2019.10. 2
不使用取消審判にて不使用と認定されましたが、知財高裁3部は、これを取り消しました。
(5)以上の次第で,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア Kは,原告から本件商標の使用許諾を受け,平成28年1月頃から「アンドホーム」との名称を用いて,現場監督ができるもう一人の者とともに,建築等の事業を開始した。(甲19,58)
イ Kは,平成28年4月7日,注文者1との間で,建物の建築工事を内容
とする工事請負契約1を締結し,同年9月20日頃,建物を完成させた。
かかる契約の締結の際,Kは,注文者1との間で,「アンドホーム」を請
負業者とする工事請負契約書1(請負代金額合計1302万3192円)
を作成して,注文者1に交付した。(甲58,60,70)
ウ また,Kは,工事請負契約1に関して,土地を探すところから協力し,
少なくとも平成28年3月2日頃から同年5月14日頃にかけて,建物の
デザインや設計についても注文者1と打ち合わせを複数回にわたって行
い,金銭面を含めて注文者1の要望を建築工事に反映させた。かかる打ち
合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が付された建築\n費用合計代金(3300万円台から3600万円台の金額である。)及び
その内訳等を示す資金計画表(甲30,31,33から35,38,4\n3,45)や,建物の平面図や立面図が記載された建築図面を,打ち合わ
せを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者1に示すなどし
た。上記資金計画表のうち,作成日を平成28年3月23日以降とするもの\nについては,その右下に「◎土地契約時は土地手付け現金100万円+印
紙代…をご準備下さい。」,「◎建物契約時は建物手付け現金10万円+
印紙代1万円…をご持参で当社にお越し下さい。」,「◎土地決済時に建
物着手金・上棟金として,1000万円を当社にお振り込み頂きま
す。」,「◎最終の建物お引き渡し時に,残金を現金もしくはお振り込み
頂きます。」などと記載されている。
(甲29から38,40,43,45,58,62)
エ Kは,平成28年4月24日,注文者3との間で,建物の建築工事を内
容とする工事請負契約3を締結し,同年10月頃,建物を完成させた。か
かる契約の締結の際,Kと注文者3は,「アンドホーム」を請負業者とす
る工事請負契約書3(請負代金額合計1241万3270円)を作成して
注文者3に交付した。(甲56,58,71)
オ また,Kは,工事請負契約3に関し,ある程度土地が決まっている段階
で関与し始めて,少なくとも平成28年3月30日頃から同年5月29日
頃にかけて,建物のデザインや設計についても注文者3と打ち合わせを複
数回にわたって行い,金銭面を含めて注文者3の要望を建築工事に反映さ
せた。
かかる打ち合わせの際,Kは,「アンドホーム資金計画表」との標題が\n付された建築費用合計代金(2600万円台から2700万円台の金額で
ある。)及びその内訳等を示す資金計画表(甲51,52)や建築図面\nを,打ち合わせを踏まえた修正を加えつつ,複数回にわたり,注文者3に
示すなどした。
(甲51,52,56,58,66,71)
カ Kは,工事請負契約1及び3に関して,東昇技建に対し,地盤の調査を
依頼して,これを行わせた上で,その調査結果を注文者1及び3に説明し
た。(甲19,50,58,62,64,66,69)
キ Kは,平成28年6月9日頃に株式会社シンプルハウスを設立し,「ア
ンドホーム」との名称の使用をやめて,同月15日には工事契約1にかか
る建築確認申請の工事施工者を,同社へと変更した。(甲19,58,5\n9,60)
2 取消事由2(Kによる本件商標の使用についての判断の誤り)について
原告は,Kが,前記1(5)カのとおり東昇技建に依頼して地盤の調査を行い,
同ウ及びオ記載の本件資金計画表を注文者1及び3に交付したことが商標法2\n条3項8号に該当し,「地質の調査」の役務について,本件商標を使用した
(商標法50条2項)と主張するので,この点について検討する。
(1) まず,Kが,取消対象役務のひとつである「地質の調査」を提供したか否
かについてみると,Kは,前記1(5)カのとおり,工事請負契約1及び3に関
して,東昇技建に依頼して地盤調査を行うなどしている。
そして,前記1(5)イ及びエのとおり,Kは,「アンドホーム」の名称にて
工事請負契約1及び3を締結しているところ,これらの契約の前後に注文者
らに対して示した本件資金計画表において地盤改良工事費用の中に地盤調査\n費用が含まれており(前記1(3)イ参照),当該費用を含めた建築費用合計代
金の全額をKに支払うべきこととされて,現実に注文者らに対応したのは主
としてKであったことなどに照らすと,Kは,工事請負契約1及び3の締結
とともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものと
認められる。
そうすると,Kが東昇技建に依頼して行った地盤調査は,Kが注文者1及
び3から請け負った債務の履行としてされたものであるといえるから,Kが
「地質の調査」を提供したと認められる。
(2) 次に,商標法2条3項8号の該当性についてみる。
本件では,Kが「地質の調査」の役務を提供することは,本件資金計画表\nの「地盤改良工事費用」「地盤調査の結果により工事費用が変動いたしま
す。」などとの記載に表れており,本件資金計画表\は,上記役務に対応して
作成された見積書としての書面であるといえるから,上記役務に関する「取
引書類」に当たる。そうすると,前記1⑸ウ及びオのとおり,Kが,本件資
金計画表に,本件商標を付して,その作成日付頃(平成28年3月2日頃か\nら同年5月29日頃),それぞれ注文者1及び3に交付した行為は,商標法
2条3項8号所定の使用に該当する。
(3)これに対し,被告は,Kが本件商標を使用して工事請負契約1及び3を請
け負った後,実際に建築工事を開始した時点では,「シンプルハウス」へと
屋号を変更していたことなどをもって,取消対象役務を「アンドホーム」の
名称にて提供していないと主張する。
しかしながら,前記認定のとおり,Kは,工事請負契約1及び3の締結と
ともに地盤調査も含む当該工事に関する役務を一括して請け負ったものであ
るところ,Kは,これらの契約に関して,平成28年3月2日頃から同年5
月29日頃にかけて,本件資金計画表を,注文者1及び3に交付しているか\nら,当該交付の時点で「アンドホーム」との標章に対する業務上の信用が発
生したといえる。その後,Kが,その事業について「シンプルハウス」との
名称に変更したとしても,かかる信用が,直ちに保護に値しなくなるもので
はない。また,少なくとも工事請負契約3に係る地盤調査は,屋号変更前で
ある同年5月25日に行われたことが明らかである。
したがって,Kは,「アンドホーム」との標章を取消対象役務のひとつで
ある「地質の調査」について使用したといえる。
(4) また,被告は,Kによる本件商標の使用が名目的な使用であると主張す
る。しかしながら,不使用取消に言及する被告から原告に対する連絡は平成
29年3月24日付けであって,Kが「アンドホーム」との標章を使用した
平成28年1月から同年6月頃までの期間よりも相当遅い時期であること
(甲15)や,前記認定のKによる本件商標の使用態様に照らすと,Kによ
る本件商標の使用が名目的な使用であるとまでは認められず,被告の主張は
採用できない。
◆判決本文
関連事件です。
◆平成31(行ケ)10033
◆平成31(行ケ)10034
◆平成31(行ケ)10035
不使用取消審判が請求され、商標権者は、カタログギフトのカタログを提出しました。特許庁、裁判所とも、35類の小売業における使用と認めました。
前記1によると,被告のカタログオーダーギフト事業においては,「受取手」
に被告が発行したギフトカタログが送られ,「受取手」は被告に同ギフトカタログに
掲載された各種の商品の中から選んで商品を注文し,被告から商品を受け取り,そ
の商品の代金は,「贈り主」から被告に支払われるのであるから,被告は,「贈り主」
との間では,「贈り主」の費用負担で,「受取手」が注文した商品を「受取手」に譲
渡することを約し,「受取手」に対しては,「受取手」から注文を受けた商品を引き
渡していると認められる。したがって,被告は,ギフトカタログに掲載された商品
について,業として,ギフトカタログを利用して,一般の消費者に対し,贈答商品
の譲渡を行っているものと認められるから,被告は,小売業者であると認められ,
小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供を行っているものと認められ
る。そして,上記便益の提供には,本件使用カタログが用いられているから,本件
使用カタログは,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」と認
められる。
(2)ア これに対し,原告は,被告の事業は,「贈り主」から「受取手」への贈
答の媒介又は代行であり,これによって「ギフトを通じて人と人とを結びつけ」る
という役務を提供している,「受取手」に対する商品の配送業務は,ギフトカタログ
の販売に付随するものであって,独立した商取引の対象となってないなどと主張す
る。
しかし,被告,「贈り主」及び「受取手」の間で行われる一連の取引の流れからす
ると,被告は,「受取手」に対し,「受取手」が被告に注文した商品を「贈り主」の
費用負担のもとに譲渡しているということができるのであって,これは,贈答の媒
介又は代行をしているということはできず,また,独立した商取引であると認めら
れ,「受取手」に対する商品の配送も単なる付随的なものということはできないから,
原告の上記主張を採用することはできない。
なお,被告がプレスリリースにおいて,被告の事業を「ギフトを通し人と人を結
びつけ」ると記載している(甲5)としても,被告の事業についての紹介(宣伝)
の文言であって,上記判断を左右するものではない。
イ 原告は,被告も,被告の事業において需要者が「贈り主」であることを
認めていると主張する。
しかし,被告は,被告の事業について,前記「第4 被告の主張」のとおり主張
しており,被告の事業の需要者は「贈り主」だけでなく「受取手」も需要者である
と主張している(被告が「贈り主」が需要者であると主張したからといって,「受取
手」も需要者であると主張することが妨げられる理由はない。)。そして,上記(1)の
とおり,被告の事業を全体的にみると,被告は,需要者である「受取手」に対し,
「受取手」が被告に注文した商品を「贈り主」の費用負担のもとに譲渡したものと
認められる。
ウ 上記(1)のとおり,被告の事業は,被告が「受取手」に対し,「受取手」
が注文した商品を譲渡しているということができるのであって,この注文が「贈り
主」の費用負担のもとにギフトカタログを利用して行われ,また,ギフトカタログ
が二次流通することがあるとしても,上記のとおり小売の業務における便益の提供
が行われているということができるものである。
また,被告の事業が資金決済に関する法律3条1項2号の前払式支払手段の発行
に当たるとしても,上記のとおり,小売の業務における便益の提供が行われている
ということができるのであり,前払式支払手段の発行がされているかどうかは上記
判断を左右するものではない。
(3)前記1によると,本件要証期間内である平成29年に発行された被告の本
件使用カタログには,本件使用カタログ標章が表示されているところ,その中のや\nやデザイン化した「MUSUBI」の文字(本件使用商標)は,本件商標と社会通
念上同一と認められる。そして,前記1によると,本件使用カタログには本件使用
商品1及び2が掲載され,被告は,同カタログに掲載された本件使用商品1及び2
を,それぞれ同年12月2日又は同年11月27日までに,「受取手」に送付したこ
とが認められるところ,本件使用商品1は商品「家具」の範ちゅうに属する商品で
あり,本件使用商品2は商品「台所用品」の範ちゅうに属する商品であることが認
められる。
そうすると,被告は,本件要証期間内に日本国内において,本件審判の請求に係
る指定役務中「家具・金庫及び宝石箱の小売又は卸売の業務において行われる顧客
に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務にお
いて行われる顧客に対する便益の提供」について,「役務の提供に当たりその提供を
受ける者の利用に供する物」に当たる本件使用カタログに本件商標と社会通念上同
一と認められる本件使用商標を付し,これを用いて小売の業務において行われる顧
客に対する便益の提供という役務を提供したと認めることができる。この行為は,
商標法2条3項3号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に
標章を付する行為」及び同項4号「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用
に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当するので,被
告は,本件要証期間内に,日本国内において,本件審判の請求に係る指定役務につ
いて本件商標の使用をしていることを証明したと認められる。
したがって,原告の請求は理由がないことになる。
◆判決本文
2019.07. 9
商標権者は、電動スクーターや二輪自転車についての使用を主張しましたが、知財高裁2部は、取消対象の指定商品ではないとして、取消審決を維持しました。
本件審判請求は,本件商標の指定商品中「自動車並びにその部品及び付属品」に
ついてされたものであるところ,原告が,「自動車並びにその部品及び付属品」につ
いて,本件審判請求の登録日である平成28年10月3日の前3年以内に本件商標
を使用した事実を認めるに足りる証拠はないし,また,使用していないことについ
て正当な理由があったとも認められない。
したがって,本件商標登録は,その指定商品中「自動車並びにその部品及び付属
品」について取消しを免れないというべきである。
この点,原告は,商標登録の不使用取消審判の請求が認められるのは,請求に係
る指定商品又は指定役務の全部について登録商標の使用がされていない場合である
ところ,原告は,電動スクーターや二輪自転車については本件商標を使用している
と主張する。しかし,商標登録の不使用取消審判の請求は,当該商標の指定商品中
の任意の指定商品についてすることができる。そして,その請求がされた指定商品
のいずれかについて商標の使用が立証されない限り,請求された指定商品すべてに
ついて商標登録が取り消される。しかるところ,本件審判請求は,指定商品を「自
動車並びにその部品及び付属品」としてされたのであるから,「自動車並びにその部
品及び付属品」のいずれかについて商標の使用が立証されない限り,本件審判請求
に係る上記指定商品すべてについて商標登録の取消しを免れない。原告が,電動ス
クーターや二輪自転車について本件商標を使用しているとしても,そのことは,上
記判断を左右するものではない。
◆判決本文
商標「QRコード」について、使用されていたとした審決が維持されました。争点は、商標的使用か、登録商標との同一か等です。
(2)ア 前記(1)アで認定した78頁最下部部分の本件太字部分の記載と本件説
明部分の記載を併せて読むと,本件太字部分のうちの「QRコード(R)リーダー”Q”」
又は「”Q”」の部分が商品名を記載したものであり,本件説明部分が上記商品の機
能等を説明した記載であると認められる。\nそして,上記事実に,本件カタログは,被告の総合カタログであり,被告の商品
の紹介等がされていること,78頁最下部部分には,「ダウンロード(無料)はこち
らから!」との記載とQRコード規格の2次元コードのラベルの記載があり,上記
商品「QRコード(R)リーダー”Q”」又は「”Q”」のダウンロードの案内がされている
ことを併せ考慮すると,78頁最下部部分は,本件商品2に含まれる上記商品「Q
Rコード(R)リーダー”Q”」又は「”Q”」の広告であると認められる。
なお,前記(1)アで認定した78頁最下部部分の記載からすると,上記商品「”Q”」
は,QRコード規格の2次元コードの読み取り等の機能を有するプログラムソ\フト
ウェアであるから,本件商標の指定商品のうちの「電子応用機械器具及びその部品」
に含まれる。
イ 前記(1)アのとおり,使用商標3は,本件商品2の広告である78頁最下
部部分に記載されているところ,前記(1)イのとおり,78頁最下部部分が掲載され
た本件カタログは,要証期間内である平成27年3月6日に本件展示会の会場で頒
布されている。
ウ 次に,使用商標3が、本件商品2についての自他商品等を識別するもの
として使用されているかどうかを検討する。
(ア) 後掲証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。
a 株式会社技術評論社が発行する「最新パソコン用語事典2006−’\n07」及び「最新パソコン・IT用語事典2010−’11」には,「QRコード」\nの項目に,「株式会社デンソーウェーブが開発した,2次元コード(縦と横の両方\n向に意味を持たせてある符号)の一種。・・・1999年にJIS,2000年に
ISOの国際規格として制定されている。」との記載がある(甲24,25)。
b 株式会社秀和システムが発行する「最新標準パソコン用語事典20\n13−2014年版」には,「QRコード」の項目に,「1994年に自動車メー
カーでもあるデンソー社が開発した,バーコードに代わる2次元のマトリクス式コ\nードの1つ。・・・1999年にはJIS X0510に,2000年にはISO
/IEC18004として標準化された。」との記載がある(甲26)。
c 被告は,「QRコードについては(株)デンソーウェーブの登録商標\nです。」との表示をしているほか,「QRコード」には「○R 」の表示を付している\n(甲81,甲92の1,甲98の1,乙1,27)。また,被告以外の会社の開設
した複数のウェブサイトにおいても「QR Code」又は「QRコード」につい
て被告の登録商標である旨の表示がされている(乙23の1〜5)。さらに,原告の\n広告においても,「QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。」との\n記載がある(乙24〜26)。
d スマートフォン用のQRコードリーダー等のアプリのアイコンとして,図形と,その下に「QRコード」,「QR Code」又は「QR code」
と記載されたものが多数存在する(以下,同アイコンを「甲52アイコン」と総称
する。)ところ,甲52アイコンのうちの文字部分は,いずれも,何ら特徴のない白
抜きの文字である(甲52の2)。
e 平成18年8月22日付けの新聞には,「QRコード」は,カメラ付
き携帯電話の普及に伴い,爆発的に普及したものであり,現在は被告の登録商標で
あるとの記事がある(甲70)。
(イ) 前記(ア)の事実によると,「QR Code」及び「QRコード」は,2
次元コードの規格の一種であると認識されることがあるものと認められるが,他方,
被告は,本件商標登録を有しており,前記(ア)のとおり,「QRコードについては(株)
デンソーウェーブの登録商標です。」との表\示をしたり,「○R 」の表示を付して,\n商標登録を有していることを広く知らせており,また,前記(ア)のとおり,被告以外
の会社も,原告を含め,そのウェブサイトや広告において,「QR Code」又は
「QRコード」が被告の登録商標である旨の表示をしていることを考慮すると,「Q\nR Code」又は「QRコード」が常に2次元コードの規格の一種であるとのみ
認識されると認めることはできず,自他商品等の識別機能を発揮する態様で使用さ\nれることがあり得るというべきである。
(ウ) 使用商標3は,前記(1)ア(ア)のような態様で表示されているもので,\n他の記載とは独立して表示されている。そして,使用商標3は,「Q」の文字の右\n端の部分と「R」の文字の左端の部分が重なっており,僅かではあるが図形化され
ており,赤色で表示されているものであって,単に,商品名であると認識される「Q\nRコードリーダー”Q”」又は「”Q”」の説明として記載されているものと認めるこ
とはできず,上記商品についての識別標識として記載されているものと認められ,
本件カタログを見た需要者・取引者もそのように認識するものと認められる。
したがって,使用商標3は,本件商品2についての自他商品等の識別機能を有し\nていると認められる。
なお,甲52アイコンの各文字部分は,使用商標3とは表示態様が全く異なるか\nら,甲52アイコンの存在によって,使用商標3が自他商品等の識別機能を有しているという上記の判断が左右されるものではない。\n
(エ) 原告は,「QR コード」及び「QR Code」の文字からは,2
次元コードの規格の一種であるQRコード規格との認識しか生じ得ないことは,特
許庁が15例にも上る拒絶理由通知及び拒絶理由で一貫して認定していると主張す
るが,いずれも本件とは異なる事例についての特許庁の判断であり,使用商標3が
自他商品等の識別機能を有しているとの上記の判断が左右されるものではない。\nまた,原告は,「『QR Code』はデンソーウェーブの登録商標です。」との表\
示は,虚偽表示(商標法74条1号違反)であると主張するが,後記エのとおり,\n本件商標は,「QR Code」と社会通念上同一のものであるから,この表示が虚\n偽表示ということはできない。\n
(オ) 原告は,1)本件カタログに用いられている商標は「DENSO WAV
E」又は「デンソーウェーブ」である,2)使用商標3は,本件カタログのうち,Q
Rコード規格についての解説等をする頁で使用されており,被告の製品を紹介する場面で使用されていないから,一般の需要者・取引者からは,単に当該2次元コー
ドが「QRコード規格に基づいた2次元コード」であると理解されるにすぎず,自
他商品等の識別標識として理解されることはない,3)使用商標3,「ダウンロード
(無料)/はこちらから!」という記載及びQRコード規格の2次元コードの配置
からすると,使用商標3が本件商品2のアプリとの具体的関係において使用されて
いると理解することは不可能である,4)本件商品2は本件カタログの78頁のQR
コード規格等についての技術的な解説,紹介の中で隅に記載されているにすぎない
ことからすると,本件カタログが本件商品2を紹介するものではなく,本件商品2
の広告に該当しないと主張する。
しかし,既に認定,判断したとおり,使用商標3は,78頁最下部部分において,
本件商品2についての広告として使用されているものであり,このことは,本件カ
タログの商標として「DENSO WAVE」又は「デンソーウェーブ」が使用され\nていることや使用商標3が本件カタログの「基礎知識」の頁に記載されていること
によって妨げられるものではなく,また,前記(1)ア(ア)で判示した78頁最下部部分
の記載内容からすると,使用商標3は,本件商品2との具体的な関係において使用
されていることも明らかであるから,原告の上記主張はいずれも理由がない。
エ 次に,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるかどうかについ
て検討する。
(ア) まず,本件商標は,別紙1のとおり,「QR コード」及び「QR C
ode」を上下二段に配置した商標であり,上段の「コード」の部分は,下段の「C
ode」の部分を片仮名にしたものと理解されるから,「キューアールコード」の称
呼が生じ,また,QRコード規格の2次元コードの観念が生じる。
一方,使用商標3からも,「キューアールコード」の称呼と,QRコード規格の2
次元コードの観念が生じる。
このように,本件商標と使用商標3とは,称呼及び観念において共通する。
(イ) 次に,本件商標と使用商標3の外観を比較すると,使用商標3は,本
件商標の下段の「QR Code」とは,同一の文字綴りであり,上段の「QR
コード」とは,片仮名及びローマ字の文字表示を相互に変更するものであり,この点で共通性が認められるが,1)本件商標は,「QR コード」及び「QR Code」
の標準文字が上下二段に配置されているのに対し,使用商標3は,「QR Code」
のみから構成されている点,2)使用商標3は,「Q」の文字の右端の部分と「R」の
文字の左端の部分が重なっており,同重なり部分が,両文字の一部を兼ねているよ
うに 図形化されている点,3)使用商標3は,赤色で記載されている点で異なって
いる。
しかし,前記(ア)のとおり,「QR コード」は,「QR Code」の「Code」
の部分を片仮名にしたものと理解されるのであり,「QR コード」及び「QR C
ode」の称呼及び観念は同一であることからすると,上記1)の相違点の存在が,
使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与えるもの
ではないというべきである。
また,「Q」の文字と「R」の文字が重なった部分は僅かであり,双方の文字を独
立した文字として認識できること,図形化の程度も僅かであることからすると,上
記2)の相違点の存在が,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの
判断に影響を与えるものではないというべきである。
さらに,商標に色を付けても,通常,商標の同一性を失わせるような変更とはえ
いないから,上記3)の相違点の存在が,使用商標3が本件商標と社会通念上同一といえるか否かの判断に影響を与えるものではないというべきである。
(ウ) 以上からすると,使用商標3は本件商標と社会通念上同一であると認
められる。
(エ) この点について,原告は,本件商標上段の「QR コード」から下段
の「QR Code」以外のものを想起させるし,下段の「QR Code」から
上段の「QR コード」以外のものを想起させると主張するが,本件商標は,「QR
コード」と「QR Code」を上下段に配置した商標であって,前記ウのとお
り,「QR コード」及び「QR Code」が2次元コードの規格としても知られ
ていることを考慮すると,「QR コード」と「QR Code」からそれら以外の
ものを想起することは考え難いというべきである。このことは,被告が「QR コ
ード」と「QR Code」について商標登録出願をしていることによって左右さ
れるものではない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
オ 次に,本件商品2が商標法上の「商品」に当たるかどうかについて検討
する。
(ア) 後掲証拠によると,以下の事実が認められる。
a 被告の開設しているウェブサイトには,平成26年11月6日付け
で,以下の記載がある(甲61)。
(a) 「デンソーウェーブとレピカが資本・業務提携/QRコード(R)によ
るクラウドサービス『Q−revoTM』活用の第一弾として,/食品及び工業製品
の『トレーサビリティ』サービスの提供を開始」
(b) 「レピカは,子会社であるアララ株式会社を通じてスマートフォン
事業を手がけており,コンシューマー向けにQRコードをトリガーとしたAR(A
RAPPLI(アラプリ)』を展開しています。両社はこれまでにより精度の高いス
マートフォン向けQRコードリーダーアプリの開発において共同でプロジェクトを
行っており,今後更に両者のノウハウを活用してより付加価値の高い事業を展開し
ていくため,デンソーウェーブがレピカに出資することにしました。」\n
(c) 「両社は,今後,『Q−revo』および『QR Code Re
ader “Q”』を活用し,食品をはじめ,工業製品において,『トレーサビリテ
ィ』をキーワードに両社のノウハウを活かしたサービスを展開していきます。」
b payment naviのウェブサイトには,平成26年11月
10日付けで,以下の記載がある(乙16)。
(a) 「デンソーウェーブとレピカがQRコードによるクラウドサービス提供」\n
(b) 「両社では,提携の第一弾として,SQRC,フレームQRなど,
進化したQRコードの生成・配信,読み取り,データ蓄積を行うクラウドサーバと
『QR Code Reader “Q”』を活用した次世代型サービス『Q−re
vo』を開発。今後は,食品や工業製品において,『トレーサビリティ』をキーワー
ドに両者のノウハウを活かしたサービスを展開していく方針だ。」
(c) 「なお,具体的な売り上げ目標については,トレーサビリティシス
テムの検証を進め,サービスとして整った際,発表する方針だ。」\n
(イ) 商標法上の商品というためには,商取引の対象となり得ることが必要
であり,そのためには,必ずしも当該商品が有償で譲渡される必要はなく,当該商
品自体は無償で譲渡されるものであっても,当該商品の譲渡によって利益を得る仕
組みがあり,その仕組みの一環として,当該商品が無償で譲渡されるのであれば,
当該商品は交換価値を有し,商取引の対象となっていると認めることができるとい
うべきである。
前記(1)ア(ア)で認定した事実からすると,本件商品2は,無償でダウンロードでき
ることが認められるが,前記(ア)で認定したウェブサイトにおける記載からすると,
被告は,アララ社と共同で,本件商品2を活用したサービスを展開していく計画を
有していることが認められるところ,同サービスを利用するためには,本件商品2をスマートフォンにダウンロードしておく必要があるのであるから,本件商品2の
無償配布は,同サービスの展開に大きく寄与するものと考えられ,したがって,本
件商品2の無償配布は,本件商品2を利用したサービスを提供し,同サービスの提
供によって利益を得るというビジネスモデルの一環としてされたものと評価できる。
したがって,本件商品2には交換価値があるものと認められ,本件商品2は,商
取引の対象となり得るというべきである。
なお,このように,本件商品2を無償配布した上で,本件商品2を活用したサー
ビスを提供することにより利益を得るというビジネスモデルにおいても,本件商品
2を無償配布する際の商取引の対象は,あくまでも本件商品2であり,使用商標3
は,本件商品2の広告に付されたものであり,上記サービスの商標として使用され
たものではない。
カ 以上のとおり,被告は,本件商標と社会通念上同一であると認められる
使用商標3を付した,商標法上の「商品」に当たる本件商品2の広告を,要証期間
内に頒布したことが認められる。
キ 原告は,使用商標3は,197号商標の一部にすぎず,使用商標3のみ
が独立して認識されることはない,被告は本件QRアイコンについて商標の登録を
受けているから,本件商品2の識別標識となり得るのは本件QRアイコンのみであ
る,197号商標が登録された以降は,本件商品2について197号商標を表示す\nる行為は,専ら197号商標を使用するものであることから,本件パンフレットに
表示されている商標は,197号商標であって,使用商標3ではないなどと主張す\nる。
しかし,使用商標3は,前記(1)ア(ア)のとおり,本件カタログの78頁最下部部分
に記載されており,本件QRアイコンとは完全に独立していることは明らかである
から,197号商標が登録されているかどうかや本件QRアイコンについて商標登
録がされているかどうかにかかわらず,独立の商標として認識できるものである。
また,同一の商品の商標として,複数の商標を付することも認められるから,1
97号商標が登録された以降は,その一部である使用商標3を商標として使用でき
ないという理由はない。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
ク 原告は,本件商品2に係る無料アプリは,アララ社が提供するものであって,被告が提供するものではないから,被告が,本件カタログにアララ社が提供
する本件商品2を掲載すると共に使用商標3を付して頒布したとしても,商標法5
0条1項の「使用」に該当することはないと主張する。
しかし,本件カタログにおける広告は,被告が,前記オで認定したビジネスモデ
ルの一環として行っているものであって,本件商品2はアララ社が提供するもので
あったとしても,前記認定の本件商標の「使用」の事実が左右されることはない。
◆判決本文
2019.01. 7
BlogMagaとブロマガの二段併記の登録商標について、カタカナ表記のみを使用証明として提出しましたが、登録商標と同一ではないとして、特許庁にて取り消されました。知財高裁も同様の判断をしました。FC2が商標権者、ドワンゴが取消審判請求人です。二段併記でもそれしか読めない場合は、一方の使用でも登録商標の使用と認めてもらえますが、BlogMaga=ブロマガとしか読めないとまではいえないとの判断です。
本件商標は,前記第2の1(1)のとおり,ゴシック体風の「ブロマガ」
の片仮名とセンチュリー体風の「BlogMaga」の欧文字を上下2段
に配置した商標であり,上段と下段の間は文字の高さの半分程度の間隔が
あり,上段と下段のフォントの大きさは概ね同じで,上段より下段の方が
やや横幅が大きく構成されている。上段の「ブロマガ」部分からは,「ブロマガ」という称呼が生じる。また,下段の「BlogMaga」部分は,「Maga」が大文字の「M」で始まること,「dog」,「frog」のような「og」の語尾を持つ\n一般的な英語で「g」の発音を省略することはないこと,「Blog」は
ウェブログの省略語として浸透している「ブログ」を想起させることから,
全体として「ブログマガ」という称呼が生じるものと認められる。そうす
ると,本件商標からは,「ブロマガブログマガ」という称呼が生じるとい
える。
また,「ブロマガ」及び「BlogMaga」はいずれも造語であり,
特段の観念を生じるとは認め難く,本件商標からは特段の観念を生じない。
イ 他方,本件使用商標は「ブロマガ」の文字のみからなるものであるから,
本件商標とは使用する文字の一部が共通するものの,外観,観念及び称呼
のいずれについても同一とはいえない。
ウ 以上に照らせば,本件使用商標について,本件商標の「書体のみに変更
を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の
表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外\n観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標(本件商標)
と社会通念上同一と認められる商標」ということはできない。
エ また,原告は,原告のウェブサイトのURL中の「blomaga」の
文字の使用について,本件商標と「社会通念上同一の商標」の「使用」に
当たると主張するが,仮にURLにおける「blomaga」の使用が商
標法50条1項所定の「商標」の「使用」に当たるとしても,「blom
aga」は本件商標と外観,観念及び称呼のいずれにおいても同一とはい
えないことは本件使用商標と同様であるから,本件商標と「blomag
a」の文字からなる「商標」が「社会通念上同一」であるとは認められな
い。
(2) 原告の主張について
ア 原告は,欧文字の称呼については,特定の発音に固執せず,ある程度幅
のある発音を念頭に,日本における一般的な認識や連想等を含めて,総合
的に判断すべきであるとして,「HongKong」,「Ping-Pon
g」,「Sign」,「Foreign」のように「g」を発音しない例
がしばしば存在する一方,「KING KONG」では「G」を発音する
という風に日本で欧文字を読む際に「g」を発音する場合と発音しない場
合があること,2語からなる外来語や固有名詞等の略語の生成において各
語の冒頭の二拍ずつ取るのが基本であることから,本件商標の下段の「B
logMaga」部分は「ブロマガ」の称呼を生じると主張する。
しかし,原告が指摘する「g」を発音しない例は「ng」,「gn」と
いう語尾を有するから本件商標の欧文字部分には妥当しないし,造語の欧
文字である「BlogMaga」から原告主張の略語が生じるとも認めら
れない。
さらに,原告は,社会一般では「BlogMaga」の表記を「ブロマ\nガ」と記載していることが多いと主張するが,原告がその立証のために提
出した証拠(甲36〜38)から,社会一般において「BlogMaga」
を「ブロマガ」と表記していることは認められない。また,上記(1)アのと
おりの本件商標の構成からは「ブロマガ」が「BlogMaga」の表\音
であるとは認め難い。
イ 原告は,「BlogMaga」は,「Weblog」の略語である「B
log」と雑誌を意味する「Magazine」の略語である「Maga」
が結合された造語であり,いろいろなブログを配信するサービスという観
念が生じ,「ブログ」と「マガジン」の略語が結合した「ブロマガ」から
も,いろいろなブログを配信するサービスという観念が生じるから,「B
logMaga」と「ブロマガ」から生じる観念は同一であると主張する。
しかし,本件商標の「ブロマガ」は4文字の造語で,同種同大のフォン
トが均等の間隔で配置されていることからすれば,「ブロ」の部分を分離
して観念を想起し得るかは疑問であり,「ブロマガ」からブログとマガジ
ンの略語の結合を想起するとはいえない。したがって,「BlogMag
a」と「ブロマガ」がブログとマガジンの略語が結合したものとして理解
され,同一の観念を生じさせるとは認められない。
◆判決本文
関連事件です。同一商標権についての別の指定役務についての取消審判の取消訴訟です。
◆平成30(行ケ)10102