審決取消訴訟中に分割出願とこれに伴う原出願の補正(分割分の削除)がなされた場合に、補正の効果として遡及効を認められるかが争われました。本件では、下記の事件と同様、審決取消訴訟中に分割出願とこれに伴う原出願の補正(分割分の削除)がなされた場合には、その補正は遡及効ありとの判断をしています。
◆H15.10. 15 東京高裁 平成15(行ケ)64 商標権 行政訴訟事件
こちらは、結論逆です。
◆H15.10. 7 東京高裁 平成15(行ケ)83 商標権 行政訴訟事件
◆H15.10.28 東京高裁 平成15(行ケ)121 商標権 行政訴訟事件
一部の指定商品についてのみ拒絶理由がある場合に、審決取消訴訟にてこれを取り除く分割出願をした場合、補正に遡及効があるか否かが争われました。下記と同じようなケースですが
◆H15.10. 7 東京高裁 平成15(行ケ)83 商標権 行政訴訟事件、結論は逆です。裁判所は”分割に伴う補正(削除)は認めるべきではない”との特許庁の主張を認めました。事案がどう違うのか詳細に検討する必要がありますね。
裁判所は、「仮に,審決取消訴訟係属中における出願の分割に伴う手続の補正が,上記訴訟係属中にも,原出願の指定商品等についてその減縮をもたらすものとすれば,法68条の40第1項の規定にかかわらず,出願の分割という方法をとることにより,出願人は,いつでも,原出願の補正をすることができるということになるが,このことは,上記規定が手続の補正の時期を制限した趣旨を全く没却することになり,相当でないというべきである。」と述べました。
◆H15.10.15 東京高裁 平成15(行ケ)64 商標権 行政訴訟事件
多区分出願について、一部の類についてのみ拒絶理由がある場合に、審決取消訴訟にてこれを取り除く分割出願をした場合、補正に遡及効があるか否かが争われました。被告である特許庁は”分割に伴う補正(削除)は認めるべきではない”と主張しましたが、裁判所はこれを取り消しました。
裁判所は、「商標法は,審査・審判等が特許庁に係属する場合に分割出願することを認め,その分割出願の結果を審査・審判等に反映させることにし,これと同列的に,審決取消訴訟が裁判所に係属する場合にも分割出願を認めたのであるから,その分割出願の結果もまた審決取消しの訴訟及び判決に反映させることにしたものと解するのが文理上も自然であり,かつ,合理的である。仮に,商標法が審決取消訴訟係属中に分割出願の制度を認めながら,分割出願の結果が審決取消しの訴訟及び判決に何ら影響を与えないというのであれば,審判対象物の恒定効を付与するといった特別の法的措置を講ずべきであり,そのような措置が何ら講じられていない以上,分割出願の結果を前提に,爾後の審決取消訴訟は進行するものといわざるを得ない。そこで,分割出願の効力が審決取消訴訟に対しいかなる影響を与えるかについて考えるに,登録出願に係る商標の指定商品等が分割出願によって減少したことは,審理及び裁判の対象がその限りで当然に減少したことに帰するから,審決取消訴訟では,残存する指定商品等について,審決時を基準にして,審理及び裁判をすべきことになる。この場合,審決が残存する指定商品等について判断をしているときは,その判断の当否について審理及び裁判をし,審決が判断を加えないでその結論を導いているときは,その点につき当該訴訟で審理判断が可能かを見極めることとなる。・・・・なお,以上のような見解を採用しないで,裁判所が,審決取消訴訟係属中にされた分割出願に係る指定商品等も審理の対象として審理判断し,審決取消しを求める請求を棄却する判決をする場合には,分割出願の効力は否定することができないから,その判決によって確定する審決の内容は,分割出願後に原出願に残存した指定商品等に限定される結果となる。本件についていえば,指定役務を乙,丙,丁の役務群としてされた審決においては,丁役務群において本願商標と本件引用商標が類似しているとして,乙,丙,丁の指定役務群の全体について拒絶すべきものとされたため,審決取消訴訟が提起され,審決取消訴訟の係属中に拒絶理由のある丁指定役務群について分割出願されたが,裁判所は,分割出願によっては審理及び判決の対象は何ら変動しないものとして,分割出願の指定役務に移行した丁役務群において両商標は類似するとして,乙,丙,丁の役務群全部について拒絶すべきものとした審決を是認し,原告の請求を棄却するわけであるが,この判決によって確定する審決は,拒絶理由の関係しない乙、丙の役務群のみにつき効力を有し,拒絶理由に関係のある丁役務群には効力が及ばないということになる。」と述べました。
◆H15.10. 7 東京高裁 平成15(行ケ)83 商標権 行政訴訟事件
2003.07. 1
商標「花粉のど飴」を商品「キャンディー」に使用することは、「のど飴及びその他のキャンデー」を範囲とする商標権「花粉」の専用使用権を侵害するか否かが争われました。争点は、1)「花粉」と「花粉のど飴」は類似するか、2)被告の使用方法は、商標法26条1項2号に該当する効力の及ばない範囲か否か等です。
裁判所は、1)については両者類似、2)については効能ではなくまた、普通に用いられる方法でもないとして、侵害を認めました。
個人的には、春先には花粉症が話題にならない日はないくらいですので、「花粉のど飴」ときけば、一般の人は花粉症用ののど飴と認識すると思います。証拠は結構出したようですが、裁判所としては立証不十\分に写ったんでしょうか?、また、4条1項16号は後発的無効理由でもあるので、これを根拠に権利濫用の主張をしていれば結果は変わったのでしょうか?
◆H15. 6.27 東京地裁 平成14(ワ)10522 商標権 民事訴訟事件