2021.07. 2
本件商標:カンガルーの図形と文字「KANGOL」の結合商標で、指定役務が「織物及び寝具類、洋服の小売・・・など」です。
引用商標は「KANGOL」の文字を標準文字で表し,指定役務を第35類「帽子の小売・・など」です。知財高裁は、類似役務であるとした審決を維持しました。原告とカンゴール社との間で取扱商品及び役務に係る棲み分けがされていることも理由にならないと判断されています。\n
ア 役務の内容及び取扱商品等
(ア) 本願指定役務及び引用指定役務は,いずれも小売等役務であるから,
商品の品揃え,陳列,接客サービス等といった役務の提供の手段や,小
売又は卸売といった役務の提供の目的が共通するものといえる。
(イ) また,本願指定役務及び引用指定役務は,本願指定役務が主に織物,
衣服,身の回り品等を取扱商品とするのに対し,引用指定役務は帽子を
取扱商品とする点において異なるものの,いずれの取扱商品も衣類を中
心とするファッション商品であるといえるから,この範囲において取扱
商品が共通するものといえる。
(ウ) さらに,本願指定役務及び引用指定役務は,いずれも衣類を中心と
するファッション商品を取り扱う卸売業者又は小売業者が提供する役
務であるから,役務を提供する業種が共通するものといえる。
イ 役務の提供の場所
次の各事情によれば,本願指定役務及び引用指定役務は,それぞれの取
扱商品が,同一事業者の通信販売ウェブサイトにおいて,同一の事業者が
提供する一連の商品の一環として,あるいは同一のカテゴリーに属する一
連の商品の一環として販売されるなどしている実情があることが認めら
れる。
(ア) 「ZOZOTOWN」の通信販売ウェブサイトにおいて,「NIKE」
ブランドの取扱商品として,パーカー,ティーシャツ,靴,バッグ等が,
帽子と共に掲載されている(乙1)。
・・・
(コ) 「ZOZOTOWN」の通信販売ウェブサイトにおいて,「mari
mekko」ブランドの取扱商品として,クッション,靴下,ティーシ
ャツ,エプロン,バッグ,財布,タオル等が,帽子と共に掲載されてい
る(乙10)。
ウ 需要者の範囲
上記ア及びイで検討したとおり,本願指定役務及び引用指定役務は,い
ずれも衣類を中心とするファッション商品を取扱商品とするものである
上,これらの取扱商品が通信販売ウェブサイトにおいて販売されるなどし
ている実情があることからすれば,いずれも一般需要者を広く対象とする
ものといえる。また,上記イ(ア)ないし(エ)及び(コ)によれば,特定のブ
ランドが付された両役務の取扱商品を,同一の小売業者から購入する需要
者は少なくないと考えられる。
これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務は,需要者
の範囲が一致するものといえる。
エ 類否判断
上記アないしウで検討したところによれば,本願指定役務及び引用指定
役務は,具体的な取扱商品は異なるものの,いずれも衣類を中心とするフ
ァッション商品を取扱商品とする点において共通するほか,役務を提供す
る手段,目的及び業種が共通するものといえる。また,両役務は,役務を
提供する場所が共通する場合があるほか,需要者の範囲が一致するものと
いえる。
これらの事情を考慮すると,本願指定役務及び引用指定役務については,
これらの役務に同一又は類似の商標を使用する場合には,同一営業主の提
供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるといえ
る。
(3) 小括
以上によれば,本願指定役務と引用指定役務は,役務が類似するものと認
められる。
3 原告の主張について
(1) 原告は,原告とカンゴール社との間で本件契約が締結され,その後,原告
とカンゴール社との間で取扱商品及び役務に係る棲み分けがされてきたこと
を,現実的かつ具体的な取引の実情として重視すべきである旨主張する。
しかしながら,本件契約それ自体は,原告とカンゴール社との間における
個別の合意にすぎないから,同契約を締結した事実や,同契約に基づいて原
告が本願商標を継続的に使用している事実は,商標の類否判断において考慮
し得る一般的,恒常的な取引の実情(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同
49年4月25日第一小法廷判決・審決取消訴訟判決集昭和49年443
頁参照)には当たらないというべきである。
また,原告が提出する証拠(甲30ないし49)は,原告が,本願商標を
用いて衣類等を提供してきたことを裏付けるものであるとはいえても,帽
子(及びそれに係る役務)とそれ以外の衣類(及びそれに係る役務)とで,
原告が主張するような棲み分けがされ,それが需要者に認識されているこ
とを認めるに足りるものではなく,むしろ,原告が,本願商標を用いて帽子
を販売している例さえ存在することが認められる。
したがって,原告の主張は,採用することができない。
(2) 原告は,原告とカンゴール社との間においては,カンゴール社が所有す
る複数の登録商標につき,帽子類以外の指定商品に係る商標権が原告に分
割移転された例等がある旨主張するが,たとえそうであるとしても,このよ
うな個別的な事情によって商標法4条1項11号の適用が排除されるもの
ではないと解するのが相当である。
◆判決本文