2019.12. 3
立体商標について、識別力無しとの無効審判請求について、知財高裁(4部)は無効理由なしとした審決を維持しました。
前記アの認定事実を総合すると,ヘニングセンがデザインした本件商品の立体的形状は,被告による本件商品の販売が日本で開始された1976年(昭和51年)当時,独自の特徴を有しており,しかも,本件商品が上記販売開始後本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において継続して販売され,この間本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰り返し行われた結果,本件商標の登録出願時までには,本件商品が日本国内の広範囲にわたる照明器具,インテリアの取引業者及び照明器具,インテリアに関心のある一般消費者の間で被告が製造販売するランプシェードとして広く知られるようになり,本件商品の立体的形状は,周知著名となり,自他商品識別機能ないし自他商品識別力を獲得するに至ったものと認められる。そうすると,本件商品の立体的形状である本件商標が本件商品に長年使用された結果,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時(登録審決日・平成27年12月15日)において,被告の業務に係る商品であることを表\示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから,本件商標は,商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するものと認められる。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,本件商品(「PH5」)は,デンマークのデザイナーであるヘニングセンがデザインした商品として,宣伝され,評価され,販売されてきたものであるから,PH5の立体的形状である本件商標は,ヘニングセンがデザインしたランプシェードの立体的形状として周知であるにとどまり,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,周知であるということはできない旨主張する。\nしかしながら,前記(2)イ認定のとおり,被告は1976年(昭和51年)から本件商標の登録出願日(平成25年12月13日)までの約40年間の長期間にわたり日本国内において本件商品を継続して販売し,その間,本件商品は,ヘニングセンがデザインした世界のロングセラー商品であり,そのデザインが優れていること及び本件商品は被告(「ルイスポールセン社」)が製造販売元であることを印象づけるような広告宣伝が継続して繰り返し行われてきたことに照らすと,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告の業務に係る商品であることを表示するものとして,日本国内における需要者の間に広く認識されていたことが認められるから,原告の上記主張は採用することができない。\n
イ 原告は,PH5に係る商標権,著作権等の知的財産権は,ヘニングセンに帰属するから,被告は,ヘニングセン及びその相続人から,商標権の譲渡を受け,又は使用許諾を受けていなければ,本件商標の商標登録を受けることはできない,PH5のデザインは,外国において商標登録されておらず,知的財産権の権利者が死亡し,パブリックドメインとなっているから,商標登録をさせてはならず,被告の本件商標の商標登録は無効とすべ
きである旨主張する。しかしながら,商標法3条2項は,同条1項3号から5号までに該当する商標であっても,「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については,商標登録を受けることができる旨を定めたものであるところ,原告の上記主張は,同条2項の文言の解釈に基づかないものであるから,その主張自体理由がないというべきである。
◆判決本文
ジェネリック・リプロダクト品について、侵害者利益を損害として認めました。商標はランプシェードの立体形状です。
証拠(甲54,55)及び弁論の全趣旨によれば,原告が入手した中
国国内で製造された原告標章と同一又は類似した形状を有する本件模倣
品の中国国内の販売店の販売価格は約6668円(389.5人民元×
17.12円(平成28年4月25日の人民元の公表仲値))であり,そ\nの日本への輸送手数料が約3766円(220人民元×17.12円)
であったと認められる。被告は,被告商品を中国から輸入,販売していること(前提事実 )から,侵害品の販売のために直接要した経費として,少なくとも,被告
商品の仕入れの際の購入費用や輸送手数料があると認められる。そして,
本件模倣品の販売価格や輸送手数料が上記の額であったこと,被告は被
告商品のことを「今までで最も精巧なリプロダクト」と宣伝しており(甲
2の3〔4枚目〕),被告商品は,一定の品質を確保し,同種の商品より
も製造コストが高い商品であることがうかがわれないわけではないこと,
他方,本件模倣品の前記価格は販売店における販売価格であり,同販売
店の仕入れ価格はそれよりも低額であると推認されること,その他の諸
事情を考慮し,被告商品について,売上額から控除すべき上記経費の合
計は1台当たり1万2000円を超えることはないと認める。そうする
と,被告が被告商品を販売することによって得た利益額を算定するに当
たり控除すべき経費は538万8000円(1万2000円×449個)
となり,前記アの売上額の合計930万0586円から538万800
0円を控除した391万2586円が原告の損害額であると推定される。
(イ)これに対し,被告は,被告の平成28年7月1日から平成29年6月
30日までの期間における被告全体の売上高が1億8365万2099
円であること,売上原価が1億3902万6337円であること,人件
費その他の管理費が合計4459万3678円(人件費497万703
8円,荷造運賃763万3167円,インターネット経費2486万7
197円,広告宣伝費295万7335円,その他経費415万894
1円)であり,それを控除した営業利益が3万2084円であることが
記載された公認会計士作成の決算状況説明書(乙15)を提出した上で,
被告が被告商品によって得た利益は,売上高全体の被告商品の売上高の
比率(約5%)に照らし,1403円であると主張し,他に,被告製品
の利益や経費に関する具体的な金額についての証拠を提出しない。
しかし,商標法38条2項に基づく損害額の算定において侵害者の利
益を算定するに当たり,侵害品の売上額から控除すべき経費は侵害品の
販売のために直接要した変動費であると解されるところ,上記決算状況
説明書によっては,被告商品の上記変動費を認定することはできない。
◆判決本文
関連事件です。
◆平成30(行ケ)10004