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知財みちしるべ:最高裁の知的財産裁判例集をチェックし、判例を集めてみました

争点別に注目判決を整理したもの

役務

平成28(ワ)23327等  商標権侵害行為差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和元年5月23日  東京地方裁判所

第1事件の原告・被告が、それぞれ第2事件の被告・原告となっています。
それぞれの事件の原告は商標権者です。第1事件の商標は「ブロマガ/BlogMaga」および「ブロマガ」「BlogMaga」の3件です。問題の指定役務は「サーバの記憶容量の貸与」です。第2事件は「ブロマガ」指定役務「電子出版物の提供」です。それぞれの被告の使用は、侵害と認定されました。

このサービスにおいて,ユーザーが自らのブログ記事を作成してウェブサイ トにアップロードした際には,ドワンゴが設置管理するサーバーの記憶領域に ブログ記事のデータを保存しており,ドワンゴは,サービス利用者に対し,サ ービス利用者自身のブログを開設し,ブログ記事を作成し,投稿するために必 要となるサーバーの記憶領域を提供しているといえ,ブログの開設及びブログ 記事の作成,投稿機能を含むドワンゴのブログサービスは,「インターネット\nにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与」に類似するといえる。 これに対し,ドワンゴは,本件で問題となるブログに関するサービスにおい てサーバーの記憶領域への保存の過程があることは認めつつ,役務の提供に付 随して提供される業務は商標法上の役務には含まれないと解すべきであると ころ,ニコニコのブログサービスの中心となるのは「CHブロマガ」であり, ニコニコのブログサービスは購読者に対する記事コンテンツの配信が主たる サービスであること,ブログ記事の作成やウェブサイトでの閲覧機能は独立し\nたサービスではなく,ブログ記事の配信サービスと分離して取引されていない こと,ドワンゴはサーバーの記憶領域の保存過程について対価の支払を受けて いないこと等から,ブログ開設及びブログ記事作成,投稿機能は,他の役務の\n提供などに付随して提供される業務であって商標法上の役務ではない旨主張 する。
ある業務を行うに当たり必然的に伴う役務における標章の使用に対し,その 役務と同一又は類似する役務を指定役務とする商標の商標権者が商標権の侵 害を主張することができることが適当でない場合があるとしても,本件につい てみると,一般的に,利用者がブログを開設,投稿して他人にそれを閲覧させ るためのプラットフォームを提供するサービスは独立した役務といえるとこ ろ,前記 エのとおり,ニコニコのウェブサイトでは,会費を支払ったプレミ アム会員であれば享受することができるサービスの一つとして,自らブログを 開設し,ウェブサイト上にブログを投稿することができることが明確に表示さ\nれている。また,サービスの利用にあたっても,ブログを開設することができ ることが表示され,それに従い所定の操作を行うことで,ブログが開設され,\nまた,ユーザーがそのブログを閲覧することができる。ドワンゴが「CHブロ マガ」のサービスを提供し,また,ニコニコのウェブサイトでは,「CHブロマ ガ」に関する表示があることは認められるが,「CHブロマガ」は,著名人等の\nチャンネルオーナーが電子書籍形式の記事コンテンツの配信を行うものであ って,このような「CHブロマガ」と,一般ユーザーによるブログ開設,ブロ グ記事投稿,配信機能である「ユーザーブロマガ」とでは,サービスの内容が\n大きく異なる部分がある。また,前記 によれば,ニコニコのウェブサイトのトップページから「ユーザーブロマガ」を利用することができ,「CHブロマ ガ」とは別に自らブログを開設等できる「ユーザーブロマガ」を利用する者も 想定できる。これらに照らせば,「ユーザーブロマガ」が「CHブロマガ」に付 随するサービスとはいえない。また,「ユーザーブロマガ」においては,ブログ 記事をウェブでユーザーから閲覧することができるようにするだけでなく,ブ ログ記事をメール配信することができ,それが特徴となっていることが認めら れる。
しかし,「ユーザーブロマガ」において,ユーザーは全員がメール配信す るかしないかを選択することとなっていて,ブログを開設し,ブログ記事を投 稿し,閲覧させる役務は,一般にも独立したサービスとして提供されているも のである一方,「ユーザーブロマガ」において,ブログを開設しブログ記事を投 稿する者にとって,メールを配信しないことが例外的な態様であるとまではい えず,メールの配信が不可欠の要素となっているとはいえない。さらに,ニコ ニコのウェブサイトで提供するサービスについての対価は,ブログ記事を投稿 等する機能のみに対する対価として徴収されているものではないものの,そも\nそも,その対価はニコニコのウェブサイトにおいて提供されている多様なサー ビス全ての対価であり,そこには独立して提供し得る様々なサービスが含まれ ていて,ブログ記事の配信という特定のサービスのみについての対価ではない。 このことを考慮すると,ブログを開設等する機能のみに対する対価が徴収され\nていないことが,直ちにそれに関する役務が商標法上の役務といえないことの 根拠になるとはいえない。そして,対価を支払った会員が受けられるサービス の中には,上記のように独立したサービスとして提供されるブログ開設及びブ ログ記事作成,投稿機能も含まれていることなどを考えると,本件の事実関係\nの下においては,ドワンゴが主張するように「ユーザーブロマガ」サービスに おけるブログの開設及びブログ記事の作成・投稿機能が,他のサービスなどに\n付随して提供される業務であって商標法上の役務には含まれないということ はできないというべきである。
また,ドワンゴは,インターネットを利用するほぼ全てのサービスが,サー バーの記憶領域への保存を伴うから,ドワンゴが提供するサービスが,甲商標 の指定役務である「インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領 域の貸与」と同一又は類似すると解釈することは実務に混乱をきたすと主張す る。しかし,インターネットを利用するサービスにサーバーの記憶領域への保 存を伴うものが多いとしても,そのサービスには様々なものがあり,それらの サービスの全てにおいてサーバーへの記憶領域への貸与が独立した役務と認 められるとは限らず,本件においては,本件で問題となっているサービスにつ いて,ブログのためのサーバーの記憶領域の貸与が商標法上の役務と認められ たものであり,ドワンゴの主張は採用することができない。
・・・
インターネットの検索エンジンの検索結果において表示されるウェブペー\nジの説明は、ウェブサイトの概要等を示す広告であるということができる。し たがって,その説明が表示されるようにHTMLファイルにメタタグを記載す\nることは役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する行 為に当たるというべきであり,これに反するドワンゴの主張は採用することが できない。 そして,ドワンゴは,乙標章を,ニコニコのウェブサイトのトップページの HTMLソースコードの記述メタタグに記載していることは当事者間に争い\nがなく,乙標章は,ニコニコのHTMLファイルにメタタグとして記載された 結果、検索エンジンの検索結果において、ウェブサイトの内容の説明文ないし 概要やホームページタイトルとして表示され、これらがニコニコのウェブサイ\nトにおける,ブログ開設及びブログ記事作成,投稿機能を含む各種サービスの\n出所等を表示し、インターネットユーザーの目に触れることにより、顧客がニ\nコニコのウェブサイトにアクセスするよう誘引するのであるから、ドワンゴに よる乙標章のメタタグとしての使用は役務の出所識別機能を果たす態様で使\n用されているといえる。 以上によれば,ドワンゴによる乙標章の使用は甲商標の商標権を侵害する態 様での使用であるといえる。
・・・
ア ドワンゴは,FC2が提供するサービスが「電子出版物の提供」に該当す ると主張するのに対し,FC2は,これを否定する。 イ FC2の「ブロマガ」のサービスにおいては,ユーザーは,検索などをす ることによって,購入したい記事を選択し,FC2に対して所定の支払をし て「オリジナル小説」や「漫画」が例に挙げられる「限定記事」を購入する ことができ,その購入後,FC2のウェブページにおいて,購入した記事を 閲覧することができるようになり,また,購入した記事について,その後, FC2からHTML形式のメールの配信を受けることなどができた。
上記サービスにおいては,利用者は,FC2のサービスを利用することに よって,上記のような態様で,第三者が作成したまとまりのある文書・図画 を閲覧等することができるようになるのであり,同サービスにおいては,電 子出版物の提供又は通信ネットワークを利用した電子書籍及び電子定期刊 行物の提供に,少なくとも類似した役務が提供されているといえる。
そして,前記 のブログ記事の購入に当たり用いられている甲標章の 使用態様によれば,電磁的方法により行う映像面を介したこの役務の提供に 当たり,映像面に乙商標と類似する甲標章が付されていたと認められる。 ウ FC2は,「電子出版物」とは,いわゆる電子書籍を意味してFC2のブログ サービスは「電子出版物の提供」に該当しないと主張し,また,ブログ記事の 配信を行う主体はユーザーであり,FC2ではなく,FC2はその媒介をして いるにすぎないから,ブログ記事の配信が「電子出版物の提供」に該当すると しても,FC2のブログサービスは「電子出版物の提供」の媒介であって,「電 子出版物の提供」には該当しないと主張する。
しかし,前記イの態様に照らせば,FC2の上記のブロマガの販売に関する サービスについては,少なくとも,前記役務に類似した役務が提供されている といえる。

◆判決本文

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◆平成30(行ケ)10103

◆平成30(行ケ)10102

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令和3(ワ)11358  不正競争行為差止等請求事件  不正競争  民事訴訟 令和6年3月19日  東京地方裁判所

被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業を行う会社で、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイショーグループ各社への輸出を行っていました。ダイショーグループは、シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レストラン」などの店舗を展開していました。本件各ウェブページは、日本語によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブページであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スーパースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載されていました。裁判所は、指定商品・役務が類似する、&商標も類似するとして、差止と約600万円の損害賠償を認めました。また、不正競争行為にも該当すると判断されています。
原告は「すしざんまい」です。

ア 本件各掲載行為のうち本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為について\n
前提事実(1)イ及びウ、(4)ア、証拠(甲4、23ないし25)並びに弁 論の全趣旨によれば、原告各商標の指定役務は「すしを主とする飲食物 の提供」であること、被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業 を行う株式会社であり、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイシ ョーグループ各社への輸出を行っていること、ダイショーグループは、 シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レスト ラン」などの店舗を展開していること、本件各ウェブページは、日本語 によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブペ ージであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スー パースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載さ\nれており、被告各表示とともに「手頃な価格で幅広い客層が楽しめる回\n転寿司。厳選した食材と豊富なメニューで、人気を集めています。」と の説明が掲載されていることが認められる。 このような事情からすれば、本件各ウェブページにおける被告各表示\nは、すしを主とする飲食物の提供を行う本件すし店を紹介するために掲 載されたものであり、「すしを主とする飲食物の提供」と類似の役務に 係るものといえるから、原告各商標の指定役務と被告各表示に係る役務\nとは類似するものといえる。 そして、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は、\n「役務に関する広告…を内容とする情報に標章を付して電磁的方法によ り提供する行為」(商標法2条3項8号)に該当するといえ、被告は原 告各商標を「使用」したものと認められる。
被告の主張について
被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本\n件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の 提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各\n商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似してお らず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。
そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の 使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、 あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、こ の目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付する ことにより、その商品又は役務の出所を表示する機能\(出所表示機能\) や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の 品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保\n証機能)を有するものと解される。本件においては、前記 で説示した とおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向け たウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の\n提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの\n本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各 表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表\示機能及び品\n質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであ\nるといえる。
そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとし\nても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行った\nものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本に おける原告各商標の出所表示機能\及び品質保持機能が害されている以上、\n被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。 そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の 有無を左右するものではないというべきである。
・・・・
被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本\n件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の 提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各\n商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似してお らず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。
そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の 使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、 あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、こ の目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付する ことにより、その商品又は役務の出所を表示する機能\(出所表示機能\) や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の 品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保\n証機能)を有するものと解される。本件においては、前記 で説示した とおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向け たウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の\n提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの\n本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各 表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表\示機能及び品\n質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであ\nるといえる。
そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとし\nても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行った\nものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本に おける原告各商標の出所表示機能\及び品質保持機能が害されている以上、\n被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。 そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の 有無を左右するものではないというべきである。
イ 本件各掲載行為のうち本件各アカウント写真として被告表示2を掲載し\nた行為について
前提事実(1)ウ、証拠(甲20、21)及び弁論の全趣旨によれば、スー パースシは、マレーシアにおいて本件すし店を展開していること、本件各 アカウントは、本件すし店に係るアカウントであることが認められるが、 本件全証拠によっても、被告が本件各アカウントを管理していると認める ことはできない。
したがって、本件各アカウント写真の掲載行為については、被告が行っ たものと認めることができないから、被告が原告各商標を「使用」したと はいえない。
なお、本件では、不競法違反に関して被告が原告各表示と類似の商品等\n表示を「使用」(不競法2条1項1号)したといえるか(争点2−3)も\n問題となっているが、上記で説示したとおり、本件各アカウント写真の掲 載行為は被告が行ったとは認められないから、被告が原告各表示と類似の\n商品等表示を「使用」したともいえない。\n
・・・
商標法38条2項による損害額の算定について
商標法38条2項は、商標権者等が侵害行為による損害の額を立証するこ とが困難であることから、その立証を容易にするために設けられたものであ ると解される。そうすると、同項の適用が認められるためには、侵害者によ る侵害行為がなかったならば商標権者等が利益を得られたであろうという事 情が存在する必要があるものと解される。
証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、原告はマレーシアにおいてすし 店を展開していないことが認められるところ、本件全証拠によっても、日本 国内における原告すし店とマレーシアにおける本件すし店の市場が競合する と認めることはできないから、被告による侵害行為(本件各ウェブページに 被告各表示を掲載した行為)がなかったならば原告(原告すし店)が利益を\n得られたであろうという事情が存在すると認めることはできない。 したがって、本件では、商標法38条2項を適用することはできない。
(2) 商標法38条3項よる損害額の算定について
ア 前提事実(5)のとおり、平成26年から令和5年までの被告の本件すし 店に対する売上げは合計1億4475万8151円である。 そして、証拠(甲44、乙3)及び弁論の全趣旨によれば、株式会社 帝国データバンク作成の「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用 の在り方に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価値及びロイヤル ティ料率に関する実態把握〜」には、商標権における使用料率(ロイヤ ルティ料率)全体の平均値は2.6パーセント、第43類「飲食物の提 供及び宿泊施設の提供」に関する平均値は3.8パーセントであると記 載されていることが認められる。 この点について、前提事実(1)のとおり、被告は、スーパースシを含め たダイショーグループ各社に対して、日本で仕入れた食材の輸出を行っ ているところ、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載すること\nによって本件すし店(スーパースシ)の売上げが増加した場合、それに 伴って被告の本件すし店に対する売上げ(輸出)も増加する関係にある ものと認められる。
他方で、前記(1)で説示したとおり、日本国内における原告すし店とマ レーシアにおける本件すし店の市場が競合すると認めることはできない ことに照らすと、本件各ウェブページへの被告各表示の掲載が被告の売\n上げに与えた影響は限定的なものであったことがうかがわれる。 このような事情に加え、本件各ウェブページにおける被告各表示は遅\nくとも平成26年12月頃から相当長期にわたって掲載されていたと認 められること(前提事実(4)及び弁論の全趣旨)及び商標権侵害があった 場合に事後的に定められるべき登録商標の使用に対し受けるべき金銭の 額は通常の使用料と比べて高額となることを考慮すると、被告による原 告各商標の使用に対し原告が受けるべき金銭の額に相当する額を算定す るための使用料率については、3.8パーセントと認めるのが相当であ る。 そうすると、上記の金銭の額は、被告の本件すし店に対する売上げで ある1億4475万8151円に使用料率3.8パーセントを乗じた5 50万0809円であると認められる。
イ これに対し、原告は、前記アの金銭の額を算定するに当たっては、被 告が被告各表示を被告各ウェブサイトに掲載することにより自己の取引\n上の信頼を高めて事業全般に及ぶメリットを享受していることから、被 告の全売上高をその基礎とすべきであると主張する。 しかしながら、上記の金銭の額を算定する際に基礎とすべきは、侵害 行為に関する売上高であると解されるところ、別紙被告ウェブページ目 録記載のとおり、本件各ウェブページに掲載された被告各表示は本件す\nし店に関するものであり(甲4及び弁論の全趣旨)、それを超えて被告の 事業全体に関するものであると認めるに足りる証拠はないから、原告の 上記主張は採用できない。

◆判決本文

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令和2(ワ)7918  商標権侵害差止等請求事件  商標権  民事訴訟 令和5年12月14日  大阪地方裁判所

被告は、ロゴ化された商標「Robot Shop」を用いてオンライン販売をしていました。商標「Robot Shop」(標準文字)の商標権者が、侵害訴訟を提起しました。裁判所は、差止と約1500万円の損害賠償を認めました。争点は、被告の行為は役務「ロボットの提示」か、26条該当性、禁反言などです。判決文の最後に被告標章、原告商標などが掲載されています。

証拠(乙1〜3)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件商標の出願に当 たり、「第7類 工業用ロボット、娯楽用ロボット、研究用ロボット、その他ロボッ ト」、「第28類 ロボットおもちゃ並びにその部品」等、「第35類 工業用ロ ボットの小売」等を指定商品及び指定役務としていたが、特許庁から、本件商標は、 「ロボットの小売店」程の意味合いを容易に認識させるものであるところ、ロボッ トの販売及び修理等を取り扱う業界において、「Robot Shop」及び「ロ ボットショップ」の文字が、ロボットを取扱商品とする小売店であることを示す語 として一般的に使用されている実情があることから、本件商標を第35類の工業用 ロボットの小売等の指定役務に使用することは、商標法3条1項3号に該当するこ と等を理由とする拒絶理由通知書の送付を受け、前記商品及び役務を指定商品等か ら除外して、本件商標の登録を受けたことが認められる。
被告は、被告各サイトにおいて、被告販売商品を販売しているところ、このよう な本件商標の出願経過に照らすと、原告が、被告販売商品のうちロボットと同一又 は類似するものに対して本件商標権の侵害を主張することは、禁反言の原則(民法 1条2項)により許されないと解するのが相当である。
(2) ロボットの字義は、「複雑精巧な装置によって人間のように動く自動人形。 一般に、目的とする操作・作業を自動的に行うことのできる機械又は装置」(広辞 苑第七版)であるほか、証拠(甲24、25、乙31)及び弁論の全趣旨によれば、 日本産業規格(JIS規格)は、ロボットについて、二つ以上の軸についてプログ ラムによって動作し、ある程度の自律性をもち、環境内で動作をして所期の作業を 実行する運動機構と定義し、産業用ロボットについて、産業オートメーション用途\nに用いるため、位置が固定又は移動し、3軸以上がプログラム可能で、自動制御さ\nれ、再プログラム可能な多用途マニピュレータ(互いに連結され相対的に回転又は\n直進運動する一連の部材で構成され、対象物をつかみ、動かすことを目的とした機\n械)と定義していることが認められる。これらの字義等に照らすと、所定の目的の ために自律性をもって動作等をする機械又は装置は、少なくともロボットに類似す るものであるといえる。
別紙「被告商品の指定商品該当性」の「被告サイトにおける説明」欄によれば、 非類似商品を除く被告商品のうち、「被告商品」欄の「2.無人機・ドローン」の 「(1)無人機・ドローンキット/ARF/RTF」、「(2)完成品(RTF)/半完 成品(ARF)」、「(3)無人機・ドローン 完成品(RTF)」、「(4)小型/超小 型無人機」、「(6)Vテール」、「(7)クワッドコプター」、「(8)ヘキサコプター/ オクタコプター」及び「(9)飛行機」(以下、これらを「ロボット類似品」と総称す る。)は、所定の目的のために自律飛行が可能なものが含まれるものと認められ、\n少なくともロボットに類似するものといえる。一方、ロボット類似品を除くその余の被告商品は、いずれもロボット製作に使用する部品や汎用的な部品、製作機器等であって、ロボットに類似するとはいえない。
(3) 以上から、原告が、ロボット類似品に対して本件商標権の侵害を主張することは、禁反言の原則により許されない。

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