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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不使用

令和3(行ケ)10061  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年11月4日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判事件です。商標権者の使用について立証責任は権利者にありますが、特定技術を用いて製造されたか否かの立証までは、被告の防御の準備の機会を著しく損なうとして、使用義務を果たしていると知財高裁2部は、審決の判断を維持しました。

ア 原告は,本件商標の使用が特定乳化技術を用いて製造した化粧品ではない化 粧品についてのものであることまで被告が主張立証しなければならないと主張する が,既に判示したとおり,同主張を採用することはできない。
イ 原告は,その主張の根拠として商標法50条2項を挙げるところ,同項は, 「その請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をし ていることを被請求人が証明しない限り」と定めるが,上記のうち「その請求に係 る指定商品又は指定役務」という文言から,直ちに,本件商標の使用が特定乳化技 術を用いて製造した化粧品ではない化粧品についてのものであることまで被告が主 張立証しなければならないとはいえない。
商標法50条が定める取消審判請求の審理の対象となる指定商品の範囲は,設定 登録において表示された指定商品の記載に基づいて決められるのではなく,審判請求人において取消しを求めた審判請求書の「請求の趣旨」の記載に基づいて決めら\nれるものではあるが,審判請求書の「請求の趣旨」は,審判における審理の対象・ 範囲を画し,取消審決が確定した場合における登録商標の効力の及ぶ指定商品の範 囲を決定づけるという意味のほか,被請求人における防御の要否の判断・防御の準 備の機会を保障するという意味でも重要なものというべきである。
しかるに,本件のように,要証期間における本件商標の指定商品のうち関連部分が第3類「化粧品」であったにもかかわらず,専ら審判請求人において,本件商標の登録の日の後に認知されてきたものとみられる一方で要証期間を通じて周知のものであるとも認めら れない商品の製造方法である特定乳化技術に基づいて,本件審判請求と対の審判請 求とに取消審判請求を分けた上で,被告に対し,対の審判請求においては化粧品が 特定乳化技術に基づいて製造したものであることも含めた本件商標の使用の主張立 証を求め,本件審判請求においては特定乳化技術を用いて製造した化粧品でないこ とをも含めた本件商標の使用の主張立証を求めることは,被告の防御の準備の機会 を著しく損なうものであって,前記のとおり,被請求人において,審判請求に係る 指定商品又は指定役務の「いずれかについて」の登録商標の使用を証明すれば足り ると定める商標法50条2項が,上記のような要請まで含むものとは解されないと ころである。
特に,本件のように,製造方法に係る特定を審判請求人が任意に付し た場合に,商標権者において,自らの商品の製造方法を開示して立証しない限り, 商標登録の取消しを免れないとみることは,商標権者に過度の負担を課すものであ って不合理であることが明らかであり,そのような立証を求めるに帰する原告の主 張は,信義誠実の原則に照らしても採用することができない。

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令和3(行ケ)10046  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年9月29日  知的財産高等裁判所

 不使用取消審判の審決取消訴訟事件です。知財高裁は、指定商品に使用していたとした審決を維持しました。

 本件商標は,「Nクール」の文字を標準文字で表してなるものである。\n次に,本件使用商標は,別紙1のとおり,「Nクール(R)ベストII」の緑色 の文字を表してなるものである。そして,本件使用商標の構\成中の「ベス ト」の文字部分は,本件使用商品(「メッシュベスト」)との関係では, 商品の種類を表すものであり,「(R)」の文字部分は登録商標を意味する記 号及び「II」の文字部分はローマ数字の2を表するものであって,いずれ\nも自他商品識別標識としての機能を有するものと認められないから,本件\n使用商標の要部は,「Nクール」の文字部分であると認めるのが相当である。 そこで,本件商標と本件使用商標の要部の「Nクール」の文字部分を対 比すると,外観は異なるが,構成文字が共通であり,「エヌクール」とい\nう同一の称呼が生じることからすると,本件使用商標は,全体として本件 商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
ウ 以上によれば,被告は,要証期間内の令和2年1月23日から同年4月 2日までの間,日本国内において,本件使用商品に関する広告(本件カタ ログデータ)に本件商標と社会通念上同一の商標である本件使用商標を付 して電磁的方法により提供したものと認められるから,かかる被告の行為 は,本件商標の使用(商標法2条3項8号)に該当するものと認められる。
2 本件使用商品の本件商標の指定商品該当性について
(1) 本件使用商品が本件審判の請求に係る指定商品である第25類「ベスト」 に該当するかについて検討する。
ア(ア) 本件商標の登録出願時(登録出願日平成28年6月20日)に施行 されていた商標法施行令別表(以下「政令別表\」という。)には,第25 類の名称として「被服及び履物」が挙げられている。 また,本件商標の登録出願時に施行されていた商標法施行規則別表(平\n成28年経済産業省令第109号による改正前のもの。以下「省令別表」\nという。)には,第25類に属する商品として「一 被服」を掲げ,その 細分類として定められた「(一) 洋服」から「(十一) ナイトキャップ 帽子」までに商品が例示列挙されているが,「ベスト」については掲げら れていない。
(イ) 次に,本件商標の登録出願時に用いられていた国際分類(第10− 2016版)を構成する類別表\(以下「国際分類類別表」という。)の第\n25類の「注釈」(Explanatory Note)には,「この類 には,特に,次の商品は含まない:特殊な用途に供する被服及び履物(商 品のアルファベット順一覧表参照).」と記載されている。一方で,国際\n分類類別表の「商品のアルファベット順一覧表\」には,「ベスト」(「ve sts」,「waistcoats」)は,第25類に属する商品として掲 げられている。
(ウ) 「ベスト」(「vests」,「waistcoats」)とは,一般に, 「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着の一種」を意味するもの と認められる(甲3,4)。
イ 前記ア認定の政令別表第25類の名称,省令別表\に第25類に属するも のとされた商品の内容,国際分類類別表の第25類の「注釈」において示\nされた商品の説明及び国際分類類別表の「商品のアルファベット順一覧表\」 の記載,「ベスト」の用語の意義を総合考慮すると,本件審判の請求に係る 指定商品である第25類「ベスト」とは,省令別表第25類に属する商品\nとして掲げられた「被服」に含まれる「丈が短く,体にぴったりつく,袖 のない胴着の一種」であって,「特殊な用途に供するものではないもの」と 解するのが相当である。
これを本件使用商品についてみるに,証拠(甲7,8,13の2,14 の3,15の3)によれば,本件使用商品は,メッシュ生地で作られた, 丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着であると認められる。 また,前記1(1)ウの認定事実によれば,本件使用商品は,被告が販売す る「空調服」(電動ファンを内蔵した上着)(甲9)の下に着用する「専用 メッシュベスト」であるが,「空調服」自体,その有する機能から暑さ対策\nが必要となる場面で着用されることが想定された商品であり,実際に,業 界を問わず,様々な場面で利用されており(本件カタログデータの2頁に 「建設,建築業界を始め,土木・自動車・流通・運輸・金属・農業など・・・ 業界を問わず,あらゆるシーンで採用されています。」との記載(前記1(1) ウ(イ))がある。),その用途が限定されていないことからすれば,本件使 用商品も,同様にその用途が限定されていないものと認められるから,「特 殊な用途に供するものではないもの」と認められる。 したがって,本件使用商品は,「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない 胴着の一種」であって,「特殊な用途に供するものではないもの」であるか ら,本件商標の指定商品第25類「ベスト」に含まれるものと認められる。
(2) これに対し原告は,1)類似商品・役務審査基準によれば,第25類は,細 分類として「被服」を含み,更にこの「被服」は「洋服,コート,セーター 類,ワイシャツ類」を含み,このうちの「セーター類」には「3 セーター 類 カーディガン,セーター,チョッキ」が含まれるところ,「ベスト」(「v ests and waistcoats)」は,「1 洋服」とは別の「3 セーター類 カーディガン,セーター,チョッキ」の中に分類されており, これに準じるものでなければならないから,洋装ファッションとしての「機 能又は用途」と,それにふさわしい「材料」を有するものでなければならな\nい,2)「メッシュベスト」(本件使用商品)は,保冷剤を保持するための装着 具であり,洋装ファッションとしての「機能又は用途」を有せず,また,単\n純にメッシュ(網)を,保冷剤を保持するように縫製したものにすぎず,保 冷剤を装着せずに使用することは実用性がなく実際上も考えられない特別な 「材料」からなり,保冷具の一部材にすぎないから,洋装ファッションとし てのベストではなく,第25類の一般的な被服に属する「ベスト」(類似群コ ード17A01)の範疇に属する商品であるとはいえない旨主張する。 しかしながら,1)については,本件審判の請求に係る指定商品である第2 5類「ベスト」は,省令別表第25類に属する商品として掲げられた「被服」\nに含まれる「丈が短く,体にぴったりつく,袖のない胴着の一種」であって, 「特殊な用途に供するものではないもの」と解すべきであることは,前記(1) イ認定のとおりである。また,省令別表には,第25類に属する商品として\n掲げた「一 被服」の細分類の「(一) 洋服」から「(十一) ナイトキャップ 帽子」までに「ベスト」は掲げられていないが,上記細分類に掲げられた商 品は,第25類に属する商品の例示列挙であるから,第25類「ベスト」は, 上記細分類中の「(三) セーター類 カーディガン セーター チョッキ」 に準じるものでなければならないと解すべき理由はない。また,国際分類類 別表の第25類の「注釈」において示された商品の説明(前記(1)ア(イ))に 照らしても,第25類「ベスト」は,洋装ファッションとしての「機能又は\n用途」とそれにふさわしい「材料」を有するものでなければならないと解す べき合理的な根拠はない。
2)については,本件使用商品は,メッシュ生地で作られた,丈が短く,体 にぴったりつく,袖のない胴着であるが(前記(1)イ),その材料は特殊なもの であるとはいえず,保冷剤を装着することができるという機能を有するとし\nても,そのことによって本件使用商品が保冷具の一部材にすぎないものであ るともいえない。また,上記のとおり,第25類「ベスト」は,洋装ファッシ ョンとしてのベストに限られるものではない。 したがって,原告の上記主張は,理由がない。

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令和3(行ケ)10047  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年9月15日  知的財産高等裁判所

 不使用であるとした審決が取り消されました。商標権者は、訴訟にて使用の事実を示す新証拠を提出しました。

 これに対し被告は,1)本件各写真(甲28)の撮影日が2018年11月 14日であることについては,客観的な裏付けがなく,撮影日が同日である ことは疑わしい,2)発行名義を桂ヶ丘開発とする「精算書控」及び「御精算書」 (甲46の1ないし9)は,本件審判段階では提出されず,本件訴訟に至って 初めて提出されたものであること,桂ヶ丘開発は原告が代表取締役を務める会\n社であり,発行名義を桂ヶ丘開発とする精算書をいつでも作成できること,令 和3年6月20日に本件ゴルフ場のクラブハウス内の物販コーナーで「福米」 を表示した米が販売された際に発行された「御精算書」(乙1)には,「福米」\nの文字の記載がなく,甲46の1ないし9記載の発行日付当時に実際に発行さ れていた精算書に「福米」の文字が表示されていたものとは,にわかに信用し\n難いことに照らすと,甲46の1ないし9の証明力は低い,3)桂ヶ丘開発が本 件ゴルフ場の利用者に対して福米2018を販売したとの原告の主張は,原 告が本件審判段階で本件ゴルフ場のクラブハウス内で一般客に対して自ら商 品「米」の販売を行ったと主張していたこと及びその立証のために提出され た桂ヶ丘開発の取締役会議事録(甲45)の記載と矛盾する旨主張する。 しかしながら,1)については,本件各写真(甲28の2枚の写真)の画像デ ータ(甲56)の「プロパティ」の「詳細」の「撮影日時」欄にそれぞれ「2 018/11/14 13:24」(甲28の「下」の写真に係る画像データ) 及び「2018/11/14 13:25」(甲28の「上」の写真に係る画 像データ)と表示されていること,本件各写真に写された本件価格表\には「期 間限定」,「福米2018」及び「2018年11月末日までの限定価格。」と の表示があり,その表\示内容は,本件各写真の撮影日時が「2018/11 /14 13:24」及び「2018/11/14 13:25」であるこ とと矛盾しないことに照らすと,本件各写真の撮影日は2018年11月1 4日であると認められる。被告が1)について指摘する原告提出の他の写真(甲 15,29ないし31)に日付が入っていない点,本件ゴルフ場のクラブハウ スのフロント付近で日常的に販売されている商品を写真撮影する理由も考え難 い点,同日以外の日に他の客の少ない時間にフロント前に商品を陳列し,写真 撮影することは容易であるとの点は,上記認定を覆すものではない。
次に,2)については,甲46の1ないし3,5ないし7は,桂ヶ丘開発が 運営する「桂ヶ丘カントリークラブ」作成名義の「精算書控」,甲46の8は, 甲46の3の「精算書控」に対応する「桂ヶ丘カントリークラブ」作成名義 の「御精算書」であり,それぞれ利用者の氏名,「お客様番号」,発行日時, 「精算金額」のほか,「精算項目」欄にプレーフィ,利用税等とともに,「福 米(5kg)」,「数量」欄に「1」又は「2」,「単価」欄に「2,200」, 「金額」欄に「2,200」又は「4,400」との記載があり,その体裁に 特段不自然な点は認められないから,甲46の1ないし3,5ないし8の記載 内容は信用できるものといえる。この点に関し被告が提出する「桂ヶ丘カント リークラブ」作成名義の「御精算書」(乙1)には,「2021年6月20日 1 3:29」,「精算項目」欄に「〈軽〉新米(2kg)」,「数量」欄に「1」,「単 価」欄に「800」,「金額」欄に「800」と記載され,「福米」の記載はな いことが認められる。しかし,乙1は,要証期間経過後の令和3年6月20 日に単価800円で販売された「新米(2kg)」の精算書であり,甲46の 1ないし3,5ないし8に係る「福米」とは販売時期が異なること,本件各 写真に撮影された本件価格表に表\示された「福米2018」の「2kg」の 販売価格「700円」と単価が異なることに照らすと,乙1に係る「新米(2 kg)」は,甲46の1ないし3,5ないし8に係る「福米」と異なる商品で あると認められるから,乙1に「福米」の記載がないことは,甲46の1な いし3,5ないし8の記載内容の信用性を揺るがすものではない。また,原告 は,本件審決において本件審判段階で主張した本件商標の使用の事実が認め られなかったため,本件訴訟において,本件商標の使用の事実を改めて整理 して主張し,その立証のため,甲46の1ないし9を新たに提出したものであ るから,甲46の1ないし9が本件審判段階では提出されなかったことや桂 ヶ丘開発は原告が代表取締役を務める会社であることは,甲46の1ないし3,\n5ないし8の信用性を左右する事情には当たらない。 さらに,3)については,本件審決は,原告による「桂ヶ丘カントリークラ ブ」(本件ゴルフ場)のクラブハウス内の物販コーナーにおける「米」の販売 に係る本件商標の使用の主張について,平成30年10月1日に開催された 桂ヶ丘開発の取締役会議事録(審判乙34・本訴甲45)には,「第1号議案 として,本件商標権者が個人事業主として生産している米(福米2018) を桂ケ丘カントリークラブのロビー内の物販コーナーで販売することについ て承認された旨の記載があるが,当該米についての販売期間の記載はない。」 (審決書13頁36行〜14頁1行)として,上記主張は認められない旨判 断した。原告は,本件審決の上記判断を踏まえて,本件訴訟において,上記 物販コーナーにおける「米」の販売に係る本件商標の使用の主体を,原告か ら原告が代表取締役を務める桂ヶ丘開発に構\成し直して,桂ヶ丘開発が本件 ゴルフ場の利用者に対して本件ステッカーが米袋に貼付された福米2018\nを販売したとの主張をするに至ったものと認められるから,原告の主張の変 遷が不自然であるということはできないし,上記取締役会議事録の記載と矛 盾するということもできない。

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令和2(行ケ)10151等  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年7月29日  知的財産高等裁判所

 不使用であるとした審決が取り消されました。

1 取引に係る認定事実
(1) 証拠(甲6の2,甲12の2,甲20,23,24)によると,1)原告が,愛知県在住の特定人(以下「A」という。)から,令和2年1月10日,PayPalで1万7940円の支払を受けたこと及び2)同支払を原告に連絡するPayPalからのメールには,同支払金額について,「エクス:バイアージュ6個(送料無料)」,「¥17,940JPY」が,数量「1」であるとの記載があることが認められる。また,証拠(甲13の2)によると,3)問い合わせ番号「6271−4993−2452」のレターパックプラスについて,令和2年1月12日に福岡県で引受けがされ,同月13日に愛知県の届け先に届けられたことが認められる。さらに,証拠(甲7の2,甲28の3)及び弁論の全趣旨によると,4)原告が「6271−4993−2452」と記載されたレターパックプラスの追跡番号シールを所持しており,同シールは,本件納品書写し(甲7の2)と同一内容の納品書の控え(甲28の3)の裏面に貼付されていることが認められる。\n
(2) 本件チラシ(甲4)には,「送料無料」,「美容クリーム(エクスバイアージュ)¥2,990」との記載がある。また,原告が提出する別のチラシ(甲3)には,「特別販売(2,990円&送料無料)」,「感謝を込めて【1個2,990円&送料無料】の特別販売続行中」との記載がある。なお,同チラシには,「EX:biargue(エクスバイアージュ)」について「40,000円(税込)」との記載もある。さらに,本件サイト(甲5)には,「EX:biargue」との表示がされたクリームの瓶の写真及び本件使用商標1−2の表\\示(別紙3の2)の右側に,「特別販売キャンペーン」,「1個(送料無料)2,990円」,「6個(送料無料)17,940円」などの記載がある。以上の各チラシ及び本件サイトの各記載は,上記(1)2)の事実と整合するもので,上記(1)2)の事実と合わせると,上記(1)1)のAからの支払が,本件チラシに記載された「美容クリーム(エクスバイアージュ)」(本件使用商品1)6個の代金の支 払であることを推認させるものである。
(3)ア本件納品書写し(甲7の2)及びこれと同一内容で上記(1)4)のとおり裏にレターパックプラスの追跡番号シールが貼付された納品書の控え(甲28の3)の記載内容をみると,「今回の商品配送詳細【無料】」,「【商品名】日本郵便・レターパックプラス(対面でのお受取)」,「【追跡番号(商品番号)】627149932452」との記載のほか,「商品」として「美容クリーム」,「単価」として「¥2,990」,「個数」として「6」,「計」として「¥17,940」,「備考」として「送料無料」の記載があり,宛名欄にはAの氏名の記載がある。そして,本件納品書写し及び上記納品書の控えには,上部に,「DOLGES」の文字の下に「D」及び「S」を重ねるように組み合わせて円で囲んだ図形を配置した商標(以下「本件使用商標1−3」という。)が表\\示され,右下部に本件使用商標2−2が表示されている。\n
イ上記アの事実に,上記(1)1)〜4)の事実及び上記(2)のとおり推認される事実を併せ考慮すると,原告が,上記(1)1)の令和2年1月10日のAからの支払を受けて,本件チラシに記載された「美容クリーム(エクスバイアージュ)」(本件使用商品1)6個を発送し,それが同月13日に愛知県在住のAに届けられたという事実が推認され,この推認を覆す事情は認められない。
(4) 原告の本人尋問における供述及び陳述書(甲25)の記載(以下,併せて「原告供述等」という。)によると,原告が,上記(1)1)の令和2年1月10日のAからの支払を受けて,本件使用商品1(6個)に,本件納品書の写し(甲7の2)の原本及び本件チラシ(甲4)を同封したレターパックプラスを発送し,それが同月13日にAに届けられたという取引(以下「本件取引」という。)の事実が認められる。原告供述等は,上記(1)〜(3)で指摘した各事実と整合しており,本件取引について述べる部分について,その信用性を否定すべき事情は見受けられない。2本件商標1及び2の使用について(1)ア本件チラシ(甲4)には,本件使用商標1−1を紙製の外装箱に表示し\nた美容クリームである本件使用商品1の写真(別紙3の1)が掲載されているとともに,本件使用商標2−1を容器側面に表示した美容ミストである本件使用商品2の写真が掲載されている。本件チラシは,原告が作成したものである(原告供述等,弁論の全趣旨)。
イ本件納品書写し(甲7の2)には,前記1(3)アのとおり,本件使用商標1−3が表示されている。本件納品書写しの原本は,原告が作成したものである(原告供述等,弁論の全趣旨)ウ本件使用商標1−1及び1−3は,本件商標1と,本件使用商標2−1は,本件商標2と,それぞれ社会通念上同一であると認められる。\n
(2) 上記(1)の事実及び前記1(4)のとおり認められる本件取引の事実からすると,本件商標1及び2の商標権者である原告が,要証期間内である令和2年1月10日から同月13日までの間に,本件商標1の指定商品のうち「化粧品」に含まれる本件使用商品1について,本件商標1の使用(商標法2条3項2号[商品の包装に標章を付したものの譲渡],8号[広告に標章を付して頒布])をするとともに,本件商標2の指定商品のうち「化粧品」に含まれる本件使用商品2について,本件商標2の使用(同項8号[広告に標章を付して頒布])をしたものと認められる。

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令和3(行ケ)10003  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年7月19日  知的財産高等裁判所

 知財高裁(1部)は、Webサイト上の使用について、使用証明が要証期間内のものかが不明として、使用ありとして審決を取り消しました。

 被告は,平成28年頃,本件サービスの有料会員のみが閲覧可能な本件ウェ\nブサイトの本件トップページ(甲15)に本件使用商標が表示された本件バナ\nーを,本件バナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件 ウェブページ(甲17)に本件バナーの画像をそれぞれアップロードして,本 件バナー及びその画像を掲載したこと,ファンプラス社が,令和2年4月1月 以降,本件トップページ及び本件ウェブページにそれぞれ本件バナー及びその 画像を継続的に掲載したことにより,被告又はファンプラス社が要証期間内に 本件使用商標を使用した旨を主張するので,以下において判断する。
(1) 甲15は,本件トップページを印刷した書証であり,甲15には,「Fの ぶらり商店街」の見出しの下に,別紙記載の本件バナーを含む複数のバナー が表示されている。また,甲17は,本件ウェブページを印刷した書証であ\nり,甲17には,「美少女図鑑 作品一覧」の見出しの下に,本件バナーの 画像が表示され,その画像の下には,複数の電子写真集のサムネイルが表\示 されている。本件バナーには,別紙記載のとおり,女性を被写体とする3枚 の写真(本件写真1ないし3)を背景に,白く縁取りされたピンク色の書体 の「美少女図鑑」の文字からなる本件使用商標が表示されている。\nそして,証拠(甲15,17,32)及び弁論の全趣旨によれば,本件ト ップページに表示された本件バナーのリンク先が本件ウェブページであるこ\nと,本件ウェブページに表示された各サムネイルの横には,例えば,「女子\n校生 先輩は僕のいいなり A 2018−09−01」,「女子校生 純 白 B 2018−09−01」等の記載があることが認められる。 しかしながら,甲15及び17は,いずれも要証期間経過後の本件審判請 求後に印刷されたものであるから,甲15及び17が存在するからといって, 要証期間(平成29年6月18日から令和2年6月17日までの間)に,本 件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像が表示され\nていたものと直ちに認めることはできない。 また,本件バナーのアップロード時のログ等の電子記録は提出されておら ず,平成28年頃,本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及 びその画像がアップロードされて掲載されたことを客観的に裏付ける証拠は 存在しない。
もっとも,甲17には,本件ウェブページに表示された各サムネイルに係\nる「2018−09−01」等の日付の記載があるが,これらの日付は,当 該サムネイルに係る電子写真集の販売開始日等を示したものとうかがわれ, また,本件バナーのアップロード時期とサムネイルのアップロード時期が当 然に同じ時期になるものとはいえないから,これらの日付から,本件バナー が平成28年頃にアップロードされたものと認めることはできない。
(2)次に,C作成の令和3年4月14日付け陳述書(乙3)中には,1)Cが代 表取締役を務める友ミュージック社は,およそ5,6年前に,被告の依頼を\n受け,本件ウェブサイトの会員限定ページに本件バナーをアップロードした, 2)同ページの本件バナーとリンクさせる形で,美少女図鑑のコンテンツ用ペ ージをアップロードした,3)その後,本件バナーはアップロード時と同じ状 態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで本件バナーに変 更を加えていない旨の記載部分がある。 しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は, およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,上記記載部分は,本件使用 商標を表示する本件トップページ及び本件ウェブページをアップロードした\n時期が「2015年3月25日」であることを証明する旨のC作成の令和2 年9月23日付け証明書(甲20)の記載部分と齟齬するものであるから, 措信することができない。
また,G(以下「G」という。)作成の令和3年6月11日付け陳述書(乙 8)には,1)Gは,被告に在籍していた,今から5,6年前,被告が保有す るコンテンツ(乙5ないし7)から女性3名の写真と本件使用商標を使用し て,本件バナーを作成し,友ミュージック社に依頼して,本件ウェブサイト の有料会員のみが閲覧できる本件トップページに本件バナーを掲載し,本件 バナーのリンク先において,年齢の若い女性を被写体とするコンテンツを一 覧化した本件ウェブページを作成した,2)本件バナーに表示された女性3名\nの写真は,直近1,2年前に出版された,女子高生シリーズの中で比較的新 しい3冊の写真集から選んだものである,3)その後,本件バナーはアップロ ード時と同じ状態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで 本件バナーに変更を加えていない旨の記載部分がある。 しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は, およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,本件バナーの背景の本件写 真1ないし3は,Cが挙げる乙5ないし7(電子写真集1ないし3)記載の 写真と異なる構図の写真であるから,乙5ないし7は,本件バナーのアップ\nロードが平成28年頃にされたことを直ちに裏付けるものでないことからす ると,上記記載部分は措信することができない。 したがって,乙3及び8から,本件トップページ及び本件ウェブページに それぞれ本件バナー及びその画像が掲載されたことを認めることはできない。 他に本件使用商標が表示された本件バナー及びその画像が要証期間内に\n本件トップページ及び本件ウェブページに掲載されていたことを認めるに足 りる証拠はない。

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令和3(行ケ)10013  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年7月20日  知的財産高等裁判所

 不使用取消を請求しましたが、棄却されました。知財高裁も同様に「動画である本件動画における商標の使用は,商標的使用とはいえないと判断をしました。

 事案の性質に鑑み,まず本件商標の使用の有無の点から検討,判断する。 商標法は,50条において,「日本国内」において「商標権者,専用使用権 者又は通常使用権者」のいずれかが「不使用取消審判請求に係る指定役務」 のいずれかについての登録商標の「使用」をしていることを商標権者が証明 しない限り,当該指定役務について当該商標の登録が取り消されると定め, また,2条において,商標とは「業として」使用するものであり,その「使 用」とは,同条3項各号に列記されているのものに限ることを定めている。 したがって,本件において,商標権者である原告は,本件サービス又は本 件チャンネルにおける本件商標の使用が,日本国内において原告又はリンガ フランカ社によって,本件指定役務について,業務に係る標章として同条3 項各号に列記されている態様で行われていることを立証することを要する。
(2)本件サービスにおける本件商標の使用について
ア 前記1(8)のとおり,本件サービスに係る会員認証ページ(甲8)には, 本件商標と同一の商標が表示されており,また,同(1)ウ及び(3)のとおり, 本件サービスは日本国内における日本人も対象としていることが明らか であるから,本件商標は,日本国内において使用されているといえる。 しかしながら,上記ページは,要証期間経過後で本件審判請求がされた 後の平成31年4月16日に印刷されたものにすぎず,要証期間に同ペー ジに本件商標が表示されていたことを直ちに明らかにするものではない\nし,自己のウェブサイトの表示を変えることは容易であるから,この証拠\nだけから要証期間に本件商標が表示されていたことを推認できるもので\nもない。 したがって,要証期間に本件サービスで本件商標が使用されていること を認めるに足りる証拠はないというべきである。
イ 仮に,要証期間に本件サービスに係る会員認証ページに本件商標が表示\nされていたとしても,本件商標は本件指定役務の範囲に含まれる役務につ いて使用されているとはいえない。 すなわち,本件指定役務のうち,「語学に関する知識の教授」,「国際文化 に関する知識の教授」又は「教育研修のための施設の提供」は,人に対す る教育又は知能を開発するための役務であるが,本件サービスは,会員が\nSNSを利用して会員同士で情報発信,情報交換をするものであり,その 際に使用できる言葉をグロービッシュの基本単語1500語又はその派 生語に限定したというにすぎず,実態としては個人間の交流の場を提供し ているだけのサービスである。したがって,本件サービスが主体的に知識 の教授や教育研修を行っているとはいえず,本件サービスを利用すること でグロービッシュについての能力が向上することがあるとしても,それは,\n単なる副次的な作用,効果にすぎない。 そうすると,本件サービスの提供は,「語学に関する知識の教授」,「国際 文化に関する知識の教授」又は「教育研修のための施設の提供」のいずれ にも該当しないというべきである。
ウ したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件サービスに おいて,要証期間に上記各指定役務について本件商標の使用がされていた とは認められない。
(3) 本件チャンネルにおける本件商標の使用について
ア 前記1(4)のとおり,本件動画1)ないし4)には,その冒頭に本件商標と同 一の商標が使用されており,また,本件サービスやグロービッシュ・ラー ニング・センターの案内を内容とするなど日本国内における日本人を対象 としていることが明らかであるから,当該商標は日本国内において使用さ れているといえる。 また,前記1(4)のとおり,本件動画1)ないし4)の投稿日は要証期間開始 前の平成25年3月9日から同年7月9日にかけてであるところ,要証期 間経過後である令和2年10月9日時点においても本件動画1)ないし4) を視聴することが可能であり,同日時点の本件動画1)の視聴回数が750 回,本件動画2)の視聴回数が1125回,本件動画3)の視聴回数が431 回,本件動画4)の視聴回数が437回となっているから(甲10),要証期 間に本件動画1)ないし4)が視聴され得る状態であったことは十分に推認\nすることができる。したがって,要証期間に本件商標が本件チャンネルに おいて使用されたことが認められる(なお,被告は,要証期間に本件チャ ンネルが閉鎖されていた可能性を否定することはできない旨主張するが,\n閉鎖されていたことを疑うに足りる事情は見当たらない。)。
イ しかしながら,本件サービスの提供は,前記(2)イで判示したとおり,「語 学に関する知識の教授」又は「国際文化に関する知識の教授」,さらには「語 学教育に携わる教師の育成のための教育又は研修」のいずれの役務にも当 たらないというべきであるから,本件動画1)ないし4)が本件サービスの案 内を内容とするとしても,それが上記各指定役務に関する「広告」(商標法 2条3項8号)に該当する余地はない。 また,本件動画1)及び2)は,専らグロービッシュそのものの紹介を内容 とするものと把握される動画であって,具体的な役務との関連性が明確に されているとはいえず,この点からも「役務に関する広告」(商標法2条3 項8号)とはいい難いものである。したがって,本件動画1)及び2)におけ る本件商標の使用が,商標法2条3項所定の「使用」に該当するとは認め られない。 さらに,本件動画3)は,専らリンガフランカ社の前記1(1)ウ2)のサービ スの紹介を,本件動画4)は,専ら前記1(1)ウ3)のサービスの紹介を内容と するとものとそれぞれ把握される動画であるところ,前記1(6)及び(7)のと おり,リンガフランカ社は,要証期間前の平成25年9月30日には上記 両サービスを終了させており,原告は,同サービスの運営を引き継いでい ないから,本件動画3)及び4)を「役務に関する広告」(商標法2条3項8号) と捉えるとしても,その内容は,事業として行われていない実態のサービ スに関するものにすぎない。そうすると,本件動画3)及び本件動画4)は, 業として行われている役務について使用されているものではないから,そ こに本件商標が表示されているとしても,その本件商標の使用を商標とし\nての使用と解することはできない。
ウ 以上によれば,本件チャンネルで公開されている動画である本件動画1) ないし4)における本件商標の使用は,いずれにしても商標法2条3項所定 の「使用」とはいえない,あるいは商標的使用とはいえないことになる。
(4) 小括
以上の次第で,本件商標が,要証期間中,本件指定役務のうち,「語学に関 する知識の教授」,「国際文化に関する知識の教授」,「教育研修のための施設 の提供」又は「語学教育に携わる教師の育成のための教育又は研修」の役務 について使用されていたと認めることはできず,また,原告は,本件指定役 務のうち,上記役務を除く役務について要証期間に本件商標が使用されてい る点について具体的に主張立証をしておらず,本件証拠からもその使用をう かがうことはできない。 したがって,要証期間に本件商標が本件指定役務について使用された旨の 立証はないというべきであるから,本件商標の使用者に係る点について判断 するまでもなく,いずれにしても本件審決の判断に誤りはない。

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令和2(行ケ)10127  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年3月25日  知的財産高等裁判所

 商標の不使用が争われた事件で、指定商品「工楽松右衛門の創製した帆布」に使用したのかが争われました。知財高裁は指定商品の意義を検討した上、使用に該当すると判断した審決を維持しました。

(ア) 本件指定商品における「工楽松右衛門の創製した帆布」の意義につい て,まず検討する。
前記(1)エで認定した各文献の記載によると,播州高砂の船頭であった工樂松右 衛門は,江戸時代後期の天明年間に,従来使われていた刺し帆より耐久性や強度な どに優れる織り帆を発明し,それが「松右衛門帆」として全国に伝播し,明治時代 頃まで帆船の帆などとして広く利用されていたものと認められる。 もっとも,前記(1)エの各文献の記載にあるとおり,現代において帆船が用いられ なくなったことに伴い,「松右衛門帆」は急速に姿を消していったものと認められ, B論文(甲7)の表にあるとおり,現代においては,残存する「松右衛門帆」も限\nられたものとなっていたと認められる。そして,前記(1)エの各文献等の記載や前記 (1)ウ(ア)のとおり,被告による「松右衛門帆」の復元に当たって,D教授が改めて 調査を行っていることも考え併せると,被告が,平成22年頃から「松右衛門帆」 を復元したとする本件布地を用いた商品の製造販売を始めるまでの間,「松右衛門 帆」が,具体的にどのようなものであるのかについて,B教授のような一部の専門 家以外の者には,その詳細は不明なものとなっていて,本件指定商品の取引者,需 要者たる一般人が,容易に調査できる範囲の資料から得られる「松右衛門帆」につ いての情報は,前記(1)エ(ア)の各辞典に記載されていた「太い綿糸で織られた幅広 の厚手の帆布」程度のものになっていたと認められる。 このような状況において,前記(1)ウ(ア),(イ)のとおり,被告は,D教授の協力を 得て,神戸大学海事博物館に所蔵されていた,原告らの実父で,帆船について研究 をしていたCによって寄贈された「松右ヱ門帆」という資料名の布の調査に基づい て,1)現在,一般に流通している帆布と異なり,2本の単糸を引き揃えにしている 点や2)緯糸が経糸より3倍太くなっていて,極端に太い点などの特徴を有する布地 (本件布地)による,かばん等の商品の製造販売を始めた。 そして,前記(1)ウ(ウ)認定の被告や御影屋による広告宣伝活動や同エ(イ)f以降 及び同(ウ)の第三者による文献等の記載から分かるとおり,平成22年頃以降から 要証期間中にかけて,被告や御影屋が「松右衛門帆」を復元したとする本件布地を 用いた商品の製造販売を開始して広告宣伝活動を行うことで,「松右衛門帆」とは, 被告が復元した上記1),2)のような特徴を持つ本件布地を指すものであるという認 識が,取引者,需要者の間に広まっていたものと認められる。
そうすると,遅くとも,本件商標を付した本件かばん2が,一般消費者に販売さ れ,平成30年2月5日に納品された時点で,本件指定商品の取引者,需要者は, 「松右衛門帆」,すなわち,「工楽松右衛門の創製した帆布」とは,本件布地のよう な「太い木綿糸を用い,太さの違う経糸と緯糸を2本引き揃えて織った厚く丈夫な 布地」(前記(1)ウ(ア))であると認識していたものと認められる。
(イ) 原告らは,1)本件指定商品中の「工楽松右衛門の創製した帆布」とは,
「天明年間に播州高砂に実在した船頭である工樂松右衛門がはじめてつくりだした 帆布」を意味しており,「松右衛門帆」は,「工楽松右衛門の創製した帆布」の上位 概念であるから,「松右衛門帆」から「工楽松右衛門の創製した帆布」の意義を解釈・ 認定するのは誤りである,2)布の耳部(両端)1寸ほどについては縦糸1本横糸2 本で織り,それ以外の部分については縦糸2本横糸2本で織っている(特徴1)),幅 の長さは2尺5寸(約75センチ)ほどのものである(特徴2))という二つの特徴 を備えないと,「工楽松右衛門の創製した帆布」とはいえない,3)神戸大学海事博物 館所蔵の帆布はその出自が不明である上,耳部が失われているから,「工楽松右衛門 の創製した帆布」とはいえない,4)工樂松右衛門が創製した当時の「松右衛門帆」 に使われていた糸は2.2番手相当であり(甲68),神戸大学海事博物館に所蔵さ れていた帆布や本件布地とは糸の太さが異なるし,織布の密度も異なる上,本件布 地の織り方は他の織り方においても認められる構造である,5)本件指定商品の意義 は,登録事項に基づき客観的に認定判断されるべきであり,商標権者である被告自 身の広告宣伝によって定まるとするのは不当であるなどと主張する。
a 上記1)について
前記(1)エの文献の記載を見るに,各辞典(甲46〜48)では,「工楽松右衛門 の創製した帆布」と「松右衛門帆」を同じものとして扱っており,また,各文献(甲 3〜7)においても,「この松右衛門が開発した,いわゆる『松右衛門帆』」(甲4),「松右衛門帆は,高砂在住の松右衛門帆が天明(1785)に創製した」(甲7)な どと,各辞典と同様に「工楽松右衛門の創製した帆布」と「松右衛門帆」を同じも のとして扱っているから,「工楽松右衛門の創製した帆布」と「松右衛門帆」は同じ ものであると認められ,原告らが主張するように両者が異なるものであるとは認め られず,上記(ア)の認定判断は左右されない。
b 上記2)について
前記(1)エ(イ)a,dのとおり,甲3には「工楽家に現存する帆」として幅3尺の ものが存在する旨の記載がある上,B論文(甲7)の表の中にも,幅が2尺5寸と\nは大きく異なる1尺9寸5分のものが記載されているし,同論文には,「現在の工業 製品と違って,織り幅を規格化していたかどうか疑問で,また,織り手によって多 少差があったのではないだろうか。」と記載されている。そして,前記(1)エ(イ)a, eのとおり,「松右衛門帆」は,人伝いに各地に伝播していったもので,中には地方 において見様見真似で織ったものも存在していた(甲3,4)とされている。そう すると,「松右衛門帆」とされるものの幅やその他の性状といったものについては, 「松右衛門帆」が船の帆として使用されていた当時から既に相当にバラつきがあっ たものと推認できるところである。 また,前記(1)ウ(イ)で認定したように,被告の商品のかばん類に耳部が用いられ ておらず,裁断されるなどして,織り上げられた時点とは幅も異なるものとなって いることからすると,布地の耳部は,一般的に布地から製品を作る際に必ずしも使 用されるものではなく,また,布地の幅も,それぞれの製品に応じて裁断されるな どして異なったものとなると認められるところ,前記(1)エ(イ)d,e のとおり,「松 右衛門帆」は,船の帆として利用されただけでなく,前垂れや覆い,敷物などの他 の用途にも利用されていた(甲4,7)のであるから,そのような中で,「松右衛門 帆」が,幅二尺五寸以外の大きさに加工されたり,耳部がない形で利用されたりす ることもあったものと推認できる。 さらに,現代において,帆船の減少に伴い,「松右衛門帆」の意義が不明確なもの となっていたのは,上記(ア)で認定したとおりである。
以上からすると,「松右衛門帆」が船の帆として使用されていた当時から,特徴1), 2)が,「松右衛門帆」の特徴として広く認識されていたとは認められないし,まして, 「松右衛門帆」の意義が一旦不明確となった以降で,かつ,前記(1)エ(イ)aのとお り,一般に帆布が船の帆に限られず幅広く様々な製品で使われるようになった本件 査定日や要証期間の時点において,特徴1),2)が,「工楽松右衛門の創製した帆布」 の特徴として,本件指定商品の取引者,需要者に認識されていたとは認められず, 原告らの上記主張は,上記(ア)の認定判断を左右するものではない。 なお,原告らは,被告も,耳部が「松右衛門帆」の特徴であるとして宣伝してい る(甲9)から,特徴1)が「松右衛門帆」の特徴である旨主張するが,甲9にも記 載されているように,被告や御影屋が製造販売するかばんには,耳部は使われてい ないのであるから,原告らの上記主張は採用できない。
c 上記3)について
前記(1)ウ(ア)のとおり,神戸大学海事博物館所蔵の帆布は,帆船の研究をしてい た原告らの実父によって寄贈され,同博物館で「松右ヱ門帆」として保管されてき たものであるから,前記(1)ウ(イ)のとおり同帆布の調査に基づいて復元された本件 布地が「松右衛門帆」とはいえないということはできない。原告らが主張する耳部 に関する特徴1)が,現代において,「松右衛門帆」の特徴として,本件指定商品の取 引者,需要者に認識されていたとはいえないことは,上記bで認定判断したとおり であり,原告らの主張はその前提を欠いている。
d 上記4)について 上記bのとおり,「松右衛門帆」が船の帆として使われていた当時から,その規格 にはバラつきがあったものと認められるところ,神戸大学海事博物館に所蔵されて いた「松右ヱ門帆」は,上記cのとおりのものであって,これとは異なる「松右衛 門帆」が存在するからといって,神戸大学海事博物館に所蔵されていた「松右ヱ門 帆」が「松右衛門帆」であることを否定することはできない。 また,神戸大学海事博物館に所蔵されていた「松右ヱ門帆」や本件布地の織り方 が他にも認められる構造のものであったとしても,それが「松右衛門帆」であるこ\nとを否定することにはならない。
e 上記5)について
上記(ア)で認定判断したように,現代において「松右衛門帆」の意義が不確かなも のとなっていたところ,被告や御影屋による広告宣伝活動の結果として,要証期間 までの間にその意義が再度認識されるようになってきているのであり,取引の実情 として,「松右衛門帆」,すなわち,「工楽松右衛門の創製した帆布」の意義を認定す るに当たり,被告や御影屋の広告宣伝活動の結果を考慮に入れることは何ら不当で はないし,上記(ア)で認定判断した事実経過からすると,第三者の地位を著しく不安 定にするということはない。 また,前記(1)ウ(ア),(イ)のとおり,被告は,神戸大学海事博物館において「松右 ヱ門帆」として所蔵されていた,帆船の研究家である原告らの実父が寄贈した帆布 を調査し,これを復元することを試みて,本件布地を完成させている上,本件布地 の特徴が,前記(1)エ(ア)の各辞典に記載されている「松右衛門帆」の特徴と合致す るのみならず,同(イ)の文献に記載されている「松右衛門帆」の特徴とも耳部以外の 点で概ね合致するものであることからすると,被告や御影屋が,本件布地を「松右 衛門帆」,すなわち,「工楽松右衛門の創製した帆布」として販売することは,本件 指定商品の品質について誤認を生じさせて公益を害するものとはいえず,本件にお いて,被告や御影屋の広告宣伝の結果を考慮に入れることは,このような観点から も相当なものといえる。 したがって,原告らの上記5)の主張は採用することができない。
f 小括 以上から,原告らの上記1)〜5)の主張はいずれも採用することができないし,そ の他原告らが主張するところも,いずれも上記(ア)の認定判断を左右するものでは ない。
イ 本件かばんが,「工楽松右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」である のかについて
前記アで認定した本件指定商品における「工楽松右衛門の創製した帆布」の意義 に基づいて,本件かばん2が,「工楽松右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」に 該当するかについて検討する。 前記(1)ウ(ア),(イ)のとおり,被告は,D教授が神戸大学海事博物館において「松 右ヱ門帆」として所蔵されていた帆布についてした調査に基づき復元した本件布地 を使用して,本件かばん2を製作したところ,本件布地は,太い木綿糸を用いて, 2本の単糸を引き揃えにして平織りにし,かつ,緯糸の太さが,経糸より約3倍太 くなっていた厚手の帆布なのであるから,本件布地は,取引者,需要者が観念し得 る「工楽松右衛門の創製した帆布」としての要件を満たすものであったといえる。 したがって,本件布地を使用した本件かばん2は,「工楽松右衛門の創製した帆布 を用いたかばん類」に該当するものであったと認めるのが相当である。 以上のとおり,本件商標の通常使用権者である御影屋は,要証期間内である平成 30年2月頃に本件商標を付した「工楽松右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」 に該当する本件かばん2を一般消費者に販売していたのであるから,本件商標は, 要証期間中に,日本国内において,通常使用権者により,本件指定商品中,「工楽松 右衛門の創製した帆布を用いたかばん類」について使用されていた(商標法2条3 項1,2号)ということができる。

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令和2(行ケ)10095 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年1月26日  知的財産高等裁判所

 商標法50条にて登録を取り消された審決取消訴訟です。知財高裁は、不使用とした審決を維持しました。指定商品は新聞で、使用していたのは電子新聞でした。

ア 原告は,新聞や書籍といった情報伝達媒体に属する商品において,取 引の対象となっているのは,その物理的な性状である紙ではなく,実質的には,そ の内容(コンテンツ)であり,この種の商品の流通とは,情報の流通のことを指し, インターネットを通じて流通できるため,新聞等は紙である必要性はなくなったし, 電子版も含まなければならないから,「紙媒体」に限定した本件審決の判断には誤り がある旨主張する。
商標法における商品に,電子情報財等の無体物が含まれることを否定するもので はないが,たとえ,新聞や書籍などの情報伝達媒体に属する商品が,原告がいうと ころの「その内容(コンテンツ)」に価値を見いだして購入する需要者がいるとして も,いわゆる収集家の如く,紙媒体としての新聞や書籍について,「その内容(コン テンツ)」以外の点に価値を見いだす需要者も存在する。また,インターネットが普 及し,「内容(コンテンツ)」がインターネットを通じて流通することが可能であるとしても,これにより紙媒体としての「新聞」の存在自体が完全に否定されるもの\nではないし,実際に,紙媒体としての「新聞」は依然として流通している。そうす ると,紙媒体としての「新聞」の流通とは,紙媒体としての「新聞」という物品そ のものの流通として捉えられるべきものである。
イ 原告は,本件アンケート(甲28)の結果をもとに,本件商標が指定商 品である「新聞」に実質的に使用されていると主張する。 しかし,本件アンケート調査は,その対象者がどのような条件・方法により抽出 されたものであり,どのような方法によりインターネットを通じて実施されたもの であるかは明らかでなく,本件アンケート調査によって得られた結果が,「電子版の 新聞及び本件ウェブサイトを一般購読者がどのように捉えているか」を示すものと して参酌することはできない。
また,本件アンケートは,ウェブサイト上におけるアーカイブの提供が,「電子化 された新聞の内容を提供(供覧)する役務」に該当するものであるか否かに関する ものであるから,これによって得られた結果を,本件商標が指定商品である紙媒体 である新聞に使用されているか否かを検討するに当たり,参酌することはできない。 さらに,本件アンケートの回答について,原告は,「どちらとも言えない,わから ない」という回答を,「新聞かもしれない,と消極的に感じている」と恣意的に認定 しているから,本件アンケート調査が,「需要者の約75%が本件ウェブサイトを 『新聞』と認識している。」ことを示すものでもない。

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