2024.09.24
平成26(ワ)12570 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成29年1月31日 大阪地方裁判所
以前の判決ですが、漏れていたのでアップします。
使用済みのトナーカートリッジに、インクを詰めたリサイクル品の製造・販売等が,不正競争防止法の品質等誤認惹起行為に該当するとともに、商標権侵害となると判断されました。被告は、販売時に、RFIDをリセットすることで、トナー交換メッセージが表示されるのを解除していましたが、これにともない「シテイノトナーガソ\ウチャクサレテイマス」との表示がなされるようになり、これが品質誤認等に該当するとの判断です。\n
ア 被告は,経済常識によれば,原告京セラDSがリサイクル品を指定,すなわ
ちお墨付きを与えることはあり得ないことから,需要者は,被告商品を原告プリン
ターに装着したときにディスプレイに現れる「シテイノトナー」を原告京セラDS
の主張するような意味に理解することはないと主張するが,原告京セラDSがいか
なる場合にも他社の安価なリサイクル品を指定トナーとすることはあり得ないと断
定する根拠はないのであるから,当該表示が「誤認させるような表\示」であること
は免れないというべきである。
イ 被告は,被告商品がリサイクル品であることが明らかとなるよう純正品であ
ることを否定する打ち消し表示がされていること,プリンターメーカーの純正リサ\nイクル品であればその旨の表示があるはずであるのにそのような表\示がないこと,
また,そもそも需要者はリサイクル品と純正品とを区別して購入しているものであ
ること等を指摘し,本件指定表示が,「誤認させるような表\示」ではない旨主張する。
上記第2の2(3)ウのとおり,被告商品の包装や外箱には,被告商品がリサイクル
品であることが理解できる記載がされているが,プリンターメーカーが新品の純正
品だけでなく,リサイクル品を販売している例もあるし(甲10の1ないし3),プ
リンターメーカーが定める品質が,プリンターメーカー以外が製造するリサイクル
品においてあり得ないとまで断定できない以上,需要者が,被告商品を原告プリン
ターに装着することによりディスプレイに現れる本件指定表示によって,被告商品\nの品質,内容について誤認するおそれを完全に否定することはできない。そして,
この点は,被告商品を原告らとは関係のない業者が製造したリサイクル品と明確に
認識して購入した需要者であっても同様であって,被告の上記主張は採用できない。
ウ 被告は,ステータスページのトナー残量を表示させるためRFIDをリセッ\nトすると,これに連動して本件指定表示が現れるようにする原告純正品にされた設\n定は,不正競争防止法の問題を生じさせるようあえて設定されたものであって,競
争者に対する取引妨害を禁止する独占禁止法の趣旨に反するとし,被告商品による
不正競争該当性を否定すべきである旨主張する。
確かに,原告純正品についてなされた設定が,使用済み原告純正品のカートリッ
ジを再利用してリサイクル品とする場合に,商品として競争力を減殺するものであ
れば独占禁止法上問題とされる余地はあると考えられる。しかし,そもそも,RF
IDをリセットしない原告純正品のリサイクル品であっても,トナー残量が不足し
てきた場合には,プリンターのディスプレイには,「トナーガスクナクナリマシタ」,
「トナーヲコウカンシテクダサイ」との表示がされ,業務上支障がないよう配慮さ\nれているのであるから,プリントする必要があるステータスページのトナー残量が
表示できるようRFIDのリセットをしなければ,原告純正品のリサイクル品の製\n造販売が阻害されるような前提でいう被告の主張は,その点で採用し難い。
また,原告純正品のステータスページにおけるトナー残量表示は,規定量の充填\nされた新品の「シテイノトナー」を前提に,各印刷物のドット量等から使用量を計
算するなどして表示しているというのであるから(弁論の全趣旨),そもそも原告京\nセラDSにおいて規定量が充填されているか否かを確認できないトナーカートリッ
ジを前提にRFIDをリセットして使用することは想定されておらず,そのリセッ
トを自由にさせるよう求めることになる被告の主張はこの点でも採用できない。
したがって,原告純正品にされた,本件指定表示とステータスページを関連づけ\nた設定が独占禁止法の趣旨に反する旨の被告の主張は採用できない。
・・・
(1) 被告商品2には,トナーカートリッジの底面に本件商標が付されており,そ
の表示態様は,被告商品2において,商品の出所を識別表\示させるものといえる。
そして被告商品2は,本件商標の指定商品であるトナーカートリッジであるから,
被告商品2を製造販売する行為は,本件商標権の侵害行為を構成するといえる。\n
(2) これに対し,被告は,被告商品2には,原告らが流通に置いた商品であり,
かつ,リサイクル品であることが一見して明らかな表示を幾重にも施しているから,\n需要者が被告商品2の出所を原告京セラ又はそのグループ会社であると誤認するこ
とはあり得ないとして,被告の行為は本件商標権侵害の違法性を欠く旨主張する。
確かに,上記第2の2(3)ウ(ア)のとおり,被告商品2の本体及び梱包した箱には,
被告商品2がリサイクル品であることが明示されていることが認められる。また,
箱の中に入れられている,「ご使用前の注意」と題する書面,「リサイクルカートリ
ッジトラブル調査票」によっても,被告商品2がリサイクル品であることは明らか
にされていることも認められる。
しかしながら,被告商品2の本体には,製造元等の記載は全く存在しないから,
本体に付された上記のような表示ラベルだけでは,本件商品2の本体に付された本\n件商標の出所表示機能\を打ち消す表示として十\分なものとはいえない。
◆判決本文
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2024.06. 6
令和3(行ケ)10108 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和4年7月14日 知的財産高等裁判所
漏れていたので、アップしました。審決は、本件商標「チロリアンホルン」が引用商標「チロリアン」と類似しないと判断しました。これに対して、知財高裁は、商標「チロリアン」は周知なので、「チロリアンホルン」から、「チロリアン」の抽出が許されるとして、類似すると判断しました。
ア 本件商標は、「チロリアンホルン」の文字をゴシック体で横書きに書して
なり、「チロリアン」の文字部分と「ホルン」の文字部分とから構成される\n結合商標である。本件商標を構成する文字は、外観上、同書、同大、同間\n隔で一連表記されており、構\成文字に相応して、「チロリアンホルン」の称
呼が生じる。
次に、「チロリアン」の文字部分は、「チロルの人々。オーストリア西部
からイタリア北東部にまたがるチロルの山岳地帯に住む人々の用いる独
特の民族服」(ブリタニカ国際大百科事典)、「チロル地方の。チロル風の」
(広辞苑第七版)といった意味を有する語として、「ホルン」の文字部分は、
「角笛。金管楽器」(広辞苑第七版)といった意味を有する語として、一般
に理解されていることが認められる。このような上記各文字部分の観念及
びそれぞれの称呼に照らすと、本件商標を構成する文字は、外観上、同書、\n同大、同間隔で一連表記されていることを勘案しても、本件商標において、\n「チロリアン」の文字部分と「ホルン」の文字部分とを分離して観察する
ことが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているもの
とは認められない。
そして、前記1(2)認定のとおり、標章「チロリアン」は、本件商標の登
録査定日(平成29年1月10日)当時、福岡県を中心とした九州地方に
おいて、菓子の取引者、需要者の間で、特定の菓子(菓子「チロリアン」)
のブランド名として広く認識され、全国的にも相当程度認識されていたこ
とに照らすと、本件商標がその指定商品中の「菓子」に使用された場合に
は、本件商標の構成中の「チロリアン」の文字部分は、菓子のブランド名\nを示すものとして注意を惹き、取引者、需要者に対し、相当程度強い印象
を与えるものと認められる。そうすると、本件商標の構成中「チロリアン」の文字部分は、独立して商品の出所識別標識として機能\し得るものと認められるから、本件商標か
ら上記文字部分を要部として抽出し、これと引用商標1とを比較して商標
そのものの類否を判断することも、許されるというべきである。
イ これに対し、被告は、1)本件商標は、「チロリアンホルン」の文字を横書
きしてなり、各文字の大きさ及び書体は同一であって、その全体が等間隔
に1行でまとまりよく表されており、その文字構\成は一連一体であること
からすると、「チロリアン」の部分と「ホルン」の部分は、分離して観察す
ることが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合している、2)標章
「チロリアン」、「TIROLIAN」は、本件商標の登録出願時及び登録
査定時において、原告の業務に係る商品を表すものとして、取引者、需要\n者の間に広く認識されていたとはいえないから、本件商標の構成中の「チ\nロリアン」の文字部分が、本件商標の指定商品の取引者、需要者に対し、
原告の商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはい
えない、3)菓子「チロリアン」については、発売後ほどなくして、標章「チ
ロリアン」を使用して独自に販売を行う事業主体が複数生じ、平成8年以
降は、標章「チロリアン」を使用する事業主体間で多数の紛争が生じてお
り、標章「チロリアン」について統一的な管理が行われていなかったこと
に照らすと、取引者、需要者は、本件商標の構成中の「チロリアン」の文\n字部分が、複数の事業主体のいずれに係る表示であるかを認識することが\n困難であるから、「チロリアン」の文字部分は、原告の出所識別標識として
強く支配的な印象を与えるものに該当しない、4)菓子「チロリアン」を製
造販売する複数の事業主体について、経済的・組織的な一体性を持つグル
ープといったものが形成されたことはないから、「チロリアン」の文字部分
が、上記のようなグループの識別標識として強く支配的な印象を与えると
評価する余地もない、5)「チロリアン」の文字部分に出所識別機能がない\nにもかかわらず、これがあるかのように評価して結合商標の分離観察を行
い、その結果として、標章「チロリアン」について他の事業主体に比べて
不十分な使用実績しか有しない原告に引用商標1ないし3を含む「チロリ\nアン」の登録商標を独占させるような帰結は、社会的妥当性に欠けるなど
と主張して、本件商標から「チロリアン」の文字部分を要部として抽出す
ることは許されない旨主張する。
しかしながら、前記(1)で説示したとおり、商標の各構成部分がそれを分\n離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結
合しているものと認められない商標においては、商標の構成部分の一部が\n取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印
象を与えるものと認められる場合などのほか、商標の構成部分の一部が取\n引者、需要者に対し、相当程度強い印象を与えるものであり、独立して商
品の出所識別標識として機能し得るものと認められる場合においても、商\n標の構成部分の一部を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較し\nて商標そのものの類否を判断することも、許されると解するのが相当であ
る。
そして、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し、相当程度強い\n印象を与えるものであり、独立して商品の出所識別標識として機能し得る\nか否かについての判断は、商標に接した取引者、需要者において、商標の
どのような構成部分について注意を惹き、どのような印象を受けるかなど\nの観点から判断されるべきものであることに照らすと、その判断において
は、取引者、需要者が、当該構成部分を何人かの出所識別標識として認識\nし得るものであれば、当該構成部分に係る出所自体(例えば、特定の事業\n主体の名称、事業形態、事業主体が単数か、複数か等)について正確に認
識することまでは要しないと解するのが相当である。
被告主張の1)については、前記アのとおり、「チロリアン」の文字部分の
観念及び称呼、「ホルン」の文字部分の観念及び称呼に照らすと、本件商標
を構成する文字が、外観上、同書、同大、同間隔で一連表\記されているこ
とを勘案しても、本件商標において、「チロリアン」の文字部分と「ホルン」
の文字部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほ
ど不可分的に結合しているものとは認められない。
被告主張の2)ないし4)は、取引者、需要者において、本件商標の構成中\nの「チロリアン」の文字部分に係る出所自体(特定の事業主体の名称等)
について正確に認識することまで必要であることを前提とし、上記文字部
分が原告の出所を示す出所識別標識として認識されることを求めるもの
であるから、その前提において採用することができない。
また、被告主張の5)については、結合商標の構成部分の一部を要部とし\nて抽出することができるかどうかの判断は、上記のとおり、当該結合商標
に接した取引者、需要者の認識及び印象に係る問題であって、本件商標と
の関係では、原告による標章「チロリアン」の使用実績の規模等によって
その判断が左右されるものではないから、その前提において採用すること
ができない。
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2024.06. 4
令和5(行ケ)10122 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年5月16日 知的財産高等裁判所
一時期、新聞で騒がれた商標です。商標「雨降」が、商標「AFIRI」から無効か(4条1項11号、同10-15号、19号、7号違反)について争われました。審決は無効理由なしと判断しました。知財高裁も同様です。
本件商標は、「雨降」の文字を筆文字風で、右上方から左斜め下へ書してなるとこ
ろ、当該文字は「[あめふり]雨の降ること。雨が降っている間。」、「[うこう]雨降り。」の意味を有する語であるから、その構成文字に相応して、「アメフリ」又は「ウ\nコー」の称呼を生じ、「雨の降ること。雨が降っている間。雨降り。」の観念を生ず
るものである。
別紙2引用商標目録記載の商標登録第6245408号商標(以下「引用商標」
という。)は、「AFURI」の欧文字を書してなるところ、当該文字は、辞書類に
載録された成語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているとも
いい難いことから、特定の観念を生じない造語として看取、把握されるものである。
したがって、引用商標は、その構成文字に相応して、「アフリ」の称呼を生じ、特定\nの観念は生じない。
本件商標と引用商標との類否について、両者は、漢字と欧文字と文字種が異なる
ものであるから、外観において明確に区別できる。また、称呼については、本件商
標から生ずる「アメフリ」の称呼と、引用商標から生ずる「アフリ」の称呼とは、
2音目において「メ」の音の有無に差異を有するものであるが、4音と3音という
比較的短いこれらの称呼を一連に称呼するときは、互いの語調語感が異なり聞き誤
るおそれはない。そして、本件商標から生ずる「ウコー」の称呼と、引用商標から
生ずる「アフリ」の称呼とは、音構成が相違することから、両者は、称呼上、明瞭\nに聴別し得るものである。さらに、観念については、本件商標は「雨の降ること。
雨が降っている間。雨降り。」の観念を生ずるものであるのに対し、引用商標は観念
が生じないものであるから、両者は、観念上、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても
相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。したがって、本件商標は、
商標法4条1項11号に該当しない。
(2) 商標法4条1項10号及び15号該当性について
原告が、本件商標の登録の無効理由において、商標法4条1項7号、10号、1
5号及び19号に該当するとして引用する商標は、原告の業務に係る「ラーメンの
提供」に使用する「AFURI」の欧文字からなる商標(以下「使用商標」という。)
である。
使用商標は、本件商標の登録出願時において既に、原告の役務を表示するものと\nして需要者の間に広く認識されていたとは認められず、また、使用商標は引用商標
と同じつづりからなるものであるから、本件商標と使用商標とは、前記(1)と同様の
理由により、非類似の商標である。
そうすると、被告が、原告の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして\n需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標を、その商品若しく
は役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものではなく、
また、被告が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者
は、当該商品が原告又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の
業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混
同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法4条1項10号又は同項15号のいずれにも該
当しない。
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2024.05.26
令和5(行ケ)10117 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年4月9日 知的財産高等裁判所
商標「ベスリ会/東京TMSクリニック」が引用商標「東京TMSクリニック」と類似するとした審決が維持されました。争点は、「東京TMSクリニック」が識別力があるか、分離抽出できるのかですが、知財高裁は識別力あり、分離抽出できると判断しました。
本願商標の構成中の「東京TMSクリニック」の文字部分は、前記(1)ア、イのと
おり、我が国の首都を意味する「東京」、経頭蓋磁気刺激のアルファベット略語であ
る「TMS」及び診療所を意味する「クリニック」の語を明朝体風の同書体、同じ
大きさ及び等間隔にて一連に書してなるものである。
ここで、「TMS」(経頭蓋磁気刺激)による治療(経頭蓋磁気刺激療法。以下「T
MS治療」という。)は、成人の鬱病への新たな治療方法として、我が国において、
平成29年に適応が承認され、令和元年には保険適用が認められたものである(甲
1〜5、14、15、21)。もっとも、東京都保健医療局が提供する東京都医療機
関案内サービス「ひまわり」の検索結果(令和5年11月7日及び同月10日実施)
によると、「精神科」の検索ワードにより該当する医療機関が2470件であったの
に対し、「精神科」及び「TMS」の検索ワード(and検索)により該当する医療
機関は4件にとどまった(乙7、8)。また、原告が提出する証拠によっても、令和
5年12月頃時点において、東京都内でTMS治療を提供する医療機関は11か所
程度しか認められない(甲16。原告と被告補助参加人がそれぞれ設置する医療機
関を除く。)。そうすると、TMS治療が平成15年から令和5年にかけて合計23
本の雑誌記事で掲載、紹介されたことや、令和元年7月にNHKクローズアップ現
代で特集、紹介されたこと等、TMS治療について原告が主張する事情を考慮して
も、本願商標の指定役務の取引者、需要者のうち、少なくとも精神疾患等を有する
患者やその関係者等は、本件出願日のみならず現在においても、「TMS」の語から、
直ちに「経頭蓋磁気刺激」や、鬱病の治療方法としての「TMS治療」を想起する
とは認められない。むしろ、精神疾患等を有する患者やその関係者等が必ずしも医
学・医療用語に精通していないと推認されることや、「TMS」が日本語ではなく欧
文字(アルファベット)の並びであることからすると、これを何らかの造語と認識
する可能性が高いと認められる。\n
さらに、医療役務の提供に当たり、「クリニック」の語は、「中目黒○○クリニッ
ク」のように、地名、医師の姓、主たる診療科目等の文字と組み合わせて使用され
ることにより、一連の文字列として特定のクリニック(診療所)の名称を表すもの\nとして使用されている実情が認められる(甲12、16〜18、乙7〜10、16、
18、23〜46、丙5〜7)。
以上のとおり、本願商標の構成中の「東京TMSクリニック」の文字部分は、こ\nれを構成する文字が同書体、同じ大きさ及び等間隔で一連に書されていること、本\n願商標の指定役務の取引者、需要者の一部(精神疾患等を有する患者及びその関係
者等)は「TMS」の語から直ちに「経頭蓋磁気刺激」や「TMS治療」を想起す
るとは認められず、むしろ何らかの造語と認識する可能性が高いこと、「クリニッ\nク」の語が他の語と組み合わされて特定の診療所の名称を表す取引の実情が認めら\nれること等に照らすと、単に提供される役務の場所や方法、内容等を示すにすぎな
いものとはいえず、それ自体が一連となって、役務の提供主体としての診療所の名
称を表すものとして、出所識別標識としての機能\を果たすものといえる。
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2024.05.15
令和5(ワ)691 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 令和6年4月18日 大阪地方裁判所
大阪地裁(26部)は、本件商標「子供と母親のための歯医者さん」と、被告標章「香椎照葉/こどもとママの歯科医院」(2段併記)とは、非類似と判断しました。
被告標章1は、別紙被告標章目録記載1のとおり、「香椎照葉こどもとママ
の歯科医院」の同一字体の文字を1行の横書きにて配して成るものである。こ
のうち、「こどもとママの歯科医院」の部分は、母子を歯科治療の対象としてい
る意味合いを伝えるにすぎないことに加え、証拠(乙10ないし17)及び弁
論の全趣旨によれば、同趣旨の商標又は歯科治療の対象となる特定の属性を表\n現した商標は、多くの歯科医院において使用されていることが認められる。そ
うすると、被告標章1のうち「こどもとママの歯科医院」の部分は、自他役務
の識別力が弱いというべきであるから、同部分が、取引者又は需要者に対し、
役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるということはできず、同
部分だけを抽出して本件各商標と比較して類否を判断することは相当でない。
そこで、本件各商標と被告標章1全体を比較して類否を判断するに、別紙商
標目録及び同被告標章目録1記載のとおり、本件各商標と被告標章1の外観は、
少なくとも「香椎照葉」の有無という明らかな相違がある。また、本件各商標
からは「子供と母親のための歯医者さん」という観念が生じるのに対し、被告
標章1からは「香椎照葉にある子供と母親のための歯科医院」という観念が生
じる。そして、本件各商標は「コドモトママノハイシャサン」又は「ママトコ
ドモノハイシャサン」という称呼が生じるのに対し、被告標章1は「カシイテ
リハコドモトママノシカイイン」という称呼が生じる。したがって、本件各商
標と被告標章1は、外観、観念及び称呼のいずれをみても、明確に相違をして
おり、取引の実情を考慮しても、需要者がその出所につき誤認混同を生じるお
それがあるとはいえない。
◆判決本文
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2024.05. 1
令和3(ワ)11358 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和6年3月19日 東京地方裁判所
被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業を行う会社で、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイショーグループ各社への輸出を行っていました。ダイショーグループは、シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レストラン」などの店舗を展開していました。本件各ウェブページは、日本語によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブページであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スーパースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載されていました。裁判所は、指定商品・役務が類似する、&商標も類似するとして、差止と約600万円の損害賠償を認めました。また、不正競争行為にも該当すると判断されています。
原告は「すしざんまい」です。
ア 本件各掲載行為のうち本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為について\n
前提事実(1)イ及びウ、(4)ア、証拠(甲4、23ないし25)並びに弁
論の全趣旨によれば、原告各商標の指定役務は「すしを主とする飲食物
の提供」であること、被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業
を行う株式会社であり、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイシ
ョーグループ各社への輸出を行っていること、ダイショーグループは、
シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レスト
ラン」などの店舗を展開していること、本件各ウェブページは、日本語
によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブペ
ージであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スー
パースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載さ\nれており、被告各表示とともに「手頃な価格で幅広い客層が楽しめる回\n転寿司。厳選した食材と豊富なメニューで、人気を集めています。」と
の説明が掲載されていることが認められる。
このような事情からすれば、本件各ウェブページにおける被告各表示\nは、すしを主とする飲食物の提供を行う本件すし店を紹介するために掲
載されたものであり、「すしを主とする飲食物の提供」と類似の役務に
係るものといえるから、原告各商標の指定役務と被告各表示に係る役務\nとは類似するものといえる。
そして、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は、\n「役務に関する広告…を内容とする情報に標章を付して電磁的方法によ
り提供する行為」(商標法2条3項8号)に該当するといえ、被告は原
告各商標を「使用」したものと認められる。
被告の主張について
被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本\n件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の
提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各\n商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似してお
らず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。
そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の
使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、
あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、こ
の目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付する
ことにより、その商品又は役務の出所を表示する機能\(出所表示機能\)
や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の
品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保\n証機能)を有するものと解される。本件においては、前記 で説示した
とおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向け
たウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の\n提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの\n本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各
表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表\示機能及び品\n質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであ\nるといえる。
そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとし\nても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行った\nものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本に
おける原告各商標の出所表示機能\及び品質保持機能が害されている以上、\n被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。
そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の
有無を左右するものではないというべきである。
・・・・
被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本\n件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の
提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各\n商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似してお
らず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。
そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の
使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、
あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、こ
の目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付する
ことにより、その商品又は役務の出所を表示する機能\(出所表示機能\)
や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の
品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保\n証機能)を有するものと解される。本件においては、前記 で説示した
とおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向け
たウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の\n提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの\n本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各
表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表\示機能及び品\n質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであ\nるといえる。
そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとし\nても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行った\nものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本に
おける原告各商標の出所表示機能\及び品質保持機能が害されている以上、\n被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。
そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の
有無を左右するものではないというべきである。
イ 本件各掲載行為のうち本件各アカウント写真として被告表示2を掲載し\nた行為について
前提事実(1)ウ、証拠(甲20、21)及び弁論の全趣旨によれば、スー
パースシは、マレーシアにおいて本件すし店を展開していること、本件各
アカウントは、本件すし店に係るアカウントであることが認められるが、
本件全証拠によっても、被告が本件各アカウントを管理していると認める
ことはできない。
したがって、本件各アカウント写真の掲載行為については、被告が行っ
たものと認めることができないから、被告が原告各商標を「使用」したと
はいえない。
なお、本件では、不競法違反に関して被告が原告各表示と類似の商品等\n表示を「使用」(不競法2条1項1号)したといえるか(争点2−3)も\n問題となっているが、上記で説示したとおり、本件各アカウント写真の掲
載行為は被告が行ったとは認められないから、被告が原告各表示と類似の\n商品等表示を「使用」したともいえない。\n
・・・
商標法38条2項による損害額の算定について
商標法38条2項は、商標権者等が侵害行為による損害の額を立証するこ
とが困難であることから、その立証を容易にするために設けられたものであ
ると解される。そうすると、同項の適用が認められるためには、侵害者によ
る侵害行為がなかったならば商標権者等が利益を得られたであろうという事
情が存在する必要があるものと解される。
証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、原告はマレーシアにおいてすし
店を展開していないことが認められるところ、本件全証拠によっても、日本
国内における原告すし店とマレーシアにおける本件すし店の市場が競合する
と認めることはできないから、被告による侵害行為(本件各ウェブページに
被告各表示を掲載した行為)がなかったならば原告(原告すし店)が利益を\n得られたであろうという事情が存在すると認めることはできない。
したがって、本件では、商標法38条2項を適用することはできない。
(2) 商標法38条3項よる損害額の算定について
ア 前提事実(5)のとおり、平成26年から令和5年までの被告の本件すし
店に対する売上げは合計1億4475万8151円である。
そして、証拠(甲44、乙3)及び弁論の全趣旨によれば、株式会社
帝国データバンク作成の「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用
の在り方に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価値及びロイヤル
ティ料率に関する実態把握〜」には、商標権における使用料率(ロイヤ
ルティ料率)全体の平均値は2.6パーセント、第43類「飲食物の提
供及び宿泊施設の提供」に関する平均値は3.8パーセントであると記
載されていることが認められる。
この点について、前提事実(1)のとおり、被告は、スーパースシを含め
たダイショーグループ各社に対して、日本で仕入れた食材の輸出を行っ
ているところ、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載すること\nによって本件すし店(スーパースシ)の売上げが増加した場合、それに
伴って被告の本件すし店に対する売上げ(輸出)も増加する関係にある
ものと認められる。
他方で、前記(1)で説示したとおり、日本国内における原告すし店とマ
レーシアにおける本件すし店の市場が競合すると認めることはできない
ことに照らすと、本件各ウェブページへの被告各表示の掲載が被告の売\n上げに与えた影響は限定的なものであったことがうかがわれる。
このような事情に加え、本件各ウェブページにおける被告各表示は遅\nくとも平成26年12月頃から相当長期にわたって掲載されていたと認
められること(前提事実(4)及び弁論の全趣旨)及び商標権侵害があった
場合に事後的に定められるべき登録商標の使用に対し受けるべき金銭の
額は通常の使用料と比べて高額となることを考慮すると、被告による原
告各商標の使用に対し原告が受けるべき金銭の額に相当する額を算定す
るための使用料率については、3.8パーセントと認めるのが相当であ
る。
そうすると、上記の金銭の額は、被告の本件すし店に対する売上げで
ある1億4475万8151円に使用料率3.8パーセントを乗じた5
50万0809円であると認められる。
イ これに対し、原告は、前記アの金銭の額を算定するに当たっては、被
告が被告各表示を被告各ウェブサイトに掲載することにより自己の取引\n上の信頼を高めて事業全般に及ぶメリットを享受していることから、被
告の全売上高をその基礎とすべきであると主張する。
しかしながら、上記の金銭の額を算定する際に基礎とすべきは、侵害
行為に関する売上高であると解されるところ、別紙被告ウェブページ目
録記載のとおり、本件各ウェブページに掲載された被告各表示は本件す\nし店に関するものであり(甲4及び弁論の全趣旨)、それを超えて被告の
事業全体に関するものであると認めるに足りる証拠はないから、原告の
上記主張は採用できない。
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2024.04.11
令和5(ワ)893 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 令和6年3月18日 大阪地方裁判所
商標権侵害であるとAmazonに申告することは、不正競争行為に該当すると判断されました。\n
不競法2条1項21号の「虚偽」とは、客観的事実に反する事実であるところ、
本件各申告の内容は、原告各標章を付した原告各商品の販売が被告商標権を侵害\nするというものであるから、以下、当該内容が客観的事実に反するか、すなわち、
原告各標章の使用が被告商標権を侵害しないといえるかにつき検討する。
なお、商標権侵害の判断の前提となる商標の類否は、対比される両商標が同一
又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混
同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、使用され
た商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、
連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品又は役務に係る取
引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断される
(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民
集22巻2号399頁参照)。また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と\n解されるものについて、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は\n役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、
それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場
合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると\n思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合には、その構成部\n分の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断する
ことも許される(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小
法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同
5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年
(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号56
1頁参照)。
(1) 原告標章1ないし同10と被告商標との対比
ア 原告標章1ないし同10について
原告標章1ないし同10は、「Qbit」、「いつでも」、「簡単」、「トイレ」
の文字(同1、4、5、7、8)及びこれらの文字と丸い絵柄(円の外から
中央右下に向けて濃紺から淡い青を経て白色にグラデーションが施され、円
の内部に「Q」の字を模した白抜きがされたもの)から構成される結合商標\nである。これらの標章のうち、「いつでも」、「簡単」の文字部分は、順に、商
品の使用の時期、使用の方法又は効能を表\示するものにすぎず、「トイレ」部
分は普通名称であるから、これらが「いつでも簡単トイレ」と一体として表\n示されていることを踏まえても、これらの文字部分が商品の出所識別機能を\n有しているとはいえず、「Qbit」又は「Qbit」と上記丸い絵柄部分が
強い出所識別機能を有しているといえる。よって、被告商標との類否の判断\nにあたっては、文字部分を抽出するのは相当でなく、上記「Qbit」と丸
い絵柄の部分を抽出して対比することが相当である(なお、これらの標章の
中には、Qbitや上記絵柄部分と他の文字部分が、横並びになる構成のも\nのや上下の構成のものもあるが、これらの構\成の相違は、上記結論に影響し
ないというべきである。)。
そして、「Qbit」及び丸い絵柄からは「きゅーびっと」との称呼が生
じ、特定の観念は生じない。
イ 被告商標について
被告商標は、片手で長い布様のものを所持する赤ちゃん様の絵柄と「いつ
でも」、「どこでも」、「簡単」、「トイレ」との各文字部分から構成される。こ\nのうち、文字部分は、前記長い布様のものの上に「いつでもどこでも」と「簡
単トイレ」が2段に配置され、「いつ」「どこ」がロゴ化され、「トイレ」のレ
の字には、用が足される様子を模式的に示す絵柄が付加されているものの、
商品の使用時期、提供の場所、使用の方法又は効能を表\示するものにすぎず、
「トイレ」部分は普通名称であるから、これらが一体として表示されている\nことをも踏まえても、これらの文字部分が商品の出所識別機能を有している\nとはいえず、赤ちゃん様の絵柄部分が強い出所識別機能を有しているという\nべきである(仮に文字部分の識別力を考慮するとしても、前記の配置やロゴ
化、絵柄の付加といった要素を捨象して考えることはできない。)。よって、
原告標章1ないし同10との類否の判断にあたっては、(標準文字としての)
文字部分を抽出するのは相当でなく、上記赤ちゃん様の絵柄を抽出して対比
することが相当である。そして、当該部分からは特定の称呼、観念は生じない。
ウ 対比
原告標章1ないし同10の「Qbit」又は「Qbit」と丸い絵柄部分
と被告標章の赤ちゃん様の絵柄部分とを比較すると、外観、称呼、観念のい
ずれにおいても類似しない(双方の標章の文字部分と上記図柄の組合せを全
体として観察しても同様である。)。この点、被告商標の商標登録後に出願さ
れた原告商標1及び原告商標2がいずれも商標登録されるに至ったことは、
上記判断と整合する。
(2) 原告標章11ないし同15について
これらの標章は、「いつでも」、「簡単」、「トイレ」の文字から構成されている\nが、上記のとおり、これらの文字部分は、商品の使用の方法や効能を表\示する
ものや普通名称であり、出所識別機能を有しているとはいえないから、商標法\n26条1項2号の商標に該当すると認められる。よって、これらの標章に被告
商標権の効力は及ばない。
(3) 小括
したがって、原告各標章を付した商品の販売は、被告商標権を侵害する行為
に当たらないから、これに反する本件各申告の内容は「虚偽」であると認めら\nれる。
(4) 争点1のまとめ
以上に加え、前記1、2を総合すると、本件各申告は、不競法2条1項21\n号の不正競争に当たる。
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2024.03.24
令和4(ワ)16062 損害賠償請求事件 商標権 民事訴訟 令和6年1月17日 東京地方裁判所
医薬品について、旧字の商標の類似範囲が争われました。
本件登録商標「仙脩」、被告標章「仙修」「仙修六神丸」「御所 仙修」「御所仙修」です。
裁判所は、「御所仙修」は非類似、それ以外は類似すると判断しました。
(1) 被告標章1について
本件商標と被告標章1の外観についてみると、いずれも漢字二文字で一文
字目の字が「仙」の字で同一であり、二文字目の字も本件商標が「脩」、被
告標章1が「修」の字であり、右側下部のみが、本件商標が「月」と同じ形
状をしているのに対し、被告商標1が「彡」の形状をしており、異なってい
るものの、それ以外の左側及び右側上部は同一形状をしており、似た形状を
している。そうすると、本件商標と被告標章1の外観は類似しているといえ
る。
本件商標と被告標章1の称呼についてみると、両者はいずれも「せんしゅ
う」で同一である。
そして、観念についてみると、本件商標も被告標章1もいずれも「せんし
ゅう」としては広辞苑(第7版)に掲載されていない。もっとも広辞苑(第
7版)によれば、「仙」の部分は「仙人」の意味とされる。「脩」は、前記
1(3)のとおり、本来の意味は干し肉を指すものであったが、現代では音が同
じ被告標章1の二文字目の「修」と同じ「おさめる」の意味をも有している
とされ、「修」の簡体字ないし異字体として使用されることもあるものであ
る。これらの事実に照らすと、本件商標も被告標章1も、いずれもそれ自体
で特定の観念を有するとはいえないが、それぞれを構成する漢字は、共通す\nるものと、共通する意味を有するものであり、それらの漢字から想起される
観念も類似していると評価することができる。
被告は、特に医薬品の需要者からは、「脩」の字は乾燥させた生薬や原料
を想起させる文字であり、医薬品として「虎脩六神丸」と「虎修六神丸」の
両商品名を販売している会社も存在していることなどを指摘する。しかし、
「脩」の字には「修」と同じ「おさめる」の意味も有しているとされる。ま
た、原告は医薬品の小売業であり(前記第2の1(1)及び(4))、被告の卸売の
販売先が、被告各商品をインターネット上のサイトで販売していること(前
記第2の1(6))からすると、被告各商品の市場は全国に及び、かつその対象
も消費者に及ぶといえ、被告各商品の需要者には消費者も含まれ、また、医
薬品に精通する者のみが需要者であるとはいえないので、この点に関する被
告の主張は採用できない。
これらの事情を総合的にみれば、本件商標と被告標章1は類似している
といえる。
(2) 被告標章2について
本件商標と被告標章2の外観についてみると、本件商標は漢字二文字であ
るのに対し、被告標章2は漢字5文字であり、「仙」の字が同一であり、
「脩」と「修」の字が類似しているとしても、全体として外観が類似してい
るとはいえない。また、本件商標と被告標章2の称呼についてみても、「せ
んしゅう」と「せんしゅうろくしんがん」であり、一部共通するとしても、
全体として称呼が類似しているともいえない。
もっとも、被告標章2のうちの「六神丸」の部分は、前記1(1)のとおり、
古くから特定の漢方薬を指す用語であるとされ、広辞苑(第7版)において
も「漢方薬の一つ」として説明されているものであり、その他想起される意
味はなく、実際にも、漢方薬として、多くの会社から六神丸という名称の商
品が販売されている。そうすると、需要者にとって、「六神丸」の部分は、
特定の内容の漢方薬を指すものといえる。
そうすると、被告標章2において、「六神丸」の部分は出所識別力を有さ
ず、主に出所識別力を有するのは、「仙修」の部分であるといえる。そこで、
本件商標と被告標章2の「仙修」の部分を被告して商標の類否を検討すると、
本件商標と被告標章2の「仙修」の部分については、前記 のとおり、外観
が類似し、称呼が同一である。また、観念についても、本件商標の「仙修」
と被告標章2の「仙脩」のそれぞれの漢字から想起される観念は類似すると
いえる。
これらの事情を総合的にみれば、本件商標と被告標章2は類似していると
するのが相当である。
(3) 被告標章3について
本件商標と被告標章3の外観についてみると、本件商標は漢字二文字であ
るのに対し、被告標章3は漢字4文字であり、「仙」の字が同一であり、
「脩」と「修」の字が類似しているとしても、全体として観察した場合は、
外観が類似しているとはいえない。
もっとも、被告標章3は、「御所」と「仙修」の間に空白があり、かつ
「御所」の文字は、四角形の枠で囲まれていて、そのような枠がない「仙修」
の部分と「御所」の部分は、外観上、明確に分離して観察することができる
ものといえる。そして、本件商標と被告標章3の「仙修」部分の外観が類似
しているのは、前記アで述べたとおりである。
また、本件商標と被告標章3の称呼についてみても、「せんしゅう」と
「ごせせんしゅう」又は「ごしょせんしゅう」であり、全体の称呼は異なる
ものの、分離して観察することができる「御所」部分を除いた「せんしゅう」
の部分は同一である。
本件商標と被告標章3の観念についてみると、「御所」は、前記1(2)のと
おり、古くからの薬の生産地である奈良県の被告所在地の市を意味するもの
であり、文献等において言及されることはあるが、本件証拠上、言及されて
いる文献は奈良県に関する文献か医薬品に関する論文等の専門誌であり、
「御所」が、需要者に特に広く知られていて、需要者が当然に特定の市を想
起するとまでは認めるに足りない。そして、「御所」は、広辞苑(第7版)
においても、「ごせ」と読ませる場合、「奈良県西部、大阪市に接する市」
と記載されている一方で、「ごしょ」と読ませる場合、「天皇の座所を意味
する」と記載されている。これらの事実からすると、「御所」は、「ごせ」
と読ませる場合は奈良県の市名として理解されるものの、需要者が必ずその
ように理解するとまでは認めるに足りず、「ごしょ」と読む天皇の座所の意
味を想起する者もいるといえる。もっとも、被告標章3では、前記のとおり
「御所」と「仙修」は外観上明確に分離しているところ、本件商標の「仙修」
と被告標章2のうちの「仙脩」のそれぞれの漢字から想起される観念は類似
するといえる。
以上の事情をみると、被告標章3は、全体として不可分一体のものとはい
えず、その構成上、被告標章3の「仙修」の部分も出所識別標識となるもの\nであり、この部分と本件商標との類否を判断することができるというべきで
ある。そして、前記 に述べたのと同じ理由により、本件商標と「仙修」の
部分は類似しているといえるから、本件商標と被告標章3は類似していると
いえる。
(4) 被告標章4について
本件商標と被告標章4の外観についてみると、本件商標は漢字二文字であ
るのに対し、被告標章3は漢字4文字であり、「仙」の字が同一であり、
「脩」と「修」の字が類似しているとしても、全体として観察した場合は、
外観が類似しているとはいえない。そして、被告標章4は、被告標章3とは
異なり、「御所」と「仙修」の間に空白もなく、かつ「御所」の部分も四角
形の枠で囲まれるなどしていないから、外観上、「御所」の部分と「仙修」
とが分離して観察されることはない。
また、本件商標と被告標章4の称呼についてみても、「せんしゅう」と
「ごせせんしゅう」又は「ごしょせんしゅう」であり、一部重なる部分はあ
るものの、全体として観察した場合、称呼は異なる。
そして、本件商標と被告標章4の観念についてみると、前記ウで述べたと
おり、「御所」について、「ごせ」と読ませる場合は奈良県の市名として理
解されるものの、需要者が必ずそのように理解するとまでは認めるに足りず、
「ごしょ」と読む天皇の座所の意味を想起する者もいるといえるものであり、
「御所」の部分にも一定の観念が生ずるものといえる。
そして、被告標章4の「御所仙修」が外観上分離されない一連のものであ
るところ、そのうちの「御所」の部分に出所識別標識としての機能がないと\nは直ちにはいえないし、「仙修」の部分が出所識別標識として強く支配的な
印象を与えるとはいえない。
これらの事情を総合的にみれば、本件商標と被告商標4は類似していると
はいえない。
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