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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

役務

最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、裁判所がおもしろそうな(?)意見を述べている判例を集めてみました。
内容的には詳細に検討していませんので、詳細に検討してみると、検討に値しない案件の可能性があります。
日付はアップロードした日です。

平成28(ワ)23327等  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和元年5月23日  東京地方裁判所

第1事件の原告・被告が、それぞれ第2事件の被告・原告となっています。
それぞれの事件の原告は商標権者です。第1事件の商標は「ブロマガ/BlogMaga」および「ブロマガ」「BlogMaga」の3件です。問題の指定役務は「サーバの記憶容量の貸与」です。第2事件は「ブロマガ」指定役務「電子出版物の提供」です。それぞれの被告の使用は、侵害と認定されました。

このサービスにおいて,ユーザーが自らのブログ記事を作成してウェブサイ トにアップロードした際には,ドワンゴが設置管理するサーバーの記憶領域に ブログ記事のデータを保存しており,ドワンゴは,サービス利用者に対し,サ ービス利用者自身のブログを開設し,ブログ記事を作成し,投稿するために必 要となるサーバーの記憶領域を提供しているといえ,ブログの開設及びブログ 記事の作成,投稿機能を含むドワンゴのブログサービスは,「インターネット\nにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」に類似するといえる。 これに対し,ドワンゴは,本件で問題となるブログに関するサービスにおい てサーバーの記憶領域への保存の過程があることは認めつつ,役務の提供に付 随して提供される業務は商標法上の役務には含まれないと解すべきであると ころ,ニコニコのブログサービスの中心となるのは「CHブロマガ」であり, ニコニコのブログサービスは購読者に対する記事コンテンツの配信が主たる サービスであること,ブログ記事の作成やウェブサイトでの閲覧機能は独立し\nたサービスではなく,ブログ記事の配信サービスと分離して取引されていない こと,ドワンゴはサーバーの記憶領域の保存過程について対価の支払を受けて いないこと等から,ブログ開設及びブログ記事作成,投稿機能は,他の役務の\n提供などに付随して提供される業務であって商標法上の役務ではない旨主張 する。
ある業務を行うに当たり必然的に伴う役務における標章の使用に対し,その 役務と同一又は類似する役務を指定役務とする商標の商標権者が商標権の侵 害を主張することができることが適当でない場合があるとしても,本件につい てみると,一般的に,利用者がブログを開設,投稿して他人にそれを閲覧させ るためのプラットフォームを提供するサービスは独立した役務といえるとこ ろ,前記 エのとおり,ニコニコのウェブサイトでは,会費を支払ったプレミ アム会員であれば享受することができるサービスの一つとして,自らブログを 開設し,ウェブサイト上にブログを投稿することができることが明確に表示さ\nれている。また,サービスの利用にあたっても,ブログを開設することができ ることが表示され,それに従い所定の操作を行うことで,ブログが開設され,\nまた,ユーザーがそのブログを閲覧することができる。ドワンゴが「CHブロ マガ」のサービスを提供し,また,ニコニコのウェブサイトでは,「CHブロマ ガ」に関する表示があることは認められるが,「CHブロマガ」は,著名人等の\nチャンネルオーナーが電子書籍形式の記事コンテンツの配信を行うものであ って,このような「CHブロマガ」と,一般ユーザーによるブログ開設,ブロ グ記事投稿,配信機能である「ユーザーブロマガ」とでは,サービスの内容が\n大きく異なる部分がある。また,前記 によれば,ニコニコのウェブサイトのトップページから「ユーザーブロマガ」を利用することができ,「CHブロマ ガ」とは別に自らブログを開設等できる「ユーザーブロマガ」を利用する者も 想定できる。これらに照らせば,「ユーザーブロマガ」が「CHブロマガ」に付 随するサービスとはいえない。また,「ユーザーブロマガ」においては,ブログ 記事をウェブでユーザーから閲覧することができるようにするだけでなく,ブ ログ記事をメール配信することができ,それが特徴となっていることが認めら れる。
しかし,「ユーザーブロマガ」において,ユーザーは全員がメール配信す るかしないかを選択することとなっていて,ブログを開設し,ブログ記事を投 稿し,閲覧させる役務は,一般にも独立したサービスとして提供されているも のである一方,「ユーザーブロマガ」において,ブログを開設しブログ記事を投 稿する者にとって,メールを配信しないことが例外的な態様であるとまではい えず,メールの配信が不可欠の要素となっているとはいえない。さらに,ニコ ニコのウェブサイトで提供するサービスについての対価は,ブログ記事を投稿 等する機能のみに対する対価として徴収されているものではないものの,そも\nそも,その対価はニコニコのウェブサイトにおいて提供されている多様なサー ビス全ての対価であり,そこには独立して提供し得る様々なサービスが含まれ ていて,ブログ記事の配信という特定のサービスのみについての対価ではない。 このことを考慮すると,ブログを開設等する機能のみに対する対価が徴収され\nていないことが,直ちにそれに関する役務が商標法上の役務といえないことの 根拠になるとはいえない。そして,対価を支払った会員が受けられるサービス の中には,上記のように独立したサービスとして提供されるブログ開設及びブ ログ記事作成,投稿機能も含まれていることなどを考えると,本件の事実関係\nの下においては,ドワンゴが主張するように「ユーザーブロマガ」サービスに おけるブログの開設及びブログ記事の作成・投稿機能が,他のサービスなどに\n付随して提供される業務であって商標法上の役務には含まれないということ はできないというべきである。
また,ドワンゴは,インターネットを利用するほぼ全てのサービスが,サー バーの記憶領域への保存を伴うから,ドワンゴが提供するサービスが,甲商標 の指定役務である「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領 域の貸与」と同一又は類似すると解釈することは実務に混乱をきたすと主張す る。しかし,インターネットを利用するサービスにサーバーの記憶領域への保 存を伴うものが多いとしても,そのサービスには様々なものがあり,それらの サービスの全てにおいてサーバーへの記憶領域への貸与が独立した役務と認 められるとは限らず,本件においては,本件で問題となっているサービスにつ いて,ブログのためのサーバーの記憶領域の貸与が商標法上の役務と認められ たものであり,ドワンゴの主張は採用することができない。
・・・
インターネットの検索エンジンの検索結果において表示されるウェブペー\nジの説明は、ウェブサイトの概要等を示す広告であるということができる。し たがって,その説明が表示されるようにHTMLファイルにメタタグを記載す\nることは役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する行 為に当たるというべきであり,これに反するドワンゴの主張は採用することが できない。 そして,ドワンゴは,乙標章を,ニコニコのウェブサイトのトップページの HTMLソースコードの記述メタタグに記載していることは当事者間に争い\nがなく,乙標章は,ニコニコのHTMLファイルにメタタグとして記載された 結果、検索エンジンの検索結果において、ウェブサイトの内容の説明文ないし 概要やホームページタイトルとして表示され、これらがニコニコのウェブサイ\nトにおける,ブログ開設及びブログ記事作成,投稿機能を含む各種サービスの\n出所等を表示し、インターネットユーザーの目に触れることにより、顧客がニ\nコニコのウェブサイトにアクセスするよう誘引するのであるから、ドワンゴに よる乙標章のメタタグとしての使用は役務の出所識別機能を果たす態様で使\n用されているといえる。 以上によれば,ドワンゴによる乙標章の使用は甲商標の商標権を侵害する態 様での使用であるといえる。
・・・
ア ドワンゴは,FC2が提供するサービスが「電子出版物の提供」に該当す ると主張するのに対し,FC2は,これを否定する。 イ FC2の「ブロマガ」のサービスにおいては,ユーザーは,検索などをす ることによって,購入したい記事を選択し,FC2に対して所定の支払をし て「オリジナル小説」や「漫画」が例に挙げられる「限定記事」を購入する ことができ,その購入後,FC2のウェブページにおいて,購入した記事を 閲覧することができるようになり,また,購入した記事について,その後, FC2からHTML形式のメールの配信を受けることなどができた。
上記サービスにおいては,利用者は,FC2のサービスを利用することに よって,上記のような態様で,第三者が作成したまとまりのある文書・図画 を閲覧等することができるようになるのであり,同サービスにおいては,電 子出版物の提供又は通信ネットワークを利用した電子書籍及び電子定期刊 行物の提供に,少なくとも類似した役務が提供されているといえる。
そして,前記 のブログ記事の購入に当たり用いられている甲標章の 使用態様によれば,電磁的方法により行う映像面を介したこの役務の提供に 当たり,映像面に乙商標と類似する甲標章が付されていたと認められる。 ウ FC2は,「電子出版物」とは,いわゆる電子書籍を意味してFC2のブログ サービスは「電子出版物の提供」に該当しないと主張し,また,ブログ記事の 配信を行う主体はユーザーであり,FC2ではなく,FC2はその媒介をして いるにすぎないから,ブログ記事の配信が「電子出版物の提供」に該当すると しても,FC2のブログサービスは「電子出版物の提供」の媒介であって,「電 子出版物の提供」には該当しないと主張する。
しかし,前記イの態様に照らせば,FC2の上記のブロマガの販売に関する サービスについては,少なくとも,前記役務に類似した役務が提供されている といえる。

◆判決本文

取消訴訟はこちら

◆平成30(行ケ)10103

◆平成30(行ケ)10102

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令和3(ワ)11358  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年3月19日  東京地方裁判所

被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業を行う会社で、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイショーグループ各社への輸出を行っていました。ダイショーグループは、シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レストラン」などの店舗を展開していました。本件各ウェブページは、日本語によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブページであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スーパースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載されていました。裁判所は、指定商品・役務が類似する、&商標も類似するとして、差止と約600万円の損害賠償を認めました。また、不正競争行為にも該当すると判断されています。
原告は「すしざんまい」です。

ア 本件各掲載行為のうち本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為について\n
前提事実(1)イ及びウ、(4)ア、証拠(甲4、23ないし25)並びに弁 論の全趣旨によれば、原告各商標の指定役務は「すしを主とする飲食物 の提供」であること、被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業 を行う株式会社であり、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイシ ョーグループ各社への輸出を行っていること、ダイショーグループは、 シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レスト ラン」などの店舗を展開していること、本件各ウェブページは、日本語 によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブペ ージであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スー パースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載さ\nれており、被告各表示とともに「手頃な価格で幅広い客層が楽しめる回\n転寿司。厳選した食材と豊富なメニューで、人気を集めています。」と の説明が掲載されていることが認められる。 このような事情からすれば、本件各ウェブページにおける被告各表示\nは、すしを主とする飲食物の提供を行う本件すし店を紹介するために掲 載されたものであり、「すしを主とする飲食物の提供」と類似の役務に 係るものといえるから、原告各商標の指定役務と被告各表示に係る役務\nとは類似するものといえる。 そして、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は、\n「役務に関する広告…を内容とする情報に標章を付して電磁的方法によ り提供する行為」(商標法2条3項8号)に該当するといえ、被告は原 告各商標を「使用」したものと認められる。
被告の主張について
被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本\n件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の 提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各\n商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似してお らず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。
そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の 使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、 あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、こ の目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付する ことにより、その商品又は役務の出所を表示する機能\(出所表示機能\) や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の 品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保\n証機能)を有するものと解される。本件においては、前記 で説示した とおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向け たウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の\n提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの\n本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各 表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表\示機能及び品\n質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであ\nるといえる。
そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとし\nても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行った\nものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本に おける原告各商標の出所表示機能\及び品質保持機能が害されている以上、\n被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。 そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の 有無を左右するものではないというべきである。
・・・・
被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本\n件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の 提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各\n商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似してお らず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。
そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の 使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、 あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、こ の目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付する ことにより、その商品又は役務の出所を表示する機能\(出所表示機能\) や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の 品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保\n証機能)を有するものと解される。本件においては、前記 で説示した とおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向け たウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の\n提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの\n本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各 表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表\示機能及び品\n質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであ\nるといえる。
そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとし\nても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行った\nものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本に おける原告各商標の出所表示機能\及び品質保持機能が害されている以上、\n被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。 そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の 有無を左右するものではないというべきである。
イ 本件各掲載行為のうち本件各アカウント写真として被告表示2を掲載し\nた行為について
前提事実(1)ウ、証拠(甲20、21)及び弁論の全趣旨によれば、スー パースシは、マレーシアにおいて本件すし店を展開していること、本件各 アカウントは、本件すし店に係るアカウントであることが認められるが、 本件全証拠によっても、被告が本件各アカウントを管理していると認める ことはできない。
したがって、本件各アカウント写真の掲載行為については、被告が行っ たものと認めることができないから、被告が原告各商標を「使用」したと はいえない。
なお、本件では、不競法違反に関して被告が原告各表示と類似の商品等\n表示を「使用」(不競法2条1項1号)したといえるか(争点2−3)も\n問題となっているが、上記で説示したとおり、本件各アカウント写真の掲 載行為は被告が行ったとは認められないから、被告が原告各表示と類似の\n商品等表示を「使用」したともいえない。\n
・・・
商標法38条2項による損害額の算定について
商標法38条2項は、商標権者等が侵害行為による損害の額を立証するこ とが困難であることから、その立証を容易にするために設けられたものであ ると解される。そうすると、同項の適用が認められるためには、侵害者によ る侵害行為がなかったならば商標権者等が利益を得られたであろうという事 情が存在する必要があるものと解される。
証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、原告はマレーシアにおいてすし 店を展開していないことが認められるところ、本件全証拠によっても、日本 国内における原告すし店とマレーシアにおける本件すし店の市場が競合する と認めることはできないから、被告による侵害行為(本件各ウェブページに 被告各表示を掲載した行為)がなかったならば原告(原告すし店)が利益を\n得られたであろうという事情が存在すると認めることはできない。 したがって、本件では、商標法38条2項を適用することはできない。
(2) 商標法38条3項よる損害額の算定について
ア 前提事実(5)のとおり、平成26年から令和5年までの被告の本件すし 店に対する売上げは合計1億4475万8151円である。 そして、証拠(甲44、乙3)及び弁論の全趣旨によれば、株式会社 帝国データバンク作成の「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用 の在り方に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価値及びロイヤル ティ料率に関する実態把握〜」には、商標権における使用料率(ロイヤ ルティ料率)全体の平均値は2.6パーセント、第43類「飲食物の提 供及び宿泊施設の提供」に関する平均値は3.8パーセントであると記 載されていることが認められる。 この点について、前提事実(1)のとおり、被告は、スーパースシを含め たダイショーグループ各社に対して、日本で仕入れた食材の輸出を行っ ているところ、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載すること\nによって本件すし店(スーパースシ)の売上げが増加した場合、それに 伴って被告の本件すし店に対する売上げ(輸出)も増加する関係にある ものと認められる。
他方で、前記(1)で説示したとおり、日本国内における原告すし店とマ レーシアにおける本件すし店の市場が競合すると認めることはできない ことに照らすと、本件各ウェブページへの被告各表示の掲載が被告の売\n上げに与えた影響は限定的なものであったことがうかがわれる。 このような事情に加え、本件各ウェブページにおける被告各表示は遅\nくとも平成26年12月頃から相当長期にわたって掲載されていたと認 められること(前提事実(4)及び弁論の全趣旨)及び商標権侵害があった 場合に事後的に定められるべき登録商標の使用に対し受けるべき金銭の 額は通常の使用料と比べて高額となることを考慮すると、被告による原 告各商標の使用に対し原告が受けるべき金銭の額に相当する額を算定す るための使用料率については、3.8パーセントと認めるのが相当であ る。 そうすると、上記の金銭の額は、被告の本件すし店に対する売上げで ある1億4475万8151円に使用料率3.8パーセントを乗じた5 50万0809円であると認められる。
イ これに対し、原告は、前記アの金銭の額を算定するに当たっては、被 告が被告各表示を被告各ウェブサイトに掲載することにより自己の取引\n上の信頼を高めて事業全般に及ぶメリットを享受していることから、被 告の全売上高をその基礎とすべきであると主張する。 しかしながら、上記の金銭の額を算定する際に基礎とすべきは、侵害 行為に関する売上高であると解されるところ、別紙被告ウェブページ目 録記載のとおり、本件各ウェブページに掲載された被告各表示は本件す\nし店に関するものであり(甲4及び弁論の全趣旨)、それを超えて被告の 事業全体に関するものであると認めるに足りる証拠はないから、原告の 上記主張は採用できない。

◆判決本文

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令和2(ワ)7918  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年12月14日  大阪地方裁判所

被告は、ロゴ化された商標「Robot Shop」を用いてオンライン販売をしていました。商標「Robot Shop」(標準文字)の商標権者が、侵害訴訟を提起しました。裁判所は、差止と約1500万円の損害賠償を認めました。争点は、被告の行為は役務「ロボットの提示」か、26条該当性、禁反言などです。判決文の最後に被告標章、原告商標などが掲載されています。

証拠(乙1〜3)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件商標の出願に当 たり、「第7類 工業用ロボット、娯楽用ロボット、研究用ロボット、その他ロボッ ト」、「第28類 ロボットおもちゃ並びにその部品」等、「第35類 工業用ロ ボットの小売」等を指定商品及び指定役務としていたが、特許庁から、本件商標は、 「ロボットの小売店」程の意味合いを容易に認識させるものであるところ、ロボッ トの販売及び修理等を取り扱う業界において、「Robot Shop」及び「ロ ボットショップ」の文字が、ロボットを取扱商品とする小売店であることを示す語 として一般的に使用されている実情があることから、本件商標を第35類の工業用 ロボットの小売等の指定役務に使用することは、商標法3条1項3号に該当するこ と等を理由とする拒絶理由通知書の送付を受け、前記商品及び役務を指定商品等か ら除外して、本件商標の登録を受けたことが認められる。
被告は、被告各サイトにおいて、被告販売商品を販売しているところ、このよう な本件商標の出願経過に照らすと、原告が、被告販売商品のうちロボットと同一又 は類似するものに対して本件商標権の侵害を主張することは、禁反言の原則(民法 1条2項)により許されないと解するのが相当である。
(2) ロボットの字義は、「複雑精巧な装置によって人間のように動く自動人形。 一般に、目的とする操作・作業を自動的に行うことのできる機械又は装置」(広辞 苑第七版)であるほか、証拠(甲24、25、乙31)及び弁論の全趣旨によれば、 日本産業規格(JIS規格)は、ロボットについて、二つ以上の軸についてプログ ラムによって動作し、ある程度の自律性をもち、環境内で動作をして所期の作業を 実行する運動機構と定義し、産業用ロボットについて、産業オートメーション用途\nに用いるため、位置が固定又は移動し、3軸以上がプログラム可能で、自動制御さ\nれ、再プログラム可能な多用途マニピュレータ(互いに連結され相対的に回転又は\n直進運動する一連の部材で構成され、対象物をつかみ、動かすことを目的とした機\n械)と定義していることが認められる。これらの字義等に照らすと、所定の目的の ために自律性をもって動作等をする機械又は装置は、少なくともロボットに類似す るものであるといえる。
別紙「被告商品の指定商品該当性」の「被告サイトにおける説明」欄によれば、 非類似商品を除く被告商品のうち、「被告商品」欄の「2.無人機・ドローン」の 「(1)無人機・ドローンキット/ARF/RTF」、「(2)完成品(RTF)/半完 成品(ARF)」、「(3)無人機・ドローン 完成品(RTF)」、「(4)小型/超小 型無人機」、「(6)Vテール」、「(7)クワッドコプター」、「(8)ヘキサコプター/ オクタコプター」及び「(9)飛行機」(以下、これらを「ロボット類似品」と総称す る。)は、所定の目的のために自律飛行が可能なものが含まれるものと認められ、\n少なくともロボットに類似するものといえる。一方、ロボット類似品を除くその余の被告商品は、いずれもロボット製作に使用する部品や汎用的な部品、製作機器等であって、ロボットに類似するとはいえない。
(3) 以上から、原告が、ロボット類似品に対して本件商標権の侵害を主張することは、禁反言の原則により許されない。

◆判決本文

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令和2(行ケ)10148  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 令和3年6月16日  知的財産高等裁判所

 本件商標:カンガルーの図形と文字「KANGOL」の結合商標で、指定役務が「織物及び寝具類、洋服の小売・・・など」です。 引用商標は「KANGOL」の文字を標準文字で表し,指定役務を第35類「帽子の小売・・など」です。知財高裁は、類似役務であるとした審決を維持しました。原告とカンゴール社との間で取扱商品及び役務に係る棲み分けがされていることも理由にならないと判断されています。\n

 ア 役務の内容及び取扱商品等
(ア) 本願指定役務及び引用指定役務は,いずれも小売等役務であるから, 商品の品揃え,陳列,接客サービス等といった役務の提供の手段や,小 売又は卸売といった役務の提供の目的が共通するものといえる。 (イ) また,本願指定役務及び引用指定役務は,本願指定役務が主に織物, 衣服,身の回り品等を取扱商品とするのに対し,引用指定役務は帽子を 取扱商品とする点において異なるものの,いずれの取扱商品も衣類を中 心とするファッション商品であるといえるから,この範囲において取扱 商品が共通するものといえる。
(ウ) さらに,本願指定役務及び引用指定役務は,いずれも衣類を中心と するファッション商品を取り扱う卸売業者又は小売業者が提供する役 務であるから,役務を提供する業種が共通するものといえる。 イ 役務の提供の場所 次の各事情によれば,本願指定役務及び引用指定役務は,それぞれの取 扱商品が,同一事業者の通信販売ウェブサイトにおいて,同一の事業者が 提供する一連の商品の一環として,あるいは同一のカテゴリーに属する一 連の商品の一環として販売されるなどしている実情があることが認めら れる。
(ア) 「ZOZOTOWN」の通信販売ウェブサイトにおいて,「NIKE」 ブランドの取扱商品として,パーカー,ティーシャツ,靴,バッグ等が, 帽子と共に掲載されている(乙1)。
・・・
(コ) 「ZOZOTOWN」の通信販売ウェブサイトにおいて,「mari mekko」ブランドの取扱商品として,クッション,靴下,ティーシ ャツ,エプロン,バッグ,財布,タオル等が,帽子と共に掲載されてい る(乙10)。
ウ 需要者の範囲
上記ア及びイで検討したとおり,本願指定役務及び引用指定役務は,い ずれも衣類を中心とするファッション商品を取扱商品とするものである 上,これらの取扱商品が通信販売ウェブサイトにおいて販売されるなどし ている実情があることからすれば,いずれも一般需要者を広く対象とする ものといえる。また,上記イ(ア)ないし(エ)及び(コ)によれば,特定のブ ランドが付された両役務の取扱商品を,同一の小売業者から購入する需要 者は少なくないと考えられる。 これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務は,需要者 の範囲が一致するものといえる。
エ 類否判断
上記アないしウで検討したところによれば,本願指定役務及び引用指定 役務は,具体的な取扱商品は異なるものの,いずれも衣類を中心とするフ ァッション商品を取扱商品とする点において共通するほか,役務を提供す る手段,目的及び業種が共通するものといえる。また,両役務は,役務を 提供する場所が共通する場合があるほか,需要者の範囲が一致するものと いえる。 これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務については, これらの役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,同一営業主の提 供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえ る。
(3) 小括 以上によれば,本願指定役務と引用指定役務は,役務が類似するものと認 められる。
3 原告の主張について
(1) 原告は,原告とカンゴール社との間で本件契約が締結され,その後,原告 とカンゴール社との間で取扱商品及び役務に係る棲み分けがされてきたこと を,現実的かつ具体的な取引の実情として重視すべきである旨主張する。 しかしながら,本件契約それ自体は,原告とカンゴール社との間における 個別の合意にすぎないから,同契約を締結した事実や,同契約に基づいて原 告が本願商標を継続的に使用している事実は,商標の類否判断において考慮 し得る一般的,恒常的な取引の実情(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同 49年4月25日第一小法廷判決・審決取消訴訟判決集昭和49年443 頁参照)には当たらないというべきである。 また,原告が提出する証拠(甲30ないし49)は,原告が,本願商標を 用いて衣類等を提供してきたことを裏付けるものであるとはいえても,帽 子(及びそれに係る役務)とそれ以外の衣類(及びそれに係る役務)とで, 原告が主張するような棲み分けがされ,それが需要者に認識されているこ とを認めるに足りるものではなく,むしろ,原告が,本願商標を用いて帽子 を販売している例さえ存在することが認められる。 したがって,原告の主張は,採用することができない。
(2) 原告は,原告とカンゴール社との間においては,カンゴール社が所有す る複数の登録商標につき,帽子類以外の指定商品に係る商標権が原告に分 割移転された例等がある旨主張するが,たとえそうであるとしても,このよ うな個別的な事情によって商標法4条1項11号の適用が排除されるもの ではないと解するのが相当である。

◆判決本文

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平成29(ワ)38481  商標権に基づく差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和元年10月2日  東京地方裁判所

 登録商標「MMPI」第44類 心理検査について、「MMPI−1 性格検査」としての使用は、みなし侵害行為であると認定されましたが、商26条によって効力が及ばないと判断されました。

(2)ア 前記(1)ウ(被験者がパソコン画面を見ながら回答)の場合について\n
心理検査は,被験者が質問に回答し,その回答を基準に照らして判定(診 断及び解釈)し,判定結果を一定の目的のために利用するものであるから, 心理検査を役務としてみた場合,その中核は,同検査の実施主体(心理検査 の役務を提供する主体)による回答の判定(診断及び解釈)部分にあると解 される。 前記(1)ウの場合,心理検査の役務を提供するのは被告ソフトの購入者で\nあり,被告ソフトは,同役務の提供を受ける者(被験者)の利用に供する物\nに当たるところ,被告ソフトのパッケージにはそれぞれ本件商標と類似する\n被告標章3が付されており,被告は購入者をして同役務の提供をさせるため に被告ソフトを販売しているのであるから,かかる被告の行為は,少なくと\nも法37条4号のみなし侵害行為に当たる。
イ 前記(1)イ(1)(購入者が被告質問用紙等及び被告ソフトを使用)の場合\n この場合,心理検査の役務を提供する主体は被告各商品の購入者であり, 被告質問用紙等は,同役務の提供を受ける者(被験者)の利用に供する物に 当たるところ,被告質問用紙等にはそれぞれ本件商標と類似する被告標章1 又は2が付されており,被告は上記購入者をして同役務の提供をさせるため に被告質問用紙等を販売しているのであるから,かかる被告の行為は,少な くとも法37条4号のみなし侵害行為に当たる。
ウ 前記(1)イ(2)(被告サービスを利用)の場合につき検討する。 この場合も,心理検査の役務を提供する主体は被験者に受検をさせる被告 回答用紙等の購入者(被告サービスの委託者)と解されるが,上記委託者は, 検査結果の判定部分を被告に委託して心理検査を行っており,被告は,被告 サービスを受託することにより心理検査の役務の一部であるが中核たる判 定業務を実行しているといえるから,被告が被告サービスを提供する行為は, 委託者による心理検査の役務の一部をなす。一方,被告が被告サービスとい う役務を提供する直接の相手方は上記委託者であるが,同委託者は心理検査 の役務の需要者に含まれるし,被告の上記役務があってこそ同委託者の役務 が遂行される関係のものである。そうすると,被告による被告サービスの提 供は,心理検査の役務又はこれに類似する役務に当たるというべきである。 したがって,被告が被告サービスに基づいて委託者に交付する被告診断結 果書に本件商標に類似する被告標章4を付する行為は,「役務の提供に当た りその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務 を提供する行為」(法2条3項4号)に該当するから,かかる行為は,指定 役務又はこれに類似する役務についての登録商標に類似する商標の使用に 当たり,法37条1号のみなし侵害行為に該当する。
エ 広告について 被告は,心理検査の役務に類似する役務に当たる被告サービスの提供に係 る被告ウェブサイト上の広告に被告標章5を掲載しているのであるから,役 務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供す る行為(法2条3項8号)をしているということができる。かかる行為は, 指定役務たる心理検査の役務に類似する役務についての本件商標に類似す る商標の使用に当たるから,法37条1号のみなし侵害行為に該当する。
・・・
(1) 法26条1項3号にいう役務の「質」とは,その語義からして,役務の内容, 中身,価値,性質などを意味するものと解されるところ,「MMPI」は,前 記1のとおり,質問紙法検査に基づいて性格傾向を把握する心理検査の名称で ある「Minnesota Multiphasic Personality Inventory」(ミネソタ多面的人\n格目録)の略称であり,本件商標の指定役務である心理検査の需要者,取引者 において,心理検査の一手法である本件心理検査又はその略称を示すものとし て周知であると認められるから,心理検査の内容,すなわち「質」を表すもの\nということができる。 また,被告各標章は,いずれも,明朝体様やゴシック体様といったありふれ た書体で構成されているものである。\n そうすると,「MMPI」を含む被告各標章は,いずれも本件商標の指定役 務である心理検査又はこれに類似する役務ないし商品の「質」を,普通に用い られる方法で表示するものということができるから,被告各標章は,法26条\n1項3号に該当し,本件商標権の効力は及ばない。
(2) これに対し,原告は,「MMPI」は,役務の普通名称又は質を表示するも\nのではなく,原告が長年にわたり独占的に提供してきた心理検査等役務を表す\nものとして識別力を獲得していたものであって,被告は,自他を識別する態様 で本件商標に類似する被告各標章を使用していると主張する。 ア この点について,確かに,証拠によれば,原告が,昭和38年以降,原告 版の質問票や回答用紙に「MMPI」の標章を用いていること(甲43〜5 3,74,75),「MMPI」の標章を用いた原告版のカタログを毎年発 行していること(甲39〜42),「MMPI」の標章を用いた原告版のマ ニュアルを販売していること(甲32),原告が精神医学,心理学等の専門 誌,学会誌等に「MMPI」の標章を用いた広告を多数掲載してきたこと(甲 55〜60,100〜145),精神医学,心理学等の専門書等には,原告 版を本件心理検査の日本語版である趣旨の紹介をするものが多数あること (甲7〜9,81〜95)などの事実が認められる。
イ(ア) しかし,原告が昭和38年(1963年)から平成4年(1992年) まで使用していた質問票(甲43)は,表紙上部に「日本版MMPI質問\n票」と記載され,その下に原著がハサウェイとマッキンレーであることな どが記載されているから,「MMPI」の表示は,当該質問票を用いて行\nわれる心理検査の種類・方法としての本件心理検査を示しており,需要者, 取引者にもそのように理解されるものというべきである。 また,平成27年(2015年)以降の新版質問票(甲44〜47,7 4)は,表紙左上部に「Minnesota」,「Multiphasic」,「Personality」, 「Inventory」と4段組みに記載されており,その直下にはハサウェイら の名前が記載され,その右側には「MMPI新日本版研究会」と記載され ているものであるが,同記載も,同様に行われる心理検査の種類・方法と しての本件心理検査を示しており,需要者,取引者にもそのように理解さ れるものというべきである。 新版回答用紙(甲48〜53,75)には,「MMPI III型 回答用 紙」などとあるだけで,原著作者の記載等はないが,回答用紙が通常は質 問票とセットで利用されるものであることからすると,需要者,取引者は 「MMPI」が行われる心理検査の種類・方法としての本件心理検査を意 味するものと理解するものと考えられる。
(イ) 次に,原告版のカタログ(甲39〜42)につきみると,「MMPI」 が単独で表記されている部分もあるものの,昭和43年(1968年),\n昭和48年(1973年),平成5年(1993年)の各カタログ(甲3 9〜41)には,「MMPI」がハサウェイ教授らによって発表された心\n理検査である旨の解説が付されており,平成30年(2018年)のカタ ログ(甲42)にも「MMPIの実施法・まとめ」,「MMPI新日本版」 などと記載されている。これらの記載は,「MMPI」を心理検査の種類・ 方法としての本件心理検査を表示するものであり,需要者,取引者もその\nように理解するものというべきである。
(ウ) さらに,原告のマニュアル(平成5年(1993年)版。甲32)の表\n紙には前記の新版質問票と同様の記載があり,扉の部分には「新日本版M MPIマニュアル」と記載され,本文部分においても,「第1章 MMP Iの概要」に本件心理検査についての説明がされているのであるから,同 マニュアルにおいても,「MMPI」の表示は本件心理検査を意味するも\nのとして用いられているということができる。
(エ) その他,専門誌,学会誌等への広告(甲55〜60,100〜145) 及び精神医学,心理学等の専門書等(甲7〜9,81〜95)においても, 「MMPI」は心理検査の種類・方法であることを前提とした記載がされ ているにすぎず,これが原告の役務であることを示す記載は見当たらない。
(オ) 以上のとおり,原告作成に係る質問票,回答用紙,カタログ及びマニュ アル並びに広告や専門書における「MMPI」の使用は,いずれもこれが 心理検査の種類・方法としての本件心理検査を表示するものにすぎず,他\nに「MMPI」が,原告が提供する心理検査等役務を表すものとして識別\n力を獲得したと認めるに足りる証拠はない。 そうすると,原告が長年にわたり「MMPI」の商標を用いて独占的に 心理検査等役務を提供しており,その質問票,回答用紙,カタログ及びマ ニュアル並びに広告や専門書において「MMPI」との表示をしてきたと\nしても,それをもって,原告が提供する役務を表すものとして識別力を獲\n得したということはできない。 ウ 原告は,原告が行う心理検査等役務は,本件心理検査に由来・関連するが, 質問項目の言語,項目数及び配列,採点基準,実施方式において本件心理検 査と異なる原告独自のものであり,原告の提供する役務として識別力を獲得 したと主張するが,上記のとおり,原告は,質問票やカタログ等において, 「MMPI」の日本版であることを表示し,また,「MMPI」についてミ\nネソタ大学のハサウェイ教授等により発表\された人格目録テストであるな どの説明をしている上,質問項目数の差異も重複した質問を含むかどうかの 違いにすぎない。そうすると,原告が行う心理検査等役務は,我が国の社会, 文化等に合わせて「MMPI」を翻訳・標準化したものであって,原告が独 自に開発した心理検査であるということはできず,また需要者,取引者が原 告の提供する心理検査等役務を原告独自のものと認識していたことを示す 証拠もない。
エ 他方,被告が使用する各標章についてみると,(1)被告標章1は,被告質問 用紙の表紙上部に「MMPI−1 性格検査」と記載されたもの,(2)被告標 章2は,被告回答用紙に「MMPI−1 回答用紙」と記載されたもの,(3) 被告標章3は,被告ソフトのパッケージの表\紙に「MMPI−1性格検査」 と記載されたもの,(4)被告標章4は,診断結果書の1枚目に「MMPI−1 自動診断システム」と記載されたもの,(5)被告標章5は,被告のウェブサイ ト上の被告各商品や被告サービス等の広告において,「MMPI−1性格検 査」と記載されたものである。 原告は,被告各標章が自他の役務を識別する態様で使用されていると主張 するが,上記の被告各標章の表示内容及び態様によれば,被告各標章は,本\n件心理検査による「性格検査」,本件心理検査の質問項目に対する「回答用 紙」,本件心理検査を利用した「自動診断システム」を意味し,いずれも被 告各商品や被告サービスに係る心理検査の種類・方法が本件心理検査である ことを題号等において表示しているにすぎないというべきである。このよう\nに,被告各標章における「MMPI」は,本件心理検査を意味するものとし て使用されているのであるから,これを被告が識別力を有する態様で使用し たものであるということはできない。
(3) 以上のとおり,被告各標章は,いずれも本件商標の指定役務である心理検査 又はこれに類似する役務ないし商品の「質」を,普通に用いられる方法で表示\nするものということができるから,法26条1項3号に該当し,本件商標権の 効力が及ばない。

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平成14(ワ)13569等  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 平成16年4月20日  大阪地方裁判所

 かなり以前の判決ですが、使用しているサービスがなにか?という点が争われた判決なので、アップしておきます。被告は指定役務「求人情報の提供、職業のあっせん」にて商標権を有していましたが、被告の行為は、原告の指定役務「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理」と判断されました。

。 ア 被告サイトのトップ頁には、「就職・転職」、「採用」、「株式会社ディスコについて」の項目がある。求職者は、無料の登録手続を採った後、被告サイト上の情報を無料で入手、利用することができる。被用者を募集しようとする企業は、被告に依頼し、被告サイトに自己の情報を掲載することができる。
イ 被告サイトの「就職・転職」の頁には、被用者を募集している企業の「会社名」、「業種」、「ポジション」、「勤務地」及び「オンライン応募」が一覧できる頁がある、また、その頁から、各会社ごとの情報が掲載された頁に移ることができる。そこには、「企業情報」欄の「企業名」「業種」「会社案内」、「グループインフォメーション」欄の「設立年月日」「資本金」「本社、支社所在地」「社員数」等、「募集要項」欄の「職種」「勤務地」「給与」「職務内容」「選考方法」等、「採用基準」欄の「資格内容」「志願者状況」「対象職種」「職歴年数」「専攻」「学位」「言語スキル」等の各項目が設定されており、各会社のそれぞれの情報が掲載されている。
 この中で、「企業情報」欄の「会社案内」には、「今後の事業展開において活躍フィールドはどんどん広がっていきます」、「国内市場・北米市場はもとより、ヨーロッパ・発展途上国を含めて、目標とする世界No.1MT専門メーカーを実現していきます」などといった、採用基準の枠にとらわれない、当該企業の今後の展望、目標、それに伴う採用傾向等が記載されている。
ウ 被告サイトの「採用」の頁においては、「外国人を雇用する」の表題の下、「HR Talk−外国人を雇用している企業のインタビュー」と題して、7社の名称が挙げられている。
 各社ごとの頁には、「東アジアでナンバー1をめざす」等インタビュー記事の中の一節などが冒頭に挙げられ、「化学商品を次々とマーケットに送り出している」等の簡単な会社紹介や、「海外マーケットで一部商品が成熟化するなか、商品の起爆剤となるのは『発展途上の10億人市場』である中国だ。『このマーケットを制する企業こそが21世紀を制する』を標語に、着々と有力な外国人採用に入っている。採用の対象は『ずばりマーケティング』。人事担当者の狙いも理路整然としている。」等の前文を置いて、採用内容、採用実績、会社業績、事業目標、外国人採用についての採用傾向等を、人事担当者と聞き手とのインタビュー形式の記事にして掲載している。
・・・・
オ 効率的に人材を確保するために、特に学生の採用については、企業のイメージ作りや企業に対する理解度をアップさせるような広報の重要性を指摘されることがあり、そのような広報としては、現在の活動目的、将来像、社会への貢献状況、企業理念を明らかにし、求めている人材像を明確に具体的に打ち出すものが想定されていること、そのような広報の作成においては、「アイデアや専門知識で勝負している就職情報会社と上手につきあうことは多くのプラスがある。」、就職情報会社は、「企業を客観的に見ることができ、新鮮な目で自社の魅力を新発見してくれる可能性があ」り、「種々の表\現技術を持っており、現代の学生達の価値観に併せた求人ツールを企画することができる」などとされている(甲第29号証)。 カ 従来より、新聞においては、「人事募集広告」あるいは「求人広告」と称される欄が存在し、この欄には、募集する事業者名、連絡先、募集する職種、労働条件等が記載されており、同一の文字が配置されるだけのものもあれば、強調したい部分の文字の大きさや太さを変えたり、勧誘的文言が付加されたりすることもある(甲第9、第10号証)。 キ 広告ないし広告代理業と求人情報提供業務を同一の事業主が行う例がある(公知の事実)。
・・・・
(4) 被告は、商標法における広告とは、第三者が広告主のために、広告主を明示して、他人を介さずに広告主の商品、サービス、アイデア等について消費者に告知、説得することを目的とするものであるのに対し、求人情報の提供とは、他人である雇用希望主のために、雇用希望主を明示して、雇用希望主が労働者を募集することを求職者層に対し、他人を介さずに告知、勧誘する活動を行うことを目的とするものであると主張し、広告と求人情報の提供とでは、対象とする需要者も全く異なると主張する。 「広告」とは、国語辞典によれば、「広く世間に告げ知らせること。特に、顧客を誘致するために、商品や工業物などについて、多くの人に知られるようにすること。」(広辞苑[第5版])、「1)広く世の中に知らしめること。2)人々に関心を持たせ、購入させるために、有料の媒体を用いて商品の宣伝をすること。また、そのための文書類や記事。」などとされており、特に、商品の購入等を誘引するために宣伝するという意味合いで一般的に用いられることからすれば、「求人情報の提供」との間には、被告が主張するような差異があることも否定できない。被告商標権が、先願である原告商標権の存在にもかかわらず登録になったことは、このような点が考慮されたものと考えられる。
 しかし、商標権侵害の成否に関しての役務の類否の判断に当たっては、具体的な取引の実情を考慮すべきである。
 これを本件についてみると、前記(2)認定の事実によれば、被告は、インターネットという電子計算機通信ネットワークを利用して、採用希望企業の名称、所在地、給与、勤務時間、職務内容等の求人事項、並びに、当該企業の経営理念や活動目的、将来像、それらに適合する採用傾向等の情報を、興味・関心を惹くような構成に整理編集した上で、誰もが閲覧し得る状況に置くことによって、提供しているということができる。\n そして、求人情報の提供、広告、広告代理といった業種を同一企業が営んでいる例があり、被告自身も広告代理をその業務の1つとしている(なお、商標法施行令及び同法施行規則による役務の区分において、「求人情報の提供」は、従前は、気象情報の提供と並べて第42類に分類されていたが、平成13年の改正により、「広告」と同じ第35類に移されていることも、現代では両者が近い関係にあるとされていることを示しているといえる。)。
 したがって、役務の提供の手段、目的又は場所の点においても、提供に関連する物品(本件の場合は情報)においても、需要者の範囲においても、業種の同一性においても、被告が被告サイトにて行っている業務は、広告代理業務と同一ないし類似するということができる。
 なお、前記のとおり、被告は被告商標権の登録を受けているが、その指定役務は「求人情報の提供、職業のあっせん」等であって、「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理」まで含んでいるわけではないから、上記登録の事実は、被告が行っている上記業務が原告商標権の指定役務に類似すると判断することの妨げになるものではない。

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平成30(行ケ)1008 審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成30年12月20日  知的財産高等裁判所

 商品と小売サービスが類似するとした審決が維持されました。
 本願商標の指定商品は,第9類「電子出版物」及び第16類「雑誌,書 籍」(本願指定商品)を含むところ,近年,「従来は本や雑誌の形で提供 されていた情報を,デジタル化したソフトの形で,あるいはパソ\コン,タ ブレット端末,スマートホン,電子書籍リーダーなどを使ってアクセスで きる形で提供する出版」である電子出版が盛んになり,現に,紙に印刷さ れた商品「印刷物」の一種である「雑誌」や「書籍」の内容(コンテンツ) が,電子化された「電子出版物」として需要者へ広く配信(販売)される など,両者は相互に密接な関連性を有している。 そして,本願指定商品はいずれも,主に書籍や雑誌,電子出版物などの 出版を行う事業所である出版社により制作,販売される商品であり,多岐 にわたる年代層の個人から各種教育機関等の幅広い需要者に対して,書店 又はオンライン書店を通じて販売されている。 イ 引用商標の指定役務中,第35類「印刷物の小売又は卸売の業務におい て行われる顧客に対する便益の提供」(以下,この役務中,小売と関連す る役務を「引用小売役務」という。)は,雑誌や書籍等の印刷物及び印刷 物と密接な関連性を有する電子出版物を取り扱う小売又は卸売の業務にお いて行われる顧客に対する便益の提供である。 そして,引用小売役務は,主に書籍や雑誌,電子出版物を小売する書店 により提供される役務であり,多岐にわたる年代層の個人から各種教育機 関等の幅広い需要者に対して,主として書店又はオンライン書店において 提供される。
(3) 本願指定商品と引用小売役務との関連性について
本願指定商品と引用小売役務は,いずれも電子出版物又は印刷物を取り扱 う商品又は役務であるところ,その商品の販売場所及び役務の提供場所が一 致し(書店又はオンライン書店),需要者の範囲も一致(幅広い需要者層) する。 さらに,本願指定商品と引用小売役務は,主に出版社又は書店により製造, 販売又は提供されているとはいえ,同一営業主により製造,販売又は提供さ れている実情があり,いわゆる出版社が自己又はそのグループ会社が運営す るウェブサイト又は店舗において,電子出版物,書籍又は雑誌を販売(小売) している事例に加え,書店として小売事業を展開する事業者が,書籍や雑誌 の制作,出版をする事例も複数挙げることができる(乙8〜20)。
(4) 以上のとおり,本願指定商品と引用小売役務は,その商品の販売場所及び 役務の提供場所,並びに需要者の範囲が一致するため,相互に密接な関連性 を有する。さらに,これらは同一の営業主によって製造,販売又は提供され ている実情がある。このような取引の実情を踏まえると,これら商品及び役 務に同一又は類似の商標を使用するときは,同一営業主の製造,販売又は提 供に係る商品又は役務と誤認混同を生じるおそれがあるというべきである。 したがって,本願指定商品は引用小売役務と類似する。

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平成29(ワ)123  差止請求事件  商標権  民事訴訟 平成30年2月14日  東京地方裁判所(29部)

 これも漏れていましたの、アップします。商品「みかんシロップ」と役務「加工食料品についての小売」が類似するかが争われました。裁判所は、審査基準には拘束されない、非類似との判断を示しました。
 そこで,まず,本件指定役務と被告商品1(緑みかんシロップ)の類否につ いて検討すると,本件指定役務は「加工食料品」という特定された取扱商品につい ての小売等役務であるのに対して,前記前提事実(3),(4)のとおり,被告商品1は, 「シロップ」であって,第32類の「清涼飲料」に属する商品であると認められる (被告商品1が第29類の「加工野菜及び加工果実」に含まれる旨の原告の主張は 採用することができない。)ところ,「清涼飲料」と「加工食料品」は,いずれも 一般消費者の飲食の用に供される商品であるとはいえ,取引の実情として,「清涼 飲料」の製造・販売と「加工食料品」を対象とする小売等役務の提供とが同一事業 者によって行われているのが通常であると認めるに足る証拠はない。 そうすると,被告商品1に本件商標と同一又は類似の商標を使用する場合に,需 要者において,被告商品1が「加工食料品」を対象とする小売等役務を提供する事 業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあるとは認められる関係には なく,被告商品1が本件指定役務に類似するとはいえないというべきである。
(3)ア 他方で,前記前提事実(3),(4)のとおり,被告商品2(梅ジャム)及び3 (ブルーベリージャム)については,いずれも「ジャム」であって,第29類の 「加工野菜及び加工果実」に属する商品であり,本件指定役務において小売等役務 の対象とされている「加工食料品」と関連する商品であると認められる。
イ しかしながら,一般に,ジャム等の加工食料品の取引において,製造者は小 売業者又は卸売業者に商品を販売し,小売業者等によって一般消費者に商品が販売 される業態は見られるところであり,本件の証拠上も,被告は,その製造に係る梅 ジャム等の商品をパルシステム,生協,ケンコーコム等に販売し,これらの事業者 によって一般消費者に商品が販売されていると認められるほか(上記1(2)),原告 も,商品を自ら一般消費者に販売する以外に,らでぃっしゅぼーや,生協,デパー トに販売し,これらの事業者によって一般消費者に商品が販売されていたと認めら れる(上記1(1))。 そうすると,他方で,ジャム等を製造して直接一般消費者に販売する事業者が存 在するとして原告が提出する証拠(甲40の1・2)の内容を踏まえたとしても, ジャム等の加工食料品の取引の実情として,製造・販売と小売等役務の提供が同一 事業者によって行われているのが通常であるとまでは認めることができないという べきである。
ウ また,商品又は役務の類否を検討するに当たっては,実際の取引態様を前提 にすべきところ,被告標章2を包装に付した被告商品2及び3の取引態様は,上記 1(2)イで認定したとおり,被告と継続的な取引関係があるケンコーコムにおいて, 被告から商品を購入して自社が運営する通販サイトを通じて一般消費者に販売する というものであり,その通販サイトには,ケンコーコムの名称及びロゴが表示され\nていると共に,商品ごとに製造・販売者が表示されている。\nそうすると,ケンコーコムにおいて,被告商品2及び3が小売等役務を提供する 事業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそれがあるとは認め難く,ま た,通販サイトで被告商品2及び3を購入する一般消費者においても,製造・販売 者とインターネット販売業者を区別して認識すると考えられるから,小売等役務を 提供するインターネット販売業者の製造又は販売に係る商品であると誤認するおそ れがあるとは認め難い。 なお,原告は,将来,原告がケンコーコムと取引を開始した場合には,同社にお いて誤認混同のおそれが生じる旨主張するが,上記1(1)で認定した原告の取引態様 を前提とする限り,同社において小売等役務を提供する事業者の製造又は販売に係 る商品と誤認するおそれを生じるとは認め難い。
エ 以上のとおり,本件の証拠上,ジャム等の加工食料品の取引の実情として, 製造・販売と小売等役務の提供が同一事業者によって行われているのが通常である とまでは認めることができないというべきであり,被告商品2及び3の実際の取引 態様を踏まえて検討しても,被告商品2及び3に本件商標と同一又は類似の商標を 使用する場合に,需要者において,被告商品2及び3が本件小売等役務を提供する 事業者の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係には ないというべきである。

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平成27(ワ)36667  商標権侵害行為差止(等請求事件  商標権  民事訴訟 平成28年12月21日  東京地方裁判所(40部)

 飲食業の店舗名について商標権を保有していましたが、営業譲渡とともに譲渡対象となっていたので、民法1条3項所定の権利濫用に該当すると判断されました。
 前記1の各事実によれば,原告は,被告に対し,本件店舗の設備のみなら ず,第三者との関係における契約上の地位や権利義務なども含めて店舗の営 業一切を譲渡していること,本件同意書において,原告と被告の発起人であ るB及びCとの間で,「のれん」や「新高揚」との店名が記載された外看板 も含めて本件店舗を譲渡する旨合意していること,ここでいう「のれん」に は「新高揚」の店名が含まれると考えられること,原告は,家紋を使用しな いことについては,被告に本件念書を差入れさせ,違約金についてまで約束 をさせたにもかかわらず,本件店舗の名称の使用については何ら文書を作成 し又は作成させていないことが認められ,これらを総合考慮すると,本件営 業譲渡契約は,被告が「新高揚」の名称を使用することを前提として締結さ れたものであると認めるのが相当である。
(2) この点に関して原告は,本件営業譲渡の交渉時に,「新高揚」の名称を使 用しないことを条件に減額に応じたとか,本件同意書の原案について,Cに 対し,「のれん」を削除するようにいったところ,Cから契約書のときに書 き換えればよいといわれて削除されなかったなどと主張し,それに沿う供述 をしている。 しかし,上記各主張を認めるべき客観的証拠はないばかりか,前記1(2) エのとおり,Cは,本件同意書について,原告の要望を受けて複数の修正に 応じていたのであるから,被告が「新高揚」の名称を使用しないことを前提 として本件営業譲渡に係る交渉がされていたとすれば,Cが「のれん」につ いてのみ本件同意書の記載の修正に応じないとはおよそ考えられない。また, 原告は,原告本人尋問において,本件営業譲渡契約書には「のれん」の記載 がなかったのでよろしいと思っていたなどとも供述するが,本件営業譲渡契 約締結時には,本件営業譲渡契約書には「引き継ぐ財産」が記載された別紙 が添付されておらず,本件営業譲渡契約書をみても「のれん」が譲渡対象と なっているか否かが明らかとなるものではないし,さらに,本件店舗の引渡 時に作成された本件営業譲渡契約書の別紙(甲6)には,本件店舗内に存在 していた物品である「商品,貯蔵品,店舗造作,器具備品,その他営業物品」 について「一式」と記載されているにすぎず,現に本件営業譲渡により引き 継がれた契約上の地位や債権債務は記載されていないから,上記別紙の記載 をもっても,本件営業譲渡の対象に「新高揚」の名称ないし「のれん」が含 まれていないということはできない。 また,本件同意書において譲渡される営業権の内容として「外看板」が記 載されていることについて,原告は,原告本人尋問において,外看板は本件 店舗が所在する部屋の賃貸借契約の貸主である大家のものであり,壊すこと もできないから気にしなかったなどと供述するが,前記1(2)クのとおり, 原告は大家に対し,被告が店舗の名称を変更する予定であり外看板の変更が\n必要である旨を告げたこともなく,被告代表者らとの間で被告がどのような\n名称を使用するかについて話をしたこともないというのであり,さらには, 原告本人尋問によれば,Cから「名称をおいおい変更する」と言われたもの のそれが具体的にいつなのかの確認もしていないというのであるから,原告 が,C又はBとの間で,「新高揚」の名称を使用しないことを条件として本 件営業譲渡に係る交渉をしていたと認めることはできない。 (3) そして,原告は,当初,Bに対し,原告の跡を継ぎ本件店舗を購入するよ う持ちかけ,「新高揚」という店名も含めて本件店舗を売却する意向を示し, 平成24年10月中旬以降,B及びCと本件店舗の譲渡に関し交渉を始めた にもかかわらず,その直前である同年9月24日に原告自ら個人として原告 商標権の商標登録出願をしていた事実をB及びCに一切告げないまま,同人 らがその事実を知らない状況で,本件営業譲渡契約を締結して1700万円 もの譲渡代金を受領した後,自らは原告商標を全く使用しておらず,将来に おいてこれを使用するための店舗の営業等の具体的な計画を有しているわ けでもないのに,被告に対し,被告標章の使用の差止めと損害賠償を求め ていることが認められる。 そうすると,「新高揚」の名称を使用できるものと信頼して本件営業譲渡 契約を締結した被告に対し,本件営業譲渡の当事者である訴外会社の代表者\nであった原告が原告商標権を行使することは,民法1条3項所定の権利濫用 に当たり許されないと認めるのが相当である。

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平成27(行ケ)10096  審決取消請求事件  商標権  行政訴訟 平成28年1月13日  知的財産高等裁判所

 特許庁の審査基準では、備考類似の商品役務については、第三者から申立があった場合に、判断されます。「プログラムの提供等」と「プログラム」が類似関係にあると判決も認めました。
 本件において,引用商標の指定商品「電子応用機械器具及びその部品」には,「電 子計算機用プログラム」が含まれるところ,遅くとも本件商標の出願時には,電子 計算機用プログラムは,記録媒体に記録された電子計算機用プログラムとして店頭 にて販売されていたのみならず,インターネットを通じたダウンロードにより流通 されており,さらには,インターネット等の通信回線を通じ,サーバ上に保管され た電子計算機用プログラムを使用させる役務として提供されていたものと認められ る(甲132)。 一方,本件商標の指定役務中「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プロ グラムの提供等」の役務で提供される内容は,いずれも「電子計算機用プログラム」 であるから,商品「電子計算機用プログラム」の製造・販売者がかかる役務の提供 を行うことも少なくないものと考えられる。また,商品「電子計算機用プログラム」 の需要者と,役務「電子計算機用プログラムの提供」の需要者は,いずれも,コン ピュータ等を用いて電子計算機用プログラムを使用する者であるから,共通すると いえる。さらに,上記認定のとおり,電子計算機用プログラム自体の流通と,電子 計算機用プログラムの提供とは,共にインターネット等の通信回線を通じて行われ ることもあると解されるから,取引形態も共通する。そして,これらの事情は,電 子計算機用プログラムの用途の内容,例えば,ウェブログの運用管理,オンライン によるブログ作成,インターネット上の情報閲覧などに限られるか否かによって異 なるものとは認められない。 したがって,商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブログの運用管理の ための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標を使用する場合 は,同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそ れがあると認められる関係があるといえる。
(2) これに対して,原告は,引用商標の指定商品「電子応用機械器具及びその 部品」に含まれる「電子計算機用プログラム」はあくまでも電子応用機械器具の部 品としてのプログラムに限られるから,ウェブサイト上でのコンピュータプログラ ムの提供などとは類似しない,と主張する。 しかし,仮に,特定分野の電子計算機用プログラムが商品としてのみ流通してお り,ウェブサイト上などでは提供されてはいないという状況があったとしても,一 般的には,前記認定のとおり,電子計算機用プログラムが,インターネット等を通 じてダウンロードにより流通されると同時に,サーバ上に保管された電子計算機用 プログラムをインターネット等の通信回線を通じて使用させる役務として提供され ていたものと認められる。商品としてのみ流通している電子計算機用プログラムと, ウェブサイト上などでも電子計算機用プログラムが提供されている場合とで,その 製造・販売・提供者や商品・役務の内容,それぞれの需要者が異なると認めるに足 りる証拠はない。したがって,商品「電子計算機用プログラム」と役務「ウェブロ グの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供等」とに同一又は類似の商標 を使用する場合は,同一営業主の製造若しくは販売又は提供に係る商品又は役務と 誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえる。

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平成20(ワ)19774 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成22年07月16日 東京地方裁判所

 有料老人ホームについて、被告商標「シルバーヴィラ揖保川」が登録商標「シルバーヴィラ」と類似すると判断されました。なお、損害については、0.5%と判断されました。
 原告登録商標を含む原告標章を付した原告施設は老人福祉法29条に定める有料老人ホームであって(甲116),「老人の福祉を図る」(同法1条)という同法の目的に従った活動をすることが期待されており,被告,被告各施設及び原告施設は,いずれも,営利を主目的とするものではないこと等を考慮すれば,原告登録商標の使用料相当額は,被告各施設の売上額の0.5%とするのが相当である。したがって,前記(3)の被告各施設の売上額11億5351万1363円に対する使用料相当額は,576万7557円となる。

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◆平成18(行ケ)10105 審決取消請求事件 平成18年08月09日 知的財産高等裁判所

  役務について不使用とした審決を取り消しました。
   「被告は,通常使用権の許諾契約の存在を示す証拠方法が全く提出されていないから,東急ストリームラインは通常使用権者でないと主張する。しかしながら,契約書などの書面によらなければ,通常使用権を許諾することができないというわけではなく,また,契約書などの書面が証拠として提出されない場合であっても,上記1の事実によれば,原告が本件商標について東急ストリームラインに通常使用権を許諾した事実は優に推認されるのである。被告の主張及びこの点に関する審決の事実認定に関する手法は,あたかも,実体法的には要式行為性を要求し,手続法的には法定証拠力を想定するものであって,誤りである。また,被告は,システムは,商品に当たるとしても,役務には当たるものではないと主張するが,上記2のとおり,原告の旅費精算・管理システムは,Web上で電子的に処理・管理しようとするプログラムであるから,これをもって,有体物を観念することはできない。さらに,被告は,ウェブページでは,「旅費精算・管理システム」の名称として本件商標を使用しているにすぎないし,提案書等は,商標法2条3項8号の「取引書類」に当たらない上,特定の一企業に提示されただけであるから,同号の「頒布」に当たらないと主張する。しかしながら,上記1の事実によれば,東急ストリームラインのウェブページの掲載は,商標法2条3項8号にいうところの,本件役務に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供する行為に当たるものである。また,提案書は取引上必要な書類であるから,本件役務に関する取引書類に当たるところ,通常,このような提案書は提供を求める特定の顧客に交付されるものであるから,現実に提供を求める顧客に交付されている以上,これを頒布したということができる。」

◆平成18(行ケ)10105 審決取消請求事件 平成18年08月09日 知的財産高等裁判所

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◆H16. 4.20 大阪地裁 平成14(ワ)13569等 商標権 民事訴訟事件

 標章「DISCO CAREER JAPAN.JP」が「Career-Japan」と類似か、また、「インターネットを用いた求人情報の提供業務」が、「電子計算機通信ネットワークによる広告の代理、広告文の作成」と類似する役務かなどが争われましたが、裁判所は類似標章類似役務であると認定しました。
 

◆H16. 4.20 大阪地裁 平成14(ワ)13569等 商標権 民事訴訟事件

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◆H15. 1.22 東京高裁 平成13(行ケ)530 商標権 行政訴訟事件

  パンフレットに記載されているのは、配車支援システムなのか、これらのサービスなのかが争われました。
裁判所は、「本件配車支援システムは,・・・無線データ通信ネットワークシステムを組み合わせた複雑なシステムであって,これらが全体として有体物である商標法上の「商品」としてパンフレットに記載されているとは到底認められない。すなわち,甲9のパンフレットの「システム構成の概要」を見ても,有体物である「商品」としての概念を把握することは困難であり,・・・また,甲13のパンフレットの「システム構\成図」においても,有体物としての「車載端末」が表示されてはいるものの,これが本件配車支援システムの一構\成要素にすぎないことは明らかであって,システム全体が有体物である「商品」として記載されているものとはいえない。さらに,甲9の「中心となる地図エリアは納入時にすべてカスタマイズ致します」との記載や,甲13の「基本機能に加えて,御要望に応じた各種カスタマイズも可能\です」との記載からも,本件配車支援システムの提供が役務性を有することは明らかというべきである。・・”(株)アイコムでは・・・以前から低価格な移動体管理・メッセージ通信システムを販売していたが,このほどさらに低価格化を実現したパッケージシステムを開発。『モニカ』の名称でシリーズ展開を行っていく”との記載を総合すれば,同パンフレットでは,パッケージ商品化されていない「移動体管理 配車支援システム」と,パッケージ商品としての「配車支援システム モニカ(MONICAR)」の広告が行われているものと見ることができるから,少なくとも前者に関する限り,役務性が否定されないことは上記のとおりである。」と役務性を認めました。

 

◆H15. 1.22 東京高裁 平成13(行ケ)530 商標権 行政訴訟事件

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