立体商標について、識別性無しとした審決が維持されました。3条2項の適用についても認められませんでした。判決文の最後に立体商標が挙げれられています。
ア 本願商標は,別紙立体商標目録記載のとおり,球体を半球よりやや大き
めに切断し,その半球状の平らな面(切断面)の中央部分に,切断面の円
の3分の1程度の大きさの円形のくぼみを有する立体的形状の全体を淡い
ピンク色とした構成からなる立体的形状と色彩を結合した商標である。
イ 本願商標の指定商品中の「骨接合術用インプラント」に「人工股関節用
インプラント」が含まれることは争いがない。
証拠(甲9ないし11,乙1ないし9)及び弁論の全趣旨によれば,1)
股関節は,大腿骨の上端の球状の骨頭が骨盤のくぼみ(寛骨臼)にはまり
込むように接合して形成されていること,2)一般的な人工股関節用インプ
ラントは,大腿骨の骨頭の役割を果たす「ヘッド」,ヘッドを受け止める
「インサート」,骨盤の寛骨臼にはめ込みインサートを支える「カップ」,ヘ
ッドに差し込んで支える土台として大腿骨に埋め込む「ステム」から構成\nされていること,3)ヘッドは,カップ又はインサートの中で可動するため
に半球状を呈し,球状部分の反対側の平らな面にはステムとつなぐための
くぼみを有すること,4)市販されている人工股関節用インプラントのセラ
ミック製のヘッドには,全体が単色の白色,ベージュ色等の色彩のものが
あることが認められる。
上記認定事実によれば,本願商標の立体的形状と人工股関節用インプラ
ントのヘッドの立体的形状とは,一部を平らにした半球状である点及び球
状部分の反対側にくぼみを有する点において共通するものであり,本願商
標の立体的形状は,人工股関節用インプラントを構成する「ヘッド」の一\n般的な立体的形状であることが認められる。
また,前掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,人工股関節用インプラント
は,大腿部頚部骨折,変形性股関節症等の股関節疾患の治療を目的とした
人工股関節置換術に用いられる商品であって,人の体内に埋め込んで使用
されるものであること,その取引者,需要者は,整形外科の医療従事者又
はその関係者等であり,上記商品の取引に際しては,商品の形状・寸法が
患者の具体的な症状に適したものであるかどうか,生体適合性,耐摩耗
性,強度等の商品の材質の物性に着目するものであり,商品の色彩が着目
されることは通常ないものと認められる。
そうすると,本件審決がされた平成26年8月28日の時点において,本
願商標は,その指定商品中の「骨接合術用インプラント」に含まれる人工
股関節用インプラントに使用された場合には,取引者,需要者である上記
医療従事者又はその関係者等によって,人工股関節用インプラントを構成\nする「ヘッド」の立体的形状を表示するものとして一般に認識されるもの\nであり,取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するもので\nあったものと認められるから,特定人によるその独占使用を認めるのは公
益上適当でないとともに,自他商品識別力を欠くものというべきである。
加えて,市販されている人工股関節用インプラントのセラミック製のヘ
ッドには,全体が単色の白色,ベージュ色等の色彩のものがあることに照
らすと,本願商標の全体が淡いピンク色の構成であることは,表\示方法と
して格別なものではなく,本願商標は,人工股関節用インプラントを構成\nする「ヘッド」の立体的形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみ\nからなるものと認められる。
以上によれば,本願商標は,商標法3条1項3号に該当するものと認め
られる。
ウ 原告は,これに対し,本願商標は,人工股関節などに用いられるインプラ
ントに共通の特徴を有しているとしても,「柔らかな球体のフォルムと,つ
やつやとしたピンク色の半球体の形状」ゆえに,形状及び色彩に他に類する
もののない特徴を有しており,市場で初めて本願商標に接した者は,「これ
は一体なんだろう。」という素直な感想を持つと解するのが自然であるか
ら,本願商標は,インプラントを立体的に表したものと容易に認識,把握さ\nせるにとどまらず,自他商品識別力を生来的に備えているから,本願商標が
商標法3条1項3号に該当するものとはいえない旨主張する。
しかしながら,前記イで述べたように,本願商標の図形は,人工股関節
用インプラントを構成する「ヘッド」の一般的な立体的形状であり,また,そ\nの図形の色彩が原告が主張するように「つやつやとしたピンク色」であると
しても,人工股関節用インプラントの取引者,需要者である整形外科の医
療従事者又はその関係者等は,商品の形状・寸法が患者の具体的な症状に
適したものであるかどうか,生体適合性,耐摩耗性,強度等の商品の材質
の物性に着目するものであり,商品の色彩が着目されることは通常ないも
のといえるから,本願商標が自他商品識別力を生来的に備えているものと認
めることはできない。
◆判決本文
◆関連事件です。平成27(行ケ)10002