう\nすると,仮に,本件セールにおいて本件商品が販売された事実があるとしても,本 件商品を展示して販売する際に,本件タグが付されていなかった可能性は高い。な\nお,原告は,上記平成30年のセールにおいて展示販売された原告の在庫資産であ る商品には,本件タグと同様の下げ札が付されていた旨主張するが,これを裏付け る的確な証拠はない。
(3)以上のとおり,原告が本件セールにおいて本件商品に本件タグを付して展示 販売することにより,本件商標を使用したとの事実を認めることはできない。また, 原告は,そのほかに,指定商品のうち第25類「被服」について,本件商標を要証 期間内に使用したことの主張立証をしない。
(4) 小括
よって,本件商標が要証期間内に指定商品のうち第25類「被服」について使用 されたとの事実は認められないというべきであり,本件商標の指定商品のうち第2 5類「被服」についての商標登録は,商標法50条の規定により取り消されるべき ものである。

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平成29(行ケ)10107  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年1月15日  知的財産高等裁判所(4部)

 不使用による商標取消訴訟について、共有商標権者の一部が提訴しました。被告は固有必要的共同訴訟として訴えは不適切と主張しましたが、裁判所はかかる主張は認めませんでした。ただ、最終的に使用が証明できず、取消審決は維持されました。これは、登録商標を使用しているとはいえないというものです。登録商標は、漢字、かたかな、ひらがな、ローマ字表記を4段で書しており、使用していたのは、漢字のみを書したものでした。
 被告は,原告といきいき緑健は,本件商標に係る商標権を共有するところ,原告 は,単独で本件審決の取消しを請求するから,本件訴えは不適法であると主張する。 しかし,いったん登録された商標権について,登録商標の使用をしていないこと を理由に商標登録の取消審決がされた場合に,これに対する取消訴訟を提起するこ となく出訴期間を経過したときは,商標権は審判請求の登録日に消滅したものとみ なされることとなり,登録商標を排他的に使用する権利が消滅するものとされてい る(商標法54条2項)。したがって,上記取消訴訟の提起は,商標権の消滅を防 ぐ保存行為に当たるから,商標権の共有者の1人が単独でもすることができるもの と解される。そして,商標権の共有者の1人が単独で上記取消訴訟を提起すること ができるとしても,訴え提起をしなかった共有者の権利を害することはない。 また,商標権の設定登録から長期間経過した後に他の共有者が所在不明等の事態 に陥る場合や,訴訟提起について他の共有者の協力が得られない場合なども考えら れるところ,このような場合に,共有に係る商標登録の取消審決に対する取消訴訟 が固有必要的共同訴訟であると解して,共有者の1人が単独で提起した訴えは不適 法であるとすると,出訴期間の満了と同時に取消審決が確定し,商標権は審判請求 の登録日に消滅したものとみなされることとなり,不当な結果となりかねない。 さらに,商標権の共有者の1人が単独で取消審決の取消訴訟を提起することがで きると解しても,その訴訟で請求認容の判決が確定した場合には,その取消しの効 力は他の共有者にも及び(行政事件訴訟法32条1項),再度,特許庁で共有者全 員との関係で審判手続が行われることになる(商標法63条2項の準用する特許法 181条2項)。他方,その訴訟で請求棄却の判決が確定した場合には,他の共有 者の出訴期間の満了により,取消審決が確定し,商標権は審判請求の登録日に消滅 したものとみなされることになる(商標法54条2項)。いずれの場合にも,合一 確定の要請に反する事態は生じない。なお,各共有者が共同して又は各別に取消訴 訟を提起した場合には,これらの訴訟は,類似必要的共同訴訟に当たると解すべき であるから,併合の上審理判断されることになり,合一確定の要請は充たされる。 以上によれば,商標権の共有者の1人は,共有に係る商標登録の取消審決がされ たときは,単独で取消審決の取消訴訟を提起することができると解するのが相当で ある(最高裁平成13年(行ヒ)第142号同14年2月22日第二小法廷判決・ 民集56巻2号348頁参照)。 よって,原告は,単独で本件審決の取消しを請求することができる。被告の本案 前の抗弁は,理由がない。
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以上のとおり,甲1カタログ,甲2カタログ及び甲3雑誌は,いずれも要証期間 内に頒布されたものとは認められない。また,そもそも,本件商標は,「緑健青汁」, 「りょくけん青汁」,「リョクケン青汁」及び「RYOKUKEN AOJIRU」 の文字を4段に書して成るものであるのに対し,甲1カタログ,甲2カタログ及び 甲3雑誌に記載された商標は,「緑健青汁」の文字のみを書して成るものである。 このような本件商標と使用商標とは,商標法50条1項にいう「平仮名,片仮名及 びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ず\nる商標…その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」であると,直 ちに認めることはできない。

◆判決本文

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