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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

不正使用

平成30(行ケ)10053  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年9月26日  知的財産高等裁判所

 不正使用取消審判(53条)にて、審決では取消決定がなされました。知財高裁もこれを維持しました。
 上記認定事実からすると,1)被告の靴は,昭和46年頃から本件使用行為がされ た平成25年1月28日までの間に,日本において「スペリー・トップサイダー」, 「スペリートップサイダー」あるいは「トップサイダー」というブランド名で継続 的に販売されており,大手のメーカーや靴の小売店などによって全国的に相当数が 販売されてきたものと推認されること,2)本件使用行為がされた時期に近接した3 年間に,引用商標を付した被告の靴が約5万足販売されていること,3)引用商標は, 被告の靴(デッキシューズ)とともに,本件使用行為に近接する時期である平成1 9年から平成25年までの間に,合計で10回程度,雑誌で取り上げられたほか, 引用商標の要部である「TOP−SIDER」を含んだ欧文字や「TOP SID ER」及びそれを含む欧文字並びにそれらを片仮名読みした文字が多くの雑誌や新 聞で被告の靴(デッキシューズ)とともに紹介されるなどしたこと,4)辞書や小説 にも取り上げられていることが認められる。これらの事実に,引用商標は独創性が 高いものであることや丸井社が本件使用商標について上記認定のような紹介文を付 していたことも考え併せると,引用商標は,平成25年1月28日頃には,被告の 靴(デッキシューズ)を表示するものとして,靴(デッキシューズ)の取引者及び\nその需要者である一般消費者の間で,広く知られていたものと認められる。 この点について,原告は,引用商標が表示されていた雑誌の記事は限られたもの\nである上,「トップサイダー」等の文字が掲載されただけでは引用商標の周知性は基 礎づけられないと主張する。確かに引用商標が表示された雑誌の記載は,上記認定\nのとおり限られた数にとどまるが,被告の靴は長年にわたって相当数が販売されて きたと推認されるところ,引用商標は商品である被告の靴にも付されており,また, 「TOP−SIDER」,「TOP SIDER」,「トップサイダー」等の表示は,\n引用商標の要部又はそれを想起させる表示であって,これらの表\示が数多く雑誌や 新聞に掲載されたことは,引用商標の周知性を基礎づけるものということができる。 なお,原告は,被告の靴の売上額をクラークス社の「CLARKS」ブランドの 売上額との比較で主張しているが,商標の周知性の有無は必ずしも売上額のみで決 まるものではなく,上記の引用商標の周知性についての判断が左右されることはな い。
(3) 本件使用商品と引用商標が付された商品との関連性
本件使用商品であるシャツと引用商標が使用されていた靴(デッキシューズ)は, いずれも身に着けて使用するアパレル製品であって,同じブランドで統一されてコ ーディネイトの対象となったり,同一の店舗内で販売されたりすることがあるもの ということができ,現に証拠(甲11,36,44,70)によると,被告の靴が, 衣料品店でシャツなどの衣料品と一緒に販売されている事例があることが認められ る。また,シャツと靴(デッキシューズ)について,同一の営業主によって製造さ れることもあり得るものである。 加えて,本件使用商品は,一般消費者向けのシャツであって,引用商標が付され ていた靴(デッキシューズ)も,一般消費者向けの商品であると認められるもので ある。 したがって,本件使用商品と引用商標が付された靴とは,販売場所や需要者を共 通にするなど高い関連性を有するものということができる。
(4) 本件商標の使用態様等について
本件使用商標には,本件商標にはない,雲を想起させる図形とヨットの図形が付 加されており,本件使用商標は引用商標と外観上極めて類似したものとなっている。 また,本件使用商標は,本件使用商品の襟の部分に付されていたほか,本件使用商 品には本件使用商標を記載した下げ札が二つ付されており(甲79),本件使用商標 は,取引者や需要者が容易に認識できるような形で使用されていた。
(5) 「他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをした」かどうかについての判断
以上のとおり,引用商標は,被告の靴(デッキシューズ)を表示するものとして\n取引者及び需要者の間で,広く知られているところ,本件使用商品であるシャツと 引用商標が使用されている靴(デッキシューズ)が関連性の高いものであることや, 本件使用商標は,本件商標に雲を想起させる図形とヨットの図形が付加されていて, 引用商標と極めて類似するものであることからすると,本件使用商品に接した取引 者や需要者たる一般消費者にとって,本件使用商品が被告の業務に係る商品である との混同を生じるおそれが十分にあるというべきである。\n (6) 原告のその他の主張について
原告は,別件異議決定(甲101)では,本件使用行為より後の時点でも引用商 標が周知性を獲得していない旨の判断がされていると主張するが,別件異議決定は, 本件とは異なる事件についての特許庁の決定であって,本件についての前記(5)の 判断を左右するものではない。 また,原告は,旧会社は,原告が本件商標を被服に使用しても,出所混同は生じ ないと認識していたと推測されることから,本件において出所混同のおそれはない と主張する。確かに旧会社が,指定商品を「第17類 被服(運動用特殊被服を除 く),布製見回品(他の類に属するものを除く),寝具類(寝台を除く)」とする本件 商標を原告に譲渡したという過去の経緯からすると,旧会社としては,原告が「T OP−SIDER」の欧文字からなる本件商標を,被服等の上記指定商品に使用し ても出所混同は生じないとして容認していたものと推認できる。しかし,そうであ るからといって,そのことから直ちに,旧会社が,水甚社が本件でしていたように, 本件商標に雲を想起させる図形とヨットの図形を付加し,引用商標に極めて類似す る構成で使用することについても出所混同が生じないとして容認していたとはいえ\nないのであるから,前記(5)の判断を左右するものではない。

◆判決本文

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