2024.11. 7
令和6(行ケ)10025 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年10月30日 知的財産高等裁判所
有名なランプシェードの立体商標について、当該商品を販売している会社が取得しました。これについて、当該商品のデザイナーの盗用であるとして、公序良俗違反、周知性違反を理由に無効主張をしました。審決・判決とも無効理由なしと判断しました。
1 取消事由1(商標法4条1項7号該当性の判断の誤り)について
(1) 原告は、被告は特許庁を欺いて本件商標権を取得したものであり、国際信義則及び公序良俗に反し、これは商標法4条1項7号に該当する旨主張する。\n
(2) まず、原告は、被告が A 又はその相続人から本件商標に係る商
品の著作権についてライセンス契約の締結を受けていないとして、これを問
題とするところ、商標法には、他人の著作権と抵触するような商標登録を禁
じる規定はなく、むしろそのような商標登録が発生し得ることを前提に、同
法29条により先行著作権との調整を図っているのであって、他人の著作権
との抵触の一事をもってしては、同法4条1項7号に該当しないというべき
である。 A の相続人と被告との間の著作権に関するライセンス契
約の成否、有効性いかんの問題は、同号該当性に影響を及ぼすものではない
(蛇足ながらあえて付け加えると、乙1、2に係るライセンス契約の成立及
び有効性を疑うべき事情は見当たらない。)。
(3) また、本件商標は、出願過程において、被告の業務に係る商品であること
が広く認識されていたことが認められて商標法3条2項が適用されていると
ころ、被告と A 又はその相続人との間で、本件商標に係る著作権
について紛争となっている等、その出願が国際信義に反するような事情が生
じていることの主張立証はない。本件は、単に、原告において、「被告による
A のデザインの盗用」という根拠のない憶測を述べているにすぎ
ない事案といわざるを得ない。
(4) 以上のとおりであって、本件商標が商標法4条1項7号に該当しないとし
た本件審決の判断に誤りはなく、取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)について
(1) 原告は、本件商標は、 A の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されている商標として、商標法4条1項10号に該当する旨主張\nする。
しかし、原告は、本件商標が「 A の」業務に係る商品を表示するものであることを表\示するものとして周知であることを示す具体的な立証をしない。甲25、26を含め、本件商標の形状をデザインした者が A
であることを示す証拠はあるが、業務の主体が A であることを
示すものではない。
(2) 原告は、 A の相続人と被告の間で締結されたライセンス契約が
有効でないとすれば、デザイナーの有名な商品を盗用して商品化した業者が、
立体商標の登録出願をして権利を取得できるようになる旨主張するが、同主
張は商標法4条1項10号の要件とはかかわりのないものである(なお、上
記ライセンス契約の成立及び有効性を疑うべき事情がないことは上記のとお
りである。)。
(3) 以上のとおりであって、本件商標が商標法4条1項10号に該当しないと
した本件審決の判断に誤りはなく、取消事由2は理由がない。
◆判決本文
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2024.02.19
令和5(行ケ)10076 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和6年1月30日 知的財産高等裁判所
立体商標について、3条2項を主張しましたが、知財高裁はこれを否定しました。
商標法3条2項は、同条1項3号から5号までに該当する商標であっても、
「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを
認識することができるもの」については、商標登録を受けることができる旨
を規定している。同条2項の趣旨は、同条1項3号から5号までに該当する
商標であっても、特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用
した結果、その商標がその商品又は役務と密接に結びついて自他商品識別力
又は自他役務識別力をもつに至ることが経験的に認められるので、このよう
な場合には商標登録を受けることができるとしたものと解される。
そして、立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得した
かどうかは、当該商標の形状の斬新性、当該形状に類似した他の商品の存否、
当該商標の使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣
伝のされた期間・地域及び規模等の諸事情を総合考慮し、立体的形状が需要
者の目につき易く,強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上
で,立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを
判断するのが相当である。
・・・
ア 本願商標の立体的形状の構成は前記第2の1(1)及び前記1(2)アのとおり
であり、その形状は、ラベルプリンター用テープカートリッジとしての商
品の機能又は美感に資することを目的として採用されたものであると認\nめられる。
しかも、原告以外の者が取り扱うラベルプリンター用テープカートリッ
ジにおいても、印字用テープをロール状にして収納する部分や、印字用テ
ープの巻取りや送り出しをするための輪状の部分を有し、ケースの覆いが
透明又は半透明となっている製品が複数存在し(前記1(2)ウ)、本願商標の
形状と、原告以外の者が取り扱うラベルプリンター用テープカートリッジ
の形状とは、一定の差異はあるが、主要な構成要素が共通しており、本願\n商標の形状の斬新性は乏しく、本願商標の形状に類似した他の商品が存在
すると認められる。
イ 「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンターは平成4年から販売さ
れており(前記(2)ア)、同時期に「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプ
リンター用テープカートリッジである本件商品も販売が開始されたもの
と推認される。本件商品の形状が販売当初において現在と異なるものであ
ったと認めるに足りる証拠はなく、本件商品はその販売当初から本願商標
の形状が用いられていたと認められる。
しかし、本件商品について、原告カタログに掲載されていることは認め
られるものの、本件商品のみを扱った広告宣伝がされたとは認めるに足り
る証拠はない。
また、本件商品は箱に入った状態で販売されており(前記(2)ウ)、店舗に
おいて本願商標の形状が顧客に示されないと認められる。箱には、原告の
社名を示す「KING JIM」の文字や、「TEPRA」、「PRO」等、
「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンター用テープカートリッジで
あることが分かる文字の記載、テープの幅や色等を示す記載等がされてい
る。原告のウェブサイトで本件商品を紹介する画面には、箱から出された
本件商品が表示されており、本願商標の形状が示されているが、「KING\nJIM」、「TEPRA」、「PRO」等の文字が記載されたシールの貼られ\nた状態の写真であり、箱も表示されている上、ウェブサイト上の記載とし\nても「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンターであることが示され
ている(甲102〜104)。原告カタログも、箱から出されてシールの貼\nられた状態の本件商品とともに、箱が表示されている(前記(2)ウ)。
そして、本件商品は、「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプリンター
用のテープカートリッジであり、「『テプラ』PRO」シリーズのラベルプ
リンターを所持する者が、新たなテープカートリッジが必要となった場合
に購入する商品であるといえ、需要者は、「『テプラ』PRO」シリーズの
ラベルプリンター用テープカートリッジであること及びテープの色、幅等
の情報を基に、本件商品の中から特定の商品を購入すると考えられるので
あり、これらの情報は、本件商品の箱やインターネット上の記載において
表示されている。したがって、需要者である一般の消費者は、本願商標の形状からではなく、箱やシールに記載された文字、あるいはウェブサイト上に記載された\n説明の記載から、本件商品を他の商品と識別すると考えられる。
ウ 本件調査の結果は、本願商標の形状が明らかな写真を示した上で回答さ
せたところ、自由回答では、写真に撮影された商品を販売する企業名及び
商品名の両方を誤った者が回答者全体の約6割を占め、選択肢に「テプラ
(TEPRA)」を入れて商品名を選ばせる質問を含めても、自由回答によ
る質問及び選択問題の全てを誤った者が全体の約半数にのぼった。
また、本件調査では、設問の中で、回答の理由を聴取し、その理由から
明らかにいい加減な回答(ノイズ)をしたと判別できる調査対象者を除い
た集計も行ったが、ノイズを除くと、上記写真に撮影された商品を販売す
る企業名又は商品名のいずれか一方を正答した者は回答者全体の31.
0%にすぎず、選択肢を示して回答させる質問でも、ノイズを除くと、上
記写真から「テプラ(TEPRA)」の商品名を選択した者は回答者全体の
35.8%にすぎないという結果となった。
エ 上記アからウまでの事情を総合すれば、本件商品が販売開始から約30
年が経過していること及び販売地域が全国であることを考慮しても、本願
商標が需要者の目につき易く,強い印象を与えるものであったということ
はできないから、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至った
と認めることはできず、この判断を覆すに足りる事情は認められない。
◆判決本文
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2023.03.31
令和3(ワ)22287 損害賠償請求事件 商標権 民事訴訟 令和5年3月9日 東京地方裁判所
バーキン、ケリーバッグの立体商標について、権利侵害が認定されました。損害額は被告の利益のうち2割覆滅されました。
商標権の一つがこれです。
◆登録5438059
ア 前提事実(6)のとおり、被告は、被告商品の販売によって合計515万0140円の利益
を得たことから、同金額が被告の商標権侵害によって原告が受けた損害の額と推定される
(商標法 38 条 2 項)。
イ もっとも、原告商品は、その販売価格がバーキンにおいては 100 万円を、ケリーに
おいては 50 万円を超えるものが大半という高級ハンドバッグである(前提事実(2))。他方、被告商品の販売価格はいずれも 1 万 5180 円であり(前提事実(6))、その価格差が大きいことは多言を要しない。また、証拠(甲 23、乙 1)及び弁論の全趣旨によれば、バーキンには複数のサイズのものがあるものの、最も小さいサイズのものの横幅は 25cm であるのに対し、被告商品 1 の横幅は 20cm であることが認められる(なお、ケリーも、横幅が cmのものを最小として複数のサイズのものが販売されており、他方、被告商品 2 の横幅は20cm である。甲 1、52)。
商標権は、特許権等の他の工業所有権とは異なり、それ自体に創作的価値があるもので
はなく、商品又は役務の出所である事業者の営業上の信用等と結びつくことによってはじめて一定の価値が生じるという性質を有する。このため、商標権が侵害された場合に、侵害者の得た利益が当該商標権に係る登録商標の顧客吸引力のみによって得られたものとは必ずしもいえない場合が多い。本件のようなハンドバッグの場合、需要者の購買動機の形成に当たっては、当該商品の属するブランドはもとより、その販売価格も考慮され、また全体のデザイン及びサイズといった要素も、デザイン性ないしファッション性の側面のみならず機能面からも考慮されると考えられる。これらの点を踏まえると、原告商標ないし原告商品の周知著名性からそのブランド及び全体のデザインが需要者の購買動機形成に及ぼす影響は相当に大きいとみられるものの、販売価格並びにデザイン及びサイズにおける相違が及ぼす影響もなお無視し得ず、上記推定を覆滅すべき事情として考慮するのが相当である。また、被告商品と同じ価格帯で「バーキン風」、「ケリー風」などと称するハンバッグが市場において取引されている事実が認められるところ(乙 17〜20、28、29)、これらの全てが原告商標権の侵害品であるとは必ずしも考えられず、侵害品でないものが含まれる可能性も少なからずうかがわれる。このうち原告商標権の侵害に当たるものがどの程度存在するかは必ずしも判然としないところ、他に原告商標権の侵害品が存在することを推定覆滅事由として考慮することは相当でないものの、上記事情は推定覆滅事由として一応考慮するのが相当である。さらに、バーキンの内側には、被告商品 1 にはないファスナーポケットが設けられていることが認められるところ(弁論の全趣旨)、その有無は、デザイン性という点では需要者の購買動機の形成に必ずしも寄与しないとしても、収納性という機能面の一要素としては考慮し得るものといえる。他方、被告は、ファッションショーへの出展、独自ブランドの商品販売、全国の主要都\n市への出店、SNS での宣伝活動等の営業努力をしていることが認められる(乙 21〜27)。
もっとも、これらの営業努力は、通常の営業努力の範囲を超える特別なものとまではいえないことから、この点を推定覆滅事由として考慮するのは相当でない。
ウ 以上の事情を総合的に考慮すると、被告商品の利益の額に対する原告商標の貢献割
合については、いずれも8 割と認めるのが相当である。これに反する原告の主張は採用できない。
したがって、本件における上記損害額の推定は 2 割の限度で覆滅されるから、被告の原
告商標権侵害による原告の損害額は、被告商品 1 及び 2 の各販売利益の額(276 万 2740 円及び 238 万 7400 円)のそれぞれ 8 割に相当する 221 万 0192 円及び 190 万 99円の合計412万0112 円と認められる。
エ これに対し、被告は、原告商品と被告商品との価格差、被告商品と同じ価格帯の原
告商品を模した商品の存在、被告商品の販売利益に対する被告の営業努力の貢献、原告商品と被告商品とのサイズやファスナーポケットの有無といった機能性の違い等を指摘し、被告商品の販売によって原告に損害が発生することはなく、仮に損害が発生したとしても少なくとも 95%の推定覆滅が認められる旨主張する。
しかし、原告商品と被告商品は、いずれも主に女性を需要者とするハンドバッグであり、販売方法には共通点があり、かつ、需要者にとってその形状(全体のデザイン)は購買動機を形成する主な要素の 1 つであるところ、原告商品と被告商品は形状が類似している
いった事情を踏まえると、被告が主張する上記各事情を踏まえても、原告商品と被告商品の顧客層には一定の重なり合いが認められるのであって、被告商品の販売によって原告に損害が発生すると認められる。また、これらの事情が商標法 38 条 2 項による推定を覆滅する程度については、上記のとおりである。
したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。
(2) 信用毀損による無形損害の額
原告は、高級ハンドバッグである原告商品の大半を、バーキンについては 100 万円以上、ケリーについては 50 万円以上という価格で販売している(前提事実(2))。他方、被告は、原告商品と形状において類似するものの、原告商品には使用されない安価な合成皮革等を用いて製作された被告商品を、1 個 1 万 5180 円で、百貨店の店舗や自社の運営する EC サイト等を通じて、令和元年 12 月 日から令和 3 年 2 月 13 日までの 1 年余りの間に、合計398 個(被告商品 1 が 214 個、被告商品 2 が 184 個)販売した(前提事実(6))。このような被告の行為は、高級ハンドバッグとしての原告商品及びこれを製造販売する原告のブランド価値すなわち信用を毀損するものであり、これによる原告の無形損害の額は 100 万円を下らない。無形損害の額に関する原告の主張は採用できない。
また、被告は、原告商品と被告商品との購買層の違いや、原告商品を模したハンドバッ
グが全国各地で廉価で販売されているのは周知の事実であることなどを指摘して、原告の信用毀損はない旨を主張する。しかし、仮にこれらの事情があるとしても、原告商標及び原告商品の周知著名性を考慮すると、その違いゆえに原告の信用が毀損されないという関係にはない。この点に関する被告の主張は採用できない。
◆判決本文
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2020.12.21
令和2(行ケ)10076 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和2年12月15日 知的財産高等裁判所
焼く肉のタレ用のビンの一部の形状について、位置+形状を特定した本件商標は識別力無し(3条1項3号)と特許庁は判断しました。知財高裁も同じ判断をしました。
同号掲記の標章のうち商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美観をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,その反面として,商品・役務の出所を表\示し自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少なく,需要者としても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能\や美観を際立たせるために選択されたものと認識するものであり,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。また,商品等の機能\又は美観に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを必要とし,その使用を欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から適切でないといえる。したがって,商品等の形状は,同種の商品が,そ
の機能又は美観上の理由から採用すると予\測される範囲を超えた形状である等の特段の事情のない限り,普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,3条1項3号に該当すると解するのが相当である。
(2) 包装容器の表面に付された連続する縦長の菱形形状\n
ア 液体状の商品の包装容器に付された形状
飲食料品を取り扱う業界において,液体状の商品を封入する包装容器は,
持ちやすさ,注ぎやすさ,飲みやすさ等の観点から,細口で縦長のものが
採択,使用されることが多い。しかし,このような商品の性質から要求さ
れる一定の制約の下においても,様々な形状の包装容器が存在し(乙1〜
乙5),これらの包装容器の表面に立体的形状による装飾を付したもの,中\nでも連続する菱形形状(ダイヤカット)を付したものが,次のとおり認め
られる。
・・・・
そうすると,液体状の商品の包装容器の上部又は下部に,連続する菱形
形状を付すことは,取引上普通に採択,使用されているものと認められる。
そして,そのいずれの場合においても,その包装容器の連続する菱形形状
の上又は下に,商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼\付され又は商
品名が目立つ態様で表示されているものと認められることや,1),2)の各
記載等に照らしてみると,菱形形状は,持ちやすさなどの機能や美観の観\n点から採用されているものと考えられる。
・・・
(イ) 焼肉のたれに係る包装容器に付された菱形形状
焼肉のたれの包装容器の表面に付す立体的装飾の一類型として連続す\nる立体的な菱形形状を用いるものが,次のとおり認められる。
1) 「コスモ食品株式会社」のウェブサイト(乙17)において,「北の
方から 焼肉のたれ 中辛350g」(1枚目),「北の方から 焼肉の
たれ 薬膳 中辛350g」(3枚目)の見出しの下,連続する縦長の
菱形の立体的形状が下部に付され,その上に商品名等を目立つ態様で
表示したラベルが貼\付された容器の写真が掲載されている。
2) 「フードレーベル」のウェブサイト(乙18)において,「焼肉トラ
ジ 焼肉のたれ 240g」の見出しの下,連続する縦長の菱形の立
体的形状が下部に付され,その上に商品名等を目立つ態様で表示した\nラベルが貼付された容器の写真が掲載されている。\n
3) 「Amazon」のウェブサイト(乙19)において,「成城石井 焼
肉のたれ 350g」(1枚目)の見出しの下,連続する縦長の菱形の
立体的形状が包装容器の下部に付され,その上に商品名等を目立つ態
様で表示したラベルが貼\付された容器の写真が掲載されている。
4) 「Amazon」のウェブサイト(乙20)において,「焼肉チャン
ピオン 焼肉のたれ 240g」(1枚目)の見出しの下,連続する縦
長の菱形の立体的形状が蓋部及び下部に付され,その間の中央部分に
商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼\付された容器の写真が掲
載されている。
そうすると,焼肉のたれの包装容器の上部又は下部の表面に,連続す\nる縦長の菱形形状を付すことは,取引上普通に採択,使用されているも
のと認められる。そして,そのいずれの場合においても,その包装容器
の表面の連続する縦長の菱形形状の上又は下に,商品名等を目立つ態様\nで表示したラベルが貼\付されているものと認められること等からすれば,
これらの菱形形状も,機能や美観の観点から採用されているものと推認\nされる。
◆判決本文
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2020.10. 7
平成31(ワ)9997 損害賠償請求事件 商標権 民事訴訟 令和2年6月3日 東京地方裁判所
バーキンタイプのバッグについて、バーキンバックの立体商標に基づく商標権侵害、不競法違反として、約300万の損害賠償が認められました。信用毀損として100万円と残りは侵害者利益です。
原告は,被告において,対象期間中に,被告商品等を少なくとも100個販売し
たと主張するところ,前記第2の2(5)のとおり,被告は平成22年8月11日には
バーキンタイプのバッグを販売し,平成30年2月14日には被告商品を販売した
ことのほか,被告において,バーキンタイプのバッグは一度に100個単位で仕入
れ,最後の仕入れは平成22年夏ないし秋頃に100個仕入れたものであった,最
後に仕入れた商品は全て販売した旨主張していることからすれば,原告の主張する
とおり,被告は,対象期間中に,少なくとも100個の被告商品等を販売したもの
と認めるのが相当である。
イ 被告商品等の販売価格
前記第2の2(5)のとおり,被告商品は,平成30年2月に2万8080円(税抜
価格2万6000円)で販売されたものであることに加え,バーキンタイプのバッ
グの販売価格に関する当事者双方の主張,被告が保管期間の経過により廃棄済みと
してバーキンタイプのバッグの販売に関する資料を提出していないことなどの本件
の審理に現れた事情を総合すれば,被告商品等の1個当たりの販売価格は,平均す
ると,被告商品の販売価格と同じく税抜価格2万6000円程度であったものと認
めるのが相当である。
ウ 被告商品等の総販売額
被告は前記イの税抜価格に消費税を付して被告商品等を販売していたところ(甲
1,弁論の全趣旨),被告の総販売額を算定するに当たって適用すべき消費税率につ
いては,被告がバーキンタイプのバッグの販売を平成26年2月頃までに終了した
と主張していることや平成30年2月14日に販売された被告商品のほかに平成2
6年3月以降に被告商品等が販売されたことを示す証拠がないことを踏まえ,販売
に係る100個のうち99個については平成26年2月までの5%とし,1個につ
いては8%とすることが相当である。
そして,前記ア及びイによれば,対象期間中の被告商品等の販売によって,被告
は,以下のとおり,合計273万0780円の売上を上げたものと認めるのが相当
である。
2万7300円(税抜価格2万6000円+5%の消費税分)×99個+2万8
080円(税抜価格2万6000円+8%の消費税分)×1個=273万0780
円
エ 被告商品等の販売に係る限界利益率
(ア) 仕入費用
被告は,被告商品はサンプル品であって仕入処理が行われておらず,購入した際
の領収証等の資料もないと主張し,また,バーキンタイプのバッグの仕入れに関す
る資料は保管期間経過によって全て廃棄処分済みであるとして,これを提出してい
ない。
被告は,バーキンタイプのバッグの仕入価格について,同程度の価格のハンドバ
ッグの仕入価格が販売価格の55%程度であったから,バーキンタイプのバッグの
仕入価格も同様であったと主張し,販売価格の55%の価格で仕入れを行った平成
29年1月の取引の納品書(乙31)を提出するが,被告が平成22年に中国のハ
ンドバッグ製造業者から100個単位で仕入れたと主張するバーキンタイプのバッ
グとは,仕入の時期,取引先,仕入数が異なり,どのような商品の仕入れであった
かも明らかではないから,上記の納品書に係る取引は,バーキンタイプのバッグの
仕入価格が販売価格の55%であったことを裏付けるものとはいえず,その他,被
告が主張する仕入価格を裏付ける的確な証拠はない。
(イ) その他の経費
被告が,その他の経費として主張するバザーへの寄付金,梱包費用,送料につい
ては,具体的な支出の有無や額を裏付ける的確な資料はない。
(ウ) 限界利益率
このような被告の主張立証の状況を含めた弁論の全趣旨によれば,被告商品等の
販売による被告の限界利益は,原告の主張するように,平均して販売価格の60%
程度であったものと認めるのが相当である。
オ 被告が賠償すべき利益の額
以上によれば,対象期間中の被告商品等の販売によって,被告には,以下のとお
り,少なくとも163万8468円の限界利益が発生したものと認めるのが相当で
あり,同額が,不競法5条2項により被告が賠償すべき損害額となる。
273万0780円×60%=163万8468円
(2) 信用毀損による無形損害について
前記2及び前記(1)で検討したところからすれば,原告商品は,高級ブランドであ
る原告を代表する高級バッグとして著名なものであり,そのほとんどが1個100万円を超える価格で販売される高級品であったところ,被告は,原告商品と類似す\nる形態を持ちながら,原告商品には使用されない合成皮革等の安価な素材が使用さ
れた被告商品等を,原告商品と比べて著しい廉価の1個2万7300円程度で,平
成22年8月から平成30年2月までの期間に少なくとも100個販売したもので
ある。
したがって,被告商品等の販売という不正競争によって,原告は原告商品に係る
信用を毀損されたものというべきであり,原告商品の形態と類似する外見のハンド
バッグが被告以外の業者によっても販売されていること(乙1〜17)といった被
告の主張する事情を考慮しても,被告商品等の販売に係る,信用毀損による無形損
害の額は100万円を下らないというべきである。
◆判決本文
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2019.12. 3
令和1(行ケ)10086 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 令和元年11月26日 知的財産高等裁判所
立体商標について、識別力無しとの無効審判請求について、知財高裁(4部)は無効理由なしとした審決を維持しました。
前記アの認定事実を総合すると,ヘニングセンがデザインした本件商品の立体的形状は,被告による本件商品の販売が日本で開始された1976年(昭和51年)当時,独自の特徴を有しており,しかも,本件商品が上記販売開始後本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において継続して販売され,この間本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰り返し行われた結果,本件商標の登録出願時までには,本件商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具,インテリアの取引業者及び照明器具,インテリアに関心のある一般消費者の間で被告が製造販売するランプシェードとして広く知られるようになり,本件商品の立体的形状は,周知著名となり,自他商品識別機能ないし自他商品識別力を獲得するに至ったものと認められる。そうすると,本件商品の立体的形状である本件商標が本件商品に長年使用された結果,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時(登録審決日・平成27年12月15日)において,被告の業務に係る商品であることを表\示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから,本件商標は,商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するものと認められる。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,本件商品(「PH5」)は,デンマークのデザイナーであるヘニングセンがデザインした商品として,宣伝され,評価され,販売されてきたものであるから,PH5の立体的形状である本件商標は,ヘニングセンがデザインしたランプシェードの立体的形状として周知であるにとどまり,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,周知であるということはできない旨主張する。\nしかしながら,前記(2)イ認定のとおり,被告は1976年(昭和51年)から本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において本件商品を継続して販売し,その間,本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰り返し行われてきたことに照らすと,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから,原告の上記主張は採用することができない。\n
イ 原告は,PH5に係る商標権,著作権等の知的財産権は,ヘニングセンに帰属するから,被告は,ヘニングセン及びその相続人から,商標権の譲渡を受け,又は使用許諾を受けていなければ,本件商標の商標登録を受けることはできない,PH5のデザインは,外国において商標登録されておらず,知的財産権の権利者が死亡し,パブリックドメインとなっているから,商標登録をさせてはならず,被告の本件商標の商標登録は無効とすべ
きである旨主張する。しかしながら,商標法3条2項は,同条1項3号から5号までに該当する商標であっても,「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については,商標登録を受けることができる旨を定めたものであるところ,原告の上記主張は,同条2項の文言の解釈に基づかないものであるから,その主張自体理由がないというべきである。
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2019.01.12
平成29(ワ)22543 商標権侵害行為差止等請求事件 商標権 民事訴訟 平成30年12月27日 東京地方裁判所
ジェネリック・リプロダクト品について、侵害者利益を損害として認めました。商標はランプシェードの立体形状です。
証拠(甲54,55)及び弁論の全趣旨によれば,原告が入手した中
国国内で製造された原告標章と同一又は類似した形状を有する本件模倣
品の中国国内の販売店の販売価格は約6668円(389.5人民元×
17.12円(平成28年4月25日の人民元の公表仲値))であり,そ\nの日本への輸送手数料が約3766円(220人民元×17.12円)
であったと認められる。被告は,被告商品を中国から輸入,販売していること(前提事実 )から,侵害品の販売のために直接要した経費として,少なくとも,被告
商品の仕入れの際の購入費用や輸送手数料があると認められる。そして,
本件模倣品の販売価格や輸送手数料が上記の額であったこと,被告は被
告商品のことを「今までで最も精巧なリプロダクト」と宣伝しており(甲
2の3〔4枚目〕),被告商品は,一定の品質を確保し,同種の商品より
も製造コストが高い商品であることがうかがわれないわけではないこと,
他方,本件模倣品の前記価格は販売店における販売価格であり,同販売
店の仕入れ価格はそれよりも低額であると推認されること,その他の諸
事情を考慮し,被告商品について,売上額から控除すべき上記経費の合
計は1台当たり1万2000円を超えることはないと認める。そうする
と,被告が被告商品を販売することによって得た利益額を算定するに当
たり控除すべき経費は538万8000円(1万2000円×449個)
となり,前記アの売上額の合計930万0586円から538万800
0円を控除した391万2586円が原告の損害額であると推定される。
(イ)これに対し,被告は,被告の平成28年7月1日から平成29年6月
30日までの期間における被告全体の売上高が1億8365万2099
円であること,売上原価が1億3902万6337円であること,人件
費その他の管理費が合計4459万3678円(人件費497万703
8円,荷造運賃763万3167円,インターネット経費2486万7
197円,広告宣伝費295万7335円,その他経費415万894
1円)であり,それを控除した営業利益が3万2084円であることが
記載された公認会計士作成の決算状況説明書(乙15)を提出した上で,
被告が被告商品によって得た利益は,売上高全体の被告商品の売上高の
比率(約5%)に照らし,1403円であると主張し,他に,被告製品
の利益や経費に関する具体的な金額についての証拠を提出しない。
しかし,商標法38条2項に基づく損害額の算定において侵害者の利
益を算定するに当たり,侵害品の売上額から控除すべき経費は侵害品の
販売のために直接要した変動費であると解されるところ,上記決算状況
説明書によっては,被告商品の上記変動費を認定することはできない。
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◆平成30(行ケ)10004
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2018.12. 1
平成30(行ケ)10060 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年11月28日 知的財産高等裁判所
パラマウントベッドの形状の立体商標の登録について、識別力無し、3条2項の適用もなしとした審決が維持されました。
(イ) 前記(1)イ(ウ)認定のとおり,マットレス付き原告ベッドは,原告ベ
ッドの機能(底板の背部の背上げ機能\及び膝部の膝上げ機能,土台の傾\n斜機能)の組合せにより,本願商標と同一の形状をとることができるこ\nとからすると,マットレス付き原告ベッドの購入者又は利用者は,その
使用時に,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識する
機会があり得るものといえる。
しかしながら,本願商標は,別紙1記載のとおり,ベッドの土台が,
頭側を上にして傾斜し,ベッドの底板が,頭側を上にして足側にかけて
全体としてS字状に屈曲し,背部が立ち上がり,腰部から足部にかけて
の中間の膝部が起伏し,かつ,頭側の端部がヘッドボードの上端部の右
方に近接して位置した形状であり,マットレス付き原告ベッドを本願商
標と同一の形状とするには,原告ベッドの上記機能を組み合わせて,土\n台の傾斜角度,底板の背部の立ち上げ角度及び膝部の起伏の高さなどを
調節して設定する必要があること,マットレス付き原告ベッドの利用者
は,通常は,マットレスの上に布団をかけた状態で原告ベッドを使用す
ることに照らすと,マットレス付き原告ベッドの購入者又は利用者は,
その使用時に,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識
する機会は多いものとは認められないし,また,その形状を認識したと
しても,それが印象に残ることは少ないものと認められる。
さらに,原告は,本社及び全国8支店のショールームに原告の総合カ
タログ(甲1)及び単品カタログ(甲2)を常備し,マットレス付き原
告ベッドを展示して,販売活動を行っていること(甲5,弁論の全趣旨)
に照らすと,マットレス付き原告ベッドの購入者は,その購入の際に,
総合カタログ及び単品カタログに接することがあり得るものと認められ
るが,総合カタログ及び単品カタログには,別紙1の下部の写真と同様
の構図(斜視図)の写真は掲載されていないため,総合カタログ及び単\n品カタログのみから,本願商標と同一の形状を認識することはできない。
また,上記ショールームにおいてマットレス付き原告ベッドが本願商標
と同一の形状で展示されていたことを認めるに足りる証拠はない。
(ウ) マットレス付き原告ベッドを含む「楽匠Zシリーズ」の商品の新聞
広告及び雑誌広告には,1)人が横たわっている,マットレス,枕及び掛
け布団を設置した,底板及び土台が頭側に傾斜した状態のマットレス付
きベッドを表したB商標,2)マットレス,枕及び掛け布団を設置した,
土台が頭側に傾斜し,底板の背部が立ち上がった状態のマットレス付き
ベッドを表したD商標,3)マットレス及び枕を設置した,土台が頭側に
傾斜し,底板の背部が立ち上がった状態のベッドに人が枕に頭をのせ,
背中を付けて座っているマットレス付きベッドを表したE商標の写真が\n掲載されていることは,前記ア(イ)認定のとおりである。
しかしながら,これらのB商標,D商標及びE商標の写真は,人,枕
及び掛け布団が写されている部分を除いても,別紙1記載の本願商標の
形状の写真と一致しないことに照らすと,B商標,D商標及びE商標を
掲載した新聞広告及び雑誌広告から,本願商標と同一の形状又は社会通
念上同一の形状を認識することはできないものと認められる。
また,同様に,マットレスの設置されていない,土台が頭側に傾斜し,
底板の背部が立ち上がった状態のベッドを表したA商標が掲載された新\n聞及び雑誌から,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形状を認識することはできないものと認められる。
次に,マットレス付き原告ベッドを含む「楽匠Zシリーズ」の商品の
テレビCMには,マットレスの足元側にカバーをつけたマットレス付き
ベッドにおいて,土台が水平で,土台が頭側に傾斜した状態,底板及び
土台が頭側に傾斜した状態,土台が頭側に傾斜し,底板の背部が立ち上
がった状態を表したF商標の画像,土台が頭側に傾斜し,底板の背部が\n立ち上がった状態のマットレス付きベッドを表した標章の画像が表\示さ
れていることは,前記ア(ウ)認定のとおりである。
しかしながら,これらのF商標及び上記標章の画像は,マットレスの
足元側のカバーが写されている部分を除いても,別紙1記載の本願商標
の形状の写真と一致しないことに照らすと,F商標及び上記標章が表示\nされたテレビCMから,本願商標と同一の形状又は社会通念上同一の形
状を認識することはできないものと認められる。
(エ) 前記ア(エ)のとおり,本件アンケートは,福祉用具レンタル卸業者,
貸与業者及び販売業者,ケアマネージャー(介護支援専門員),福祉用
具鑑定士,福祉用具プランナー等を対象者とするものであり,介護用品
の利用者及びその家族等の一般需要者が対象者に含まれていないから,
本件アンケートの結果は,需要者(前記(ア))の認識を適切に反映した
ものとは認められない。
(オ) 以上によれば,原告によるマットレス付き原告ベッドの販売(前記
ア(ア)),新聞広告,雑誌広告及びテレビCMによる広告宣伝(前記ア(イ),
(ウ)),本件アンケートの結果(前記ア(エ))を総合考慮しても,本件
審決時(審決日平成30年3月22日)までに,本願商標が,マットレ
ス付き原告ベッドを表示するものとして,需要者の間に広く認識される\nに至ったものと認めることはできない。
したがって,本願商標は,マットレス付き原告ベッドについて,「使
用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識する
ことができるもの」(商標法3条2項)に該当するものとはいえない。
ウ 原告の主張について
原告は,1)本願商標は,極めて斬新で特徴的な形状(「傾斜ベッド」と
「フットボード」の形状)を有しており,その特徴的な形状は,強く需要
者の目を引くこと,2)本願商標の使用商品(マットレス付き原告ベッド)
は,発売後短期間に多数の販売実績を上げていること,3)積極的,集中的
かつ商品形状の露出を前面に押し出した効果的な本願商標の使用商品の宣
伝活動とも相まって,需要者である福祉用具レンタル事業者において,本
願商標の特徴的な形状は,印象的かつ鮮明に記憶され,その特徴的な形状
自体が原告の出所を表示する標識として認識されるに至っており,このこ\nとは,本件アンケート調査の結果によって裏打ちされていることからする
と,本願商標は,本願商標の使用商品について,「使用をされた結果需要
者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」
(商標法3条2項)に該当すると主張する。
しかしながら,上記1)のうちの「傾斜ベッド」の形状とは,土台の傾斜
機能により,フットボード側が低くなった形状をいうものであるところ,\n原告が述べるように土台の傾斜機能は従来の介護用ベッドにない機能\であ
るとしても,本願商標の構成全体の中で土台が傾斜した形状が強く需要者\nの印象に残るものとは認められない。また,上記1)のうちの「フットボー
ド」の形状とは,樹脂製のボードを採用し,全体に丸みをつけて,ボード
の上端がつかまりやすいグリップ形状となっている点及び外側に「収納カ
バー」が設けられ,木目調のシートが貼ってある点をいうものであるとこ\nろ,グリップできるように,フットボードの上部左右に穴を設けた形状及
びフットボードの一部に木目調の模様がある形状は,他の介護用ベッドに
おいても採用されている形状又は装飾であって(乙4ないし6,14,1
5),いずれも独特なものとはいえず,強く需要者の目を引くものとは認
められない。
そして,マットレス付き原告ベッドの販売実績及び広告宣伝,本件アン
ケートの結果を総合考慮しても,本件審決時(審決日平成30年3月22
日)までに,本願商標が,マットレス付き原告ベッドを表示するものとし\nて,需要者の間に広く認識されるに至ったものと認めることはできないこ
とは,前記イ(オ)で説示したとおりである。したがって,原告の上記主張は,理由がない。
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2018.07.31
平成30(行ケ)10004 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年7月25日 知的財産高等裁判所
知財高裁4部は、4条1項19号違反で無効とした審決を維持しました。原告は意匠権の切れたリプロダクト品を販売していました。問題の商標はランプシェードの立体的形状を2次元として表した形状で、被告商品とともに判決文の最後に挙げられています。\n
被告商品の雑誌等の出版物への掲載状況をみると,前記(1)ウ(イ)
のとおり,被告商品は,1990年(平成2年)から2013年(平成
25年)ころまでの間,家具に関する書籍,照明に関する雑誌・カタロ
グ,インテリア雑誌,ファッション雑誌,経済雑誌等の多数の出版物に
おいて,被告商品の形態(立体的形状)が認識できるような写真と共に
紹介されており,その基本的な内容は,被告商品は,20世紀を代表す\nるデザイナーであるヘニングセンが1958年にデザインし,被告が販
売する世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること
を強調するものといえる。
エ 前記イ及びウで認定した被告商品の販売状況及び広告宣伝状況に加えて,
被告商品は,平成9年度通商産業省選定グッド・デザイン外国商品賞(イ
ンテリア用品部門)を受賞し,平成24年には高等学校の教科書において,
被告商品の写真と共に,「モダンデザインの代表的ペンダント PH5…
ポール・ヘニングセン」として掲載されたこと(前記(1)エ)を総合すると,
被告商品は,その販売が開始された1976年(昭和51年)当時,その
2層目から5層目が組み合わさった形状において,他のランプシェード商
品には見られない独自の特徴を有しており,しかも,被告商品が上記販売
開始後本件商標の登録出願日(平成25年6月14日)までの約40年間
にわたり全国的に継続して販売され,この間被告商品のデザインを印象づ
けるような広告宣伝が継続して繰り返し行われた結果,本件商標の登録出
願時までには,被告商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具,インテリ
アの取引業者及び照明器具,インテリアに関心のある一般消費者の間で被
告が製造販売するランプシェードとして広く知られるようになり,被告商
品の立体的形状(引用商標)は,周知著名となり,自他商品識別機能ない\nし自他商品識別力を獲得するに至ったものと認められる。
そうすると,引用商標が被告商品に長年使用された結果,引用商標は,
本件商標の登録出願時及び登録査定時(登録査定日・同年12月27日)
において,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本\n国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められる。
・・・
加えて,原告は,平成25年2月当時,被告商品を元にできるだけ忠実
に復刻生産したランプシェードの商品(原告商品)を「ポール・ヘニング
センPH5」のリプロダクト品として原告のウェブサイト上で販売してい
たこと(前記(1)ア及びイ)を併せ考慮すると,原告は,本件商標の登録出
願時(同年6月14日)において,被告商品は,ヘニングセンがデザイン
した被告が製造販売する商品であること及び被告商品の立体的形状(引用
商標)について十分に認識していたことが認められる。\n
◆判決本文
関連事件です。こちらは19号違反なしと判断されました。上記案件とは商標が異なります。
◆平成30(行ケ)10005
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2018.01.19
平成29(行ケ)10155 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成30年1月15日 知的財産高等裁判所
立体商標について、識別力無し(3条1項3号)とした審決が維持されました。また、3条2項の主張も認められませんでした。
商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮\nさせたり,商品等の美観をより優れたものとする等の目的で選択されるものであっ
て,直ちに商品の出所を表示し,自他商品を識別する標識として用いられるもので\nはない。このように,商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は,
多くの場合,それ自体において出所表示機能\ないし自他商品識別機能を有するもの,\nすなわち,商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また,\n商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商品等の形状は,文字,図形,記号等
により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能\や美観を際立たせるために
選択されたものと認識するのであって,商品等の出所を表示し,自他商品を識別す\nるために選択されたものと認識する場合は多くない。
そうすると,客観的に見て,商品等の機能又は美観に資することを目的として採\n用されると認められる商品等の形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普
通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として,商標法3条1項3号
に該当することになる。
また,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は,同種の商品等に\n関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願した
ことのみを理由として当該形状を特定人に独占使用を認めることは,公益上適当で
ない。
よって,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,同種の商品等について,機
能又は美観に資することを目的とする形状の選択であると予\測し得る範囲のもので
あれば,当該形状が特徴を有していたとしても,同号に該当するものというべきで
ある。
・・・・
イ 一般的な杭の形状との対比
本願の指定商品である杭については,先端を円錐状に尖らせ,頭部の先端(打込
部)を円盤状に平らにした,長い棒状の形状から成る商品が市販されていることが
認められる(甲1,123,乙4,5,9〜19)。
この点,原告は,一般的な杭は,頭部から先端までが同一径の円管で,鉄パイプを
切断しただけの状態のものである「単管杭」であり,本願商標をこれと対比すべき
旨主張するが,かかる「単管杭」のみならず,先端を円錐状に尖らせ,頭部の先端を
円盤状に平らにした長い棒状の杭も市販されているから,原告の主張は採用できな
い。
・・・・
(ウ) そうすると,本願商標に係る立体的形状は,杭の形状として,機能又は美観\nに資することを目的として採用されたものと認められ,また,需要者において,機
能又は美観に資することを目的とする形状と予\測し得る範囲のものであるから,商
品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として,商標
法3条1項3号に該当するというべきである。
・・・・
前記1のとおり,商標法3条2項は,商品等の形状を普通に用いられる方法で表\n示する標章のみから成る商標として同条1項3号に該当する商標であっても,使用
により自他商品識別力を獲得するに至った場合には,商標登録を受けることができ
ることを規定している。
そして,立体的形状から成る商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどう
かは,1)当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存否,2)当該商標が
使用された期間,商品の販売数量,広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情
を総合考慮して判断すべきである。
なお,使用に係る商標ないし商品等の形状は,原則として,出願に係る商標と実
質的に同一であり,指定商品に属する商品であることを要するが,機能を維持する\nため又は新商品の販売のため,商品等の形状を変更することもあり得ることに照ら
すと,使用に係る商品等の立体的形状が,出願に係る商標の形状と僅かな相違が存
在しても,なお,立体的形状が需要者の目につきやすく,強い印象を与えるもので
あったか等を総合勘案した上で,立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得する
に至っているか否かを判断すべきである。
(2) 本願商標に係る商品の形状及び当該形状に類似した他の商品の存在
本願商標は,指定商品である杭の立体的形状に係るものであり,その形状は,(ア)
円柱状の中央部分から頭部と先端部に向けて,円錐状の絞り加工部分があり,(イ)頭
部側,先端部側ともに,絞り加工部分の途中に1本の外周線があり,(ウ)頭部側につ
いては,外周線を越えた後も絞りは続くが,絞り切る前に,絞り加工部分より大径
のリング部分及びリング部分より小径の台形部分があり,これが頭部の末端となり,
(エ)先端部についても,外周線を越えた後も絞りが続くが,絞り切る前に,絞り加工
部分より大径のリング部分及び絞りの線よりも鋭角の線による円錐部分があり,こ
れが先端部の末端となるというものであるところ,前記1のとおり,円柱状の中央
部分(上記(ア)),頭部の末端の台形部分(上記(ウ)),先端部の末端の円錐部分(上
記(エ))から成る杭は,他にも市販されている。また,上記(ア),(ウ),(エ)の頭部と
先端部に向けた絞り加工や,上記(エ)の絞り加工より大径のリング部分,上記(イ)の
外周線も,機能又は美観に資することを目的とする形状と予\測し得る範囲のもので
あって,本願商標は,杭の形状として通常採用されている範囲を大きく超えるもの
とまではいえない。
さらに,本願商標と実質的に同一の形状から成る複数の杭が,第三者の取扱いに
係る商品として販売されていること,原告は,これに対して何らの権利行使も行っ
ていないことも認められる(乙20〜22,弁論の全趣旨)。
したがって,原告商品の立体的形状自体が他の商品にない特徴的なものであると
はいえない。
・・・・
以上のとおり,1)原告商品の立体的形状は,他の同種商品にはない特徴的なもの
とはいえないこと,2)一定の販売実績を挙げてきたものの,そのシェアは不明であ
り,実用新案権や意匠権が存在していたこと,原告商品の広告宣伝展示が継続して
行われたとしても,取引者,需要者は,併せ使用された「くい丸」の文字商標に注目
して自他商品の識別を行ってきたと認められること,これらの事情を総合すると,
原告商品の立体的形状が,文字商標から独立して,その形状のみにより自他商品識
別力を獲得するには至っていないというべきである。
したがって,本願商標は,使用をされた結果自他商品識別力を獲得し,商標法3
条2項により商標登録が認められるべきものということはできない。
◆判決本文
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2015.07.30
平成27(行ケ)10003 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成27年7月16日 知的財産高等裁判所
立体商標について、識別性無しとした審決が維持されました。3条2項の適用についても認められませんでした。判決文の最後に立体商標が挙げれられています。
ア 本願商標は,別紙立体商標目録記載のとおり,球体を半球よりやや大き
めに切断し,その半球状の平らな面(切断面)の中央部分に,切断面の円
の3分の1程度の大きさの円形のくぼみを有する立体的形状の全体を淡い
ピンク色とした構成からなる立体的形状と色彩を結合した商標である。
イ 本願商標の指定商品中の「骨接合術用インプラント」に「人工股関節用
インプラント」が含まれることは争いがない。
証拠(甲9ないし11,乙1ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,1)
股関節は,大腿骨の上端の球状の骨頭が骨盤のくぼみ(寛骨臼)にはまり
込むように接合して形成されていること,2)一般的な人工股関節用インプ
ラントは,大腿骨の骨頭の役割を果たす「ヘッド」,ヘッドを受け止める
「インサート」,骨盤の寛骨臼にはめ込みインサートを支える「カップ」,ヘ
ッドに差し込んで支える土台として大腿骨に埋め込む「ステム」から構成\nされていること,3)ヘッドは,カップ又はインサートの中で可動するため
に半球状を呈し,球状部分の反対側の平らな面にはステムとつなぐための
くぼみを有すること,4)市販されている人工股関節用インプラントのセラ
ミック製のヘッドには,全体が単色の白色,ベージュ色等の色彩のものが
あることが認められる。
上記認定事実によれば,本願商標の立体的形状と人工股関節用インプラ
ントのヘッドの立体的形状とは,一部を平らにした半球状である点及び球
状部分の反対側にくぼみを有する点において共通するものであり,本願商
標の立体的形状は,人工股関節用インプラントを構成する「ヘッド」の一\n般的な立体的形状であることが認められる。
また,前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,人工股関節用インプラント
は,大腿部頚部骨折,変形性股関節症等の股関節疾患の治療を目的とした
人工股関節置換術に用いられる商品であって,人の体内に埋め込んで使用
されるものであること,その取引者,需要者は,整形外科の医療従事者又
はその関係者等であり,上記商品の取引に際しては,商品の形状・寸法が
患者の具体的な症状に適したものであるかどうか,生体適合性,耐摩耗
性,強度等の商品の材質の物性に着目するものであり,商品の色彩が着目
されることは通常ないものと認められる。
そうすると,本件審決がされた平成26年8月28日の時点において,本
願商標は,その指定商品中の「骨接合術用インプラント」に含まれる人工
股関節用インプラントに使用された場合には,取引者,需要者である上記
医療従事者又はその関係者等によって,人工股関節用インプラントを構成\nする「ヘッド」の立体的形状を表示するものとして一般に認識されるもの\nであり,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するもので\nあったものと認められるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公
益上適当でないとともに,自他商品識別力を欠くものというべきである。
加えて,市販されている人工股関節用インプラントのセラミック製のヘ
ッドには,全体が単色の白色,ベージュ色等の色彩のものがあることに照
らすと,本願商標の全体が淡いピンク色の構成であることは,表\示方法と
して格別なものではなく,本願商標は,人工股関節用インプラントを構成\nする「ヘッド」の立体的形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみ\nからなるものと認められる。
以上によれば,本願商標は,商標法3条1項3号に該当するものと認め
られる。
ウ 原告は,これに対し,本願商標は,人工股関節などに用いられるインプラ
ントに共通の特徴を有しているとしても,「柔らかな球体のフォルムと,つ
やつやとしたピンク色の半球体の形状」ゆえに,形状及び色彩に他に類する
もののない特徴を有しており,市場で初めて本願商標に接した者は,「これ
は一体なんだろう。」という素直な感想を持つと解するのが自然であるか
ら,本願商標は,インプラントを立体的に表したものと容易に認識,把握さ\nせるにとどまらず,自他商品識別力を生来的に備えているから,本願商標が
商標法3条1項3号に該当するものとはいえない旨主張する。
しかしながら,前記イで述べたように,本願商標の図形は,人工股関節
用インプラントを構成する「ヘッド」の一般的な立体的形状であり,また,そ\nの図形の色彩が原告が主張するように「つやつやとしたピンク色」であると
しても,人工股関節用インプラントの取引者,需要者である整形外科の医
療従事者又はその関係者等は,商品の形状・寸法が患者の具体的な症状に
適したものであるかどうか,生体適合性,耐摩耗性,強度等の商品の材質
の物性に着目するものであり,商品の色彩が着目されることは通常ないも
のといえるから,本願商標が自他商品識別力を生来的に備えているものと認
めることはできない。
◆判決本文
◆関連事件です。平成27(行ケ)10002
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2014.05.24
平成25(ワ)31446 商標権 民事訴訟 平成26年05月21日 東京地方裁判所
エルメスのバックの立体商標について商標権侵害が認定されました。不競法2条1項1,2号も認定されています。
原告商標は立体商標であるところ,上記類否の判断基準は立体商標においても同様にあてはまるものと解すべきであるが,被告標章は一部に平面標章を含むため,主にその立体的形状に自他商品役務識別機能を有するという立体商標の特殊性に鑑み,その外観の類否判断の方法につき検討する。立体商標は,立体的形状又は立体的形状と平面標章との結合により構\成されるものであり,見る方向によって視覚に映る姿が異なるという特殊性を有し,実際に使用される場合において,一時にその全体の形状を視認することができないものであるから,これを考案するに際しては,看者がこれを観察する場合に主として視認するであろう一又は二以上の特定の方向(所定方向)を想定し,所定方向からこれを見たときに看者の視覚に映る姿の特徴によって商品又は役務の出所を識別することができるものとすることが通常であると考えられる。そうであれば,立体商標においては,その全体の形状のみならず,所定方向から見たときの看者の視覚に映る外観(印象)が自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を果たすことになるから,当該所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似する場合には,原則として,当該立体商標と当該平面商標との間に外観類似の関係があるというべきであり,また,そのような所定方向が二方向以上ある場合には,いずれの所定方向から見たときの看者の視覚に映る姿にも,それぞれ独立に商品又は役務の出所識別機能\が付与されていることになるから,いずれか一方向の所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似していればこのような外観類似の関係があるというべきであるが,およそ所定方向には当たらない方向から立体商標を見た場合に看者の視覚に映る姿は,このような外観類似に係る類否判断の要素とはならないものと解するのが相当である。そして,いずれの方向が所定方向であるかは,当該立体商標の構成態様に基づき,個別的,客観的に判断されるべき事柄であるというべきである。
(2) これを本件について検討するに,原告標章,被告標章はいずれも,内部に物を収納し,ハンドルを持って携帯するハンドバックに係るものであるから,ハンドルを持って携帯した際の下部が底面となり,この台形状の底面の短辺と接続し,ハンドルが取り付けられていない縦長の二等辺三角形の形状を有する面が側面となることはそれぞれ明らかである。そして,その余の面のうち,蓋部,固定具が表示されている大きな台形状の面が正面部に該当し,かつこの正面部には,その対面側に相当する背面部とは異なり,装飾的要素をも備えた蓋部,ベルト,固定具が表\示されており,ハンドルを持って携帯した際に携帯者側に向かって隠れる背面部とは異なって外部に向き,他者の注意を惹くものであるから,この正面部は,少なくとも所定方向の一つに該当するものと解される。これは,被告の開設したインターネットショッピングサイトにおいて,いずれもこの正面部を含む写真が表示されていることのほか,各商品の紹介においては,全てこの正面部のみが表\示されていることも,正面部が所定方向であることを裏付けるものであるということができる。〔甲1〕そして,この正面部から観察した場合,原告標章と被告標章とは,本体正面の形状において底辺がやや長い台形状であり,上部に,略凸状となるように両サイドに切り込みを有し,横方向に略三等分する位置に鍵穴状の縦方向の切込みを二箇所有する蓋部が表示されていること,前記蓋部上に,前記略凸状の両サイドの切り込みから本体正面中央まで延在する左右一対のベルトが表\示されていること,前記蓋部の凸型部分と前記左右一対のベルトとを本体正面の上部中央にて同時に固定することができる位置に,先端にリング状を形成した固定具が表示されていること,前記鍵穴状の切込みの外側の位置において,前記蓋部の凸型部分と前記各ベルトとを同時に固定する左右一対の補助固定具が表\示されていること,上部に円弧状をなす一対のハンドルが表示され,前記正面側のハンドルは前記鍵穴状の切込みを通るように表\示されていること,以上の点においていずれも共通しており,原告標章と被告標章とは,所定方向である正面から見たときに視覚に映る姿が,少なくとも近似しているというべきであり,両者は外観類似の関係にあるということができる。被告標章は,原告標章では立体的構成とされている蓋部,左右一対のベルトとこれを固定する左右一対の補助固定具,先端にリング状を形成した固定具,ハンドルの下部(正面部と重なりベルト付近まで至る部分)について,これらの質感を立体的に表\現した写真を印刷して表面に貼\付した平面上の構成とされているところ,これを正面から見た場合に上記共通点に係る視覚的特徴を看取できるものというべきである。一方,上部及び側面方向から被告標章を観察した場合には,原告標章では立体的に表\現された上記蓋部等が立体的でないことは看て取れるものの,上部及び側面は,いずれも所定方向には該当せず,上記所定方向から観察した場合の外観の類否に影響するものではない。
(3) そして,原告商標ないし被告標章において,何らかの観念ないし称呼が生じ,これらが著しく相違するものとも認められない。
(4) 以上によれば,被告標章は原告商標と類似しているということができ,被告につき,過失の存在の推定を覆すに足る事情も認められない(商標法39条,特許法103条)。
(5) この点に関して被告は,被告各商品につき,そのデザインは写真として似ているかもしれないが,素材や価格などで明確に区別できる等と主張するが,本件全証拠によっても,上記所定方向である正面から観察した場合に,被告標章が原告標章と類似するとの判断を覆すに足る事実は何ら認めることができないし,商品の出所の誤認混同をきたすおそれがないものとも認められない。
◆判決本文
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2013.07. 5
平成24(行ケ)10346 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成25年06月27日 知的財産高等裁判所
立体商標について識別性なし、使用による顕著性無しとした審決が維持されました。
しかしながら,他のジョイントボックスの形状等を見ても,電気配線の結合部分を覆うためにボックス部分の形状が円筒形のものが多く,より詳細に観察した際には,上部に向かってやや広がっていき,最上端部には縁部が設けられているものが多数存在し,色は透明なものがある上に,本体のカバー部分内部は,結線束を入れるために空洞となっており,本体の上面縁部には,本体を造営材(固定できる部材)に固定するための固定孔が設けられ,本体下方には,汚水の排水用の突起部が存在することは,ジョイントボックスにとって一般的に採用された極めてありふれた形状であるといえる(甲1ないし7,乙1ないし5)。開口部の弁についても,使用商品にのみ取り付けられているわけではなく,他にもワンタッチでかぶせるジョイントボックスが実際に存在するから(乙4。ただし,弁は2枚である。もっとも,使用商品同様に位置としては開口部に有する。),本願商標の弁自体は機能に資する目的のための形状であるといってよい。弁自体は,電気配線の結束部分にかぶせることによって配線の結束部分が弁体を通過し,弁体が戻ろうとする働きによりジョイントボックスが固定されるという,正に機能\に資するための形状にほかならないのであって,当該形状は商品の機能向上の観点から選択されたものであり,機能\について特許を受けるのは別として,自他商品を識別するための標識としては認識し得ないものというべきである。本願商標の弁体の並びがグレープフルーツを切断したような形状を有している点も,結線束を保護するためにカバー内に固定するという機能を果たすために弁がカバー全体にわたって整然と並んでいるにすぎず,機能\に資する目的の形状であることを超えるものではない。とりわけ,結線束をカバー内に収納した後はジョイントボックスの円筒部分を上向きにして使用することが一般的であることをふまえると,設置後に特別な印象を与えるものとはいえない。審決の上記判断に誤りはなく,この判断を前提にして本願商標は法3条1項3号に該当するとした審決の判断にも誤りはない。この誤りをいう取消事由1は理由がない。
・・・
エ 使用商品の販売数量及び販売金額は,平成8年度は455万個で約7700万円に始まり,最も多いときは,平成16年度ないし平成18年度は約920万個で約1億5700万円であって,平成23年度は約675万個で約1億4800万円である(甲9,40,44)。5 使用商品の販売数量については,上記認定事実のとおり,それ相当の数量が製造,販売されていることは認められるものの,業界におけるジョイントボックスに相当する商品の総販売数量についての立証がないので,使用商品の市場シェアは明らかであるとはいえない。この点につき,原告は,木造住宅一戸当たり平均20個のジョイントボックスが使用されるとの前提で,電気事業者の証言書を提出し(甲53ないし57),使用商品は主に木造住宅に使用されると述べ,これを国土交通省資料による木造住宅着工数(平成22年度であれば46万4140戸)を基礎数値として算出すれば,使用商品の市場シェアは70%以上になるし(甲9,40),仮に誤差が±20%あったとしても市場シェアは50%を下らないことは明白であると主張する。しかしながら,使用商品に係るリーフレット(甲1,2)ですら,主たる用途が木造住宅用とは記されておらず,むしろ,雑誌の記事(甲17)には「ジョイントボックスは,木造,鉄骨住宅などの電気工事において,・・・結線部分を絶縁するときに使う。」との記載があるし,また,原告のウェブサイト(乙12)にある「よくある質問」の中にも,「Q:ナイスハットHタイプとMタイプどう違いますか?」(判決注:ナイスハットHタイプは,甲1のとおり,使用商品である。)との質問に対し,「A:Hタイプは主に木造住宅用。Mタイプは主に鉄筋・鉄骨の二重天井の先行配線用に開発しましたが,用途は同じですので状況に応じて選んで下さい。」との回答があり,これらのことからすれば,使用商品の開発時の意図はともかくとして,実際に使用される使用商品の用途が木造住宅用に限定されるものでないことは明らかである。原告は,主として木造住宅に利用されていると主張しているが,原告作成の納入実績表(甲10)の中には,工場,官庁の合同庁舎,学校,ビル,病院,ごみ焼却場といったように,明らかに木造とは考えられず,鉄筋造りでしかも巨大な建造物も含まれているのであって,鉄筋造りの建造物用を除外して市場占有率を算定することについては疑問がある。そして,鉄筋造りの巨大な建造物には大量のジョイントボックスが使用されることが想定されるから,この場合には,原告が主張するように市場占有率の誤差が10%や20%にとどまらず,原告商品の市場占有率の数値がかなり小さくなることが十\分考えられる。そうすると,需要者が本願商標につき原告商品との認識を持つことが可能という法3条2項の要件を充足することは困難である。\n
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2011.06.30
平成22(行ケ)10253等 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年06月29日 知的財産高等裁判所
立体商標について、3条1項3号の該当性については審決の判断を肯定しましたが、3条2項の該当性については、使用による特別顕著性を取得していたと判断し、拒絶審決を取り消しました。
そこで,本願商標が,商標法3条2項に該当するか否かについて,検討する。立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは,当該商標ないし商品等の形状,使用開始時期及び使用期間,使用地域,商品の販売数量,広告宣伝のされた期間・地域及び規模,当該形状に類似した他の商品等の存否などの諸事情を総合考慮して判断するのが相当である。そして,使用に係る商標ないし商品等の形状は,原則として,出願に係る商標と実質的に同一であり,指定商品に属する商品であることを要するというべきである。もっとも,商品等は,その製造,販売等を継続するに当たって,技術の進歩や社会環境,取引慣行の変化等に応じて,品質や機能を維持するために形状を変更することが通常であることに照らすならば,使用に係る商品等の立体的形状において,ごく僅かに形状変更がされたことや,材質ないし色彩に変化があったことによって,直ちに,使用に係る商標ないし商品等が自他商品識別力を獲得し得ないとするのは妥当ではなく,使用に係る商標ないし商品等にごく僅かな形状の相違,材質ないし色彩の変化が存在してもなお,立体的形状が需要者の目につき易く,強い印象を与えるものであったかなどを総合勘案した上で,立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである。・・・・上記に挙げた事実及び前記1(2)アの事実に照らすと,i)原告製品は,背もたれ上部の笠木と肘掛け部が一体となった,ほぼ半円形に形成された一本の曲げ木が用いられていること,座面が細い紐類で編み込まれていること,上記笠木兼肘掛け部を,後部で支える「背板」(背もたれ部)は,「Y」字様又は「V」字様の形状からなること,後脚は,座部より更に上方に延伸して,「S」字を長く伸ばしたような形状からなること等,特徴的な形状を有していること,ii)1950年(日本国内では昭和37年)に販売が開始されて以来,ほぼ同一の形状を維持しており,長期間にわたって,雑誌等の記事で紹介され,広告宣伝等が行われ,多数の商品が販売されたこと,iii)その結果,需要者において,本願商標ないし原告製品の形状の特徴の故に,何人の業務に係る商品であるかを,認識,理解することができる状態となったものと認めるのが相当である。
◆判決本文
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2011.05. 4
平成22(行ケ)10366 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年04月21日 知的財産高等裁判所
立体商標について、3条2項により識別性を取得したとして、拒絶した審決が取り消されました。
上記のとおり,本願商標の容器部分が女性の身体の形状をモチーフにしており,女性の胸部に該当する部分に2つの突起を有し,そこから腹部に該当する部分にかけてくびれを有し,そこから下部にかけて,なだらかに膨らみを有した形状の容器は,他に見当たらない特異性を有することからすると,本願商標の立体的形状は,需要者の目につきやすく,強い印象を与えるものであって,平成6年以降15年以上にわたって販売され,香水専門誌やファッション雑誌等に掲載されて使用をされてきたことに照らすと,本願商標の立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っており,香水等の取引者・需要者がこれをみれば,原告の販売に係る香水等であることを識別することができるといって差し支えない。以上の諸事情を総合すれば,本願商標は,指定商品に使用された場合,原告の販売に係る商品であることを認識することができ,商標法3条2項の要件を充足するというべきである。・・・被告は,本願商標に係る香水の販売地や販売地域,販売数量や宣伝広告費が不明で,市場占有率も高くないから,香水の一般的な需要者が,本願商標が,原告の出所に係る商品であると認識し得るものではないと主張する。しかしながら,販売地域,販売数量や宣伝広告費等が明らかにされることが望ましいものの,それらが必ずしも明らかではないとしても,その形状の特徴から自他商品識別力を獲得することはあり得るし,香水は安価な日用品とは異なるものであり,香水専門誌やファッション雑誌等による宣伝広告をみた需要者は,その特徴的な容器の形状から,原告の出所に係る商品であることを認識し得るということができる。
◆判決本文
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2011.05. 4
平成22(行ケ)10406 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年04月21日 知的財産高等裁判所
立体商標について、識別性無しとして拒絶した審決が維持されました。
商品及び商品の包装の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美感をより優れたものとする等の目的で選択されるものであって,直ちに商品の出所を表\示し,自他商品を識別する標識として用いられるものではない。このように,商品等の製造者,供給者の観点からすれば,商品等の形状は,多くの場合,それ自体において出所表示機能\ないし自他商品識別機能を有するもの,すなわち,商標としての機能\を果たすものとして採用するものとはいえない。また,商品等の形状を見る需要者の観点からしても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能\や美感を際立たせるために選択されたものと認識するのであって,商品等の出所を表示し,自他商品を識別するために選択されたものと認識する場合は多くない。そうすると,客観的に見て,商品等の機能\又は美感に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状は,特段の事情のない限り,商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,商標法3条1項3号に該当することになる。また,商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定人に独占使用を認めることは,公益上適当でない。よって,当該商品の用途,性質等に基づく制約の下で,同種の商品等について,機能\又は美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば,当該形状が特徴を有していたとしても,同号に該当するものというべきである。\n
◆判決本文
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2010.11.18
平成22(行ケ)10169 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年11月16日 知的財産高等裁判所
ヤクルトの容器について立体商標としての識別性が争われた事件で、知財高裁は識別性ありとして審決を取り消しました。
以上によれば,本件容器を使用した原告商品は,本願商標と同一の乳酸菌飲料であり,また同商品は,昭和43年に販売が開始されて以来,驚異的な販売実績と市場占有率とを有し,毎年巨額の宣伝広告費が費やされ,特に,本件容器の立体的形状を需要者に強く印象付ける広告方法が採られ,発売開始以来40年以上も容器の形状を変更することなく販売が継続され,その間,本件容器と類似の形状を有する数多くの乳酸菌飲料が市場に出回っているにもかかわらず,最近のアンケート調査においても,98%以上の需要者が本件容器を見て「ヤクルト」を想起すると回答している点等を総合勘案すれば,平成20年9月3日に出願された本願商標については,審決がなされた平成22年4月12日の時点では,本件容器の立体的形状は,需要者によって原告商品を他社商品との間で識別する指標として認識されていたというべきである。そして,原告商品に使用されている本件容器には,前記のとおり,赤色若しくは青色の図柄や原告の著名な商標である「ヤクルト」の文字商標が大きく記載されているが,上記のとおり,平成20年及び同21年の各アンケート調査によれば,本件容器の立体的形状のみを提示された回答者のほとんどが原告商品「ヤクルト」を想起すると回答していること,容器に記載された商品名が明らかに異なるにもかかわらず,本件容器の立体的形状と酷似する商品を「ヤクルトのそっくりさん」と認識している需要者が存在していること等からすれば,本件容器の立体的形状は,本件容器に付された平面商標や図柄と同等あるいはそれ以上に需要者の目に付きやすく,需要者に強い印象を与えるものと認められるから,本件容器の立体的形状はそれ自体独立して自他商品識別力を獲得していると認めるのが相当である。
◆判決本文
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2008.07. 2
◆平成19(行ケ)10293 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年06月30日 知的財産高等裁判所
立体商標について、識別性なし(3条1項3号)とした審決を取り消しました。
「本願商標においては,車えび,扇形の貝殻,竜の落とし子及びムラサキイガイの4種の図柄を向って左側から順次配列し,さらにこれらの図柄をマーブル模様をしたチョコレートで立体的に模した形状からなるのであり,このような4種の図柄の選択・組合せ及び配列の順序並びにマーブル色の色彩が結合している点において本願商標に係る標章は新規であり,本件全証拠を検討してもこれと同一ないし類似した標章の存在を認めることはできない。そして,これらの結合によって形成される本願商標が与える総合的な印象は,本願商標が付された前記のシーシェルバーを購入したチョコレート菓子の需要者である一般消費者において,チョコレート菓子の次回の購入を検討する際に,本願商標に係る指定商品の購入ないしは非購入を決定する上での標識とするに足りる程度に十分特徴的であるといえ,本件全証拠を検討しても本願商標に係る標章が「一般的に使用される標章」であると認めるに足りる証拠はないし,本願商標が「商標としての機能を果たし得ないもの」であると認めるに足りる証拠もない。
オ 被告は,商品等の形状は,基本的に識別標章たり得ないし,商品等の形状には選択し得る形状に一定の幅があるのが通常であり,・・・商品等の形状そのものからなる立体商標は,それが商品等の形状として一般に採用し得る範囲内のものと認識される限りにおいては,多少特異なものであっても,選択し得る形状の一つと理解されるにとどまるのであって,商品等の機能又は美感と関係のない特異な形状以外は,「商品等の形状を普通に用いられる方法で表\示する標章のみからなる商標」に当たると主張する。・・・しかしながら,商品の形状は,取引者・需要者の視覚に直接訴えるものであり,需要者は,多くの場合,まず当該商品の形状を見て商品の選択・選別を開始することは経験則上明らかであるところ,商品の製造・販売業者においては,当該商品の機能等から生ずる制約の中で,美感等の向上を図ると同時に,その採用した形状を手掛かりとして当該商品の次回以降の購入等に結び付ける自他商品識別力を有するものとするべく商品形体に創意工夫を凝らしていることもまた周知のところであるから,一概に商品の形体であるがゆえに自他商品識別力がないと断ずることは相当とはいえないものである。これをチョコレート菓子についてみると,前記のとおり,チョコレート菓子の選別においては,多くの場合,第一次的には味が最も重要な要素であるといえるが,同時にその嗜好品としての特質からチョコレート菓子自体の形体も外形からチョコレート菓子の識別を可能\ならしめるものとして取引者・需要者の注目を引くものと見ることができるのであり,このことはチョコレート菓子の形体に板状タイプ,立体形状タイプ,立体装飾タイプなどがあり,各製造業者が様々な立体模様等を採用して独自色を創出しようとしていることからも容易に窺うことができるところであり,ここにおいてはチョコレート菓子の外形,すなわち形体が,美感等の向上という第一次的要求に加え,再度の需要喚起を図るための自他商品識別力の付与の観点をも併せ持っているものと容易に推認することができるのである。このように見てくると,嗜好品であるチョコレート菓子の需要者は,自己が購入したチョコレート菓子の味とその形体が他の同種商品と識別可能な程度に特徴的であればその特徴的形体を一つの手掛かりにし,次回以降の購入時における商品選択の基準とすることができるし,現にそのようにしているものと推認することができるのであるから,その立体形状が「選択し得る形状の一つと理解される限り識別力はない」とする被告の主張は,取引の実情を捨象する過度に抽象化した議論であり,にわかに採用し難いところである。」
◆平成19(行ケ)10293 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年06月30日 知的財産高等裁判所
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2008.05.30
◆平成19(行ケ)10215 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年05月29日 知的財産高等裁判所
コカコーラの瓶の形状について立体商標における使用による識別性は認めらないとした審決が取り消されました。
「リターナブル瓶とほぼ同じ形状の瓶を使用した原告商品は,既に,1916年(大正5年)に,アメリカで販売が開始され,開始当時から,その瓶の形状がユニークかつ特徴的であるとして評判になったこと,そして,我が国では,リターナブル瓶入りの原告商品は,昭和32年に販売が開始されて以来,その形状は変更されず,一貫して同一の形状を備えてきたこと(イ) リターナブル瓶入りの原告商品の販売数量は,販売開始以来,驚異的な実績を上げ,特に,昭和46年には,23億8000万余本もの売上げを記録したが,その後,缶入り商品やペットボトル入り商品の販売比率が高まるにつれて,売上げは減少しているものの,なお,年間9600万本が販売されてきたこと(ウ) リターナブル瓶入りの原告商品を含めた宣伝広告は,いわゆる媒体費用だけでも,平成9年以降年間平均30億円もの金額が投じられ,テレビ,新聞,雑誌等において,リターナブル瓶入りの原告商品の形状が需要者に印象づけられるような態様で,広告が実施されてきたこと特に,缶入り商品やペットボトル入り商品の販売が開始され,その販売比率が高まってから後は,リターナブル瓶入りの原告商品の形状を原告の販売に係るコーラ飲料の出所識別表示として機能\させるよう,その形状を意識的に広告媒体に放映,掲載等させていること(エ) 本願商標と同一の立体的形状の無色容器を示された調査結果において,6割から8割の回答者が,その商品名を「コカ・コーラ」と回答していること(オ) リターナブル瓶の形状については,相当数の専門家が自他商品識別力を有する典型例として指摘していること,また,リターナブル瓶入りの原告商品の形状に関連する歴史,エピソード,形状の特異性等を解説した書籍が,数多く出版されてきたこ(カ) 本願商標の立体的形状の本願商標の特徴点aないしfを兼ね備えた清涼飲料水の容器を用いた商品で,市場に流通するものは存在しないこと,また,原告は,第三者が,リターナブル瓶と類似する形状の容器を使用したり,リターナブル瓶の特徴を備えた容器を描いた図柄を使用する事実を発見した際は,直ちに厳格な姿勢で臨み,その使用を中止させてきたこと(キ) リターナブル瓶入りの原告商品の形状は,それ自体が「ブランド・シンボル」として認識されるようになっていること以上の事実によれば,リターナブル瓶入りの原告商品は,昭和32年に,我が国での販売が開始されて以来,驚異的な販売実績を残しその形状を変更することなく,長期間にわたり販売が続けられ,その形状の特徴を印象付ける広告宣伝が積み重ねられたため,遅くとも審決時(平成19年2月6日)までには,リターナブル瓶入りの原告商品の立体的形状は,需要者において,他社商品とを区別する指標として認識されるに至ったものと認めるのが相当である。」
◆平成19(行ケ)10215 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成20年05月29日 知的財産高等裁判所
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2006.11.30
◆平成17(行ケ)10673 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月29日 知的財産高等裁判所
使用による特別顕著性(商標法3条2項)が認められて登録された立体商標について3条2項の規定を具備していないとして無効審判が提起されました。審決は無効理由なしと判断しましたが、知財高裁はこれを取り消しました。
特許法180条の2の規定(特許庁長官の意見の聴取)を言及した判決は初めてです。
「以上のア〜ウによれば,被告の直営店舗の多くは九州北部,関東地方等に所在し,必ずしも日本全国にあまねく店舗が存在するものではなく,また,菓子「ひよ子」の販売形態や広告宣伝状況は,需要者が文字商標「ひよ子」に注目するような形態で行われているものであり,さらに,本件立体商標に係る鳥の形状と極めて類似した菓子が日本全国に多数存在し,その形状は和菓子としてありふれたものとの評価を免れないから,上記「ひよ子」の売上高の大きさ,広告宣伝等の頻繁さをもってしても,文字商標「ひよ子」についてはともかく,本件立体商標自体については,いまだ全国的な周知性を獲得するに至っていないものというべきである。したがって,本件立体商標が使用された結果,登録審決時において,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができたと認めることはできず,本件立体商標は,いわゆる「自他商品識別力」(特別顕著性)の獲得がなされていないものとして,法3条2項の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」との要件を満たさないというほかない。・・・当裁判所の上記判断は,同種の形状の菓子が多数存在することのみで本件立体商標が自他商品識別力を欠くとしたものではなく,同種の形状の菓子の数,全国への分布度,その販売期間,販売規模等をも考慮して検討したものであり,また,鳥の形状を有する和菓子が伝統的に存在することにも照らし,鳥の形状が菓子として特徴的なものとはいえないこと,被告の菓子「ひよ子」の販売,広告宣伝において,菓子「ひよ子」の形状が単独で用いられているといえるものは見当たらないことをも考慮した上で,かかる状況においては,本件立体商標については全国的な周知性を獲得するに至っていないとしたものである。そして,被告に本件立体商標の使用を独占させることが,特徴的なものといえない形状につき,一定の販売期間,販売規模を有する業者を含め多数の業者のかかる形状の使用を排除する結果を招来することにも鑑みると,公益上望ましいとは言い得ないことは明らかと言わざるを得ない。これらに鑑みると,使用による出所識別力を否定できる場合が,被告のいうような事実の主張立証があった場合に限られると解さなければならない理由はないから,被告の上記主張は採用することができない。」
◆平成17(行ケ)10673 審決取消請求事件 商標権行政訴訟 平成18年11月29日 知的財産高等裁判所
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2003.10.17
◆H15.10.15 東京高裁 平成15(行ケ)102 商標権 行政訴訟事件
商品又は商品の包装の形状にかかる立体商標について、識別性があるかについて判断されました。審決、判決とも否定しました。
判決は、「商品等の形状は、本来、当該商品の機能を保持するための一定の制約を受けながらも、その機能\をより一層効果的に発揮させるため、あるいは、看者に及ぼす美感をより一層高めるために採択されるものであり、商品の出所を表示したり、自他商品を識別する標識としての役割を担うものではないところ、当該商品の取引者・需要者も同様の認識を有するものというべきである。したがって、商品等の形状は、商品等の通常の機能\又は美感と関わりがなく、これを普通に用いられる方法で表示するものではない特異な形状あるいは装飾的な形状であると認められる場合に限り、自他商品の識別標識となり得るものと解すべきである。また、商品等の形状を普通に用いられる方法で表\示するのみであって、通常の機能又は美感とは関わりのない特異な形状あるいは装飾的な形状ではない商品等の形状についてまで、特定人にその独占的使用を認め、更新を続ける限り永続的に保護を及ぼすことは、公益にも反するものといわなければならない。」と述べました。
◆H15.10.15 東京高裁 平成15(行ケ)102 商標権 行政訴訟事件
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2003.09. 2
◆H15. 8.29 東京高裁 平成14(行ケ)581 商標権 行政訴訟事件
ウイスキーの瓶の形状が立体商標として識別性を有しているかが争われました。
裁判所は、3条1項3号の記述的商標に該当すると判断し、さらに、3条2項の使用による識別性も認めませんでした。理由は、「使用に係る商標と同一でない」というものです。具体的には、以下のように述べました。「本願商標と使用に係る本件ウイスキー瓶とは,その立体的形状は同一と認められる範囲内のものであると認められるものの,両者は,立体的形状よりも看者の注意をひく程度が著しく強く商品の自他商品識別力が強い平面標章部分の有無において異なっているから,全体的な構成を比較対照すると,同一性を有しないというべきである。」
◆H15. 8.29 東京高裁 平成14(行ケ)581 商標権 行政訴訟事件
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